(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合ロジンとエポキシ基含有ポリジオルガノシロキサンからなるエポキシ開環付加反応生成物(1)、および/または重合ロジンアルコールとアルコキシ基含有ポリジオルガノシロキサンからなる脱アルコール反応生成物(2)を含有するコーティング組成物。
重合ロジンが、色調がガードナー3以下、軟化点が145〜200℃、酸価が160〜185mgKOH/gであり、かつ二量体含有率が60重量%以上のものである請求項1に記載のコーティング組成物。
重合ロジンアルコールが、色調がガードナー3以下、軟化点が110〜150℃、水酸基価が120〜140mgKOH/g、酸価が3mgKOH/g以下であり、二量体含有率が60重量%以上のものである請求項1に記載のコーティング組成物。
前記反応生成物(1)が、重量平均分子量が3,000〜80,000であり、酸価が10mgKOH/g以下のものである請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング組成物。
前記反応生成物(2)が、重量平均分子量が3,000〜80,000であり、水酸基価が10mgKOH/gのものである請求項1〜6のいずれかに記載のコーティング組成物。
加水分解性シラン化合物が、トリアルコキシシラン、トリアルコキシシラン初期縮合物、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン初期縮合物、およびシランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載のコーティング組成物。
硬化触媒が、チタン酸エステル、錫カルボン酸塩、有機アルミニウム化合物、およびアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載のコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコーティング組成物に用いられる反応生成物(1)は、重合ロジンとシロキサン(A)から得られ、また反応生成物(2)は、重合ロジンアルコールとシロキサン(B)から得られるものである。反応生成物(1)および反応生成物(2)の性状などは格別限定されないが、重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で、3,000〜80,000、好ましくは3,500〜50,000のものが好適である。また反応生成物(1)は、通常は、酸価が10mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下とされ、また反応生成物(2)は、水酸基価が10mgKOH/g以下、好ましくは5mgKOH/g以下とされる。
【0011】
反応生成物(1)の構成成分である重合ロジンの性状は格別限定されないが、用途に応じて色調などが重視される場合は、該性状を適宜に選択すればよい。例えば、重合ロジンとして、色調がガードナー(JIS K5902による)3以下、好ましくは2以下、更に好ましくはハーゼン水準(JIS K0071−1による)であり、軟化点(JIS K2207(環球法)による)が145〜200℃、好ましくは150〜190℃であり、酸価(JIS K2501による)が160〜185mgKOH/g、好ましくは165〜185mgKOH/gであり、かつ二量体含有率が60重量%以上、より好ましくは80重量%以上のものを好適に用いることができる(以下、特定重合ロジンという)。
【0012】
特定重合ロジンを得るには、蒸留や再結晶などの方法により得られる精製ロジンを出発原料として用いたり、こうして得られる重合ロジンを更に水素化することが好ましい。該特定重合ロジンの製造法としては、格別限定されず、公知各種の方法を採用できる。例えば、重合反応触媒として、ペンダントスルホン基を有する高分子を用いる方法(特開2006−45396号公報);ギ酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛などを用いる方法などが挙げられる。
【0013】
反応生成物(2)の構成成分である重合ロジンアルコールの性状も格別限定されないが、用途に応じて、該性状を適宜に選択すればよい。例えば、重合ロジンアルコールとして、色調がガードナー3以下、好ましくは2以下、更に好ましくはハーゼン水準であり、軟化点が110〜150℃、好ましくは120〜140℃であり、水酸基価(JIS K0070による)が130〜180mgKOH/g、好ましくは140〜170mgKOH/gであり、酸価が3mgKOH/g以下、好ましくは1mgKOH/g以下であり、二量体含有率が60重量%以上、より好ましくは80重量%以上のものとされる(以下、特定重合ロジンアルコールという)。
【0014】
特定重合ロジンアルコールは、各種公知の水素化方法を適用して、前記重合ロジン中の不飽和結合およびカルボキシル基を水素化還元することにより収得できる。工業的水素化方法を例示すると、重金属触媒の存在下、銅クロム触媒により樹脂酸メチルエステルを水素添加する方法、300℃程度の高温かつ高圧下に、銅クロム触媒により樹脂酸メチルエステルを水素添加する方法、溶解したロジンをラネーニッケルで直接水素添加する方法、銅、コバルト、ニッケル系触媒を用いて高温、高圧下で水素添加しアルコールに還元する方法などを挙げることができる。このようにして得られるロジンアルコールは、テトラヒドロアビエチルアルコール、ジヒドロアビエチルアルコール、デヒドロアビエチルアルコールなどを含む混合物である。
【0015】
反応生成物(1)の構成成分であるシロキサン(A)としては、当該分子の少なくとも一方の末端(片末端または両末端)にγ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2−(3,4−エポキシシクロペンチル)エチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などを有する各種の相当化合物が挙げられ、これらは線状、分岐状のいずれであってもよい。シロキサン(A)としては、入手容易性や安定性などの点からは、該エポキシ基を含有するポリジメチルシロキサンが好ましい。シロキサン(A)の繰り返し単位数(R
2SiO)は格別限定されず、その目的用途に応じて適宜に選定でき、オイル状のものやポリマー状のものをそれぞれ単独使用または2種以上を併用することができる。該単位数としては、シロキサン(A)の粘度やこれを用いて得られるコーティング組成物の溶液粘度の点からは、通常5〜50程度、好ましくは10〜30とされる。片末端にエポキシ基を有するポリジメチルシロキサンの具体例としては、信越化学工業(株)製のX−22−173DXなどが挙げられ、また両末端にエポキシ基を有するポリジメチルシロキサンの具体例としては、信越化学工業(株)製のKF−105、X−22−163、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163Cなどが挙げられる。
【0016】
反応生成物(2)の構成成分であるシロキサン(B)としては、当該分子の少なくとも一方の末端(片末端または両末端)にアルコキシ基を有する各種の相当化合物が挙げられ、これらは線状、分岐状のいずれであってもよい。シロキサン(B)としては、入手容易性などの点からは、低級(炭素数1〜4)アルコキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましい。シロキサン(B)の繰り返し単位数(R
2SiO)は格別限定されず、その目的用途に応じて適宜に選定でき、オイル状のものやポリマー状のものをそれぞれ単独使用または2種以上を併用することができる。また、該単位数は、シロキサン(A)におけるそれらと同様の範囲とされる。シロキサン(B)の具体例としては、信越化学工業(株)製のKR213、KR217、KR9218、KR500、X40−9225など、東レ・ダウコーニング(株)製のDC3074、DC3037、SR2402など、モメンティブ・ジャパン社製のXC96−C2813、XC96−B0446、XR31−B1410、XR31−B2733などが挙げられる。
【0017】
反応生成物(1)の製造は、反応容器に重合ロジンおよびシロキサン(A)を所定割合で仕込み、必要に応じて、エステル化触媒、有機溶剤の存在下に、エポキシ開環付加反応させることにより行われる。反応温度は50〜130℃程度、反応時間は1〜15時間程度である。なお、得られる反応生成物(1)の性能が損なわれない限り、重合ロジンの一部を他の二塩基酸に置換してもよく、該置換率は重合ロジンの30モル%以下とされる。該二塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族二塩基酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0018】
前記仕込み割合は、[シロキサン(A)中のエポキシ基数]/[重合ロジン中のカルボキシル基数](当量比)が0.5/1〜2/1、好ましくは0.8/1〜1.2/1とされる。該当量比が下限値に満たない場合は、得られる反応生成物(1)の酸価が大きくなり、また該当量比が上限値を超える場合は、反応生成物(1)中の残存エポキシ基が多くなる傾向がある。
【0019】
前記エステル交換触媒の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、p−トルエンスルホン酸、イミダゾールなどの有機アミン類などが挙げられる。該エステル化触媒の使用量は、一般的には重合ロジンに対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。
【0020】
前記有機溶剤としては、シロキサン(A)中のエポキシ基および重合ロジン中のカルボキシル基に対して不活性なものが使用でき、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;キシレン、トルエン、アニソール等の芳香族炭化水素系溶剤;メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤;ミネラルスピリット、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶剤;ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テキラヒドロフランなどの活性水素基を含まない極性溶剤が挙げられる。これらは単独使用、2種以上の併用のいずれでもよい。
【0021】
反応生成物(2)の製造は、反応容器に重合ロジンアルコールおよびシロキサン(B)を所定割合で仕込み、必要に応じて、触媒、有機溶剤の存在下に、室温〜120℃程度で脱アルコール反応させることにより行われる。なお、得られる反応生成物(2)の性能が損なわれない限り、重合ロジンアルコールの一部を他の二価アルコールに置換してもよく、該置換率は重合ロジンアルコールの30モル%以下とされる。該二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0022】
前記仕込み割合は、[シロキサン(B)中のアルコキシ基数]/[重合ロジンアルコール中の水酸基数](当量比)が0.5/1〜2/1、好ましくは0.8/1〜1.2/1とされる。該当量比が下限値に満たない場合は、得られる反応生成物(2)の水酸基価が大きくなり、また該当量比が上限値を超える場合は、反応生成物(2)中の残存アルコキシ基の数が増加する傾向がある。
【0023】
前記触媒としては、塩基性化合物、酸性化合物、金属化合物など公知の脱アルコール触媒のうちで、シロキサン(B)のエポキシ基を開館させないものが使用できる。該塩基性化合物としては、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシドなどが挙げられる。該酸性化合物としては、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、および塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。また、金属化合物としては、例えば有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などが好ましい。また、前記有機溶剤としては、反応生成物(1)の製造時に用いると同様のものを使用できる。
【0024】
前記のようにして得られる反応生成物(1)では、重合ロジン部位がハードセグメントを、シロキサン(A)部位がソフトセグメントを構成する。また反応生成物(2)では、重合ロジンアルコール部位がハードセグメントを、シロキサン(B)部位がソフトセグメントを構成する。このように、反応生成物(1)および(2)は、重合ロジン部位や重合ロジンアルコール部位に由来するバルキーなハードセグメント構造を有するため、高性能な樹脂材料として利用価値は大きい。
【0025】
なお、反応生成物(1)がシロキサン(A)由来の残存エポキシ基を有するものである場合は、該エポキシ基を利用した硬化性材料となりうる。該材料を用いて硬化性組成物、例えばエポキシ樹脂組成物を調製する場合には、溶剤、硬化剤、顔料、充填剤、エポキシ樹脂などの各種配合物を用途に応じて適宜に配合できる。また、反応生成物(2)がシロキサン(B)由来の残存アルコキシ基を有するものである場合は、該アルコキシ基を利用した硬化性材料となりうる。該材料を用いて硬化性組成物、例えば加水分解性・縮合型の硬化性組成物を調製することができ、いわゆるゾルゲル反応による強固な硬化物が得られる。
【0026】
本発明のコーティング組成物は、反応生成物(1)および反応生成物(2)の他に、必要に応じて加水分解性シラン化合物、硬化触媒、溶剤、顔料などを配合することができ、更に必要があれば分散安定剤、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、香料、硬化剤、中和剤、防錆剤、防黴剤、造膜剤などを添加してもよい。
【0027】
前記の加水分解性シラン化合物は、本発明のコーティング組成物の硬化性を一層向上させる場合に配合できる。該シラン化合物としては、格別限定されず公知各種のものを使用でき、例えば、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n−プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン;テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;更には、該シラン化合物の初期縮合物などが挙げられる。また、いわゆるシランカップリング剤も該加水分解性シラン化合物に包含され、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなどのエポキシ官能性アルコキシシラン;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ官能性アルコキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト官能性アルコキシシランが挙げられる。これらは単独使用、2種以上の併用のいずれでもよい。なかでも前記トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランおよびこれらの初期縮合物、ならびに前記シランカップリング剤が、硬化性の点から好適である。コーティング組成物におけるこれらの配合割合は必ずしも限定されず、目的用途に応じて決定でき、一般的には反応生成物100重量部に対して50重量部以下とされる。加水分解性シラン化合物の使用量が50重量部を超える場合は、得られるコーティング被膜の可撓性や耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0028】
前記の硬化触媒は、本発明のコーティング組成物の硬化速度を一層向上させるために使用しうる。該触媒としては、従来公知のシラノール系縮合触媒を格別限定なく使用できる。該触媒の具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫などの錫カルボン酸塩;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物が挙げられる。これらは単独使用、2種以上の併用のいずれでもよい。コーティング組成物におけるこれらの配合割合は必ずしも限定されず、目的用途に応じて決定でき、一般的には反応生成物100重量部に対して0.1〜10重量部程度である。
【0029】
前記の有機溶剤は、本発明のコーティング組成物の粘度調整が必要な場合に使用でき、反応生成物(1)や反応生成物(2)の製造時に用いたと同様のものを適宜に選択して使用すればよい。コーティング組成物の経時粘度安定性をより考慮する場合は、エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類を用いるのが好ましい。コーティング組成物におけるこれらの配合割合は必ずしも限定されず、目的用途や用いる反応生成物の粘度などを考慮して決定でき、一般的には反応生成物100重量部に対して50〜150重量部程度である。
【0030】
本発明のコーティング組成物に配合しうる顔料や充填剤としては、特に限定されず、公知各種の着色顔料、体質顔料、防錆顔料、充填剤などを用いることができる。着色顔料としては、二酸化チタン、ベンガラ、カーボンブラックなどが、体質顔料としては、カオリン、ケイ酸アルミニウム、沈降性硫酸バリウム、シリカ、沈降性炭酸カルシウムなどが、防錆顔料としては、リンモリブデン酸アルミニウム、クロム酸ストロンチウム、塩基性ケイ酸鉛、クロム酸鉛などがそれぞれ挙げられる。これらは単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。コーティング組成物におけるこれらの配合割合は必ずしも限定されず、目的用途に応じて決定でき、一般的には反応生成物100重量部に対して10〜150重量部程度である。
【0031】
本発明のコーティング組成物を光触媒塗料として使用する場合は、顔料として光触媒性のものを選択する必要がある。光触媒性顔料としては、光触媒活性を有するものであれば特に限定されず、例えばアナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられ、これらは単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。なかでも、アナターゼ型二酸化チタンが好ましい。
【0032】
本発明のコーティング組成物は、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、羽根式攪拌機、マグネチックスターラー、高速分散機、乳化機などにて混合、分散処理して調製される。
【0033】
本発明のコーティング組成物が塗布される基材としては、特に限定されず、例えば無機材料、金属材料、有機材料、それらの複合体などが挙げられる。より具体的には、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの塗装体などである。
【実施例】
【0034】
以下に製造例、実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、部および%は特記しない限り重量基準である。なお、本発明に用いる重合ロジンおよび重合ロジンアルコールの色調、軟化点、酸価、水酸基価、二量体含有率の測定、ならびに反応生成物の重量平均分子量の測定は、以下の方法による。
【0035】
(色調)
JIS K5902に準拠してガードナー色度を、JIS K0071−1に準拠してハーゼン色度を、目視測定した。
(軟化点)
JIS K2207(環球法)に準拠して測定した。
(酸価)
JIS K2501に準拠して測定した。
(水酸基価)
JIS K0070に準拠して測定した。
(二量体含有率)
HLC測定法により求めた。測定条件は以下の通りである。
カラム:ODS(日本分光(株)製)
溶媒:メチルアルコール/0.01%リン酸=9/1(容量比)
流速:1ml/分、
検出器:示差屈折計(日本分光(株)製)
【0036】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値を示す。
【0037】
製造例1(反応生成物(1)の合成)
撹拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、重合ロジン(色調ガードナー1、軟化点150℃、酸価178mgKOH/g、二量体含有率65%)240部、シロキサン(A)(信越化学工業(株)製、商品名「KF−105」:エポキシ当量490g/当量)490部、エステル化触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.6部、および所定量の溶剤(キシレン/酢酸エチル=1/1)を仕込んだ後、窒素気流下に攪拌しながら、110℃で8時間、エポキシ開環付加反応させた後、所定量の前記溶剤を加えることにより、不揮発分50%の反応生成物(1)溶液を得た(以下、反応生成物(1−1)という)。反応生成物(1−1)は、重量平均分子量が8,500、酸価(不揮発分換算、以下同様)が2.5mgKOH/gであった。
【0038】
製造例2(反応生成物(1)の合成)
製造例1において、前記重合ロジン240部に代えて水素化重合ロジン(色調ハーゼン100、軟化点167℃、酸価178mgKOH/g、二量体含有率80%)270部を用いた他は、同様に反応を行い、不揮発分50%の反応生成物(1)溶液を得た(以下、反応生成物(1−2)という)。反応生成物(1−2)は、重量平均分子量が9,000、酸価が2.1mgKOH/gであった。
【0039】
製造例3(反応生成物(2)の合成)
撹拌機、温度計、分離器付き冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、重合ロジンアルコール(色調ガードナー2、軟化点130℃、水酸基価170mgKOH/g、酸価1.6mgKOH/g、二量体含有率65%)230部、シロキサン(B)(信越化学工業(株)製、商品名「KR−217」:メトキシ基含有率25.4%、メトキシ当量263g/当量)263部、脱アルコール触媒(ジブチル錫ジラウレート)0.6部、および所定量の溶剤(キシレン/酢酸エチル=1/1) を仕込んだ後、窒素気流下に攪拌しながら、90℃で6時間、脱メタノール反応させることにより、不揮発分50%の反応生成物(2)溶液を得た(以下、反応生成物(2−1)という)。反応生成物(2−1)は、重量平均分子量が12,000、水酸基価(不揮発分換算、以下同様)が3.1mgKOH/gであった。
【0040】
製造例4(反応生成物(2)の合成)
製造例3において、前記重合ロジンアルコールに代えて次の重合ロジンアルコール(色調ガードナー1、軟化点150℃、水酸基価155mgKOH/g、酸価0.8mgKOH/g、二量体含有率80%)258部を用いた他は、同様に反応を行い、不揮発分50%の反応生成物(2)溶液を得た(以下、反応生成物(2−2)という)。反応生成物(2−2)は、重量平均分子量が14,000、水酸基価が2.4mgKOH/gであった。
【0041】
比較製造例1(比較反応生成物の合成)
製造例1において、重合ロジン300部に代えてイソフタル酸83部を用いた他は、同様に反応を行い、不揮発分50%の比較用反応生成物溶液を得た(以下、比較反応生成物1という)。比較反応生成物1は、重量平均分子量が7200、酸価が1.5mgKOH/gであった。
【0042】
比較製造例2(比較反応生成物の合成)
製造例1において、重合ロジンアルコールに代えて1,4−シクロヘキサンジメタノール72部を用いた他は、同様に反応を行い、不揮発分50%の比較反応生成物溶液を得た(以下、比較反応生成物2という)。比較反応生成物2は、重量平均分子量が10500、水酸基価が0.9mgKOH/gであった。
【0043】
実施例1〜8(光触媒塗料の調製)
製造例1〜4および比較製造例1〜2で得られた各反応生成物を用いて、表1に示すような組成(重量部)で混合した後、該混合物をペイントシェーカーにより混練し、各塗料を得た(順に塗料1〜10という)。
【0044】
【表1】
【0045】
表1中、酸化チタンは光触媒用酸化チタン粉体(石原産業(株)製、商品名「ST−01」)を、PMTMSはポリ(メチルトリメトキシシラン)(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」)を、PTMSはテトラメトキシシラン縮合物(多摩化学(株)製、商品名メチルシリケート51)を、硬化触媒は有機チタニウム化合物(信越化学
工業(株)製、商品名「DX−175」)を、それぞれ意味する。
【0046】
(光触媒塗膜の作製)
前記塗料1〜10を、脱脂鋼板およびガラス板にそれぞれバーコーターで塗布した後、常温で5日間静置することにより、光触媒塗膜(膜厚み:20μm)が形成された各試験板を得た。
【0047】
(評価方法および評価基準)
各試験板(基材:鋼板)につき、以下の方法に従い塗膜性能を評価した。各評価結果を表2に示す。
鉛筆硬度:JIS K5400に準拠。
密着性:JIS K5400に準拠(碁盤目セロハンテープ剥離試験)。
耐衝撃性:JIS K5600に準拠(デュポン式衝撃試験:1/2インチ×500g荷重)。
耐水性:JIS K5600に準拠(室温で5日浸漬後の表面状態を観察)。
耐塩水性:JIS K5400に準拠(塩水噴霧試験、クロスカット部の錆び幅)
耐汚染性:屋外6か月放置後の外観(汚染度)を目視評価した。
【0048】
なお、密着性に関しては、各試験板(基材:ガラス板)についても前記同様に評価したが、いずれも良好であった。
【0049】
【表2】
【0050】
表2の評価結果から、本発明のコーティング組成物は環境配慮型であり、かつ塗膜性能バランスに優れることが明らかである。