特許第6135973号(P6135973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6135973インキドクターパン洗浄装置およびインキドクターパン洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6135973
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】インキドクターパン洗浄装置およびインキドクターパン洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   B41F35/00 D
   B41F35/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-257199(P2012-257199)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-104611(P2014-104611A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001717
【氏名又は名称】ニッカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】東谷 考志
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3104181(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3101834(JP,U)
【文献】 特開平02−078552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキドクターブレードとインキパンから成るインキドクターパンを保持するホルダと、前記インキドクターパンの内側面を洗浄する内側ブラシと、前記インキドクターパンの外側面を洗浄する外側ブラシと、前記インキドクターパンの洗浄に用いる洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、前記洗浄に用いられた洗浄液を回収する循環液タンクと、仕上げ用の洗浄液を貯留する新液タンクと、を備えたインキドクターパン洗浄装置であって、
前記ホルダは複数、垂直方向に沿って配置されていることを特徴とするインキドクターパン洗浄装置。
【請求項2】
前記循環液タンクを吸入側に接続し、第1の前記洗浄液噴射ノズルを吐出側に接続した第1のポンプと、
前記新液タンクを吸入側に接続し、第2の前記洗浄液噴射ノズルを吐出側に接続した第2のポンプと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項3】
前記循環液タンクと前記新液タンクとを単一のポンプの吸入側に接続し、当該ポンプの吐出側を複数または単一の前記洗浄液噴射ノズルに接続すると共に、
前記ポンプに接続されるタンクを前記循環液タンクと前記新液タンクのいずれか一方に切り替える切替手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記インキドクターパンの開口部が水平方向に向くように前記インキドクターパンを固定する手段を有し、
前記内側ブラシは、垂直方向に沿って配置された回転軸と、前記回転軸回りに形成された基部と、前記基部に配置された複数の線条材とより構成され、
前記回転軸は、前記インキドクターパンに対して近接、離間を可能とし、前記基部は、前記回転軸が前記インキドクターパンに対して近接した際に、その一部が前記開口部よりも前記インキドクターパンの底部側に介入する形態としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項5】
前記基部に配置される複数の線条材は、種々の長さを有し、短い線条材を前記回転軸側、長い線条材を先端側に配置したことを特徴とする請求項4に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項6】
前記外側ブラシは、水平方向に沿って配置された回転軸と、前記回転軸回りに形成された基部と、前記基部に配置された複数の線条材とより構成され、
前記外側ブラシは、前記インキドクターパンの上側と下側にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項7】
前記ホルダは、上段に配置された前記インキドクターパンの下側と、下段に配置された前記インキドクターパンの上側とを単一の外側ブラシで洗浄可能な幅で配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインキドクターパン洗浄装置。
【請求項8】
インキドクターブレードとインキパンから成るインキドクターパンを垂直方向に沿って複数配置されたホルダに保持させて、洗浄液を吹きかけながら、前記インキドクターパンに付着したインキをブラシで掻き取るインキドクターパンの洗浄方法であって、
複数の前記インキドクターパンを、垂直方向に沿って配置された前記ホルダのそれぞれに保持させる工程と、
洗浄に使用した洗浄液を回収して循環使用する本洗浄工程と、
新液を使用して、前記本洗浄工程後に残存する汚れを洗い流す仕上洗浄工程と、
を有することを特徴とするインキドクターパン洗浄方法。
【請求項9】
前記本洗浄工程は、前記インキドクターパンの長手方向に沿った洗浄を1工程とした場合に、当該工程を複数回繰り返した後、
前記仕上洗浄工程を1回行うことを特徴とする請求項に記載のインキドクターパン洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転印刷機に用いられるインキドクターパンに付着したインキ汚れを洗浄する装置および方法に係り、特に、インキドクターブレードの配置部位によって種々異なる形態とされるインキドクターパンを洗浄する際に好適なインキドクターパン洗浄装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輪転印刷機において、版胴やインキローラの表面に付着したインキを掻き採るインキドクターブレードには、その基端部に、掻き取った余剰インキを貯留するインキパンが附帯されている。インキパンは、インキドクターブレードの配置位置等により、種々の形態とされており、その洗浄に関しては、手作業によるものとされてきた。
【0003】
しかし、手作業による洗浄は、それに要する時間と労力が多大なわりに、洗浄効果が低く、洗浄に使用する溶剤やウエスも多いといった難点が指摘されていた。
このような実状に鑑み、インキドクターパン(インキドクターブレードとインキパンを合わせてインキドクターパンと称す)の洗浄を自動で行うための装置が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている洗浄装置は、エアと共に微少量の溶剤をインキドクターパンに吹き付けることで洗浄を行う装置である。
【0004】
この洗浄装置では、洗浄対象となるインキドクターパンをキャビネット内に固定すると共に揺動させるためのガイドと、回転式のエアノズルを主な構成要素としている。そして、ガイドに固定したインキドクターパンに、回転式エアノズルから噴出するエアと共に、微少量の溶剤を吹き付ける。これにより、インキドクターパン表面に付着したインキを剥離させて吹き飛ばすというものである。そして、ガイドにより、インキドクターパンを揺動させることにより、複雑な形態のインキドクターパンであっても、その全体を洗浄することが可能となるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2010−94823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような洗浄装置によれば、手作業による洗浄に比べ、格段に労力や溶剤、ウエスの使用量を低減することができる。しかし、特許文献1に開示されている洗浄装置では、噴出ノズルからインキドクターパンにおける洗浄面までの距離にバラツキがあるため、その洗浄状態にムラが生じる可能性がある。このため、エアや洗浄液が到達し難い角部などには、インキ汚れが残存してしまう虞がある。また、エアと洗浄液を吹き付ける非接触の洗浄方式である為、角部等に限らず、強固なインキ汚れ等は、残存してしまう虞がある。
【0007】
そこで本発明では、複雑な形状を有し、且つ強固なインキ汚れが付着しているインキドクターパンであっても、ムラ無く、効率的に洗浄することのできるインキドクターパン洗浄装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るインキドクターパン洗浄装置は、インキドクターブレードとインキパンから成るインキドクターパンを保持するホルダと、前記インキドクターパンの内側面を洗浄する内側ブラシと、前記インキドクターパンの外側面を洗浄する外側ブラシと、前記インキドクターパンの洗浄に用いる洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、前記洗浄に用いられた洗浄液を回収する循環液タンクと、仕上げ用の洗浄液を貯留する新液タンクと、を備えたインキドクターパン洗浄装置であって、前記ホルダは複数、垂直方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置は、前記循環液タンクを吸入側に接続し、第1の前記洗浄液噴射ノズルを吐出側に接続した第1のポンプと、前記新液タンクを吸入側に接続し、第2の前記洗浄液噴射ノズルを吐出側に接続した第2のポンプと、を備えるようにすることができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置では、前記循環液タンクと前記新液タンクとを単一のポンプの吸入側に接続し、当該ポンプの吐出側を複数または単一の前記洗浄液噴射ノズルに接続すると共に、前記ポンプに接続されるタンクを前記循環液タンクと前記新液タンクのいずれか一方に切り替える切替手段と、を備えるようにすると良い。
【0011】
このような構成とすることにより、単一のポンプでの稼動が可能となり、装置の製造コストおよび構成要素の配置スペースを削減することが可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置では、前記ホルダは、前記インキドクターパンの開口部が水平方向に向くように前記インキドクターパンを固定する手段を有し、前記内側ブラシは、垂直方向に沿って配置された回転軸と、前記回転軸回りに形成された基部と、前記基部に配置された複数の線条材とより構成され、前記回転軸は、前記インキドクターパンに対して近接、離間を可能とし、前記基部は、前記回転軸が前記インキドクターパンに対して近接した際に、その一部が前記開口部よりも前記インキドクターパンの底部側に介入する形態とすると良い。
【0013】
このような構成とすることにより、インキドクターパンの開口部の幅が底部の幅よりも狭い場合であっても、基部の先端側に配置された線条材をインキドクターパンの内側全面に接触させることができ、十分な洗浄効果を得ることができる。
【0014】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置では、前記基部に配置される複数の線条材は、種々の長さを有し、短い線条材を前記回転軸側、長い線条材を先端側に配置することが望ましい。
【0015】
このような構成とすることで、基部の先端側に配置した線条材をインキドクターパンの内側角部等、の払拭し辛い部分へ到達させることができる。
【0016】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置では、前記外側ブラシは、水平方向に沿って配置された回転軸と、前記回転軸回りに形成された基部と、前記基部に配置された複数の線条材とより構成され、前記外側ブラシは、前記インキドクターパンの上側と下側にそれぞれ配置されるようにすると良い。
【0017】
このような配置構成とすることにより、断面がフック状に形成されたインキドクターパンであっても、その外周全面に線条材を接触させることが可能となる。
【0020】
さらに、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置において前記ホルダは、上段に配置された前記インキドクターパンの下側と、下段に配置された前記インキドクターパンの上側とを単一の外側ブラシで洗浄可能な幅で配置することが望ましい。
【0021】
このような構成とすることにより、洗浄に必要とする外側ブラシ(ブラシセット)の数を減らすことができる。
【0022】
また、上記目的を達成するための本発明に係るインキドクターパン洗浄方法は、インキドクターブレードとインキパンから成るインキドクターパンを垂直方向に沿って複数配置されたホルダに保持させて、洗浄液を吹きかけながら、前記インキドクターパンに付着したインキをブラシで掻き取るインキドクターパンの洗浄方法であって、複数の前記インキドクターパンを、垂直方向に沿って配置された前記ホルダのそれぞれに保持させる工程と、洗浄に使用した洗浄液を回収して循環使用する本洗浄工程と、新液を使用して、前記本洗浄工程後に残存する汚れを洗い流す仕上洗浄工程とを有することを特徴とする。
【0023】
また、上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄方法において、前記本洗浄工程は、前記インキドクターパンの長手方向に沿った洗浄を1工程とした場合に、当該工程を複数回繰り返した後、前記仕上洗浄工程を1回行うようにすると良い。
【0024】
このような方法とすることにより、洗浄液の使用量を抑えつつ、確実に洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
上記のような特徴を有するインキドクターパン洗浄装置、および方法によれば、複雑な形状を有するインキドクターパンであっても、ムラ無く、効率的に洗浄することができる。
また、ホルダを複数、垂直方向に沿って配置する事で、複数のインキドクターパンを同時に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る小型インキドクターパン洗浄領域の内側ブラシと外側ブラシの構成を示す図である。
図2】小型インキドクターパン洗浄領域の内側ブラシと外側ブラシを洗浄形態に移動させた様子を示す図である。
図3】実施形態に係るインキドクターパン洗浄装置における移動フレームを含む洗浄室内の構成を示す図である。
図4】移動フレームに、カバープレートを附帯させた様子を示す図である。
図5】実施形態に係るインキドクターパン洗浄装置の全体構成を示す図である。
図6】外側ブラシの回転軸を垂直方向に沿って配置する場合の形態例を示す図である。
図7】内側ブラシ、外側ブラシ双方の回転軸を水平方向に沿って配置する場合の形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のインキドクターパン洗浄装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図1は、小型インキドクターパン洗浄領域に配置された内側ブラシと外側ブラシの否洗浄形態を示す図である。また、図2は、同内側ブラシと外側ブラシの洗浄形態を示す図である。図3は、インキドクターパン洗浄装置における洗浄室内の構成を示す図である。図4は、インキドクターパン洗浄装置に備えられる移動フレームに、カバープレートを備えた形態を示す図である。図5は、実施形態に係るインキドクターパン洗浄装置の全体構成を示す図である。
【0028】
本実施形態に係るインキドクターパン洗浄装置(以下、単に洗浄装置と称す)は、図3図4図5に示すように、ハウジング12と、ホルダ14,14a、内側ブラシ16,16a、外側ブラシ26,26a、洗浄液噴出ノズル36,38、洗浄槽40、循環液タンク42、新液タンク44、第1のポンプ46、第2のポンプ48、および制御盤50を基本として構成されている。
【0029】
ハウジング12は、洗浄装置10の外殻であり、洗浄を行う際に用いる溶剤(洗浄液)や、掻き落としたインキ等が外周に飛散することを防止する役割を担う。ハウジング12内は大別して、洗浄室52と機械室54に分別されている。洗浄室52には少なくとも、洗浄対象とするインキドクターパン60a,60b,60cを配置するホルダ14,14aの他、詳細を後述する内側ブラシ16,16aや外側ブラシ26,26a、および洗浄液噴出ノズル36,38等が備えられた移動フレーム56や、洗浄槽40等が配置されている。一方、機械室54は、主に、洗浄に用いられる洗浄液管理を行う役割を担い、詳細を後述する循環液タンク42や新液タンク44、および第1のポンプ46、第2のポンプ48等が配置されている。また、ハウジング12における洗浄室該当部、および機械室該当部には、図示しない開閉扉が設けられている。
【0030】
洗浄室該当部の開閉扉は、開閉扉を介して、インキドクターパン60a,60b,60cを洗浄室52内へ導入し、または取り出すためである。一方、機械室該当部の開閉扉は、機械室54内に配置された新液タンク44等への洗浄液の補給等、一般的なメンテナンス等を行うためのものである。
【0031】
なお、本実施形態に係る洗浄装置10では、洗浄室52内に、比較的小型で複雑な形態をしたインキドクターパン60a,60bを洗浄する小型インキドクターパン洗浄領域56aと、比較的大型で、平坦な形態をしたインキドクターパン60cを洗浄する大型インキドクターパン洗浄領域56bとが、移動フレーム56によって別けられており、各領域において別個の機構により洗浄することが可能な構成とされている。
【0032】
ホルダ14,14aは、洗浄室52内にインキドクターパン60a,60b,60cを固定する役割を担う。ホルダ14,14aは、インキドクターパン60a,60b,60cを安定して固定することができるものであれば、その構造を具体的に問うものでは無い。本実施形態では、インキドクターパン60a,60b,60cの洗浄を確実に行うために、インキドクターパン60a,60b,60cの開口部が、横方向、すなわち水平方向を向くように配置可能なものとしている。具体的には、ねじ込み式のクランプ構造等とすれば良く、インキドクターパン60a,60b,60cの一部を挟み込むことで、位置決めを成し、インキパンの開口部が水平方向を向くようにインキドクターパン60a,60b,60cを保持するものであれば良い。インキパンの開口部が水平方向を向くようにインキドクターパン60a,60b,60cを保持して洗浄を行うことにより、洗浄後の洗浄液がインキパンに溜まることを防ぐことができる。
【0033】
移動フレーム56は、上述したように、内側ブラシ16,16aや外側ブラシ26,26a、および洗浄液噴出ノズル36,38等を備えたフレームであり、ホルダ14,14aに保持されたインキドクターパン60a,60b,60cの長手方向への移動を可能に構成されている。以下、移動フレーム56に附帯する要素について、小型インキドクターパン洗浄領域56aと、大型インキドクターパン洗浄領域56bについて、それぞれ個別に説明を行うこととする。まず、小型インキドクターパン洗浄領域56aの構成について、図1図2図3を参照して説明する。
【0034】
内側ブラシ16は、インキドクターパン60a,60bの内側を洗浄するためのブラシである。内側ブラシ16は、回転軸18と基部20a,20b、および線条材22a,22bから構成されている。本実施形態の場合、回転軸18は、洗浄室52内において、垂直方向に沿って配置されている。そして、基部20a,20bは、回転軸18と同芯円となるように形成された円板としている。このため、回転軸18の回転により、基部20a,20bは、水平回転することとなる。また、回転軸18を回転させる駆動源には、エアモータ(不図示)が用いられている。このような構成とすることで、洗浄液に揮発性や可燃性がある場合でも、安全に稼動させることができる。
【0035】
また、回転軸18には少なくとも、回転軸18をインキドクターパン60a,60bに対して近接、離間させることを可能とする第1の駆動機構24を備えている。なお、第1の駆動機構24の構成は、特に限定するものでは無いが、例えば本実施形態のように、リニアガイド24aとエアシリンダ24bにより構成することができる。第1の駆動機構24を備えることにより、インキドクターパン60a,60bに対して内側ブラシ16を離接させることができる。また、移動フレーム56をインキドクターパン60a,60bの長手方向に移動させることで、ホルダ14に固定されたインキドクターパン60a,60bの内側を1つのブラシで洗浄することが可能となる。
【0036】
線条材22a,22bは、基部20a,20bの上面、下面、および側面(先端面)のそれぞれに配置されている。線条材22a,22bの長さは均一ではなく、種々の長さや、太さのものが配置されている。具体的には、基部20a,20bにおいて、回転軸18に近い側には、長さが短く、径の細い線条材22a,22bが多く配置されている。一方、基部20a,20bの先端側には、長さが長く、径の太い線条材22a,22bが多く配置されている。特に、インキドクターパン60a,60bの内側角部に接触する線条材22a,22bは、他の部位に接触する線条材22a,22bよりも長くなるように構成されている。また、長さが長くなった分、インキを掻き落とすためのコシを出すだめに、対応する箇所に配される線条材22a,22bは、その太さを太くしている。
【0037】
内側ブラシ16をこのような形態とすることによれば、インキドクターブレードを含むインキドクターパン60a,60bの内側のインキ汚れを効果的に掻き落とすことができる。また、線条材22a,22bの長さを変化させてインキドクターパン60a,60bへの線条材22a,22bの接触状態を調整することで、基部20a,20bの逃げを大きくすることができる。よって、基部20a,20bがインキドクターパン60a,60bに接触することを避けることができる。
【0038】
本実施形態に係る洗浄装置10では、小型インキドクターパン洗浄領域56aに、上記のような構成の基部と線条材のセットを2つ(基部20a,20bと線条材22a,22b)備えており、各セットは、インキドクターパン60a,60bの形状に合わせて、基部20a,20bの形態や線条材22a,22bの配置形態、および長さを変えることができるように構成されている。つまり、洗浄対象とするインキドクターパン60a,60bの形状に合わせ、選択的にブラシセットの組み換えを行うようにすることを可能としている。このような構成とすることで、ブラシセットの交換だけで、種々の印刷機のインキドクターパンの洗浄に対応することが可能となる。
【0039】
外側ブラシ26は、インキドクターパン60a,60bの外周側を洗浄するためのブラシである。外側ブラシ26も、内側ブラシ16と同様に、回転軸28と基部30a,30b,30c、および線条材32a,32b,32cから構成されている。本実施形態の場合、外側ブラシ26の回転軸28は、水平方向に沿って、ブラシセットの数だけ配置されている。そして、基部30a,30b,30cは、それぞれ回転軸28と同芯円となるように形成された円筒や円柱、あるいは円錐台を基本形態として形成されている。外側ブラシ26の回転軸28も、内側ブラシ16の回転軸18と同様に、その駆動源には、エアモータ(不図示)が用いられている。
【0040】
また、回転軸28には少なくとも、回転軸28をインキドクターパン60a,60bに対して近接、離間させることを可能とする第2の駆動機構34が備えられている。なお、第2の駆動機構34も、第1の駆動機構24と同様に、リニアガイド34aとエアシリンダ34bにより構成することができる。第2の駆動機構34を備えることにより、インキドクターパン60a,60bに対して外側ブラシ16を離接させることが可能となる。また、移動フレーム56をインキドクターパン60a,60bの長手方向に移動させることで、ホルダ14に固定されたインキドクターパン60a,60bの外側をムラ無く効果的に洗浄することが可能となる。
【0041】
第1の駆動機構24と第2の駆動機構34を駆動させ、内側ブラシ16と外側ブラシ26の回転軸18,28を、洗浄対象とするインキドクターパン60a,60bに近接させた様子(洗浄形態)を図2に示す。図2に示すように、洗浄形態では、内側ブラシ16の基部20a,20bがそれぞれ、インキドクターパン60a,60bの開口部よりも、インキドクターパン60a,60bの底部側へ介入している。このように、基部20a,20bを開口部よりも底部側へ介入させることにより、開口部の幅が底部の幅よりも狭い場合であっても、基部20a,20bの先端側に配置された線条材22a,22bをインキドクターパン60a,60bの内側全面に接触させることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、外側ブラシ26のブラシセットは、インキドクターパン60a,60bの上側および底部側を洗浄するものと、インキドクターパン60a,60bの下側および底部側を洗浄するものの、少なくとも2つを用いる構成としている。2つのブラシセットを用いる構成とすることにより、断面形状をフック形状とするインキドクターパン60a,60bの外側面に、効果的に線条材32a,32b,32cを接触させることが可能となる。
【0043】
本実施形態に係る洗浄装置10では、図3に示すように、小型インキドクターパン洗浄領域56aに、2つのホルダ14を上下に配置し、上下に配置された2つのインキドクターパン60a,60bを同時に洗浄可能な構成としている。このため、上段に配置されたインキドクターパン60aの下側を洗浄する基部30bと線条材32bから成るブラシセットと、下段に配置されたインキドクターパン60bの上側を洗浄するブラシセットとを共通化することが可能なように、上下のホルダ14間の距離が定められている。
【0044】
上段に配置されたインキドクターパン60aの下側を洗浄するブラシセットと、下段に配置されたインキドクターパン60bの上側を洗浄するブラシセットとを共通化することより、本実施形態に係る外側ブラシ26は、ブラシセットを合計で3つ備えられることとなる。各ブラシセットは、上述した内側ブラシ16と同様に、それぞれ、基部30a,30b,30cの形態や線条材32a,32b,32cの配置形態、および長さを異ならせている。また、必要に応じて、ブラシセット自体を選択的に切り替えることを可能な構成としている。このような構成とすることで、ブラシセットと、ホルダ14の交換だけで、種々の印刷機のインキドクターパンの洗浄に対応することが可能となる。
【0045】
線条材32a,32b,32cは、基部30a,30b,30cの外周面の形状に沿ったものとしても良いが、外側ブラシ26の場合、少なくともインキドクターパン60a,60bの外周面に線条材32a,32b,32cが接触する構成とすれば良い。インキドクターパン60a,60bにおける主な汚染部位は、インキドクターパン60a,60bの内側だからである。
【0046】
次に、大型インキドクターパン洗浄領域56bに配置された内側ブラシ16a,外側ブラシ26aについて図3図4を参照して説明する。本実施形態に係る洗浄装置10では、内側ブラシ16aと外側ブラシ26aは、小型インキドクターパン洗浄領域56aの下段側に、対を成すように設けられている。
【0047】
内側ブラシ16aと外側ブラシ26aのそれぞれの回転軸18a,28aには、共通な形態の基部20c,30dが設けられている。なお、内側ブラシ16aと外側ブラシ26aには、小型インキドクターパン洗浄領域56aの内側ブラシ16と外側ブラシ26に設けたような移動機構は、備えなくとも良い。大型インキドクターパン洗浄領域56bに配置されるインキドクターパン60cは、比較的平坦な形態をしており、かつ開口部も広い。このため、基部20c,30dをインキドクターパン60cに近接させなくとも、線条材22c,32dをインキドクターパン60cの内側全域、および外側全域に接触させることができるからである。
【0048】
基部20c,30dに配置される線条材22c,32dは、インキドクターパン60cの形態に沿うように、長短が整えられている。このため、内側ブラシ16aの線条材22cが長い箇所では、外側ブラシ26aの線条材32dが短く、内側ブラシ16aの線条材22cが短い箇所では、外側ブラシ26aの線条材32dが長くなるように構成されている。
【0049】
洗浄液噴出ノズル36,38は、洗浄時に用いられる洗浄液を内側ブラシ16,16aや外側ブラシ26,26a、およびインキドクターパン60a,60b,60cに噴出し、洗浄液が付着したブラシでインキドクターパン60a,60b,60cを擦るようにするためのものである。なお、本実施形態に係る洗浄装置10では、循環液を噴出させるためのノズルとして、洗浄液噴出ノズル36を配置しており、新液を噴出させるためのノズルとして、洗浄液噴出ノズル38を配置している。よって、洗浄液噴出ノズル36には、詳細を後述する循環液タンク42から洗浄液(循環液)が供給され、洗浄液噴出ノズル38には、詳細を後述する新液タンク44から洗浄液(新液)が供給されることとなる。
【0050】
洗浄槽40は、インキドクターパン60a,60b,60cの洗浄に用いられた洗浄液や、洗浄によりインキドクターパン60a,60b,60cから掻き落とされたインキ等を回収する役割を担う。このため、洗浄槽40は、洗浄室52において、インキドクターパン60a,60b,60cを固定するホルダ14,14aの下方に配置された回収パン40aに接続されている。洗浄槽40や回収パン40aは、少なくとも洗浄に用いる溶剤(洗浄液)に対する耐食性を持った部材により構成する。
【0051】
本実施形態においては、回収パン40aには、洗浄槽40に向けた僅かな下り勾配と、溶剤やインキを掻き落とすスクレーパー(不図示)が設けられている。これにより、回収パン40aに滴下した溶剤やインキは、洗浄槽40に流れ込むこととなる。
【0052】
循環液タンク42は、洗浄に用いる洗浄液を再利用するために回収する溶剤タンクである。本実施形態の場合、循環液タンク42は洗浄槽40に接続されており、洗浄槽40に回収された洗浄液やインキが流し込まれるように構成されている。
【0053】
新液タンク44は、仕上げ洗浄用の溶剤を貯留しておくための溶剤タンクである。循環液タンク42内に貯留された洗浄液を用いて洗浄(本洗浄工程)を行った後、新液タンク44に貯留されたきれいな洗浄液によりリンス処理することで、再利用の洗浄液の利用に起因した濁液等の汚れを洗い流すことができる。なお、循環液タンク42や新液タンク44は、機械室54に配置されている。
【0054】
第1のポンプ46、第2のポンプ48はそれぞれ、洗浄に用いる洗浄液を洗浄液噴出ノズル36,38へと圧送するための手段である。本実施形態では、第1のポンプ46の吸入側には、循環液タンク42が接続されている。また、第1のポンプ46の吐出側には、循環液噴射用の洗浄液噴射ノズル36が接続されている。これに対し、第2のポンプ48の吸入側には、新液タンク44が接続されており、吐出側には、新液噴射用の洗浄液噴射ノズル38が接続されている。
【0055】
ここで、本実施形態では、第1の駆動機構24、第2の駆動機構34によって移動するフレームにそれぞれ、カバープレート56cが備えられており、このカバープレート56cに、新液噴射用の洗浄液噴出ノズル38と、エアブロー用のエア噴射ノズル58が備えられている。なお、エア噴射ノズル58には、図示しないエア供給手段が接続されている。
【0056】
制御盤50は、インキドクターパン60a,60b,60cの洗浄工程を定め、各構成要素へ指令値を与える役割を担う。本実施形態に係る洗浄装置10による洗浄工程は、大別して、本洗浄工程と仕上洗浄工程、およびブロー工程とより成る。
【0057】
本洗浄工程では、循環液タンク42に貯留された洗浄液を用いた洗浄が行われる。本洗浄工程では、第1のポンプ46が稼動すると、洗浄液噴出ノズル36から洗浄液が吐出し、内側ブラシ16,16aと外側ブラシ26,26a、およびインキドクターパン60a,60b,60cに付着する。
【0058】
洗浄液噴出ノズル36から洗浄液の吐出を開始した後、初期位置に配置された内側ブラシ16,16aおよび外側ブラシ26,26aの回転軸18,18a,28,28aを回転させる。回転軸18,18a,28,28aの回転が開始された後、回転軸18,28はそれぞれインキドクターパン60a,60bに近接する。この動作により、回転軸18,18a,28,28aと共に回転する基部20a〜20c,30a〜30dに配置された線条材22a〜22c,32a〜32dがインキドクターパン60a〜60cに接触し、表面に付着したインキを掻き落とす。なお、回転軸18a,28aに関しては、回転当初から、線条材22c,32dが、インキドクターパン60cに接触する位置に配置されている。
【0059】
インキドクターパン60a〜60cに線条材22a〜22c,32a〜32dを接触させた内側ブラシ16,16a、外側ブラシ26,26aは、移動フレームの移動に伴って、それぞれインキドクターパン60a〜60cの長手方向に沿って移動する。この工程により、ブラシがインキドクターパン60a〜60cの配置に沿って移動することとなり、長尺もののインキドクターパン60a〜60cの内側を単一のブラシセットで、外側を2つのブラシセットで洗浄することが可能となる。なお、洗浄液の吐出は、内側ブラシ16,16aおよび外側ブラシ26,26aの移動に合わせて継続して行われる。
【0060】
インキドクターパン60a〜60cの長手方向への回転軸18,18a,28,28aの移動が、インキドクターパン60a〜60cの端部位置に達すると、初期位置に戻るべく、移動フレーム56の進行方向が逆向きとなる。ここで、回転軸18,18a,28,28aの回転方向は、インキドクターパン60a〜60cに対して、移動フレーム56の進行方向と逆向きとなるように定められている。すなわち、回転軸18,18a,28,28aは、線条材22a〜22c,32a〜32dが、インキドクターパン60a〜60cとの接触面から、進行方向側へ向けて送り出されることとなるように回転する。回転方向をこのように定めることにより、線条材22a〜22c,32a〜32dの送り出し方向と、インキドクターパン60a〜60cの相対的な進行方向が逆向きとなり、インキの掻き落とし効果を高めることができる。また、インキドクターパン60a〜60cの端部(角部)に対して、線条材22a〜22cの先端が押込まれるように接触し、高い掻き出し効果を奏することができる。よって、角部に関する洗浄効果を特に高めることができる。このため、回転軸18,18a,28,28aの回転方向も、移動フレーム56の進行方向の切り替えに合わせて逆転する。ここで、移動フレーム56が、角部の洗浄位置に達した際には、直ちに進行方向を変えるのでは無く、内側ブラシ16,16aを回転させた状態で移動を停止させ、その後に折り返す、あるいはブラシを離間させるという動作を採るようにすることができる。このような動作を行うことにより、インキドクターパン60a〜60cにおける角部の洗浄効果をより高めることができる。なお、当然に、回転軸18,18a,28,28aの回転方向を移動フレーム56と同一方向とした場合であっても、本発明の一部であることに変わりは無い。
【0061】
制御盤50では、このような本洗浄工程における洗浄を何回繰り返した後、仕上洗浄工程へ移行するかを定められるようにすれば良い。洗浄液の吐出タイミングや内側ブラシ16,16a、外側ブラシ26,26aの移動方向やタイミングは、設定により予め定めておくことができる。これに対し、本洗浄工程における洗浄の繰り返し回数は、洗浄対象とするインキドクターパン60a〜60cの汚れ具合などにより異なることとなる。よって、洗浄の回数を作業者の判断により定め、制御盤50への入力値として入力可能な構成とすることで、十分な洗浄を行いつつ、洗浄時間がむやみに長くなるということを避けることができる。
【0062】
また、本洗浄工程では、循環液タンク42に貯留、回収された洗浄液を循環使用するため、本洗浄工程の回数増加により洗浄液の使用量が増すという虞がない。よって、汚れが酷い場合などであっても、洗浄液の消費量が増加する虞が無く、洗浄コストの低減を図ることができる。なお、循環液タンク42内に貯留された洗浄液は、予め定めた洗浄回数を目安として、当該洗浄回数を超えた場合には、廃棄し、新たな洗浄液を補充することが望ましい。
【0063】
本洗浄工程は、制御盤50を介して設定された回数、インキドクターパン60a〜60cの洗浄を繰り替えした後に終了する。本洗浄工程が終了すると、制御盤50からは、仕上洗浄工程に移行する旨の指令が出力される。
【0064】
仕上洗浄工程に移行する旨の指令が出力されると、新液タンク44に接続された第2のポンプ48が稼動される。この処理により、洗浄液噴出ノズル38から、リンス処理用の洗浄液(新液)が吐出されることとなる。
【0065】
リンス処理用の新液は、循環液タンク42の洗浄液(循環液)の使用に起因する汚濁液等を洗い流す。この際、内側ブラシ16,16a、および外側ブラシ26,26aは、回転軸18,18a,28,28aの回転を停止する。また、内側ブラシ16、外側ブラシ26に関しては、回転軸18,28をそれぞれ、インキドクターパン60a,60bから離間させた状態とする。
【0066】
このように、仕上洗浄工程のみに新液を使用することで、洗浄液消費量を減らすことができる。また、仕上洗浄工程で使用した洗浄液も回収パン40aを流れて洗浄槽40に貯留され、循環液タンク42へと流し込まれる。このため、循環液タンク42内に貯留されている洗浄液の汚濁濃度を低下させることができる。よって、循環液タンク42内の洗浄液の交換頻度を低下させることができる。また、仕上洗浄工程終了後、新液の使用により余剰となった循環液タンク42内の洗浄液は、その底部から自動で抜き取られる構成とする。循環液タンク42の底部には、比重の違いにより沈殿した、インキ成分を多く含んだ洗浄液が溜まることとなる。このため、余剰洗浄液の抜き取りをタンク底部から行うことで、汚濁濃度を低下させる効果を高めることができる。
【0067】
仕上洗浄工程が終了すると、制御盤50からは、ブロー工程へ移行するための信号が出力される。ブロー工程では、カバープレート56cに設けられたエア噴出ノズル58から圧縮空気を噴出すると共に、インキドクターパン60a〜60cに沿って、移動フレーム56を移動させる。
【0068】
これにより、インキドクターパン60a〜60cに付着した洗浄液を吹き飛ばすことができる。これにより、洗浄装置10から取り出した後に洗浄液が滴下し、二次的な汚染を生じさせるといった虞が無い。
【0069】
上記実施形態では、機械室54には、概ね、循環液タンク42と新液タンク44、および第1のポンプ46、並びに第2のポンプ48が配置されている旨記載した。しかしながら本発明に係る洗浄装置10は、機械室54に、主として、新液タンク44と、単一のポンプを配置する構成としても良い。この場合、回収パン40aを備える洗浄槽40に循環液タンクとしての役割を持たせるようにすると良い。そして、1つにしたポンプの吸引側には、洗浄槽40に接続された経路と、新液タンク44に接続された経路と、ポンプに接続されるタンク(槽)を選択的に切り替えるための切替手段を備えるようにすると良い。
【0070】
また、ポンプの吐出側には、循環液噴出用の洗浄液噴出ノズル36に接続される経路と、新液噴出用の洗浄液噴出ノズル38に接続される経路の双方を接続し、タンク(槽)の切替に対応して2つの経路の選択的な切り替えを行うための切替手段を備えるようにすると良い。
【0071】
このような構成とすることにより、機械室54に配置するタンクやポンプの数を減らすことができる。よって、製造コストの削減等を図ることができる。また、このような構成の洗浄装置であっても、上述した洗浄方法を実施することができ、同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、上記実施形態に係る洗浄装置10では、小型インキドクターパン洗浄領域56aに、2つのインキドクターパン60a,60bを洗浄するための機構を設ける構成としている。しかしながら、上記実施形態は、本発明に係る1つの代表的な実施形態である。よって、洗浄可能なインキドクターパンの数は、本発明を構成する上で問題とはならない。すなわち、洗浄可能なインキドクターパンを1つとした場合であっても、3つ以上とした場合であっても、内側ブラシ16と外側ブラシ26、洗浄液噴射ノズル36、38、循環液タンク42、及び新液タンク44を備えた洗浄装置10であれば、本発明の一部とみなすことができる。
【0073】
また、上記実施形態では、内側ブラシ16の回転軸18は、垂直方向に沿って配置し、外側ブラシ26の回転軸28は、水平方向に沿って配置する旨記載した。しかしながら、本発明に係る洗浄装置10に関しては、図6に示すように、内側ブラシ16と外側ブラシ26双方の回転軸18,28を垂直方向に沿って配置するように構成しても良い。また、本発明に関連する技術としては、2つの回転軸18,28を図7に示すように、水平方向に沿って配置する構成を挙げることができる
【0074】
なお、上記のように、本発明に係る洗浄装置10は、少なくとも内側ブラシ16と外側ブラシ26、洗浄液噴射ノズル36、38、循環液タンク42、及び新液タンク44を備えていれば良い。よって、上記実施形態のように、小型インキドクターパン洗浄領域56aと、大型インキドクターパン洗浄領域56bの双方を備える必要は無く、少なくともいずれか一方(主として小型インキドクターパン洗浄領域56a)の洗浄領域を備えるようにすれば足りる。
【0075】
また、線条材22a,22bに関しては、基部20a,20bに対する配置位置や長さの違いに応じて、その太さを変える旨記載した。しかしながら、太さを変えることに替えて、その材質を変えるようにしても良い。具体的には、長さの長い線条材22a,22bほど、長さの短い線条材22a,22bよりも硬い(撓み難い)材質を選択するようにすれば良い。
【符号の説明】
【0076】
10………インキドクターパン洗浄装置(洗浄装置)、12………ハウジング、14,14a………ホルダ、16,16a………内側ブラシ、18,18a………回転軸、20a,20b,20c………基部、22a,22b,22c………線条材、24………第1の駆動機構、24a………リニアガイド、24b………エアシリンダ、26,26a………外側ブラシ、28,28a………回転軸、30a,30b,30c,30d………基部、32a,32b,32c,32d………線条材、34………第2の駆動機構、34a………リニアガイド、34b………エアシリンダ、36,38………洗浄液噴出ノズル、40………洗浄槽、40a………回収パン、42………循環液タンク、44………新液タンク、46………第1のポンプ、48………第2のポンプ、50………制御盤、52………洗浄室、54………機械室、56………移動フレーム、56a………小型インキドクターパン洗浄領域、56b………大型インキドクターパン洗浄領域、56c………カバープレート、58………エア噴射ノズル、60a,60b,60c………インキドクターパン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7