特許第6136064号(P6136064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6136064-オーバーシュート低減回路 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136064
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】オーバーシュート低減回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20170522BHJP
   H03K 17/60 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H03K17/16 M
   H03K17/60 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-32623(P2013-32623)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165550(P2014-165550A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大竹 修
【審査官】 ▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−324816(JP,A)
【文献】 特開昭61−157265(JP,A)
【文献】 特開昭59−175373(JP,A)
【文献】 特開平05−064440(JP,A)
【文献】 特開昭61−177163(JP,A)
【文献】 実開平03−054380(JP,U)
【文献】 特開2002−014733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/16
H03K 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトカプラを使用して出力電圧と基準電圧との誤差信号を制御回路へフィードバック
する誤差増幅回路に備えられるオーバーシュート低減回路であって、
出力電圧の上昇変化のみ検出して増幅する増幅器を有し、
前記増幅器は、前記出力電圧の上昇変化に応じて前記フォトカプラのフォトダイオード
に前記誤差増幅器の電流とは異なる電流を流す機能を備え、
前記増幅器は、抵抗とコンデンサからなる微分回路とトランジスタとダイオードから構
成され、
前記微分回路は、出力電圧の正極と前記トランジスタのベース間に接続され、
前記ダイオードは前記トランジスタのベース・エミッタ間に接続され、前記出力電圧の
ディップ時に前記ダイオードを介して放電経路となることを特徴とするオーバーシュート
低減回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に係り、特にダイナミック負荷状態において出力電圧を予め設定された定格電圧より上昇させない制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、交流電源を受電し起動するとき、出力電圧の急激な上昇により設定電圧を大きく超えてしまうことを緩和するためにソフトスタート回路が組み込まれている。
特許文献1においては、フィードバック制御における位相補償定数であるコンデンサ26,抵抗24と位相進み要素となる微分回路(22、20)のほかにトランジスタ50とコンデンサ56を用いた電源起動時のソフトスタートが開示されている。これは、電源起動時にトランジスタ50のベース電流をコンデンサ56の充電電流とすることで得て、コレクタ電流を抵抗52を介して誤差増幅器であるシャントレギュレータ14のリファレンス端子に入力し、出力電圧の立ち上がりが緩やかになるようにフォトカプラ18を介して1次側にあるPWM制御回路へフィードバックさせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特開US2003/0156438公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にあるように、スイッチング電源装置にはソフトスタート回路が搭載されており、電源投入・起動時の出力電圧立ち上がりが急峻になってオーバーシュートしない対策が行われている。
また、負荷急変などのダイナミック負荷変動による出力電圧変動を低減するために、2次側の誤差増幅器であるシャントレギュレータ14のリファレンス端子Rにコンデンサ26と抵抗24の直列回路からなる微分回路が接続されている。いわゆる出力電圧の変動分を微分回路で抽出して、抽出した信号を誤差増幅器に入力することで出力電圧変動を積極的に補正するものである。
しかしながら、従来技術においては、誤差増幅器の位相補償定数と前述の微分回路定数との競合が生じやすく、図4に示すように、ダイナミック負荷変動のオンオフ周期により誤差増幅器の位相補償定数の安定性が崩れて出力電圧にリンギングを生じるなどの問題が内在していた。また、ダイナミック負荷変動のオンオフ周期が短くなり、リンギング中に負荷急変が繰り返し起こるとディップ電圧が助長される可能性もあった。
【0005】
本発明は、上記スイッチング電源装置において、ソフトスタート機能とダイナミック負荷変動による出力電圧変動のオーバーシュート成分を低減し、かつ、誤差増幅器であるシャントレギュレータの制御系の安定性を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るオーバーシュート低減回路は、フォトカプラ
を使用して出力電圧と基準電圧との誤差信号を制御回路へフィードバックする誤差増幅回
路に備えられるオーバーシュート低減回路であって、出力電圧の上昇変化のみ検出して増
幅する増幅器を有し、前記増幅器は、前記出力電圧の上昇変化に応じて前記フォトカプラ
のフォトダイオードに前記誤差増幅器の電流とは異なる電流を流す機能を備え、前記増幅
器は、抵抗とコンデンサからなる微分回路とトランジスタとダイオードから構成され、
記微分回路は、出力電圧の正極と前記トランジスタのベース間に接続され、前記ダイオー
ドは前記トランジスタのベース・エミッタ間に接続され、前記出力電圧のディップ時に前
記ダイオードを介して放電経路となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るオーバーシュート低減回路によれば、電源起動時の出力電圧のソフトスタート機能を含め、ダイナミック負荷状態においても所定の電圧に設定された定格電圧より上昇させず、安定した電圧を得ることができる。
また、出力電圧のオーバーシュートが発生しないので、ダイナミック負荷時の出力電圧ディップの1/2相当の電圧を出力電圧設定値に嵩上げすることで、電圧精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係るオーバーシュート低減回路を示す構成図である。
図2図1に係るオーバーシュート低減回路の負荷−出力電圧を示す出力特性図である。
図3】従来技術に係る誤差増幅器を示す構成図である。
図4】従来技術に係る誤差増幅器の負荷−出力電圧を示す出力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態のオーバーシュート低減回路を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に係るオーバーシュート低減回路を示す構成図である。
【0011】
図1を用いて、本実施例に係るオーバーシュート低減回路の構成について説明する。
スイッチング電源装置の全体構成図を図示しないが、図1は、フライバック方式等の絶縁型スイッチング電源装置の出力電圧Voutを検出し、所定の出力電圧に制御するための2次側の誤差増幅回路を示す。誤差増幅回路は出力電圧を検出する抵抗R1,R2の直列回路と、シャントレギュレータIC及びオーバーシュート低減回路1から構成されている。シャントレギュレータICは、所定の基準電圧を内蔵し、抵抗R1,R2の分圧電圧とを比較し、その誤差信号分を増幅してフォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流す。
図示しないフォトカプラの受光側のフォトトランジスタは、1次側にある制御回路のフィードバック端子に接続され、前述の誤差信号を制御回路に伝達して、出力電圧Voutが予め設定された出力電圧になるように、スイッチング素子をオンオフ制御する。
ここで、オーバーシュート低減回路1は、コンデンサC2、抵抗R4からなる微分回路とNPN型トランジスタQ、抵抗R5,R6、ダイオードDからなり、出力電圧Voutの電圧変動△Voutを微分回路で検出し、検出した電圧変動△Voutのうち出力電圧上昇信号のみNPN型トランジスタQにより増幅して、フォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流すことで出力電圧Voutの電圧上昇を緩やかにさせる機能を備える。
【0012】
図2は、図1に係るオーバーシュート低減回路1の負荷−出力電圧を示す出力特性図である。
次に、オーバーシュート低減回路1の動作の詳細について、図1及び図2を参照しながら説明する。

オーバーシュート低減回路1は、コンデンサC2、抵抗R4からなる微分回路はNPN型トランジスタQのベース端子に接続され、エミッタ端子はGNDに接続されている。NPN型トランジスタQのベース・エミッタ端子には抵抗R5とダイオードDが並列接続され、ダイオードDのアノードがGNDに接続されている。NPN型トランジスタQのコレクタ端子は、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードのカソードに接続され、フォトダイオードのアノードは出力電圧Voutのラインに接続されている。
【0013】
フォトダイオードのカソードは、抵抗R3を介してシャントレギュレータICのカソードに接続されて、シャントレギュレータICからの誤差信号電流は抵抗R3を通して流れる接続となっている。
従って、オーバーシュート低減回路1の出力電流IQは、シャントレギュレータICからの誤差信号電流とは別の経路でフォトカプラPCのフォトダイオードに流れる構成になっている。
なお、図4に示した従来技術に係る誤差増幅器の構成と異なり、図3で示されている出力電圧Voutライン〜シャントレギュレータICのリファレンス端子R間に接続された位相進み要素の微分回路は、後述するように回路そのものの効果が半減するため、図1の実施例では削除している。
【0014】
まず、時刻t0で電源が投入されて出力電圧Voutが上昇すると、オーバーシュート低減回路1の微分回路を通してNPN型トランジスタQのベースに電流が流れ、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードに電流を流し、出力電圧Voutは時間の経過とともに徐々上昇する。出力電圧Voutが所定の設定電圧傍まで上昇するとシャントレギュレータICからの電流が流れ始める。時刻t1においてオーバーシュート低減回路1からの電流は低下しゼロとなって、シャントレギュレータICの電流に切り替わり、出力電圧Voutは所定の設定電圧に制御される。ここで、オーバーシュート低減回路1の微分回路のコンデンサC2には、出力電圧Voutが充電されているので、オーバーシュート低減回路1は出力電圧が安定している状態では動作を停止する。
【0015】
次に、負荷電流が時刻t2〜t3の期間で流れると、シャントレギュレータICのカソード・リファレンス端子R間に接続されているコンデンサC1の位相補償定数値により負荷応答が遅れて出力電圧がディップしてから上昇する。この出力電圧がディップしたとき、オーバーシュート低減回路1の微分回路のコンデンサC2からダイオードD及び抵抗R4,R5を介して出力電圧のディップ電圧分が放電され、次に出力電圧Voutが上昇に転じるとコンデンサC2を電流Ic2が流れ、NPN型トランジスタQのベースが流れる。従って、NPN型トランジスタQは、電流Ic2を増幅したコレクタ電流IQを、抵抗R6を介してフォトカプラPCのフォトダイオードに流す。これにより出力電圧Voutは、オーバーシュート低減回路1からの電流により緩やかに上昇する。時刻t4において、出力電圧が所定の出力電圧傍まで上昇するとシャントレギュレータICからの電流が流れ始め、かつ、コンデンサC2は抵抗R4及びR5を介してほぼ出力電圧まで充電されるので、オーバーシュート低減回路1は機能を停止する。
【0016】
以上のように、オーバーシュート低減回路1は、出力電圧Voutが上昇している過渡時のみ動作し、出力電圧Voutが安定状態または下降している場合には機能しない。即ち、出力電圧の上昇変化が無い場合には、フィードバック制御に関与しないので、シャントレギュレータICの位相補償はコンデンサC1の定数のみで補償されるので、静的負荷変動、温度変化などによる位相補償を設定しやすく、かつ、フィードバック制御系の位相余裕度を大きく得られることになる。
また、動的負荷変動の場合に出力電圧Voutの電圧ディップは、前述のコンデンサC1の位相補償定数で決定され、また、スイッチング電源装置の過電流制限値により左右されるので、オーバーシュート低減回路1は関与しない。
オーバーシュート低減回路1が関与するのは、出力電圧Voutの上昇変化のみであり、出力電圧Voutを所定の設定された電圧より超えさせないことで、出力電圧変動の精度を向上できるという利点がある。
これにより、負荷装置で要求される下限値よりマージンを持たせたい場合には、動的負荷変動における出力電圧Voutの電圧ディップのピーク値の約1/2の電圧分を出力電圧の設定時に重畳させて、高く設定することで可能になる。
なお、オーバーシュート低減回路1は、図2から明らかなようにソフトスタート機能の効果も兼ね備えている。
【0017】
以上、本発明の実施例の一例について説明したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
例えば、スイッチング電源装置はフライバック方式を用いて説明したが、フォワード方式等でも、共振型方式でも変更が可能である。
また、オーバーシュート低減回路1のNPN型トランジスタQは、NMOSトランジスタに置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 オーバーシュート低減回路
C1、C2 コンデンサ
D ダイオード
IC シャントレギュレータ
Q NPN型トランジスタ
PC フォトカプラ
R1〜R6 抵抗
図1
図2
図3
図4