(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に記載された従来のEL素子では、微細なマイクロレンズを密着して配列させたとしても互いに当接するマイクロレンズ間に平坦面の隙間が発生するため、この平坦面で発光層からの射出光が反射してしまう。そのため、上述したEL素子では、光取り出し効率の向上を図る上でも、射出光の射出角度による色度変化を抑制する上でも、十分とはいえなかった。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、光取り出し効率の最適化を行い光取り出し効率の向上を図るとともに、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する上で有利なEL素子を備えた照明装置、液晶ディスプレイ装置そしてディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明による照明装置は、発光手段と、該発光手段から射出される光を導いて射出させる光偏向要素を備えた光取り出し部材を備え、
前記光偏向要素は、光の射出面に多数の微細な凸曲部が隙間なく配列されて形成されており、
前記凸曲部は縦断面視で凸曲面として形成されており、多数の前記凸曲面における幅方向の変位をxとし、前記凸曲面の高さ形状をf(x)とし、
前記f(x)が不規則な関数によって表せられるとともに、
前記光偏向要素の縦断面視における凸曲面の高さ形状の関数f(x)において、
最大値をf(x)
max、最小値をf(x)
minとしたとき、
Δf(x)=f(x)
max−f(x)
minとして、
前記Δf(x)が下記(1)式を満たすとともに、
前記凸曲面の高さ形状の関数f(x)における変極点を抽出した関数をg(x)としたとき、
関数g(x)において、隣接する2点の変曲点間の傾きの平均傾斜率の絶対値|dg(x)/dx|
Aveが下記(2)式を満たし、
前記平均傾斜率|dg(x)/dx|Aveを変化させたときに、前記光取り出し部材を使用しない場合の測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’ = √{(umax−umin)2+(vmax−vmin)2} を1.00としたときの相対色差の最大値に対する減少率を50%以上とすることを特徴とする。
0.001mm≦Δf(x)≦0.300mm ……(1)
2≦|dg(x)/dx|
Ave≦8 ……(2)
本発明による照明装置の製造方法は、上記のいずれかに記載された照明装置の製造方法であって、
前記光取り出し部材が、材料を金型で凝固させることで成型されることができる。
本発明による照明装置の製造方法は、前記金型が、切削加工、レーザー加工や、サンドプラスト加工を用いて凸曲部をランダムに配列形成されてなることができる。
本発明による照明装置は、発光手段と、該発光手段から射出される光を導いて射出させる光偏向要素を備えた光取り出し部材を備え、光偏向要素は、光の射出面に多数の微細な凸曲部が隙間なく配列されて形成されており、凸曲部は縦断面視で凸曲面として形成されており、凸曲面における幅方向の変位をxとし、変位xにおける高さ形状をf(x)とし、f(x)が不規則な関数によって表せられ
ることができる。
本発明による照明装置によれば、光偏向要素を形成する多数の微細な凸曲面における幅方向の変位をxとし、変位xにおける凸曲面の高さ形状を不規則な関数f(x)で表されることによって、不規則な高さの凸曲面で光偏向要素の射出面を形成することができて、発光手段から射出する光の外部取出し効率、射出角度による色度座標の変化を改善することが可能となって光の利用効率が高い照明装置を得られる。
【0009】
さらに、本発明による照明装置を備えた液晶ディスプレイ装置やディスプレイ装置を構成することで、上述した光特性を得られることに加えて、光の利用効率が高く意匠性を有する液晶ディスプレイ装置やディスプレイ装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明による照明装置は、光偏向要素の縦断面視における凸曲面の高さ形状の関数f(x)において、最大値をf(x)
max、最小値をf(x)
minとしたとき、
Δf(x)=f(x)
max−f(x)
minとして、
Δf(x)が下記(1)式を満たすことが好ましい。
0.001mm≦Δf(x)≦0.300mm ……(1)
本発明による照明装置において光偏向要素の多数の凸曲面の高さの最大値と最小値の差Δf(x)を上記(1)式の範囲に設定することで、光偏向要素による光偏向作用に波長依存性が発生せず好適な射出特性を発揮でき、凸曲面の凹凸形状が目視確認されないという利点がある。
これに対し、Δf(x)の値が0.001mmより小さいと可視光領域の波長領域となるため、光取り出し部材による光偏向作用に波長依存性が発生するため好ましくない。また、Δf(x)の値が0.300mmより大きくなると光取り出し部材による光偏向要素の凸曲面の凹凸形状が目視により視認され易くなるため好ましくない。
【0011】
また、本発明による照明装置は、光偏向要素の断面高さ形状の関数f(x)における変極点を抽出した関数をg(x)としたとき、関数g(x)において、隣接する2点間の傾きの平均傾斜率の絶対値|dg(x)/dx|
Aveが下記(2)式を満たすことが好ましい。
1≦|dg(x)/dx|
Ave≦8 ……(2)
平均傾斜率の絶対値|dg(x)/dx|
Aveの値が上記(2)式の範囲内であれば、上記絶対値の増大につれて相対色差が次第に減少して改善する。一方、平均傾斜率の絶対値|dg(x)/dx|
Aveの値が1未満であると相対色差が大きく、8より大きくなると色差の改善効果はそれ以上進まずほぼ一定となり、しかも凸曲部の成形が困難になる。
【0012】
なお、相対色差の減少率は大きい方が好ましいため、好ましくは、相対色差の最大値に対する減少率が50%以上である2≦|dg(x)/dx|
Ave≦8の範囲内であることが望ましい。また、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値が大きくなると成型性が困難であることを考慮すると、色差の改善効果がほとんど変化しない2≦|dg(x)/dx|
Ave≦4の範囲内であることがより好ましい。
【0013】
また、光偏向要素は、多数の凸曲部がランダムに配列されて形成されていることが好ましい。
光取り出し部材に形成された光偏向要素は、乱数プログラムによって切削加工した金型成形や、乱数プログラムによるレーザー加工や、サンドプラスト加工等を用いることで、不規則な関数f(x)で表された多数の凸曲部をランダムに配列形成することができる。
また、本発明による照明装置の発光手段はEL素子であることが好ましい。
【0014】
本発明による液晶ディスプレイ装置は、上述したいずれかに記載された照明装置と、照明装置の光の射出面側に配設された液晶画像表示素子とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、発光手段から射出された光を光取り出し部材に入射させることで、外部への取出し効率を向上させることができると共に射出角度による色度座標の変化を改善することができて、液晶ディスプレイの利用効率が高い。
【0015】
本発明によるディスプレイ装置は、上述したいずれかに記載された照明装置と、照明装置の光の射出面側に配設された画像表示素子とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、発光手段から射出された光を光取り出し部材に入射させることで、外部への取出し効率を向上させることができると共に射出角度による色度座標の変化を改善することができて、ディスプレイの光量増大と色差の低減を達成できて利用効率が高い
【発明の効果】
【0016】
本発明による照明装置によれば、光偏向要素を形成する多数の凸曲部における幅方向の変位をxとし、変位xにおける凸曲部の縦断面視による凸曲面の高さ形状をf(x)で示すとして、高さ形状の関数f(x)が不規則な関数によって表されることによって、凸曲面の不規則な高さ形状の関数f(x)で光偏向要素の射出面を形成することができて、光の外部取出し効率と射出角度による色度座標の変化を改善することができて光の利用効率の高い照明装置を得られる。
さらに、本発明による照明装置を備えた液晶ディスプレイ装置やディスプレイ装置を構成することで、上述した光特性を得られることに加えて、光の利用効率が高く意匠性を有する液晶ディスプレイ装置やディスプレイ装置を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による照明装置について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態による照明装置10を示すものであり、発光手段としてのEL素子101(エレクトロ・ルミネッセンス素子)と、その光射出面側に接合されて積層された光取り出し部材としての光取り出しシート7とで概略構成されている。
図1において、EL素子101は、第1の基板1Aと、第2の基板1Bと、これら第1及び第2の基板1A、1Bの間に挟まれた発光構造体100とで構成されている。発光構造体100は、発光層2と、発光層2の第1の基板1A側に接合された陽極3と、発光層2の第2の基板1B側に接合された陰極4とを含んで構成されている。
【0019】
発光構造体100において、発光層2は陽極3と陰極4に電圧を印加することにより発光するものである。発光構造体100は、発光層2と陽極3と陰極4を含んで構成されており、発光構造体100として上記構成の他に、従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
また、光取出しシート7は、シート状の基材8と、この基材8をEL素子101の第1の基板1Aに接着するための接着層6と、基材8に対してEL素子101と反対側の面に接合されていて縦断面形状が凸曲面をなす光射出用の凸曲部5aが多数配列されて形成された光偏向要素5と、が積層されて構成されている。そして、
図1において、EL素子101から発光された光は光取り出しシート7の光偏向要素5を通して偏向されてF方向に射出されるものであり、この方向を照射方向Fとする。
【0020】
次に、本実施形態による照明装置10の各構成要素について説明する。
EL素子101における発光構造体100の発光層2は、例えば白色発光層とすることもあり、或いは青色、赤色、黄色、緑色などの発光層とすることもある。白色発光層とする場合には、この発光層2の構成を、例えばITO/CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ/ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3/フッ化リチウム/陰極としてAl、という構成とすればよい。
【0021】
ただし、発光層2は上述した構成に限定されるものではなく、発光層2から射出する光線の波長をR(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることのできる適宜材料を用いた任意の構成を採用することが可能である。また、フルカラーディスプレイ用途で使用する場合には、R、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けとすることや、白色光にカラーフィルターを重ねることによりフルカラー表示が可能となる。
【0022】
また、発光構造体100を挟む第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、例えば種々のガラス材料を用いることができる。また、それ以外に、PMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料、あるいはアルミニウムなどの金属材料を用いることもでき、更にその他の様々な材料を用いることができる。第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料として特に好ましいのは、シクロオレフィン系のポリマーであり、このポリマーは、加工性、及び、耐熱、耐水性、光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れたものである。
また、第1基板1Aは、発光構造体100(発光層2)から射出する光をできるだけ透過させることができるように、全光線透過率を50%以上とすることのできる透光性の高い材料で形成することが好ましい。
【0023】
光取出しシート7は、第1の基板1Aとの接合面に接着層6を介して設置されている。このような接着層6を構成する粘・接着剤として、例えばアクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘・接着剤が挙げられる。いずれの場合も、高温となる光源の発光構造体100に隣接して使用されるため、100℃で貯蔵弾性率G’が1.0E+04(Pa)以上であることが望ましい。これより値が低いと、使用中に光取出しシート7と第1の基板1Aがずれてしまう可能性がある。光取出しシート7と第1の基板1Aが大きくずれてしまうと、光取出しシート7に発光層2からの光が効率よく入射しないため光の利用効率が低下してしまう。
【0024】
また、安定的に発光層2と光取出しシート7との間隙を確保するために、接着層6を構成する接・粘着剤層の中に透明の微粒子、例えばビーズ等を混ぜても良い。これによって接着層6の厚みを均一にできて光学特性に悪影響を与えない。また、粘接着剤は両面テープ状のものでも良いし、単層のものでもよい。
【0025】
光取出しシート7は、発光層2からの光を偏向させて照射方向Fに射出し、光の外部取り出し効率を向上させる機能を有する。光取出しシート7は、基材8に対して第1の基板1Aと反対側に臨む光の射出面に、断面凸曲面をなす微細な凸曲部5aが隙間なく多数配列された光偏向要素5を形成している。
【0026】
そして、本実施形態による照明装置10では、発光層2から射出した光B0は、第一基板1Aを光B1として透過し、光取り出しシート7の光偏向要素5に入射する。光偏向要素5に入射した光B1は、
図1に示すように、一部の光B1は、光偏向要素5の多数配列された凸曲部5aで照射方向Fへ向けて屈曲して、光B2として射出面から外部へ射出される。
【0027】
ここで、仮に、
図2に示すように照明装置10´に光偏向要素5を含む光取り出しシート7が設けられておらず、第一基板1Aの平坦面1aが光の射出面であった場合、光B1の大部分は、平坦面1aで反射して再度発光層2に入射する光B12となる。光B12は、照射方向Fに偏向されないため損失光となってしまう。このため、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上するためには、反射する光B12を減少させて、光B2を増加させることが重要である。
またEL素子101における発光層2から射出した光B0は、射出角度により色度が変化する。
図1に示す照明装置10では、EL素子101の光射出面側に光偏向要素5を設けることにより、発光層2から射出した光B0は、光偏向要素5で偏向されて射出光B2として照射方向Fに射出される。このとき、光偏向要素5における多数の凸曲部5aの形状を発光層2から射出する光B2の射出位置に応じて異ならせて形成することで、射出光B2の射出方向を変化させることができて射出角度による色度の変化を抑制することが可能となる。
【0028】
ところで、光の外部取り出し効率やEL素子101の色差を改善する従来の方法として、射出面にプリズムシートなどの構造物を配設する方法や、透明基材上にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法や、略半球状のマイクロレンズを配列する方法等がある。
(a)しかしながら、プリズムシートなどの構造部を設置する方法では、以下の問題がある。
プリズムシートなどにおけるプリズムは平面形状が大部分を占める構造であるため、プリズムの平面形状により傾斜角度が一定となるため、ある特定の角度の光を効率良く外部へ取り出すことが可能となる。
しかし、上述のある特定の角度以外の光は外部取り出し効率が小さくなり、総合的には、外部取り出し効率が小さくなる問題が生じる。また、EL素子101の射出角度による色度座標の変化は、プリズム形状であると傾斜角が一定であるため、特定の角度の入射光を特定の角度の射出光へ偏向させるため、色度の角度による変化に基づく改善効果は低いという欠点がある。
【0029】
(b)透明な基材8にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法では、以下の問題がある。
基材8にフィラーを塗布して凹凸面を形成する場合、凹凸面の形状はフィラーの隆起の度合いにより決定されるため、高精度な凹凸面の形成ができない。そのため、凹凸面に光を制御する精度の良い形状を形成することが出来ない問題が生じる。例えば、フィラーを隆起させることで略半球形状の凸部を形成しようとした場合、フィラーの隆起が不十分となって略半球形状の一部分しか形成されない。すなわち、略半球形状の高さと幅との比をアスペクト比(高さ/幅)とした場合、アスペクト比が小さくなってしまうため、結果として光の外部取り出し効率が小さくなる問題が生じる。
【0030】
(c)マイクロレンズを形成する方法では以下の問題がある。
マイクロレンズは、上述の拡散フィラーと比較して、高精度に成形することが可能であり、アスペクト比を大きくして略半球形状を成形することが可能である。しかし、EL素子101の発光層2からの光は等方的であるため、光の射出方向を制御するには略半球型は好ましい形状であるが、略半球型のマイクロレンズを配列させた場合に面全体を隙間なく埋めることが出来ず、マイクロレンズ間に平坦面の隙間が発生する。平坦面の隙間が発生すると、
図2に示す平坦面1aでの反射光B12が発生し、この反射光B12は照射方向Fに射出しないため、光の利用効率が低下する。
【0031】
また、六方配置のような最密構造シートによって第一基板1Aの平坦面1a全体を埋めることが可能であるが、このような形状を作成する場合、さらに高精度な成形加工が要求され、マイクロレンズの重なりなどの不具合が発生しやすい。また、隙間を少ない状態にしてマイクロレンズを配列成形すると、各マイクロレンズ間のわずかな隙間の距離のズレがマクロなムラとして見えてしまうので、好ましくない。
そのため、この場合でも実質的な占有面積率は76%前後となる。その結果として、約24%は平坦面が残るため、光の外部取り出し効率が不十分になるという問題が発生する。
【0032】
そのため、本実施形態による照明装置10では、EL素子101の光の外部取り出し効率、射出角度による色度の変化を改善するため、凸曲部5aの断面形状が
図3で示される不規則な関数f(x)で表される多数の凸曲面を配列した光偏向要素5を、射出面に備えた光取出しシート7をEL素子101表面に設けた。
本実施形態による光取出しシート7について、
図1及び
図3を用いて詳細に説明する。光偏向要素5は、光透過性の基材8の一方の面、即ち照射方向Fの面である表面8aに、多数の凸曲部5aがX−Y方向に隙間なく配列されて形成されている。この光偏向要素5における多数の凸曲部5aの断面形状は、
図3に示すように不規則な関数f(x)で表される多数の凸曲面からなる凹凸構造として形成されている。
【0033】
図3は、光偏向要素5において、基材8の光射出面に沿った変位をxとし、多数の凸曲部5aの断面高さ形状を不規則な関数f(x)として表し、関数f(x)における変極点g1、g2、g3、…を抽出した関数をg(x)としたときの、光偏向要素5の断面形状を示すグラフである。
ここで、関数g(x)は関数f(x)の変曲点を示すものである。つまり、関数f(x)における凸曲線上で、二次導関数f”(x)=0となり、変極点の前後で二次導関数f”(x)の符号が変わる点である。そのため、
図3では、関数f(x)の隣接する2点間の傾きの絶対値の平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveを変化させたときの光量と色差の変化を示すためにf(x)の変極点g1、g2、g3、……を順次直線の破線で結んで関数g(x)を表している。
【0034】
ここで、多数の凸曲部5aによる断面高さ形状の関数f(x)における、最大値をf(x)maxとし、最小値をf(x)minとして、最大値と最小値の差Δf(x)=f(x)max−f(x)minが下記の式(1)を満足するものとする。
0.001mm≦Δf(x)≦0.300mm ……(1)
即ち、最大値と最小値の差Δf(x)の値は、0.001mm以上であって0.300mm以下であることが望ましい。
Δf(x)の値が0.001mm未満になると射出光が可視光領域の波長となるため、光取り出しシート7による光偏向作用に波長依存性が発生することになり好ましくない。また、Δf(x)の値が、0.300mmより大きいと光偏向要素5の表面凹凸形状が目視により視認されやすくなるため好ましくない。
さらに、上記(1)式の範囲内であっても、Δf(x)の値が小さすぎると光取り出しシート7の凹凸表面に傷がつきやすいため好ましくなく、また、Δf(x)の値が大きすぎると金型の作製や光取り出しシート7の成形性が困難となるため、好ましくは、0.010mm≦Δf(x)≦0.100mmの範囲内であることが望ましい。
【0035】
また、本実施形態による照明装置10に関し、関数f(x)における変極点を抽出した関数g(x)において、隣接する2点間の傾きの絶対値の平均傾斜率を|dg(x)/dx|
Aveとして、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値を変化させたときの相対光量と相対色差を
図4(a)、(b)に示す。平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveは、変位xに対して断面凸曲面の傾斜が急峻な方が値が大きくなり、光量や色差の光学特性が向上する特性を有している。
図4(a)において、横軸は平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveを示すものであり、縦軸は平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveを変化させたときの相対光量である。ここで、相対光量とは、EL素子101に光取出しシート7を使用しない場合の光の積算光量を1.00としたときの値である。
【0036】
図4(b)において、横軸は平均傾斜率|dg(x)/dx|
Ave、縦軸は平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveを変化させたときの相対色差である。相対色差とは、EL素子101に光取出しシート7を使用しない場合の測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’を1.00としたときの相対色差である。
ここで、色度座標u’、v’はCIE(国際照明委員会)1976U.C.Sに規定されている色を示す数値であり、色度座標u’、v’を用いて算出するΔEu’v’は測定視野0度から80度の範囲におけるu´の最大値と最小値の差(u´max−u´min)とv´の最大値と最小値の差(v´max−v´min)の二乗の和の平方根をとった数値である。なお、
ΔEu’v’=√{(umax−umin)
2+(vmax−vmin)
2}
つまり、測定視野0度から80度の範囲内における色度u’、v’の最大変化量である。
【0037】
図4(a)において、相対光量は平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveが大きくなるにつれて上昇する。
これは、EL素子101から射出する光のうち、射出角度が大きい射出光ほど射出面界面(表面1a)で全反射してEL素子101内部に戻される光量が増加し、EL素子101の外部への光の取出し効率は低下する。一方、EL素子101の光射出面に光偏向要素5を備えた光取り出しシート7を設けることにより、射出面界面で全反射していた(EL素子101から射出した)射出角度の大きい射出光が偏向されて観察面側(射出方向F)へ射出されるようになるため光の外部取出し効率が向上するためである。
【0038】
図4(b)において、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveが大きくなるにつれ、EL素子101から射出された射出角度が大きい射出光を正面方向へ偏向させ、拡散させる効果が大きくなるため相対色差は改善する。平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値が1より大きくなると相対色差は10%以上改善し、さらに大きくなると緩やかに相対色差は改善する。そして、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveが8以上になると色差の改善効果はほぼ一定になり相対色差は一定の値に収束する。
以上の理由から、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値は、1≦|dg(x)/dx|
Ave≦8の範囲内であることが好ましい。相対色差の減少率は大きい方が好ましいため、より好ましくは、相対色差が最大値(約1.4)に対して減少率が50%以上となる2≦|dg(x)/dx|
Ave≦8の範囲内であることが望ましい。より好ましくは、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値が大きくなると成型性が困難であることから、色差の改善効果がほとんど変化しない2≦|dg(x)/dx|
Ave≦4の範囲内であることが好ましい。
【0039】
ここで、光取出しシート7を成型する材料としては、発光層2から射出される光の波長に対して光透過性を有するものが使用され、例えば光学用部材に使用可能なプラスチック材料を使用することができる。
このプラスチック材料の例として、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、MS(アクリルとスチレンの共重合体)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂、あるいはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー又はアクリレート系等からなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
【0040】
また、光取り出しシート7は、用途により、透明樹脂中に微粒子を分散させて使用してもよい。透明樹脂中に微粒子を分散させることにより、光取出しシート7に入射した光が照射方向Fに射出する際、より拡散性が上昇するため、色度の視野角度による変化を改善することが可能であり、また、照明装置10として使用した際、欠陥が観測されにくくなる利点が挙げられる。
この微粒子としては無機酸化物からなる粒子又は樹脂からなる粒子が使用できる。例えば、無機酸化物からなる透明粒子としてはシリカやアルミナ、酸化チタン等からなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン一ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン一ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン一テトラフルオロエチレン共重合体)等の含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。これら微粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0041】
そして、光取出しシート7は、上述した材料を基材上に塗工することで成型する方法や、金型に流し込んで凝固させることで成型することで製作される。
このような断面高さ形状の関数f(x)に相当する凸曲部5aを配列させた凹凸形状を有する光偏向要素5の金型の作製方法として次の方法がある。即ち、光偏向要素5を成形するための金型に対して、各種レンズ形状を有する切削工具を用いて、切削工具の切込み量を乱数プログラムを使用して各凸曲部5aごとに所望の切込み深さになるように切削加工する方法、金型表面をエッチングすることにより凸曲部5aの凹凸形状を形成する方法、レーザーなどによって金型表面を乱数プログラムで凹凸形状に加工する方法、アルミナなどの微粒子の粒径または吐出圧力を変更してサンドブラスト加工によって凹凸形状に加工する方法等を用いることができる。
【0042】
このような加工方法によって、不規則な関数f(x)で表されたランダムに配列された多数の凸曲部5aを備えた光偏向要素5を形成することができる。なお、光偏向要素5における凸曲面5aの縦断面である凸曲面の形状は、
図1及び
図3に示すように、折れ線からなる屈曲形状でもよいし、曲面形状でもよく、いずれの形状も含むものとする。
また、このような金型を用いて光偏向要素5を形成した光取出しシート7を作製する方法の他、熱可塑性樹脂や紫外線硬化性樹脂と上記の形状を賦形した金型を用いて、押出し成型や射出成型、UV成型法などで成型することができる。その際、内部にフィラーなどの拡散剤を分散させて成型することもできる。
【0043】
また光取出しシート7を製作する際、帯電防止剤として、導電性微粒子のアンチモン含有酸化スズ(以下、ATO)や、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の超微粒子を分散させてもよい。帯電防止剤を分散することで、光取出しシート7の防汚性を向上することが可能となる。
【0044】
光取出しシート7の製作方法において、UV成型法のような、光偏向要素5と基材8を別体にて成型する場合、シート状の基材8は透明なフィルムであり、例えばセルローストリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂の延伸又は未延伸フィルム等を使用することができる。基材8の厚みは、基材8の剛性にもよるが、50〜300μmのものが加工性等の取扱い面から見て好ましい。
【0045】
また、光偏向要素5と基材8との接着力が強固でなかったり、寒熱、吸脱湿等の外的影響で接着力が低下したりするときは、光偏向要素5と基材8との間に、両材料に対して接着性の高いプライマ層を設けてもよいし、光偏向要素5にプライマ層の作用を付加してもよい。あるいは、コロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
なお、上述の説明では、光取出しシート7についての代表的な例を説明してきたが、本実施形態による照明装置10が光取り出しシート7によってその光学特性を達成することができれば、上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して作製することも可能である。
【0046】
上述のように、本実施形態による光取り出しシート7とEL素子101を備えた照明装置10によれば、多数の微細な凸曲部5aを隙間なく配列させた光偏向要素5を形成した光取り出しシート7を設けたことで、光偏向要素5の幅方向の変位をxとし、変位xにおける凸曲部5aの高さ形状を関数f(x)で示すとして、高さ形状の関数f(x)が不規則な関数によって表されることによって不規則な高さの凸曲部5aで光偏向要素5の射出面を形成することができて、光の外部取出し効率と、射出角度による色度座標の変化を改善することができて光の利用効率の高い照明装置10を得られる。
【0047】
しかも、本実施形態の照明装置10によれば、Δf(x)=f(x)
max−f(x)
minとして、上記(1)式を満たすことで、光偏向要素5による光偏向作用に波長依存性が発生せず好適な射出特性を発揮でき、多数の凸曲部5aの凹凸形状が目視確認されないという利点がある。
また、関数f(x)における変極点を抽出した関数をg(x)において、隣接する2点間の傾きの平均傾斜率の絶対値|dg(x)/dx|
Aveが上記(2)式を満たすようにしたため、絶対値|dg(x)/dx|
Aveの増大につれて、EL素子101に光取り出しシート7を積層しないものと比較して、相対光量が増大すると共に、相対色差が次第に減少して改善するという利点がある。
【0048】
さらに、本実施形態による照明装置10を光源として、液晶画像表示素子を備えた液晶ディスプレイ装置や、画像表示素子を備えたディスプレイ装置を構成することで、上述した光特性を得られることに加えて、光の利用効率が高く意匠性を有する液晶ディスプレイ装置やディスプレイ装置を得られる。
【0049】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更や置換等が可能である。
また、上述の実施形態では、光取出しシート7についての代表的な例を説明したが、本実施形態の光学特性を達成することができれば上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して光取り出しシート7を作製することも可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例による照明装置10について以下に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(比較例)
比較例1による照明装置10´は、
図2に示すように、上述した実施形態によるEL素子101の光射出側の表面に光取出しシート7を設けない構成を備えている。
【0051】
(実施例)
本発明の実施例として、上述したEL素子101における第一基板1Aの射出面である平坦面1aに光取り出しシート7を貼り合わせてなる照明装置10を用いた。
光取り出しシート7の作製方法は次の通りである。まず、基材8として、厚さ188μmの透明PETフィルムを用い、その上に屈折率1.50の紫外線硬化性アクリル系樹脂を塗布した。そして、この紫外線硬化性アクリル樹脂を、不規則な関数f(x)で規定された多数の凸曲部5aを配列させた光偏向要素5の形状にパターニングしたシリンダー金型によって押圧成形し、紫外線硬化性アクリル樹脂が塗布された透明PETフィルムを搬送しながらUV光を透明PETフィルム側から照射して露光した。
これによって、紫外線硬化性アクリル系樹脂を不規則な関数f(x)で規定された多数の凸曲部5aを隙間なく配列した形状に硬化させ、基材8上に光偏向要素5を成形した。上記アクリル系樹脂の硬化後、透明PETフィルムからシリンダー金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
得られた光取出しシート7の基材8を、粘着剤からなる接着層6を介して上述したEL素子101に貼合することにより、試験例による照明装置10のサンプルを得た。
【0052】
試験例による照明装置10は、光偏向要素5の多数の凸曲部5aに関し、関数f(x)における変極点を抽出した関数g(x)において、隣接する2点間の傾きの絶対値の平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値を下記の表1に示すように、0.5、1.0、2.0、8.0とし、これらをそれぞれ試験例1、試験例2、試験例3、試験例4とした。
比較例1及び各試験例1〜4による照明装置10について、発光構造体100に所定電圧を印加して積算光量および色度を測定した。その結果を表1に示す。ここで、相対光量、相対色差とは、比較例1における積算光量と色度の値を1.00としたときの値である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値が0.5では相対光量は比較例1より上昇するが、相対色差は増大して劣化したので好ましくない。これに対し、平均傾斜率|dg(x)/dx|
Aveの値を1.0以上の大きい値にすることにより相対光量が上昇すると共に、相対色差が比較例1より低減して収束するため、改善したことが明らかである。試験例2,3,4が実施例に相当する。
なお、|dg(x)/dx|
Aveの値について、8以上であっても良好な光学特性を得ることが可能ではあるが、凸曲部5aの形状が一層急峻になるため成形による製作が困難になる。そのため、ここでは上限値を8にした。そのため、上記(2)を満たすことが好ましいことを確認できた。