特許第6136173号(P6136173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136173
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】直流電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20170522BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H02M3/155 J
   H02M3/28 J
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-221113(P2012-221113)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-75875(P2014-75875A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】吉永 充達
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02501028(EP,A2)
【文献】 特開2012−016136(JP,A)
【文献】 特表2009−512404(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/004847(WO,A1)
【文献】 特開2005−198386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00−3/44、
7/00−7/40
H05B37/00−39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する直流電源装置において、
前記交流電源の交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する整流器と、
スイッチング素子、リアクトル及びダイオードを有し、前記スイッチング素子をオン/オフさせることにより前記整流器の直流電圧を別の直流電圧に変換して負荷に供給するコンバータと、
前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部で検出された電流の値をピークホールドするピークホールド部と、
前記ピークホールド部でピークホールドされたピークホールド値のn/2(n≧1の整数)を前記リアクトルの回生電流期間のみ出力するn/2出力部と、
前記n/2出力部の出力を電流に変換し積分して出力する平均化部と、
前記平均化部の出力信号に基づき、前記リアクトルに流れる電流の平均電流値が所定値になるように前記スイッチング素子をオン/オフさせる制御部と、
を備え、
前記リアクトルは、主巻線と補助巻線とを有し、
前記補助巻線に発生する電圧に基づき、前記リアクトルの回生電流期間を検出する回生電流期間検出部を備え、
前記コンバータは、降圧型コンバータからなり、前記nは1であり、
前記平均化部は、前記スイッチング素子に流れる電流と前記n/2出力部の出力とを電流に変換して積分して出力することを特徴とする直流電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置に関し、特に、定電流フィードバック回路を不要とした一次側定電流制御方式のLED点灯装置に適用される直流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来の直流電源装置の構成を示すブロック図である(特許文献1)。図15に示す直流電源装置は、LED点灯装置に適用される。直流電源装置は、電源装置1と、電源装置1に接続される平滑コンデンサCoとLED群負荷装置RLとの並列回路とで構成され、交流電源ACからの交流電力を直流電力に変換してLED群負荷装置RLに出力する。
【0003】
電源装置1は、交流電源AC、EMIフィルタFL1、全波整流回路RC1、平滑コンデンサCi、ダイオードD1〜D3、リアクトルL1、制御IC100、コンデンサC1で構成されている。交流電源ACの両端にはEMIフィルタFL1が接続され、EMIフィルタFL1の出力には交流電源ACの交流電圧を整流する全波整流回路RC1の入力端が接続されている。
【0004】
全波整流回路RC1の出力端には、回生ダイオードD1とMOSFETからなるスイッチング素子Q1と電流検出抵抗Rsとの直列回路が接続されている。回生ダイオードD1の両端には、LED群負荷装置RLと平滑コンデンサCoとの並列回路とリアクトルL1の主巻線Npとからなる直列回路が接続されている。
【0005】
制御IC100は、オンオフ駆動信号によりスイッチング素子Q1をオンオフさせる。制御IC100は、LED群負荷装置RLに流れる負荷電流をハイサイド電流検出部20で直接検出し、検出した負荷電流が予め定められた平均電流値になるように、図示しないレベルシフト回路又はフォトカプラ等を介して、電流制御用誤差増幅器13へフィードバック信号FBとして入力する。
【0006】
電流制御用誤差増幅器13の出力信号の応答特性は、交流電源ACの正弦波の半周期よりも遅い応答特性を有し、PWMコンパレータ14は、電流制御用誤差増幅器13からの出力と三角波発生器12からの三角波信号とを比較することにより、スイッチング素子Q1のオン信号幅を一定にしてスイッチング素子Q1をオンオフさせる。
【0007】
このため、交流電源ACの正弦波の全波整流電圧波形に相似して、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流のピーク値が増減するので、この直流電源装置は、力率改善機能も備えている。
【0008】
また、制御IC100は、リアクトルL1の補助巻線Ndの電圧信号に基づき、ダイオードD3を介して、リアクトルL1の主巻線Npに流れる回生電流の終了時の電圧低下をコンパレータ11で検出し、三角波発生器12のコンデンサ電圧をリセットして、スイッチング素子Q1のターンオンを生成している。これにより、スイッチング素子Q1の擬似共振動作を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−23294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図15に示す従来の回路は、制御IC100をGND(グランド)基準で駆動させるローサイド降圧チョッパ回路であり、GND基準で制御信号が入力できるため、外部信号によるオン/フや調光動作が容易となる。
【0011】
しかしながら、LED群負荷装置RLは、高圧となるハイサイド側に接続されるため、GND基準回路の制御IC100に定電流制御信号を送出するための回路として、ハイサイド電流検出部20を設けており、その回路構成が複雑化してしまう。
【0012】
一方、制御IC100がハイサイド(=フローティング動作)となった場合には、定電流制御信号の回路構成は容易であるが、外部信号によるオン/オフや調光信号の送出先がハイサイド側の制御IC100となるので、その回路構成も複雑となる。
【0013】
このように、従来方式の回路では、ハイサイド/ローサイドチョッパ回路にかかわらず、外部制御信号又はLED電流検出信号の回路構成が複雑になり、装置が高価になっていた。
【0014】
本発明の課題は、回路構成が簡単で且つ安価な直流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、交流電源からの交流電力を直流電力に変換して出力する直流電源装置において、前記交流電源の交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する整流器と、スイッチング素子、リアクトル及びダイオードを有し、前記スイッチング素子をオン/オフさせることにより前記整流器の直流電圧を別の直流電圧に変換して負荷に供給するコンバータと、前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された電流の値をピークホールドするピークホールド部と、前記ピークホールド部でピークホールドされたピークホールド値のn/2(n≧1の整数)を前記リアクトルの回生電流期間のみ出力するn/2出力部と、前記n/2出力部の出力を電流に変換し積分して出力する平均化部と、前記平均化部の出力信号に基づき、前記リアクトルに流れる電流の平均電流値が所定値になるように前記スイッチング素子をオン/オフさせる制御部とを備え、前記リアクトルは、主巻線と補助巻線とを有し、前記補助巻線に発生する電圧に基づき、前記リアクトルの回生電流期間を検出する回生電流期間検出部を備え、前記コンバータは、降圧型コンバータからなり、前記nは1であり、前記平均化部は、前記スイッチング素子に流れる電流と前記n/2出力部の出力とを電流に変換して積分して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電流検出部で検出された電流の値をピークホールドし、ピークホールドされたピークホールド値のn/2をリアクトルの回生電流期間のみ出力し、平均化部は、スイッチング素子に流れる電流とn/2出力部の出力を電流に変換して積分して出力する。
【0017】
これにより、スイッチング電流の波形のみで、負荷電流波形と同じ面積となるフィードバック信号を作り出すことができる。従って、回路構成が簡単で且つ安価な直流電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示す直流電源装置内の検出部の構成例を示す図である。
図3図2に示す検出部の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図4図2に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。
図5図2に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。
図6】従来の方式の動作波形例を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の実施例2に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。
図8図7に示す直流電源装置内の検出部の構成例を示す図である。
図9図7に示す検出部の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図10図7に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。
図11図7に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。
図12】本発明の実施例3に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。
図13図12に示す直流電源装置内の検出部の構成例を示す図である。
図14図12に示す検出部の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図15】従来の直流電源装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のいくつかの実施の形態の直流電源装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。この直流電源装置は、LED群負荷装置RLを点灯するLED点灯装置に適用され、図15に示す従来の直流電源装置に対してハイサイド電流検出部20を削除し、制御IC10内に検出部16を設けたことを特徴とする。なお、図15に示す直流電源装置の構成と同一構成については、同一符号を付する。
【0021】
電源装置1aは、ダイオードD1と主巻線Npとを用い、スイッチング素子Q1をオン/オフさせることにより全波整流回路RC1の直流電圧を降圧してLED群負荷装置RLに供給する降圧型コンバータを構成している。
【0022】
リアクトルL1は、主巻線Npと補助巻線Ndとを有している。リアクトルL1の主巻線Npの一方の端子には、LED群負荷装置RLと平滑コンデンサCoとの並列回路が接続されている。主巻線Npの他方の端子には回生ダイオードD1のアノードが接続され、回生ダイオードD1のカソードは、LED群負荷装置RLと平滑コンデンサCoとの並列回路に接続され、かつ、全波整流回路RC1の正極出力端に接続されている。
【0023】
また、ダイオードD1のアノードとリアクトルL1の主巻線Npの他方の端子には、スイッチング素子Q1のドレインが接続され、スイッチング素子Q1のソースは、電流検出抵抗Rsを介して全波整流回路RC1の負極出力端に接続されている。
【0024】
また、平滑コンデンサCoとリアクトルL1の主巻線Npと回生ダイオードD1とは、回生回路を構成し、スイッチング素子Q1がオンからオフに移行したとき、リアクトルL1の主巻線Npに流れる電流を回生してLED群負荷装置RLと平滑コンデンサCoの並列回路に供給する。即ち、LED群負荷装置RLと平滑コンデンサCoの並列回路には、スイッチング素子Q1のオンオフ期間を通してリアクトルL1の主巻線電流が流れる。
【0025】
制御IC10は、検出部16、過電流保護回路OCP、電流制御用誤差増幅器13、PWMコンパレータ14、三角波発生器12、アンド回路17を有している。検出部16は、スイッチング素子Q1に流れる電流を検出する。過電流保護回路OCPは、電流検出抵抗Rsに流れる電流により生ずる電圧が基準電圧V3を超えたときにスイッチング素子Q1をオフすることで電流値を制限する。
【0026】
PWMコンパレータ14は、電流制御用誤差増幅器13からの出力と三角波発生器12からの三角波信号とを比較することにより、スイッチング素子Q1のオンオフ信号を生成する。アンド回路17は、PWMコンパレータ14の出力と過電圧保護回路OCPの出力とコンパレータ15の出力とのアンドを取り、アンド出力をスイッチング素子Q1に出力することで、スイッチング素子Q1をオン/オフさせる。
【0027】
検出部16には、スイッチング素子Q1のソースとコンパレータ15の出力端子とアンド回路17の入力端子と電流制御用誤差増幅器13の反転入力端子とが接続されている。
【0028】
検出部16は、図2に示すように、1ショット回路161、RSF/F162、ピークホールド回路163、1/2倍変換器164、アナログスイッチASW1,ASW2、電圧電流変換アンプ165、コンデンサCcompとから構成されている。
【0029】
1ショット回路161は、コンパレータ15を介して補助巻線Ndの電圧を入力し、補助巻線Ndの電圧の立ち上がり時と立下り時との各々において、1パルスを発生させる。RSF/F162は、1ショット回路161からの1パルス毎にアナログスイッチASW1にオン/オフ信号を出力する。1ショット回路161、及びRSF/F162は、スイッチング素子Q1がオフ時における回生電流期間を検出するための回生電流期間検出部を構成する。
【0030】
端子P3(OCP端子に対応)には、スイッチング素子Q1に流れる電流が電流検出抵抗Rs(電流検出部に対応)を流れることで発生した電圧が印加される。
【0031】
ピークホールド回路163は、P3(OCP端子に対応)の電圧のピーク値をホールドする。1/2倍変換器164は、ピークホールド回路163でホールドされたピーク値の1/2電圧をアナログスイッチASW1に出力する。
【0032】
アナログスイッチASW1は、1/2倍変換器164からのピーク値の1/2電圧を、1パルスから次の1パルスの間、即ち、スイッチング素子Q1がオフしているリアクトルL1の回生電流期間のみ、電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。1/2倍変換器164と、アナログスイッチASW1とで1/2倍出力部を構成している。
【0033】
アナログスイッチASW2は、アナログスイッチASW1とは相補的にオン/オフし、スイッチング素子Q1がオンしている期間のみオンしてP3(OCP端子に対応)の電圧を電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。
【0034】
電圧電流変換アンプ165は、平均化部に対応し、アナログスイッチASW1からのピークホールド値とアナログスイッチASW2からの出力電圧とを電流に変換し、コンデンサCcompにより積分してその積分出力電圧を電流制御用誤差増幅器13の反転入力端子に出力する。
【0035】
電圧電流変換アンプ165とコンデンサCcompとは、平均化部を構成し、リアクトルL1に流れる電流検出信号を交流電源ACの交流電圧の半周期よりも長い時定数を有するフィルタを構成している。
【0036】
PWMコンパレータ14は、制御部に対応し、電流制御用誤差増幅器13からの出力信号と三角波発生器12からの三角波信号とに基づき、リアクトルL1に流れる電流の平均電流値が所定値になるようにスイッチング素子Q1をオン/オフさせる。
【0037】
また、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流の平均値が、交流電源ACの正弦波の1/2周期よりも長い時間の平均値となるように、検出部16の応答特性を遅くしている。
【0038】
即ち、検出部16の出力信号の応答時間を、交流電源ACの交流電圧の整流波形の周期の1/2倍以上の応答時間となるように設定されている。これにより、交流電源ACの正弦波の全波整流電圧波形に相似して、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流のピーク値は増減するので、力率改善機能を備えている。
【0039】
次に、このように構成された実施例1に係る直流電源装置の動作を説明する。
【0040】
まず、スイッチング素子Q1に流れる電流は、電流検出抵抗Rsにより電圧降下として検出され、検出された電圧信号は、検出部16に送られる。検出部16は、電流検出抵抗Rsの電圧信号からLED群負荷装置RLに流れる平均電流を算出して電流制御用誤差増幅器13に出力する。
【0041】
PWMコンパレータ14は、電流制御用誤差増幅器13で応答時間を遅くした誤差電圧信号と三角波発生器12からの三角波信号とを比較することによりオン/オフ駆動信号を生成し、オン/オフ駆動信号をアンド回路17を介してスイッチング素子Q1のゲートへ出力し、スイッチング素子Q1をオンオフ制御する。
【0042】
ここで、リアクトルL1の補助巻線NdからダイオードD2を介して整流平滑された電圧が制御IC10の電源電圧として供給される。また、リアクトルL1の補助巻線NdからダイオードD3を介して整流された電圧が制御IC10へ擬似共振信号として入力され、疑似共振信号がリアクトルL1に流れる回生電流の終了信号として検出される。
【0043】
次に実施例1の直流電源装置内の制御IC10に設けられた検出部16の動作を図2乃至図5を参照しながら詳細に説明する。図3は、図2に示す検出部の各部の動作を示すタイミングチャートである。図4及び図5は、図2に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。
【0044】
図3において、P2は補助巻線Ndの電圧をダイオードD3を介して整流した電圧、ostは1ショット回路161の出力、OCPはP3端子に流れるスイッチング素子Q1の電流、covはアナログスイッチASW1の出力、OTA−は電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に入力される電圧とを示している。
【0045】
図4では、交流電源ACの交流電圧が最大時における、スイッチング素子Q1に流れる電流、インダクタ電流、補助巻線Ndの電圧を示し、図5では、交流電源ACの交流電圧が小さい時における、スイッチング素子Q1に流れる電流、インダクタ電流、補助巻線Ndの電圧を示している。
【0046】
まず、時刻t1において、スイッチング素子Q1がオンオフ駆動信号によりオンすると、RC1→RL→Np→Q1→Rsの経路で電流が流れる。すると、時刻t1〜t2において、スイッチング素子Q1に流れる電流(図3のOCP、図4図5のスイッチング電流)が直線的に増加する。
【0047】
時刻t2において、スイッチング素子Q1がオンオフ駆動信号によりオフすると、Np→D1→RL→Npの経路でインダクタ電流が流れる(図4図5のインダクタ電流)。このインダクタ電流は、直線的に下降する。
【0048】
このとき、1ショット回路161は、コンパレータ15を介して補助巻線Ndの電圧をダイオードD3を介して整流した電圧P2を入力し、補助巻線Ndの電圧の立ち上がり時(例えば、図3の時刻t2)と立下り時(例えば、図3の時刻t3)とにおいて、1パルスostを発生させる。
【0049】
RSF/F162は、1ショット回路161からの1パルスost毎にアナログスイッチASW1にオン/オフ信号を出力する。
【0050】
ピークホールド回路163は、P3(OCP)の電圧のピーク値をホールドし、1/2倍変換器164は、ピークホールド回路163でホールドされたピーク値の1/2電圧をアナログスイッチASW1に出力する。
【0051】
アナログスイッチASW1は、1/2倍変換器164からのピーク値の1/2電圧を、1パルスから次の1パルスの間、即ち、スイッチング素子Q1がオフしているリアクトルL1の回生電流期間のみ、1/2電圧信号cov(例えば、図3の時刻t2〜t3の信号、図4及び図5のインダクタ電流が流れている期間内における長方形の信号)として、電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。
【0052】
アナログスイッチASW2は、スイッチング素子Q1がオンしている期間のみオンしてP3(OCP)の電圧を電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。
【0053】
電圧電流変換アンプ165は、アナログスイッチASW1からのピークホールド値とアナログスイッチASW2からの出力との電圧(図3のOTA−)を電流に変換し、コンデンサCcompにより積分してその積分出力を電流制御用誤差増幅器13の反転入力端子に出力する。
【0054】
ここで、インダクタ電流(下降時の電流)のピーク値の1/2を、インダクタ電流(下降時の電流)の期間内の長方形の縦サイズとしたので、インダクタ電流(下降時の電流)の三角形の面積と、インダクタ電流(下降時の電流)の期間内の長方形(点線部分)の面積とが等しくなっている。
【0055】
このため、図4及び図5に示すスイッチング電流(上昇時の電流)の面積とインダクタ電流(下降時の電流)の期間内の長方形の面積との和は、図4及び図5に示すスイッチング電流(上昇時の電流)の面積とインダクタ電流(下降時の電流)の面積との和に等しい。
【0056】
これにより、スイッチング電流の波形のみで、LED電流波形と同じ面積となるフィードバック信号を作り出すことができ、このフィードバック信号を電流制御用誤差増幅器13に出力することができる。
【0057】
電流制御用誤差増幅器13は、検出部16からのフィードバック信号を平均化するので、スイッチング電流(上昇時の電流AB間)の面積とインダクタ電流(下降時の電流BC間)の期間内の長方形の面積との和が、スイッチング電流(上昇時の電流AB間)の面積とインダクタ電流(下降時の電流BC間)の面積との和に等しければ良い。
【0058】
図6は、従来の方式の動作波形例を示すタイミングチャートである。図6に示すように、スイッチング素子Q1の電流は、三角波の断続電流であるが、LED電流(=インダクタ電流)はその後、緩やかに減少する波形となっており、LED電流はハイサイド電流検出部20で検出される。
【0059】
これに対して、実施例1の直流電源装置では、図4及び図5に示すように、スイッチング素子Q1の電流波形のみからLED電流波形を求めて、定電流制御用フィードバック信号を得ている。
【0060】
このように、実施例1に係る直流電源装置によれば、コンバータの力率改善型チョッパなど、スイッチング素子の電流波形が正弦波などの特異な場合でも、定電流特性を得ることができる。
【0061】
また、 LED負荷電流検出回路が不要となるため、電流検出抵抗や定電流フィードバック回路、フォトカプラなどが不要となる。従って、安価で小型な直流電源装置を提供することができる。
【実施例2】
【0062】
図7は、本発明の実施例2に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。図1に示す直流電源装置は、降圧チョッパ回路に適用したが、図7に示す直流電源装置は、昇降圧チョッパ回路に適用したことを特徴とする。
【0063】
図7において、リアクトルL1は、主巻線Npと補助巻線Ndとを有している。全波整流回路RC1の出力端には、主巻線Npとスイッチング素子Q1と電流検出抵抗Rsとの直列回路が接続される。主巻線Npの一端には、LED群負荷装置RLの一端と平滑コンデンサCoの一端とが接続される。主巻線Npの他端には、ダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードにはLED群負荷装置RLの他端と平滑コンデンサCoの他端とが接続される。
【0064】
図8は、図7に示す直流電源装置内の検出部の構成例を示す図である。検出部16aは、図8に示すように、1ショット回路161、RSF/F162、ピークホールド回路163、1/2倍変換器164、アナログスイッチASW1、電圧電流変換アンプ165、コンデンサCcompとから構成されている。
【0065】
まず、スイッチング素子Q1がオンすると、RC1→Np→Q1→Rsの経路で電流が流れる。次に、スイッチング素子Q1がオフすると、Np→D1→RL→Npの経路で電流がLED群負荷装置RLに流れる。即ち、LED群負荷装置RLには、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流が流れる。従って、検出部16aにおいて、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流を生成すれば良い。
【0066】
以下、検出部16aの動作を説明する。1ショット回路161は、図9に示すように、コンパレータ15を介して補助巻線Ndの電圧をダイオードD3を介して整流した電圧P2を入力し、補助巻線Ndの電圧の立ち上がり時と立下り時とにおいて、1パルスを発生させる。RSF/F162は、1ショット回路161からの1パルス毎にアナログスイッチASW1にオン/オフ信号を出力する。
【0067】
ピークホールド回路163は、OCPの電圧のピーク値をホールドする。1/2倍変換器164は、ピークホールド回路163でホールドされたピーク値の1/2電圧をアナログスイッチASW1に出力する。
【0068】
アナログスイッチASW1は、1/2倍変換器164からのピーク値の1/2電圧を、1パルスから次の1パルスの間、即ち、スイッチング素子Q1がオフしているリアクトルL1の回生電流期間のみ、電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。
【0069】
電圧電流変換アンプ165は、アナログスイッチASW1からのピークホールド値を電流に変換し、コンデンサCcompにより積分してその積分出力を電流制御用誤差増幅器13の反転入力端子に出力する。
【0070】
従って、検出部16において、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流を生成し、この電流を電流制御用誤差増幅器13に出力することができる。従って、実施例2の直流電源装置においても、実施例1の直流電源装置の効果と同様な効果が得られる。
【0071】
図10及び図11は、図9に示す検出部の動作原理を示すタイミングチャートである。図9において、Ndは補助巻線Ndの電圧、ostは1ショット回路161の出力、OCPはP3端子に流れるスイッチング素子Q1の電流、OTA−は電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に入力される電圧とを示している。
【0072】
図10では、交流電源ACの交流電圧が最大時における、スイッチング素子Q1に流れる電流、インダクタ電流、補助巻線Ndの電圧を示し、図11では、交流電源ACの交流電圧が小さい時における、スイッチング素子Q1に流れる電流、インダクタ電流、補助巻線Ndの電圧を示している。
【実施例3】
【0073】
図12は、本発明の実施例3に係る直流電源装置の構成を示すブロック図である。図1に示す直流電源装置1aは、降圧チョッパ回路に適用したが、図12に示す直流電源装置1cは、フライバック回路に適用したことを特徴とする。
【0074】
図12において、リアクトルL2は、主巻線Np(一次巻線)と二次巻線Ns補助巻線Ndとを有している。全波整流回路RC1の出力端には、主巻線Npとスイッチング素子Q1と電流検出抵抗Rsとの直列回路が接続される。二次巻線Nsの一端には、ダイオードD1を介してLED群負荷装置RLの一端と平滑コンデンサCoの一端とが接続される。二次巻線Nsの他端には、LED群負荷装置RLの他端と平滑コンデンサCoの他端とが接続される。補助巻線Ndの接続は、図1に示すものと同じである。
【0075】
図13は、図12に示す直流電源装置内の検出部の構成例を示す図である。検出部16bは、図13に示すように、1ショット回路161、RSF/F162、ピークホールド回路163、n/2倍変換器166、アナログスイッチASW1、電圧電流変換アンプ165、コンデンサCcompとから構成されている。
【0076】
なお、n/2倍変換器166のnは、一次巻線Npと二次巻線Nsの巻数比であり、nは初期設定される。
【0077】
まず、スイッチング素子Q1がオンすると、RC1→Np→Q1→Rsの経路で電流が流れる。このとき、二次巻線Nsの電圧によりLED群負荷装置RLには電流は流れない。
【0078】
次に、スイッチング素子Q1がオフすると、Ns→D1→RL→Nsの経路で電流がLED群負荷装置RLに流れる。即ち、LED群負荷装置RLには、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流が流れる。従って、検出部16bにおいて、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流を生成すれば良い。
【0079】
以下、検出部16の動作を説明する。1ショット回路161は、図14に示すように、コンパレータ15を介して補助巻線Ndの電圧をダイオードD3を介して整流した電圧P2を入力し、補助巻線Ndの電圧の立ち上がり時と立下り時とにおいて、1パルスを発生させる。RSF/F162は、1ショット回路161からの1パルス毎にアナログスイッチASW1にオン/オフ信号を出力する。
【0080】
ピークホールド回路163は、OCPの電圧のピーク値をホールドする。n/2倍変換器166は、ピークホールド回路163でホールドされたピーク値のn/2電圧をアナログスイッチASW1に出力する。
【0081】
アナログスイッチASW1は、1/2倍変換器164からのピーク値のn/2電圧を、1パルスから次の1パルスの間、即ち、スイッチング素子Q1がオフしているリアクトルL2の回生電流期間のみ、電圧電流変換アンプ165の反転入力端子に出力する。
【0082】
電圧電流変換アンプ165は、アナログスイッチASW1からのピークホールド値を電流に変換し、コンデンサCcompにより積分してその積分出力を電流制御用誤差増幅器13の反転入力端子に出力する。
【0083】
従って、検出部16bにおいて、スイッチング素子Q1がオフ時のみ電流を生成し、この電流を電流制御用誤差増幅器13に出力することができる。従って、実施例3の直流電源装置においても、実施例1の直流電源装置の効果と同様な効果が得られる。
【0084】
リアクトルL2の一次巻線Npと二次巻線Nsとの巻数比をn:1とすると、二次巻線Nsには一次巻線Npのn倍のピーク電流が流れる。従って、二次巻線側に流れる期間の電流の平均値は、n×Ipの1/2となり、0.5Ip×nがOTA−信号となる。Ipはスイッチング素子Q1を流れる電流のピーク値である。
【0085】
このように、実施例3の直流電源装置においても、実施例1の直流電源装置の効果と同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、力率改善回路やAC−DCコンバータに適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
AC 交流電源
FL1 EMIフィルタ
RC1 全波整流回路
RL LED群負荷装置
Q1 スイッチング素子
1,1a,1b,1c 電源装置
11,15 コンパレータ
13 電流制御用誤差増幅器
14 PWMコンパレータ
OCP 過電流保護回路
16,16a,16b 検出部
17 アンド回路
20 ハイサイド電流検出部
161 1ショット回路
162 RSF/F
163 ピークホールド回路
164 1/2倍変換器
165 電圧電流変換アンプ
166 n/2倍変換器
Np 主巻線(一次巻線)
Ns 二次巻線
Nd 補助巻線
ASW1,ASW2 アナログスイッチ
Ci,Co,C1,C2,Ccomp コンデンサ
D1,D2,D3 ダイオード
V1,V2,V3,Vref 基準電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15