(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、ロータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、ロータの中心軸に直交する方向を「径方向」、ロータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るロータおよびモータの使用時および製造時の向きを限定する意図はない。
【0014】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0015】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータ32Aの斜視図である。このロータ32Aは、インナロータ型のモータに用いられる。
図1に示すように、ロータ32Aは、積層コア51Aと、複数のマグネット52Aと、樹脂部53Aとを有する。積層コア51Aは、軸方向に積層された複数の薄板コアにより、構成されている。複数のマグネット52Aは、上下に延びる中心軸9Aの周囲に、周方向に配列されている。樹脂部53Aは、射出成型により得られる。
【0016】
積層コア51Aは、内コア部61Aと、複数の外コア部62Aとを有する。内コア部61Aは、マグネット52Aより径方向内側において、軸方向に筒状に延びている。複数の外コア部62Aは、内コア部61Aより径方向外側において、周方向に配列されている。各外コア部62Aは、軸方向に貫通する貫通孔621Aを有する。複数の外コア部62Aと、複数のマグネット52Aとは、周方向に交互に配列されている。マグネット52Aは、磁極面である一対の周方向端面を有する。また、複数のマグネット52Aは、同極の磁極面同士が周方向に対向するように、配置されている。
【0017】
樹脂部53Aは、上樹脂部531A、下樹脂部532A、外樹脂部533A、および柱状部535Aを有する。上樹脂部531Aは、積層コア51Aおよびマグネット52Aの上面を覆っている。下樹脂部532Aは、積層コア51Aおよびマグネット52Aの下面を覆っている。外樹脂部533Aは、マグネット52Aの径方向外側の面を覆っている。柱状部535Aは、貫通孔621A内において、軸方向に延びている。上樹脂部531Aと下樹脂部532Aとは、柱状部535Aにより繋がれている。これにより、樹脂部53Aの剛性が高められている。
【0018】
なお、ここで記載した「覆う」とは、対象となる面の全体を覆うという意味だけではなく、対象となる面の一部分を覆うという意味も含んでいる。例えば、マグネット52Aの径方向外側の面の全体が、外樹脂部533Aに覆われていてもよいし、マグネット52Aの径方向外側の面の一部分のみが、外樹脂部533Aに覆われていてもよい。
【0019】
また、
図1に示すように、樹脂部53Aは、複数のゲート痕部91Aを有する。複数のゲート痕部91Aは、樹脂部53Aの射出成型時に、金型のゲートが位置していた箇所に、設けられている。各ゲート痕部91Aは、内コア部61Aより径方向外側に位置している。また、平面視において、ゲート痕部91Aの少なくとも一部分が、貫通孔621Aより径方向内側に位置している。
【0020】
このロータ32Aを製造するときには、まず、積層コア51Aと、複数のマグネット52Aとを、金型の内部に配置する。このとき、複数の外コア部62Aと、複数のマグネット52Aとが、周方向に交互に配列される。次に、金型のゲートを介して、金型の内部へ、溶融樹脂を流し込む。ゲートは、内コア部61Aより径方向外側に位置する。また、ゲートの少なくとも一部分が、貫通孔621Aより径方向内側に位置する。
【0021】
ゲートから注入された溶融樹脂は、積層コア51Aまたはマグネット52Aの上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔621Aへ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その後、溶融樹脂は、積層コア51Aおよびマグネット52Aの上面、積層コア51Aおよびマグネット52Aの下面、マグネット52Aの径方向外側の面、および貫通孔621A内へ、流れる。そして、当該溶融樹脂を固化することにより、樹脂部53Aが得られる。これにより、樹脂部53Aの各部が精度よく成型される。
【0022】
<2.第2実施形態>
<2−1.モータの全体構成>
続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。
図2は、第2実施形態に係るモータ1の縦断面図である。本実施形態のモータ1は、例えば、自動車に搭載され、パワーステアリングの駆動力を発生させるために使用される。ただし、本発明のモータは、パワーステアリング以外の用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明のモータは、自動車の他の部位、例えばエンジン冷却用ファンやオイルポンプの駆動源として、使用されるものであってもよい。また、本発明のモータは、家電製品、OA機器、医療機器等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0023】
このモータ1は、電機子23の径方向内側にロータ32が配置される、いわゆるインナロータ型のモータである。
図2に示すように、モータ1は、静止部2と回転部3とを有する。静止部2は、駆動対象となる機器の枠体に固定される。回転部3は、静止部2に対して、回転可能に支持される。
【0024】
本実施形態の静止部2は、ハウジング21、蓋部22、電機子23、下軸受部24、および上軸受部25を有する。
【0025】
ハウジング21は、略円筒状の側壁211と、側壁211の下部を塞ぐ底部212と、を有する。蓋部22は、ハウジング21の上部の開口を覆っている。電機子23および後述するロータ32は、ハウジング21と蓋部22とに囲まれた内部空間に、収容されている。ハウジング21の底部212の中央には、下軸受部24を配置するための凹部213が、設けられている。また、蓋部22の中央には、上軸受部25を配置するための円孔221が、設けられている。
【0026】
電機子23は、後述するロータ32の径方向外側に、配置されている。電機子23は、ステータコア41、インシュレータ42、およびコイル43を有する。ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、円環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側へ向けて突出した複数のティース412とを有する。コアバック411は、中心軸9と略同軸に配置されている。また、コアバック411の外周面は、ハウジング21の側壁211の内周面に、固定されている。複数のティース412は、周方向に略等間隔に配列されている。
【0027】
インシュレータ42は、絶縁体である樹脂からなる。各ティース412の上面、下面、および周方向の両側面は、インシュレータ42に覆われている。コイル43は、インシュレータ42の周囲に巻かれた導線により、構成される。すなわち、本実施形態では、ティース412の周囲に、インシュレータ42を介して、導線が巻かれている。インシュレータ42は、ティース412とコイル43との間に介在することによって、ティース412とコイル43とが電気的に短絡することを、防止する。
【0028】
なお、インシュレータ42に代えて、ティース412の表面に、絶縁塗装が施されていてもよい。
【0029】
下軸受部24および上軸受部25は、ハウジング21および蓋部22と、回転部3側のシャフト31との間に配置されている。本実施形態の下軸受部24および上軸受部25には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用されている。ただし、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0030】
下軸受部24の外輪241は、ハウジング21の凹部213内に配置されて、ハウジング21に固定されている。また、上軸受部25の外輪251は、蓋部22の円孔221内に配置されて、蓋部22に固定されている。一方、下軸受部24および上軸受部25の内輪242,252は、シャフト31に固定されている。これにより、シャフト31は、ハウジング21および蓋部22に対して、回転可能に支持されている。
【0031】
図3は、回転部3の縦断面図である。
図2および
図3に示すように、本実施形態の回転部3は、シャフト31とロータ32とを有する。
【0032】
シャフト31は、中心軸9に沿って延びる柱状の部材である。シャフト31の材料には、例えばステンレスが使用される。シャフト31は、上述した下軸受部24および上軸受部25に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。また、シャフト31は、蓋部22より上方に突出した頭部311を有する。頭部311は、ギア等の動力伝達機構を介して、駆動対象となる部位に連結される。
【0033】
ロータ32は、電機子23の径方向内側に配置されて、シャフト31とともに回転する。ロータ32は、積層コア51、複数のマグネット52、および樹脂部53を有する。積層コア51は、電磁鋼板である複数の薄板コア511からなる。複数の薄板コア511は、軸方向に積層されて、積層鋼板を構成している。積層鋼板を使用すれば、積層コア51内に生じる渦電流を、抑制できる。したがって、積層コア51に効率よく磁束を流すことができる。積層コア51の中央には、軸方向に延びる挿入孔50が、設けられている。シャフト31は、積層コア51の挿入孔50に、圧入される。
【0034】
複数のマグネット52は、中心軸9の周囲において、周方向に略等間隔に配列されている。本実施形態では、略直方体状のマグネット52が使用されている。積層コア51および複数のマグネット52の軸方向両端面と、マグネット52の径方向外側の面とは、樹脂部53に覆われている。これにより、マグネット52の上側、下側、および径方向外側への飛び出しが、防止されている。また、樹脂部53により、ロータ32全体の剛性が、高められている。なお、ロータ32のより詳細な構造については、後述する。
【0035】
このようなモータ1において、静止部2のコイル43に駆動電流を与えると、複数のティース412に磁束が発生する。そして、ティース412とロータ32との間の磁束の作用により、周方向のトルクが生じる。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。
【0036】
<2−2.ロータについて>
続いて、ロータ32のより詳細な構造について、説明する。
図4は、ロータ32の斜視図である。
図5は、ロータ32の上面図である。
図6は、ロータ32の下面図である。
図7は、
図3中のA−A位置から見たロータ32の横断面図である。
図8は、積層コア51および複数のマグネット52の上面図である。以下の説明においては、
図3とともに、
図4〜
図8も参照する。なお、
図3におけるロータ32の縦断面は、
図5〜
図7中のB−B断面に相当する。
【0037】
図3〜
図8に示すように、積層コア51は、内コア部61と、複数の外コア部62とを有する。内コア部61は、マグネット52より径方向内側において、軸方向に筒状に延びている。複数の外コア部62は、内コア部61より径方向外側において、周方向に略等間隔に配列されている。
図7および
図8に示すように、各外コア部62は、上面視において略扇形の外形を有し、軸方向に延びている。
【0038】
また、
図3および
図5〜
図8に示すように、各外コア部62は、貫通孔621を有する。貫通孔621は、外コア部62を軸方向に貫通している。本実施形態では、貫通孔621の径方向の中央が、外コア部62の径方向の中央より、径方向外側に位置している。
【0039】
また、
図3および
図8に示すように、本実施形態の積層コア51は、内コア部61と複数の外コア部62とを繋ぐ、複数の連結部63を有する。各連結部63は、内コア部61の外周面と、外コア部62の径方向内側の端部とを、径方向に繋いでいる。これらの連結部63により、内コア部61と複数の外コア部62との相対的な位置関係が固定される。このため、後述する樹脂部53の射出成型時には、金型内において、内コア部61および複数の外コア部62を、容易に位置決めできる。
【0040】
なお、
図8では、連結部63が設けられていない軸方向位置における内コア部61の外周面が、破線611で示されている。また、
図6では、連結部63が設けられていない軸方向位置における外コア部62の径方向内側の端部が、破線621で示されている。連結部63は、平面視においてこれらの破線611,621に挟まれた部分である。
【0041】
複数のマグネット52は、それぞれ、隣り合う外コア部62の間に、配置されている。すなわち、複数のマグネット52と、複数の外コア部62とは、周方向に交互に配列されている。各マグネット52は、磁極面である一対の周方向端面を有する。複数のマグネット52は、同極の磁極面同士が周方向に対向するように、配列されている。各外コア部62は、その両側に配置されたマグネット52により磁化される。その結果、外コア部62の径方向外側の面が、磁極面となる。つまり、マグネット52から生じる磁束の大部分は、外コア部62を通って、外コア部62の径方向外側へ流れる。
【0042】
マグネット52には、例えば、フェライト系の焼結マグネットや、ネオジムマグネットが使用される。ただし、近年では、レアアースであるネオジムの価格が高騰し、ネオジムマグネットを使用することが困難となっている。このため、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、強い磁力を得たいという技術的要求が高い。この点、本実施形態のように、複数の外コア部62と、複数のマグネット52とを、周方向に交互に配置すれば、ロータ32におけるマグネット52の体積比率を、高めることができる。また、各マグネット52の一対の磁極面から生じる磁束を、有効に利用できる。したがって、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、強い磁力を得ることが可能となる。
【0043】
図3に示すように、本実施形態のマグネット52は、上面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界、および、下面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界に、テーパ面521を有する。そして、マグネット52の上面、下面、およびテーパ面521が、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向外側に位置している。このようにすれば、外コア部62の周方向端面のほぼ全体が、マグネット52の周方向端面と接触する。すなわち、マグネット52の上面、下面、およびテーパ面521が、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向内側に位置する場合より、外コア部62の周方向端面と、マグネット52の周方向端面との接触面積が増加する。このため、テーパ面521による磁束のロスを抑制し、マグネット52の磁束を有効に使うことができる。
【0044】
なお、テーパ面521は、マグネット52の上面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界、および、マグネット52の下面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界の、一方のみに設けられていてもよい。また、マグネット52の上面および下面の一方のみが、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向外側に位置していてもよい。
【0045】
樹脂部53は、ポリカーボネート等の樹脂を、射出成型することにより得られる。樹脂部53の射出成型時には、金型の内部に予め積層コア51および複数のマグネット52を配置した後、当該金型の内部に溶融樹脂を流し込む。すなわち、積層コア51および複数のマグネット52をインサート部品とするインサート成型を行う。これにより、樹脂部53が成型されるとともに、積層コア51、複数のマグネット52、および樹脂部53が、互いに固定される。
【0046】
図3〜
図7に示すように、本実施形態の樹脂部53は、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を有する。
【0047】
上樹脂部531は、積層コア51および複数のマグネット52の上側、かつ、シャフト31の径方向外側において、環状に広がっている。外コア部62の上面およびマグネット52の上面は、上樹脂部531に覆われている。下樹脂部532は、積層コア51および複数のマグネット52の下側、かつ、シャフト31の径方向外側において、環状に広がっている。外コア部62の下面およびマグネット52の下面は、下樹脂部532に覆われている。
【0048】
外樹脂部533は、マグネット52の径方向外側、かつ、隣り合う外コア部62の間に、位置している。マグネット52の径方向外側の面は、外樹脂部533に覆われている。内樹脂部534は、内コア部61と、外コア部62およびマグネット52との間に位置する磁気的空隙70を、満たしている。また、柱状部535は、貫通孔621内において、軸方向に延びている。
【0049】
図3に示すように、積層コア51の複数の連結部63は、複数の上連結部631と、複数の下連結部632とを、含んでいる。上連結部631は、積層コア51の軸方向中央より上側に位置し、最上段の1枚または複数枚の薄板コア511により、構成されている。下連結部632は、積層コア51の軸方向中央より下側に位置し、最下段の1枚または複数枚の薄板コア511により、構成されている。
【0050】
上述した磁気的空隙70は、第1の磁気的空隙71と、第2の磁気的空隙72とを、含んでいる。第1の磁気的空隙71は、上連結部631と下連結部632との間に位置している。第2の磁気的空隙72は、隣り合う外コア部62の間の周方向位置、内コア部61の径方向外側、かつ、マグネット52の径方向内側に、位置している。これにより、外コア部62およびマグネット52から内コア部61への磁束の漏れが、抑制される。本実施形態では、第1の磁気的空隙71および第2の磁気的空隙の双方が、非磁性体である内樹脂部534で、満たされている。これにより、ロータ32の剛性がより高められている。
【0051】
外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535の各上端部は、上樹脂部531に連結されている。また、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535の各下端部は、下樹脂部532に連結されている。すなわち、上樹脂部531と下樹脂部532とは、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を介して、軸方向に繋がっている。これにより、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を含む樹脂部53の剛性が、高められている。
【0052】
また、
図3〜
図5に示すように、樹脂部53は、上樹脂部531の上面に、ゲート痕部91を有する。ゲート痕部91は、外コア部62の上方に位置する。ゲート痕部91は、樹脂部53の射出成型時に、金型のゲートが位置していた箇所に、形成される。ゲート痕部91は、中央突部911と、中央突部911の周囲に設けられた環状凹部912と、を有する。平面視において、中央凸部911の面積は、溶融樹脂を吐出するゲート孔の面積と、略同一となる。また、平面視において、環状凹部912の面積は、ゲート孔の周囲の凸部の面積と、略同一となる。
【0053】
このモータ1では、ゲート痕部91が、内コア部61より径方向外側に位置する。また、平面視において、ゲート痕部91の少なくとも一部分が、貫通孔621より径方向内側に位置する。後述する射出成型時には、ゲートから吐出された溶融樹脂が、外コア部62の上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔621へ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その結果、樹脂部53の各部が精度よく成型される。
【0054】
特に、ゲートから吐出された溶融樹脂は、マグネット52の径方向外側、マグネット52および外コア部62の径方向内側、および貫通孔621内の各空間へ、効率よく流れる。その結果、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535が、それぞれ精度よく成型される。
【0055】
本実施形態では、外樹脂部533の径方向の厚みが、柱状部535の径方向の厚みや内樹脂部534の径方向の厚みと比較して、薄い。このようにすれば、マグネット52の収容スペースを確保しやすい。このため、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、より強い磁力を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ゲート痕部91が、マグネット52の上方ではなく、外コア部62の上方に位置する。このため、ゲートから吐出された溶融樹脂は、マグネット52の上面ではなく、外コア部62の上面に当たる。このようにすれば、溶融樹脂の射出圧によるマグネット52の位置ずれを、抑制できる。
【0057】
また、
図3〜
図5に示すように、本実施形態では、上樹脂部531の上面および下樹脂部532の下面に、複数の凹部92が設けられている。各凹部92は、外コア部62と、軸方向に重なっている。上述の通り、本実施形態では、マグネット52の軸方向の両端部が、外コア部62の軸方向両端部より、上下に突出している。しかしながら、この凹部92により、マグネット52の上側および下側に位置する樹脂の軸方向の厚みと、外コア部62の上側および下側に位置する樹脂の軸方向の厚みとの差が、小さくなっている。すなわち、上樹脂部531および下樹脂部532のそれぞれの厚みが、全周に亘って略均一化されている。このようにすれば、射出成型時に、樹脂の厚みの差によって生じる変形を防止できる。したがって、上樹脂部531および下樹脂部532が、より精度よく成型される。なお、本実施形態では、上樹脂部531の凹部92内に、ゲート痕部91が位置している。
【0058】
また、
図3〜
図6に示すように、本実施形態の上樹脂部531および下樹脂部532は、それぞれ、複数の第1位置決め孔93を有する。各第1位置決め孔93は、マグネット52と軸方向に重なる位置において、上樹脂部531または下樹脂部532を、軸方向に貫通している。第1位置決め孔93は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第1ピンによって、形成される。第1ピンは、マグネット52の上面および下面に突き当てられる。それにより、金型内において、マグネット52が軸方向に位置決めされる。
【0059】
また、
図4および
図6に示すように、本実施形態の下樹脂部532は、複数の第2位置決め孔94を有する。各第2位置決め孔94は、外コア部62と軸方向に重なる位置において、下樹脂部532を軸方向に貫通している。第2位置決め孔94は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第2ピン(図示省略)によって、形成される。第2ピン(図示省略)は、外コア部62の下面に突き当てられる。それにより、金型内において、積層コア51が軸方向に位置決めされる。
【0060】
本実施形態では、第2位置決め孔94が、下樹脂部532のみに設けられている。しかしながら、第2位置決め孔は、上樹脂部531のみ、または、上樹脂部531および下樹脂部532の双方に、設けられていてもよい。
【0061】
また、
図3および
図6に示すように、本実施形態の樹脂部53は、複数の第3位置決め孔95を有する。各第3位置決め孔95は、外コア部62の貫通孔621と軸方向に重なる位置において、下樹脂部532の下面から柱状部535へ向けて、凹んでいる。第3位置決め孔95は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第3ピンによって、形成される。第3ピンは、外コア部62の貫通孔621に挿入される。それにより、金型内において、積層コア51が周方向に位置決めされる。
【0062】
図3および
図6に示すように、本実施形態では、第3位置決め孔95が、貫通孔621の中央より径方向外側に位置している。しかしながら、第3位置決め孔95は、貫通孔621の中央より径方向内側に位置していてもよい。
【0063】
また、
図3、
図4、および
図6に示すように、本実施形態では、外樹脂部533に、複数の切り欠き96が設けられている。切り欠き96は、マグネット52の径方向外側において、外樹脂部533を径方向に貫通している。本実施形態では、外樹脂部533の下部付近のみに、切り欠き96が設けられている。ただし、切り欠き93は、外樹脂部533の下端部から上端部まで、軸方向に延びていてもよい。切り欠き93は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第4ピンによって、形成される。第4ピンは、マグネット52の径方向外側の面に、突き当てられる。それにより、マグネット52が径方向に位置決めされる。
【0064】
また、
図3、
図4、および
図7に示すように、本実施形態では、外コア部62の径方向外側の面が、樹脂部53から露出している。そして、外コア部62の径方向外側の面の径方向位置と、外樹脂部533の径方向外側の面の径方向位置とが、略同一となっている。このようにすれば、外コア部62の径方向外側の面を、電機子23に接近させることができる。その結果、モータ1の効率を、より高めることができる。
【0065】
<2−3.ロータの製造手順>
続いて、ロータ32の製造方法の一例について、説明する。
図9は、ロータ32の製造手順を示すフローチャートである。
図10および
図11は、ロータ32の製造時の様子を示す縦断面図である。
【0066】
ロータ32を製造するときには、まず、一対の金型110,120、予め作製された積層コア51、および予め作製された複数のマグネット52を用意する(ステップS1)。一対の金型110,120は、互いの対向面を当接させることにより、それらの内部に、ロータ32の形状に対応する空洞130を形成するものが、使用される。また、
図10および
図11に示すように、本実施形態では、下側の金型110が、第1ピン111、第2ピン(図示省略)、第3ピン113、および第4ピン114を有する。そして、上側の金型120が、第1ピン121およびゲート122を有する。
【0067】
次に、一対の金型110,120の内部に、積層コア51および複数のマグネット52を配置する(ステップS2)。ここでは、まず、下側の金型110の内部に、積層コア51および複数のマグネット52を配置する。そして、当該金型110の上部を、上側の金型120で閉鎖する。これにより、金型110,120の内部に空洞130が形成され、当該空洞130に積層コア51および複数のマグネット52が配置された状態となる。
【0068】
ステップS2では、複数の外コア部62と、複数のマグネット52とが、周方向に交互に配列される。また、
図10に示すように、第1ピン111,121は、マグネット52の下面および上面に、それぞれ突き当てられる。これにより、マグネット52が軸方向に位置決めされる。また、第2ピン(図示省略)は、外コア部62の下面に突き当てられる。これにより、積層コア51が軸方向に位置決めされる。また、第3ピン113は、外コア部62の貫通孔621に挿入される。これにより、積層コア51が周方向に位置決めされる。また、第4ピン114は、マグネット52の径方向外側の面に、突き当てられる。これにより、マグネット52が径方向に位置決めされる。
【0069】
続いて、金型110,120内の空洞130に、溶融樹脂530を流し込む(ステップS3)。ここでは、
図10中の太線矢印のように、ゲート122から金型110,120内の空洞130へ、溶融樹脂530が流し込まれる。ゲート122は、金型110,120内に配置された内コア部61より、径方向外側に位置している。また、平面視において、ゲート122の全体が、貫通孔621より径方向内側に位置している。ゲート122は、外コア部62の上面と、軸方向に対向している。
【0070】
ゲート122から吐出された溶融樹脂530は、外コア部62の上面に当たり、積層コア51および複数のマグネット52の上面に沿って、周囲に広がる。その後、溶融樹脂530は、マグネット52の径方向外側、マグネット52および外コア部62の径方向内側、および貫通孔621内の各空間を通って、積層コア51および複数のマグネット52の下面側へ流れる。これにより、金型110,120内の空洞130に、溶融樹脂530が効率よく行き渡る。その結果、樹脂部53の各部が精度よく成型される。
【0071】
金型110,120内の空洞130に溶融樹脂530が行き渡ると、続いて、金型110,120内の溶融樹脂530を、冷却して固化させる(ステップS4)。金型110,120内の溶融樹脂530は、固化されることにより、樹脂部53となる。
図11に示すように、樹脂部53は、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を有するように、成型される。また、溶融樹脂530の固化とともに、積層コア51、マグネット52、および樹脂部53が、互いに固定される。
【0072】
その後、一対の金型110,120を開き、金型110,120からロータ32を離型させる(ステップS5)。
【0073】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、ゲートおよびゲート痕部は、その一部分のみが、貫通孔より径方向内側に位置していてもよい。また、ゲートおよびゲート痕部は、マグネットの上方に位置していてもよい。内コア部と各外コア部とを繋ぐ連結部の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、各外コア部に設けられる貫通孔の形状は、本願の各図のように、平面視において略円形であってもよく、平面視において楕円形や矩形であってもよい。
【0075】
その他、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。