特許第6136055号(P6136055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136055
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】既設ALCパネルの補強防水構法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   E04G23/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-41018(P2014-41018)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-166523(P2015-166523A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399117730
【氏名又は名称】住友金属鉱山シポレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】内田 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】中沢 楓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−291466(JP,A)
【文献】 特開2000−017813(JP,A)
【文献】 特開2003−314030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔の建物躯体側開口部を覆う補修漏れ防止金物を、当該締結ボルトに予め螺着したナットにて固定した後、該補修漏れ防止金物の内側面に不定形状の発泡ウレタンを吹き付ける第3工程と、前記貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を挿入配置し、前記貫通孔内において締結ボルトの端部にナットにて前記脱落防止用補強金物を締付け固定する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とする既設ALCパネルの補強防水構法。
【請求項2】
ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、長ナットにはパッキン材を装着した長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定する第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とする既設ALCパネルの補強防水構法。
【請求項3】
ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、前記長ナットには長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定する第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定し、該脱落防止用補強金物取着部を防水用テープ又はシール材により防水施工する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とする既設ALCパネルの補強防水構法。
【請求項4】
ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、長ナットにはパッキン材を装着した長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定した後、該補修漏れ防止金物の内側面に不定形状の発泡ウレタンを吹き付ける第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定し、該脱落防止用補強金物取着部を防水用テープ又はシール材により防水施工する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とする既設ALCパネルの補強防水構法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル等の既設建築物に外壁材等として使用されているALC(軽量気泡コンクリート)パネル、特に長方形状のALCパネルを縦長に配置した既設ALCパネルが経年劣化等により取付部の耐力が低下した場合あるいはパネルの破損を抑制させる場合等に適用する既設ALCパネルの補強構造における防水構法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなALCパネルの取付構法の一つとして挿入筋構法が知られている。図8は従来のALC縦壁挿入筋構法の施工例を示すもので、建物躯体であるH形鋼等よりなる梁材21の上部にアングル材等よりなる下地鋼材22を取付け、その下地鋼材22の側面に溶接等で固着したタテカベプレート23にALCパネル24を載置すると共に、そのタテカベプレート23に形成した鉄筋挿通穴(図示せず)内及び横方向に隣り合うALCパネル24の縦目地(図示せず)内に目地鉄筋25を配設し、その目地鉄筋の周囲の上記縦目地内にモルタル等を充填して固化させた構成である(特許文献1参照)。
【0003】
上記のような挿入筋構法で設置された既設ALCパネルの場合、経年劣化等による母材の強度低下や、地震等による取付部耐力の低下の問題を解決する必要があり、その対策として、特許文献1、非特許文献1のような補強構法が知られている。特許文献1に記載の補強構法は、前記図8に示すALC縦壁挿入筋構法の施工例において、下地鋼材22の側面に対応するALCパネル24の所定位置に、ALCパネルの外面側から当該パネルの厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内に棒状体を挿入してスタッド溶接等により下地鋼材の側面に固着し、さらに棒状体の端部にナットをねじ込み、下地鋼材の側面に取付けた支持板と下地鋼材との間にALCパネルを挟んだ状態で締付け固定し、タテカベプレート23とALCパネル24との間で目地鉄筋25を切断して組立てる方式である。又、非特許文献1に記載の補強構法は、同じく前記図8に示すALC縦壁挿入筋構法の施工例において、ALCパネルの脱落防止方法として、ALCパネルの表面に形成した当該パネルの厚さ方向に貫通する貫通孔を開け、建物躯体であるH形鋼等よりなる梁材に溶接により固着した締結ボルトに補修漏れ防止金物を取付け、脱落防止金物を締結ボルトにナットで固定する方式である。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1や非特許文献1に記載の補強構法は、既設のALC縦壁パネルを、その外部側からだけで容易に補強処理を施すことができることや、ALC縦壁パネルを脱落防止金物や締結ボルト・ナット等により建物躯体に固定することによりパネルの脱落を防止することができるという点では優れているが、その補強箇所に対する防水性の確保が難しく、有効な防水対策が施されていないため、地震や衝撃等によりALCパネルに亀裂や欠け等が生じた場合、その亀裂箇所や欠けた部分から雨水等が侵入しパネルに重大な破損が生じることが懸念されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4624288号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2013年度日本建築学会大会梗概集1723「縦壁挿入筋構法で取付けられた外壁ALCパネルの脱落防止策に関する研究」P.1445−1446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたもので、ALC縦壁挿入筋構法により施工された既設ALCパネルの補強構法のうち、特にALCパネルを脱落防止金物や締結ボルト・ナット等により建物躯体に固定する方式の補強構法における前記問題点を解決し、既設の挿入筋構法で設置されたALCパネルの防水性に優れた補強構法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る既設ALCパネルの補強防水構法は、前記ALCパネルを脱落防止金物や締結ボルト・ナット等により建物躯体に固定する方式の補強構法を改善したもので、その既設ALCパネルの補強防水構法は、第1の発明として、既設ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔の建物躯体側開口部を覆う補修漏れ防止金物を、当該締結ボルトに予め螺着したナットにて固定した後、該補修漏れ防止金物の内側面に不定形状の発泡ウレタンを吹き付ける第3工程と、前記貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を挿入配置し、前記貫通孔内において締結ボルトの端部にナットにて前記脱落防止用補強金物を締付け固定する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る既設ALCパネルの補強防水構法は、第2の発明として、ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、長ナットにはパッキン材を装着した長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定する第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る既設ALCパネルの補強防水構法は、第3の発明として、ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、前記長ナットには長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定する第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定し、該脱落防止用補強金物取着部を防水用テープ又はシール材により防水施工する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る既設ALCパネルの補強防水構法は、第4の発明として、ALCパネルの所定位置に、当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する第1工程と、前記ALCパネルの外面側から前記貫通孔内に締結ボルトを挿入して当該ボルトの建物躯体端部をスタッド溶接により建物躯体の梁の側面に固着する第2工程と、前記締結ボルトに前記貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物と長ナットを取着し、長ナットにはパッキン材を装着した長さ調節用寸切ボルトを螺着し、前記締結ボルトに予め螺着したナットと前記長ナットにて前記補修漏れ防止金物を挟持固定した後、該補修漏れ防止金物の内側面に不定形状の発泡ウレタンを吹き付ける第3工程と、前記貫通孔内において該貫通孔の建物躯体側と反対側開口部に板状部材からなるハット形の脱落防止用補強金物を前記寸切ボルトの端部にナットにて締付け固定し、該脱落防止用補強金物取着部を防水用テープ又はシール材により防水施工する第4工程と、前記貫通孔内に当該パネル表面までモルタルを充填する第5工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の既設ALCパネルの補強防水構法によれば、ボルトと脱落防止用補強部材でALCパネルを建物躯体に固着することにより、脱落防止用補強部材の取付部の耐力を得るとともに地震等により、パネルに重大な破損が生じたとしても補強部材がパネルを支えることにより、最悪の事態であるパネルの脱落を防止することが可能となるのみならず、その施工された既設ALCパネルの補強構造は、モルタル部が経年劣化等で亀裂が生じたとしても貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物に吹き付けた不定形状の発泡ウレタン、締結ボルトに装着したパッキン材、貫通孔開口部に施した防水用テープやシール材により、亀裂箇所等からの雨水等の侵入を防ぐことが可能となり、既設ALCパネルの耐久性をさらに向上させることが可能となると共に、屋内への雨水等の侵入も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明による既設ALCパネルの補強防水構法における施工途中の既設ALC縦壁パネルとその貫通孔部を示す斜視図である。
図3】本発明による既設ALCパネルの補強防水構法に用いる脱落防止用補強部材を示す斜視図である。
図4】本発明による既設ALCパネルの補強防水構法に用いる貫通孔開口部を覆う補修漏れ防止金物を示す斜視図である。
図5】本発明による既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第二実施形態を示す断面図である。
図6】本発明による既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第三実施形態を示す断面図である。
図7】本発明による既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第四実施形態を示す断面図である。
図8】従来の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は前記の挿入筋構法によって施工した既設ALC縦壁パネルに適用したもので、その既設ALC縦壁パネルは、前記従来例と同様に、建物躯体であるH形鋼等よりなる梁材21の上部にアングル材等よりなる下地鋼材22を取付け、その下地鋼材22の側面に溶接等で固着したタテカベプレート23にALCパネル24を載置すると共に、そのタテカベプレート23に形成した鉄筋挿通穴(図示せず)内及び横方向に隣り合うALCパネル24の縦目地(図示せず)内に目地鉄筋25を配設し、その目地鉄筋の周囲の上記縦目地内にモルタル等を充填して固化させた構成である。
【0015】
図1に第一実施形態として示す既設ALC縦壁パネルの補強防水構造を施工するに当たっては、例えば以下の要領で施工すればよい。
先ず、コアドリル等を使用して既設ALCパネル24の所定位置に当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通するφ100mm程度の貫通孔1を形成する(図2参照)。次に、前記ALCパネル24の外面側から前記貫通孔1内に締結ボルト2を挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁21の側面に固着する。続いて、前記締結ボルト2に前記貫通孔1の建物躯体側開口部とほぼ同一径の円板状の補修漏れ防止金物3を、貫通孔1の開口部を覆うように当該締結ボルト2に予め螺着したナット6にて固定した後、該補修漏れ防止金物3の内側面に不定形状の発泡ウレタン5を吹き付けて防水処理を施す。なお、前記円板状の補修漏れ防止金物3は図4に示すように薄板部材からなる円板3−1の中央に貫通孔3−2が穿設されたものである。次いで、前記貫通孔1の建物躯体側と反対側開口部に脱落防止用補強金物4を埋設する。この脱落防止用補強金物4は、図3に示すように一枚の板部材を屈曲してハット形に形成したもので、左右に形成した鍔部4−1と該鍔部4−1の間に形成した凸部4−2を有し、前記凸部4−2に前記締結ボルト2の貫通孔4−3が穿設されている。この脱落防止用補強金物4を埋設するに際しては、前記貫通孔1の建物躯体側と反対側開口部をチッピングハンマーとALC用の鋸刃等を使用して該補強金物4の鍔部4−1の形状に沿って切削(図2)して矩形の切欠き部1−1を形成し、脱落防止用補強金物4を貫通孔1内に挿入配置するとともに前記締結ボルトの端部を当該金物の貫通孔4−3に挿通しナット7にて固定する。しかる後、前記貫通孔1内および切欠き部1−1にモルタル8を当該パネル表面まで充填して施工を完了する。
このようにして施工された第一実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の場合は、経年劣化でモルタル8部分に亀裂が入り、雨水等が侵入してきたとしても不定形状の発泡ウレタン5により屋内への雨水等の侵入が防止され、既設ALCパネルの耐久性をさらに向上させることが可能となると共に、屋内への雨水等の侵入も防止される。
【0016】
次に、本発明による既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第二実施形態の施工方法を図5に基づいて説明する。
先ず、前記第一実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の施工と同様に、コアドリル等を使用して既設ALCパネル24の所定位置に当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通するφ100mm程度の貫通孔1を形成する(図2参照)。次に、前記ALCパネル24の外面側から前記貫通孔1内に締結ボルト2を挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁21の側面に固着すると、該締結ボルト2にナット6、前記貫通孔開口部を覆う円板状の補修漏れ防止金物3及び長ナット9を取付け、前記長ナット9にはパッキン材10を装着した長さ調節用寸切ボルト11を螺合する。次いで、前記貫通孔1の建物躯体側と反対側開口部をチッピングハンマーとALC用の鋸刃等を使用して前記と同様に脱落防止用補強金物4の鍔部4−1の形状に沿って切削して矩形の切欠き部1−1を形成し、脱落防止用補強金物4を貫通孔1内に挿入配置するとともに前記寸切ボルト11の端部を当該金物の貫通孔4−3に挿通しナット7にて固定する。しかる後、前記貫通孔1内および切欠き部1−1にモルタル8を当該パネル表面まで充填して施工を完了する。
このようにして施工された第二実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の場合は、経年劣化でモルタル8部分に亀裂が入り、雨水等がボルト2を伝って屋内に侵入しようとしても当該ボルトに取付けたパッキン材10によりシールされるため、屋内への雨水等の侵入を防止することが可能となる。
【0017】
又、図6に示す既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第三実施形態の施工方法は、先ず、前記第一実施形態及び第二実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の施工と同様に、コアドリル等を使用して既設ALCパネル24の所定位置に当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通するφ100mm程度の貫通孔1を形成する(図2参照)。次に、前記ALCパネル24の外面側から前記貫通孔1内に締結ボルト2を挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁21の側面に固着すると、該締結ボルト2にナット6、前記貫通孔開口部を覆う円板状の補修漏れ防止金物3及び長ナット9を取付け、前記長ナット9に長さ調節用寸切ボルト11を螺合する。次いで、前記貫通孔1の建物躯体側と反対側開口部をチッピングハンマーとALC用の鋸刃等を使用して前記と同様に脱落防止用補強金物4の鍔部4−1の形状に沿って切削して矩形の切欠き部1−1を形成し、脱落防止用補強金物4を貫通孔1内に挿入配置するとともに前記寸切ボルト11の端部を当該金物の貫通孔4−3に挿通しナット7にて固定する。続いて、脱落防止用補強金物取着部、即ち貫通孔1と切欠き部1−1の境目の全周に防水用テープ12を貼着し、しかる後前記貫通孔1内および切欠き部1−1にモルタル8を当該パネル表面まで充填して施工を完了する。
このようにして施工された第三実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の場合は、経年劣化でモルタル8部分に亀裂が入り、雨水等が貫通孔1に沿って侵入しようとしても脱落防止用補強金物取着部に施した防水用テープ12の作用によりシールすることができる。
【0018】
さらに、図7に示す既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の第四実施形態の施工方法は、先ず、前記第一実施形態〜第三実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の施工と同様に、コアドリル等を使用して既設ALCパネル24の所定位置に当該パネルの外面側から厚さ方向に貫通するφ100mm程度の貫通孔1を形成する(図2参照)。次に、前記ALCパネル24の外面側から前記貫通孔1内に締結ボルト2を挿入して当該ボルトの建物躯体側端部をスタッド溶接により建物躯体の梁21の側面に固着すると、該締結ボルト2にナット6、前記貫通孔開口部を覆う円板状の補修漏れ防止金物3及び長ナット9を取付け、前記補修漏れ防止金物3の内側面に不定形状の発泡ウレタン5を吹き付けて防水処理を施し、さらに前記長ナット9にパッキン材10を装着した長さ調節用寸切ボルト11を螺合する。次いで、前記貫通孔1の建物躯体側と反対側開口部をチッピングハンマーとALC用の鋸刃等を使用して前記と同様に脱落防止用補強金物4の鍔部4−1の形状に沿って切削して矩形の切欠き部1−1を形成し、脱落防止用補強金物4を貫通孔1内に挿入配置するとともに前記寸切ボルト11の端部を当該金物の貫通孔4−3に挿通しナット7にて固定する。続いて、前記第三実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の施工と同様に、脱落防止用補強金物取着部、即ち貫通孔1と切欠き部1−1の境目の全周に防水用テープ12を貼着し、しかる後前記貫通孔1内および切欠き部1−1にモルタル8を当該パネル表面まで充填して施工を完了する。
このようにして施工された第四実施形態の既設ALC縦壁パネルの補強防水構造の場合は、経年劣化でモルタル8部分に亀裂が入り、雨水等が貫通孔1に沿って侵入しようとしても脱落防止用補強金物取着部に施した防水用テープ12、寸切ボルト11に装着したパッキン材10及び発泡ウレタン5の作用により雨水等の侵入をほぼ確実に阻止すること可能となり、既設ALCパネルの耐久性のさらなる向上がはかられると共に、屋内への雨水等の侵入をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 貫通孔
1−1 切欠き部
2 締結ボルト
3 補修漏れ防止金物
3−1 円板
3−2 貫通孔
4 脱落防止用補強金物
4−1 鍔部
4−2 凸部
4−3 貫通孔
5 発泡ウレタン
6、7 ナット
8 モルタル
9 長ナット
10 パッキン材
11 寸切ボルト
12 防水用テープ
21 梁材
22 下地鋼材
23 タテカベプレート
24 ALCパネル
25 目地鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8