(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉砕ローラ、補助ローラ、及び、回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料を補助ローラで圧密して脱気してから粉砕ローラで粉砕する竪型粉砕機の運転方法であって、
該補助ローラを粉砕ローラより小型として、竪型粉砕機の起動時に、該補助ローラの加圧開始動作と該粉砕ローラの加圧開始動作を個別に制御し、該補助ローラの加圧力が昇圧完了した後に該粉砕ローラの加圧開始動作させることにより、該補助ローラの加圧開始動作より遅れて粉砕ローラの加圧開始動作する竪型粉砕機の運転方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
ここで、竪型粉砕機は、被粉砕物(本明細書においては単に原料と称することもある)を効率的に微粉砕することができるという優れた特性を有している反面、原料の種類や粉砕条件によって、異常振動が発生するという問題点を有していた。竪型粉砕機に発生する異常振動は、様々な原因によって誘発されるために、その振動原因に応じた様々な対策を講じる必要があり、従来から数多くの異常振動防止対策が提案されている。
【0003】
例えば、竪型粉砕機において、嵩高い原料層(嵩密度が低い状態)を一挙に粉砕する運転を行った場合に異常振動が誘発されるケースがある。なぜなら、嵩高い原料層は、空気を大量に含んでいるために、粉砕ローラ等が滑りやすい状態になり、見かけ上において、原料層の摩擦係数が小さくなって滑りやすい状況にある。そのため、嵩高い原料層を、粉砕ローラによって一挙に粉砕しようとした場合に、粉砕ローラが、原料層上で滑ってスリップする可能性が高くなる。
粉砕ローラが原料層の上でスリップすれば、粉砕ローラ自体の回転が不規則になるから、その結果として、異常振動が発生する。
【0004】
なお、原料層が嵩高くなる状況の1つとして、原料を微粉砕するケースが知られている。というのは、原料を微粉砕する際には、竪型粉砕機内で繰り返し原料を粉砕する必要があり、原料は細かい微粉になればなるほど、多量の空気を抱え込むという性質を持っている。機内で繰り返し粉砕される原料は、循環原料と呼ばれるが、循環原料の平均粒径は、竪型粉砕機に新たに投入された粉砕前の原料の平均粒径に比較すれば、当然に小さい。
竪型粉砕機で、細かな製品を得ようとすれば、前述した循環原料の量が必然的に増加するので、原料を微粉砕しようとすれば、循環原料の量が増える。
その結果、回転テーブル上の原料層は、粒径の小さな原料の割合が増えて、空隙率の高い、所謂、嵩高い状態になる。参考として、
図8に粒子の粒径と動摩擦係数の関係を示す。粗い粒子と細かい粒子で見かけ上の動摩擦係数に差異が生じていることがわかる。
【0005】
前述した従来技術の問題点を解決する方法の1つとして、特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。特許文献1に開示の従来技術は、補助ローラを用いて回転テーブル上の原料層を一旦、圧密して均一化してから、粉砕ローラに噛み込ませるという技術である。嵩高い原料層の中に含まれている空気を脱気すれば振動が軽減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、補助ローラ下方にある原料層の厚みは、補助ローラの加圧力と反力のバランスにより定まるものである。通常、ローラ加圧の開始直後は、ローラ加圧のための圧力が昇圧しきれておらず、補助ローラ下方の原料層については圧密度が低い状態である。
そして、ローラ加圧のための圧力が徐々に増加して昇圧完了した後に、補助ローラ下方の原料層について圧密度が高い状態になる。
従って、補助ローラを使用することにより、連続運転中、低振動で突発的な異常振動が抑制された状態にある竪型粉砕機においても、起動時においては突発的に異常振動が発生する場合があって、その改善が望まれていた。
なお、異常振動が発生した場合には、竪型粉砕機の回転テーブル等を駆動するモータに備え付けられているインターロック等の安全装置が作動して、竪型粉砕機が自動的に停止するが、通常、回転テーブル等を駆動するためのモータは、モータ保護の観点から許容起動頻度が定められており、連続して何度も起動停止を繰り返すことはできない。そのため、異常振動で停止した場合には、すぐに再起動できないこともあって、その間、生産が中断する。
【0009】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、原料を微粉砕するに好適な竪型粉砕機の運転方法及びその装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機の運転方法は、
(1)粉砕ローラ、補助ローラ、及び、回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料を補助ローラで圧密して脱気してから粉砕ローラで粉砕する竪型粉砕機の運転方法であって、
該補助ローラを粉砕ローラより小型として、竪型粉砕機の起動時に、該補助ローラの加圧開始動作と該粉砕ローラの加圧開始動作を個別に制御
し、該補助ローラの加圧力が昇圧完了した後に該粉砕ローラの加圧開始動作させることにより、該補助ローラの加圧開始動作より遅れて粉砕ローラの加圧開始動作する。
【0011】
(2)
(1)に記載の竪型粉砕機の運転方法において、前記補助ローラの加圧開始動作から粉砕ローラの加圧開始動作までの遅れ時間を4秒から8秒までの範囲とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料を微粉砕する際に粉砕ローラが嵩高い原料層の上でスリップすることに起因して発生する異常振動を抑制して、原料を効率良く粉砕する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例について詳細に説明する。
図1から
図5は、本発明の実施形態に係わりその好ましい1例を示したものであって、
図1は竪型粉砕機の全体構成を説明する概念図であり、
図2は粉砕ローラ並びに補助ローラ及び回転テーブルの配置を説明する図である。また、
図3は補助ローラ及び粉砕ローラの加圧開始タイミングを説明する図であり、
図4は補助ローラと粉砕ローラの加圧動作のタイミング、原料層の厚み、及び振動状態の関係を示すチャートであり、
図5は補助ローラと粉砕ローラの加圧時間差(補助ローラ加圧指示タイミングに対する粉砕ローラ加圧指示タイミングの遅れ時間)と振動状態の関係を示す図である。
【0016】
また、
図6から
図10は本発明を理解する上で参考となる参考図であって、
図6はローラと原料層の関係を説明するための図、
図7は補助ローラ下の原料層の層厚と見かけ上の動摩擦係数の関係を示す図、
図8はローラの回転速度により変化するローラと原料層の間における見かけ上の動摩擦係数の関係を示す図、
図9は原料層の圧密度により変化するローラと原料層の間における見かけ上の動摩擦係数の関係を示す図、
図10は補助ローラと粉砕ローラを同時に加圧開始動作した従来技術による竪型粉砕機の振動状態を示す図である。
【0017】
以下、本実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、
図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、1A、竪型粉砕機のケーシングに取り付けられて、機体の振動を測定する振動センサS1、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2Bと駆動モータ2Mによって駆動される回転テーブル2、及び、回転テーブル2に従動して回転するコニカル型の粉砕ローラ3(図面上などにおいては単に主ローラと称することもある)並びに補助ローラ5を備えている。
また、
図1に示した竪型粉砕機1は、駆動モータ2Mの駆動用電源としてインバータ電源を備えており、運転中、回転テーブル2の回転速度が任意の変更可能な可変速式の竪型粉砕機1である。
【0018】
本実施形態に使用した竪型粉砕機1の粉砕ローラ3は、
図2(1)に示すように、回転テーブル2の上面に2個が配されて、回転テーブル2の方向に押圧されるよう構成されており、回転テーブル2が回転することにより、回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。また、本実施形態に使用した竪型粉砕機1においては、粉砕ローラ3と位相を90度ずらしたような形で、補助ローラ5が2個配されており、粉砕ローラ3と同様に回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。
なお、本実施形態においては、粉砕ローラ3より小型のローラを補助ローラ5として使用した
。
【0019】
ここで、
図2(2)に示すように、粉砕ローラ3はスイングレバー3Aに取り付けられてケーシング1Bに軸3Cを中心として回動自在に軸支されており、スイングレバー3Aのアーム3Bには第1の油圧シリンダ3Dが取り付けられている。そして、第1の油圧シリンダ3Dには図示しない油圧ラインを介して
図1に示した油圧ユニット55が接続されている。本実施形態においては、油圧ユニット55を作動させることによって第1の油圧シリンダ3Dにつながる油圧ラインに流れる作動油の油圧を昇圧することにより、油圧シリンダ3Dを作動させてアーム3Bを駆動することによりスイングレバー3Aを動かして粉砕ローラ3を所望する加圧力で回転テーブル2側に押し付ける。
【0020】
粉砕ローラ3と同様に、補助ローラ5はスイングレバー5Aに取り付けられてケーシング1Bに軸5Cを中心として回動自在に軸支されており、スイングレバー5Aのアーム5Bには第2の油圧シリンダ5Dが取り付けられている。そして、第2の油圧シリンダ5Dには図示しない油圧ラインを介して
図1に示した油圧ユニット55が接続されている。本実施形態においては、油圧ユニット55を作動させることによって、第2の油圧シリンダ5Dにつながる油圧ラインに流れる作動油の油圧を昇圧することにより、油圧シリンダ5Dを作動させてアーム5Bを駆動することによりスイングレバー5Aを動かして補助ローラ5を所望する加圧力で回転テーブル2側に押し付ける。
【0021】
以下、粉砕ローラ3と補助ローラ5について、それぞれ個別に制御する油圧制御機構として、制御装置50を説明する。
図1に示した竪型粉砕機1においては、前述の油圧ユニット55、並びに、油圧ユニット55を制御して補助ローラ5と粉砕ローラ3の加圧力を制御する制御装置50を備えており、制御装置50は補助ローラ5及び粉砕ローラ3について、それぞれ加圧開始タイミングと加圧力を別個に設定できる設定器51、補助ローラ5並びに粉砕ローラの加圧開始タイミングに係る時間等を計測するタイマ装置53、設定器51に設定された時間とタイマ53に設定されたタイマ時間を比較又演算等して条件を満たした場合に油圧ユニット55に対して所定の指令信号を発信するコントロールユニット52等を備えている。
制御装置50は前述の構成により、油圧ユニット55を制御して、第1の油圧シリンダ3D及び第2の油圧シリンダ5Dに送る作動油の油圧をそれぞれ個別に制御して、粉砕ローラ3と補助ローラ5について、それぞれ個別に下降タイミング及び加圧開始タイミングと加圧力を制御する。
なお、
図1に示す実施形態においては振動センサS1を備えて、運転中、竪型粉砕機に生じている振動の状態を常時監視するとともに、万一、異常振動を検知した場合に、安全装置として働き、インターロックを起動させて竪型粉砕機1の運転を停止するよう構成されている。
【0022】
以下、竪型粉砕機1の内部構造等について説明する。
図1に示した竪型粉砕機1は、回転テーブル2の上方に形状が略逆円錐型の内部コーン19を備えるとともに、内部コーン19の上部に固定式の一次分級羽根14と、内部コーン19の上方で一次分級羽根14の内側に回転式の分級羽根を備えた回転式分級機13を有している。
なお、回転式分級機13が備えた回転式の羽根は、竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータにより駆動されて、自在に回転する構成となっている。
【0023】
さらに、
図1に示した竪型粉砕機1は、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス供給口33と、極端に大きな重量の原料を取り出すための下部取出口34と、を備えており、回転テーブル上方には、ガスと共に製品を取り出すことのできる上部取出口39を備えている。
【0024】
図1に示した竪型粉砕機1は前述の構成によって、運転中に、ガス供給口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、回転テーブル2下方から一次分級羽根14及び回転式分級機13を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じる構成となっている。
【0025】
回転テーブル2上で粉砕された原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、一次分級羽根14方向に流れるが、径が大きく重量の大きな原料は一次分級羽根14まで到達できずに落下して、回転テーブル2上で再度粉砕される。なお、極端に重量が大きな原料は竪型粉砕機1の下部にある下部取出口34より機外に排出される。
【0026】
一次分級羽根14を通過して回転式分級機13を通過できなかった原料は、内部コーン19上に落下して回転テーブル2中央部分付近に供給され、回転テーブル2上で、再度、粉砕される。一方、回転式分級機13を通過した径の小さな原料は、上部取出口39から製品として取り出される。なお、粉砕ローラ3で粉砕された後においても、一次分級羽根14、又は回転式分級機13を通過できずに、回転テーブル2上に供給されて、再度、粉砕される原料は、循環原料と称される。
【0027】
以下、本実施形態による竪型粉砕機1の運転方法について、その好ましい1例を説明する。本実施形態による竪型粉砕機1の運転方法では、竪型粉砕機1の運転開始前に、制御装置50の設定機51に対して、予め補助ローラ5と粉砕ローラ3の加圧開始タイミングを入力する。
具体的には、原料投入後、回転テーブル2上に補助ローラ5を下降させることができる程度まで原料層の厚みが確保されるまでの時間を勘案し、コントロールユニット52から油圧ユニット55に対して補助ローラ下降指示信号を発信する時間を設定する。
なお、補助ローラ5を下降させるに最低限必要な原料層の厚みが確保される時間については、起動時、回転テーブル2上に載っている原料の状態によって異なるため、起動時の状況に応じて調整が必要である。
【0028】
次に、補助ローラ5への下降指示信号が発信されてから粉砕ローラ3への下降指示信号が発信されるまでの時間をタイマT1として設定するとともに、補助ローラ5への下降指示信号が発信されてから補助ローラ5への加圧指示信号が発信されるまでの時間をタイマT2として設定する。そして、粉砕ローラ3への下降指示信号が発信されてから、粉砕ローラ3への加圧指示信号が発信されるまでの時間をタイマT3として設定する。
【0029】
なお、本実施形態においては、補助ローラ5への加圧指示信号が発信されてから、粉砕ローラ3への加圧指示信号が発信されるまでの時間をΔTとし、補助ローラ5の加圧開始動作からΔT後、粉砕ローラ3の加圧開始動作をするように、タイマT1、タイマT2、及びタイマT3の時間を設定器51に設定する。
【0030】
以下、竪型粉砕機1の運転開始後において、竪型粉砕機1の原料投入口35に投入された原料(本実施形態においては被粉砕物である石炭)は、原料投入シュートを介して回転テーブル2の中央付近に投入されて、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブル2の外周側に移動する。
【0031】
原料投入後、回転テーブル2上に原料が行きわたって原料層を形成した時点で、補助ローラ5に対する下降指示信号を制御装置50より発信し、油圧ユニット55を制御して、油圧シリンダ5Dを作動させてゆっくりと補助ローラ5を回転テーブル2側に下降させる。補助ローラ5の下降指示信号が発信されると同時にタイマT1及びタイマT2が計時を開始し、タイマT1の設定時間経過後に、粉砕ローラ3に対して下降指示信号が発信されるとともに、タイマT2の設定時間経過後に補助ローラ5への加圧指示信号が発信される。そして、補助ローラ5の加圧力が昇圧完了した後、タイマT3の設定時間が経過し、粉砕ローラ3への加圧指示信号が発信される。
【0032】
竪型粉砕機1の運転中においては、竪型粉砕機1の原料投入口35に投入された原料は。原料投入シュートを介して回転テーブル2の中央付近に投入されて、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブル2の外周側に移動する。そして、回転テーブル2上に投入された原料は、後述する循環原料と回転テーブル2上で合わさって、その大部分が補助ローラ5で圧密されて脱気された後、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。
回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料は、回転テーブル2の外縁部に周設されたダムリング15を乗り越えて、回転テーブル上面2の外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。
【0033】
環状通路30に達した原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、一次分級羽根14方向に流れようとするが、径が大きく重量の大きな原料は、一次分級羽根14まで到達することができず、或いは一次分級羽根14を通過できず、に落下するが、その大部分が回転テーブル2上に落下して、再度、粉砕される。
なお、一次分級羽根14を通過できない原料の中で極端に重量の重いものは、回転テーブル2の下方まで落下して、下部取出口34より排石として取り出される。また、一次分級羽根14を通過して、回転式分級機13を通過できなかった原料は、落下することにより内部コーン19に捕集されて、再度、回転テーブル2上に供給され、粉砕される。
【0034】
ここで、原料を微粉砕する場合においては、回転式分級機13を通過できる原料の径を小さくする必要があるため、結果として、一次分級羽根14又は回転式分級機13を通過できずに落下する原料の割合は多くなり、原料投入シュートから投入される新規原料に対して繰り返し粉砕される循環原料の割合が大きくなり、嵩高い原料層が形成される。
【0035】
循環原料は、所定の粒径となって機外に排出されるまで、繰り返し、回転テーブル上に供給され、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。一方、所定の粒径まで小さく粉砕された原料は、回転式分級機13を通過することにより、上部取出口39より粉砕品として取り出される。
【0036】
前述したように竪型粉砕機1において微粉砕する場合においては、新規原料とは別に、一次分級羽根14或いは回転式分級機13を通過できずに落下して内部を循環する循環原料が多くなる。当然、原料を微粉砕しようとすればするほど内部循環原料の割合は増加するが、循環原料は新規原料に比較して径が小さいため嵩高くなり、原料層の中に細かな空隙が生じるため、空隙に抱え込むガスの量も必然的に大きくなる。
【0037】
図7に補助ローラ下の原料層の層厚とローラ間の動摩擦係数について見かけ上の関係を示す。動摩擦係数についてみれば、層厚が厚い方が小さくなっている。
【0038】
また、
図8にローラの速度と、原料層及びローラの間の見かけ上の動摩擦係数について関係を示す。動摩擦係数についてみれば、一部の極めて速度の遅い領域を除き、細かい粒度の方が動摩擦係数的に小さくなっている。
【0039】
図6に概念図を示すが、原料層の中にガスを多く含む層があり、滑りやすい部分を形成している。原料を微粉砕する際においては、粉砕ローラにより、ガスを抱え込む空隙が大きい循環原料と、新規原料を一緒に合わせて粉砕するため、その層間で滑りが発生し、異常振動の発生につながるから、運転不能に陥るのである。
【0040】
ここで、従来技術として粉砕ローラ3と補助ローラ5を同時に下降開始させて同時に加圧開始した場合について、ローラ下の原料層の厚みと振動状態の関係を
図10のチャートに示す。粉砕ローラ3と補助ローラ5を、同一のローラ加圧指示信号により、同時に加圧開始した場合に、回転テーブル2のモータ電流値が上昇し始めると同時に、振動が急激に大きくなり運転不能な異常振動状態になり、モータ電流異常によってモータートリップした。
【0041】
本実施形態の場合について、補助ローラ5と粉砕ローラ3の加圧開始タイミング、原料層の厚み、及び振動状態の関係を
図4のチャートに示す。
本実施形態においては、補助ローラ5に対して加圧指示信号を発信してからΔT秒後(本実施形態においては6秒後)に粉砕ローラ3に対する加圧指示信号が発信されるようにタイマT1乃至タイマT3を設定した。補助ローラ5を加圧開始してから設定時間経過後に、粉砕ローラ3を加圧開始する本実施形態においては、振動が急激に大きくならず、安定運転可能であった。
【0042】
ΔTと振動の関係を
図5に示す。補助ローラ3の加圧開始動作から粉砕ローラ5の加圧開始動作までの遅れ時間であるΔTが短すぎても長すぎても振動が大きくなることがわかる。最大振動振幅値が100μm以下を安定運転可能な領域とすると、ΔTの好ましい時間範囲は4秒から8秒までの範囲であって、特に好ましいのは6秒である。
【0043】
ここで、
図7に補助ローラ下の原料層の厚みと動摩擦係数の関係を示す。
補助ローラ5の加圧開始直後の時点においては、補助ローラ5の加圧力が十分に昇圧仕切れておらず、完全に加圧力が昇圧した状態を100%とすると、圧密度で70%以下であり、まだ滑りやすい状況にあるため、粉砕ローラ5と補助ローラ3を同時に加圧開始する従来技術においては異常振動が発生していると推測される。
【0044】
一方、補助ローラ5のみに加圧力が与えられて粉砕ローラ3が機能していない状況下において運転を続ければ原料の供給と粉砕能力のバランスが崩れて異常振動を生じさせるため、一定時間以上、粉砕ローラ3の加圧開始動作を遅らせることも好ましくないと推測される。