特許第6135924号(P6135924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135924
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電磁流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/60 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G01F1/60
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-142681(P2013-142681)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-14576(P2015-14576A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】志村 徹
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−097986(JP,A)
【文献】 特開2005−156567(JP,A)
【文献】 特表2010−505121(JP,A)
【文献】 特開2002−243513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58− 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁電流を励磁コイルに印加し、測定管内を流れる被測定流体の起電力に基づく信号を一対の電極で取得して前記被測定流体の流量を測定する電磁流量計であって、
前記電極に検査信号電流を印加する検査信号発生部と、
前記電極に生じる電圧のうち、前記検査信号に基づく電圧を測定する診断信号測定部と、
基準となる検査信号電流と、そのときに前記診断信号測定部で測定された電圧とに基づいて基準電極抵抗を求め、
検査信号電流を変化させて得られる、前記診断信号測定部で測定された電圧と、前記基準電極抵抗から算出される理論上の電圧とに基づいて、自己診断を行なう診断部と、
を備えることを特徴とする電磁流量計。
【請求項2】
前記診断部が行なう自己診断は、前記診断信号測定部で測定された電圧の線形性の評価であることを特徴とする請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
前記診断部は、検査信号電流を変化させて得られる、前記診断信号測定部で測定された電圧と、前記基準電極抵抗から算出される理論上の電圧との関係を用いて、前記被測定流体の流量を測定する際に前記電極で取得した起電力に基づく信号を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記診断は、あらかじめ設定された電極抵抗の電流特性に基づいて、前記基準電極抵抗を補正して、前記理論上の電圧を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記一対の電極で取得した信号の差分を演算する差動増幅部をさらに備え、
前記診断部は、前記電極毎の前記理論上の電圧の差分と、前記差動増幅部の出力とに基づいて、第2の自己診断を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定管内を流れる被測定流体に磁界をかけ、起電力を測定することで被測定流体の流量を測定する電磁流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用して導電性の流体の流量を測定する電磁流量計が知られている。電磁流量計は、直交方向に磁界がかけられた測定管内に被測定流体を流し、発生した起電力を測定管内に取り付けられた一対の検出電極を用いて測定する。この起電力は、被測定流体の流速に比例するため、測定値に基づいて被測定流体の体積流量を得ることができる。
【0003】
電磁流量計では、検出電極に絶縁物等の汚れが付着すると測定誤差を招き、測定精度に悪影響を与えるため、検出電極に付着した汚れの度合いを自己診断することが行なわれている。図9は、検出電極に付着した汚れの度合いを検出する機能を備えた従来の電磁流量計400の構成を説明するブロック図である。
【0004】
まず、電磁流量計400における流量測定について説明する。本例では、測定管500を流れる導電性の被測定流体の流量を測定するものとする。
【0005】
測定管500には、一対の検出電極として電極A410a、電極B410bが取り付けられており、測定管500外部の近傍に励磁コイル414が配置されている。励磁コイル414は、励磁回路440が出力する励磁電流により磁界を生成する。励磁コイル414が生成する磁界、電極A410aおよび電極B410bの起電力検出方向、測定管500の流路方向は互いに直交するように構成されている。
【0006】
励磁回路440が出力する励磁電流は、ゼロ点を安定させるとともに、耐ノイズ性、高速応答性を高めるために、図10(a)に示すような短周期のパルスと長周期のパルスとを重畳した2周波励磁波形としている。なお、2周波励磁波形で説明したが、単周波またはそれと同等の波形であってもよい。
【0007】
励磁コイル414が生成する磁界によって測定管内で発生した起電力は、電極A410a、電極B410bで検出され、それぞれバッファA420a、バッファB420bを介して差動増幅部421に入力され、差分が流量信号として取り出される。このとき、差動増幅部421のコモン電位と被測定流体の電位とを同一にするため、測定管500にはアースリング等のアース電極412が取り付けられている。
【0008】
差動増幅部421が出力する流量信号は、図示しないA/D変換器によりディジタル変換される。そして、制御部430の流量算出部431に入力され、流量信号に基づいて被測定流体の流量が演算される。
【0009】
次に、従来の電磁流量計400における電極付着診断について説明する。図9に示すように、電極A410a、電極B410bとアース電極412との間には、接液抵抗である抵抗R、抵抗Rが存在する。抵抗R、抵抗Rの値は、付着物の影響により変化するため、これらの抵抗値を測定することにより電極A410a、電極B410bに付着した汚れの度合いを検出することができる。
【0010】
このため、制御部430の電極付着診断部432は、検査信号発生部422を用いて、電極A410a、電極B410bからアース電極412に対して、極微量の矩形波電流を検査信号として流す。この検査信号によって抵抗R、抵抗Rで発生した電圧は、それぞれバッファA420a、バッファB420bを介して接続された診断信号測定部423で測定される。そして、制御部430の電極付着診断部432において抵抗R、抵抗Rが算出され、算出された抵抗値に基づいて電極A410a、電極B410bに付着した汚れの度合いが診断される。また、算出された抵抗値に基づいて被測定流体の導電率測定や、測定管500の空検知も行なわれている。
【0011】
なお、矩形波の検査信号は流量演算に影響しないように設定されている。具体的には、図10(b)に示すように、励磁波形の周期が検査信号の周期の偶数倍となるようにして、正励磁の期間と負励磁の期間とで検査信号の影響がキャンセルされるようにしている。ただし、図10(c)に示すように、励磁波形の周期が検査信号の周期の奇数倍となるようにして、流量信号のサンプリング期間を検査信号の積分値がゼロになるようなタイミングとすることで検査信号の影響をキャンセルするようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−97986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、従来から電極抵抗を測定して、電極の汚れを自己診断することが行なわれており、また、電極抵抗に基づいて被測定流体の導電率測定や測定管500の空検知も行なわれているが、さらに、電極抵抗に基づいて電磁流量計の他の自己診断を行なうことができれば、電磁流量計の付加価値や信頼性が一層高まることになる。
【0014】
そこで、本発明は、電極抵抗を用いた電磁流量計の自己診断機能を多様化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の電磁流量計は、励磁電流を励磁コイルに印加し、測定管内を流れる被測定流体の起電力に基づく信号を一対の電極で取得して前記被測定流体の流量を測定する電磁流量計であって、前記電極に検査信号電流を印加する検査信号発生部と、前記電極に生じる電圧のうち、前記検査信号に基づく電圧を測定する診断信号測定部と、基準となる検査信号電流と、そのときに前記診断信号測定部で測定された電圧とに基づいて基準電極抵抗を求め、検査信号電流を変化させて得られる、前記診断信号測定部で測定された電圧と、前記基準電極抵抗から算出される理論上の電圧とに基づいて、自己診断を行なう診断部とを備えることを特徴とする。
ここで、前記診断部が行なう自己診断は、前記診断信号測定部で測定された電圧の線形性の評価とすることができる。
また、前記診断部は、検査信号電流を変化させて得られる、前記診断信号測定部で測定された電圧と、前記基準電極抵抗から算出される理論上の電圧との関係を用いて、前記被測定流体の流量を測定する際に前記電極で取得した起電力に基づく信号を補正することができる。
また、前記診断は、あらかじめ設定された電極抵抗の電流特性に基づいて、前記基準電極抵抗を補正して、前記理論上の電圧を算出するようにしてもよい。
また、前記一対の電極で取得した信号の差分を演算する差動増幅部をさらに備え、前記診断部は、前記電極毎の前記理論上の電圧の差分と、前記差動増幅部の出力とに基づいて、第2の自己診断を行なうようにしてもよい。



【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極抵抗を用いた電磁流量計の自己診断機能が多様化される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る電磁流量計の構成を示すブロック図である。
図2】電極抵抗を利用した自己診断の手順を示すフローチャートである。
図3】電流値毎に記録された測定電圧と理論電圧に基づくグラフ例である。
図4】測定電圧値と理論電圧値との差の許容範囲を説明する図である。
図5】測定電圧と理論電圧に基づく補正曲線を説明する図である。
図6】電極抵抗が電流特性を有する場合の処理を説明する図である。
図7】第2の診断手順を示すフローチャートである。
図8】差動増幅部出力の測定値と理論値とを説明する図である。
図9】従来の電磁流量計の構成を説明するブロック図である。
図10】励磁波形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電磁流量計100の構成を示すブロック図である。本図に示すように、電磁流量計100は、電極A110a、電極B110b、励磁コイル114、バッファA120a、バッファB120b、差動増幅部121、検査信号発生部122、診断信号測定部123、制御部130、励磁回路140を備えており、測定管500を流れる導電性の被測定流体の流量を測定する。
【0019】
制御部130は、流量算出部131、診断部132を備えており、CPU等の演算処理装置を用いて構成することができる。また、診断部132は、電流制御部133、抵抗演算部134、記録部135、評価部136を備えている。
【0020】
電極A110a、電極B110bは、検出電極として測定管500に取り付けられており、励磁コイル114は、測定管500外の近傍に配置されている。また、測定管500にはアースリング等のアース電極112が取り付けられている。励磁コイル114は、励磁回路140が出力する励磁電流により磁界を生成する。励磁コイル114が生成する磁界、電極A110aおよび電極B110bの起電力検出方向、測定管500の流路方向は互いに直交するように構成されている。
【0021】
励磁回路140が出力する励磁電流は、従来と同様に正励磁期間負励磁期間を有する電流であり、短周期のパルスと長周期のパルスとを重畳した2周波励磁波形としている。なお、単周波またはそれと同等の波形であってもよい。
【0022】
電磁流量計100が測定管500を流れる被測定流体の流量を測定する基本的な手順は従来と同様とすることができる。すなわち、励磁コイル114が生成する磁界によって測定管内で発生した起電力は、電極A110a、電極B110bで検出され、それぞれバッファA120a、バッファB120bを介して差動増幅部121に入力され、差分が流量信号として取り出される。
【0023】
差動増幅部121が出力する流量信号は、図示しないA/D変換器によりディジタル変換された後、制御部130の流量算出部131に入力され、流量信号に基づいて被測定流体の流量が演算される。
【0024】
また、電磁流量計100は、電極抵抗を利用した電磁流量計の自己診断を行なうために、検査信号発生部122が電極A110a、電極B110bからアース電極112に対して、電流制御部133が設定する値の矩形波電流を検査信号として流す。本実施形態においては、検査信号の電流値が可変となっており、電流制御部133により任意の値が設定可能となっている。
【0025】
この検査信号によって電極A110a、電極B110bとアース電極112との間に存在する接液抵抗である抵抗R、抵抗Rで発生した電圧は、それぞれバッファA120a、バッファB120bを介して接続された診断信号測定部123で測定される。また、抵抗R、抵抗Rで発生した電圧の差分は差動増幅部121でも取り出される。
【0026】
そして、検査信号の電流値と診断信号測定部123で測定された電圧値に基づいて、制御部430の抵抗演算部134において抵抗R、抵抗Rの値が算出される。本実施形態では、さらに、算出された抵抗値を用いて、診断部132が電磁流量計100の自己診断を行ない、必要に応じて、流量測定時の測定電圧補正等を行なう。
【0027】
図2は、電極抵抗を利用した自己診断の手順を示すフローチャートである。自己診断は、流量測定と同時に行なうことができる。自己診断を流量測定と同時に行なう場合(オンライン)には、検査信号の周期が流量演算に影響しないように設定する。具体的には、励磁波形の周期が検査信号の周期の偶数倍となるようにして、正励磁の期間と負励磁の期間とで検査信号の影響がキャンセルされるようにする。あるいは、励磁波形の周期が検査信号の周期の奇数倍となるようにして、流量信号のサンプリング期間を検査信号の積分値がゼロになるようなタイミングとすることで検査信号の影響をキャンセルするようにしてもよい。
【0028】
自己診断を流量測定と同時に行なわない場合(オフライン)には、検査信号の周期は任意に定めることができる。例えば、励磁波形の周期と同じ周期としてもよい。この場合、より実態に則した状態で自己診断を行なうことができる。
【0029】
自己診断の開始において、電流制御部133が基準電流値を設定する(S101)。基準電流値は、任意の電流値とすることができ、あらかじめ定めておくようにする。
【0030】
そして、検査信号発生部122が、電極A110a、電極B110bのそれぞれに基準電流値で検査信号を出力し(S102)、診断信号測定部123が、電極A110a、電極B110bの電圧を測定する(S103)。なお、電極A110a、電極B110bに対する測定は同時に行なってもよいし、交互に行なうようにしてもよい。
【0031】
基準電流値での電圧を測定すると、抵抗演算部134が、基準電流値と電極A110a、電極B110bで測定された電圧とに基づいて、抵抗R、抵抗Rの値を算出する(S104)。この値を基準抵抗値と称する。
【0032】
基準抵抗値を取得すると、電流制御部133が電流値を基準電流値から変更する(S105)。電流値の変更は、例えば、所定範囲を一定間隔で網羅できるように設定する。
【0033】
そして、検査信号発生部122が、変更された電流値で、電極A110a、電極B110bのそれぞれに検査信号を出力し(S106)、診断信号測定部123が、電極A110a、電極B110bの電圧を測定する。(S107)。
【0034】
診断信号測定部123による実際の電圧測定と並行して、診断部132は、検査信号の電流値と、基準抵抗値とに基づいて、理論上得られる電圧値を算出する(S108)。記録部135は、測定された電圧値と理論上の電圧値とを電流値とともに、制御部130内部あるいは外部の記憶領域に記録する(S109)。このとき、差動増幅部121の出力値も併せて記録するようにしてもよい。この場合は、電極A110a、電極B110bに対する測定は同時に行なうようにする。また、各測定は、電極A110a、電極B110b、差動増幅部121の出力をそれぞれ組み合わせたり、単独で、図2に示す診断を行なってもよい。
【0035】
診断部132の各ブロックは、以上の処理を、電流値を変化させて繰り返す(S110)。そして、所定範囲の電流値で測定電圧と理論電圧とを記録し終えると、評価部136が、記録した測定電圧と理論電圧とを用いて診断を実行する(S111)。
【0036】
電流値毎に記録された測定電圧値と理論電圧値は、例えば、図3に示すようなグラフで表わされる。本図の例では、理論電圧値が電流値×基準抵抗値で示される直線で表わされるのに対し、測定電圧値は多少のブレを含んで表わされている。
【0037】
測定電圧値の線は、例えば、電極110からバッファ120に至る経路の線形性を示すため、ブレは少ない方が好ましい。このため、評価部136は、第1の診断として、図4に示すように、理論電圧値から所定の許容範囲を定め、許容範囲内に測定電圧値が収まっているかを判定する。この結果、測定電圧値が許容範囲外であれば、電極110からバッファ120に至る経路の線形性に問題があるとして、例えば、アラームを発生させる。
【0038】
さらに、理論電圧と測定電圧との差に基づいて、差動増幅部121に入力される電極A110a、電極B110bからの電圧値を補正するようにしてもよい。例えば、測定電圧値が3.2Vのとき、理論電圧値が3.0Vであれば、差動増幅部121に3.2Vが入力された際に、3.0Vに補正する。これは、流量測定時において、差動増幅部121に3.2Vを示す信号が入力されている場合、実際の電極110では3.0Vが生じていると想定されるためである。
【0039】
この補正は、例えば、図5(a)に示すような理論電圧特性と測定電圧特性が得られている場合、測定電圧毎に、そのときの理論電圧値を対応付けて図5(b)に示すような補正曲線を作成すればよい。本図では、補正前電圧が測定電圧に対応し、補正後電圧が理論電圧に対応している。この補正は、差動増幅部121の入力段において電極毎に行なうようにする。
【0040】
第1の診断では、抵抗R、抵抗Rの値が基準抵抗で一定であることを前提としているが、抵抗R、抵抗Rは、付着物の影響を含んだ接液抵抗であるため、検査信号の電流値によって変化する場合もあり得る。
【0041】
このような場合、基準抵抗値をさらに補正して電流値毎の理論電圧値を算出するようにしてもよい。例えば、電極抵抗が図6(a)に示すような電流特性を有することがあらかじめ分かっている場合には、図6(b)に示すように、理論電圧を、基準抵抗値ではなく、基準抵抗値を電流特性で補正した値を用いて算出して、補正後理論電圧値とする。
【0042】
補正後の理論電圧値を算出した場合も、第1の診断と同様に、理論電圧値から所定の許容範囲を定め、許容範囲内に測定電圧値が収まっているかを判定することができる。そして、測定電圧値が許容範囲外であれば、線形性に問題があるとして、例えば、アラームを発生させることができる。
【0043】
また、図6(c)に示すように、測定電圧毎に、そのときの補正後理論電圧値を対応付けて補正曲線を作成し、差動増幅部121に入力される電極A110a、電極B110bからの電圧値を補正するようにしてもよい。この補正も、流量測定の際に実際に電極110で生じている電圧と、差動増幅部121に入力される信号が示す電圧との差を修正するためである。
【0044】
また、本実施形態において、評価部136は、第2の診断として、差動増幅部121の線形性診断を行なうことができる。差動増幅部121の線形性診断は、差動増幅部121の出力値と理論値とを比較するため、励磁波形による起電力の影響を除く必要がある。このため、オフラインで取得した差動増幅部121の出力値を用いて行なうようにする。ただし、サンプリング方式等により、差動増幅部121の出力値から、検査信号に基づく出力値を分離できる場合は、オンラインで取得した差動増幅部121の出力値を用いて行なうこともできる。
【0045】
第2の診断は、例えば、図7のフローチャートに示す手順で行なうことができる。まず、図2に示した手順で作成した電極A110a、電極B110b毎の理論電圧特性を取得する(S201)。理論電圧特性は、図3に示したような直線であってもよいし、図6(b)に示したように補正を行なったものであってもよい。
【0046】
次に、電極A110a、電極B110b毎の理論電圧特性に基づいて、差動増幅部121の理論出力値を作成する(S202)。理論出力値は、電極A110aの理論電圧値から電極B110bの理論電圧値を電流値毎に減じ、増幅度を乗じればよい。そして、図7のフローチャートに示す手順の処理(S109)で記録した差動増幅部121の実際の出力値と比較し、診断する(S203)。
【0047】
差動増幅部121の理論出力値と測定値との比較、診断は、例えば、図8に示すように、理論出力値と測定値とをプロットしたグラフにおいて、理論出力値から所定の許容範囲を定め、許容範囲内に測定値が収まっているかを判定することで行なう。この結果、測定値が許容範囲外であれば、差動増幅部121の線形性に問題があるとして、例えば、アラームを発生させるようにする。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の電磁流量計100は、検査信号の電流を可変として、理論的に得られる値と実際の測定値とを比較することにより、従来よりも多様化した自己診断機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…電磁流量計、110…電極、111…励磁コイル、112…アース電極、114…励磁コイル、120…バッファ、121…差動増幅部、122…検査信号発生部、123…診断信号測定部、130…制御部、131…流量算出部、132…診断部、133…電流制御部、134…抵抗演算部、135…記録部、136…評価部、140…励磁回路、400…電磁流量計、410…電極、412…アース電極、414…励磁コイル、421…差動増幅部、422…検査信号発生部、423…診断信号測定部、430…制御部、431…流量算出部、432…電極付着診断部、440…励磁回路、500…測定管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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