特許第6135928号(P6135928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135928
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】装飾部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B60R13/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-218168(P2013-218168)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-80951(P2015-80951A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 啓行
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 敏久
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069132(JP,A)
【文献】 実開平01−157049(JP,U)
【文献】 特開2013−154670(JP,A)
【文献】 特開2009−120120(JP,A)
【文献】 特開昭62−236800(JP,A)
【文献】 特開2009−255326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/00 − 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から視認される視認表面と、該視認表面と反対側の加飾表面と、を一体にもつ透明樹脂基体を有し、
該加飾表面には、該視認表面側から見たときにレンズ作用を有する凹凸からなる第一レンズ部と、該視認表面から視認され該第一レンズ部とは異なるレンズ作用を有する第二凹凸からなる第二レンズ部をもつ意匠部と、を有し、
該第二レンズ部の該第二凹凸は、該第一レンズ部の凹凸を反転させた逆位相をなす装飾部材。
【請求項2】
外部から視認される視認表面と、該視認表面と反対側の加飾表面と、を一体にもつ透明樹脂基体を有し、
該加飾表面には、該視認表面側から見たときにレンズ作用を有する凹凸からなる第一レンズ部と、該視認表面から視認され該第一レンズ部とは異なるレンズ作用を有する第二凹凸からなる第二レンズ部をもつ意匠部と、を有し、
該第二凹凸の表面には干渉色を呈するピッチ10μm以下の周期的凹凸部からなる第二加工面が形成されている装飾部材。
【請求項3】
前記第二レンズ部の前記第二凹凸は、前記第一レンズ部の凹凸を反転させた逆位相をなす請求項2に記載の装飾部材。
【請求項4】
前記周期的凹凸部の深さは0.1μm〜5μmである請求項2又は3に記載の装飾部材。
【請求項5】
前記第一レンズ部と、前記意匠部の表面には互いに異なる加飾層を有する請求項1〜4の何れか一項に記載の装飾部材。
【請求項6】
前記加飾層は、無加飾層、着色層及び金属光沢を有する光輝層から選ばれる請求項5に記載の装飾部材。
【請求項7】
前記意匠部の表面は鏡面加工されている請求項1〜4の何れか一項に記載の装飾部材。
【請求項8】
前記意匠部の表面は表面粗さ(Rz)が200nm以下である請求項7に記載の装飾部材。
【請求項9】
前記第一レンズ部及び前記第二レンズ部は、フレネルレンズからなる請求項1〜8の何れか一項に記載の装飾部材。
【請求項10】
前記第一レンズ部の前記凹凸及び前記第二レンズ部の前記第二凹凸は、それぞれピッチ100μm以下の凹凸からなる請求項9に記載の装飾部材。
【請求項11】
前記意匠部は前記加飾表面に互いに間隔を隔てて複数個形成され、それぞれの意匠部の周囲に前記レンズ部が形成されている請求項1〜10の何れか一項に記載の装飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、家電製品、携帯電話などに用いられるロゴマーク、オーナメント、エンブレムなどに利用できる透明樹脂製の装飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、メーカーのマーク、車種などを表すオーナメント、エンブレム、フロントグリルガーニッシュなどの装飾部材が用いられている。これらの装飾部材は一般に透明樹脂基材から形成され、背景部の中に光輝部が浮き上がって表出する意匠とされる場合が多い。
【0003】
例えば特開2001−107256号公報には、透明樹脂基材の表面に規則的な凹凸部を形成し、その表面にプライマ層を介して金属層を積層してなる積層品が提案されている。この積層品においては、透明樹脂基材の表面に対して所定角度で見た場合に、金属層の金属光沢と凹凸部における干渉色とが視認される。しかしながら同公報に記載の積層品では、金属光沢と干渉色との色差が小さいために、干渉の程度が弱い場合には十分な意匠が発現されなかった。
【0004】
そこで特開2009−120120号公報には、透明樹脂基体の意匠表面と反対側表面に形成された周期的凹凸部をもつ凹凸表面に、透明樹脂基体とは異なる光屈折率をもつ中間層を形成し、中間層の表面に着色層を形成した装飾部材が提案されている。この装飾部材によれば、周期的凹凸部のピッチと着色層の色調とを最適に選択することで、背景色と干渉色との色差を大きくすることができ、特有の意匠を発現させることができる。
【0005】
しかしながら干渉色を利用した装飾部材では、光量によって発色の程度が異なり、雨天時や夜間など光量が不足する場合には意匠性が低下するという問題がある。そこで特開2013−154670号公報には、外部から視認される意匠表面をもつ透明樹脂基体と、透明樹脂基体の意匠表面と反対側の裏面側に配置された背景層と、を有し、意匠表面と裏面との間又は裏面の表面には透明樹脂基体とは異なる光屈折率をもつ中間部材が配置され、中間部材の表面にはレンズ作用を有する凹凸表面が形成され、意匠表面から凹凸表面を介して背景層が視認される装飾部材が提案されている。
【0006】
特開2013−154670号公報に記載の装飾部材によれば、意匠表面からレンズ作用を有する凹凸表面を介して背景層が視認される。そして凹凸表面をもつ中間部材は透明樹脂基体とは異なる光屈折率を有するので、凹凸表面のレンズ作用によって拡大あるいは縮小された背景層を意匠表面から視認することができ、立体的な特異な意匠が発現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−107256号公報
【特許文献2】特開2009−120120号公報
【特許文献3】特開2013−154670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献3に記載の装飾部材においては、透明樹脂基体とは異なる光屈折率をもつ中間部材を必須とし、またレンズ作用を有する凹凸表面以外の表面には何も加工していなかったため、透明樹脂基体のみで特異な意匠を発現することは困難であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、レンズ作用を有する凹凸表面と、それ以外の表面である加工面との協働によって、透明樹脂基体のみでも新規で特異な意匠を発現できるようにすることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の装飾部材の特徴は、外部から視認される視認表面と、視認表面と反対側の加飾表面と、を一体にもつ透明樹脂基体を有し、加飾表面には、視認表面側から見たときにレンズ作用を有する凹凸からなる第一レンズ部と、視認表面から視認され第一レンズ部とは異なるレンズ作用を有する第二凹凸からなる第二レンズ部をもつ意匠部と、を有し、第二レンズ部の第二凹凸は、第一レンズ部の凹凸を反転させた逆位相をなすることにある。
【0011】
もう一つの発明の装飾部材の特徴は、外部から視認される視認表面と、視認表面と反対側の加飾表面と、を一体にもつ透明樹脂基体を有し、加飾表面には、視認表面側から見たときにレンズ作用を有する凹凸からなる第一レンズ部と、視認表面から視認され第一レンズ部とは異なるレンズ作用を有する第二凹凸からなる第二レンズ部をもつ意匠部と、を有し、第二凹凸の表面には干渉色を呈するピッチ10μm以下の周期的凹凸部からなる第二加工面が形成されていることにある。
【発明の効果】
【0013】
発明の装飾部材によれば、視認表面から視認したときに、第一レンズ部によるレンズ意匠と、第一レンズ部とは異なるレンズ作用を有する第二凹凸からなる第二レンズ部による意匠とが視認され、これら両者の意匠の協働によって透明樹脂基体のみでも新規で特異な意匠が発現される。したがって薄肉の装飾部材とすることができ、携帯電話などのロゴマークなどに好適に利用することができる。またレンズ部の凹凸のピッチを100μm以下とすれば、人の目視によってレンズ部の凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例に係る装飾部材の斜視図である。
図2図1のA−A断面図を示す。
図3図1のB−B断面図を示す。
図4】本発明の第二の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
図5】本発明の第三の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
図6】本発明の第四の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
図7】本発明の第五の実施例に係る装飾部材の要部拡大断面図を示す。
図8】本発明の第六の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
図9】本発明の第七の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
図10】本発明の第八の実施例に係る装飾部材の断面図を示し、図1のB−B断面相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の装飾部材は、透明樹脂基体を有する。透明樹脂基体は、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明性に優れた樹脂、あるいはポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニルなどの半透明樹脂から射出成形などで形成することができる。その厚さは特に制限されず、板状、フィルム状などとすることができる。
【0018】
透明樹脂基体は、外部から視認される視認表面と、視認表面と反対側の加飾表面と、を一体に備えている。視認表面は、平坦であってもよいし、曲面あるいは凹凸面などとしてもよく、装飾部材の用途に応じて種々選択することができる。視認表面からは、透明樹脂基体を通して加飾表面が視認される。
【0019】
加飾表面には、視認表面側から見たときにレンズ作用を有する凹凸からなるレンズ部と、視認表面から視認されレンズ部とは異なる加工面をもつ意匠部と、が形成されている。
【0020】
レンズ部は、レンズ作用を有する凹凸からなる。この凹凸によって構成されるレンズとしては、フレネルレンズ、回折レンズを例示することができる。フレネルレンズとしては、同心状フレネルレンズ、直線状フレネルレンズのどちらも用いることができる。また回折レンズとしては、レリーフ型回折レンズ、振幅型回折レンズなどがある。また凸レンズと凹レンズのどちらも採用できる。
【0021】
レンズ部の凹凸のピッチを100μm以下とすることが望ましい。このようにすることで、視認表面から見たときに一般の人の眼からはレンズ効果が視認されるのみであり、凹凸加工が視認されないので見栄えがよい。なおフレネルレンズの場合には、凹凸の深さ(高さ)は0.1μm〜90μm程度とすることができる。
【0022】
このレンズ部は、透明樹脂基体を形成後に切削加工、レーザー加工などで形成してもよいが、透明樹脂基体の成形用金型の型面にレンズ部の凹凸を反転した形状を精密加工しておき、透明樹脂基体の成形時に金型の型面を転写することで形成することが望ましい。
【0023】
加飾表面には、レンズ部とは異なる加工面をもつ意匠部が形成されている。この加工面としては、例えば表面粗さ(Rz)が200nm以下の鏡面とすることができる。このような鏡面とすることで、視認表面からみたときにレンズ部と意匠部との境界が明瞭となる特異な意匠が発現され、意匠部を明瞭に視認することができる。加工面を鏡面とするには、公知の研磨法を用いてもよいし、型面を鏡面とした金型を用いて透明樹脂基体の成形時に加工面を鏡面加工することもできる。視認表面から視認したときに、レンズ部によるレンズ意匠と、加工面の鏡面意匠とが視認され、これらの意匠の協働によって新規で特異な意匠が発現される。またレンズ部の凹凸のピッチを100μm以下とすれば、人の目視によってレンズ部の凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0024】
加工面として、干渉色を呈するピッチ10μm以下の周期的凹凸部を形成することも好ましい。このような加工面とすれば、干渉色によってレンズ部とは別に意匠部を明瞭に視認することができ、特異な意匠が発現される。加工面に周期的凹凸部を形成するには、レーザー加工など公知の方法を用いて加工してもよいし、型面に周期的凹凸部を形成した金型を用いて透明樹脂基体の成形時に加工面に周期的凹凸部を転写することもできる。
【0025】
なお周期的凹凸部はピッチが0.1μm〜4μmであることがより好ましい。ピッチが4μmを超えると、干渉色が弱すぎて、視認表面から見たときに意匠部が視認されにくくなる場合がある。
【0026】
また加工面として、レンズ部とは別のレンズ作用を奏する第二凹凸を形成することもできる。この第二凹凸は、例えばレンズ部の凹凸とピッチが異なるもの、あるいはレンズ部の凹凸が反転した逆位相をなすもの、などとすることができる。特にレンズ部の凹凸とは逆位相の第二凹凸を形成すれば、意匠部には立体感のある丸みを帯びた意匠が発現される。加工面として第二凹凸を形成するとともに、第二凹凸の表面に干渉色を呈するピッチ10μm以下の周期的凹凸部からなる第二加工面を形成することも好ましい。このようにすれば、レンズ部と意匠部の境界をより明瞭とすることができる。
【0027】
意匠部が互いに間隔を隔てた複数の文字からなるような意匠である場合などには、それぞれの意匠部の周囲にレンズ部が形成されているのが望ましい。このようにすることで、レンズ部の意匠の中に特異な意匠を発現する各意匠部を明瞭に視認することができる。
【0028】
レンズ部の表面及び/又は意匠部の表面には、加飾層を形成することも好ましい。加飾層としては、塗膜などからなる着色層、金属アルミニウムなどからなる光輝層などが例示される。着色層を透明着色層とし、着色層の表面に光輝層を形成することも好ましい。このようにすれば、着色層を通して光輝層を視認することができ、特異な意匠が発現される。加飾層を形成するには、塗装、化学めっき、蒸着、スパッタリングなど、公知の方法を採用することができる。
【0029】
なお意匠部の意匠をより明瞭とするには、レンズ部と意匠部とで互いに異なる加飾層を採用することが望ましい。加飾層の組み合わせは、上記加飾層から選択できる。例えば色調の異なる着色層どうしを組み合わせてもよいし、着色層と光輝層とを組み合わせてもよい。あるいは何も加飾しない無加飾層と、着色層又は光輝層とを組み合わせることもできる。視認表面から視認したときに、レンズ部によるレンズ意匠と、レンズ部とは異なる加工面の意匠と、互いに異なる加飾層とが視認され、これらの意匠の協働によって新規で特異な意匠が発現される。またレンズ部の凹凸のピッチを100μm以下とすれば、人の目視によってレンズ部の凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0030】
透明樹脂基体の意匠部及び又はレンズ部の表面と加飾層との間には、透明樹脂基体とは異なる光屈折率をもつ中間層を配置することもできる。PCの屈折率は1.49であり、PMMAの屈折率は1.41であるので、これらとは異なる屈折率をもつ材料を用いることが好ましい。例えば酸化チタン(TiO2)は屈折率が1.8程度であり、好適に用いることができる。またCOP(シクロオレフィン系ポリマ)も用いることができる。さらに、空気の屈折率は1.0であるので、場合によっては中間層を空気層とすることもできる。透明樹脂基体の屈折率と中間層の屈折率との差は0.05以上であることが望ましく、0.3以上であることがさらに望ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
図1に本実施例の装飾部材の斜視図を、図2図1のA−A断面図を、図3図1のB−B断面図を示す。この装飾部材は、ポリカーボネートから形成された厚さ数mmの短冊状の透明樹脂基体1からなる。透明樹脂基体1は中央部が厚い蒲鉾形状をなし、視認表面10と、視認表面10と反対側の加飾表面11とを有している。
【0033】
加飾表面11には直線状フレネルレンズを構成するレンズ部12と、ロゴ文字を構成する複数の意匠部13が形成されている。レンズ部12は、高さ0.1μm〜90μm、ピッチが25〜100μmの凹凸よりなる直線状フレネルレンズから形成され、意匠部13を除く加飾表面11の全面に形成されている。図2のA−A断面図には、意匠部13は現れておらず、レンズ部12のみが示されている。図3のB−B断面図には、レンズ部12と意匠部13の両方が示されている。
【0034】
また複数の意匠部13の表面には、それぞれ表面粗さ(Rz)が200nm以下の鏡面に加工された加工面14が形成されている。本実施例の装飾部材は、透明樹脂基体1を成形する金型の型面を予め精密加工しておき、透明樹脂基体1の射出成形時にレンズ部12と意匠部13が形成されるとともに、鏡面にされた型面の転写によって意匠部13の表面全面に加工面14が形成されている。
【0035】
本発明の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、意匠部13の加工面14の鏡面効果と、レンズ部12の拡大効果が相乗的に作用することによって、レンズ部12の中に複数の意匠部13が立体的に視認される。またレンズ部12のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0036】
(実施例2)
図4に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例は、加飾表面11に追加の積層構造が形成されたこと以外は実施例1と同様である。実施例1と同様の意匠部13の加工面14の表面には、印刷によって透明な厚さ10μm〜30μmの着色塗膜20が形成されている。そして着色塗膜20の表面と、レンズ部12の表面には、金属アルミニウムを蒸着することによって形成された厚さ0.1nm〜10nmの光輝層21が全面に形成されている。光輝層21の表面は、ポリカーボネートなどの透明樹脂からなる保護層2で被覆保護されている。
【0037】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、レンズ部12によって拡大された光輝層21を背景とし、その背景中に加工面14の鏡面効果とともに着色塗膜20の色調を通して光輝層21の金属光沢が強調されて視認される。したがって複数の意匠部13を立体的に明瞭に視認できる。またレンズ部12のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0038】
(実施例3)
図5に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例は、加飾表面11の構造が異なること以外は実施例1と同様である。加飾表面11には、実施例1と同様のレンズ部12が形成されている。一方、複数の意匠部13の表面には、ピッチ0.5μm〜10μm、深さ(高さ)0.25μm〜5μmの周期的凹凸部からなる加工面15が形成されている。レンズ部12と加工面15は、透明樹脂基体1の成形時に金型の型面が転写されることでそれぞれ透明樹脂基体1と一体に形成されている。
【0039】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、意匠部13には加工面15における光干渉によって虹色光沢が視認され、レンズ部12の拡大効果が相乗的に作用することによって、レンズ部12の中に複数の意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12及び加工面15のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0040】
(実施例4)
図6に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例は、レンズ部12と意匠部13(加工面15)の表面全面に実施例2と同様の光輝層21が形成されていること以外は実施例3と同様である。
【0041】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、意匠部13には加工面15における光干渉によって虹色光沢が視認され、その虹色光沢が光輝層21によって強調される。そしてレンズ部12の拡大効果が相乗的に作用することによって、レンズ部12の中に複数の意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12及び加工面15のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0042】
なお加飾表面11の凹凸が気になる場合には、実施例2のように、透明樹脂又は不透明樹脂による保護層2を形成してもよい。
【0043】
(実施例5)
図7に本実施例の装飾部材の要部拡大断面図(図6の拡大図相当)を示す。本実施例は、レンズ部12の表面のみに印刷によって厚さ10μm〜30μmの着色塗膜よりなる背景層22が形成され、周期的凹凸部からなる加工面15の表面と背景層22の表面全面に実施例2と同様の光輝層21が形成されていること以外は実施例3と同様である。
【0044】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、意匠部13には加工面15における光干渉によって虹色光沢が視認され、その虹色光沢が光輝層21によってより強調される。そしてレンズ部12の背景として背景層22の色調が視認され、その背景の中に複数の意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12及び加工面15のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0045】
なお加飾表面11の凹凸が気になる場合には、実施例2のように、透明樹脂又は不透明樹脂による保護層2を形成してもよい。
【0046】
(実施例6)
図8に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例の装飾部材は、加飾表面11の構造が異なること以外は実施例1と同様である。加飾表面11には、実施例1と同様のレンズ部12が形成されている。一方、複数の意匠部13の表面には、レンズ部12のフレネルレンズ構造の凹凸を反転させて逆位相とした高さ0.1〜100μm、ピッチ25μm〜100μmの第二凹凸からなる加工面16が形成されている。レンズ部12と加工面16は、透明樹脂基体1の成形時に金型の型面が転写されることでそれぞれ透明樹脂基体1と一体に形成されている。
【0047】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、レンズ部12と加工面16との両者のレンズ効果が相乗的に作用して特異な立体意匠が呈され、意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12及び加工面16のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0048】
(実施例7)
図9に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例の装飾部材は、加飾表面11の意匠部13の表面構造が異なること以外は実施例6と同様である。
【0049】
加飾表面11には、実施例1と同様のレンズ部12が形成されている。一方、複数の意匠部13の表面には、レンズ部12のフレネルレンズ構造の凹凸を反転させて逆位相とした実施例6と同様の第二凹凸からなる加工面16が形成され、加工面16の表面には深さ(高さ)0.1μm〜100μm、ピッチ25μm〜100μmの周期的凹凸部からなる第二加工面17が形成されている。レンズ部12と、加工面16及び第二加工面17は、透明樹脂基体1の成形時に金型の型面が転写されることでそれぞれ透明樹脂基体1と一体に形成されている。
【0050】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、レンズ部12と加工面16とが相乗的に作用して特異な立体意匠が呈されるとともに、二次加工面17による干渉色が発色するので、意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12、加工面16及び第二加工面17のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0051】
(実施例8)
図10に本実施例の装飾部材の断面図(図1のB−B断面相当)を示す。本実施例の装飾部材は、加飾表面11に追加の積層構造が形成されたこと以外は実施例6と同様である。実施例6と同様の意匠部13の加工面16の表面には、蒸着法によって透明なTiO2膜23が100Å〜200nmの厚さに形成されている。TiO2膜23は薄膜であるので加工面16の形状に沿い、その表面には加工面16と同等のフレネルレンズが形成されている。そしてレンズ部12の表面と、TiO2膜23の表面には、金属アルミニウムを蒸着することによって形成された光輝層21が全面に形成されている。
【0052】
本実施例の装飾部材によれば、視認表面10側から見ると、レンズ部12と加工面16とが相乗的に作用して特異な立体意匠が呈されるとともに、TiO2膜23によって加工面16の拡大作用が強調されるため、意匠部13が立体的かつ明瞭に視認される。またレンズ部12及び加工面16のピッチは100μm以下であるので、人の目視によって凹凸加工が視認されるのが防止され見栄えが損なわれることもない。
【0053】
なお加飾表面11の凹凸が気になる場合には、実施例2のように、透明樹脂又は不透明樹脂による保護層2を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の装飾部材は、自動車、家電製品、携帯電話などに用いられるロゴマーク、オーナメント、エンブレムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1:透明樹脂基体 10:視認表面 11:加飾表面
12:レンズ部 13:意匠部 14:加工面(鏡面)
15:加工面(周期的凹凸部) 16:加工面(第二凹凸)
17:第二加工面(周期的凹凸部) 20:着色塗膜(着色層) 22:背景層
図1
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図10