(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ボックスにおける前記端子収容部は前記取付け用開口部へ嵌合可能な筒状に形成されるとともに、端子収容部の外周面には前記取付け用開口部の開口縁に係止可能な係止部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
前記端子収容部の係止部より嵌め込み方向後方の部位には前記取付用開口部の周囲に対向するフランジ縁が周方向に沿って張出し形成され、前記フランジ縁には接着剤が塗布されることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明の太陽電池モジュールは、前記ボックスにおける前記端子収容部が前記取付け用開口部へ嵌合可能な筒状に形成されるとともに、端子収容部の外周面には前記取付け用開口部の開口縁に係止可能な係止部が形成されている構成とすることが好ましい。
このような構成によれば、ボックスは端子収容部を筐体の取付け用開口部へ嵌め込むことで、端子収容部に形成された係止部が取付け用開口部の開口縁に係止するため、ボックスの取付け作業を簡単に行うことができる。
(2)端子収容部の係止部より嵌め込み方向後方の部位には前記取付用開口部の周囲に対向するフランジ縁が周方向に沿って張出し形成され、前記フランジ縁には接着剤が塗布されるようにしてもよい。
このような構成によれば、フランジ縁に塗布した接着剤が固化するまでの間、ボックスは係止部の係止によって仮保持がされるため、ボックスを保持しておく手間が省ける。また、接着剤の固化後は係止部の係止力と併せて接着材の接着力が付加されるため、ボックスの取付け状況が強化される。
【0010】
次に、本発明の太陽電池モジュールを具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例>
図1に示すように、本実施例の端子ボックス1は太陽電池モジュール2の筐体3の裏面側に取付けられるようになっている。本実施例の太陽電池モジュール2は、図示しない架台により支持されており、この架台が太陽の移動に追従できる、いわゆる集光追尾式の発電システムである。
【0011】
太陽電池モジュール2は、金属製の薄板材により形成された筐体3を備えている。筐体3は上方に開口する方形の箱状に形成されており、上面側に開口している。筐体3の上面開口は図示しない集光板によって閉じられている。この集光板には太陽光を集光する複数のフレネルレンズが備えられている。
【0012】
図1に示すように、筐体3の底板には複数の太陽電池セル4が配されている。各太陽電池セル4は、各集光レンズにより集光された太陽光を受ける位置に整列して配置されている。また、各太陽電池セル4の電極は同方向に整列して延出する複数の導電路5によって接続されている。各導電路5の両端部は導電路5と直交する方向に延出した電極板6A,6Bによって接続されている。
【0013】
図1に示すように、筐体3の底板において、両電極板6A,6B寄りの部位であって各導電路5の並び方向に関する中央部には、端子ボックス1を取り付けるための一対の取付け用開口部7が設けられ、それぞれは筐体3の裏面側に貫通して形成されている。より詳しくは、両取付け用開口部7は隣り合う導電路5の間に挟まれる位置に開口している。また、
図1に示すように、上記両電極板6A,6Bからは先端側が取付け用開口部7内に突出するようにして出力用導体8が一体に延出している。
【0014】
両端子ボックス1の一方のものは、正極側となる電極板6Aに接続されるプラス側端子ボックス1となり、他方は負極側となる電極板6Bに接続されるマイナス側端子ボックス1となっている。いずれの端子ボックス1も、
図8に示すように、ボックス9と、ボックス9内に収容された端子金具10と、ボックス9内に端部が収容されかつボックス9外に引き出されるケーブル11とを備えている。
【0015】
ボックス9は合成樹脂製であり、上面側(筐体3の底板の外面と対向する側)へ開口して形成されている。ボックス9は、端子金具10とケーブル11の端部を収容する角筒状の端子収容部12と、この端子収容部12の外壁面に張出し形成されたフランジ縁13とから一体に形成されている。
【0016】
図4に示すように、端子収容部12内の底面には端子台14が一体に突出形成されている。次に、この端子台14に取付けられる端子金具10について説明する(
図6、
図7参照)。
【0017】
端子金具10は導電性の金属板により一体に形成されている。端子金具10は、ケーブル11に接続するためのケーブル接続部15と、端子台14への取付けのための装着部16と、出力用導体8に接続するための導体接続部17とを備えて構成されている。装着部16は方形板状に形成され、端子台14に対し縦向き(板面に沿う向き)に差し込まれる。装着部16は連結片18を介してケーブル接続部15に連続している。連結片18は装着部16の側縁からケーブル11側に向けて張出した後、ケーブル11の軸線と直交するように略直角に屈曲し、さらにその下縁からケーブル11側へ向けて略直角に屈曲しケーブル接続部15に連続している。
【0018】
ケーブル接続部15の両側縁からは一対の起立片19が相互に対向して起立形成されている。ケーブル11の端部に露出した芯線11Bは両起立片19の間に導入され、この間において半田付けによって接続される。本実施例では、
図6に示すように、ケーブル接続部15の両側縁で両起立片19に隣接した位置には共に幅方向に沿って一対の切欠き溝20が形成されている。両切欠き溝20は、両起立片19をプレス時に立ち上げやすいようにしている。
【0019】
一方、導体接続部17は装着部16の上縁から略直角に折り曲げられて略水平姿勢をなしている。導体接続部17の中央部には出力用導体8との接続のための差し込み片21が形成されている。差し込み片21は出力用導体8の延び方向と略直交する方向に延びる両持ち状に形成されている。すなわち、差し込み片21は導体接続部17の中央部に切り込まれた一対のスリット22の間の部位が下面側から上方へ叩き出されることによって形成されている。このことにより、差し込み片21には、
図9に示すように、端子金具10の側面視において導体接続部17の上面との間に出力用導体8を差し込み可能な差し込み口23が形成されている。
【0020】
一方、
図4、
図5に示すように、端子収容部12の外側面には挿通管部24が一体に突出形成されている。挿通管部24は端子収容部12の内外を連通する中空状に形成され、ケーブル11の端部を端子収容部12内に導入可能である。端子収容部12内において、挿通管部24が端子収容部12内に開口する部位と対向する位置には、ストッパ壁25が立設されている。ストッパ壁25は、ケーブル11が挿通管部24へ挿通されたときに、ケーブル11の被覆11Aの前端部が突き当てられることにより、端子収容部12へのケーブル11の差し込み深さを規定するようにしている。ストッパ壁25の中央はケーブル11の端部に露出した芯線11Bを通過させるための通し溝26が開口している。
【0021】
図4、5に示すように、端子収容部12の底面における中央部には、底面から一段高くなった基台部27が形成されており、端子台14のベースとなる部分を形成している。基台部27は平面視で略長方形状に形成され、底面からの突出高さはストッパ壁25よりは低くしてある。基台部27の上面においてストッパ壁25の前方(ケーブル11の差し込み方向前方)には略方形状に凹所28が凹み形成されている。
図8、
図9に示すように、端子金具10が端子収容部12に装着された状態では、ケーブル接続部15のうち切欠き溝20が形成された部分を含む領域が、この凹所28の上方を横切るようにしてあり、ケーブル接続部15は凹所28を挟んだ部位において基台部27上に支持されている。凹所28は半田作業時に熱が最も伝わり易い箇所であることから、樹脂が溶けてしまうのを防止するために空間を確保するようにしたものである。
【0022】
図4に示すように、端子台14は、基台部27の上面の一隅部に突設されている。端子台14は出力用導体8の延び方向と直交する方向に長い直方体形状に形成されている。また、端子台14の上面には端子金具10の装着部16を差し込むための差し込み溝29がスリット状に開口している。差し込み溝29は端子金具10の差し込み方向に沿って穿孔されている。差し込み溝29におけるケーブル11側の端部には、差し込み溝29と連通して逃がし溝30が切り込んであり、端子金具10の装着時には連結片18を逃がして端子台14の外部に導出させることができるようにしてある。
【0023】
図4に示すように、差し込み溝29内の両長辺側で対向する側面には3対のリブ31がそれぞれの対で対向しつつ突出し端子金具10の差し込み方向に沿って延出している。各リブ31は平面視で三角形状をなし先端が尖った形態で形成されている。また、対をなすリブ31同士の間隔は、端子金具10の装着部16の厚み寸法より小さくしてある。したがって、端子台14への端子金具10の装着時には、装着部16が各リブ31の先端を圧潰しつつ差し込み溝29内へ圧入されることになる。
【0024】
本実施例においては、
図4、
図5に示すように、差し込み溝29の底面には相互に間隔をおいて二条の支持突部32が突出形成されている。両支持突部は差し込み溝29の両長辺部間を横架する方向に設けられている。両支持突部32は端子金具10の装着部16を差し込み溝29の底面から浮かせた状態で支持させるためのものである。したがって、端子金具10の装着部16が差し込み溝29内へ圧入される際に削りくずが生じたとしても、削りくずを支持突部32によって保有された隙間に落し込ませることができ、これによって、装着部16は差し込み溝29に対し下端が両支持突部32に当接する深さまで確実に差し込むことができる。
【0025】
ところで、端子収容部12の上面開口側は太陽電池モジュール2における筐体3の取付け用開口部7に対し筐体3の外面側から嵌め込むことができるように形成されている。また、端子収容部12における両長辺側の外側面であって幅方向の中央部には一対の係止爪33(係止部)が配されている。
図3に示すように、両係止爪33は端子収容部12の開口縁から嵌め込み方向に沿って上り勾配となるように突出形成されている。ボックス9の端子収容部12が筐体3の取付け用開口部7に嵌め込まれる際には、両係止爪33は取付け用開口部7周りを僅かに撓み変形させつつ取付け用開口部7を通過し、筐体3内に進入した状態で取付け用開口部7の開口縁に係止することで、端子ボックス1を筐体3に保持させることができる。
【0026】
端子収容部12と共にボックス9を構成するフランジ縁13は、端子収容部12の開口縁からやや後退した高さ位置において全周に沿って外方へ張り出し形成されている。フランジ縁13は、端子収容部12が筐体3の取付け用開口部7に嵌め込まれたときに、筐体3における取付け用開口部7周りの外面に対向可能となっている。
図4、
図5に示すように、フランジ縁13における筐体3と対向する側の面には、一部範囲を除いて外周縁に沿って環状突縁34が形成されている。フランジ縁13の上面において環状突縁34と端子収容部12の外周面との間は接着剤が塗布される接着面35が形成されている。環状突縁34の突出高さは接着剤の塗布される厚み程度のごく僅かなものである。上記環状突縁34のうち出力用導体8の延び方向と直交する両辺(長辺側の両辺)の中央部は所定長さ範囲に亘って環状突縁34が切り掛かれて接着剤の流出口37が形成されていて、接着剤の余剰分を環状突縁34の外部へはみ出させるようにしている。
【0027】
なお、
図4等に示すように、フランジ縁13の接着面35における一方の流出口37の内側には位置決めピン36が突出形成されていて、筐体3における取付け用開口部7に隣接した位置に設けられた位置決め孔38へ差し込み可能である。
これには、端子ボックス1のプラス側とマイナス側を筐体3へ誤組み付けしないようにする意味もある。
【0028】
次に、本実施例の端子ボックス1の組み立て作業及び端子ボックス1を太陽電池モジュール2の筐体3へ装着する作業について説明する。
【0029】
まず、端子ボックス1の組み立て作業について説明すると、端子金具10の装着部16を端子台14の差し込み溝29に、連結片18を逃がし溝30にそれぞれ適合させながら、押込みを行う。すると、装着部16は各リブ31の先端縁を押し潰しながら差し込み溝29内に圧入される。そして、装着部16の下縁が支持突部32に突き当たれば、端子金具10は正規の装着状態となる。このように、装着部16の差し込みに際して各リブ31を圧潰させる、という圧入構造を採用することによって、簡易な構成でありながら端子金具10を端子台14に確実に保持させることができる。
【0030】
また、装着部16が各リブ31の先端を潰すことに伴って削りくずが生じる場合があるが、この削りくずは支持突部32によって保有された隙間に落し込まれる。仮に、支持突部32を設けることなく、装着部16の下縁を差し込み溝29の底面に当接するような設定とすると、削りくずが装着部16と差し込み溝29の底面との間に噛み込んでしまい、装着部16を差し込み溝29内に正規深さまで差し込み得ない事態が生じてしまうが、本実施例ではかかる事態を未然に回避することができる。
【0031】
次に、端部に芯線11Bを露出させた状態のケーブル11が、ボックス9の接続管部から挿通され、ケーブル11の被覆11Aの端面が両ストッパ壁25に突き当てられる。これによりケーブル11の芯線11Bは通し溝26を介して端子金具10の両起立片19の間に導入される。この状態で、両起立片19の間に溶融半田が流し込まれ、芯線11Bとケーブル接続部15との半田付けがなされる。
【0032】
なお、ケーブル11の被覆11Aには予めシールチューブ39が挿通されていて、
図2に示すように、ケーブル11がボックス9に接続された状態では、シールチューブ39はボックス9の外面当接しつつ挿通管部24とケーブル11の被覆11Aとに被せ付けられ、これによってシール性が確保されている。
【0033】
こうして端子ボックス1の組み立て作業が完了したら、筐体3に対する端子ボックス1の取付け作業が行われる。まず、ボックス9のフランジ縁13において環状突縁34の内側領域のほぼ全面及び環状突縁34の上面に接着剤が塗布される。その後に、端子収容部12の開口面側から筐体3の取付け用開口部7に嵌め入れる。このとき、位置決めピン36が筐体3側の位置決め孔38に差し込まれるが、仮に端子ボックス1を誤った向きで装着しようとすると、位置決めピン36が位置決め孔38に正しく向き合わず、位置決めピン36が筐体3の外面に干渉してしまうため、作業者はこれをもって端子ボックス1の装着姿勢が誤っていることを知ることができる。
【0034】
端子収容部12が取付け用開口部7を通過する際には、前述したように、両係止爪33が取付け用開口部7の開口縁を強制的に拡開方向へ撓み変形させつつ、筐体3内に進入する。両係止爪33が取付け用開口部7を通過すれば、取付け用開口部7の開口縁は復帰して両係止爪33と係止する。このときには端子ボックス1において接着剤を塗布した部分が筐体3における取付け用開口部7周りの外面に押し付けられる。このように、端子ボックス1は接着剤が乾燥・固化するまでの間は、両係止爪33によって保持されるため、この間端子ボックス1を保持しておく必要がなく、直ちに次の作業に移行することができる。また、接着剤が固化した後は、端子ボックス1は接着剤の接着力に係止爪33による係止力が付加されるため、端子ボックス1の保持力が強化される。
【0035】
続いて、太陽電池モジュール2の出力用導体8と端子金具10との接続作業がなされる。その場合には、
図3に示すように、出力用導体8の先端部が端子収容部12内に導き入れられて端子金具10の導体接続部17の差し込み口23へ差し込まれる。その状態で、出力用導体8と端子金具10の導体接続部17とが半田付けされる。
【0036】
しかる後に、端子収容部12の開口側から端子収容部12内にポッティング材(封止材)が注入される。ポッティング材は端子収容部12の底面から少なくとも端子金具10が隠れる高さまで入れる必要がある。
【0037】
ところで、本実施例の端子ボックス1は筐体3に取付けられた状態では、端子収容部12の開口面の全面が筐体3の内部に臨んだ状態となっている。したがって、端子金具10の出力用導体8と端子金具10との接続作業、及びポッティング材の注入作業を共に筐体3の上方から行うことができる。つまり、筐体3全体を裏返しにする必要もなく、出力用導体8の接続とポッティング材の注入の二つの作業を筐体3の表側から行うことができるため、作業性に優れる。
【0038】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では端子ボックス1を筐体3の底板に取付けるようにしたが、側板に取付けるようにしてもよい。
(2)上記実施例では端子収容部12内に封止材を注入したが、封止材の注入は省略することも可能である。
(3)上記実施例では、端子収容部12の一側の全面を開口させたが、一部が開口する形態であってもよい。
(4)上記実施例では端子ボックス1の仮保持を係止爪33によって行う方式としたが、単に取付け用開口部7への圧入によって行う方式としてもよい。また、本実施例とは逆に、取付用開口部の開口縁に係止爪を突出し、ボックス9側に係止爪に係止する凹部(係止部)を形成するようにしてもよい。