(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、印刷インキは溶剤系のものが多く使用されてきたが、近年の環境保全、法規制面への課題を解決するための手段として水性印刷インキへの転換が提案されている。水性印刷インキは一般包装紙や段ボール等の紙器等の印刷に広く用いられてきている。しかし、包装材用途を中心とした非浸透性のプラスチックフィルム基材に対する印刷分野においては、溶剤系の印刷インキと比較し、課題が未だ多い。
【0003】
印刷インキの品質は、主にその主成分であるバインダー樹脂に大きく依存している。溶剤系の印刷インキの場合、汎用化、高性能化を考慮し、ポリウレタン樹脂が主たるバインダー樹脂として広く使われている。これは、ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリマーポリオールを適宜選択することにより、硬くて強靱な塗膜から柔らかくかつ弾性のある塗膜まで自由な塗膜設計ができるためである。水性印刷インキも同様に、汎用化、高性能化のためにはポリウレタン樹脂が好適と考えられ、近年多くの水性ポリウレタン樹脂の研究開発が行われてはいるが、未だ発展途上段階である。
【0004】
ポリウレタン樹脂を用いた水性印刷インキの課題のうち、溶剤系の印刷インキとの差が最も顕著だと考えられる項目は、印刷インキの印刷適性である。この印刷適性には、印刷インキ中の溶剤への溶解性が大きく影響を及ぼす。そのため、印刷インキ中の溶剤への溶解性、つまり、水−アルコールへの溶解性を向上させる検討が行われているが、水性印刷インキの印刷適性は未だ不十分である。
【0005】
例えば、特開2005−325190公報では、ポリウレタン系エマルジョン組成物を用いた水性印刷インキが提案されており、各種プラスチックフィルム等への密着性向上の検討が行われている。しかしながら、ポリウレタン樹脂がエマルジョン組成物であるため、水への溶解性が劣り、印刷適性は不十分である。
【0006】
また、特開平6−206972公報では、ヒドラジン残基の利用によりラミネート積層体のボイル・レトルト適性を上げる検討が行われているが、それにより水への溶解性が劣る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、水性印刷インキバインダー用の水性ポリウレタン樹脂について説明する。本発明の水性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート(a)、ポリマーポリオール(b)、分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、鎖延長剤として水酸基を有す有機ジアミンを含む、有機ジアミン(d)と、さらに反応停止剤としてアルカノールアミン(e)を反応させて得られる。
【0017】
本発明の水性ポリウレタン樹脂で用いるポリイソシアネート(a)としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4‘−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が代表例として挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。反応性等の面から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0018】
本発明における
ポリオール(b)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール
から選ばれる1種以上である。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。さらに好ましくは、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールから選ばれる。
本発明におけるポリエーテルポリオールは、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。特に、酸化エチレンの重合体、すなわちポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールを用いた場合には、水−アルコールおよび水への再溶解性が良好となる。
【0019】
本発明におけるポリエステルポリオールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,9−ノナンンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子ポリオール類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物との脱水縮合体または重合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
本発明におけるポリカプロラクトンポリオールは、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる。
【0020】
本発明におけるポリカーボネートジオールは、例えば、アルキレンカーボネート、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート等のカーボネート成分あるいはホスゲンと、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,9−ノナンンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子ポリオール類との縮合体が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
さらに、トリエチレングリコール、水酸基を2個以上有するグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の水酸基を3個以上有する低分子ポリオールをウレタンモノマーとして使用、さらに各種ポリマーポリオールの原料に使用することも可能である。
【0021】
本発明における活性水素含有基とは、イソシアネート基と反応する水酸基、アミノ基などの活性水素を有する基をいう。
【0022】
本発明における分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)としては、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸;グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等のジアミン型アミノ酸類が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。
本発明の水性ポリウレタン樹脂で用いる水酸基を有す
る有機ジアミン(d)は鎖延長剤として使用する。例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
また、有機ジアミンで水酸基を有さないものも規定の水酸基価の範囲であれば、鎖延長剤として併用することができる。水酸基を有さない有機ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘− ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等など各種公知ものが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
本発明の水性ポリウレタン樹脂で用いる
モノアミンであるアルカノールアミン(e)は反応停止剤として使用する。本発明のアルカノールアミンでは、3級アミンを除く。例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン
、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。特にモノエタノールアミンがより好ましい。
【0026】
本発明における水性ポリウレタン樹脂の水酸基価は、10.0〜28.0mgKOH/gである。水酸基価が10.0mgKOH/gより小さいと、水−アルコールへの再溶解性および水への再溶解性が劣り、28.0mgKOH/gより大きいと耐ブロッキング性が劣る。さらに好ましくは、水酸基価が10.0〜20.0mgKOH/gである。
本発明における有機ジアミン(d)のモル数とアルカノールアミン(e)のモル数の比
(d)/(e)が3.0〜20.0である。モル数の比が3.0より小さいと耐ブロッキング性が劣り、20.0より大きいと水への再溶解性が劣る。さらに好ましくは3.5〜11.0である。
【0027】
本発明における水性ポリウレタン樹脂の酸価は25〜45mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JIS K0070に従って行った値である。 酸価が25mgKOH/gより低い場合には、水−アルコールへの再溶解性および水への再溶解性、および耐ブロッキング性が劣る傾向があり、酸価が45mgKOH/gより高い場合には、接着性が低くなる傾向がある。
【0028】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲内とすることが好ましい。重量平均分子量が5000より小さいと、各種プラスチックフィルム基材に対する耐ブロッキング性が劣る傾向にあり、100000を超えると得られる水性印刷インキ組成物の粘度が高くなるとともに、水−アルコールおよび水への再溶解性が低下する傾向がある。
【0029】
本発明における水性ポリウレタン樹脂は、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等により得ることができる。本発明においては有機溶剤を使用し粘度を低下させ、合成反応を均一にスムーズに行うことができるアセトン法を用いた。
【0030】
ポリイソシアネート(a)とポリマーポリオール(b)と分子内にカルボキシル基と少なくとも2個の活性水素含有基を有する化合物(c)とを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る(以下、プレポリマー反応)には、50〜100℃で10分〜10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ−ク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0031】
また、プレポリマー反応には、触媒を用いることもできる。使用できる触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)、 2−エチルヘキソエート鉛、チタン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキソエート鉄、2−エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ−n−ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としてはテトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。これらの触媒はポリマーポリオールに対して0.001〜1モル%の範囲で使用される。
【0032】
ウレタンプレポリマーと有機ジアミンを反応させる際(以下、鎖延長反応)は、30〜80℃で10分〜10時間行うのが好ましい。反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピ−ク、滴定によるアミン価測定等により判断される。
【0033】
本発明では、高分子鎖末端に配置されるアルカノールアミン由来の水酸基が、課題解決のための重要な要素である。従って、反応停止剤として用いるアルカノールアミンは、アミノ基を反応部位として用い、水酸基を残存させるため、活性水素を有さない3級アミンは用いない。また、アルカノールアミンの水酸基をポリウレタン鎖の末端に存在させるため、反応停止剤は、鎖延長反応が終わった後に添加する。この際、30〜80℃で10分〜2時間行うのが好ましい。
【0034】
本発明の水性ポリウレタン樹脂に組み込まれたカルボキシル基を中和する塩基性化合物としては、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられるが、印刷物の耐水性、残留臭気等の点から、水溶性であり、かつ熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、特にアンモニアが好ましい。
【0035】
イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられるが、ポリウレタンの水性化は通常減圧蒸留(脱溶剤)により除去されるため、また、脱溶剤しないで使用する場合でも乾燥速度を早めるため、水より低沸点の溶剤の使用が好ましい。脱溶剤する場合には、例えば反応溶液に水及び中和剤である塩基性化合物を添加した後、温度を上げて常圧下、又は減圧下で溶剤を必要量溜去する方法で行うことができる。
【0036】
本発明の水性印刷インキに必要とされる機能を有するために配合される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。
【0037】
着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
顔料を水性媒体中に安定に分散させるには、本発明の水性ポリウレタン樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート強度の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0039】
本発明の水性印刷インキに必要に応じて併用される樹脂の例としては、本発明以外の水性ポリウレタン樹脂、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、本発明の目的を妨げない範囲内で、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
本発明の水性印刷インキは、樹脂、着色剤などを水性溶液中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を本発明のポリウレタン樹脂や前記併用樹脂、および前記分散剤により水性溶液中に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じてワックス類、消泡剤、増粘剤、硬化剤等、他の化合物を配合することによりインキを製造することができる。
【0041】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0042】
水性印刷インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は公知のものを使用することができる。
【0043】
前記方法で製造された水性印刷インキのインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0044】
水性印刷インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、水性溶液などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
本発明の水性印刷インキに使用されるポリウレタン樹脂は水酸基を含むため、シラノール基やイソシアネート基を含む架橋剤を印刷インキ中に併用することで、顔料分散をより良好に、さらには塗膜強度をより上げることができる。
【0045】
水性印刷インキ組成物は、公知のグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェット印刷方式等でプラスチックフィルム上に印刷できる。
【0046】
印刷する際は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式に適した粘度及び濃度にまで、水性溶液、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール系有機溶剤と水を混合した希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0047】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステル系、ナイロン、ポリオレフィン等が挙げられる。ポリオレフィンフィルムの場合、水酸基、カルボニル基等の官能基を有する表面処理ポリオレフィンフィルムを用いると良好な印刷物が得られる。
本発明のラミネート積層体は、プラスチックフィルム上に本発明の水性印刷インキ組成物を印刷し、ラミネートしたラミネ−ト加工物をエ−ジングして得られる。ラミネ−ト加工法としては、1)得られた印刷物の印刷面に、必要に応じてアンカーコート剤を塗布後、溶融樹脂を積層する押し出しラミネート法、2)接着剤を塗布後、必要に応じて乾燥させプラスチックフィルムを積層するドライラミネート法等が挙げられる。溶融樹脂としては低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が使用でき、接着剤としてはイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタネート系などが挙げられる。
【実施例1】
【0048】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、重量部および重量%を表す。重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。
【0049】
[合成例1]
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール147.07部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール25.95部、2,2−ジメチロールプロピオン酸21.50部およびイソホロンジイソシアネート87.77部をメチルエチルケトン200部中で6時間沸点反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、しかるのち40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液を得た。次に、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン6.17部、イソホロンジアミン10.09部およびアセトン350部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液580.87部を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、次いでモノエタノールアミン1.45部およびアセトン50部を室温で徐々に添加して50℃で1時間反応させ、溶剤型ポリウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.73部および脱イオン水700部を上記溶剤型ポリウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分30%、粘度800mPa・s、重量平均分子量31000のポリウレタン樹脂PU01を得た。
【0050】
[合成例2〜21]
表1および表2の仕込み比にて、合成例1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂(PU02〜PU21)を得た。なお、合成には下記の原料を用いた。
PTG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
PMPA2000:ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール(数平均分子量2000)
PCL2000:ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2000)
PC2000:ポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)
PEG2000:ポリエチレングリコール(数平均分子量2000)
DMPA:2,2−ジメチロールプロピオン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート
AEA:2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン
IPDA:イソホロンジアミン
H12MDA:ジシクロヘキシルメタン−4,4‘− ジアミン
TMDA:トリメチルヘキサメチレンジアミン
MEA:モノエタノールアミン
DEA:ジエタノールアミン
MEK:メチルエチルケトン
【0051】
[実施例1]
銅フタロシアニン藍15.00部、ポリウレタン樹脂(PU01)30.00部、消泡剤0.10部、イソプロピルアルコール5.00部、水19.90部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液(PU01)20.00部、イソプロピルアルコール5.00部、水10.00部を攪拌混合し、藍色印刷インキ(C01)を得た。さらに、この藍色印刷インキに、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比1/1)の混合溶剤を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒になるように調整し、評価用の希釈印刷インキとした。
[実施例2〜14][比較例1〜7]
実施例1と同様の操作で、藍色印刷インキ(C02〜16及びC17〜32)を得た。なお、各々の印刷インキに用いるポリウレタン樹脂は表2の通りである。また、実施例1と同様の操作で、評価用の希釈印刷インキも得た。
下記に水−アルコールへの再溶解性、水への再溶解性、耐ブロッキング性の評価方法及び判定基準を記す。
【0052】
[水−アルコールへの再溶解性]
希釈印刷インキをバラード版に塗布し、風乾させた後、希釈溶剤(水/イソプロピルアルコール混合溶剤(重量比70/30))を25mlかけ流し、印刷インキ皮膜の溶け具合を目視判定した。
◎ :全て溶解した。
○ :わずかな溶け残りが認められた。
○△:10%未満の面積の溶け残りが認められた。
△ :10%以上30%未満の面積の溶け残りが認められた。これ以上実用レベルである。
△×:30%以上の面積の溶け残りが認められた。
× :ほとんど溶解しなかった。
【0053】
[水への再溶解性]
水−アルコールへの再溶解性の評価と同様の手順で、希釈印刷インキをバラード版に塗布し、30秒後、水を25mlかけ流し、印刷インキ皮膜の溶け具合を目視判定した。
◎ :全て溶解した。
○ :わずかな溶け残りが認められた。
○△:10%未満の面積の溶け残りが認められた。
△ :10%以上30%未満の面積の溶け残りが認められた。これ以上実用レベルである。
△×:30%以上の面積の溶け残りが認められた。
× :ほとんど溶解しなかった。
【0054】
[耐ブロッキング性]
上記の希釈印刷インキをグラビア印刷機(版深25μ)にて処理ポリプロピレンフィルム(以下OPP、東洋紡績社製「パイレンP2161」、厚さ20μ)上に印刷して印刷サンプルを得た。この印刷サンプルを用い、4cm×4cmにサンプリングし、このサンプルの印刷面と同じ大きさの未印刷フィルムの非処理面とを合わせて、40℃12時間、10kgfの加圧を行い、サンプルを剥離した時の、インキ取られ及び抵抗感を観察した。
◎ :印刷物からインキの転移が全く認められず、剥離時の抵抗感もなかった。
○ :印刷物からインキの転移が全く認められなかったが、剥離時の抵抗感があった。
○△:印刷物からインキの転移が僅かに認められ、面積にして5%未満であった。
△ :印刷物からインキの転移が認められ、面積にして5%以上10%未満であった。
これ以上実用レベルである。
△×:印刷物からインキの転移が、10%以上50%未満の面積で認められた。
× :印刷物からインキの転移が、50%以上の面積で認められた。
評価結果を表3および表4にまとめる。実施例1〜14の水性印刷インキ組成物は、比較例1〜7の水性印刷インキ組成物と比較して優れた水−アルコールおよび水への再溶解性、耐ブロッキング性を示す水性印刷インキを提供することができる。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】