特許第6135967号(P6135967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6135967ロータ、モータ、およびロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135967
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ロータ、モータ、およびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20170522BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K15/03 Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-174770(P2012-174770)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-36457(P2014-36457A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年3月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】旭 恭平
(72)【発明者】
【氏名】濱岸 憲一朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】寺田 進
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−063285(JP,A)
【文献】 特開2011−097742(JP,A)
【文献】 特開2011−147323(JP,A)
【文献】 特開2001−238380(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナロータ型のモータに用いられるロータであって、
上下に延びる中心軸の周囲に、周方向に配列された複数のマグネットと、
複数の薄板コアが軸方向に積層された積層コアと、
射出成型により得られた樹脂部と、
を有し、
前記積層コアは、
前記マグネットより径方向内側において、軸方向に筒状に延びる内コア部と、
前記内コア部より径方向外側において、周方向に配列され、上面視において扇形の外形を有する複数の外コア部と、
を有し、
複数の前記外コア部と、複数の前記マグネットとが、周方向に交互に配列され、
前記マグネットは、磁極面である一対の周方向端面を有し、
前記マグネットの軸方向の上端部は、外コア部の軸方向上端部より、上側に突出し、
複数の前記マグネットの同極の磁極面同士が、周方向に対向し、
前記外コア部は、軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記内コア部の径方向外側且つ前記マグネットの径方向内側に、磁気的空隙が設けられ、
前記樹脂部は、
前記積層コアおよび前記マグネットの上面を覆う上樹脂部と、
前記積層コアおよび前記マグネットの下面を覆う下樹脂部と、
前記マグネットの径方向外側の面を覆う外樹脂部と、
前記貫通孔内において軸方向に延び、前記上樹脂部と前記下樹脂部とを繋ぐ柱状部と、
前記磁気的空隙を満たす内樹脂部と、
を有し、
前記上樹脂部と前記下樹脂部とが、前記外樹脂部、前記柱状部、および前記内樹脂部を介して、軸方向に繋がっており、
前記樹脂部は、射出成型時に金型のゲートが位置していたゲート痕部を有し、
前記ゲート痕部は、前記外コア部の上方に位置し、
平面視において、前記ゲート痕部の全体が、前記貫通孔より径方向内側に位置しているロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータにおいて、
前記外樹脂部の径方向の厚みは、前記柱状部の径方向の厚みおよび前記内樹脂部の径方向の厚みのいずれよりも、薄いロータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロータにおいて、
前記マグネットの上面および下面の少なくとも一方が、前記積層コアの軸方向の両端面より軸方向外側に位置するロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のロータにおいて、
前記マグネットは、上面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界、および、下面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界の、少なくとも一方にテーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記積層コアの軸方向の両端面より、軸方向外側に位置しているロータ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のロータにおいて、
前記上樹脂部の上面および前記下樹脂部の下面は、それぞれ、前記外コア部と軸方向に重なる部分に凹部を有するロータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のロータにおいて、
前記上樹脂部および前記下樹脂部は、前記マグネットと軸方向に重なる位置に、第1位置決め孔を有するロータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載のロータにおいて、
前記外樹脂部は、径方向に貫通する切り欠きを有するロータ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のロータにおいて、
前記上樹脂部および前記下樹脂部の少なくとも一方は、前記積層コアと軸方向に重なる位置に、第2位置決め孔を有するロータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載のロータにおいて、
前記外コア部の径方向外側の面は、前記樹脂部から露出し、
前記外コア部の径方向外側の面の径方向位置と、前記外樹脂部の径方向外側の面の径方向位置とが、略同一であるロータ。
【請求項10】
静止部と、
前記静止部に対して回転可能に支持される回転部と、
を備え、
前記回転部は、
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のロータと、
前記ロータの内側に挿入されたシャフトと、
を有し、
前記静止部は、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受部と、
前記ロータの径方向外側に配置された電機子と、
を有するモータ。
【請求項11】
上下に延びる中心軸の周囲に配列される複数のマグネットと、軸方向に筒状に延びる内コア部、前記内コア部より径方向外側において周方向に配列され、上面視において扇形の外形を有する複数の外コア部、および前記外コア部を軸方向に貫通する貫通孔を有する積層コアと、前記内コア部の径方向外側且つ前記マグネットの径方向内側に設けられる磁気的空隙と、前記積層コアおよび前記マグネットの上面を覆う上樹脂部と、前記積層コアおよび前記マグネットの下面を覆う下樹脂部と、前記マグネットの径方向外側の面を覆う外樹脂部と、前記貫通孔内において軸方向に延び、前記上樹脂部と前記下樹脂部とを繋ぐ柱状部と、前記磁気的空隙を満たす内樹脂部と、を有し、前記マグネットの軸方向の両端部は、外コア部の軸方向両端部より上側に突出し、前記上樹脂部と前記下樹脂部とが、前記外樹脂部、前記柱状部、および前記内樹脂部を介して、軸方向に繋がっているロータの製造方法であって、
a)前記積層コアと、複数の前記マグネットとを、金型の内部に配置する工程と、
b)前記金型のゲートを介して、前記金型の内部へ、溶融樹脂を流し込む工程と、
c)前記溶融樹脂を固化して前記樹脂部を得る工程と、
を含み、
前記工程a)では、複数の前記外コア部と、複数の前記マグネットとを、周方向に交互に配列し、
前記工程b)では、前記ゲートが、前記外コア部の上面と軸方向に対向しているとともに、
前記ゲートの全体が、前記貫通孔より径方向内側に位置し、前記ゲートから、前記積層コアおよび前記マグネットの上面、前記積層コアおよび前記マグネットの下面、前記マグネットの径方向外側の面、前記マグネットおよび前記外コア部の径方向内側の面、および前記貫通孔内へ、溶融樹脂を注入する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータ、およびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電機子の内側にロータが配置された、いわゆるインナロータ型のモータが知られている。インナロータ型のモータに使用されるロータは、主として、ロータコアの外周面に複数のマグネットが貼り付けられたSPM(Surface Permanent Magnet)タイプのロータと、ロータコアの内部にマグネットが埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)タイプのロータとに、分類される。
【0003】
SPMタイプのロータを使用すれば、電機子とマグネットとを接近させることができる。このため、マグネットの磁力を有効に利用できる。しかしながら、SPMタイプのロータでは、高速回転時にマグネットが遠心力で外側へ飛び出さないように、対策を施す必要がある。一方、IPMタイプのロータを使用すれば、遠心力によるマグネットの飛び出しの虞が無い。このため、近年では、IPMタイプのロータが主流となりつつある。
【0004】
ただし、一般的に、SPMタイプおよびIPMタイプのいずれのロータにおいても、各マグネットは、一対の磁極面が径方向外側および径方向内側を向くように、配置される。このため、マグネットの径方向外側の磁極面のみが、モータの駆動に寄与することとなる。そこで、近年では、マグネットの一対の磁極面を有効に利用するために、マグネットと磁性体のコアとが周方向に交互に配置されたロータ構造が、提案されている。
【0005】
マグネットとコアとが周方向に交互に配置された従来のロータについては、例えば、特開2010−063285号公報に開示されている。当該公報の回転子は、回転子コアと、回転子コアに形成された複数のスロット内にそれぞれ収容される略直方体状の磁石と、を備えている(段落0059)。また、当該公報では、回転子の磁石の全体が、封止樹脂で覆われている(段落0063)。これにより、磁石の保持力が高められている(段落0064)。
【特許文献1】特開2010−063285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2010−063285号公報の図5では、封止樹脂を成形型内へ射出するゲートが、磁石の径方向外側の端部付近の上方位置に、設けられている。従来、このような位置にゲートを配置していたのは、磁石の径方向外側の面を、封止樹脂で確実に覆うことを重視していたためと考えられる。しかしながら、ゲートの位置が径方向外側に偏在していると、ゲートより径方向内側に位置する貫通穴や、マグネットの径方向内側へ、樹脂を行き渡らせることが、困難となる。封止樹脂の剛性を高めるためには、貫通穴やマグネットの径方向内側においても、封止樹脂を精度よく成型することが求められる。
【0007】
本発明の目的は、複数の外コア部と複数のマグネットとが周方向に交互に配列され、かつ、外コア部およびマグネットを覆う樹脂部を有するロータにおいて、溶融樹脂の射出圧が一部分に集中することを抑制し、樹脂部の各部を精度よく成型できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の例示的な第1発明は、インナロータ型のモータに用いられるロータであって、上下に延びる中心軸の周囲に、周方向に配列された複数のマグネットと、複数の薄板コアが軸方向に積層された積層コアと、射出成型により得られた樹脂部と、を有し、前記積層コアは、前記マグネットより径方向内側において、軸方向に筒状に延びる内コア部と、前記内コア部より径方向外側において、周方向に配列され、上面視において扇形の外形を有する複数の外コア部と、を有し、複数の前記外コア部と、複数の前記マグネットとが、周方向に交互に配列され、前記マグネットは、磁極面である一対の周方向端面を有し、前記マグネットの軸方向の両端部は、外コア部の軸方向両端部より、上側に突出し、複数の前記マグネットの同極の磁極面同士が、周方向に対向し、前記外コア部は、軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記内コア部の径方向外側且つ前記マグネットの径方向内側に、磁気的空隙が設けられ、 前記樹脂部は、前記積層コアおよび前記マグネットの上面を覆う上樹脂部と、前記積層コアおよび前記マグネットの下面を覆う下樹脂部と、前記マグネットの径方向外側の面を覆う外樹脂部と、前記貫通孔内において軸方向に延び、前記上樹脂部と前記下樹脂部とを繋ぐ柱状部と、前記磁気的空隙を満たす内樹脂部と、を有し、前記上樹脂部と前記下樹脂部とが、前記外樹脂部、前記柱状部、および前記内樹脂部を介して、軸方向に繋がっており、前記樹脂部は、射出成型時に金型のゲートが位置していたゲート痕部を有し、前記ゲート痕部は、前記外コア部の上方に位置し、平面視において、前記ゲート痕部の全体が、前記貫通孔より径方向内側に位置しているロータである。
【0009】
本願の例示的な第2発明は、 上下に延びる中心軸の周囲に配列される複数のマグネットと、軸方向に筒状に延びる内コア部、前記内コア部より径方向外側において周方向に配列され、上面視において扇形の外形を有する複数の外コア部、および前記外コア部を軸方向に貫通する貫通孔を有する積層コアと、前記内コア部の径方向外側且つ前記マグネットの径方向内側に設けられる磁気的空隙と、前記積層コアおよび前記マグネットの上面を覆う上樹脂部と、前記積層コアおよび前記マグネットの下面を覆う下樹脂部と、前記マグネットの径方向外側の面を覆う外樹脂部と、前記貫通孔内において軸方向に延び、前記上樹脂部と前記下樹脂部とを繋ぐ柱状部と、前記磁気的空隙を満たす内樹脂部と、を有し、前記マグネットの軸方向の両端部は、外コア部の軸方向両端部より上側に突出し、前記上樹脂部と前記下樹脂部とが、前記外樹脂部、前記柱状部、および前記内樹脂部を介して、軸方向に繋がっているロータの製造方法であって、a)前記積層コアと、複数の前記マグネットとを、金型の内部に配置する工程と、b)前記金型のゲートを介して、前記金型の内部へ、溶融樹脂を流し込む工程と、c)前記溶融樹脂を固化して前記樹脂部を得る工程と、を含み、前記工程a)では、複数の前記外コア部と、複数の前記マグネットとを、周方向に交互に配列し、前記工程b)では、前記ゲートが、外コア部の上面と軸方向に対向しているとともに、前記ゲートの全体が、前記貫通孔より径方向内側に位置し、前記ゲートから、前記積層コアおよび前記マグネットの上面、前記積層コアおよび前記マグネットの下面、前記マグネットの径方向外側の面、前記マグネットおよび前記外コア部の径方向内側の面、および前記貫通孔内へ、溶融樹脂を注入する製造方法である。

【発明の効果】
【0010】
本願の例示的な第1発明によれば、貫通孔内に配置された柱状部によって、樹脂部の剛性が向上する。また、ゲート痕部の少なくとも一部分が、貫通孔より径方向内側に位置する。このため、射出成型時には、ゲートから吐出された溶融樹脂が、積層コアまたはマグネットの上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔へ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その結果、樹脂部の各部が精度よく成型される。
【0011】
本願の例示的な第2発明によれば、貫通孔内に形成される柱状部によって、樹脂部の剛性が向上する。また、ゲートの少なくとも一部分が、貫通孔より径方向内側に位置する。このため、ゲートから吐出された溶融樹脂が、積層コアまたはマグネットの上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔へ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その結果、樹脂部の各部が精度よく成型される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係るロータの斜視図である。
図2図2は、第2実施形態に係るモータの縦断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る回転部の縦断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係るロータの斜視図である。
図5図5は、第2実施形態に係るロータの上面図である。
図6図6は、第2実施形態に係るロータの下面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るロータの横断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る積層コアおよび複数のマグネットの上面図である。
図9図9は、第2実施形態に係るロータの製造手順を示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態に係るロータの製造時の様子を示す縦断面図である。
図11図11は、第2実施形態に係るロータの製造時の様子を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、ロータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、ロータの中心軸に直交する方向を「径方向」、ロータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るロータおよびモータの使用時および製造時の向きを限定する意図はない。
【0014】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0015】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータ32Aの斜視図である。このロータ32Aは、インナロータ型のモータに用いられる。図1に示すように、ロータ32Aは、積層コア51Aと、複数のマグネット52Aと、樹脂部53Aとを有する。積層コア51Aは、軸方向に積層された複数の薄板コアにより、構成されている。複数のマグネット52Aは、上下に延びる中心軸9Aの周囲に、周方向に配列されている。樹脂部53Aは、射出成型により得られる。
【0016】
積層コア51Aは、内コア部61Aと、複数の外コア部62Aとを有する。内コア部61Aは、マグネット52Aより径方向内側において、軸方向に筒状に延びている。複数の外コア部62Aは、内コア部61Aより径方向外側において、周方向に配列されている。各外コア部62Aは、軸方向に貫通する貫通孔621Aを有する。複数の外コア部62Aと、複数のマグネット52Aとは、周方向に交互に配列されている。マグネット52Aは、磁極面である一対の周方向端面を有する。また、複数のマグネット52Aは、同極の磁極面同士が周方向に対向するように、配置されている。
【0017】
樹脂部53Aは、上樹脂部531A、下樹脂部532A、外樹脂部533A、および柱状部535Aを有する。上樹脂部531Aは、積層コア51Aおよびマグネット52Aの上面を覆っている。下樹脂部532Aは、積層コア51Aおよびマグネット52Aの下面を覆っている。外樹脂部533Aは、マグネット52Aの径方向外側の面を覆っている。柱状部535Aは、貫通孔621A内において、軸方向に延びている。上樹脂部531Aと下樹脂部532Aとは、柱状部535Aにより繋がれている。これにより、樹脂部53Aの剛性が高められている。
【0018】
なお、ここで記載した「覆う」とは、対象となる面の全体を覆うという意味だけではなく、対象となる面の一部分を覆うという意味も含んでいる。例えば、マグネット52Aの径方向外側の面の全体が、外樹脂部533Aに覆われていてもよいし、マグネット52Aの径方向外側の面の一部分のみが、外樹脂部533Aに覆われていてもよい。
【0019】
また、図1に示すように、樹脂部53Aは、複数のゲート痕部91Aを有する。複数のゲート痕部91Aは、樹脂部53Aの射出成型時に、金型のゲートが位置していた箇所に、設けられている。各ゲート痕部91Aは、内コア部61Aより径方向外側に位置している。また、平面視において、ゲート痕部91Aの少なくとも一部分が、貫通孔621Aより径方向内側に位置している。
【0020】
このロータ32Aを製造するときには、まず、積層コア51Aと、複数のマグネット52Aとを、金型の内部に配置する。このとき、複数の外コア部62Aと、複数のマグネット52Aとが、周方向に交互に配列される。次に、金型のゲートを介して、金型の内部へ、溶融樹脂を流し込む。ゲートは、内コア部61Aより径方向外側に位置する。また、ゲートの少なくとも一部分が、貫通孔621Aより径方向内側に位置する。
【0021】
ゲートから注入された溶融樹脂は、積層コア51Aまたはマグネット52Aの上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔621Aへ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その後、溶融樹脂は、積層コア51Aおよびマグネット52Aの上面、積層コア51Aおよびマグネット52Aの下面、マグネット52Aの径方向外側の面、および貫通孔621A内へ、流れる。そして、当該溶融樹脂を固化することにより、樹脂部53Aが得られる。これにより、樹脂部53Aの各部が精度よく成型される。
【0022】
<2.第2実施形態>
<2−1.モータの全体構成>
続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。図2は、第2実施形態に係るモータ1の縦断面図である。本実施形態のモータ1は、例えば、自動車に搭載され、パワーステアリングの駆動力を発生させるために使用される。ただし、本発明のモータは、パワーステアリング以外の用途に使用されるものであってもよい。例えば、本発明のモータは、自動車の他の部位、例えばエンジン冷却用ファンやオイルポンプの駆動源として、使用されるものであってもよい。また、本発明のモータは、家電製品、OA機器、医療機器等に搭載され、各種の駆動力を発生させるものであってもよい。
【0023】
このモータ1は、電機子23の径方向内側にロータ32が配置される、いわゆるインナロータ型のモータである。図2に示すように、モータ1は、静止部2と回転部3とを有する。静止部2は、駆動対象となる機器の枠体に固定される。回転部3は、静止部2に対して、回転可能に支持される。
【0024】
本実施形態の静止部2は、ハウジング21、蓋部22、電機子23、下軸受部24、および上軸受部25を有する。
【0025】
ハウジング21は、略円筒状の側壁211と、側壁211の下部を塞ぐ底部212と、を有する。蓋部22は、ハウジング21の上部の開口を覆っている。電機子23および後述するロータ32は、ハウジング21と蓋部22とに囲まれた内部空間に、収容されている。ハウジング21の底部212の中央には、下軸受部24を配置するための凹部213が、設けられている。また、蓋部22の中央には、上軸受部25を配置するための円孔221が、設けられている。
【0026】
電機子23は、後述するロータ32の径方向外側に、配置されている。電機子23は、ステータコア41、インシュレータ42、およびコイル43を有する。ステータコア41は、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなる。ステータコア41は、円環状のコアバック411と、コアバック411から径方向内側へ向けて突出した複数のティース412とを有する。コアバック411は、中心軸9と略同軸に配置されている。また、コアバック411の外周面は、ハウジング21の側壁211の内周面に、固定されている。複数のティース412は、周方向に略等間隔に配列されている。
【0027】
インシュレータ42は、絶縁体である樹脂からなる。各ティース412の上面、下面、および周方向の両側面は、インシュレータ42に覆われている。コイル43は、インシュレータ42の周囲に巻かれた導線により、構成される。すなわち、本実施形態では、ティース412の周囲に、インシュレータ42を介して、導線が巻かれている。インシュレータ42は、ティース412とコイル43との間に介在することによって、ティース412とコイル43とが電気的に短絡することを、防止する。
【0028】
なお、インシュレータ42に代えて、ティース412の表面に、絶縁塗装が施されていてもよい。
【0029】
下軸受部24および上軸受部25は、ハウジング21および蓋部22と、回転部3側のシャフト31との間に配置されている。本実施形態の下軸受部24および上軸受部25には、球体を介して外輪と内輪とを相対回転させるボールベアリングが、使用されている。ただし、ボールベアリングに代えて、すべり軸受や流体軸受等の他方式の軸受が、使用されていてもよい。
【0030】
下軸受部24の外輪241は、ハウジング21の凹部213内に配置されて、ハウジング21に固定されている。また、上軸受部25の外輪251は、蓋部22の円孔221内に配置されて、蓋部22に固定されている。一方、下軸受部24および上軸受部25の内輪242,252は、シャフト31に固定されている。これにより、シャフト31は、ハウジング21および蓋部22に対して、回転可能に支持されている。
【0031】
図3は、回転部3の縦断面図である。図2および図3に示すように、本実施形態の回転部3は、シャフト31とロータ32とを有する。
【0032】
シャフト31は、中心軸9に沿って延びる柱状の部材である。シャフト31の材料には、例えばステンレスが使用される。シャフト31は、上述した下軸受部24および上軸受部25に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。また、シャフト31は、蓋部22より上方に突出した頭部311を有する。頭部311は、ギア等の動力伝達機構を介して、駆動対象となる部位に連結される。
【0033】
ロータ32は、電機子23の径方向内側に配置されて、シャフト31とともに回転する。ロータ32は、積層コア51、複数のマグネット52、および樹脂部53を有する。積層コア51は、電磁鋼板である複数の薄板コア511からなる。複数の薄板コア511は、軸方向に積層されて、積層鋼板を構成している。積層鋼板を使用すれば、積層コア51内に生じる渦電流を、抑制できる。したがって、積層コア51に効率よく磁束を流すことができる。積層コア51の中央には、軸方向に延びる挿入孔50が、設けられている。シャフト31は、積層コア51の挿入孔50に、圧入される。
【0034】
複数のマグネット52は、中心軸9の周囲において、周方向に略等間隔に配列されている。本実施形態では、略直方体状のマグネット52が使用されている。積層コア51および複数のマグネット52の軸方向両端面と、マグネット52の径方向外側の面とは、樹脂部53に覆われている。これにより、マグネット52の上側、下側、および径方向外側への飛び出しが、防止されている。また、樹脂部53により、ロータ32全体の剛性が、高められている。なお、ロータ32のより詳細な構造については、後述する。
【0035】
このようなモータ1において、静止部2のコイル43に駆動電流を与えると、複数のティース412に磁束が発生する。そして、ティース412とロータ32との間の磁束の作用により、周方向のトルクが生じる。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。
【0036】
<2−2.ロータについて>
続いて、ロータ32のより詳細な構造について、説明する。図4は、ロータ32の斜視図である。図5は、ロータ32の上面図である。図6は、ロータ32の下面図である。図7は、図3中のA−A位置から見たロータ32の横断面図である。図8は、積層コア51および複数のマグネット52の上面図である。以下の説明においては、図3とともに、図4図8も参照する。なお、図3におけるロータ32の縦断面は、図5図7中のB−B断面に相当する。
【0037】
図3図8に示すように、積層コア51は、内コア部61と、複数の外コア部62とを有する。内コア部61は、マグネット52より径方向内側において、軸方向に筒状に延びている。複数の外コア部62は、内コア部61より径方向外側において、周方向に略等間隔に配列されている。図7および図8に示すように、各外コア部62は、上面視において略扇形の外形を有し、軸方向に延びている。
【0038】
また、図3および図5図8に示すように、各外コア部62は、貫通孔621を有する。貫通孔621は、外コア部62を軸方向に貫通している。本実施形態では、貫通孔621の径方向の中央が、外コア部62の径方向の中央より、径方向外側に位置している。
【0039】
また、図3および図8に示すように、本実施形態の積層コア51は、内コア部61と複数の外コア部62とを繋ぐ、複数の連結部63を有する。各連結部63は、内コア部61の外周面と、外コア部62の径方向内側の端部とを、径方向に繋いでいる。これらの連結部63により、内コア部61と複数の外コア部62との相対的な位置関係が固定される。このため、後述する樹脂部53の射出成型時には、金型内において、内コア部61および複数の外コア部62を、容易に位置決めできる。
【0040】
なお、図8では、連結部63が設けられていない軸方向位置における内コア部61の外周面が、破線611で示されている。また、図6では、連結部63が設けられていない軸方向位置における外コア部62の径方向内側の端部が、破線621で示されている。連結部63は、平面視においてこれらの破線611,621に挟まれた部分である。
【0041】
複数のマグネット52は、それぞれ、隣り合う外コア部62の間に、配置されている。すなわち、複数のマグネット52と、複数の外コア部62とは、周方向に交互に配列されている。各マグネット52は、磁極面である一対の周方向端面を有する。複数のマグネット52は、同極の磁極面同士が周方向に対向するように、配列されている。各外コア部62は、その両側に配置されたマグネット52により磁化される。その結果、外コア部62の径方向外側の面が、磁極面となる。つまり、マグネット52から生じる磁束の大部分は、外コア部62を通って、外コア部62の径方向外側へ流れる。
【0042】
マグネット52には、例えば、フェライト系の焼結マグネットや、ネオジムマグネットが使用される。ただし、近年では、レアアースであるネオジムの価格が高騰し、ネオジムマグネットを使用することが困難となっている。このため、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、強い磁力を得たいという技術的要求が高い。この点、本実施形態のように、複数の外コア部62と、複数のマグネット52とを、周方向に交互に配置すれば、ロータ32におけるマグネット52の体積比率を、高めることができる。また、各マグネット52の一対の磁極面から生じる磁束を、有効に利用できる。したがって、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、強い磁力を得ることが可能となる。
【0043】
図3に示すように、本実施形態のマグネット52は、上面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界、および、下面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界に、テーパ面521を有する。そして、マグネット52の上面、下面、およびテーパ面521が、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向外側に位置している。このようにすれば、外コア部62の周方向端面のほぼ全体が、マグネット52の周方向端面と接触する。すなわち、マグネット52の上面、下面、およびテーパ面521が、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向内側に位置する場合より、外コア部62の周方向端面と、マグネット52の周方向端面との接触面積が増加する。このため、テーパ面521による磁束のロスを抑制し、マグネット52の磁束を有効に使うことができる。
【0044】
なお、テーパ面521は、マグネット52の上面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界、および、マグネット52の下面と、周方向両端面および径方向両端面のそれぞれとの境界の、一方のみに設けられていてもよい。また、マグネット52の上面および下面の一方のみが、積層コア51の軸方向の両端面より、軸方向外側に位置していてもよい。
【0045】
樹脂部53は、ポリカーボネート等の樹脂を、射出成型することにより得られる。樹脂部53の射出成型時には、金型の内部に予め積層コア51および複数のマグネット52を配置した後、当該金型の内部に溶融樹脂を流し込む。すなわち、積層コア51および複数のマグネット52をインサート部品とするインサート成型を行う。これにより、樹脂部53が成型されるとともに、積層コア51、複数のマグネット52、および樹脂部53が、互いに固定される。
【0046】
図3図7に示すように、本実施形態の樹脂部53は、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を有する。
【0047】
上樹脂部531は、積層コア51および複数のマグネット52の上側、かつ、シャフト31の径方向外側において、環状に広がっている。外コア部62の上面およびマグネット52の上面は、上樹脂部531に覆われている。下樹脂部532は、積層コア51および複数のマグネット52の下側、かつ、シャフト31の径方向外側において、環状に広がっている。外コア部62の下面およびマグネット52の下面は、下樹脂部532に覆われている。
【0048】
外樹脂部533は、マグネット52の径方向外側、かつ、隣り合う外コア部62の間に、位置している。マグネット52の径方向外側の面は、外樹脂部533に覆われている。内樹脂部534は、内コア部61と、外コア部62およびマグネット52との間に位置する磁気的空隙70を、満たしている。また、柱状部535は、貫通孔621内において、軸方向に延びている。
【0049】
図3に示すように、積層コア51の複数の連結部63は、複数の上連結部631と、複数の下連結部632とを、含んでいる。上連結部631は、積層コア51の軸方向中央より上側に位置し、最上段の1枚または複数枚の薄板コア511により、構成されている。下連結部632は、積層コア51の軸方向中央より下側に位置し、最下段の1枚または複数枚の薄板コア511により、構成されている。
【0050】
上述した磁気的空隙70は、第1の磁気的空隙71と、第2の磁気的空隙72とを、含んでいる。第1の磁気的空隙71は、上連結部631と下連結部632との間に位置している。第2の磁気的空隙72は、隣り合う外コア部62の間の周方向位置、内コア部61の径方向外側、かつ、マグネット52の径方向内側に、位置している。これにより、外コア部62およびマグネット52から内コア部61への磁束の漏れが、抑制される。本実施形態では、第1の磁気的空隙71および第2の磁気的空隙の双方が、非磁性体である内樹脂部534で、満たされている。これにより、ロータ32の剛性がより高められている。
【0051】
外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535の各上端部は、上樹脂部531に連結されている。また、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535の各下端部は、下樹脂部532に連結されている。すなわち、上樹脂部531と下樹脂部532とは、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を介して、軸方向に繋がっている。これにより、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を含む樹脂部53の剛性が、高められている。
【0052】
また、図3図5に示すように、樹脂部53は、上樹脂部531の上面に、ゲート痕部91を有する。ゲート痕部91は、外コア部62の上方に位置する。ゲート痕部91は、樹脂部53の射出成型時に、金型のゲートが位置していた箇所に、形成される。ゲート痕部91は、中央突部911と、中央突部911の周囲に設けられた環状凹部912と、を有する。平面視において、中央凸部911の面積は、溶融樹脂を吐出するゲート孔の面積と、略同一となる。また、平面視において、環状凹部912の面積は、ゲート孔の周囲の凸部の面積と、略同一となる。
【0053】
このモータ1では、ゲート痕部91が、内コア部61より径方向外側に位置する。また、平面視において、ゲート痕部91の少なくとも一部分が、貫通孔621より径方向内側に位置する。後述する射出成型時には、ゲートから吐出された溶融樹脂が、外コア部62の上面に当たって、周囲に広がる。その際、溶融樹脂の射出圧が貫通孔621へ集中することが、抑制される。したがって、溶融樹脂が効率よく周囲に広がる。その結果、樹脂部53の各部が精度よく成型される。
【0054】
特に、ゲートから吐出された溶融樹脂は、マグネット52の径方向外側、マグネット52および外コア部62の径方向内側、および貫通孔621内の各空間へ、効率よく流れる。その結果、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535が、それぞれ精度よく成型される。
【0055】
本実施形態では、外樹脂部533の径方向の厚みが、柱状部535の径方向の厚みや内樹脂部534の径方向の厚みと比較して、薄い。このようにすれば、マグネット52の収容スペースを確保しやすい。このため、フェライト系の焼結マグネットを使用しつつ、より強い磁力を得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ゲート痕部91が、マグネット52の上方ではなく、外コア部62の上方に位置する。このため、ゲートから吐出された溶融樹脂は、マグネット52の上面ではなく、外コア部62の上面に当たる。このようにすれば、溶融樹脂の射出圧によるマグネット52の位置ずれを、抑制できる。
【0057】
また、図3図5に示すように、本実施形態では、上樹脂部531の上面および下樹脂部532の下面に、複数の凹部92が設けられている。各凹部92は、外コア部62と、軸方向に重なっている。上述の通り、本実施形態では、マグネット52の軸方向の両端部が、外コア部62の軸方向両端部より、上下に突出している。しかしながら、この凹部92により、マグネット52の上側および下側に位置する樹脂の軸方向の厚みと、外コア部62の上側および下側に位置する樹脂の軸方向の厚みとの差が、小さくなっている。すなわち、上樹脂部531および下樹脂部532のそれぞれの厚みが、全周に亘って略均一化されている。このようにすれば、射出成型時に、樹脂の厚みの差によって生じる変形を防止できる。したがって、上樹脂部531および下樹脂部532が、より精度よく成型される。なお、本実施形態では、上樹脂部531の凹部92内に、ゲート痕部91が位置している。
【0058】
また、図3図6に示すように、本実施形態の上樹脂部531および下樹脂部532は、それぞれ、複数の第1位置決め孔93を有する。各第1位置決め孔93は、マグネット52と軸方向に重なる位置において、上樹脂部531または下樹脂部532を、軸方向に貫通している。第1位置決め孔93は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第1ピンによって、形成される。第1ピンは、マグネット52の上面および下面に突き当てられる。それにより、金型内において、マグネット52が軸方向に位置決めされる。
【0059】
また、図4および図6に示すように、本実施形態の下樹脂部532は、複数の第2位置決め孔94を有する。各第2位置決め孔94は、外コア部62と軸方向に重なる位置において、下樹脂部532を軸方向に貫通している。第2位置決め孔94は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第2ピン(図示省略)によって、形成される。第2ピン(図示省略)は、外コア部62の下面に突き当てられる。それにより、金型内において、積層コア51が軸方向に位置決めされる。
【0060】
本実施形態では、第2位置決め孔94が、下樹脂部532のみに設けられている。しかしながら、第2位置決め孔は、上樹脂部531のみ、または、上樹脂部531および下樹脂部532の双方に、設けられていてもよい。
【0061】
また、図3および図6に示すように、本実施形態の樹脂部53は、複数の第3位置決め孔95を有する。各第3位置決め孔95は、外コア部62の貫通孔621と軸方向に重なる位置において、下樹脂部532の下面から柱状部535へ向けて、凹んでいる。第3位置決め孔95は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第3ピンによって、形成される。第3ピンは、外コア部62の貫通孔621に挿入される。それにより、金型内において、積層コア51が周方向に位置決めされる。
【0062】
図3および図6に示すように、本実施形態では、第3位置決め孔95が、貫通孔621の中央より径方向外側に位置している。しかしながら、第3位置決め孔95は、貫通孔621の中央より径方向内側に位置していてもよい。
【0063】
また、図3図4、および図6に示すように、本実施形態では、外樹脂部533に、複数の切り欠き96が設けられている。切り欠き96は、マグネット52の径方向外側において、外樹脂部533を径方向に貫通している。本実施形態では、外樹脂部533の下部付近のみに、切り欠き96が設けられている。ただし、切り欠き93は、外樹脂部533の下端部から上端部まで、軸方向に延びていてもよい。切り欠き93は、樹脂部53の射出成型時に、金型の一部を構成する第4ピンによって、形成される。第4ピンは、マグネット52の径方向外側の面に、突き当てられる。それにより、マグネット52が径方向に位置決めされる。
【0064】
また、図3図4、および図7に示すように、本実施形態では、外コア部62の径方向外側の面が、樹脂部53から露出している。そして、外コア部62の径方向外側の面の径方向位置と、外樹脂部533の径方向外側の面の径方向位置とが、略同一となっている。このようにすれば、外コア部62の径方向外側の面を、電機子23に接近させることができる。その結果、モータ1の効率を、より高めることができる。
【0065】
<2−3.ロータの製造手順>
続いて、ロータ32の製造方法の一例について、説明する。図9は、ロータ32の製造手順を示すフローチャートである。図10および図11は、ロータ32の製造時の様子を示す縦断面図である。
【0066】
ロータ32を製造するときには、まず、一対の金型110,120、予め作製された積層コア51、および予め作製された複数のマグネット52を用意する(ステップS1)。一対の金型110,120は、互いの対向面を当接させることにより、それらの内部に、ロータ32の形状に対応する空洞130を形成するものが、使用される。また、図10および図11に示すように、本実施形態では、下側の金型110が、第1ピン111、第2ピン(図示省略)、第3ピン113、および第4ピン114を有する。そして、上側の金型120が、第1ピン121およびゲート122を有する。
【0067】
次に、一対の金型110,120の内部に、積層コア51および複数のマグネット52を配置する(ステップS2)。ここでは、まず、下側の金型110の内部に、積層コア51および複数のマグネット52を配置する。そして、当該金型110の上部を、上側の金型120で閉鎖する。これにより、金型110,120の内部に空洞130が形成され、当該空洞130に積層コア51および複数のマグネット52が配置された状態となる。
【0068】
ステップS2では、複数の外コア部62と、複数のマグネット52とが、周方向に交互に配列される。また、図10に示すように、第1ピン111,121は、マグネット52の下面および上面に、それぞれ突き当てられる。これにより、マグネット52が軸方向に位置決めされる。また、第2ピン(図示省略)は、外コア部62の下面に突き当てられる。これにより、積層コア51が軸方向に位置決めされる。また、第3ピン113は、外コア部62の貫通孔621に挿入される。これにより、積層コア51が周方向に位置決めされる。また、第4ピン114は、マグネット52の径方向外側の面に、突き当てられる。これにより、マグネット52が径方向に位置決めされる。
【0069】
続いて、金型110,120内の空洞130に、溶融樹脂530を流し込む(ステップS3)。ここでは、図10中の太線矢印のように、ゲート122から金型110,120内の空洞130へ、溶融樹脂530が流し込まれる。ゲート122は、金型110,120内に配置された内コア部61より、径方向外側に位置している。また、平面視において、ゲート122の全体が、貫通孔621より径方向内側に位置している。ゲート122は、外コア部62の上面と、軸方向に対向している。
【0070】
ゲート122から吐出された溶融樹脂530は、外コア部62の上面に当たり、積層コア51および複数のマグネット52の上面に沿って、周囲に広がる。その後、溶融樹脂530は、マグネット52の径方向外側、マグネット52および外コア部62の径方向内側、および貫通孔621内の各空間を通って、積層コア51および複数のマグネット52の下面側へ流れる。これにより、金型110,120内の空洞130に、溶融樹脂530が効率よく行き渡る。その結果、樹脂部53の各部が精度よく成型される。
【0071】
金型110,120内の空洞130に溶融樹脂530が行き渡ると、続いて、金型110,120内の溶融樹脂530を、冷却して固化させる(ステップS4)。金型110,120内の溶融樹脂530は、固化されることにより、樹脂部53となる。図11に示すように、樹脂部53は、上樹脂部531、下樹脂部532、外樹脂部533、内樹脂部534、および柱状部535を有するように、成型される。また、溶融樹脂530の固化とともに、積層コア51、マグネット52、および樹脂部53が、互いに固定される。
【0072】
その後、一対の金型110,120を開き、金型110,120からロータ32を離型させる(ステップS5)。
【0073】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、ゲートおよびゲート痕部は、その一部分のみが、貫通孔より径方向内側に位置していてもよい。また、ゲートおよびゲート痕部は、マグネットの上方に位置していてもよい。内コア部と各外コア部とを繋ぐ連結部の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、各外コア部に設けられる貫通孔の形状は、本願の各図のように、平面視において略円形であってもよく、平面視において楕円形や矩形であってもよい。
【0075】
その他、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、ロータ、モータ、およびロータの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 モータ
2 静止部
3 回転部
9,9A 中心軸
21 ハウジング
22 蓋部
23 電機子
24 下軸受部
25 上軸受部
31 シャフト
32,32A ロータ
41 ステータコア
42 インシュレータ
43 コイル
51,51A 積層コア
52,52A マグネット
53,53A 樹脂部
61,61A 内コア部
62,62A 外コア部
63 連結部
70 磁気的空隙
71 第1の磁気的空隙
72 第2の磁気的空隙
91,91A ゲート痕部
92 凹部
93 第1位置決め孔
94 第2位置決め孔
95 第4位置決め孔
96 切り欠き
110,120 金型
111,121 第1ピン
113 第3ピン
114 第4ピン
122 ゲート
130 空洞
511 薄板コア
521 テーパ面
530 溶融樹脂
531,531A 上樹脂部
532,532A 下樹脂部
533,533A 外樹脂部
534 内樹脂部
535,535A 柱状部
621,621A 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11