特許第6136267号(P6136267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136267
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】糖液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/14 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   C12P19/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-521895(P2012-521895)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2012058076
(87)【国際公開番号】WO2012133495
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-72021(P2011-72021)
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏征
(72)【発明者】
【氏名】岸本 淳平
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝成
【審査官】 伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/067785(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111451(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029842(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/115039(WO,A1)
【文献】 Carbohydrate Research,2008年,Vol.343,p.1232-1236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)および(2)を含む、糖液の製造方法。
工程(1):セルロース前処理物に水溶性無機塩を最終濃度5〜35g/Lの範囲になるように添加したものを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解を行う工程、
工程(2):前記加水分解物を固液分離し、得られた溶液成分を限外濾過膜に通じて濾過し、非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を得る工程。
【請求項2】
工程(1)の水溶性無機塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上である、請求項1に記載の糖液の製造方法。
【請求項3】
工程(1)の水溶性無機塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1種類以上である、請求項1または2に記載の糖液の製造方法。
【請求項4】
工程(1)のセルロース前処理物が、水熱処理、希硫酸処理およびアルカリ処理の群から選ばれる1以上の前処理の処理物である、請求項1から3のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項5】
糸状菌由来セルラーゼがトリコデルマ由来セルラーゼである、請求項1から4のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項6】
さらに工程(2)の糖液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過し、透過液として発酵阻害物質を除去し、非透過液として糖濃縮液を得る工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の糖液の製造方法。
【請求項7】
さらに工程(2)の糖液をナノ濾過膜に通じて濾過して得られる透過液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過液として得られる無機塩濃縮液を工程(1)の水溶性無機塩として再利用する工程を含む、請求項6に記載の糖液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルロース含有バイオマスを酸、熱水、アルカリなどで前処理した後、セルラーゼを添加し加水分解することで糖液を製造する方法が広く検討されている。しかしながら、こうしたセルラーゼを使用する糖液の製造方法の欠点として、セルラーゼの使用量が多く、かつセルラーゼの価格も高いため、糖液製造コストが増大するという課題がある。
【0003】
本課題を解決する手法として、セルロース加水分解に使用したセルラーゼを回収再利用する方法が提案されている。例えば、スピンフィルターによる連続固液分離を行い、得られた糖液を限外濾過膜に通じて濾過し、セルラーゼを回収する方法(特許文献1)、酵素糖化の段階において界面活性剤を投入することでセルラーゼ吸着を抑制し回収効率を向上させる方法(特許文献2)、酵素糖化後の残さを通電処理することでセルラーゼ成分を回収する方法(特許文献3)などが知られているが根本的な課題解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−87319号公報
【特許文献2】特開昭63−87994号公報
【特許文献3】特開2008−206484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、前述の通りセルロース含有バイオマスから糖液を製造する際のセルロースの加水分解におけるセルラーゼの使用量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、セルロース加水分解物に水溶性無機塩を最終濃度5〜35g/Lの範囲で添加することによって、セルロース加水分解物に含まれるセルラーゼの回収量を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]の構成を有する。
[1]以下の工程(1)および(2)含む、糖液の製造方法。
工程(1):セルロース前処理物に水溶性無機塩を最終濃度5〜35g/Lの範囲になるように添加したものを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解を行う工程、
工程(2):前記加水分解物を固液分離し、得られた溶液成分を限外濾過膜に通じて濾過し、非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を得る工程。
[2]工程(1)の水溶性無機塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる1種類以上である、[1]に記載の糖液の製造方法。
[3]工程(1)の水溶性無機塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群から選ばれる1種類以上である、[1]または[2]に記載の糖液の製造方法。
[4]工程(1)のセルロース前処理物が、水熱処理、希硫酸処理およびアルカリ処理の群から選ばれる1以上の処理物である、[1]から[3]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[5]糸状菌由来セルラーゼがトリコデルマ由来セルラーゼである、[1]から[4]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[6]さらに工程(2)の糖液をナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過し、透過液として発酵阻害物質を除去し、非透過液として糖濃縮液を得る工程を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[7]さらに工程(2)の糖液をナノ濾過膜に通じて濾過して得られる透過液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過液として得られる無機塩濃縮液を工程(1)の水溶性無機塩として再利用する工程を含む、[6]に記載の糖液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、セルロース加水分解物からの糸状菌由来セルラーゼの酵素回収率が向上するため、糖液の製造工程に使用されるセルラーゼ使用量を削減できることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の工程(1)の実施形態一例を示す概略フローである。バイオマス前処理物に残存するアンモニア、酸に対し、中和剤を添加することで、水溶性無機塩を調製するプロセスフロー概略である。
図2】本発明の工程(1)の実施形態一例を示す概略フローである。バイオマス前処理物を固液分離し、分離した希硫酸処理液もしくはアンモニア処理液を中和することで、水溶性無機塩を調製するプロセスフロー概略である。
図3】本発明の糖液の製造方法を実施するための装置構成の一例を示す図面である。
【符号の説明】
【0010】
1 保温装置
2 加水分解槽
3 投入口
4 攪拌装置
5 水溶性無機塩調製槽
6 加水分解物の投入口
7 プレスろ過
8 コンプレッサー
9 プレス濾過濾液槽
10 排出ライン
11 精密濾過膜
12 MFポンプ
13 精密濾過膜濾液槽
14 UFポンプ
15 限外濾過膜
16 糖液回収ライン
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態に関し、工程ごとに詳細に説明する。
【0012】
[工程(1)]
工程(1)におけるセルロース前処理物とは、セルロース含有バイオマスを加水分解のための前処理を行ったものを指す。セルロース含有バイオマスの具体例としては、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わら、椰子殻などの草本系バイオマス、あるいは樹木、ポプラ、ヤナギ、廃建材などの木質系バイオマス、さらに藻類、海草など水生環境由来のバイオマスのことを指す。こうしたバイオマスには、セルロースおよびヘミセルロース(以下、セルロースとヘミセルロースの総称として「セルロース」という。)の他に芳香族高分子であるリグニンを含有している。すなわち本発明では、糸状菌由来セルラーゼによるバイオマス加水分解効率を向上させるためにセルロース含有バイオマスの前処理を行い、その結果得られたものをセルロース前処理物という。
【0013】
セルロース含有バイオマスの前処理としては、酸処理、硫酸処理、希硫酸処理、アルカリ処理、水熱処理、亜臨界水処理、微粉砕処理、蒸煮処理、乾燥処理が挙げられるが、アルカリ処理、水熱処理または希硫酸処理は、他手法に比べ酵素糖化効率が優れ酵素使用量が少なくてすむことから、本発明においては水熱処理、希硫酸処理またはアルカリ処理であることが好ましい。
【0014】
水熱処理は、セルロース含有バイオマスが、0.1〜50重量%となるよう水を添加後、100〜400℃の温度で、1秒〜60分処理する。こうした温度条件において処理することにより、セルロースの加水分解が起こる。処理回数は特に限定されず該処理を1回以上行えばよい。特に該処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
【0015】
希硫酸処理は、硫酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。反応温度は100〜300℃の範囲で設定することができ、120〜250℃で設定することが好ましい。反応時間は1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。特に上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。希硫酸処理によって得られた加水分解物は、酸を含んでおり、さらにセルラーゼによる加水分解反応を行うため、あるいは発酵原料として使用するために、中和を行う必要がある。
【0016】
アルカリ処理は、セルロース含有バイオマスに対して、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニアから選ばれるアルカリを作用させる方法である。アルカリ処理における、使用するアルカリとして、特にアンモニアが好ましく使用できる。こうしたアンモニア処理は、特開2008−161125号公報や特開2008−535664号公報に記載の方法の手法で実施することができる。例えば、使用するアンモニア濃度はセルロース含有バイオマスに対して0.1〜15重量%の範囲で添加し、4〜200℃、好ましくは90〜150℃で処理する。添加するアンモニアは液体状態、あるいは気体状態のどちらであってもよい。さらに添加する形態は純アンモニアでもアンモニア水溶液の形態でもよい。処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよく、前記処理を2回以上行う場合は、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。なお、アンモニア処理によって得られた処理物は、さらに酵素による加水分解反応を行うため、アンモニアの中和あるいはアンモニアの除去を行う必要がある。中和は、加水分解物より固形分を固液分離により除去したアンモニアに対し行ってもよいし、固形分を含んだままの状態で行ってもよい。中和に使用する酸試薬は特に限定されない。アンモニアの除去は、アンモニア処理物を減圧状態に保つことでアンモニアを気体状態に揮発させて除去することができ、除去したアンモニアは回収・再利用してもよい。
【0017】
工程(1)では、前述のセルロース前処理物に水溶性無機塩を最終濃度5〜35g/Lの範囲になるよう添加することを特徴としている。水溶性無機塩の最終濃度が5g/L未満である場合、後述の工程(2)における糸状菌セルラーゼの回収に効果はなく、一方で、35g/Lを超えると糸状菌セルラーゼそのものの活性が低下し、生成される糖量が減少するため好ましくない。
【0018】
一般的に塩とは、酸由来のアニオンと、塩基由来のカチオンがイオン結合した化合物のことを指し、特に、「無機塩」とは、「炭素原子を含まない塩」のことを指し、無機酸(鉱酸)由来の塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO)、燐酸イオン(PO3−、HPO、HPO2−)、硫酸イオン(SO2−)、などと、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、アンモニウムイオン(NH)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)などがイオン結合した化合物のことを指す。これらの内、「水溶性無機塩」とは、前述した無機塩のうち、水に対する溶解性(水溶性)が少なくとも「50g/L」以上である無機塩のことを指す。特に、硫酸カルシウム(石膏)(CaSO)、燐酸カルシウム(CaHPO、Ca(HPO、Ca(PO)に関しては、水溶性が「50g/L」未満であるため、水不溶性無機塩に分類され、本発明における水溶性無機塩からは除外される。
【0019】
水溶性無機塩に対して、有機塩(あるいは水溶性有機塩)が存在する。有機塩とは、カルボン酸など炭素原子を含む酸由来のアニオン(−COO)と他のカチオンがイオン結合した化合物のことを指し、本発明の無機塩とは区別される。例えば、セルロースの酵素による加水分解において、緩衝液として一般的に使用されている、酢酸塩(酢酸ナトリウムなど)、クエン酸塩(クエン酸ナトリウムなど)は有機塩であり、水溶性無機塩に対して、酵素回収に与える効果も異なる。水溶性無機塩は、有機塩に対して、それぞれの塩が解離した際のイオンサイズ(分子量)も小さく、それにより後述の工程(2)での酵素回収率が高くなるものと考えられる。
【0020】
本発明において使用される水溶性無機塩は特に制限されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選ばれるものが好ましく使用できる。またこれらの内、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群から選ばれるものは原料価格が安く、かつ高い酵素回収率を得られるためより好ましく使用される。また、特に塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの1価の無機塩では、後段のナノ濾過膜処理と組み合わせることによって、必要量以上を除去できるという利点を有し、硫酸アンモニウムでは、ナノ濾過膜により除去されないが、糖液を微生物の発酵原料として用いる場合、微生物生育の窒素源として利用されるため、水溶性無機塩としてさらに好ましく用いられる。なお、添加される水溶性無機塩は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。その場合、例えば、塩化ナトリウム2.1g/L、塩化マグネシウム0.2g/L、硫酸アンモニウム2.7g/Lの存在下での加水分解では、合計5g/L(=2.1+0.2+2.7)の前記無機塩を加水分解に添加したこととなる。
【0021】
前記水溶性無機塩の添加は、セルロース前処理物に糸状菌由来セルラーゼを添加する前、あるいは糸状菌由来セルラーゼ添加した後のいずれであってもよい。但し、糸状菌由来セルラーゼの添加前に無機塩を添加しておく方が、糸状菌由来セルラーゼによるバイオマス前処理物の加水分解における微生物汚染、およびこれに伴う生成糖収率の減少、など抑制できるため好ましい。
【0022】
前記水溶性無機塩は、粉体などの固形物、あるいは水溶液のいずれの状態で添加してもよいが、5〜500g/L程度の濃縮された無機塩水溶液を予め調製しておき、これを加水分解時に添加する方法が好ましい。無機塩を固体状態で添加すると、局所的に極めて高い無機塩濃度の状態が形成されるため、糸状菌由来セルラーゼの失活を引き起こす可能性があり、また、操業性の観点からも水溶液の方が好ましい。
【0023】
前記水溶性無機塩の添加量は、水溶性無機塩の最終濃度が5〜35g/Lになるように添加すればよい。セルロース前処理物には、本来のセルロース系バイオマス由来、あるいは前処理由来の無機塩(リン、ナトリウム、カリウムなどの塩)を含んでいる。こうしたセルロース系バイオマスに本来含まれる無機塩などを含む無機物を測定する方法として、灰分含量を測定する手法、具体的には、815℃の空気存在下でバイオマス燃焼試験を行い、得られた固体残さの恒量を測定することによって無機物を測定する手法が知られており、該手法で測定されるセルロース系バイオマス由来の灰分は、バイオマス重量対比で概ね3重量%未満の数値である。但し、この灰分の多くは、シリカ(Si)であり、これらシリカ系化合物の水溶性は極めて低く、水溶性無機塩とは異なる。セルロース前処理物をセルラーゼにより加水分解する場合、通常、固形物濃度が50〜250g/Lの範囲に調製されるが、その場合、仮にバイオマス由来の灰分すべてが水溶性無機塩であると仮定しても、その加水分解時における水溶性無機塩の濃度は、1.5〜3g/Lの範囲となる。すなわち、本発明では、通常のセルロース前処理物の加水分解時と比較して、格段に高い水溶性無機塩の最終濃度範囲での加水分解であると言える。
【0024】
水溶性無機塩の添加量、最終濃度は、イオンクロマトグラフィーを使用して測定すればよい。セルロース前処理物の加水分解反応において、若干の水溶性無機塩濃度の増大がある場合があるが、酵素投入前の水溶性無機塩の最終濃度を測定し、添加量を決定すればよい。
【0025】
本発明で使用する水溶性無機塩は、試薬の水溶性無機塩があれば好ましいが、海水由来の水溶性無機塩、セルロース含有バイオマスを燃焼させた灰分由来の水溶性無機塩なども代替物として使用することができる。
【0026】
海水中に含まれる水溶性無機塩は、採取地によって濃度は若干変動することが知られているが、一般的に、塩化ナトリウム24〜27g/L、塩化マグネシウム2.5〜4g/L、硫酸マグネシウム1〜2.5g/L、塩化カリウム約0.7g/L、を組成として含む水溶性無機塩の混合物である。海水のpHは、その塩組成により概ね決定され、一般的にはpH8.2〜8.5の範囲にある。したがって、糸状菌由来セルラーゼの加水分解に最適なpHに調整した後、水溶性無機塩として海水を使用することができる。特に糸状菌由来セルラーゼとしてトリコデルマ由来セルラーゼを使用する場合、そのpHを4〜6の範囲に調整することが好ましく、この範囲外であると酵素の失活がおきることがある。pH調整には、硫酸、塩酸など一般的な酸を使用すればよく、特に限定されるものではない。
【0027】
また、セルロース含有バイオマス、その前処理物、あるいは加水分解後に得られる糖化残さなどをボイラー燃焼させた灰分を水溶性無機塩の代替として使用することができる。こうした灰分には、カリウムを多く含み、これを水に溶解させ、pH調整することで水溶性無機塩の水溶液を調整することができる。灰分を水溶解させた際、pHはアルカリ性となる。これはカリウムが、水酸化カリウムとなるためであり、硫酸、あるいは、塩酸で中和することによって、水溶性無機塩である塩化カリウムあるいは硫酸カリウムが形成される。また、灰分には、水不溶性のシリカを多く含むため、こうした水不溶性の無機物は、濾過など適当な手法で除去することが好ましい。
【0028】
また、セルロース含有バイオマスの前処理に使用した酸またはアルカリを中和し、中和によって生成した水溶性無機塩を利用することも可能である。例えば、セルロース含有バイオマスの前処理において、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの水溶液を使用した場合、前処理後、固液分離をして得られたセルロース前処理物(固体)には、水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液が残存する場合がある。こうしたセルロース前処理物(固体)中に残存したアルカリに対して、例えば、硫酸などで中和を行えば、硫酸ナトリウム、あるいは硫酸アンモニウムなどの無機塩を中和にて生成させることができる。すなわち、実際に「添加」した試薬はアルカリであるが、その中和によって必要量の水溶性無機塩が中和によって生成したことになる。このように酸を添加する糸状菌由来セルラーゼによる加水分解の工程によって水溶性無機塩の最終濃度5〜35g/Lの範囲に調製する場合においても、本発明の「水溶性無機塩を添加する」と言える。同様に、セルロース含有バイオマスの前処理において硫酸を使用した場合、中和にアンモニア、水酸化ナトリウムを使用することで、水溶性無機塩である硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムを生成させることができる(図1)。
【0029】
また、セルロース含有バイオマスを酸またはアルカリで前処理した後に固液分離し、セルロース前処理物(固体)と溶液成分に分離した溶液成分や、セルロース前処理物(固体)を水などで洗浄して得られた溶液成分を中和して得られた水溶性無機塩を使用してもよい。当然ながら、中和により調製した無機塩を、セルロース前処理物(固体)に最終濃度5〜35g/Lの範囲に調製する場合においても、本発明の「水溶性無機塩を添加する」と言える(図2)。
【0030】
表1に、前述した中和により水溶性無機塩を生成させる場合の、前処理と中和剤の組み合わせの例をまとめる。
【0031】
【表1】
【0032】
一方、例えば、硫酸処理に対して、水酸化カルシウム(ライム)を中和剤として使用して、硫酸カルシウムを無機塩として生成させたとしても、水酸化カルシウムは水溶性無機塩ではないため、本発明から除外される。
【0033】
工程(1)における水溶性無機塩の添加は、後述の工程(2)での糸状菌由来セルラーゼ回収率を高めるという効果に加え、加水分解工程における微生物汚染およびこれに伴う糖収率の減少を抑制することができる。加水分解に糸状菌由来セルラーゼを使用した場合の反応温度は、40〜60℃の範囲であるが、該温度範囲は処理物に含まれるバチルス属など乳酸菌、高温耐性酵母などの微生物の培養至適温度に相当するため、それら微生物によって、生成糖が消費されてしまう場合がある。本発明では、工程(1)において水溶性無機塩を添加することにより、こうした微生物のコンタミネーションに伴う生成糖の損失を大きく抑制することができる。すなわち、本発明では、水溶性無機塩を添加することによって、酵素回収率を高めるという効果に加え、糖収率が向上するというという別の効果も有する。
【0034】
前述のセルロース前処理物について、工程(1)では糸状菌由来セルラーゼにより加水分解を行い、加水分解物を得ることを特徴としている。セルロースの加水分解とは、セルロースを低分子量化せしめることを指す。また、セルロースの加水分解においては、キシラン、マンナン、アラビナン、などのヘミセルロース成分も同時に加水分解される。加水分解物に含まれる単糖成分として、グルコース、キシロース、マンノース、ガラクトースなどであり、主な単糖成分は、セルロースの加水分解物であるグルコースである。また加水分解が不十分な場合、セロビオース、キシロビオースなどの2糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖などが含まれている。
【0035】
工程(1)では、セルロース前処理物を糸状菌由来セルラーゼにより加水分解する。糸状菌の具体例としては、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Clostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、ファネロカエーテ(Phanerochaete)属、白色腐朽菌、褐色腐朽菌、などが挙げられる。本発明では、こうした糸状菌由来セルラーゼの中でも、セルロース分解活性が高いトリコデルマ由来セルラーゼを使用することが好ましい。
【0036】
トリコデルマ由来セルラーゼとは、トリコデルマ属微生物由来のセルラーゼを主成分とする酵素組成物である。トリコデルマ属微生物は特に限定されないが、具体的にはトリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reeseiQM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC−30(Trichoderma reeseiRut C−30)、トリコデルマ・リーセイPC3−7(Trichoderma reesei PC3−7)、トリコデルマ・リーセイATCC68589(Trichoderma reesei ATCC68589)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reeseiCL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reeseiMCG80)、トリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride9123)を例示することができる。また、前述のトリコデルマ属に由来する微生物であって、これらを変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理を施し、セルラーゼ生産性が向上した変異株であってもよい。
【0037】
本発明で使用するトリコデルマ由来セルラーゼは、セロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼなどの複数の酵素成分を含む、セルロースを加水分解して糖化する活性を有する酵素組成物である。トリコデルマ由来セルラーゼは、セルロース分解において複数の酵素成分の協奏効果あるいは補完効果により効率的なセルロースの加水分解を実施することができる。特に本発明に使用するセルラーゼは、トリコデルマ由来セロビオハイドラーゼおよびキシラナーゼを含むことが好ましい。
【0038】
セロビオハイドラーゼとは、セルロースの末端部分から加水分解していくことを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.91としてセロビオハイドラーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0039】
エンドグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の中央部分から加水分解することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.4、EC3.2.1.6、EC3.2.1.39、EC3.2.1.73としてエンドグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0040】
エキソグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の末端から加水分解することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.74、EC3.2.1.58としてエキソグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0041】
βグルコシダーゼとは、セロオリゴ糖あるいはセロビオースに作用することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.21としてβグルコシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0042】
キシラナーゼとは、ヘミセルロースあるいは特にキシランに作用することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.8としてキシラナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0043】
キシロシダーゼとは、キシロオリゴ糖に作用することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.37としてキシロシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
【0044】
トリコデルマ由来セルラーゼとしては、粗酵素物が好ましく使用される。粗酵素物は、トリコデルマ属の微生物がセルラーゼを産生するよう調製した培地中で、任意の期間該微生物を培養した培養上清に由来する。使用する培地成分は特に限定されないが、セルラーゼの産生を促進するために、セルロースを添加した培地が一般的に使用できる。そして、粗酵素物として、培養液をそのまま、あるいはトリコデルマ菌体を除去したのみの培養上清が好ましく使用される。
【0045】
粗酵素物中の各酵素成分の重量比は特に限定されるものではないが、例えば、トリコデルマ・リーセイ由来の培養液には、50〜95重量%のセロビオハイドラーゼが含まれており、残りの成分にエンドグルカナーゼ、βグルコシダーゼ等が含まれている。また、トリコデルマ属の微生物は、強力なセルラーゼ成分を培養液中に生産する一方で、βグルコシダーゼに関しては、細胞内あるいは細胞表層に保持しているため培養液中のβグルコシダーゼ活性は低いため、粗酵素物に、さらに異種または同種のβグルコシダーゼを添加してもよい。異種のβグルコシダーゼとしては、アスペルギルス属由来のβグルコシダーゼが好ましく使用できる。アスペルギルス属由来のβグルコシダーゼとして、ノボザイム社より市販されている“Novozyme188”などを例示することができる。粗酵素物に異種または同種のβグルコシダーゼを添加する方法としては、トリコデルマ属の微生物に遺伝子を導入し、その培養液中に産生されるよう遺伝子組換えされたトリコデルマ属の微生物を培養し、その培養液を単離する方法でもよい。
【0046】
糸状菌由来セルラーゼの加水分解反応温度は、15〜100℃の範囲が好ましく、40〜60℃がより好ましく、50℃が最も好ましい。また、加水分解反応時のpHは、pH3〜9の範囲が好ましく、pH4〜5.5がより好ましく、pH5が最も好ましい。pH調整には、酸あるいはアルカリを目的のpHとなるように添加し調整することができる。また、適宜緩衝液を使用してもよい。
【0047】
その他、セルロース前処理物の加水分解では、セルロース前処理物と糸状菌由来セルラーゼの接触を促進させるため、また加水分解物の糖濃度を均一にするため攪拌混合を行うことが好ましい。セルロース前処理物の固形分濃度は、1〜25重量%の範囲であることがより好ましい。また、固形物濃度を1〜10重量%の低濃度で設定することは、セルロース前処理物の加水分解効率が向上するという効果を有しているため、さらに好ましい。これは、糸状菌由来セルラーゼが、加水分解による生物であるグルコース、セロビオースなどの糖生成物により酵素反応が阻害されるという性質を有するためである。
【0048】
[工程(2)]
工程(2)では、まず、工程(1)で得られた加水分解物を固液分離して溶液成分を回収する。固液分離は、スクリューデカンタなどの遠心分離法、加圧・吸引濾過などの濾過法、あるいは精密濾過などの膜濾過法といった公知の固液分離手法により実施することができる。こうした固液分離は1以上の複数手法組み合わせて実施してもよく、効率的に固形物を除去する手段であれば限定されない。但し、後段限外濾過膜のファウリングを抑制するという観点において、固液分離後の溶液成分には極力固形物が含まれないことが好ましく、具体的には遠心分離法もしくはフィルタプレスなどの濾過法にて1回目の固液分離した後、得られた溶液成分を、さらに精密濾過膜によって膜濾過することで、完全に固形物を除去することが好ましい。精密濾過膜とは、圧力差を駆動力として、微粒子懸濁液から0.01〜10μm程度の粒子を分離除去できる分離膜である。精密濾過膜の表面には0.01〜10μmの範囲の細孔を有し、その細孔以上の微粒子成分は膜側に分離除去することができる。精密濾過膜の材質は、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミック、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))などが例示できるが特に限定されるものではないが、対汚性、薬品耐性、強度、濾過性といった観点において、ポリフッ化ビニリデン製の精密濾過膜であることが好ましい。
【0049】
次に、溶液成分を限外濾過膜処理する。限外濾過膜とは、一般的に細孔径1.5ナノメートルから250ナノメートルの範囲であって、分子量1,000〜200,000の範囲の水溶性高分子を非透過液として阻止することが可能な分離膜のことを指す。限外濾過膜は、糸状菌由来セルラーゼを回収できる分画分子量であればよく、好ましい分画分子量は1,000〜100,000Da、より好ましくは10,000〜30,000Daである。限外濾過膜の素材としては、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロースなどの素材の膜を使用することができるが、セルロースは、糸状菌由来セルラーゼによる分解を受けるため、PES、PVDFなどの合成高分子を素材とした限外濾過膜を使用することが好ましい。限外濾過膜形状は、チューブラー式、スパイラルエレメント、平膜などが好ましく使用できる。限外濾過膜の濾過は、クロスフロー方式、デッドエンド濾過方式が挙げられるが、ファウリングあるいはフラックスの面でクロスフロー濾過方式が好ましい。
【0050】
溶液成分を限外濾過膜に通じて濾過することにより、透過液として、糖液を得ることができる。得られる糖液は、糖液に本来含まれている固形物が固液分離によってほぼ完全に除去された液体である。一方、限外濾過膜に通じて濾過処理することで、非透過液側には、糖液中の着色物質、水溶性高分子が除去されるが、水溶性高分子に工程(1)で使用した糸状菌由来セルラーゼ成分が含まれる。回収される糸状菌由来セルラーゼ成分は、特に限定されないが、加水分解に使用した糸状菌由来セルラーゼ成分のうち、その全部の成分あるいは一部の成分に関して、非透過液として回収することができる。なお、非透過液には糖液由来の糖成分も含まれているため、こうした糖成分の回収を行うために、非透過液に加水して、さらに限外濾過膜に通じて濾過する操作を繰り返してもよい。
【0051】
工程(2)の結果として、従来技術よりも回収酵素に含まれる糸状菌由来セルラーゼ酵素量が顕著に増大する効果が見られ、特に糸状菌由来セルラーゼ成分のうち、セロビオハイドラーゼおよびキシラナーゼが高効率で回収される。回収された糸状菌由来セルラーゼは、セルロース前処理物の加水分解に再利用することによって、糸状菌由来セルラーゼの使用量を削減することが可能になる。回収された糸状菌由来セルラーゼは、単独で加水分解に再利用してもよく、また未使用の糸状菌由来セルラーゼと混合して再利用してもよい。また、場合によっては、セルロースの加水分解以外の用途に有効活用してもよい。
【0052】
工程(2)で得られた糖液は、さらにWO2010/067785号に記載される方法である、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜に通じて濾過することにより、非透過液として、糖成分が濃縮された糖濃縮液を得ることができる。
【0053】
ナノ濾過膜とは、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。
【0054】
逆浸透膜とは、RO膜とも呼ばれるものであり、「一価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般に定義される膜である。数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。
【0055】
本発明で使用されるナノ濾過膜あるいは逆浸透膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマー、ポリサルホンなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。
【0056】
本発明で用いるナノ濾過膜は、スパイラル型の膜エレメントが好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノ濾過膜エレメントであるGE Osmonics社製“GEsepa”、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜エレメントのNF99またはNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜エレメントのNF−45、NF−90、NF−200、NF−270またはNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分とする東レ株式会社製ナノ濾過膜のUTC60を含む同社製ナノ濾過膜エレメントSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610が挙げられ、より好ましくはNF99またはNF99HF、NF−45、NF−90、NF−200またはNF−400、あるいはSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610であり、さらに好ましくはSU−210、SU−220、SU−600またはSU−610である。
【0057】
本発明で使用される逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロース系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。
【0058】
本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである超低圧タイプのSUL−G10、SUL−G20、低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720Pの他、逆浸透膜としてUTC80を含む高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工株式会社製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GE製GE Sepa、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040、KOCH製TFC−HR、TFC−ULP、TRISEP製ACM−1、ACM−2、ACM−4などが挙げられる。
【0059】
ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を使用して、糖液を濃縮する効果として、糖液中の糖濃度を高めるとともに、透過液として発酵阻害物質を除去できるという利点を有する。ここでいう発酵阻害物質とは、後段発酵工程で発酵を阻害する糖以外の成分のことを指し、具体的には、芳香族化合物、フラン系化合物、有機酸、1価無機塩などを例示することができる。こうした代表的な、芳香族化合物およびフラン系化合物の例としては、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、バニリン酸、シリンガ酸、コニフェリルアルデヒド、クマル酸、フェルラ酸などを例示できる。有機酸の例としては、酢酸、ギ酸、などを例示することができる。糖濃縮液の糖濃度は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜の処理条件によって、50〜400g/Lの範囲で任意に設定することができ、糖濃縮液の用途等に応じて任意に設定すればよい。また前述した発酵阻害物質をより除去したい場合、糖液あるいは糖濃縮液に加水し、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜で目的の糖濃度となるまで濃縮すればよく、この際、透過液として発酵阻害物質を除去することができる。なお、逆浸透膜に比べ、ナノ濾過膜を使用した方が、発酵阻害物質の除去効果が高いため好ましい。ナノ濾過膜を使用するか、あるいは逆浸透膜を使用するかは、糖液に含まれる発酵阻害物質の濃度、あるいは後段発酵で影響を鑑みて選択すればよい。
【0060】
糖液をナノ濾過膜に通じて濾過して糖濃縮液を得る場合、ナノ濾過膜透過液をさらに逆浸透膜に通じて濾過することにより、非透過液として無機塩濃縮液を得ることができる。無機塩濃縮液は工程(1)で添加された水溶性無機塩を主成分とするものであるため、工程(1)において好ましく再利用されうる。
【0061】
[糖液の用途]
本発明により得られた糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を生育させることで、各種化学品を製造することができる。ここでいう発酵原料として微生物を生育させるとは、糖液に含まれる糖成分あるいはアミノ源を微生物の栄養素として利用し、微生物の増殖、生育維持を行うことを意味している。化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。こうした化学品は、糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産する。微生物によって生産可能な化学品の具体例として、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのアミン化合物を挙げることができる。さらに、本発明の糖液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産に適用することも可能である。こうした化学品の製造に使用する微生物に関しては、目的の化学品を効率的に生産可能な微生物であればよく、大腸菌、酵母、糸状菌、担子菌などの微生物を使用することができる。
【0062】
[装置構成]
本発明の糖液の製造方法を実施するための装置構成の一例を図3に示す。加水分解槽(2)は、セルロース前処理物を加水分解するためのものであり、40℃〜60℃の温度範囲にて保温可能な保温装置(1)、セルロース前処理物を投入する投入口(3)、セルロース前処理物を混合する攪拌装置(4)、水溶性無機塩を調製、保持および添加するための水溶性無機塩調製槽(5)有していればよい。加水分解物の固液分離を行うプレス濾過(7)は、加水分解物の投入口(6)、コンプレッサー(8)を有していればよい。プレス濾過の濾液は、プレス濾過濾液槽(9)に回収される。プレス濾過濾液槽(9)は、MFポンプ(12)を介して、精密濾過膜(11)と連結している。精密濾過膜(11)で分離された固形物は、プレス濾液槽(9)に濃縮され、排出ライン(10)にて排出される。精密濾過膜の濾液は、精密濾過膜濾液槽(13)に回収される。さらに精密濾過膜濾液槽は、UFポンプ(14)を介して、限外濾過膜(15)と連結しており、糸状菌由来セルラーゼを非透過液として分離・回収でき、糖液は限外濾過膜(15)の濾液として糖液回収ライン(16)より回収される。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(参考例1)セルロース前処理物の調製
1)セルロース前処理物1の調製(アンモニア処理)
セルロースとして、稲藁を使用した。前記セルロースを小型反応器(耐圧硝子工業製、TVS−N2 30ml)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、試料を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバス中にて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで真空引きし乾燥させた。これをセルロース前処理物として以下実施例に使用した。
【0065】
2)セルロース前処理物2の調製(水熱処理)
セルロースとして、稲藁を使用した。前記セルロースを水に浸し、撹拌しながら180℃で20分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は10MPaであった。処理後は溶液成分(以下、水熱処理液)と固形分に遠心分離(3000G)を用いて固液分離し、固形分をセルロース前処理物として以下実施例に使用した。
【0066】
(参考例2)糖濃度の測定
糖液に含まれるグルコースおよびキシロース濃度は、下記に示すHPLC条件で標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/分)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
【0067】
(参考例3)トリコデルマ由来セルラーゼの調製
トリコデルマ由来セルラーゼを以下の方法で調製した。
【0068】
[前培養]
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14(w/vol)、リン酸二水素カリウム0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるよう蒸留水に添加し、100mLを500mLバッフル付き三角フラスコに張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別にそれぞれ121℃で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80をそれぞれ0.01%(w/vol)添加した。この前培養培地にトリコデルマ・リーセイATCC68589を1×10個/mLになるように植菌し、28℃、72時間、180rpmで振とう培養し、前培養とした(振とう装置:TAITEC社製 BIO−SHAKER BR−40LF)。
【0069】
[本培養]
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、セルロース(アビセル)10%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14%(w/vol)、リン酸二水素カリウム 0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるよう蒸留水に添加し、2.5Lを5L容撹拌ジャー(ABLE社製 DPC−2A)容器に張り込み、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別にそれぞれ121℃で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80をそれぞれ0.1%添加し、あらかじめ前記の方法にて液体培地で前培養したトリコデルマ・リーセイATCC68589を250mL接種した。その後、28℃、87時間、300rpm、通気量1vvmにて培養を行い、遠心分離後、上清を膜濾過(ミリポア社製 ステリカップ−GV 材質:PVDF)した。この前述条件で調製した培養液に対し、βグルコシダーゼ(Novozyme188)をタンパク質重量比として、1/100量添加し、これをトリコデルマ由来セルラーゼとして、以下、実施例に使用した。
【0070】
(参考例)糸状菌由来セルラーゼの回収酵素量の測定方法
工程(2)で回収できる糸状菌由来セルラーゼの回収酵素量は、1)結晶セルロース分解活性、2)セロビオース分解活性、3)キシラン分解活性、の3種の分解活性(以下、活性値という。)を測定することにより定量した。
【0071】
1)結晶セルロース分解活性
酵素液に対し、結晶セルロースであるアビセル(Merc社製、Cellulose Microcrystalline)を1g/L、酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を100mMとなるよう添加し、50℃で24時間反応させた。反応液は1mLチューブで調製し、前記条件にて回転混和しながら反応を行った。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のグルコース濃度を測定した。グルコース濃度は、参考例2に記載の方法に準じて測定した。結晶セルロース分解活性は、生成したグルコース濃度(g/L)をそのまま活性量として使用し、回収酵素量の比較に使用した。
【0072】
2)セロビオース分解活性
酵素液に対し、セロビオース(和光純薬工業株式会社製)500mg/L、酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を100mMとなるよう添加し、50℃で0.5時間反応させた。反応液は1mLチューブで調製し、前記条件にて回転混和しながら反応を行った。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のグルコース濃度を測定した。グルコース濃度は、参考例2に記載の方法に準じて測定した。セロビオース分解活性は、生成したグルコース濃度(g/L)をそのまま活性量として使用し、回収酵素量の比較に使用した。
【0073】
3)キシラン分解活性
酵素液に対し、キシラン(Birch wood xylan、和光純薬工業株式会社製)10g/L、酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)を100mMとなるよう添加し、50℃で4時間反応させた。反応液は1mLチューブで調製し、前記条件にて回転混和しながら反応を行った。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のキシロース濃度を測定した。キシロース濃度は、参考例2に記載の方法に準じて測定した。キシロース分解活性は、生成したキシロース濃度(g/L)をそのまま活性量として使用し、回収酵素量の比較に使用した。
【0074】
(参考例)無機イオン濃度の測定
糖液に含まれるカチオンおよびアニオン濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
【0075】
1)カチオン分析
カラム:Ion Pac AS22(DIONEX社製)
移動相:4.5mM NaCO/1.4mM NaHCO(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
【0076】
2)アニオン分析
カラム:Ion Pac CS12A(DIONEX社製)
移動相:20mMメタンスルホン酸(流速1.0mL/分)
反応液:なし
検出方法:電気伝導度(サプレッサ使用)
温度:30℃。
【0077】
(比較例1)セルロース前処理物の加水分解
参考例1で調製したセルロース前処理物1および2(各0.5g)に蒸留水を加え、参考例3で調製したトリコデルマ由来セルラーゼ0.5mLを添加し、総重量が10gとなるようさらに蒸留水を添加した。さらに本組成物のpHが4.5〜5.3の範囲となるよう希釈硫酸あるいは希釈苛性ソーダで調整した。pHを調整した本組成物を枝付試験管に移し(東京理化器械株式会社製 φ30 NS14/23)、50℃にて24時間保温および攪拌し加水分解を行った(東京理化社製:小型メカニカルスターラー CPS−1000、変換アダプター、三方コック付添加口、保温装置 MG−2200)。加水分解物を遠心分離(3000G、10分)にて固液分離し、溶液成分(6mL)と固形物に分離した。得られた溶液成分の糖濃度(グルコースおよびキシロース濃度)は、参考例2記載の方法で測定した。また、溶液成分は、さらにマイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して濾過を行った。得られた濾液は、分画分子量10000の限外濾過膜(Sartorius stedim biotech社製 VIVASPIN 20 材質:PES)で濾過し、膜画分が1mLになるまで4500Gにて遠心した。蒸留水10mLを膜画分に添加し、再度膜画分が1mLになるまで4500Gにて遠心した。この後、膜画分から酵素を回収した。回収酵素の各活性は、参考例4に準じて測定した。
【0078】
(比較例2)酢酸ナトリウム(有機塩)を含むセルロース前処理物の加水分解1
参考例1で調製したセルロース前処理物1および2(各0.5g)に蒸留水を加え、酢酸ナトリウム5M(pH5.2)を0.2mL(最終濃度100mM、8.2g/L)をさらに加え、参考例3で調製したトリコデルマ由来セルラーゼ0.5mLを添加し、総重量が10gとなるようさらに蒸留水を添加した。前記、酢酸緩衝液の添加する操作以外は、比較例1と同じ手順で行い、糖濃度および回収できた各酵素活性を測定した。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
(実施例1)水溶性無機塩を添加するセルロース前処理物の加水分解1
参考例1で調製したセルロース前処理物1(0.5g)に蒸留水を加え、水溶性無機塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム)を、それぞれ最終濃度5g/L、10g/L、25g/L、35g/L、50g/L、100g/Lになるように加え、参考例3で調製したトリコデルマ由来セルラーゼ0.5mLを添加し、総重量が10gとなるようさらに蒸留水を添加した。前記、酢酸緩衝液の添加する操作以外は、比較例1と同じ手順で行い、糖濃度および回収できた各酵素活性を測定した。
【0082】
各種水溶性無機塩の添加量と糖生成量との関係を表4、表5に示す。水溶性無機塩添加35g/Lまでは、グルコースおよびキシロースの生成量は、比較例1および2(表2および3)と同じであるが、50g/L以上になると生成糖が減少することが判明した。これは、水溶性無機塩濃度が高すぎるため、酵素反応が阻害されたためと考えられる。一方、5〜35g/Lの範囲では、大きな生成糖の減少は確認されなかった。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
次に、水溶性無機塩を添加し加水分解を行い、得られた溶液成分より酵素を回収した結果を表6〜8に示す。表5および表6に示すように、セロビオース分解活性およびキシラン分解活性は、水溶性無機塩濃度50g/L以上で活性が低下することが判明した。その一方で、表7に示すように、水溶性無機塩濃度5〜35g/Lの範囲で、キシラン分解活性で1.2倍以上、結晶セルロース分解活性で2倍以上、高まることが判明した。また、水溶性無機塩濃度5〜35g/Lの範囲でのセロビオース分解活性は大きな変化は確認されなかったが、水溶性無機塩濃度が50g/L以上になると活性は低下することが判明した。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
(実施例2)水溶性無機塩を添加するセルロース前処理物の加水分解2
セルロース前処理物2(0.5g)に関して同様の蒸留水を加え、実施例1と同じ手順で加水分解を実施した。得られた糖濃度および回収できた各酵素活性を測定した。各種水溶性無機塩の添加量と糖生成量との関係を表9、表10に示す。水溶性無機塩添加35g/Lまでは、比較例1および2(表2および3)と同じであるが、50g/L以上になるとグルコースおよびキシロースの生成量が減少することが判明した。これは、水溶性無機塩濃度が高すぎるため、酵素反応が阻害されたためと考えられる。一方、5〜35g/Lの範囲では、大きな生成糖の減少は確認されなかった。
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
次に、水溶性無機塩を添加し加水分解を行い、得られた溶液成分より酵素を回収した結果を表11〜13に示す。セロビオース分解活性およびキシラン分解活性は、水溶性無機塩添加量50g/L以上では回収酵素活性が低下することが判明した。その一方で、水溶性無機塩5〜35g/Lの範囲で、セロビオース分解活性で、2倍以上、キシラン分解活性で1.2倍以上、結晶セルロース分解活性で2倍以上、高まることが判明した。一方、水溶性無機塩添加量が50g/L以上になると活性は低下することが判明した。
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
【表13】
【0096】
(実施例3)水溶性無機塩としての海水利用
実施例1および2において、水溶性無機塩5g/L〜35g/L添加することにより回収酵素活性が高まることが確認できた。そこで、水溶性無機塩を含む水溶液として「海水」にて代替できるか検討した。海水は、神奈川県三崎漁港付近で採取した海水(pH8.3、固形物溶解量3.2%)を使用し、これをマイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して濾過を行ったものを使用した。なお海水のpH調整には硫酸を使用し、pH5.0(海水1L当たり硫酸50mg添加)に調整した。この海水(pH5)の水溶性無機塩濃度を参考例に準じて測定したところ、塩化ナトリウム25g/L、塩化マグネシウム3.2g/L、硫酸マグネシウム2g/Lであることが判明した。すなわち、実施例3で使用した海水は、水溶性無機塩を30.2g/Lの濃度で含むことが分かった。
【0097】
次に、前述の海水(pH5)を水溶性無機塩として使用して、参考例1で調製したバイオマス前処理物1および2の加水分解を行った。バイオマス前処理物1および2(0.5g)に蒸留水および海水(pH5)を加え、参考例3で調製したトリコデルマ由来セルラーゼ0.5mLを添加し、総重量が10gとなるようさらに蒸留水を添加した。海水は、最終濃度1/2希釈、すなわち水溶性無機塩濃度で15.1g/Lとなるように添加した。pH調整は、海水のpHを予め5に調整してあるので実施の必要はなかった。加水分解、固液分離、は、比較例1と同じ手順で実施した。得られた溶液成分の糖濃度(グルコースおよびキシロース濃度)は、参考例2記載の方法で測定した。また、溶液成分は、さらにマイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して濾過を行い、比較例1と同じ手順で、回収酵素を得た。回収酵素の各活性は、参考例4に準じて測定した。その結果、表14、表15に示すように、比較例1に対し、海水の添加により、セロビオース分解活性、結晶セルロース分解活性、およびキシラン分解活性は海水添加においても向上することが判明した。
【0098】
【表14】
【0099】
【表15】
【0100】
(実施例4)加水分解工程における水溶性無機塩添加のタイミング
水溶性無機塩の添加のタイミングを決定するために、セルラーゼ添加前、セルラーゼ添加直後、セルラーゼ添加後23時間、に関して糖生成量、回収酵素活性を比較した。水溶性無機塩は、塩化ナトリウムを使用し、添加濃度は10g/Lで実施した。その結果、表16に示すように、セルラーゼ添加前あるいは添加直後(例えば反応0時間)において、水溶性無機塩を添加する方が回収酵素活性、特に結晶セルロース分解活性を高める点で好ましいことが判明した。
【0101】
【表16】
【0102】
(実施例5)ナノ濾過膜による糖濃縮および1価無機塩の除去
ナノ濾過膜による糖濃縮および1価無機塩の除去を検討するために、糖液の大量調製を行った。糖液の大量調製は、セルロース前処理物1(1kg)にトリコデルマ由来セルラーゼ20gを添加し、さらに塩化ナトリウムを最終濃度10g/Lとなるように添加後、総重量が20kgとなるようさらに蒸留水を添加した。さらに本組成物のpHが4.5〜5.3の範囲となるよう希釈硫酸あるいは希釈苛性ソーダで調整した。この液を液温が45〜50℃を保つよう保温しながら、かつpHが4.5〜5.3の範囲を保つように希釈硫酸、希釈苛性ソーダを添加して24時間酵素とバイオマス前処理物2を反応させた。次に得られた酵素糖化スラリー液10Lを用いて以下の手順でプレス濾過を実施した。プレス濾過は小型フィルタプレス装置(薮田産業製フィルタプレス MO−4)を用いた。ろ布はポリエステル製織布(薮田産業製 T2731C)を使用した。スラリー液10Lを小型タンクの中に入れて下から圧縮空気で曝気しながら液投入口を開いてエアーポンプ(タイヨーインタナショナル製 66053−3EB)で徐々に濾室内にスラリー液を投入した。次に濾室に付設されているダイヤフラムを膨らませて圧搾工程を行った。徐々に圧搾圧力を上昇させていき、0.5MPaまで上昇させてから約30分間放置して濾液を回収した。得られた溶液成分の総量は9.0Lであった。残りの液成分については装置デッドボリュームのために損失した。得られた溶液成分の糖濃度を測定したところグルコース濃度が16g/L、キシロース濃度が10g/Lであった。
【0103】
次に、固液分離の溶液成分を限外濾過膜に通じて濾過し、回収酵素と糖液成分に分離した。回収酵素は、分画分子量10000の限外濾過膜(GE製 SEPA PWシリーズ 機能面材質:ポリエーテルスルホン)の平膜をセットした小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)を使用して実施した。原水側流速2.5L/分、膜フラックスが0.1m/Dと一定になるように操作圧力を制御しながら9Lのうち5Lを濾過した。
【0104】
得られた糖液1Lを使用してナノ濾過膜濃縮を実施した。ナノ濾過膜はDESAL−5Lを使用し、このナノ濾過膜を小型平膜濾過装置(GE製 Sepa(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を3MPaで濾過処理を行った。この処理により、0.2Lのナノ濾過膜濃縮液および0.8Lの透過液を得た(5倍濃縮)。このときのグルコース、キシロース、ナトリウムイオン、塩化物イオン濃度は表17に示す通りであり、ナノ濾過膜の糖濃縮により糖濃度に対する塩化ナトリウム濃度を低減できることが判明した。
【0105】
【表17】
【0106】
(実施例6)ナノ濾過膜による糖濃縮および1価無機塩の除去2(透析濾過)
実施例6で得られたナノ濾過膜の濃縮液0.3LにRO水0.3Lを加水し、合計0.6Lに調整し、さらにこの溶液をナノ濾過膜に通じて濾過し、0.3Lの濃縮液(ナノ濾過膜濃縮液2)と0.3Lの透過液(ナノ濾過膜透過液2)を得た(2倍濃縮)。このときのグルコース、キシロース、ナトリウムイオン、塩化物イオン濃度は表18に示す通りであり、ナノ濾過膜濃縮液をさらにナノ濾過膜に通じて濾過することにより、1価無機塩濃度をさらに低減できることが判明した。
【0107】
【表18】
【0108】
(実施例7)逆浸透膜による無機塩濃縮液の回収
実施例5で得られたナノ濾過膜の透過液0.8LをRO膜処理に通じて、無機塩濃縮液の回収を行った。RO膜は架橋全芳香族系逆浸透膜“UTC80”(東レ株式会社製)を使用し、このRO膜を小型平膜濾過装置(GE製 “Sepa”(登録商標) CF II Med/High Foulant System)にセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプの圧力を3MPaで濾過処理を行った。この処理により0.64Lの透過液を得た(5倍濃縮)。このときのグルコースおよびキシロース、ナトリウムイオン、塩化物イオン濃度は表19に示す通りであり、ナノ濾過膜の透過液として含まれる無機塩をさらに逆浸透膜に通じて濾過することにより、無機塩濃縮液を得られることが判明した。また透過液としては、無機塩および糖を含まない純水を得ることができた。
【0109】
【表19】
【0110】
(実施例8)希硫酸処理セルロース前処理物の調製、アンモニア中和、糸状菌セルラーゼによる加水分解
セルロース含有バイオマスとしてサトウキビバガスを希硫酸水(1wt%、10g/L、)に浸し、撹拌しながら190℃で10分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は10MPaであった。処理後は小型フィルタプレス装置(薮田産業製フィルタプレス)を用いて固液分離し、溶液成分(以下、硫酸処理液という。)(0.5L)と固形分に分離した。固形物の固形物濃度は、約50%であった。固形物は、さらにRO水に再度懸濁させ、再度小型フィルタプレスを行うことで、固形物中に含まれる硫酸成分の除去を行った。この硫酸除去を行って得られた固形物を、以下、セルロース前処理物3と呼ぶ。
【0111】
次に、0.5Lの硫酸処理液に対し、アンモニア水(28%溶液、和光純薬工業株式会社製)6mLを徐々に添加し、pH7付近まで中和を行った。この際、硫酸イオンとアンモニウムイオンとの中和反応にて、水溶性無機塩である硫酸アンモニウム((NHSO)約13gが生成したものと推定できる。中和後の硫酸処理液に関して、糖成分を分析したところ、キシロースが23g/L、グルコースが1g/L含まれていた。以下、これを中和C5糖液と呼ぶ。
【0112】
次に、セルロース前処理物3と中和C5糖液の混合を行った。セルロース前処理物3の固形物1gに対して中和C5糖液を10mL添加し混合した(固形物濃度10wt%)。混合後、希硫酸および水酸化ナトリウム水溶液を使用して、pH5に調製した。その後、セルラーゼを添加して、加水分解反応を行った。セルラーゼは、ジェネンコア社の“アクセルレースDuet”を購入し使用した。添加量は、前記セルラーゼを0.2mL添加した。反応は比較例1と同じ条件で行い、50℃で24時間混合し実施した。得られた加水分解物に含まれる糖濃度(グルコース・キシロース)を表2に示す。
【0113】
次に、前記加水分解物より比較例1と同じ条件で酵素回収を行った。回収酵素の各活性(セロビオース分解活性、アビセル分解活性、キシラン分解活性)は、参考例4に準じて測定した。回収酵素活性を表20に示す。
【0114】
(比較例3)希硫酸処理セルロース前処理物の調製、水酸化カルシウム中和、糸状菌由来セルラーゼによる加水分解
前記実施例8との比較のため、中和を水酸化カルシウムで行った場合の比較例を示す。なお、水酸化カルシウムで中和を行うことにより、硫酸イオンとカルシウムイオンの塩である硫酸カルシウム(CaSO)が生成する。硫酸カルシウム(石膏)は、水に対する溶解度が約2g/L程度(25℃)であるため、本比較例における加水分解は、水溶性無機塩を添加した加水分解ではない。
【0115】
本比較例では、硫酸処理液の中和に際し、アンモニア水ではなく、硫酸カルシウム粉末を添加し、pH7付近に調製すること、中和後に生成した硫酸アンモニウムを遠心にて除去すること以外は、実施例7に準じて実施した
【0116】
次に、0.5Lの硫酸処理液に対し、水酸化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を3.7g、徐々に添加し、pH7付近まで中和を行った。この際、硫酸イオンとカルシウムイオンとの中和反応にて、水不溶性無機塩である硫酸カルシウム約7gが生成したものと推定できる。中和後の硫酸処理液は、さらに遠心分離(3000G、20分)を行い、水不溶性無機塩である硫酸カルシウムを除去し、その上澄み液を得た。この上済み液に関して、糖成分を分析したところ、キシロースが22g/L、グルコースが1g/L含まれていた。以下、これを中和C5糖液(比較例2)と呼ぶ。
【0117】
次に、セルロース前処理物3と中和C5糖液の混合(比較例2)を行い、さらにセルラーゼを添加して、実施例と同じ手順で加水分解反応を行った。得られた加水分解物に含まれる糖濃度(グルコース・キシロース)を表20に示す。
【0118】
次に、加水分解物より比較例1と同じ条件で酵素回収を行った。回収酵素の各活性(セロビオース分解活性、アビセル分解活性、キシラン分解活性)は、参考例4に準じて測定した。回収酵素活性を表20に示す。その結果、実施例8と比較して糸状菌由来セルラーゼによる加水分解により生成する糖濃度は大きく差がないことが判明した。一方で、回収酵素活性に関しては、実施例8のアンモニアを使用した中和、すなわち硫酸アンモニウム存在下で加水分解を行う方がより向上することが判明した。
【0119】
【表20】
【0120】
(参考例6)フミコラ属セルラーゼの調製
フミコラ属セルラーゼは、フミコラ・グリセア(Humicola grisea NBRC31242)を参考例3の方法と同じ前培養、本培養にて調製した。この前述条件で調製した培養液に対し、βグルコシダーゼ(Novozyme188)をタンパク質重量比として、1/100量添加し、これをフミコラ属セルラーゼとして、以下の実施例および比較例に使用した。
【0121】
(比較例4)セルロース前処理物3の加水分解
実施例8のセルロース前処理物3を使用して、比較例1の記載に準じて、水溶性無機塩を添加しない場合の加水分解と酵素の回収を実施した。その際、糸状菌由来セルラーゼとして、参考例3で調製したトリコデルマ属由来セルラーゼ、および参考例6で調製したフミコラ属由来セルラーゼを使用して加水分解を実施した。糖生成量と回収酵素活性を表21に示す。
【0122】
【表21】
【0123】
(実施例9)水溶性無機塩を添加したセルロース前処理物の加水分解3
実施例8で調製したセルロース前処理物3(0.5g)に蒸留水を加え、実施例1と同じ手順で加水分解を実施した。得られた糖濃度および回収できた各酵素活性を測定した。各種水溶性無機塩の添加量と糖生成量との関係を表23および24に示す。水溶性無機塩添加35g/Lまでは比較例4(表21)と同じであるが、50g/L以上になるとグルコースおよびキシロースの生成量が減少することが判明した。これは、水溶性無機塩濃度が高すぎるため、酵素反応が阻害されたためと考えられた。一方、5〜35g/Lの範囲では、大きな生成糖の減少は確認されなかった。
【0124】
【表22】
【0125】
【表23】
【0126】
次に、水溶性無機塩を添加し加水分解を行い、得られた溶液成分より酵素を回収した結果を表24〜26に示す。セロビオース分解活性およびキシラン分解活性は、水溶性無機塩添加量50g/L以上では回収酵素活性が低下することが判明した。その一方で、水溶性無機塩5〜35g/Lの範囲で、セロビオース分解活性で、2倍以上、キシラン分解活性で1.2倍以上、結晶セルロース分解活性で2倍以上、高まることが判明した。但し、水溶性無機塩の添加量が50g/L以上になると活性は低下することが判明した。
【0127】
【表24】
【0128】
【表25】
【0129】
【表26】
【0130】
(実施例10)水溶性無機塩を添加したセルロース前処理物の加水分解4
実施例8で調製したセルロース前処理物3(0.5g)に蒸留水を加え、参考例6記載のフミコラ属由来セルラーゼを使用する以外は、実施例1と同じ手順で加水分解を実施した。得られた糖濃度および回収できた各酵素活性を測定した。各種水溶性無機塩の添加量と糖生成量との関係を表28、表29に示す。水溶性無機塩添加35g/Lまでは、比較例4(表21)と同じであるが、50g/L以上になるとグルコースおよびキシロースの生成量が減少することが判明した。これは、水溶性無機塩濃度が高すぎるため、酵素反応が阻害されたためと考えられる。一方、5〜35g/Lの範囲では、大きな生成糖の減少は確認されなかった。
【0131】
【表27】
【0132】
【表28】
【0133】
次に、水溶性無機塩を添加し加水分解を行い、得られた溶液成分より酵素を回収した結果を表29〜31に示す。セロビオース分解活性およびキシラン分解活性は、水溶性無機塩添加量50g/L以上では回収酵素活性が低下することが判明した。その一方で、水溶性無機塩5〜35g/Lの範囲で、セロビオース分解活性で、2倍以上、キシラン分解活性で1.2倍以上、結晶セルロース分解活性で2倍以上、高まることが判明した。但し、水溶性無機塩添加量が50g/L以上になると活性は低下することが判明した。
【0134】
【表29】
【0135】
【表30】
【0136】
【表31】
【0137】
(実施例11)糖液を発酵原料とするエタノール発酵
実施例6のナノ濾過膜濃縮液2を発酵原料として使用して、酵母(Saccharomycecs cerevisiae OC−2:ワイン酵母)によるエタノール発酵試験を行った。前述酵母をYPD培地(2%グルコース、1%酵母エキス(Bacto Yeast Extract BD社製)、2%ポリペプトン(日本製薬株式会社製)にて、1日間25℃で前培養を行った。次に、得られた培養液を、pH6に水酸化ナトリウムにて調整したナノ濾過膜濃縮液糖液(グルコース濃度74g/L)に対し、1%(20mL)となるように添加した。微生物を添加後、25℃で2日間インキュベートした。この操作で得られた培養液に含まれるエタノール蓄積濃度は、ガスクロマトグラフ法(Shimadzu GC−2010キャピラリーGC TC−1(GL science) 15 meter L.*0.53mm I.D.,df1.5μmを用いて、水素塩イオン化検出器により検出・算出。)により定量した。その結果、培養液中には24g/Lのエタノールが含まれることが確認できた。すなわち、本発明により得られる糖液を発酵原料とすることによりエタノールが製造できることが確認できた。
【0138】
(実施例12)糖液を発酵原料とする乳酸発酵
実施例6のナノ濾過膜濃縮液2を発酵原料として使用して、ラクトコッカス・ラクティスJCM7638株(乳酸菌)による乳酸発酵試験をおこなった。前述乳酸菌をYPD培地(2%グルコース、1%酵母エキス(Bacto Yeast Extract/BD社)、2%ポリペプトン(日本製薬株式会社製)にて、1日間37℃で前培養を行った。次に、得られた培養液を、pH7に水酸化ナトリウムにて調整したナノ濾過膜濃縮液糖液(グルコース濃度74g/L)に対し、1%(20mL)となるように添加し、ラクトコッカス・ラクティスJCM7638株を24時間、37℃の温度で静置培養した。培養液に含まれるL−乳酸濃度を以下条件で分析した。
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
【0139】
分析の結果、L−乳酸が65g/L蓄積していることが確認され、本発明により得られる糖液を発酵原料とすることにより乳酸を製造できることが確認できた。
【産業上の利用の可能性】
【0140】
本発明の糖液の製造方法は、セルロースを含むバイオマスから化学品を製造するための発酵原料となる糖液の製造に利用できる。また、本発明で製造した糖液は、各種化学品の発酵原料として使用することができる。
図1
図2
図3