(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135940
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】入出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20170522BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20170522BHJP
H03K 7/08 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
G05B19/05 L
G08C19/00 U
!H03K7/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-229745(P2014-229745)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-95567(P2016-95567A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】丹波 守
(72)【発明者】
【氏名】有水 毅
【審査官】
牧 初
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−229615(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0163688(US,A1)
【文献】
特開2004−37635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04−19/05
G05F 1/00− 1/10
H02M 3/00− 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部とフィールド機器とを接続するための入出力モジュールにおいて、
前記制御部から入力されるPWM信号を復調するPWM復調部と、
前記PWM復調部の出力信号に基づく所定の電流を前記フィールド機器に出力する電流源と、
前記電流源と直列に接続された抵抗と、
前記電流源の出力電流を前記制御部を介して前記PWM復調部に帰還する帰還回路、
とで構成され、
前記制御部は、前記電流源に設定値の電流を出力させ、前記フィールド機器に対してアナログ信号を出力するアナログ出力モード、前記電流源にオン・オフに相当する電流を出力させ、前記フィールド機器に対してデジタル信号を出力するデジタル出力モード、前記電流源に前記フィールド機器の電源電圧を供給させ、前記フィールド機器からアナログ信号が入力されるアナログ入力モード、前記電流源に前記フィールド機器の電源電圧を供給させ、前記フィールド機器からデジタル信号が入力されるデジタル入力モードのいずれかのモードに対応した前記PWM信号を出力することを特徴とする入出力モジュール。
【請求項2】
前記抵抗に基づきデジタル入力に対する閾値が設定され、アナログ入力の電流が検出されることを特徴とする請求項1に記載の入出力モジュール。
【請求項3】
前記抵抗を介して検出されるアナログ入力の電流は、A/D変換器を介して前記制御部に入力されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の入出力モジュール。
【請求項4】
前記電流源は抵抗と半導体スイッチング素子との直列回路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の入出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力モジュールに関し、詳しくは、発電所や製造プロセスや上下水道や都市ガスなどの各種の制御システムを構成する制御部と外部に設けられるフィールド機器を接続するための入出力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は従来の制御システムにおけるフィールド機器の接続例を示すブロック図であり、1チャンネル分を示している。
図2において、制御部100とフィールド機器200は、インタフェース回路300を介して接続されている。
【0003】
インタフェース回路300は、信号部310と出力部320とで構成されている。
【0004】
信号部310は、スイッチング素子として機能するFET311と、電流源312と、フィルタ313と、バッファアンプ314とで構成されている。
【0005】
FET311のソースは+24Vの直流電源ラインに接続されるとともに電流源312を構成する抵抗312bの一端およびフィルタ313を構成するコンデンサ313aの一端に接続され、ゲートは制御部100に接続され、ドレインは出力部320を構成するクランプダイオード321のカソードに接続されるとともに電流源312を構成するFET312aのドレインに接続されている。
【0006】
電流源312は、FET312aと抵抗312bと演算増幅器312cとで構成されている。
【0007】
FET312aのソースは演算増幅器312cの一方の入力端子およびフィルタ313を構成する抵抗313bの一端に直接接続されるとともに抵抗312bを介してFET311のソースおよびフィルタ313を構成するコンデンサ313aの一端に接続され、ドレインは出力部320を構成するクランプダイオード321のカソードに接続されるとともにFET311のドレインに接続され、ゲートは演算増幅器312cの出力端子に接続されている。
【0008】
演算増幅器312cの他方の入力端子は、制御部100に接続されている。
【0009】
フィルタ313は、コンデンサ313aと抵抗313bとで構成されている。
【0010】
これらフィルタ313を構成するコンデンサ313aと抵抗313bの接続点は、バッファアンプ314を介して制御部100に接続されている。
【0011】
出力部320は、クランプダイオード321で構成されている。クランプダイオード321のアノードは0Vの直流電源ラインに接続され、カソードはFET311のソースおよびFET312aのソースに接続されている。このクランプダイオード321の両端には、フィールド機器200が接続されている。
【0012】
このような回路構成において、制御部100とインタフェース回路300は、たとえばデジタル出力(DO)モードには接続ラインL1が対応し、アナログ出力(AO)モードには接続ラインL2が対応し、アナログ入力(AI)モードおよびデジタル入力(DI)モードには接続ラインL3が対応するように連係して動作する。
【0013】
そして、電流源312はアナログ出力(AO)モードで使用され、スイッチング素子として機能するFET311はデジタル出力(DO)モードで使用される。
【0014】
特許文献1には、
図2に示した回路構成とその動作が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第8392626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、
図2に示す従来のフィールド機器の接続構成によれば、制御部100とインタフェース回路300を電気的に接続する信号線のうち、制御信号を伝送する信号線にはアナログ信号が含まれるとともに、機能モード別の信号になっているため、制御部100のコストが高くなり、また回路部品の実装面積が大きくなるという問題がある。
【0017】
また、アナログ出力(AO)モードで使用される電流源312と、デジタル出力(DO)モードで使用されるスイッチング素子としてのFET311を別々に用意する必要があることから、これらもコスト高の一因となり、実装面積の拡大要因になっている。
【0018】
また、アナログ出力(AO)モードで使用される電流源312には、チャンネル毎の出力精度を保つためにチャンネル毎に演算増幅器を設けなければならず、これらもコスト高の一因となり、実装面積の拡大要因にもなっている。
【0019】
さらに、チャンネル毎に
図2の回路構成を設けなければならないことから、チャンネル数に比例してコスト高は増加し、実装面積も拡大することになる。
【0020】
このようにインタフェース回路300の回路規模が大きくなる結果、インタフェース回路300のサイズも大きくなって消費電力や発熱も大きくなってしまい、システムが巨大化することになる。
【0021】
これらは、ユーザーが求める制御システムの小型化を実現するための障害になり、好ましくない。
【0022】
本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、出力精度などに悪影響を与えることなく、制御システムの小型化・低コスト化を図ることができる入出力モジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
制御部とフィールド機器とを接続するための入出力モジュールにおいて、
前記制御部から入力されるPWM信号を復調するPWM復調部と、
前記PWM復調部の出力信号に基づく所定の電流を前記フィールド機器に出力する電流源と、
前記電流源と直列に接続された抵抗と、
前記電流源の出力電流を前記制御部を介して前記PWM復調部に帰還する帰還回路、
とで構成され、
前記制御部は、前記電流源に設定値の電流を出力させ、前記フィールド機器に対してアナログ信号を出力するアナログ出力モード、前記電流源にオン・オフに相当する電流を出力させ、前記フィールド機器に対してデジタル信号を出力するデジタル出力モード、前記電流源に前記フィールド機器の電源電圧を供給させ、前記フィールド機器からアナログ信号が入力されるアナログ入力モード、前記電流源に前記フィールド機器の電源電圧を供給させ、前記フィールド機器からデジタル信号が入力されるデジタル入力モードのいずれかのモードに対応した前記PWM信号を出力することを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の入出力モジュールにおいて、
前記抵抗に基づきデジタル入力に対する閾値が設定され、アナログ入力の電流が検出されることを特徴とする。
【0025】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の入出力モジュールにおいて、
前記抵抗を介して検出されるアナログ入力の電流は、A/D変換器を介して前記制御部に入力されることを特徴とする。
【0026】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載の入出力モジュールにおいて、
前記電流源は抵抗と半導体スイッチング素子との直列回路で構成されていることを特徴とする
。
【発明の効果】
【0027】
これらの構成により、出力精度などに悪影響を与えることなく、制御システムの小型化・低コスト化を図ることができる入出力モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に基づく入出力モジュールの一実施例を示す構成説明図である。
【
図2】従来の制御システムにおけるフィールド機器の接続例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に基づく入出力モジュールを用いた制御システムの一実施例を示す構成説明図である。
図1において、共通の制御部10と複数n系統のフィールド機器20とは、それぞれ入出力モジュール30を介して接続されている。各入出力モジュール30から各フィールド機器20に出力される電流は、信号変換部40を介して制御部10に帰還入力される。
【0030】
制御部10は、測定部11と、測定部11の測定値を対応した所定の測定系統に選択的に出力するマルチプレクサ12と、減算器13と積算器14とパルス幅変調部(以下PWM変調部という)15よりなる複数nの測定系統と、制御バスBを介して複数nの測定系統と共通に接続された演算制御部16などで構成されている。なお、演算制御部16には、図示しない外部のコントローラが接続される。
【0031】
各測定系統において、各測定系統の減算器13の一方の入力端子にはマルチプレクサ12を介してたとえば16ビットの各測定系統の測定値が入力され、他方の入力端子には演算制御部16および制御バスBを介してたとえば16ビットの各測定系統の設定値が入力される。
【0032】
各測定系統の減算器13は、測定値と設定値との差分値を逐次積算器14に出力する。各測定系統の積算器14の出力値は、測定系統毎に個別に設定される設定値に応じた所定の値に収斂する。
【0033】
このような制御部10は、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成することができる。
【0034】
入出力モジュール30は、PWM復調部31と、電流源32と、出力部33とで構成されている。
【0035】
PWM復調部31は、FET31aと、一端がFET31aのソースに接続されて他端が電源ラインV+に接続されたコンデンサ31bと抵抗31cとの並列回路と、一端がFET31aのドレインに接続されて他端が共通電位点に接続された抵抗31dとで構成されている。FET31aのゲートには、所定の測定系統のPWM変調部15の出力端子が接続されている。
【0036】
電流源32は、FET32aと、一端がFET32aのソースに接続されて他端が電源ラインV+に接続された抵抗32bとで構成されている。FET32aのゲートはFET31aのドレインに接続され、ドレインは出力部33を構成する抵抗33aの一端に接続されている。
【0037】
出力部33は、一端がFET32aのドレインに接続されて他端がダイオード33bのアノードに接続された抵抗33aと、アノードが抵抗33aの他端に接続されカソードがフィールド機器20に接続されたダイオード33bとで構成されている。
【0038】
出力部33の抵抗33aは、デジタル入力(DI)モードにおける閾値レベルを設定するための基準抵抗として機能するとともに、アナログ入力(AI)モードにおける電流測定用の抵抗としても機能する。
【0039】
出力部33のダイオード33bは、入出力モジュール30とフィールド機器20を二重化した場合に接続を自動的に切り替えるように機能する。この出力部33のダイオード33bには、それぞれフィールド機器20が接続される。
【0040】
信号変換部40は、各測定系統における入出力モジュール30を構成する出力部33の抵抗33aの電圧を選択的に出力するマルチプレクサ41と、マルチプレクサ41の出力端子に接続された差動アンプ42と、差動アンプ42の出力端子に接続されデジタル信号に変換するA/D変換器43とで構成されている。
【0041】
図1のように構成されるシステムの動作について説明する。
a)入出力モジュール30がデジタル出力(DO)モードのとき
制御部10のPWM変調部15から出力されるPWM信号によりPWM復調部31を構成するFET31aの出力電流が制御され、さらに電流源32を構成するFET32aの出力電流も制御される。
【0042】
これにより、フィールド機器20には、出力部33を介してデジタル出力(DO)モードのオン・オフに相当する電流が出力される。
【0043】
b)入出力モジュール30がアナログ入力(AI)モードのとき
制御部10のPWM変調部15から一定のPWM信号を与えてPWM復調部31を構成するFET31aをオンにすることで、フィールド機器20に電源電圧が供給される。
【0044】
電流源32からフィールド機器20に供給される電流は出力部33を構成する抵抗33aにより電圧に変換され、信号変換部40に入力されてA/D変換器43によりデジタル信号に変換される。変換されたデジタル信号は、アナログ入力測定値として制御部10の測定部11に帰還入力される。
【0045】
c)入出力モジュール30がデジタル入力(DI)モードのとき
アナログ入力(AI)モードと同様である。変換されたデジタル信号は、デジタル入力のH/L判定値として使用する。
【0046】
d)入出力モジュール30がアナログ出力(AO)モードのとき
PWM信号を制御して電流源32からフィールド機器20に供給される出力電流を出力部33を構成する抵抗33aにより電圧に変換した上で、アナログ入力(AI)モードと同様にデジタル信号に変換する。この値を測定値として設定値と比較して常時フィードバックする操作を繰り返すことで、出力電流が常に設定値と等しくなるように制御される。変換されたデジタル信号は、アナログ出力値のモニタリング用として使用する。
【0047】
すなわち、アナログ出力(AO)モードにおいて、制御部10により設定される設定値nは、演算制御部16を介して各測定系統に設定される。これに対し、信号変換部40のA/D変換器43で変換されたデジタル信号は、測定部11およびマルチプレクサ12を介して各測定系統の測定値nとしてのデジタル信号になる。
【0048】
これら設定値nと測定値nは減算器13に入力され、減算器13はこれら入力の差を演算し出力する。出力されたデジタル信号は積算器14に入力され周期的に積算される。積算器14の出力はPWM変調部15にてPWM波形に変換され、このPWM波形出力は各測定系統の入出力モジュール30のPWM復調部31に入力される。
【0049】
このような一連の制御を繰り返して行うことで、定常状態における各測定系統の測定値は設定値にほぼ一致して積算器14の出力はほぼ一定値となり、PWM変調部15のPWM変調出力もほぼ一定のパルス幅に収斂する。
【0050】
すなわち、各測定系統のフィードバック動作により、フィールド機器20に供給される出力電流が設定値とほぼ等しくなるように制御することができる。
【0051】
たとえば全16チャンネルの入出力モジュール30が設けられていて、1秒毎に測定系統を切り替えていくとすると、もし全チャンネルを使用している場合には、各測定系統は16秒ごとにフィードバック制御できることになる。
【0052】
ここで、仮に全16チャンネル中の8チャンネルしか使用していない場合、何も接続されていないその空きチャンネルをスキップするとすれば、使用している各チャンネルのフィードバック可能周期は8秒になり、高速化が図れる。
【0053】
本発明の構成は、以下のように要約できる。
1)制御部10と入出力モジュール30を接続するのにあたり、アナログ出力(AO)モードにおける制御信号の伝送線とデジタル出力(DO)モードにおける制御信号の伝送線を共用する。
2)アナログ出力(AO)モードで使用される電流源32のスイッチング素子としてのFET32aとデジタル出力(DO)モードで使用されるスイッチング素子としてのFET32aを共用する。
3)アナログ出力(AO)モードで使用される電流源32には演算増幅器を用いない。
【0054】
なお、本発明に基づく回路構成の精度は、出力部33の抵抗33aやA/D変換器43の基準電圧精度などに依存する。ここで、出力部33の抵抗33aを外部より交換可能としておけば、測定系統別に測定範囲(レンジ)を容易に変えることが可能となる。
【0055】
また、本発明の構成では、測定系統毎に出力電流を監視して調整している。したがって、複数測定系統の出力端子に接続した状態での並列運転が可能である。
【0056】
また、本発明の構成では、デジタル入力(DI)モードおよびデジタル出力(DO)モードにおいても、出力部33の抵抗33aの電圧降下に基づいて出力電流をモニタし続けることができる。
【0057】
そして、演算増幅器などによるアナログ的なフィードバックでないことから、デジタル入力(DI)モードおよびデジタル出力(DO)モードにおける出力部33の抵抗33aの電圧降下の変動から、配線の接触不良やノイズ源の接近などを検出できる。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な回路構成で、かつ少ない制御信号で、デジタル出力(DO)モード、アナログ入力(AI)モード、デジタル入力(DI)モードおよびのアナログ出力(AO)モードの4モードを、共通の入出力モジュール30で実現できる。
【0059】
そして、本発明の回路構成によれば、測定系統毎に演算増幅器を必要とすることなく、高精度を維持したまま回路規模を小さくでき、発熱を抑制でき、コストを削減でき、故障発生率も削減できる。
【0060】
さらに、信号変換部40にマルチプレクサ41を設けることにより、差動アンプ42およびA/D変換器43を複数の測定系統で共用することができ、特に測定系統の多チャンネル化(たとえば16チャンネル)した場合には、回路スペースおよび全体のコストを大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0061】
10 制御部
11 測定部
12 マルチプレクサ
13 減算器
14 積算器
15パルス幅変調部(PWM変調部)
16 演算制御部
20 フィールド機器
30 入出力モジュール
31 PWM復調部
32 電流源
33 出力部
40 信号変換部
41 マルチプレクサ
42 差動アンプ
43 A/D変換器
B 制御バス