(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について説明すると、
図1は物品としての袋状容器1を処理する物品処理装置2を示しており、上記袋状容器1を収容するとともに当該袋状容器1を殺菌する殺菌チャンバー3と、当該殺菌チャンバー3に隣接して設けられてその内部で上記袋状容器1に対して所要の作業を行う作業チャンバー4とを備えている。
上記袋状容器1は略封筒状の容器となっており、その内部にはあらかじめ滅菌されたバイアルが収容され、上記殺菌チャンバー3において上記袋状容器1の外面を殺菌した後、上記作業チャンバー4の内部で作業者が開封するようになっている。
【0009】
上記殺菌チャンバー3は、内部空間が外気より区画されたハウジング11と、上記ハウジング11の内部に設けられて袋状容器1を上記作業チャンバー4へと搬送する搬送手段12と、処理媒体としての過酸化水素蒸気をハウジング11の内部に供給する処理媒体供給手段13とから構成されている。
上記ハウジング11は、破線で示すハッチ14によって図示正面側の側面を開放することが可能となっており、このハッチ14を開放した状態で、袋状容器1を上記搬送手段12に人手によって供給するようになっている。
またハウジング11の図示左方端には、上記作業チャンバー4の内部空間に連通する連通口11aと、当該連通口11aを開閉する開閉扉15とが設けられており、この開閉扉15は上記作業チャンバー4の内部に向けて開くようになっている。
【0010】
上記搬送手段12は、無端状に設けられたチェーンコンベヤ21と、当該チェーンコンベヤ21に設けられて上記袋状容器1を下方から支持する支持部材22と、当該支持部材22に設けられて袋状容器1を側方より支持するガイドプレート23と、上記支持部材22上の物品を上記ガイドプレート23に沿って摺動させる移動手段24とを備えている。
本実施例の搬送手段12は、
図3に示すように、チェーンコンベヤ21を平行に備えており、上記袋状容器1を2列で搬送可能となっている。また各組のチェーンコンベヤ21はそれぞれ平行に設けられた2本のチェーン21aを備えている。
図1に示すように、上記チェーン21aの両端にはスプロケット21b、21cが設けられており、このうち図示右方のスプロケット21bは上記4列のチェーン21aを横断するように設けられるとともに、ハウジング11の外部に設けられたモータ25とベルト26を介して連結されている。
上記モータ25は制御手段27によって制御されるとともに、上記作業チャンバー4の下方に設けられたフットスイッチ28によって操作可能となっており、制御手段27の制御によってモータ25がスプロケット21bを回転させると、上記4列のチェーン21aが同期して作動するようになっている。
【0011】
また上記チェーンコンベヤ21における上面側は上記袋状容器1を搬送する搬送面を形成しており、当該搬送面には上記チェーン21aの内周側に設けられて当該チェーン21aを下方から支持する支持板29が設けられている。
またチェーンコンベヤ21の上方には、搬送方向に沿ってガイドバー30が設けられており、
図3に示すようにチェーンコンベヤ21によって搬送される袋状容器1の横転を防止するようになっている。
上記支持部材22は、
図2に示すように各チェーン21aの外周に固定されており、支持部材22が上記搬送面に位置する際には上記支持板29によって下方から支持される。
また、
図3に示すように、各組のチェーンコンベヤ21において、支持部材22と支持部材22との間には所要の隙間が形成され、この隙間から上記移動手段が突出するようになっている。
さらに本実施例では、
図1に示す状態のように、支持部材22は搬送面の上流端から下流端にかけて設けられ、チェーンコンベヤ21の下面側には設けられていない。
このため、上記ハウジング11のハッチ14を開放して袋状容器1を収納する際には、支持部材22が搬送面上に位置するようにチェーンコンベヤ21が作動するようなっている。
【0012】
上記ガイドプレート23は、
図3に示すように上記チェーンコンベヤ21を構成する4列のチェーン21aを横断し、上記4つの支持部材22のそれぞれに固定されており、2列で搬送される袋状容器1を一つのガイドプレート23によって支持するようになっている。
また
図1、
図2に示すように、ガイドプレート23はその上端が下端よりも上記搬送面の下流側に位置するように傾斜しており、上記袋状容器1を斜めに傾斜した状態で側方から支持するようになっている。
図3に示すように、上記ガイドプレート23は複数の直線状の線状部材23aによって構成されており、これら複数の線状部材23aによって囲繞された部分には穴23bが形成されている。
上記ガイドプレート23を構成する全ての線状部材23aは、図示上下方向、すなわち上記移動手段24による袋状容器1の移動方向とは平行にならないよう、上下方向に対して交差する方向に配置されている。
【0013】
上記移動手段24は、上記チェーンコンベヤ21の搬送面の下方に設けられ、上記支持板29と略同じ長さに設けられた押圧部材31と、当該押圧部材31を昇降させるエアシリンダ32とから構成されている。
上記押圧部材31は、
図1に示すように上記チェーンコンベヤ21の搬送面に沿って略3等分に分割された状態で整列し、かつ
図3に示すように上記2組のチェーンコンベヤ21に設けられた支持部材22と支持部材22との間に設けられている。
上記エアシリンダ32は各押圧部材31に設けられており、また
図1に示すように押圧部材31の下方にはスライド部材31aが固定され、当該スライド部材31aはハウジング11の内部に固定されたスライドガイド33に沿って上下に移動可能となっている。
そして上記押圧部材31は、
図3に示すようにエアシリンダ32によって上記支持部材22の上面よりも下方に退避した下降位置(
図3左側)と、支持部材22の上面よりも上方に突出した上昇位置(
図3右側)との間で昇降するようになっている。
上記押圧部材31が上記下降位置に位置した状態では、上記押圧部材31は、袋状容器1が上記支持部材22に支持された移動前位置に位置するようになっており、押圧部材31を上昇位置に位置させると、押圧部材31が袋状容器1を下方から押圧して、支持部材22から上方に離隔した移動後位置に位置させるようになっている。
【0014】
上記処理媒体供給手段13は、ハウジング11の天井部分に複数の噴霧ノズル13aを備えており、この噴霧ノズル13aより過酸化水素蒸気を噴射して、ハウジング11内に充満させるようになっている。
密閉されたハウジング11内に袋状容器1を収容し、その状態で過酸化水素蒸気をハウジング11に充満させると、この過酸化水素蒸気が袋状容器1の表面に付着し、袋状容器1が殺菌されるようになっている。
また上記過酸化水素蒸気をハウジング11内に充満させて殺菌を行った後には、ハウジング11の内部はエアレーションによって換気されるようになっている。
【0015】
作業チャンバー4は、上記殺菌チャンバー3のハウジング11に隣接して設けられており、図示しない処理媒体供給手段によってその内部は除染された状態に維持されている。
また作業チャンバー4には、上記搬送手段12が搬送した袋状容器1が供給されるテーブル41と、作業者が装着して使用するグローブ42と、上記テーブル41に隣接されて設けられた搬送コンベヤ43とが設けられている。
上記テーブル41は作業チャンバー4の図示右方に形成された連通口11aに隣接した位置に設けられており、また上記殺菌チャンバー3における搬送手段12の搬送面よりも下方に位置している。
このため、上記搬送手段12の下流端まで搬送された袋状容器1は、上記支持部材22から落下して上記テーブル41の上面に供給されるようになっている。
作業者は上記グローブ42を装着することにより、上記連通口11aに設けられた開閉扉15を開放したり、上記テーブル41上で上記袋状容器1やその内部のバイアルに対して所要の作業を行うようになっている。
また作業チャンバー4の外部には、上記グローブ42の設けられた位置の下方に、作業者が上記搬送手段12を操作するための上記フットスイッチ28が設けられている。
上記搬送コンベヤ43には、作業者が手作業により作業の終了したバイアルを載置するようになっており、搬送コンベヤ43はこのバイアルを図示しない下流の工程へと搬送するようになっている。
【0016】
以下、上記構成を有する物品処理装置2の動作について説明すると、最初に、上記殺菌チャンバー3のハッチ14を開放し、ハウジング11の内部に殺菌前の袋状容器1を収容する。
その際、上記搬送手段12では、あらかじめ搬送面の上流端から下流端にかけて上記支持部材22が整列しており、作業者はこの支持部材22にそれぞれ袋状容器1を載置し、各袋状容器1は上記ガイドプレート23によって側方から支持される。
袋状容器1の収容が完了して上記ハッチ14が閉鎖されると、上記処理媒体供給手段13がハウジング11の内部に過酸化水素蒸気を充満させ、この過酸化水素蒸気が袋状容器1の表面に付着する。
【0017】
ここで、上記袋状容器1をハウジング11に収容すると、袋状容器1は上記支持部材22に支持されるとともに上記ガイドプレート23によって側方から支持され、また上記移動手段24の押圧部材31は下降位置に位置しており、袋状容器1は上記移動前位置に位置している(
図3左側)。
このように袋状容器1が移動前位置に位置している状態において、袋状容器1の下端部における支持部材22と支持部材22との間の隙間に位置する部分は、上記押圧部材31が下方に退避して隙間が形成されているため、過酸化水素蒸気が付着して殺菌されるようになっている。
これと同様、上記袋状容器1におけるガイドプレート23によって支持された部分のうち、上記棒状部材によって囲繞された上記穴23bに一致する部分は、ハウジング11の内部空間に露出しているため、過酸化水素蒸気が付着して殺菌されるようになっている。
しかしながら、上記移動前位置において、袋状容器1の下端部のうち、上記支持部材22に接触した接触部分C(図示ハッチング部分)と、上記袋状容器1におけるガイドプレート23の線状部材23aが接触した接触部分Cとは、ハウジング11の内部空間に露出しておらず、過酸化水素蒸気が付着しないこととなる。
【0018】
このように、袋状容器1が移動前位置に位置した際、上記接触部分Cには過酸化水素蒸気が付着せず、当該接触部分Cの殺菌を行えないことから、本実施例では以下のようにして上記接触部分Cの殺菌を行う。
まず、上記袋状容器1を上記移動前位置に位置させた状態で所定時間維持し、上記袋状容器1における上記接触部分C以外の部分の殺菌を行い、その後上記移動手段24が作動して、上記押圧部材31を下降位置から上昇位置へと上昇させる(
図3の図示右側)。
これにより、上記袋状容器1の下方に離隔していた押圧部材31が上記エアシリンダ32によって上昇し、押圧部材31が袋状容器1を押圧して上記移動後位置へと移動させ、その際袋状容器1はガイドプレート23に沿って斜め上方に摺動する(
図2参照)。
このようにして袋状容器1を移動後位置へ移動させると、袋状容器1の下端部では、上記支持部材22に接触していた接触部分Cが上記支持部材22から離隔し、ハウジング11の内部に露出することとなる。
これと同様、袋状容器1における上記ガイドプレート23との接触部分Cは、
図3の右側に示すようにガイドプレート23に沿って上方に移動することから、当該接触部分Cが当該ガイドプレート23と接触しないようになり、上記穴23bの位置でハウジング11の内部空間に露出することとなる。
具体的には、ガイドプレート23の線状部材23aは複数の直線状の線状部材23aによって構成され、かつ上記線状部材23aを上記移動手段24の移動方向である上下方向を向かないように設けたことで、袋状容器1がガイドプレート23に沿って下方から上方に移動すると、上記接触部分Cが線状部材23aによって囲繞された穴23bに位置するようになっている。
【0019】
そして、上記移動手段24はこの袋状容器1を移動後位置に位置させた状態を所定時間維持し、上記接触部分Cに過酸化水素蒸気を付着させて当該部分を殺菌する。
一方、袋状容器1が移動後位置に位置すると、袋状容器1の下端部には上記押圧部材31が接触するが、当該部分は袋状容器1が移動前位置に位置した際にこれらの間に隙間が形成されていたため、当該部分はすでにハウジング11の内部空間に露出して殺菌が完了した部分となっている。
これと同様、移動後位置において上記袋状容器1における上記ガイドプレート23の線状部材23aと接触する部分も、移動前位置においてハウジング11の内部空間に露出していた部分であることから、殺菌が完了した部分となっている。
このように、上記移動手段24によって袋状容器1を移動後位置に位置させることで、それまでハウジング11の内部空間に露出していなかった上記接触部分Cをハウジング11の内部空間に露出させることができ、袋状容器1の全体を殺菌することが可能となっている。
なお、殺菌チャンバー3において上記移動手段24により袋状容器1を複数回移動させてもよく、その際上記袋状容器1の移動後位置の高さを異ならせることで、より確実に上記接触部分Cの殺菌を行うことができる。
【0020】
このようにして袋状容器1を移動前位置から移動後位置に位置させて、袋状容器1の全体の殺菌を行ったら、殺菌チャンバー3においてエアレーションを行って過酸化水素蒸気を排出する。
エアレーション終了後、作業者は作業チャンバー4に設けたグローブ42を装着して上記開閉扉15を開放し、上記殺菌チャンバー3と作業チャンバー4とを連通口11aを介して連通させる。
続いて、作業者は上記フットスイッチ28を操作し、これにより上記搬送手段12のチェーンコンベヤ21が支持部材22の1ピッチ分だけ作動し、これにより搬送面の下流端に位置した支持部材22が上記スプロケット21cの外周に沿って下面側へと移動を開始する。
上記支持部材22の上面はスプロケット21cの外周に沿って傾斜し、これに伴ってガイドプレート23が水平状態を超えて下方に向けて傾斜すると、袋状容器1はガイドプレート23に沿って摺動しながら落下し、上記作業チャンバー4内に設けられたテーブル41上に落下する。
【0021】
このようにしてテーブル41上に袋状容器1が落下すると、上記グローブ42を装着した作業者が袋状容器1を開封して内部のバイアルを取り出す。このようにして取り出したバイアルは、作業者によって上記搬送コンベヤ43上に載置され、その後当該搬送コンベヤ43によって後工程へと搬送される。
そして一つの袋状容器1に対して作業が終了すると、作業者は再度上記フットスイッチ28を操作して、新たな袋状容器1をテーブル41上に落下させ、上記作業を繰り返す。
【0022】
なお、上記実施例ではチェーンコンベヤ21に上記支持部材22を固定し、当該支持部材22に上記ガイドプレート23を固定する構成となっているが、その他の構成も考えられる。
第1の他の構成として、上記チェーンコンベヤ21を支持部材22を無端状に連結したいわゆるトップチェーンの構成として、チェーンコンベヤ21と支持部材22とを一体的に構成し、所要の支持部材22に上記ガイドプレート23を固定するようにしてもよい。
第2の他の構成として、上記ガイドプレート23を上記実施例に示すような構成とせず、2列のチェーンコンベヤ21に設けられた2組の支持部材22のそれぞれに設けてもよい。
第3には、上記実施例に対して上記支持部材22よりガイドプレート23を除去し、代わりに上記支持部材22を備えたチェーンコンベヤ21の上方に、支持部材22と同じ間隔でガイドプレート23を下方に向けた状態で移動させる第2のチェーンコンベヤを設け、上記支持部材22の下方より上記移動手段24が袋状容器1を移動させて、袋状容器1を上記ガイドプレート23に沿って摺動させる構成としてもよい。
また、上記ガイドプレート23における上記線状部材23の配置も
図3の構成に限られず、各線状部材23の方向が上記移動手段24による袋状容器1の移動方向に対して交差する方向に設けられていればよい。
また上記移動手段24は、袋状容器1を下方から押圧して昇降させる構成に限らず、袋状容器1の左右に押圧部材を設けて、当該袋状容器1を水平方向に押圧して移動前位置と移動後位置との間で移動させるようにしてもよい。
そして、上記処理媒体としては、上記過酸化水素蒸気のほか、液体の洗浄液やガスであってもよく、上記物品処理装置2を物品を殺菌する用途のほか、洗浄の用途にも用いることができる。