【実施例】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に係るオーバーシュート低減回路を示す構成図である。
【0011】
図1を用いて、本実施例に係るオーバーシュート低減回路の構成について説明する。
スイッチング電源装置の全体構成図を図示しないが、
図1は、フライバック方式等の絶縁型スイッチング電源装置の出力電圧Voutを検出し、所定の出力電圧に制御するための2次側の誤差増幅回路を示す。誤差増幅回路は出力電圧を検出する抵抗R1,R2の直列回路と、シャントレギュレータIC及びオーバーシュート低減回路1から構成されている。シャントレギュレータICは、所定の基準電圧を内蔵し、抵抗R1,R2の分圧電圧とを比較し、その誤差信号分を増幅してフォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流す。
図示しないフォトカプラの受光側のフォトトランジスタは、1次側にある制御回路のフィードバック端子に接続され、前述の誤差信号を制御回路に伝達して、出力電圧Voutが予め設定された出力電圧になるように、スイッチング素子をオンオフ制御する。
ここで、オーバーシュート低減回路1は、コンデンサC2、抵抗R4からなる微分回路とNPN型トランジスタQ、抵抗R5,R6、ダイオードDからなり、出力電圧Voutの電圧変動△Voutを微分回路で検出し、検出した電圧変動△Voutのうち出力電圧上昇信号のみNPN型トランジスタQにより増幅して、フォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流すことで出力電圧Voutの電圧上昇を緩やかにさせる機能を備える。
【0012】
図2は、
図1に係るオーバーシュート低減回路1の負荷−出力電圧を示す出力特性図である。
次に、オーバーシュート低減回路1の動作の詳細について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
オーバーシュート低減回路1は、コンデンサC2、抵抗R4からなる微分回路はNPN型トランジスタQのベース端子に接続され、エミッタ端子はGNDに接続されている。NPN型トランジスタQのベース・エミッタ端子には抵抗R5とダイオードDが並列接続され、ダイオードDのアノードがGNDに接続されている。NPN型トランジスタQのコレクタ端子は、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードのカソードに接続され、フォトダイオードのアノードは出力電圧Voutのラインに接続されている。
【0013】
フォトダイオードのカソードは、抵抗R3を介してシャントレギュレータICのカソードに接続されて、シャントレギュレータICからの誤差信号電流は抵抗R3を通して流れる接続となっている。
従って、オーバーシュート低減回路1の出力電流IQは、シャントレギュレータICからの誤差信号電流とは別の経路でフォトカプラPCのフォトダイオードに流れる構成になっている。
なお、
図4に示した従来技術に係る誤差増幅器の構成と異なり、
図3で示されている出力電圧Voutライン〜シャントレギュレータICのリファレンス端子R間に接続された位相進み要素の微分回路は、後述するように回路そのものの効果が半減するため、
図1の実施例では削除している。
【0014】
まず、時刻t0で電源が投入されて出力電圧Voutが上昇すると、オーバーシュート低減回路1の微分回路を通してNPN型トランジスタQのベースに電流が流れ、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流し、出力電圧Voutは時間の経過とともに徐々上昇する。出力電圧Voutが所定の設定電圧傍まで上昇するとシャントレギュレータICからの電流が流れ始める。時刻t1においてオーバーシュート低減回路1からの電流は低下しゼロとなって、シャントレギュレータICの電流に切り替わり、出力電圧Voutは所定の設定電圧に制御される。ここで、オーバーシュート低減回路1の微分回路のコンデンサC2には、出力電圧Voutが充電されているので、オーバーシュート低減回路1は出力電圧が安定している状態では動作を停止する。
【0015】
次に、負荷電流が時刻t2〜t3の期間で流れると、シャントレギュレータICのカソード・リファレンス端子R間に接続されているコンデンサC1の位相補償定数値により負荷応答が遅れて出力電圧がディップしてから上昇する。この出力電圧がディップしたとき、オーバーシュート低減回路1の微分回路のコンデンサC2からダイオードD及び抵抗R4,R5を介して出力電圧のディップ電圧分が放電され、次に出力電圧Voutが上昇に転じるとコンデンサC2を電流Ic2が流れ、NPN型トランジスタQのベースが流れる。従って、NPN型トランジスタQは、電流Ic2を増幅したコレクタ電流IQを、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードに流す。これにより出力電圧Voutは、オーバーシュート低減回路1からの電流により緩やかに上昇する。時刻t4において、出力電圧が所定の出力電圧傍まで上昇するとシャントレギュレータICからの電流が流れ始め、かつ、コンデンサC2は抵抗R4及びR5を介してほぼ出力電圧まで充電されるので、オーバーシュート低減回路1は機能を停止する。
【0016】
以上のように、オーバーシュート低減回路1は、出力電圧Voutが上昇している過渡時のみ動作し、出力電圧Voutが安定状態または下降している場合には機能しない。即ち、出力電圧の上昇変化が無い場合には、フィードバック制御に関与しないので、シャントレギュレータICの位相補償はコンデンサC1の定数のみで補償されるので、静的負荷変動、温度変化などによる位相補償を設定しやすく、かつ、フィードバック制御系の位相余裕度を大きく得られることになる。
また、動的負荷変動の場合に出力電圧Voutの電圧ディップは、前述のコンデンサC1の位相補償定数で決定され、また、スイッチング電源装置の過電流制限値により左右されるので、オーバーシュート低減回路1は関与しない。
オーバーシュート低減回路1が関与するのは、出力電圧Voutの上昇変化のみであり、出力電圧Voutを所定の設定された電圧より超えさせないことで、出力電圧変動の精度を向上できるという利点がある。
これにより、負荷装置で要求される下限値よりマージンを持たせたい場合には、動的負荷変動における出力電圧Voutの電圧ディップのピーク値の約1/2の電圧分を出力電圧の設定時に重畳させて、高く設定することで可能になる。
なお、オーバーシュート低減回路1は、
図2から明らかなようにソフトスタート機能の効果も兼ね備えている。
【0017】
以上、本発明の実施例の一例について説明したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
例えば、スイッチング電源装置はフライバック方式を用いて説明したが、フォワード方式等でも、共振型方式でも変更が可能である。
また、オーバーシュート低減回路1のNPN型トランジスタQは、NMOSトランジスタに置き換えてもよい。