(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、燃料である水素ガスをFCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池自動車)に、高圧に充填するための燃料ガス充填装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された燃料ガス充填装置は、主に調節弁及び蓄圧器から構成され、蓄圧器と燃料タンクとの圧力差に応じた目標流量を決定し、決定した目標流量に従って吐出流量が制御される。
【0003】
ところで、近年、2015年のFCVの市場形成を目指し、基準・規格整備等の基盤整備が進められている。中でも、FCVの動力源である水素を充填・供給する設備である水素ステーションにおいて、安全で効率的な急速充填手順を規定する充填プロトコルの策定は重要な課題とされている。
充填プロトコルとは、FCVの車載高圧水素容器(以下、「車載タンク」という。)に燃料である水素ガスを、安全に効率よく充填する条件を提示するプロトコルである。水素ガスは、可燃性ガスの中でも、特に爆発範囲が広いので、安全に急速充填を行うためには、この充填プロトコルに精度良く沿って充填を行う必要があり、逆に、充填プロトコルから外れた場合は、危険を回避するために充填を停止する必要が生じる。
充填プロトコルに従って水素ステーションからFCVに水素ガスを充填する際には、目標となる昇圧率(以下、「目標昇圧率」という。)を算出し、さらにこの値に追従するように水素ガスの流量が高い精度で制御されることが必要となる(現状、規定により、目標昇圧率から外れても良いとされる公差が、厳格に定められている。)。
そこで、現状の充填においては、一般的に、高い精度で流量を制御可能な調節弁を用いて充填が行われている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における水素ガス充填システム1を含む水素充填環境の構成図である。
水素ガス充填システム1(燃料ガス充填システム)は、FCV2の車載タンク(不図示、以下同様)(容器)内に水素ガス(燃料ガス)を供給するためのシステムである。水素ガス充填システム1では、蓄圧器(蓄圧器)に貯留されている水素ガスを、差圧充填のみによりFCV2に充填する。水素ガス充填システム1は、例えば水素ステーションである。
【0016】
FCV2は、水素ガスと酸素ガスとの電気化学反応によって発生した電力を動力源として走行する燃料電池自動車である。水素ガス充填システム1とFCV2とは、充填カプラ3によって接続される。
充填カプラ3は、水素ガス充填システム1とFCV2とを接続するための結合部材である。充填カプラ3によって水素ガス充填システム1とFCV2とが接続されることによって、水素ガス充填システム1からFCV2に水素ガスの供給が可能になる。また、充填カプラ3が接続されることで、FCV2の車載タンク内の圧力及び温度の検出データは、制御装置10に送信される。
【0017】
次に、水素ガス充填システム1の具体的な構成について説明する。水素ガス充填システム1は、制御装置10(制御装置)と、蓄圧器20−1〜20−N(Nは2以上の整数)と、圧力計21−1〜21−Nと、遮断弁22−1〜22−Nと、逆止弁23−1〜23−Nと、調節弁30−1〜30−2(調節弁)と、流量計40と、圧力計41と、予冷機42と、遮断弁43と、圧力計44と、温度計45とを備える。調節弁30−1(主調節弁)及び30−2(従調節弁)は、並列に設けられている。
本発明の形態では、調節弁30−1及び30−2は、
図1に示すように流量計40の上流側に設けられているが、これに限定されることではなく、
図1の流量計40の下流側から充填カプラ3の上流側までの位置であればいずれの位置に設けられてもよい。
【0018】
図1に示す実線は、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスが流れる供給ライン11を表す。
図1に示す破線は、各センサ装置(例えば、圧力計21−1〜21−N、流量計40、圧力計41、圧力計44及び温度計45によって検出された検出結果のいずれかを含むデータ(以下、「検出データ」という。)の流れを表す。検出データには、例えば圧力値、流量値及び温度の情報のいずれかが含まれる。
図1に示す二点鎖線は、制御装置10が各弁(例えば、遮断弁22−1〜22−N、調節弁30−1〜30−2及び遮断弁43)を制御することを示す制御線を表す。
【0019】
制御装置10は、遮断弁22−1〜22−N、調節弁30−1〜30−2及び遮断弁43の開閉を制御する。制御装置10の制御によって遮断弁22−1〜22−Nのいずれかと、調節弁30−1〜30−2のいずれか及び遮断弁43が開放されると、開放された遮断弁22−1〜22−Nに接続されている蓄圧器20−1〜20−Nから水素ガスが供給ライン11を介してFCV2の車載タンクに供給される。
供給ライン11は、配管である。
【0020】
蓄圧器20−1〜20−Nは、圧縮機(不図示)により圧縮された高圧の水素ガスを貯留する。蓄圧器20−1〜20−Nは、約95MPaの水素ガスを貯留することができれば、材質や形状に特に限定されるものではない。一般的に、大型のマンガン鉱製の継ぎ目なしボンベやカードルなどが用いられる。
圧力計21−1〜21−Nは、それぞれ、蓄圧器20−1〜20−Nと遮断弁22−1〜22−Nとの間に設けられ、蓄圧器20−1〜20−N内の水素ガスの圧力を検出する。圧力計21−1〜21−Nによって検出された水素ガスの圧力値を含む検出データは、制御装置10に送信される。
【0021】
遮断弁22−1〜22−Nは、それぞれ、蓄圧器20−1〜20−Nに対して設けられる。遮断弁22−1〜22−Nは、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスの供給を遮断可能な弁である。例えば、遮断弁22−1〜22−Nが閉じられている場合には、蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスの供給が遮断される。一方、遮断弁22−1〜22−Nのいずれかが開放されている場合には、開放されている蓄圧器20−1〜20−Nに貯留されている水素ガスが供給ライン11に供給される。遮断弁22−1〜22−Nは、制御装置10の制御に応じて開閉される。
【0022】
逆止弁23−1〜23−Nは、それぞれ、遮断弁22−1〜22−Nに対して設けられる。逆止弁23−1〜23−Nは、供給ライン11内を流れる水素ガスの逆流を防ぐ弁である。本実施形態では、逆止弁23−1〜23−Nは、蓄圧器20−1〜20−NからFCV2に水素ガスが供給される方向(
図1の矢印の方向)にのみ水素ガスが供給可能となる向きに設置される。すなわち、逆止弁23−1〜23−Nから蓄圧器20−1〜20−Nの方向には、水素ガスが流れ込まない。
【0023】
調節弁30−1は、開度調節可能な弁である。調節弁30−1の開度が変更されることにより供給ライン11を流れる水素ガスの流量が調整される。本実施形態において、調節弁30−1は、水素ガスの充填開始時から使用される。調節弁30−1の最大Cv値は、調節弁30−2の最大Cv値よりも小さい。Cv値とは、調節弁の容量を示す数値であり、開度を全開にした時に単位時間あたりに調節弁を通過する流体(例えば、水素ガス)の量を表す。調節弁の場合は、開度を全閉から全開にまで制御することで、Cv値を0から最大Cv値にまで制御することができる。調節弁の最大Cv値は、バルブの種類とポートの口径によって調節弁毎に予め決められている。なお、以下の説明では、水素ガスの充填開始時から使用される調節弁30−1を主調節弁として説明する。
【0024】
調節弁30−2は、開度調節可能な弁である。調節弁30−2の開度が変更されることにより供給ライン11を流れる水素ガスの流量が調整される。本実施形態において、調節弁30−2は、水素ガスの充填中に使用される。例えば、調節弁30−2は、調節弁30−1単体で水素ガスの流量をまかなえない場合に、制御装置10の制御に応じて開度が制御される。水素ガスの流量をまかなえない場合とは、目標昇圧率に追従するために必要となる水素ガスの流量を調節弁30−1の開度を略全開にしても確保できない場合である。なお、以下の説明では、水素ガスの充填中に使用される調節弁30−2を従調節弁として説明する。
流量計40は、供給ライン11を流れる水素ガスの流量を検出する。また、流量計40は、供給ライン11を流れる水素ガスの温度を検出する。流量計40によって検出された水素ガスの流量値及び温度を含む検出データは、制御装置10に送信される。
【0025】
圧力計41は、流量計40と予冷機42との間に設けられ、供給ライン11を流れる水素ガスの圧力を検出する。圧力計41によって検出された水素ガスの圧力値を含む検出データは、制御装置10に送信される。
予冷機42は、供給ライン11を流れる水素ガスを冷却する。
遮断弁43は、予冷機42と充填カプラ3との間に設けられ、供給ライン11を流れる水素ガスの供給を遮断可能な弁である。例えば、遮断弁43が閉じられている場合には、供給ライン11を流れる水素ガスの供給が遮断される。一方、遮断弁43が開放されている場合には、供給ライン11を流れる水素ガスがFCV2に供給される。遮断弁43は、制御装置10の制御に応じて開閉される。
【0026】
圧力計44は、遮断弁43と充填カプラ3との間に設けられ、供給ライン11を流れる水素ガスの圧力を検出する。圧力計44によって検出された水素ガスの圧力値を含む検出データは、制御装置10に送信される。なお、圧力計44によって検出された水素ガスの圧力値は、FCV2の車載タンク内の圧力と略一致する。
温度計45は、外気温を検出する。温度計45によって検出された外気温を含む検出データは、制御装置10に送信される。
【0027】
なお、以下の説明において、蓄圧器20−1〜20−Nについて特に区別しない場合には蓄圧器20と記載する。また、以下の説明において、圧力計21−1〜21−Nについて特に区別しない場合には圧力計21と記載する。また、以下の説明において、遮断弁22−1〜22−Nについて特に区別しない場合には遮断弁22と記載する。また、以下の説明において、逆止弁23−1〜23−Nについて特に区別しない場合には逆止弁23と記載する。また、以下の説明において、圧力計21、41及び44について特に区別しない場合には単に圧力計と記載する。また、以下の説明において、遮断弁22及び43について特に区別しない場合には単に遮断弁と記載する。
【0028】
図2は、制御装置10の機能構成を表す概略ブロック図である。制御装置10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。制御プログラムの実行によって、制御装置10は、弁制御部101、取得部102、昇圧率情報記憶部103、決定部104、判定部105、選択部106を備える装置として機能する。なお、制御装置10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、制御プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0029】
弁制御部101は、遮断弁、主調節弁(調節弁30−1)、及び従調節弁(調節弁30−2)の開閉を制御する。また、弁制御部101は、水素ガスの充填時に、充填用に使用される蓄圧器20(以下、「充填用蓄圧器20」という。)に対応する遮断弁22を開放する。また、例えば、弁制御部101は、選択部106によって選択された充填方法に基づいて主調節弁及び従調節弁の開度を制御する。
【0030】
取得部102は、各圧力計によって検出された圧力値、流量計40によって検出された水素ガスの流量値及び温度の情報、及び温度計45によって検出された外気温の情報のいずれかを含む検出データを取得する。また、取得部102は、水素ガス充填開始時にFCV2の車載タンク内に残っている圧力(以下、「初期残圧」という。)の情報を取得する。
【0031】
昇圧率情報記憶部103は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。昇圧率情報記憶部103は、昇圧率テーブルを記憶している。昇圧率テーブルには、外気温と初期残圧との組み合わせ毎の目標昇圧率の値が登録されている。つまり、昇圧率テーブルには、外気温の情報と初期残圧の情報とが取得された場合に決定される目標昇圧率の値が登録されている。
決定部104は、昇圧率テーブルを参照し、取得部102によって取得された検出データに含まれる外気温の情報と、初期残圧の情報とに基づいて目標昇圧率を決定する。
【0032】
判定部105は、所定の条件が満たされたか否か判定する。所定の条件の具体例として、例えば決定部104によって決定された目標昇圧率が予め設定された昇圧率より高いことが挙げられる。目標昇圧率が予め設定された昇圧率より高い場合、判定部105は所定の条件が満たされたと判定する。一方、目標昇圧率が予め設定された昇圧率より高くない場合、判定部105は所定の条件が満たされていないと判定する。
【0033】
選択部106は、判定部105の判定結果に応じてFCV2に対する充填方法を選択する。具体的には、選択部106は、所定の条件が満たされていないと判定された場合、充填開始時から終了時まで主調節弁のみを使用して充填を行う、単制御での充填方法を選択する。一方、選択部106は、所定の条件が満たされたと判定された場合、充填開始時には主調節弁のみを使用して充填を行い、主従同時制御の開始条件の成立後には主調節弁及び従調節弁を同時に使用して充填を行う、主従同時制御での充填方法を選択する。
【0034】
主従同時制御の開始条件の成立とは、例えば、(1)主調節弁の開度が予め決められた値以上となった場合、(2)蓄圧器20と車載タンクとの圧力差が予め決められた値以下となった場合、(3)燃料ガス(水素ガス)の流量が予め決められた値以下となった場合、(4)車載タンクの圧力が予め決められた値以上となった場合、などである。
【0035】
次に、本実施形態における充填方法を説明する。
図3は、本実施形態における制御装置10の充填処理の流れを示すフローチャートである。なお、スタート時は、蓄圧器20の圧力が初期残圧より高い場合を例に説明する。
取得部102は、定期的に検出データを取得する(ステップS101)。例えば、取得部102は、圧力計、流量計40及び温度計からそれぞれ圧力値、流量値、温度及び外気温の情報を取得する。次に、取得部102は、水素ガス充填システム1に接続されたFCV2の車載タンク内の初期残圧の情報を取得する(ステップS102)。その後、取得部102は、ステップS101及び102の各処理で取得した情報(検出データ及び初期残圧の情報)を決定部104に送信する。なお、本実施形態では、車載タンクの初期残圧の情報を自動的に取得するとしたが、これに限定されることではなく、作業員の手で入力されてもよい。
【0036】
決定部104は、送信された情報と、昇圧率情報記憶部103に記憶されている昇圧率テーブルとに基づいて目標昇圧率を決定する(ステップS103)。具体的には、決定部104は、昇圧率テーブルを参照し、検出データに含まれる外気温の情報と、初期残圧の情報との組み合わせに対応する値を目標昇圧率として決定する。外気温の情報は、温度計45によって検出されている。
次に、決定部104は、昇圧率情報記憶部103に記憶されている昇圧率テーブルを読み出す。そして、決定部104は、読み出した昇圧率テーブルに登録されている目標昇圧率の値のうち、初期残圧の情報と選択した外気温の情報との組み合わせに対応する目標昇圧率の値を、その回の水素ガスの充填時における目標昇圧率に決定する。
【0037】
判定部105は、決定部104に決定された目標昇圧率に基づいて、所定の条件が満たされたか否か判定する(ステップS104)。所定の条件が満たされていないと判定された場合(ステップS104−NO)、選択部106は水素ガスの充填方法として、単制御での充填方法を選択する(ステップS105)。その後、弁制御部101は、主調節弁のみを使用した充填を、充填終了時まで行う(ステップS106)。
【0038】
具体的には、まず弁制御部101は、充填用蓄圧器20に対応する遮断弁22、主調節弁(本実施形態では、調節弁30−1)及び遮断弁43を開放する。このとき、従調節弁は閉止状態である。充填用蓄圧器20に対応する遮断弁22、主調節弁及び遮断弁43が開放されると、充填用蓄圧器20に貯留されている水素ガスが、差圧充填により供給ライン11を介してFCV2に充填される。この際、弁制御部101は、充填終了時まで目標昇圧率に追従するように主調節弁の開度を制御する。
【0039】
一方、ステップS104の処理において、所定の条件が満たされたと判定された場合(ステップS104−YES)、選択部106は水素ガスの充填方法として、主従同時制御での充填方法を選択する(ステップS107)。その後、弁制御部101は、主調節弁及び従調節弁を同時に使用した充填を充填終了時まで行う(ステップS108)。ここで、主従同時制御での充填方法とは、充填開始時は主調節弁のみの開度を目標昇圧率に追従するように制御して充填を行い、主従同時制御の開始条件の成立後は主調節弁及び従調節弁の開度を目標昇圧率に追従するようにそれぞれ並行して制御する充填方法である。具体的な方法については後述する。
【0040】
図4は、主従同時制御での充填の流れを示すフローチャートである。
まず、弁制御部101は、充填用蓄圧器20に対応する遮断弁22、主調節弁及び遮断弁43を開放する(ステップS201)。なお、主調節弁の開放時における開度は、予め設定されている。このとき、従調節弁は閉止状態である。充填用蓄圧器20に対応する遮断弁22、主調節弁及び遮断弁43が開放されると、充填用蓄圧器20に貯留されている水素ガスがFCV2に充填される。これにより、充填用蓄圧器20内の圧力は低下し、一方、FCV2の車載タンク内の圧力は上昇する。なお、弁制御部101は、ある一定の時間間隔で主調節弁の開度を制御し(ステップS202)、目標昇圧率に追従した充填を行う。
【0041】
その後、弁制御部101は、主従同時制御の開始条件が成立であるか否か判定する(ステップS203)。
主従同時制御の開始条件が成立である場合(ステップS203−YES)、弁制御部101は従調節弁を開放する(ステップS204)。なお、従調節弁の開放時における開度は、予め設定されている。従調節弁が開放されることにより、充填用蓄圧器20に貯留されている水素ガスが、主調節弁及び従調節弁を介して供給される。その後、弁制御部101は、主調節弁の開度と従調節弁の開度とをそれぞれ並行して制御し(ステップS205)、目標昇圧率に追従した充填を引き続き行う。この際、弁制御部101は、従調節弁の開度を、主調節弁の開度を制御する時間間隔よりも長い時間間隔で制御する。
一方、条件成立が否の場合(ステップS203−NO)、主調節弁の制御(ステップS202)の前に戻り、主従同時制御の開始条件成立まで引き続き、主調節弁の開度の制御を繰り返し実行する。
【0042】
ステップS205の後、弁制御部101は、充填が終了したか否か判定する(ステップS206)。充填が終了した場合(ステップS206−YES)、弁制御部101は充填用蓄圧器20に対応する遮断弁22、主調節弁、従調節弁及び遮断弁43を閉止する。これにより、制御装置10は処理を終了する。
一方、充填が終了していない場合(ステップS206−NO)、ステップS205の前に戻り、充填終了時まで引き続き、主調節弁の開度と従調節弁の開度との制御を繰り返し実行する。
【0043】
以上のように構成された水素ガス充填システム1によれば、複数の調節弁30を用いることによって、目標昇圧率に追従するために必要となる流量を確保することができる。具体的には、まず、圧力差の大きい充填初期時には1台の主調節弁(例えば、調節弁30−1)によって、小さなCv値の範囲を高い精度で流量を制御しつつ充填を行う。その後、主従同時制御の開始条件が成立となった場合には、制御装置10が従調節弁(例えば、調節弁30−2)の開度制御を開始し、2台の調節弁を用いて充填を行う(主従同時制御)。これにより、主調節弁のみでは確保できない大きなCv値を確保することができ、かつ高い精度で流量を制御できる。したがって、広い範囲のCv値において最適な充填プロトコルに従うことができ、安全で効率的に燃料ガスを充填することが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、従調節弁の制御の時間間隔を主調節弁よりも長くしている。これにより、ハンチングを抑えることが可能になる
。
【0045】
<変形例>
本実施形態では、調節弁30−1及び調節弁30−2が最大Cv値の異なる調節弁30であることを例に説明したが、調節弁30−1及び調節弁30−2は最大Cv値が同じであってもよい。このように構成される場合、調節弁30−1及び調節弁30−2のいずれかが主調節弁として動作し、他方が従調節弁として動作する。
これにより、主調節弁と従調節弁とを自由に切り替えることができる。例えば、調節弁30−1を主調節弁として使用し続けている場合、調節弁30−1は従調節弁として動作する調節弁30−2に比べて消耗が激しくなることが想定される。この点について、調節弁30−1及び調節弁30−2の最大Cv値を同じにすることによって、主調節弁として動作する調節弁30及び従調節弁として動作する調節弁30を定期的に入れ替えることで片方の調節弁30のみが一方的に消耗してしまうおそれを軽減することができる。
また、本実施形態では、水素ガス充填システム1が調節弁30を2つ備える構成を示して説明したが、これに限定されることではなく、3つ以上の調節弁30を備えるように構成されてもよい。このように構成される場合、いずれか1つの調節弁30が主調節弁となり、残りのいずれか1つの調節弁30が従調節弁となる。
【0046】
また、本実施形態では、水素ガスの充填先としてFCV2の車載タンクを例に説明したが、これに限定されることではない。例えば、水素ガスの充填先は、水素ガスを充填可能な容器であればどのような容器であってもよい。
本実施形態では、燃料ガスとして水素ガスを例に説明したが、燃料ガスは電気化学反応によって電力を発生させてFCV2に用いることができるガスであればどのようなガスであってもよい。
また、本実施形態では、水素ガス充填システム1が複数台の蓄圧器20を備える構成を示しているが、水素ガス充填システム1は1台の蓄圧器20を備えるように構成されてもよい。
【0047】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。