特許第6135870号(P6135870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135870
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】生分解性ポリマーを含む繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/10 20060101AFI20170522BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170522BHJP
【FI】
   D01F1/10ZBP
   A61K45/00
   A61P27/02
   A61K47/34
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-508785(P2014-508785)
(86)(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公表番号】特表2014-517881(P2014-517881A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012058036
(87)【国際公開番号】WO2012150265
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】11164501.6
(32)【優先日】2011年5月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】フランケン, アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ミホヴ, ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ティース, イェンス クリストフ
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−510197(JP,A)
【文献】 特表2009−545516(JP,A)
【文献】 特表2010−511433(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/070402(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0077272(US,A1)
【文献】 特表2005−534716(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/014304(WO,A1)
【文献】 特表2008−518666(JP,A)
【文献】 特表2009−516757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00−6/96、9/00−9/04
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の体内に注入されたときに寸法変化を受ける生分解性ポリマーを含む繊維であって、前記寸法変化が、体積に対する表面積の比率の1.05〜10倍の低下であり、
前記生分解性ポリマーが、式Iのポリエステルアミドである、繊維。
【化1】

(式中、
mは0.01〜0.99であり、pは0.99〜0.01であり、qは0.99〜0.01であり、かつnは5〜350であり、
は独立して、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、−(R−CO−O−R10−O−CO−R)−、−CHR11−O−CO−R12−COOCR11−、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
単一のコモノマーmまたはpのそれぞれの中のRおよびRは独立して、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、−(CH)SH、−(CHS(CH)、−CHOH、−CH(OH)CH、−(CHNH、−(CHNHC(=NH)NH、−CHCOOH、−(CH)COOH、−CH−CO−NH、−CHCH−CO−NH、−CHCHCOOH、CH−CH−CH(CH)−、(CH−CH−CH−、HN−(CH−、Ph−CH−、CH=C−CH−、HO−p−Ph−CH−、(CH−CH−、Ph−NH−、
【化2】

からなる群から選択され、
は、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、アルキルオキシおよびオリゴエチレングリコールからなる群から選択され、
は、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
は、水素、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキルまたは保護基であり、
は独立して、(C〜C20)アルキルまたは(C〜C20)アルケニルであり、
またはR10は独立して、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから選択され、
11またはR12は独立して、H、メチル、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから選択される。)
【請求項2】
が0.3であり、pが0.45であり、qが0.25であり、かつnが5〜100であり、
が、(CHまたは(CHであり、
およびRが、(CH−CH−CH−から選択され、
が、(CHから選択され、
が、1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトール(DAS)であり、
が、ベンジル保護基であり、
が、(CHである、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記寸法変化が、体積に対する表面積の比率の1.25〜5倍の低下である、請求項1又は2に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維が、少なくとも25ゲージの口径を有する薬剤注射針による注入のためのサイズである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項5】
前記ポリエステルアミドが、37よりも低い湿潤Tgを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項6】
少なくとも生物活性剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項7】
薬物溶出媒体として使用される、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維を製造するための方法であって、以下のプロセスステップ:
a.生分解性ポリマーを、少なくとも25ゲージの注射針に適合する繊維に押出成形するステップと、
b.前記繊維が、張力を受けている間にその乾燥ガラス転移温度よりも低温まで冷却されるステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、寸法変化を受ける生分解性ポリマーを含む繊維に関する。本発明はさらに、眼疾患の処置のための薬物送達媒体としての繊維の使用に関する。
【0002】
また本発明は、溶融押出による繊維の製造方法にも関する。
【0003】
本発明は、生物活性剤を一貫性および信頼性のある方法で前眼部および/または後眼部へ送達するために取り込み得る薬物送達媒体として繊維を処方することができるという前提に基づく。放出は、ポリマーマトリックスを通しての生物活性剤の拡散と、ポリマーの生分解とに依存するであろう。
【0004】
薬物の眼内送達は特定の問題である。眼は、眼の前側である前眼部と、眼の後側である後眼部との2つのチャンバに分けられる。点眼薬などの製剤は局所的に適用することができるので、前眼部の疾患は、これらを用いて処置するのがより容易である。例えば、緑内障は、眼の前側から処置することができる。糖尿病性網膜症および黄斑変性症などの網膜の疾患は後眼部に位置しており、点眼薬などの局所的に適用される薬物は通常眼の後側まで浸透しないので、これらは処置するのが困難である。これらの疾患のための薬物は、習慣的に、眼の後側に直接注入することによって送達されている。治療に必要な期間中、治療用量の前記薬物を提供するためには、多くの場合、これらの注入を繰り返さなければならず、これは患者にとって非常に不快である。従って、持続的な薬物送達の継続期間の増大を提供しながら、容易で安全かつより快適な注入を可能にする薬物送達媒体が必要とされている。
【0005】
さらに、眼の外部および内部組織などの特定の身体部位を標的とするために、当該技術分野では、様々な種類の異なる生物活性剤の新規のより良好な制御送達が必要とされている。特に、当該技術分野では、例えば、眼の前側および後側の慢性疾患の処置において、眼科用剤を長期間にわたって前眼部または後眼部へ連続的に送達するためにより効果的な送達媒体が必要とされている。
【0006】
驚くことに、上記の不都合は、ヒトまたは動物の体内に注入されたときに寸法変化を受ける生分解性ポリマーを含む繊維の提供によって克服できることが見出されており、寸法変化は、体積に対する表面積の比率の、1.05〜10倍の範囲、好ましくは1.25〜5倍の範囲、より好ましくは1.5〜4倍の範囲、最も好ましくは2〜10倍の範囲の低下である。
【0007】
従って、本発明の繊維は、ヒトまたは動物の体内に注入された後、物理的に再形成または再構築する能力を有する。表面積の相対的な低下によってバルクから表面を通る生物活性剤の拡散が遅延され得るので、寸法変化は、体積に対する表面の比率の変化により生物活性剤の持続放出の改善をもたらす。さらに、所要量の生物活性剤を放出するために必要とされる注入の回数が減少され得る。さらなる利点は、薬物送達デポーにさらに再構築され得る繊維を注入できる(薬物送達デポーはそのままでは決して注入できないであろう)ことである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に従う繊維の寸法変化を示す。
図2】PEA−III Ac Bz繊維からの医薬品有効成分(API)の放出に関する。
図3】30重量%のAPIを含有するPEA−III Ac Bz繊維の長さ、厚さおよび体積の変化を示す。
図4】細い繊維の紡糸のためのDSMマイクロファイバー紡糸装置を備えた、ツインスクリューマイクロ押出のためのDSM Pharma押出機Xceleraに関する。
図5】PBS中に浸漬した後、光学顕微鏡を用いて撮影された0日、0.5日、1日および6日目の繊維の写真を示す。
【0009】
本発明に従う繊維は、少なくとも25ゲージの口径を有する薬剤注射針による注入のためのサイズである。一般に、繊維は、100〜50μmの範囲のサイズを有し得る。
【0010】
本発明に従う繊維は、生分解性ポリマー、好ましくは非晶質生分解性ポリマーである生分解性ポリマーを含む。非晶質とは、分子がランダムに配向され、調理済みのスパゲティとよく似て絡み合っていることを意味し、ポリマーはガラス状の透明な外観を有する。ポリマーが非晶質であるかどうかは当業者によって容易に決定することができ、当該技術分野において知られているように、DSCまたはX線回折を用いて測定され得る。
【0011】
生分解性ポリマーは、好ましくは、45〜60Cの範囲の乾燥Tgを有する。さらに、生分解性ポリマーは、好ましくは、37Cよりも低い湿潤Tgを有する。乾燥および湿潤Tgは、ASTM試験法NO.D3418に従って測定することができる。
【0012】
生分解性ポリマーの例は、ポリエステルアミドまたはポリヒドロキシ酸(例えば、PLGAまたはポリL,D−乳酸)である。
【0013】
非晶質生分解性ポリマーの一例は、アルファ−アミノ酸、ジオールおよびジカルボン酸構成要素を含むポリエステルアミドである。
【0014】
好ましくは、繊維は、アルファ−アミノ酸、ジオールおよびジカルボン酸構成要素を含むポリエステルアミドを含む。
【0015】
より好ましくは、繊維は、式I
【化1】


に従うポリエステルアミドを含み、式中、
mは約0.01〜約0.99であり、pは約0.99〜約0.01であり、qは約0.99〜0.01であり、かつnは約5〜約350であり、
は独立して、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、−(R−CO−O−R10−O−CO−R)−、−CHR11−O−CO−R12−COOCR11−、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
単一のコモノマーmまたはpのそれぞれの中のRおよびRは独立して、水素、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキル、−(CH)SH、−(CHS(CH)、−CHOH、−CH(OH)CH、−(CHNH+、−−(CHNHC(=NH+)NH、−CHCOOH、−(CH)COOH、−CH−CO−NH、−CHCH−CO−NH、−− −CHCHCOOH、CH−CH−CH(CH)−、(CH−CH−CH−、HN−(CH−、Ph−CH−、CH=C−CH−、HO−p−Ph−CH−、(CH−CH−、Ph−NH−、NH−(CH−C−、NH−CH=N−CH=C−CH−からなる群から選択され、
は、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、アルキルオキシまたはオリゴエチレングリコールからなる群から選択され、
は、1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片であり、
は、水素、(C〜C10)アリール、(C〜C)アルキルまたは保護基であり、
は独立して、(C〜C20)アルキルまたは(C〜C20)アルケニルであり、
またはR10は独立して、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから選択され、
11またはR12は独立して、H、メチル、C〜C12アルキレンまたはC〜C12アルケニレンから選択される。
【0016】
さらにより好ましくは、繊維は、さらにPEA−III−Ac Bzとして開示される式IIIのポリエステルアミドを含み、式中、mは約0.3であり、pは約0.45であり、qは約0.25であり、nは約5〜100であり、かつ
は、(CHであり、
およびRは、(CH−CH−CH−から選択され、
は、(CHから選択され、
は、1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトール(DAS)であり、
は、ベンジル保護基であり、
は、(CHである。
【0017】
PEA−III−Ac Bzのより拡張した記載は、ポリ−8−[(L−Leu−DAS)0.45(L−Leu−6)0.3−[L−Lys(Bz)]0.25である。分率は、合成におけるモノマーの全体の分率を示す。
【化2】

【0018】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は直鎖または分枝鎖炭化水素基を指し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシルなどが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」または「アルケニレン」は、本明細書において主鎖または側鎖中に少なくとも1つの不飽和結合を含有する二価の分枝状または非分枝状炭化水素鎖を意味するための構造式を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0021】
「アリール」という用語は、本明細書において構造式に関連して約9〜10個の環原子を有するフェニルラジカルまたはオルト縮合二環式炭素環ラジカルを示すために使用され、少なくとも1つの環は芳香族である。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
コポリマー中で使用されるアルファ−アミノ酸の少なくとも1つは、天然アルファ−アミノ酸である。例えば、RまたはRがCHPhである場合、合成において使用される天然アルファ−アミノ酸はL−フェニルアラニンである。RまたはRがCH−CH(CHである代替例では、コポリマーは天然アミノ酸のロイシンを含有する。本明細書に記載される2つのコモノマーの変化の範囲内でRおよびRを独立して変化させることによって、他の天然アルファ−アミノ酸、例えば、グリシン(RまたはRがHの場合)、アラニン(RまたはRがCHの場合)、バリン(RまたはRがCH(CHの場合)、イソロイシン(RまたはRがCH(CH)−CH−CHの場合)、フェニルアラニン(RまたはRがCH−Cの場合)、リジン(RまたはRが(CH−−NHの場合)、またはメチオニン(RまたはRが−(CHS(CH)の場合)、およびこれらの混合物を使用することもできる。
【0023】
PEAコポリマーは、好ましくは、15,000〜200,000ダルトンの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。本明細書に記載されるPEAコポリマーは、コポリマーの2つのビス−(アルファアミノ酸)含有単位および場合によりリジンベースのモノマーの様々な分子量および様々な相対的割合において作ることができる。特定の使用のために適切な分子量は、当業者によって容易に決定される。適切なMnは、約15,000〜約150,000ダルトン、例えば、約30,000〜約80,000または約35,000〜約75,000程度であろう。Mnは、ポリスチレンを標準として用いてTHF中でのGPCにより測定される。
【0024】
生分解性ポリマーのその他の例としては、ポリエステルアミド、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリ(3−ヒドロキシアルカノアート)、例えば、ポリ(3−ヒドロキシプロパノアート)、ポリ(3−ヒドロキシブチラート)、ポリ(3−ヒドロキシバレラート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノアート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノアート)およびポリ(3−ヒドロキシオクタノアート)など、ポリ(4−ヒドロキシアルカノアート(hydroxyalkanaote))、例えば、ポリ(4−ヒドロキシブチラート)、ポリ(4−ヒドロキシバレラート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノアート(hydroxyhexanote))、ポリ(4−ヒドロキシヘプタノアート)、ポリ(4−ヒドロキシオクタノアート)、および本明細書に記載される3−ヒドロキシアルカノアートまたは4−ヒドロキシアルカノアートモノマーまたはこれらのブレンドのいずれかを含むコポリマー、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリホスファゼン、ポリ(無水物)、ポリ(チロシンカーボネート)およびその誘導体、ポリ(チロシンエステル)およびその誘導体、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、コポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサラート、ポリ(アスピリン)、生体分子、例えば、コラーゲン、キトサン、アルギナート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸の断片および誘導体、ヘパリン、ヘパリンの断片および誘導体、グリコサミノグリカン(GAG)、GAG誘導体、多糖、エラスチン、キトサン、アルギナート、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明に従う繊維はさらに、少なくとも生物活性剤を含むことができる。生物活性剤は、治療薬、予防薬、または診断薬である任意の薬剤であり得る。このような生物活性剤は、小分子薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、cDNA、RNA、糖、脂質および全細胞を制限なしに含み得る。生物活性剤は抗増殖特性または抗炎症特性を有することもできるし、あるいは抗悪性腫瘍特性、抗血小板特性、抗凝固特性、抗フィブリン特性、抗血栓特性、有糸分裂阻害特性、抗菌特性、抗アレルギー特性、または酸化防止特性などの他の特性を有することもできる。抗増殖剤の例としては、ラパマイシンおよびその機能または構造誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)およびその機能または構造誘導体、パクリタキセルおよびその機能および構造誘導体が挙げられる。ラパマイシン誘導体の例としては、ABT−578、40−0−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−0−テトラゾール−ラパマイシンが挙げられる。パクリタキセル誘導体の例としては、ドセタキセルが挙げられる。抗悪性腫瘍薬および/または有糸分裂阻害薬の例としては、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩(例えば、Pharmacia AND Upjohn,Peapack NJ.からのAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのMutamycin(登録商標))が挙げられる。抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン薬、および抗血栓薬(antithrombins)の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、ホルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質Hb/nia血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、Angiomax(Biogen,Inc.,Cambridge,Mass.)などのトロンビン阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害薬、コレステロールを低下させる薬、Merck AND Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからの商標名Mevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、種々のビタミンなどのダイエットサプリメント、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。ステロイド系および非ステロイド系抗炎症薬を含む抗炎症薬の例としては、バイオリムス、タクロリムス、デキサメタゾン、クロベタゾール、副腎皮質ステロイドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。このような細胞増殖抑制物質の例としては、アンジオペプチン(angiopeptin)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、例えば、カプトプリル(例えば、Bristol−Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルまたはリシノプリル(例えば、Merck AND Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJからのPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))などが挙げられる。抗アレルギー薬の一例は、ペミロラスト(permirolast)カリウムである。適切であり得る他の治療物質または治療薬には、アルファ−インターフェロン、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、および遺伝子操作された上皮細胞が含まれる。上記の物質は、そのプロドラッグまたはコドラッグ(co−drug)の形態で使用することもできる。上記の物質には、その代謝産物および/または代謝産物のプロドラッグも含まれる。上記の物質は例として記載されており、限定は意図されない。
【0026】
本発明に従う繊維は、特に眼科の疾患を処置するための薬物溶出媒体として使用することができる。
【0027】
本発明はさらに、本発明に従う繊維の製造方法に関し、以下のプロセスステップ:
a.生分解性ポリマーを、少なくとも25ゲージの注射針に適合する繊維に押出成形するステップと、
b.上記繊維が、張力を受けている間にその乾燥ガラス転移温度よりも低温まで冷却されるステップと
を含む。
【0028】
繊維は好ましくは押出プロセス、例えば溶融押出によって製造され、ここで、生分解性ポリマーおよび最終の付加的な化合物は、Retsch凍結粉砕機を用いて均質にされる。得られた粉末は、次に、マイクロファイバー紡糸装置に接続された予熱したDSM Xploreマイクロ押出機(5ccのバレルサイズおよびツインスクリューを有する)に充填される。生分解性ポリマーは、好ましくは、100〜250μmの範囲の直径を有する繊維に延伸される前に120C〜140℃で5〜10分間の滞留時間を有する。工程中のポリマーの酸化的分解を最小限にするために、押出は通常不活性雰囲気下で実施される。次いで、張力を受けながら室温で冷却される。得られた繊維は次に、好ましくは例えば4mmの断片に切断され、冷却条件下でガンマ放射線により滅菌され得る。
【0029】
図1には、注入された本発明に従う繊維の寸法変化が示される。
【0030】
図1は、乾燥状態(A、25×倍率)、ウサギ硝子体液中で1日後(B、50×倍率)および14日後(C、50×倍率)のPEA III繊維に関する。
【0031】
繊維の体積に対する表面積の比率の低下、すなわち150μm〜約300μmへの繊維直径の増大と、関連して比較的一定の体積を維持しながらの繊維長さの減少とが示された。
【0032】
図2は、PEA−III Ac Bz繊維からの医薬品有効成分(API)の放出に関する。
【0033】
図3は、30重量%のAPIを含有するPEA−III Ac Bz繊維の長さ、厚さおよび体積の変化を示す。
【0034】
図4は、細い繊維の紡糸のためのDSMマイクロファイバー紡糸装置を備えた、ツインスクリューマイクロ押出のためのDSM Pharma押出機Xcelera(1〜250rpmの速度、20〜400℃の範囲の温度、9000Nの最大(marximal)トルクおよび2または5cmのバレル容量を有する)に関する。
【0035】
図5は、光学顕微鏡を用いて撮影された0日、0.5日、1日および6日目の繊維の写真を示す。光学顕微鏡写真には、PBS中に浸漬した後の、30重量%のAPIを含有するPEA繊維のサイズ変化が示される。
【0036】
本発明は、これから以下の実施例によってさらにそして具体的に説明されるであろう。
【0037】
[材料]
以下の実施例では、PEA−III−Ac Bzポリマーが使用される。PEA−III−Ac Bzのより拡張した記載は、ポリ−8−[(L−Leu−DAS)0.45(L−Leu−6)0.3−[L−Lys(Bz)]0.25である。構造は式IIIで与えられる。分率は、合成におけるモノマーの全体の分率を示す。
【化3】

【0038】
[PEA III Ac Bzの合成]
室温でオーバーヘッドスターラーを備え、窒素を流した500mLの丸底フラスコ内で、ジ−OSu−セバシナート(39.940g、0.1008モル、1.0当量)、L−ロイシン(6)−2TosOH(20.823g、0.0302モル、0.30当量)、L−ロイシン−(DAS)−2TosOH(32.503g、0.0453モル、0.45当量)およびL−リジン(Bz)−2TosOH(14.628g、0.0252モル、0.25当量)の混合物に、トリエチルアミン(30.9mL、0.222モル、2.2当量)およびN,N−ジメチルホルムアミド(53.07mL、0.689モル)を添加した。続いて混合物を60℃に加熱して反応を進行させ、THF中のGPC分析によりモニターした。36時間後に安定した分子量が得られ、続いて、L−ロイシン(6)−2TosOHの一部(4.338g、0.0063モル)をトリエチルアミン(1.76mL、0.0126モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド(4.54mL、0.0590モル)と共に添加し、重合反応を終了させた。混合物をさらに24時間加熱し、その後、粘性溶液をN,N−ジメチルホルムアミド(407.85g、5.301モル)でさらに希釈し、室温まで冷却させた。室温において、無水酢酸(1.89mL、0.0199モル)を添加して、ポリマーのアミノ官能性末端基をアシル化した。混合物を室温で24時間攪拌した。スキーム1には、一般的な反応が示される。
【化4】

【0039】
得られた粗製ポリマー混合物を水中において10:1の比率(水:反応混合物)で沈殿させた。ポリマーを捕集し、エタノール(500mL、8.57モル)中に溶解させ、手順を2度繰り返した。ポリマーをエタノール(500mL、8.57モル)中に再度溶解させ、攪拌溶液に液滴で添加することによって酢酸エチル(5000mL、50.91モル)中で沈殿させた。沈殿したポリマーを2回分の酢酸エチル(100mL、1.00モル)で洗浄し、乾燥させ、エタノール(500mL、8.57モル)中に溶解させ、0.2μmPTFE膜フィルタでろ過した。ろ過したポリマー溶液を65℃、減圧下で乾燥させた。
【0040】
収率75%、Mn=50kDa(ポリスチレン標準に対するTHF中のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC))。示差走査熱量測定(DSC)によりガラス転移温度を決定した。測定値は10℃/分の加熱速度で2回目の加熱から得た。Tg=48℃。
【0041】
[実施例1]
0.52gのAPI(医薬品有効成分)および4.31gのPEA III Ac Bzを共にエタノール中に溶解させ、フィルムキャストし、乾燥させた。続いて、フィルムを凍結粉砕した。均一にした凍結粉砕製剤を図3に示されるPharmaミニ押出機で繊維に加工した。ツインスクリュー押出機を用いて、凍結粉砕した粉末を125℃の温度で溶融押出した。押出機ダイは、0.75mmであった。押出されたポリマーを5m/分〜15m/分の速度で紡糸し、その後、窒素下、室温で冷却した。
【0042】
得られた直径約300μmの繊維を10mmの長さに切断し、個々に秤量した。PBS中37℃で放出を実施した。各時点でPBSを新しくし、HPLCによりAPIの量をトリプリケートで測定した。37℃でPBS中に浸漬すると、これらの繊維は再構築を受ける(プロセス1)。得られた放出は図2に示される。
【0043】
[比較例A]
0.03gのAPIおよび0.25gのポリマーを共に2.5mlのメタノール中に溶解させ、フィルムキャストし、乾燥させた。得られたフィルムを長さ5〜6mmおよび厚さ250μmの繊維に切断した。APIの放出は、個々に秤量した繊維において、37℃のPBS中で放出させて行った。各時点でPBSを新しくし、HPLCによりAPIの量をトリプリケートで測定した。
【0044】
37℃でPBS中に浸漬すると、これらの繊維は再構築されない(プロセス2)。
【0045】
得られた放出は図2に示される。
【0046】
[結果]
再構築がなければAPIの約50%が15日以内に繊維から放出されるが、再構築を伴う繊維からは同じ時点でAPIの20%だけが放出される。
【0047】
この実施例は、体積に対する表面の比率の低下を引き起こす繊維の再構築が繊維からのAPIの放出に影響を与え、速度を低下させ得ることを示す。
【0048】
[実施例2]
2.13gのAPIおよび5.00gのPEA III Ac Bzを共にエタノール中に溶解させ、フィルムキャストし、乾燥させた。続いて、フィルムを凍結粉砕した。ツインスクリュー押出機を用いて、凍結粉砕粉末を115℃の温度で溶融押出した。押出機ダイは、0.75mmであった。押出されたポリマーを5m/分〜15m/分の速度で紡糸し、その後、窒素下、室温で冷却した。
【0049】
得られた繊維を切断し、37℃でPBS中に入れた。光学顕微鏡により長さおよび厚さをモニターした。
【0050】
図3は、実施例1に記載されるように加工された30重量%のAPIを含有するPEA III Ac Bz繊維の長さ、厚さ、および体積の変化を表す。
【0051】
この図は、繊維の長さが減少し、厚さが増大するが、体積は一定のままであることを示す。繊維の膨潤は存在しないが、最初とは異なる体積に対する表面の比率をもたらす再構築が存在する。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5