(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外面側から、外側熱可塑性樹脂層、紙層、易剥離性接着層、バリア層、内側熱可塑性樹脂層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、前記内側熱可塑性樹脂層の少なくともシール面側が、密度が0.92g/cm3でMIが2である直鎖状低密度ポリエチレンとポリブテンの混合物であり、ラミネート面側が密度が0.92g/cm3でMIが2である直鎖状低密度ポリエチレンである二層構成からなることを特徴とする液体用紙容器。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、本発明を実施するための第1の実施形態につき説明する。
図1は、本発明の液体用紙容器の第1の実施形態に用いる積層体を模式的に断面で示した説明図である。
【0021】
第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100は、
図1のように、液体用紙容器の外面側から、外側熱可塑性樹脂層1、紙層2、易剥離性接着層3、バリア層4、接着層5、内側熱可塑性樹脂層6が、順次積層されていて、易剥離性接着層3が、紙層2側に接着性樹脂層3aとバリア層4側の剥離樹脂層3bのすくなくとも2層構成になっている。そして、内側熱可塑性樹脂層6の少なくともシール面側が、イージーピール樹脂からなっている。また、必要に応じて、外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設けてもよい。
【0022】
第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100を構成する外側熱可塑性樹脂層1は、低密度ポリエチレン、または、直鎖状低密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなどの各種添加剤を添加してもよい。但し、外側熱可塑性樹脂層1の熱可塑性樹脂は、後述する内側熱可塑性樹脂層6の熱可塑性樹脂と熱融着可能な樹脂であることが好ましい。
【0023】
紙層2としては、通常、ミルクカートン原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200〜500g/m
2の範囲で密度0.6〜1.1g/cm
3の紙が好適に用いられる。
【0024】
易剥離性接着層3は、少なくとも2つの層からなっていて、紙層2側に接着性樹脂層3aとバリア層4側の剥離樹脂層3bとからなっている。
【0025】
接着性樹脂層3aは、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる層である。厚みは5μmから20μmの範囲が通常用いられる。
【0026】
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂や、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、あるいは、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上の混合物などにより設けられる。
【0027】
剥離樹脂層3bは、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、環化ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、シェラックの単体あるいは2種以上の混合物などにより設けられる。剥離樹脂層3bは、塗布あるいは印刷によって設けることができる。上記樹脂を単体あるいは2種以上の混合物で用いてインキ化して用いる。
【0028】
バリア層4は、基材フィルムにアルミニウム箔が積層された積層フィルム、あるいは、基材フィルムにアルミニウム、スズなどの金属や、シリカ、アルミナなどの金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムが用いられる。
【0029】
バリア層4に用いる基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムが用いられる。特に2軸延伸した樹脂フィルムが、貼り合わせ加工や、蒸着加工時に、伸縮が少なくので好ましく用いられる。
【0030】
アルミニウム箔の厚さは、5〜15μmが好ましく、また、蒸着層の厚みは、5〜100nmが好ましい。また、基材フィルムは、6〜25μmのものが好ましく用いられる。アルミニウム箔や、蒸着層は、易剥離性接着層3側に設けても、反対側に設けてもよい。
【0031】
接着層5は、押し出し樹脂層であってもよいし、また、ラミネート用接着剤であってもよい。押し出し樹脂としては、接着性樹脂層3aと同様に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。厚みは5μmから20μmの範囲が通常用いられる。また、ラミネート用接着剤としては、ウレタン系2液硬化型のドライラミネート用接着剤を用いることができる。乾燥塗布量は、0.5〜5.0μmが好ましい。
【0032】
内側熱可塑性樹脂層6は、少なくともシール面側が、イージーピール樹脂からなっている。イージーピール樹脂は、第1成分のエチレン系樹脂と第2成分の他のオレフィン系樹脂との混合樹脂である。エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが使用できる。
【0033】
また、第2成分の他のオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などを使用することができる。このイージーピール樹脂を単層で、あるいは、シール面と反対側のラミネート面側にポリエチレン系樹脂を積層した多層の内側熱可塑性樹脂層6として用いる。
【0034】
内側熱可塑性樹脂層6の厚さとしては、30〜100μmが好ましい。この内側熱可塑性樹脂層6は、Tダイキャスト法、あるいは、インフレーション法により、製膜することができる。
【0035】
また必要に応じて、外側熱可塑性樹脂層1の外面に設けられる印刷層は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。インキの密着を良くするために通常は外側熱可塑性樹脂層1の外面にコロナ処理等の易接
着処理を行う。
【0036】
以上、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100について説明したが、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体100は包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、上記の構成に、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0037】
以下、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100の製造方法について説明する。
【0038】
まず、バリア層4と内側熱可塑性樹脂層6とを、接着層5を介して積層して内装フィルムを作成する。積層した内装フィルムのバリア層4の面に、剥離樹脂層3bを塗布、または、印刷して設ける。
【0039】
紙層2を用意し、紙層2の片面に接着性樹脂層3aをTダイから押し出して設け、内装フィルムの剥離樹脂層3bが設けられた面を接着性樹脂層3aの溶融樹脂面に圧着して、積層し、続いて、紙層2の反対面に外側熱可塑性樹脂層1をTダイから押し出して設けて第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100を製造する。
【0040】
外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設ける場合は、外側熱可塑性樹脂層1の面にコロナ処理を行う。コロナ処理は、外側熱可塑性樹脂層1をTダイから押し出して設けた直後に、行うことが好ましい。この後、印刷機で外側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面に印刷層を設けることができる。
【0041】
<第2の実施形態>
以下、本発明を実施するための第2の実施形態につき説明する。
【0042】
図2は、本発明の液体用紙容器の第2の実施形態に用いる積層体200を模式的に断面で示した説明図である。
【0043】
第2の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体200は、
図2のように、液体用紙容器の外面側から、外側熱可塑性樹脂層1、紙層2、易剥離性接着層3、バリア層4、接着層5、内側熱可塑性樹脂層6が、順次積層されていて、易剥離性接着層3が、紙層2側にアルコール可溶性樹脂層3cとバリア層4側の接着性樹脂層3dのすくなくとも2層構成になっている。そして、内側熱可塑性樹脂層6の少なくともシール面側が、イージーピール樹脂からなっている。また必要に応じて、外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設けてもよい。
【0044】
第2の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体200を構成する、外側熱可塑性樹脂層1、紙層2、バリア層4、接着層5、内側熱可塑性樹脂層6は、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100と同じものが使用できる。
【0045】
易剥離性接着層3は、少なくとも2つの層からなっているが、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100と異なり、紙層側のアルコール可溶性樹脂層3cと、バリア層側の接着性樹脂層3dとからなっている。
【0046】
紙層側のアルコール可溶性樹脂層3cは、ブチラール樹脂、シェラック、ポリビニルピロリドン樹脂などのアルコール可溶性樹脂の単体あるいは2種以上の混合物などにより設けられる。アルコール可溶性樹脂層3cは、は、塗布あるいは印刷によって設けることができる。上記樹脂などを単体あるいは2種以上の混合物をインキ化して用いる。
【0047】
接着性樹脂層3dには、前述の接着性樹脂層3aと同じポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0048】
以上、第2の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体200について説明したが、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体200は包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、上記の構成に、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0049】
以下、第2の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体200の製造方法について説明する。
【0050】
まず、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100と同様に、バリア層4と内側熱可塑性樹脂層6とを、接着層5を介して積層して内装フィルムを作成する。
【0051】
次に、紙層2を用意し、紙層2の片面にアルコール可溶性樹脂層3cを塗布あるいは印刷によって設ける。このアルコール可溶性樹脂層3cの面に、接着性樹脂層3dをTダイから押し出して設け、内装フィルムのバリア層4面を接着性樹脂層3dの溶融樹脂面に圧着して、積層し、続いて、紙層2の反対面に外側熱可塑性樹脂層1をTダイから押し出して設けて第2の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体200を製造する。
【0052】
外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設ける場合は、外側熱可塑性樹脂層1の面にコロナ処理を行う。コロナ処理は、外側熱可塑性樹脂層1をTダイから押し出して設けた直後に、行うことが好ましい。この後、印刷機で外側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面に印刷層を設けることができる。
【0053】
以下本発明の液体用紙容器の形状などについて説明する。
図3は、本発明の液体用紙容器の形状の一例を模式的に示した説明図である。
図4は、本発明の液体用紙容器の形状の一例のブランクを模式的に示した説明図である。
【0054】
本例の液体用紙容器300は、積層体100、積層体200などの本発明の液体用紙容器に用いる積層体を、折罫を押圧して設けると同時に打ち抜いて、
図4のような、本例の液体用紙容器300用のブランク301を作成する。このブランク301を折罫に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を加熱融着することによって本例の液体用紙容器300が製造される。
【0055】
本例の液体用紙容器300は、
図3のように、左側面板21、正面板22、とそれぞれに対向した反対側に、右側面板23、背面板24の四枚の面板が順次設けられた四角筒状の胴部20と、胴部20の上方の開口端部に形成された上面が傾斜した屋根状の頂部10と、胴部20の下方の開口端部に形成された底部30とからなっている。
【0056】
頂部10には、正面板22、背面板24の上方にそれぞれ連設された一組の屋根板11、11が設けられ、左側面板21、右側面板23の上方にはそれぞれに連設された三角形状の折り込み片12、12が設けられ、折り込み片12、12に連設されると共に、屋根板11,11に連設された一対の折り返し片13、13、13、13、が設けられている。
【0057】
折り込み片12、12が内方に折り込まれていて、一対の折り返し片13、13、13、13が、折り込み片12、12との境界で外側に折り返されて、折り返し片13、13、13、13が連設している屋根板11、11を傾斜させ、傾斜した屋根板11、11の裏面に折り返し片13、13、13、13の裏面が対向している。
【0058】
屋根板11、11と折り返し片13、13、13、13の上方にトップシール部14が形成され閉鎖されている。また、正面板22の上方の屋根板11には、内容物を注ぎ出せるように口栓15が設けられている。
【0059】
図4は、本発明の液体用紙容器の一例に用いるブランクを模式的に示した説明図である。尚、図で一点鎖線での表記は折罫をしめす。
【0060】
図4は、液体用紙容器300のブランクである。胴部20を形成する、左側面板21、正面板22、右側面板23、背面板24の四枚の四角形状の面板が順次設けられ、左側面板21の左側端縁には、貼着板25が設けられている。貼着板25は頂部10から底部30まで、それぞれ延設されている。
【0061】
胴部20の上方の頂部10には、正面板22、背面板24の上方に長方形状の屋根板11、11がそれぞれ連設されていて、正面板22の上方の屋根板11には、口栓15に連通して内容物を注ぎ出すための、口栓孔16が設けられている。
【0062】
左側面板21、右側面板23の上方には、三角形状の折り込み片12、12がそれぞれ連設されている。左側面板21、右側面板23から折り込み片12、12の三角形の頂点までの長さは、正面板22、背面板24の横幅の半分より長く、折りこんだときに、屋根板11、11が平面にならず、傾斜した切妻屋根型になるように形成されている。
【0063】
三角形状の折り込み片12、12の上の2辺には、折り返し片13、13、13、13が連設されていて、折り返し片13、13、13、13は、それぞれ、屋根板11、11に接続するようになっている。更に、屋根板11、11と折り返し片13、13、13、13の上方には、トップシール部14が設けられている。
【0064】
屋根板11、11の上方のトップシール部14の高さは、折り返し片13、13、13、13の上方のトップシール部14の高さより高く形成されていて、製函したときにその高い部分では、屋根板11、11の上方のトップシール部14どうしが直接シールされるようになっている。
【0065】
そして、折り返し片13、13、13、13の上方のトップシール部14の外表面には、剥離ニス層17が設けられている。これにより、トップシール部14をシールした際に、折り返し片13、13の上方のトップシール部14は、折られて外表面どうしがシールされる。このとき、シール強度が強くなり過ぎて、手で容易にトップシール部を開口できなくなるのを防いでいる。剥離ニス層17は、ポリアミド系樹脂やシリコーン系樹脂などによる剥離ニスを印刷若しくはパターン状にコーティングして設ける。
【0066】
胴部20の下方の底部30は、頂部10と類似の形状をしていて、正面板22、背面板24の下方に底板31、31がそれぞれ連設されていて、左側面板21、右側面板23の下方には、三角形状の底部折り込み片32、32が三角形の頂点を下にして、それぞれ連設されている。
【0067】
左側面板21、右側面板23から底部折り込み片32、32の逆三角形の頂点までの長さは、正面板22、背面板24の横幅の半分と略等しく、折りこんだときに、底板31、31が略平面になるように形成されている。
【0068】
三角形状の底部折り込み片32、32の下の2辺には、底部折り返し片33、33、3
3、33が連設されていて、底部折り返し片33、33、33、33は、それぞれ、底板31、31あるいは貼着板25に接続している。更に、底板31、31と底部折り返し片33、33、33、33の下方には、ボトムシール部34が設けられている。
【0069】
このブランクを用いて、液体用紙容器300を成形するには、左側面板21と正面板22の間の境界、及び、右側面板23と背面板24の間の境界を山折りする。このとき、境界の延長上の頂部10、底部30における境界も同時に山折りする。
【0070】
そして、貼着板25の表側を、背面板24及び背面板24の上下に位置する頂部10と底部30の裏側にシールさせる。尚、あらかじめ貼着板25の端縁部は、紙層が内容物に触れないように、端面保護をおこなうことが望ましい。
【0071】
端面保護の方法は、内層の溶融樹脂層を残して、板紙などの外層側を削り取って、削り残された内層の溶融樹脂層を外層側に折り返すスカイブヘミング法や、エッジプロテープを端面が覆われるように貼る方法など、いずれの方法でも構わない。
【0072】
貼着板25をシールさせたら、正面板22と右側面板23の間の境界およびその延長線状の境界を山折りし、背面板24に貼着している貼着板25と左側面板21の間の境界およびその延長線状の境界を山折りし、左側面板21、正面板22、右側面板23、背面板24の四枚の面板からなる四角筒状の胴部20を形成する。
【0073】
次に、底部30を成形する。まず、底部折り込み片32、32を左側面板21、右側面板23の境界で内方に折り込み、底部折り返し片33、33、33、33を底部折り込み片32、32との境界で外側に折り返し、底板31、31を正面板22、背面板24の境界で山折りして、底部折り返し片33、33、33、33の裏面をそれぞれ底板31、31の裏面に対向して接触するようにし、ボトムシール部34をシールして、底部30を形成する。
【0074】
胴部20と底部30が形成された液体用紙容器300の口栓孔16に口栓15を溶着し、内容物を充填する。続いて、折り込み片12、12を左側面板21、右側面板23の境界で内方に折り込み、折り返し片13、13、13、13を折り込み片12、12との境界で外側に折り返し、屋根板11、11を正面板22、背面板24の境界で山折りして、折り返し片13、13、13、13の裏面をそれぞれ屋根板11、11の裏面に対向して接触するようにし、トップシール部14をシールして、頂部10を形成して、内容物が充填された、
図3のような、頂部が切り妻屋根型の本例の液体用紙容器300が完成する。
【0075】
図5(A)は、本発明の液体用紙容器の形状の他の例で、頂部が平らな平屋根型の液体用紙容器である。この液体用紙容器は、頂部10を底部30と同じように、左側面板21、右側面板23から折り込み片12、12の三角形の頂点までの長さを、正面板22、背面板24の横幅の半分と略等しく、折りこんだときに、屋根板11、11が略平面になるように形成されている。
【0076】
図5(B)は、さらに、本発明の液体用紙容器の形状の他の例で、頂部が、片側だけが傾斜し反対側が平らな片屋根型の液体用紙容器である。左側面板21と右側面板23の上辺を前下がりに斜めに形成して、正面板22側の屋根板11が前下がりになるように、また、背面板24の屋根板11が平らになるようにし、トップシール部14を背面板24側に倒した液体用紙容器である。これらの、平屋根型の液体用紙容器と片屋根型の液体用紙容器は、妻屋根型の液体用紙容器300と同様にして作ることができる。
【0077】
内容物がなくなった液体用紙容器300の空容器は、廃棄物の減容化や、分別収集など
のために、トップシール部14を開口して解体する。トップシール部14の開口、紙層2とバリア層4の分離の方法について以下に述べる。
【0078】
図6は、本発明の液体用紙容器の一例のトップシール部を開口する様子を模式的に平面で示した説明図である。
【0079】
図6(A)の液体用紙容器300の頂部を、まず、液体用紙容器300の左側面板21あるいは右側面板23の上方の左右の折り返し片13、13を開くようにして、左右の折り返し片13、13の上方のトップシール部14、及び、屋根板11、11の上方のトップシール部14の上部を剥がす。
【0080】
続いて、残りの左側面板21あるいは右側面板23の上方の折り返し片13、13を開く。これにより、
図6(B)のように、屋根板11の上方のトップシール部14と折り込み片12に連設された折り返し片13、13の上方のトップシール部14とがシールされた状態で、トップシール部14がX字型に開く。
【0081】
このとき、折り返し片13、13、13、13の上方のトップシール部14の外表面には、剥離ニス層17が設けられ、更に、内側熱可塑性樹脂層6がイージーピール樹脂からなっているので、外側熱可塑性樹脂層どうしがシールされている剥離ニス層17部分や、内側熱可塑性樹脂層6どうしがシールされているトップシール部14の上の部分は、剥がす為に必要な力が小さくなり、手でも剥離することができる。
【0082】
次に、
図6(B)のX字型の左上に当たる背面板24の上方の屋根板11と左側面板21の上方の折り返し片13とを挟んで片方の手で持ち、X字型の右下に当たる正面板22の上方の屋根板11と右側面板23の上方の折り返し片13とを挟んで他方の手で持って引っ張ると、内側熱可塑性樹脂層6がイージーピール樹脂からなっているので、容易に開口することができ、
図6(C)のように、トップシール部14のX字型の右上から左下に向かうシール部が剥がれる。
【0083】
さらに、X字型の左下に当たる正面板22の上方の屋根板11と左側面板21の上方の折り返し片13とを挟んで片方の手で持ち、X字型の右上に当たる背面板24の上方の屋根板11と右側面板23の上方の折り返し片13とを挟んで他方の手で持って引っ張ると、内側熱可塑性樹脂層6がイージーピール樹脂からなっているので、同様に開口することができ、
図6(D)のように、トップシール部14のX字型の左上から右下に向かうシール部が剥がれる。以上のようにして、トップシール部14を開口することができる。
【0084】
このように、トップシール部14を開口した液体用紙容器は、剥離したトップシール部14の剥離部分で、易剥離性接着層3が剥がれているので、開口した液体用紙容器を切り開き、口栓15を切り外し、易剥離性接着層3で液体用紙容器の積層体を、紙層2側とバリア層4側に剥がして分離することができ、それぞれ分別して廃棄することができる。
【0085】
以上、切り妻屋根型の液体用紙容器300について説明したが、前述の平屋根型の液体用紙容器や片屋根型の液体用紙容器でも、同様にして、開口、分離することができる。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0087】
<実施例1>
バリア層4のシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmと、内側熱可塑性樹脂層6として、ラミネート面側が直鎖状低密度ポリエチレン30μmで、シール面側が
第1成分の直鎖状低密度ポリエチレンに第2成分のポリブテンを混合したイージーピール樹脂30μmの2層のイージーピールフィルムを、接着層5のウレタン系2液硬化型接着剤を介してドライラミネートによって積層して内装フィルムを作成した。直鎖状低密度ポリエチレンは、いずれも密度が0.92g/cm
3でMIが2のものを使用した。
【0088】
積層した内装フィルムのバリア層4の面に、剥離樹脂層3bのエチレン−酢酸ビニル共重合体をインキ化して、塗布した。
【0089】
紙層2として、板紙(坪量400g/m
2)を用意し、紙層2の片面に接着性樹脂層3aのエチレン−メタクリル酸共重合体をTダイから押し出して30μmの厚さで設け、内装フィルムの剥離樹脂層3bが設けられた面を接着性樹脂層3aの溶融樹脂面に圧着して、積層し、続いて、紙層2の反対面に外側熱可塑性樹脂層1の低密度ポリエチレンをTダイから押し出して厚さ20μmで設けて、
図1のような、液体用紙容器に用いる積層体100を製造した。
【0090】
また、外側熱可塑性樹脂層1の積層時、積層直後に外側熱可塑性樹脂層1の外面にコロナ処理行った。そして、印刷機で、外側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面に絵柄となる印刷層を設け、また、側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面で、折り返し片13、13、13、13の上方のトップシール部14の位置に剥離ニス層17を設けた。
【0091】
この積層体100を、
図4のようなブランクにし、製函し、胴部20の各面板の幅がそれぞれ85mmで容量2リットルの
図3のような、実施例1の液体用紙容器を作成した。
【0092】
<実施例2>
内装フィルムのバリア層4の面に、剥離樹脂層3bを設けず、用意した紙層2の板紙に、アルコール可溶性樹脂層3cのシェラックをインキ化して設けて、紙層2のアルコール可溶性樹脂層3cの面に、接着性樹脂層3dのエチレン−メタクリル酸共重合体をTダイから押し出して30μmの厚さで設け、内装フィルムのバリア層4の面を接着性樹脂層3dの溶融樹脂面に圧着し積層して、
図2のような、液体用紙容器に用いる積層体200を製造した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液体用紙容器を作成した。
【0093】
<実施例3>
内側熱可塑性樹脂層6として、第1成分の直鎖状低密度ポリエチレンに第2成分のポリブテンを混合したイージーピール樹脂60μmの単層のイージーピールフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の液体用紙容器を作成した。
【0094】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0095】
<比較例1>
内側熱可塑性樹脂層6として、単層の直鎖状低密度ポリエチレン60μmを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液体用紙容器を作成した。
【0096】
<比較例2>
内装フィルムのバリア層4の面に、剥離樹脂層3bを設けず、紙層2とバリア層4を、Tダイから押し出された30μmの接着性樹脂層3aのエチレン−メタクリル酸共重合体で積層した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の液体用紙容器を作成した。
【0097】
<試験方法>
実施例と比較例について、下記の方法で試験し、比較評価した。
【0098】
<開封強度>
実施例と比較例の液体用紙容器を、
図6(B)のように、それぞれ、トップシール部14をX字型に開き、対向するX字の2つの端を、引張試験機の2つのつかみでそれぞれ掴んで、つかみ間の相対移動速度を300mm/minで引っ張り、その強度(単位:N)を開封強度とした。その結果を表1にまとめた。
【0099】
<開封性官能評価>
実施例と比較例の液体用紙容器のトップシール部14を、それぞれ、前述のトップシール部14の開口の方法に従い、
図6(B)、
図6(C)、
図6(D)の順に、手で開口して、その開口のしやすさを官能で判定した。開封しやすかったものを○とし、開封のしにくかったものを×として評価した。その結果を表1にまとめた。
【0100】
<剥離強度>
実施例と比較例の液体用紙容器を切り開き、その胴部より積層体を切り出し、15mm幅に切って、サンプルを作成した。このサンプルの一端を紙層2とバリア層4の間で剥離し、バリア層4側を折り返して、引張試験機でラミネート強度(単位:N/15mm)を、180度剥離で測定した。引張速度は300mm/minで行った。その結果を表1にまとめた。
【0101】
【表1】
以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0102】
<比較結果>
実施例1から3の液体用紙容器は、開封強度がいずれも30Nで、開封性官能評価が○で容易に開口でき、紙層2とバリア層4の間の剥離強度も1N/15mmで容易に分離できる。
【0103】
一方、比較例1の液体用紙容器は、開封強度が90Nで、開封性官能評価が×となり、開口が難しい。また、比較例2の液体用紙容器は、開封強度が30Nで、開封性官能評価も○で容易に開口できたが、紙層2とバリア層4の間の剥離強度が、5N/15mmで分離することは容易ではなかった。