(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されている。
【0027】
<1.負極>
本発明の非水電解質二次電池に用いられる負極は、少なくとも負極活物質と集電体とで構成される。負極は、必要に応じて導電助材、バインダー(結着材)を含んでいてもよい。
【0028】
負極活物質として、リチウム基準(vs.Li
+/Li)で0.3V以上2.5V以下で作動するチタン酸化物、リチウムチタン酸化物、又はそれのチタンの一部を他の元素で置換したものが使用される。
【0029】
例えば、Li
4Ti
5O
12、アナターゼ型TiO
2、ブロンズ型TiO
2(以下TiO
2(B)と表記)等が挙げられる。その他、アンチモン、ビスマス、錫、インジウムと云った、リチウム金属基準で0.3V以上の電位でリチウムと合金を形成する金属でもよい。Nb
2O
3、WO
2、MoO
2などの、リチウム金属基準で0.3V以上の電位でインサーション機能を有する酸化物を混合して使用することもできる。
【0030】
負極にはバインダーが混入されていてもよい。バインダーは特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、アクリル及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0031】
バインダーは負極の作製しやすさから、非水溶媒又は水に、溶解又は分散されていることが好ましい。非水溶媒は、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0032】
本発明において、負極に含まれるバインダーの量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。前記範囲であれば、負極活物質と導電助材との接着性が維持され、集電体との接着性を十分に得ることができる。
【0033】
負極には、必要に応じて導電助材を含有してもよい。導電助材としては、特に限定されないが、炭素材料及び/又は金属微粒子が好ましい。炭素材料として、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックなどが挙げられる。金属微粒子として、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル及びこれら少なくとも1種を含む合金が挙げられる。また、無機材料の微粒子にめっきを施したものでもよい。これら炭素材料及び金属微粒子は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0034】
負極に含まれる導電助材の量は、負極活物質100重量部に対して、好ましくは0重量部以上30重量部以下、より好ましくは0重量部以上15重量部以下である。前記範囲であれば、負極の導電性が良好に確保される。
【0035】
本発明の非水電解質二次電池の負極に用いられる集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル及びこれら少なくとも1種を含む合金又は導電性を有する高分子が挙げられる。形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、パンチング状、エキスパンド状、又は発泡構造体が挙げられる。集電体の空隙率を「集電体の孔を含む単位体積内に存在する孔の内容積の合計」と定義する。
【0036】
ここで、メッシュ状とは、金属又は導電性高分子の繊維を織布あるいは不職布にしたものである。繊維の太さは50μm以上2000μm以下であることが好ましい。50μm未満の場合は集電体の強度が弱いために、活物質混合物を集電体に担持させた際、集電体が破壊されやすい傾向がある。一方、2000μmより太い繊維を用いた場合、好ましい空隙率とするには目開きが大きくなりすぎ、メッシュによる活物質混合物の保持が困難になる傾向がある。
【0037】
パンチング状とは、板に円形、四角形、又は六角形などの孔を開けたものであり、金属からなるものがパンチングメタルである。板状であるので、平面視した空隙率すなわち「開孔率」(平面視して、板の単位面積あたりの孔の合計面積の割合)で定義することとする。開孔率は孔径と骨(地金の部分)の比率、孔の形状、及び孔の配列によって決定される。孔の形状は特に限定されないが、開孔率上昇の観点から、丸孔千鳥型(千鳥型の開き角はたとえば60°)、角孔並列型が好ましい。
【0038】
エキスパンド状とは、板に千鳥状の切れ目を入れ、引き伸ばして網目状にしたもので、金属からなるものがエキスパンドメタルである。開孔率は孔径と骨の比率、孔の形状、及び孔の配列によって決定される。
【0039】
発泡構造体とは、骨格がスポンジのように3次元の網目状になっているもので、その孔は連続又は分散している。その構造は単位体積当たりの孔の数、平均孔径及び空隙率で決定される。連続孔の場合、孔の形状や孔径は特に限定されないが、高い比表面積を有する構造が好ましい。
【0040】
本発明の集電体に用いられる金属は、負極作動電圧で安定であればよく、作動電位がリチウム基準で0.7V以下では、銅及びその合金が好ましく、0.7V以上ではアルミニウム及びその合金が好ましい。
【0041】
本発明の負極は、例えば、負極活物質、導電助材、及びバインダーからなる負極混合物を集電体に担持することによって作製される。負極の作製方法の容易さから、負極活物質、導電助材、バインダー及び溶媒でスラリーを作製し、得られたスラリーを集電体の空孔部及びその外面に充填及び塗布した後に、溶媒を除去することによって負極を作製する方法が好ましい。また、負極活物質、導電助材及びバインダーの混合物を溶媒に分散させず、そのまま集電体に担持させても良い。
【0042】
スラリーを作製する方法は、特に限定されないが、負極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を均一に混合できることから、ボールミル、プラネタリミキサ、ジェットミル、薄膜旋回型ミキサー、撹拌混合造粒機を用いることが好ましい。スラリーの混練方法は、特に限定されないが、負極活物質、導電助材、及びバインダーを混合した後に溶媒を加えて作製してもよいし、負極活物質、導電助材、バインダー、及び溶媒を一緒に混合して作製してもよい。
【0043】
スラリーの固形分濃度は、30wt%以上90wt%以下であることが好ましい。30wt%未満の場合、スラリーの粘度が低すぎる傾向があり、一方、90wt%より高い場合は、スラリーの粘度が高すぎる傾向があるため、後述の電極の形成が困難となる場合がある。
【0044】
スラリーに用いられる溶媒は、非水溶媒、あるいは水であることが好ましい。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランなどを挙げることができる。また、これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0045】
集電体上への負極混合物の担持方法は、特に限定されないが、例えばスラリーをドクターブレード、ダイコータ、コンマコータ等により塗布した後に溶媒を除去する方法、スプレーにより集電体に付着させた後に溶媒を除去する方法、スラリーに集電体を含浸させた後に溶媒を除去する方法、負極混合物のみでシートを作製し、集電体に張り付けた後、溶媒を除去する方法が好ましい。溶媒を除去する方法は、オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が簡単であり好ましい。雰囲気としては室温、あるいは高温とした空気、不活性ガス、真空状態などが挙げられる。負極の形成は、後述の正極を形成する前でも、後でもよい。
【0046】
負極活物質、導電助材及びバインダーの混合物を溶媒に分散させない場合は、負極活物質、導電助材、及びバインダーを均一に混合できることから、ボールミル、プラネタリミキサ、ジェットミル、薄膜旋回型ミキサーを用いて混合物を作製したのちに、集電体に担持することが好ましい。前記混合物を集電体に担持する方法としては、特に限定されないが、混合物を集電体に詰めた後にプレスする方法が好ましい。プレスするとき、加熱させても良い。また、負極作製後、ロールプレス機などを用いて負極を圧縮させてもよい。前記電極の圧縮は、後述の正極を形成する前でも、後でもよい。
【0047】
<2.正極>
本発明の非水電解質二次電池に用いられる正極は、少なくとも正極混合物と集電体とで構成される。正極混合物は、少なくとも、正極活物質及びバインダーを含み、必要に応じて導電助材を含む。
【0048】
正極活物質は、特に限定されないが、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する複合酸化物、複合窒化物、複合フッ化物、複合硫化物、複合セレン化物等からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。特に、サイクル安定性が優れることから、リチウムマンガン化合物を含むことが好ましい。
【0049】
リチウムマンガン化合物としては、例えば、Li
2MnO
3、Li
aM
bMn
1-bN
cO
4(0<a≦2、0≦b≦0.5、1≦c≦2、Mは2〜13族でかつ第3、4周期に属する元素からなる群から選ばれる少なくとも1種、Nは14〜16族でかつ第3周期に属する元素からなる群から選ばれる少なくとも1種)、Li
1+xM
yMn
2-x-yO
4(0≦x≦0.34、0<y≦0.6、Mは2〜13族でかつ第3〜4周期に属する元素からなる群から選ばれる少なくとも1種)で表されるリチウムマンガン化合物が挙げられる。ここでのMは、2〜13族でかつ第3〜4周期に属する元素から選ばれる少なくとも1種であるが、安定性向上の効果が大きい点から、Al、Mg、Zn、Ni、Co、Fe及びCrが好ましく、Al、Mg、Zn、Ni及びCrがより好ましく、Al、Mg、Zn及びNiがさらに好ましい。また、ここでのNは安定性向上の効果が大きい点から、Si、P及びSが好ましい。
【0050】
正極活物質層にはバインダーを含有させてもよい。前述した負極混合物に使用されるバインダーで例示されたものを同様に適用できる。バインダーは正極の作製しやすさから、非水溶媒又は水に、溶解又は分散されていることが好ましい。非水溶媒は、前述した非水溶媒で例示されたものを同様に適用できる。これらに分散剤、増粘剤を加えてもよい。
【0051】
正極は必要に応じて導電助材を含有してもよい。導電助材としては、特に限定されないが、炭素材料もしくは金属微粒子が好ましい。炭素材料としては、前述の負極に含有されうる炭素材料と同一の種類が例示される。金属微粒子として、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金が挙げられる。また、無機材料の微粒子にめっきを施したものでもよい。これら炭素材料及び金属微粒子は1種類でもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0052】
正極に含まれる導電助材の量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1重量部以上30重量部以下、より好ましくは1重量部以上15重量部以下である。この範囲であれば、正極の導電性が良好に確保される。また、バインダーとの接着性が維持され、集電体との接着性が十分に得ることができる。一方、30重量部よりも多量の導電助材を使用した場合、導電助材の占める体積が増大し、エネルギー密度が低下する傾向がある。
【0053】
本発明の非水電解質二次電池の正極に用いられる集電体は、前述した負極活物質層に使用される集電体で例示されたものを同様に適用できる。
【0054】
正極は例えば、正極活物質、導電助材、及びバインダーの正極活物質層を集電体に担持することによって作製されるが、作製方法の容易さから、正極活物質、導電助材、バインダー及び溶媒でスラリーを作製し、得られたスラリーを集電体の空孔部及びその外面に充填及び塗布した後に、溶媒を除去することによって正極を作製する方法、又は正極混合物のみでシートを作製し、集電体に張り付けた後、溶媒を除去する方法が好ましい。また、正極活物質、導電助材及びバインダーの混合物を溶媒に分散させず、そのまま集電体に担持させても良い。
【0055】
前述した負極の作製における、スラリーの作製法、スラリーの固形分濃度、スラリーに用いる溶媒、集電体上への活物質層の担持方法、電極の圧縮は、正極の作製においても同様に適用できる。
【0056】
<3.負極と正極の容量比及び面積比、厚み>
本発明の非水電解質二次電池における正極の電気容量と負極の電気容量との比は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0057】
0.7≦B/A≦1.3 (1)
ただし、前記式(1)中、Aは正極1cm
2あたりの電気容量を示し、Bは負極1cm
2あたりの電気容量を示す。
【0058】
B/Aが0.7未満である場合は、過充電時に負極の電位がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の析出電位になる場合があり、一方、B/Aが1.3より大きい場合は電池反応に関与しない負極活物質多いために副反応が起こる場合がある。
【0059】
本発明の非水電解質二次電池における正極及び負極の面積は、80cm
2以上300cm
2以下が好ましい。80cm
2よりも小さい場合には電極及び電池の生産性が低下し、300cm
2以上の場合には均一に加圧することが困難になる傾向がある。
【0060】
本発明の非水電解質二次電池における正極と負極との面積比は、特に限定されないが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0061】
1≦D/C≦1.2 (2)
(ただし、Cは正極の面積、Dは負極の面積を示す。)
D/Cが1未満である場合は、例えば先述のB/A=1の場合を想定すると、負極の単位面積当たりの容量が正極の単位面積当たりの容量よりも大きくなるため、過充電時に負極の電位がアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の析出電位になる恐れがある。一方、D/Cが1.2より大きい場合は、正極と接していない部分の負極が大きいため、電池反応に関与しない負極活物質が副反応を起こす場合がある。正極及び負極の面積の制御は、例えば、スラリー塗工の際、塗工幅を制御することによって行うことができる。
【0062】
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータと負極との面積比は特に限定されないが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
【0063】
1≦F/E≦1.5 (3)
(ただし、Eは負極の面積、Fはセパレータの面積を示す。)
F/Eが1未満である場合は、正極と負極とが接触するおそれがある。1.5より大きい場合は外装体の体積が大きくなり、電池の体積エネルギー密度が低下する場合がある。
【0064】
本発明の非水電解質二次電池における正極及び負極の厚みは、50μm以上5mm以下が好ましい。50μm以下の電極は製造が困難で、5mm以上の電極では、リチウムイオンの拡散が遅いため、設計した容量を発現できない傾向にある。後述するように、500μm以上の電極は、現行の薄膜塗工による製造方法では作製できないため、活物質をシート化したものを集電体に張り付ける方法や、多孔体集電体に活物質を充填する方法により電極が製造される。
【0065】
<4.セパレータ>
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、多孔質材料又は不織布などが挙げられるが、開孔率の調整によりリチウムイオン移動度の調整ができることと、生産性、価格の点から不織布が好ましい。セパレータの開孔率は、50%以上95%以下であることが好ましい。開孔率50%未満であると、加圧時に電極間の空隙が小さくなり保液性が低下することからサイクル性が低下する。一方、95%以上である場合、孔が大きくなりすぎ内部短絡する傾向がある。
【0066】
不織布セパレータの材質としては、電解液を構成する有機溶媒に対して溶解しないものが好ましく、具体的にはポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系ポリマー、セルロース、ポリビニルアルコール、ガラス等の無機物が挙げられる。
【0067】
セパレータの厚みは1〜500μmが好ましい。1μm未満であるとセパレータの機械的強度の不足により破断し、内部短絡する傾向がある。一方、500μmより厚い場合、電池の内部抵抗と、正極負極の電極間距離が増大することにより、電池の負荷特性が低下する傾向がある。より好ましい厚みは、10〜50μmである。
【0068】
<5.非水電解質>
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質などを用いることができる。
【0069】
非水溶媒としては、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン及び環状エーテルなどが例示される。鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル及び鎖状エーテルなどが例示される。また、前記に加えアセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いても良い。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合しても用いてもよいが、後述の溶質を溶解させやすさ、リチウムイオンの伝導性の高さから、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。また、高分子に電解液を染みこませたゲル状電解質も用いることができる。
【0070】
溶質は、特に限定されないが、例えば、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、LiN(SO
2CF
3)
2などのリチウム塩、NaClO
4、NaBF
4、NaPF
6などのナトリウム塩、Mg(ClO
4)
2、Mg[AlCl
2(C
4H
9)(C
2H
5)]
2、C
6H
5MgClなどのマグネシウム塩は溶媒に溶解しやすいことから好ましい。電解液に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。0.5mol/L未満では所望のイオン伝導性が発現しない場合があり、一方、2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合があり、また、粘度が増大し負荷特性が低下する。非水電解質には、難燃剤、安定化剤などの添加剤が微量含まれてもよい。
【0071】
<6.非水電解質二次電池>
本発明の非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、集電体の片面に正極、一方の面に負極を形成させた形態、すなわち、バイポーラ電極であってもよい。
【0072】
バイポーラ電極とする場合、集電体を介した正極と負極の液絡を防止するため、導電材料及び/又は絶縁材料が正極と負極間に配置されている。また、バイポーラ電極である場合は、隣り合うバイポーラ電極の正極側と負極側との間にセパレータを配置し、各正極側と負極側とが対向した層内は、液絡を防止するため正極及び負極の周辺部に絶縁材料が配置されている。
【0073】
本発明の非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを積層したものである。正極、負極、及びセパレータには、イオン伝導を担う非水電解質が含浸している。非水電解としてゲル状のものを使用する場合は、電解質が正極及び負極に含浸していても、正極・負極間のみにある状態でもよい。ゲル状電解質により正極・負極間が直接接触していなければ、必ずしもセパレータを使用する必要はない。
【0074】
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質の量は、特に限定されないが、電池容量1Ahあたり、0.1mL以上であることが好ましい。0.1mL未満の場合、電極反応に伴うリチウムイオンの伝導が追いつかず、所望の電池性能が発現しない場合がある。
【0075】
非水電解質は、あらかじめ正極、負極及びセパレータに含ませてもよいし、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを積層した後に添加してもよい。ゲル状の非水電解質を使用する場合は、モノマーを含浸させた後ゲル状にしても、予めゲル状にした後に正極と負極の間に配置してもよい。
【0076】
本発明の非水電解質二次電池は、前記積層体をラミネートフィルムで外装することが好ましい。角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、シート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガス等を放出するための機構が備わっていてもよい。また、劣化した当該非水電解質二次電池の機能を回復させるための添加剤を電池外部から注入する機構が備わっていてもよい。
【0077】
積層体の積層数は、所望の電池容量を発現するまで積層させることができる。本発明によれば、積層する場合は、発電要素の積層方向に圧力が加えられる。
【0078】
電極面が均一に加圧されるならば加圧方法は問わない。加圧方法には、セル内部に加圧用の部材を配置して加圧する内部加圧と、セルの外装を通して加圧する外部加圧とがある。
【0079】
内部加圧の例として、例えば、電極面に金属板や樹脂板を設置し、セル内部にゴムやバネなどの弾性部材を配置することで均一に加圧することができる。バネの種類はコイルバネ、皿バネ、板バネ等が挙げられる。
【0080】
積層体を円筒形に巻く場合、積層体の両端を強く引っ張ることにより、積層方向、すなわち積層体面に垂直な方向に圧力を加えることができる。積層体の両端を引っ張る手段として、引っ張りバネを利用しても良い。
【0081】
外部加圧の例として、外装を弾性変形する金属、樹脂、ゴムなどの部材で形成し、外装そのものの弾性を利用して、セルに圧力が加えられるようにしてもよい。また外装の外側にバネやゴムなどの弾性部材を配置し、外装の外側から圧力が加えられるようにしても良い。
【0082】
電極へ印加される圧力の適切な範囲は0.005MPa〜3.0MPaである。電極厚みが50μm以上500μm以下の場合には0.5MPa〜3MPaの圧力範囲が好ましく、電極厚みが500μm以上5mm以下の場合には0.005MPa〜0.5MPaの圧力範囲が好ましい。
【0083】
電極厚みが大きいほど適切な印加圧力が小さいほうが好ましい理由としては、同じ容量の電池では、電極が厚いほど電極枚数が減少し、電極とセパレータ間に存在するフリースペースが少なくなるため、圧力の偏りが減少していることが考えられる。
【0084】
各電極厚みにおいて前記した圧力範囲よりも圧力が小さい場合、性能が低下する。これは、圧力が低いことにより電極間距離が遠くなり、イオン分布が不均一になることから副反応が起こり、容量維持率が低下することが考えられる。また、前記圧力範囲よりも圧力が大きい場合にも性能が低下する。これは、過度の加圧により電極間の電解液量が減少し容量維持率が低下することが考えられる。
【0085】
本発明の非水電解質二次電池は、複数接続することによって二次電池モジュールとすることができる。二次電池モジュールは、所望の大きさ、容量、電圧に応じて、非水電解質二次電池を適宜直列、並列に接続することによって作製することができる。
【0086】
二次電池モジュールを加圧する形態としては、単電池ごとに加圧しても、二次電池モジュールにした電池群をまとめて加圧してもよい。また、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、前記二次電池モジュールに制御回路が付属されていることが好ましい。
【実施例】
【0087】
(1)負極及び正極の製造
(負極の製造)
負極活物質のLi
4Ti
5O
12を、文献"Zero-Strain Insertion Material of Li [Li1/3Ti5/3] O4 for Rechargeable Lithium Cells" J. Electrochem. Soc., Volume 142, Issue 5, pp. 1431-1435 (1995) に記載されている方法で作製した。
【0088】
すなわち、まず二酸化チタンと水酸化リチウムを、チタンとリチウムとのモル比が5:4となるように混合し、次にこの混合物を窒素雰囲気下800℃で12時間加熱することによって負極活物質を作製した。
【0089】
この負極活物質を100重量部に対して、導電助材(アセチレンブラック)を3.2重量部と、PVdFバインダー(KF7305、クレハ化学社製)(固形分濃度5wt%、NMP溶液)の固形分換算3.2重量部と、を混合してスラリーを作製した。このスラリーをアルミニウム箔の両面に塗工した後に、170℃で真空乾燥することによって薄膜塗工負極を作製した(負極全体の厚み:110μm)。
【0090】
前述の薄膜塗工負極の電極厚みが500μmを超えると、基材のアルミニウム箔と塗工部分の線膨張係数の差が大きくなり、電極にひび割れが発生し易くなる。そこで、500μmよりも厚い電極を作製するため、以下のとおり電極作製方法を変更した。
【0091】
負極活物質を100重量部、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、及びPTFEバインダー(D210C、ダイキン工業製)(固形分濃度56wt%、水分散溶液)を固形分6.8重量部混合してスラリーを作製した。このスラリーを、100mm×100mmに切り取った厚み0.1mmのアルミエキスパンドメタル(SW=1mm、LW=2mm、空隙度60%)の両面に塗工した後に、150℃で真空乾燥することによって厚膜負極を作製した(厚み:1200μm)。
【0092】
(正極の製造)
正極活物質のLi
1.1Al
0.1Mn
1.8O
4を、文献"Lithium Aluminum Manganese Oxide Having Spinel-Framework Structure for Long-Life Lithium-Ion Batteries" Electrochemical and Solid-State Letters Volume9, Issue12, Pages A557 (2006) に記載されている方法で作製した。
【0093】
すなわち、二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、及びホウ酸の水分散液を調製し、スプレードライ法で混合粉末を作製した。このとき、二酸化マンガン、炭酸リチウム及び水酸化アルミニウムの量は、リチウム、アルミニウム及びマンガンのモル比が1.1:0.1:1.8となるように調製した。次に、この混合粉末を空気雰囲気下900℃で12時間加熱した後、再度650℃で24時間加熱した。最後に、この粉末を95℃の水で洗浄後、乾燥させることによって正極活物質を作製した。
【0094】
この正極活物質を100重量部に対して、導電助材(アセチレンブラック)を3.2重量部と、PVdFバインダー(KF7305、クレハ化学社製)(固形分濃度5wt%、NMP溶液)の固形分換算3.2重量部と。を混合してスラリーを作製した。このスラリーをアルミニウム箔の両面に塗工した後に、170℃で真空乾燥し、薄膜塗工正極を作製した(厚み:150μm)。
【0095】
前述の負極同様、厚みが500μmを超える正極を作成する場合には、以下のとおり電極作製方法を変更した。
【0096】
正極活物質を100重量部、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、及びPTFEバインダー(D210C、ダイキン工業製)(固形分濃度56wt%、水分散溶液)を固形分6.8重量部混合してスラリーを作製した。このスラリーを、100mm×100mmに切り取った厚み0.1mmのアルミエキスパンドメタル(SW=1mm、LW=2mm、空隙度60%)の両面に塗工した後に、150℃で真空乾燥することによって正極を作製した(厚み:1400μm)。
【0097】
(2)負極及び正極の容量
作製された負極及び正極の各容量を以下のとおり測定した。
【0098】
作製された負極及び正極を、それぞれ16mmφに打ち抜き作用極とした。アルカリ金属又はアルカリ土類金属を16mmφに打ち抜き対極とした。これらの電極を用いて、作用極/セパレータ(ポリポア(Polypore)株式会社製)/対極の順に試験セル(TJ−AC、有限会社日本トムセル社製)内に積層し、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70vol%の非水溶媒中に、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を1mol/L溶解させたものを0.2mL入れ、半電池を作製した。この半電池を25℃で一日放置した後、充放電試験装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。この半電池に対して25℃、1mAで定電流放電を5回繰り返し、5回目の結果を正極及び負極の容量とした。
【0099】
その結果、正極活物質1gあたりの容量が100mAh、負極活物質1gあたりの容量は165mAhであった。厚膜電極でも、電流値1/8C(1時間で充電又は放電が完了する電流値を1Cとしたとき、その1/8の電流値のことをいう)で同様の実験を行い、薄膜電極と同等の容量を得ることが可能であった。
【0100】
(3)薄膜電極を用いた非水電解質二次電池の製造
Li
4Ti
5O
12/Li
1.1Al
0.1Mn
1.8O
4非水電解質二次電池を次のとおり作製した。
図1に、作製された非水電解質二次電池の断面図を示す。
【0101】
前記手順(1)のとおり作製された正極(11で示す)、負極(13で示す)を用意し、正極11/セパレータ12/負極13の順に積層した。セパレータ12は、セルロース不織布(開孔率50%、厚さ25μm)を2枚重ねて用いた。正極11の大きさは10.0cm×10.0cm、厚み150μm、負極13の大きさは10.5cm×10.5cm、厚み110μm、セパレータ12の大きさは11.0cm×11.0cmとした。次に、正極11及び負極12に、引き出し電極15,16となるアルミニウムタブを振動溶着させた後に、袋状のアルミラミネートシート17に入れた。
【0102】
袋の中に、非水電解液18(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70vol%の溶媒にLiPF
6 を1mol/L溶かした溶液)を4mL入れた後に、袋の出口を、引き出し電極15,16とともに熱封止することによって非水電解質二次電池を作製した。
【0103】
(4)測定
ブチルゴム、シリコンゴム、アルミニウム金属板を重ねた積層板21,22を用意した。
【0104】
作製した非水電解質二次電池の外装(アルミラミネートシート17)の両面を、積層板21,22で挟み込んだ。非水電解質二次電池と積層板22との間に感圧紙23(富士フィルム株式会社製の圧力測定フィルム「プレスケール」;低圧用、超低圧用、極超低圧用)を挟み、積層板21,22のアルミニウム金属板をボルトで締めることにより、積層方向(
図1の場合上下方向)から加圧した。感圧紙23で圧力Pを測定した結果を基に、測定条件を設定した。
【0105】
このようにして5個の電池測定セットを製作し、種々の圧力を負荷し、負荷したままの状態で、電圧1〜3V、1時間で充電又は放電が終わる電流値(1Cレート)で充放電サイクル試験を行い、各電池の300サイクル後の容量維持率を計算した。容量維持率は次式により求めた。
【0106】
容量維持率=(300サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
測定された容量維持率と圧力との関係を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
圧力が0.5MPa以上3MPa以下の条件では、各電池の容量維持率はいずれも90%に達している。0.5MPa以上3MPa以下における5個の電池の容量維持率の平均値は92.9であり、各電池の容量維持率の平均値からのずれは、±2%以内であり、安定した容量維持率を示した。
【0109】
圧力が0.5MPa未満の電池はほとんどが容量維持率80%を下回った。これは圧力が低いため電極間距離が遠く、イオン分布が不均一になることから副反応が起こり、容量維持率が低下したと考えられる。また、4MPaの場合3MPaに比べ容量低下が見られた。これは、過度の加圧により電極間の電解液が減少し容量維持率が低下したと考えられる。
【0110】
次に、各圧力におけるレート特性測定結果を表2に示す。レート特性は、0.2Cでの放電容量に対する割合で評価した。
【0111】
【表2】
【0112】
圧力が0.5MPa未満の場合、各レートで0.5MPaよりも特性が低下している。これは電極間距離が遠くなっていることが原因と考えられる。4MPaでのレート特性は3MPaのレート特性と比較して大きな低下はない。
【0113】
(5)厚膜電極を用いた非水電解質二次電池の製造
厚膜電極を用いたLi
4Ti
5O
12/Li
1.1Al
0.1Mn
1.8O
4非水電解質二次電池を次のとおり作製した。
【0114】
正極/セパレータ/負極の順に積層した。セパレータは、セルロース不織布(開孔率50%、厚み25μm)を2枚重ねて用いた。正極の大きさは10.0cm×10.0cm、厚み1400μm、負極の大きさは10.5cm×10.5cm、厚み1200μm、セパレータの大きさは11.0cm×11.0cmとした。次に、正極及び負極に、引き出し電極となるアルミニウムタブを振動溶着させた後に、袋状のアルミラミネートフィルムに入れた。
【0115】
袋の中に、非水電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=30/70vol%の溶媒にLiPF6 1mol/Lを溶かしたもの)を8mL入れた後に、袋の出口を、引き出し電極ごと熱封止することによって非水電解質二次電池を作製した。
【0116】
この厚膜電極を用いた電池においても、上述の(4)測定と同様にして、種々の圧力を負荷し、負荷したままの状態で、電圧1〜3V、8時間で充電又は放電が終わる電流値(1/8Cレート)で充放電サイクル試験を行い、各電池の50サイクル後の容量維持率を計算した。容量維持率は次式により求めた。
【0117】
容量維持率=(50サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100
測定された容量維持率と圧力との関係を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
圧力が0.005MPa以上0.5MPa以下の条件では、各電池の容量維持率はほぼ90%に達していおり、安定した容量維持率を示した。
【0120】
圧力が0.005MPa未満及び1MPa以上の圧力では、ほぼ容量維持率80%を下回った。低下の原因は薄膜と同等の理由であると考えられる。
【0121】
次に、各圧力におけるレート特性測定結果を表4に示す。レート特性は、1/8Cでの放電容量に対する割合で評価した。
【0122】
【表4】
【0123】
圧力が0.005MPa未満の場合、各レートで0.005MPaよりも特性が低下している。これは電極間距離が遠くなっていることが原因と考えられる。1MPaでのレート特性は0.5MPaのレート特性と比較してやや低下している。これは、電極間の電解液が押し出され、液枯れに近い状況になっていると考えられる。
【0124】
以上の全測定結果を考慮すると、セパレータとして不織布を用い、電池の発電要素が薄膜電極を採用している場合0.005MPa以上3MPa以下の圧力を印加することが、良好なサイクル特性及びレート特性を発現する要因であると言える。電池の発電要素が厚膜電極を採用している場合.005MPa以上0.5MPa以下の圧力が掛かっていることが良好なサイクル特性及びレート特性を発現する要因であると言える。
【0125】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、例えば、電池内に圧力をかける器具、機械を導入して製造された完成品としての非水電解質二次電池にも本発明の適用がある。その他本発明の本質を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。