(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6135961
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】スリーブ孔防水構造
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
F16L5/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-105452(P2016-105452)
(22)【出願日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 功
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−99379(JP,U)
【文献】
実開昭56−153684(JP,U)
【文献】
特開2013−217417(JP,A)
【文献】
特開2001−50431(JP,A)
【文献】
実開平3−119137(JP,U)
【文献】
特開2009−270675(JP,A)
【文献】
特開2014−209027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 55/00
F24F 1/26 − 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁を貫通する略円筒形状のスリーブ孔と、
前記スリーブ孔の屋外側の開口を閉じる1次防水蓋と、
前記スリーブ孔の内部に押し込まれる2次防水部と、
を備え、
前記2次防水部は、前記スリーブ孔の内径よりも大径の略円柱状であり、周回り方向の全周に突条環が複数設けられる弾性体から成る本体部を有することを特徴とするスリーブ孔防水構造。
【請求項2】
前記スリーブ孔は屋外側円筒部と、前記屋外側円筒部よりも屋内側に形成される1又は複数の屋内側円筒部とを、連結して形成されるものであり、
前記2次防水部は、前記本体部の外周に形成された少なくとも一部の前記突条環が、前記屋外側円筒部の内周面に圧接することを特徴とする請求項1に記載のスリーブ孔防水構造。
【請求項3】
前記2次防水部は、前記1次防水蓋の屋内側面に当接する当接部を有し、
前記屋外側円筒部の軸方向の長さは、前記当接部から前記本体部までの軸方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載のスリーブ孔防水構造。
【請求項4】
前記2次防水部は、前記本体部の屋内側に前記本体部と同軸で、且つ前記本体部よりも小径の略円柱形状のつかみ部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスリーブ孔防水構造。
【請求項5】
前記2次防水部は、少なくとも前記本体部が断熱性を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のスリーブ孔防水構造。
【請求項6】
前記複数の突条環は、屋外側の突条環が屋内側の突条環に比べて径が小さく形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のスリーブ孔防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁を貫通するスリーブ孔の防水構造に関し、主に、空調設備の配管用のスリーブ孔の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや家屋等の建物に設けられるエアコン等の空調設備として、吸気口や噴出口が設けられた室内機と、熱交換機が設けられた室外機とが分離した空調設備が一般的である。そして、このような空調設備の室内機及び室外機は配管で接続するために、建物の外壁には配管を挿通させるため、建物の建築時に予めスリーブ孔が貫通している。
【0003】
しかし、空調設備の未設置時には、配管が挿通されていない状態でスリーブ孔が放置されると、埃や雨水が建物内に侵入するおそれがある。そこで、空調設備の未設置時におけるスリーブ孔の屋外側の端部を塞ぐために、従来よりスリーブ孔閉塞用蓋が開示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−270675号公報
【特許文献2】特開2001−208276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなスリーブ孔閉塞用蓋によりスリーブ孔の屋外側の端部を塞いだとしても、スリーブ孔の屋外側の端部とスリーブ孔閉塞用蓋との間の防水パッキンが、例えば経年劣化などによって十分に機能を発揮できなくなると、スリーブ孔の屋外側の端縁とスリーブ孔閉塞用蓋との間から雨水等がスリーブ孔内に浸入するおそれがある。雨水が浸入した場合には、スリーブ孔を伝って外壁内部や建物の屋内に雨水が浸入するので問題である。
【0006】
このような問題に対応するためには、防水パッキンを交換し、又は、防水用コーキング剤でスリーブ孔の屋外側の端縁とスリーブ孔閉塞用蓋との間をコーキングするなどの防水処理が考えられる。
【0007】
しかし、これらの防水処理を行う場合、屋外側からの作業となるので、スリーブ孔の位置が建物の1階の場合でも脚立上で作業する必要があり、スリーブ孔の位置が建物の2階以上である場合には、足場又は梯子を設置して高所で作業する必要があり、防水処理のコストや作業負担が増大する問題がある。また、コーキング等の防水は、外観上見苦しく、配管等の撤去の際に手間取る問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、安全且つ低コストで施工することができ、且つ、スリーブ孔の内部に屋外側から雨水が浸入することをより確実に防止することができるスリーブ孔防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスリーブ孔防水構造は、建物の外壁を貫通する略円筒形状のスリーブ孔と、前記スリーブ孔の屋外側の開口を閉じる1次防水蓋と、前記スリーブ孔の内部に押し込まれる2次防水部と、を備え、前記2次防水部は、前記スリーブ孔の内径よりも大径の略円柱状であり、周回り方向の全周に突条環が複数設けられる弾性体から成る本体部を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明のスリーブ孔防水構造は、前記スリーブ孔は屋外側円筒部と、前記屋外側円筒部よりも屋内側に形成される1又は複数の屋内側円筒部とを、連結して形成されるものであり、前記2次防水部は、前記本体部の外周に形成された少なくとも一部の前記突条環が、前記屋外側円筒部の内周面に圧接することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明のスリーブ孔防水構造は、前記2次防水部は、前記1次防水蓋の屋内側面に当接する当接部を有し、前記屋外側円筒部の軸方向の長さは、前記当接部から前記本体部までの軸方向の長さよりも長いことを特徴としている。
【0012】
さらにまた、本発明のスリーブ孔防水構造は、前記2次防水部は、前記本体部の屋内側に前記本体部と同軸で、且つ前記本体部よりも小径の略円柱形状のつかみ部が形成されることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のスリーブ孔防水構造は、前記2次防水部は、少なくとも前記本体部が断熱性を有することを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明のスリーブ孔防水構造は、前記複数の突条環は、屋外側の突条環が屋内側の突条環に比べて径が小さく形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、一次防水蓋から、スリーブ孔内に雨水などの水が浸入することを気圧的に抑制するとともに、2次防水部によってスリーブ孔内に浸入した水もスリーブ孔の屋内側に浸入することを防止できるので、2重に防水することができ、雨水などの水が屋内に浸入することをより確実に防止することができる。そして、2次防水部は、スリーブ孔の内径よりも大径の略円柱状であり、周回り方向の全周に突条環が複数設けられる弾性体であるので、スリーブ孔の屋内側から挿入して簡単に施工することができ、スリーブ孔が高い位置に有る場合でも梯子や脚立を用いる必要もない。また、複数の突条環がそれぞれスリーブ孔の内周面と圧接して防水性を発揮するので、スリーブ孔内の防水性能をより確実なものにすることができる。
【0016】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、スリーブ孔が屋外側円筒部と、当該屋外側円筒部よりも屋内側に形成される1又は複数の屋内側円筒部とを、連結して形成されており、2次防水部は、本体部の外周に形成された少なくとも一部の突条環が、屋外側円筒部の内周面に圧接するので、屋外側円筒部と屋内側円筒部との継ぎ目に水が浸入することを確実に防止することができ、外壁内部に水が浸入することを防止することができる。
【0017】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、2次防水部をスリーブ孔の屋内側から挿入し、当該2次防水部の当接部が1次防水蓋の屋内側面に当接するところまで挿入することで、2次防水部の本体部全体が屋外側円筒部内に挿入されることになり、本体部の全ての突条環が、屋外側円筒部の内周面に圧接されることなり、屋外側円筒部で確実な防水を図ることができ、屋外側円筒部と屋内側円筒部との継ぎ目に水が浸入することをより確実に防止できる。
【0018】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、2次防水部の本体部の屋内側に当該本体部と同軸で、且つ本体部よりも小径の略円柱形状のつかみ部が形成されているので、このつかみ部をその軸がスリーブ孔の軸と重なるように把持することで、簡単にスリーブ孔に2次防水部を正しい姿勢で挿入することができ、設計どおりの防水性能を発揮することができる。
【0019】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、2次防水部の少なくとも本体部が断熱性を有しているので、スリーブ孔をエアコンなどに使用しないときの断熱性能を高めることができる。また、スリーブ孔及び1次防水蓋裏面の結露を防ぐことができる。
【0020】
本発明のスリーブ孔防水構造によると、複数の突条環は、屋外側の突条環が屋内側の突条環に比べて径が小さく形成されているので、スリーブ孔に2次防水部をより簡単に挿入することができる。
【0021】
なお、本発明の2次防水部は、配管をスリーブ孔に挿入して設置する場合には、用意に撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】スリーブ孔防水構造の全体構成を示す断面図。
【
図4】スリーブ孔に2次防水部を挿入する状態を示す図。
【
図6】2次防水部を挿入して完成させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るスリーブ孔防水構造1の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。スリーブ孔防水構造1は、例えば、エアコン等の空調設備の室内機と室外機とを連通するために、建物外壁を貫通するように形成されたスリーブ孔2に設けられる防水構造である。なお、スリーブ孔2は、建物外壁を貫通するスリーブ孔2であって、当該スリーブ孔2を配管配線などの用途に利用しない期間、スリーブ孔2内を通って屋内側に水が浸入することを防ぐ必要があるものであれば、空調設備の配管用のものに限定されるものではない。また、本実施形態において、外壁は、建物の屋外面を構成する外装材3と、建物の屋内側の面を構成する内装材4と、図示しないが外装材3及び内装材4の間に配置される断熱材や軸組によって形成されている。外壁の構成は、これに限定されるものではなく、例えば鉄筋コンクリート製の外壁であっても良い。
【0024】
スリーブ孔防水構造1は、
図1に示すように、建物の外壁を貫通する略円筒形状のスリーブ孔2と、スリーブ孔2の屋外側の開口を閉じる1次防水蓋5と、スリーブ孔2の内部に押し込まれる2次防水部6と、屋内蓋7と、を備えている。
【0025】
スリーブ孔2は、外装材3に固定される屋外側円筒部8と、屋外側円筒部8の屋内側に設けられる屋内側円筒部9と、屋内側円筒部9の屋内側に設けられ、内装材4に固定される内壁管10と、をそれぞれ連通して形成されている。屋外側円筒部8の屋外側の開口にはフランジが形成されており、当該フランジは図示しないシーリング剤を介して外装材3の屋外側の面に水密的に固定されている。
【0026】
屋外側円筒部8の外周面には、外装材3に挿通する部分にパッキング11が固定されており、外装材3の貫通孔の内周面と屋外側円筒部8の外周面との間の隙間の水密性を保っている。屋外側円筒部8の屋外側の開口は1次防水蓋5により閉塞されている。1次防水蓋5は、円形の平板状であり、屋外側円筒部8にビス12で固定されている。
【0027】
屋内側円筒部9はその屋外側の端部が、屋外側円筒部8の屋外側の端部に外嵌されて連通している。屋外側円筒部8と屋内側円筒部9との接続箇所には図示しないが気密テープが巻かれており、スリーブ孔2内に水密・気密性を保っている。屋内側円筒部9は塩ビ管であり、外壁の厚さに応じて切断して形成される。内壁管10は、屋内側円筒部9の屋内側端部に挿入される円筒形状であり、屋内側の端部にフランジが設けられて、内装材4に固定される。
【0028】
2次防水部6は、
図2及び
図3に示すように、軟質合成ゴムの発泡体を成形した略円柱形状の本体部13と、本体部13の屋外側に設けられて1次防水蓋5の屋内側面に当接する当接部14と、本体部13の屋内側に設けられるつかみ部15とを有する。本体部13は、スリーブ孔2の内径、特に屋外側円筒部8の内径よりも大径であり、周回り方向の全周に突条環16が複数設けられている。本体部13に形成された複数の突条環16は、屋外側の突条環16の径αが屋内側の突条環16の径βに比べて小さく形成されている。
【0029】
当接部14は、本体部13の屋外側の端部から半球状に突出して本体部13と一体形成されている。屋外側円筒部8の軸方向の長さは、当接部14から本体部13までの軸方向の長さよりも長く形成されている。つかみ部15は、本体部13の屋内側に当該本体部13と同軸で、且つ本体部13よりも小径の略円柱形状に形成されている。
【0030】
外壁にスリーブ孔2が設けられた建物において、エアコン等の空調設備を設置しない場合には、スリーブ孔2の屋外側の端部には1次防水蓋5が固定されて、当該スリーブ孔2を塞いでいる。そして、更なる防水が必要な場合には、
図4に示すように、まず屋内蓋7を取り外して、スリーブ孔2の屋内側の端部を開口させた後で、スリーブ孔2の屋内側の端部から2次防水部6を挿入する。2次防水部6は、本体部13の突条環16がスリーブ孔2の内周面に圧接した状態で、スリーブ孔2の内周面の形状に応じて突条環16が縮径されつつ、スリーブ孔2内に挿入される。このとき、
図3に示すように、屋外側の突条環16の径αが屋内側の突条環16の径βに比べて小さく形成されているので、スリーブ孔2に2次防水部6をより簡単に挿入できる。
【0031】
2次防水部6には、本体部13と同軸、且つ本体部13よりも小径の略円柱形状のつかみ部15が設けられているので、
図5に示すように、つかみ部15を例えばトング17で保持して、スリーブ孔2の中心軸にに当該つかみ部15が重なるように保持しながら、スリーブ孔2に2次防水部6を挿入することで、2次防水部6を正しい姿勢に保った状態でスリーブ孔2に挿入することができる。したがって、本体部13の突条環16がスリーブ孔2の内周面に確実に圧接することができ、より確実に設計どおりの防水性能を発揮することができる。
【0032】
そして、
図6に示すように、2次防水部6の当接部14が1次防水蓋5に当接する位置にまで、2次防水部6を押し込んで、スリーブ孔防水構造1を完成させる。2次防水部6の当接部14から本体部13までの軸方向の長さδは屋外側円筒部8の軸方向の長さγよりも短いので、当接部14が1次防水蓋5に当接する位置に2次防水部6を押し込むと、2次防水部6の本体部13は、屋外側円筒部8の中に押し込まれることになり、本体部13の突条環16は屋外側円筒部8の内周面に圧接されることとなるので、屋外側円筒部8の屋内側に水が浸入することを確実に防止できる。これによって、屋外側円筒部8と屋内側円筒部9との間の継ぎ目に水が浸入することがないので、当該継ぎ目から外壁内部へ水が浸入することを確実に防止できる。
【0033】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るスリーブ孔防水構造1は、例えば空調設備の室内機と室外機とをつなぐ配管用のスリーブ孔2の防水構造として好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 スリーブ孔防水構造
2 スリーブ孔
5 1次防水蓋
6 2次防水部
8 屋外側円筒部
9 屋内側円筒部
13 本体部
14 当接部
15 つかみ部
16 突条環
【要約】
【課題】 安全且つ低コストで施工することができ、且つ、スリーブ孔の内部に屋外側から雨水が浸入することをより確実に防止することができるスリーブ孔防水構造を提供する。
【解決手段】スリーブ孔防水構造1は、建物の外壁を貫通する略円筒形状のスリーブ孔2と、前記スリーブ孔2の屋外側の開口を閉じる1次防水蓋5と、前記スリーブ孔2の内部に押し込まれる2次防水部6と、を備え、前記2次防水部6は、前記スリーブ孔2の内径よりも大径の略円柱状であり、周回り方向の全周に突条環16が複数設けられる弾性体から成る本体部13を有する。
【選択図】
図1