(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の液体用紙容器の一例に用いる積層体を模式的に断面で示した説明図である。
【0016】
本例の液体用紙容器に用いる積層体100は、
図1のように、液体用紙容器の最外層側から、外側熱可塑性樹脂層1、紙層2、接着樹脂層3、バリア層4、接着層5、内側熱可塑性樹脂層6が、順次積層されている。
【0017】
また、必要に応じて、外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設けてもよい。あるいは、紙層2の外面に印刷層を設けて、その上に、外側熱可塑性樹脂層1を設けても良い。
【0018】
本例の液体用紙容器に用いる積層体100を構成する外側熱可塑性樹脂層1は、ポリエチレンに、帯電防止樹脂を5重量%以上、99重量%以下の配合割合になるようにブレンドした樹脂からなっている。また、外側熱可塑性樹脂層1として、最外層側の帯電防止樹脂をブレンドした樹脂の紙層側に、更に、ポリエチレン層を設けた多層にして設けても良い。
【0019】
ブレンドするポリエチレンや、ポリエチレン層のポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、または、直鎖状低密度ポリエチレンなどが好ましく用いられる。これらのポリエチレンには、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなどの各種添加剤を添加してもよい。
【0020】
帯電防止樹脂には、カリウムイオンアイオノマーを用いることができる。カリウムイオンアイオノマーとしては、MFR(JIS−K7210)が、0.8g/10minで、
密度(JIS−K7112)が、0.965g/cm
3で、ビカット軟化点(JIS−K7206)が、60℃のものが、好ましく使用することができる。
【0021】
また、破断点抗張力と、破断点伸び(JIS−K7162、試験片1BA 2mm)は、それぞれ、28MPaと260%であり、曲げ剛性率(JIS−K7106)が、280MPa、硬度(JIS−K7215)が、シェアAで96、シェアBで60、また、シート表面抵抗(23℃50%RH)が<1.0×10
7Ω/□のものが使用できる。
【0022】
紙層2としては、通常、ミルクカートン原紙等の紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量80〜500g/m
2の範囲が好ましく用いられ、特に坪量80〜200g/m
2の紙がヒートシールの安定性があってよい。また、密度は、0.6〜1.1g/cm
3のものが好適に用いられる。
【0023】
接着樹脂層3は、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂をTダイから押し出してなる層である。厚みは3μmから60μmの範囲が通常用いられる。3μm未満では十分な接着強度が得られない。60μmより厚くしても接着強度はほとんど強くならず、押出し機の押出し能力に限界があり加工速度が遅くなる。
【0024】
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂やポリプロピレン、あるいは、エチレン・アクリル酸共重合体やエチレン・メタクリル酸共重合体などのエチレン・α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチルやエチレン・アクリル酸エチルやエチレン・メタクリル酸メチルやエチレン・メタクリル酸エチルなどのエチレン・α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、あるいは、亜鉛イオンで架橋したアイオノマー、エチレン・無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン・アクリル酸エチル・無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体、あるいは、これらから選ばれる2種以上の混合物などにより設けられる。
【0025】
バリア層4には、基材フィルムにアルミニウム箔が積層された積層フィルム、あるいは、基材フィルムにアルミニウム、スズなどの金属や、シリカ、アルミナなどの金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムが用いられる。
【0026】
バリア層4に用いる基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムが用いられる。特にポリエチレンテレフタレートの樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、2軸延伸した樹脂フィルムが、貼り合わせ加工や、蒸着加工時に、伸縮が少ないので好ましく用いられる。
【0027】
アルミニウム箔の厚さは、5〜15μmが好ましく、また、蒸着層の厚みは、5〜100nmが好ましい。また、基材フィルムは、6〜25μmのものが好ましく用いられる。積層体としてバリア層4を貼り合わせるとき、アルミニウム箔や、蒸着層は、接着樹脂層3側にしても、反対側にしてもよい。
【0028】
接着層5は、押し出し樹脂層であってもよいし、また、ラミネート用接着剤であってもよい。押し出し樹脂としては、接着樹脂層3と同様に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。厚みは10μmから40μmの範囲が通常用いられる。また、ラミネート用接着剤としては、ウレタン系2液硬化型のドライラミネート用接着剤(無溶剤型接着剤を含む)を用いることができる。乾燥塗布量は、1.0〜5.0μmが好ましい。
【0029】
内側熱可塑性樹脂層6としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂や、あるいは、ポリプロピレンを使用することができる。厚みは、15μmから80μmの範囲が通常用いられる。
【0030】
必要に応じて外側熱可塑性樹脂層1の外面、あるいは、紙層2の外面に設けられる印刷層は、周知のインキを用いてグラビア印刷やオフセットUV印刷、フレキソ印刷等の方法で施すことの出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。
【0031】
外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設けるには、インキの密着を良くするために通常は外側熱可塑性樹脂層1の外面にコロナ処理等の易接着処理を行うことが好ましい。
【0032】
以上、第1の実施形態の液体用紙容器に用いる積層体100について説明したが、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体は、液体用紙容器としての用途を考慮し、液体用紙容器として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、上記の構成に、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0033】
図2は、本発明の液体用紙容器の他の例に用いる積層体を模式的に断面で示した説明図である。
【0034】
バリア性が必要でなければ、
図2の断面図のように、バリア層4を設けない積層体200を用いても良い。この場合、紙層2に接着樹脂層3を介して、フィルム状の内側熱可塑性樹脂層6を積層するか、あるいは、紙層2に内側熱可塑性樹脂層6を直接押し出して積層すればよい。
【0035】
以下、本例の液体用紙容器に用いる積層体100の製造方法について説明する。
【0036】
まず、バリア層4と内側熱可塑性樹脂層6とを、接着層5を介して積層して内装フィルムを作成する。
【0037】
紙層2を用意し、紙層2の片面に接着樹脂層3をTダイから押し出して設け、内装フィルムのバリア層4が設けられた面を接着樹脂層3の溶融樹脂面に圧着して積層し、続いて、紙層2の反対面に外側熱可塑性樹脂層1の樹脂をTダイから押し出して、製膜しながら積層して設けて本例の液体用紙容器に用いる積層体100を製造する。
【0038】
外側熱可塑性樹脂層1の押し出し積層時の製膜温度(ダイ下温度)は、280℃以下が好ましい。この温度にすることによって、帯電防止樹脂の帯電防止機能が低下することがない。また、樹脂の分解から発生する低分子量物質による臭気が抑えられる。
【0039】
バリア層4と接着樹脂層3との接着を強くするために、コロナ処理、オゾン処理、アンカー剤塗布などを行ってもよい。
【0040】
外側熱可塑性樹脂層1の外面に印刷層を設ける場合は、外側熱可塑性樹脂層1の面にコロナ処理を行う。コロナ処理は、外側熱可塑性樹脂層1をTダイから押し出して設けた直後に、行うことが好ましい。この後、印刷機で外側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面に印刷層を設けることができる。
【0041】
以下、本発明の液体用紙容器の形状などについて説明する。
図3は、本発明の液体用紙容器の形状の一例を模式的に示した説明図、
図4は、本発明の液体用紙容器の形状の一例のブランクを模式的に示した説明図である。
【0042】
本例の液体用紙容器101を製造するには、まず、積層体100などの本発明の液体用紙容器に用いる積層体を、折罫を押圧して設けると同時に打ち抜いて、
図4のような、本例の液体用紙容器101用のブランク102を作成する。このブランク102を折罫に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を加熱融着することによって本例の液体用紙容器101が製造される。
【0043】
本例の液体用紙容器101は、
図3のように、正面板22、右側面板23とそれぞれに対向した反対側に、背面板24、左側面板21の四枚の面板が順次設けられた四角筒状の胴部20と、胴部20の上方の開口端部に形成された上面が傾斜した切妻屋根状の頂部10と、胴部20の下方の開口端部に形成された底部30とからなっている。
【0044】
頂部10には、正面板22、背面板24の上方にそれぞれ連設された一組の屋根板11、11が設けられ、左側面板21、右側面板23の上方にはそれぞれに連設された三角形状の折り込み片12、12が設けられ、折り込み片12、12に連設されると共に、屋根板11,11に連設された一対の折り返し片13、13、13、13、が設けられている。
【0045】
折り込み片12、12が内方に折り込まれていて、一対の折り返し片13、13、13、13が、折り込み片12、12との境界で外側に折り返されて、折り返し片13、13、13、13が連設している屋根板11、11を傾斜させ、傾斜した屋根板11、11の裏面に折り返し片13、13、13、13の裏面が対向している。
【0046】
屋根板11、11と折り返し片13、13、13、13の上方にトップシール部14が形成され閉鎖されている。また、正面板22の上方の屋根板11には、内容物を注ぎ出せるように口栓15が設けられている。
【0047】
図4は、本発明の液体用紙容器の一例に用いるブランクを模式的に示した説明図である。尚、図で一点鎖線での表記は折罫をしめす。
【0048】
液体用紙容器101のブランク102は、
図4に示すように、胴部20を形成する、左側面板21、正面板22、右側面板23、背面板24の四枚の四角形状の面板が順次設けられ、左側面板21の左側端縁には、貼着板25が設けられている。貼着板25は頂部10から底部30まで、それぞれ延設されている。
【0049】
胴部20の上方の頂部10には、正面板22、背面板24の上方に長方形状の屋根板11、11がそれぞれ連設されていて、正面板22の上方の屋根板11には、口栓15に連通して内容物を注ぎ出すための、口栓孔16が設けられている。
【0050】
左側面板21、右側面板23の上方には、三角形状の折り込み片12、12がそれぞれ連設されている。左側面板21、右側面板23から折り込み片12、12の三角形の頂点までの長さは、正面板22、背面板24の横幅の半分より長く、折りこんだときに、屋根板11、11が平面にならず、傾斜した切妻屋根型になるように形成されている。
【0051】
三角形状の折り込み片12、12の上の2辺には、折り返し片13、13、13、13が連設されていて、折り返し片13、13、13、13は、それぞれ、屋根板11、11に接続するようになっている。更に、屋根板11、11と折り返し片13、13、13、13の上方には、トップシール部14が設けられている。
【0052】
屋根板11、11の上方のトップシール部14の高さは、折り返し片13、13、13
、13の上方のトップシール部14の高さより高く形成されていて、製函したときにその高い部分では、屋根板11、11の上方のトップシール部14どうしが直接シールされるようになっている。
【0053】
胴部20の下方の底部30は、頂部10と類似の形状をしていて、正面板22、背面板24の下方に底板31、31がそれぞれ連設されていて、左側面板21、右側面板23の下方には、三角形状の底部折り込み片32、32が三角形の頂点を下にして、それぞれ連設されている。
【0054】
左側面板21、右側面板23から底部折り込み片32、32の逆三角形の頂点までの長さは、正面板22、背面板24の横幅の半分と略等しく、折りこんだときに、底板31、31が略平面になるように形成されている。
【0055】
三角形状の底部折り込み片32、32の下の2辺には、底部折り返し片33、33、33、33が連設されていて、底部折り返し片33、33、33、33は、それぞれ、底板31、31あるいは貼着板25に接続している。更に、底板31、31と底部折り返し片33、33、33、33の下方には、ボトムシール部34が設けられている。
【0056】
このブランク102を用いて、液体用紙容器101を成形するには、左側面板21と正面板22の間の境界、及び、右側面板23と背面板24の間の境界を山折りする。このとき、境界の延長上の頂部10、底部30における境界も同時に山折りする。
【0057】
そして、貼着板25の表側を、背面板24及び背面板24の上下に位置する頂部10と底部30の裏側にシールさせる。尚、あらかじめ貼着板25の端縁部は、紙層2が内容物に触れないように、端面保護をおこなうことが望ましい。
【0058】
端面保護の方法は、内層の内側熱可塑性樹脂層6を残して、紙層2などの外層側を削り取って、削り残された内層の熱可塑性樹脂層側を外層側に折り返すスカイブヘミング法や、エッジプロテープを端面が覆われるように貼る方法など、いずれの方法でも構わない。
【0059】
貼着板25をシールさせたら、正面板22と右側面板23の間の境界およびその延長線状の境界を山折りし、背面板24に貼着している貼着板25と左側面板21の間の境界およびその延長線状の境界を山折りし、左側面板21、正面板22、右側面板23、背面板24の四枚の面板からなる四角筒状の胴部20を形成する。
【0060】
次に、底部30を成形する。まず、底部折り込み片32、32を左側面板21、右側面板23の境界で内方に折り込み、底部折り返し片33、33、33、33を底部折り込み片32、32との境界で外側に折り返し、底板31、31を正面板22、背面板24の境界で山折りして、底部折り返し片33、33、33、33の裏面をそれぞれ底板31、31の裏面に対向して接触するようにし、ボトムシール部34をシールし、シールされたボトムシール部34を倒して底板31に密着させ、底部30を形成する。
【0061】
胴部20と底部30が形成された液体用紙容器101の口栓孔16に口栓15を溶着し、内容物を充填する。続いて、折り込み片12、12を左側面板21、右側面板23の境界で内方に折り込み、折り返し片13、13、13、13を折り込み片12、12との境界で外側に折り返し、屋根板11、11を正面板22、背面板24の境界で山折りして、折り返し片13、13、13、13の裏面をそれぞれ屋根板11、11の裏面に対向して接触するようにし、トップシール部14をシールして、頂部10を形成して、内容物が充填された、
図3のような、頂部が切り妻屋根型の本例の液体用紙容器101が完成する。
【0062】
図5は、本発明の液体用紙容器の形状の他の例を模式的に示した説明図である。
【0063】
図5(A)は、本発明の液体用紙容器の形状の他の例で、頂部が平らな平屋根型の液体用紙容器である。この液体用紙容器は、頂部10を底部30と同じように、左側面板21、右側面板23から折り込み片12、12の三角形の頂点までの長さを、正面板22、背面板24の横幅の半分と略等しくし、折りこんだときに、屋根板11、11が略平面になるように形成されている。
【0064】
図5(B)は、本発明の液体用紙容器の形状のさらに他の例で、頂部が片屋根型の液体用紙容器である。左側面板21と右側面板23の上辺を前下がりに斜めに形成して、正面板22側の屋根板11が前下がりになるように、また、背面板24の屋根板11が平らになるようにし、トップシール部14を背面板24側に倒した液体用紙容器である。これらの平屋根型の液体用紙容器と片屋根型の液体用紙容器は、妻屋根型の液体用紙容器101と同様にして作ることができる。
【0065】
図5(C)は、紙カップの容器本体に平坦な蓋材を熱溶着した液体用紙容器である。本例の液体用紙容器の容器本体の紙カップは、胴部材41と底部材42からなり、胴部材41と底部材42は、積層体100などの本発明の液体用紙容器に用いる積層体からなっている。
【0066】
筒状にした胴部材41の下端に、円形の底部材42の周縁部を下方に起立させて差込み、起立した部分を覆うように、胴部材41の下端を内方に折り曲げて、接合して環状脚部43を形成し、胴部材41の上端を外側に向けて巻き込みトップカール部44を形成し、容器本体の紙カップを成形する。
【0067】
そして、この容器本体である紙カップのトップカール部44の上端に蓋材45をシールし液体用紙容器としたものである。蓋材45は、同様な積層体からなっていってもよいし、紙層を用いない構成の積層体からなっていてもよい。
【0068】
図5(D)は、天地に環状脚部を設けた紙カップタイプの液体用紙容器である。
図5(C)の紙カップと異なり、胴部材41と底部材42の他に天部材46も用いて、天地に環状脚部47、43を設けている。そして、天部材46には、開口部48が設けられていて、開口部48をふさぐタブ材49で密封されている。
【0069】
以上、本発明の液体用紙容器の形状について、例示したが、これに限られることなく、四面体形状の液体用紙容器など、他の形状の液体用紙容器でもかまわない。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0071】
<実施例1>
バリア層4のアルミナ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmの蒸着面と、内側熱可塑性樹脂層6の密度が0.915g/cm
3の直鎖状低密度ポリエチレン50μmとを、接着層5のウレタン系2液硬化型接着剤を用いてドライラミネートによって積層して内装フィルムを作成した。
【0072】
紙層2として、カップ原紙(密度0.78g/cm
3、坪量350g/m
2)を用意し、紙層2の片面に接着樹脂層3の低密度ポリエチレンをTダイから押し出して、25μmの厚さで設け、内装フィルムのバリア層4のポリエチレンテレフタレート面を接着樹脂層3の溶融樹脂面に圧着して積層した。
【0073】
続いて、紙層2の反対面に外側熱可塑性樹脂層1の樹脂をTダイから押し出して厚さ20μmで設けて、
図1のような、液体用紙容器に用いる積層体100を製造した。外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)は、280℃で行った。
【0074】
外側熱可塑性樹脂層1に用いる樹脂としては、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、20重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた。カリウムイオンアイオノマーとしては、MFR(JIS−K7210)が、0.8g/10minで、密度(JIS−K7112)が、0.965g/cm
3で、ビカット軟化点(JIS−K7206)が、60℃のものを使用した。
【0075】
また、このカリウムイオンアイオノマーは、破断点抗張力と、破断点伸び(JIS−K7162、試験片1BA 2mm)が、それぞれ、28MPaと260%、曲げ剛性率(JIS−K7106)が、280MPa、硬度(JIS−K7215)が、シェアAで96、シェアBで60、また、シート表面抵抗(23℃50%RH)が、<1.0×10
7Ω/□であった。
【0076】
また、外側熱可塑性樹脂層1の積層時、積層直後に外側熱可塑性樹脂層1の外面にコロナ処理行った。そして、グラビア印刷機で、外側熱可塑性樹脂層1のコロナ処理面に絵柄となる印刷層を設けた。
【0077】
この積層体100を、
図4のようなブランクにし、製函し、胴部20の各面板の幅がそれぞれ85mmで容量2リットルの
図2のような、実施例1の液体用紙容器を作成した。
【0078】
<実施例2>
バリア層4として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmにアルミニウム箔9μmをドライラミネートによって積層した積層フィルムを用い、この積層フィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムの面に内側熱可塑性樹脂層6をドライラミネートによって積層して内装フィルムを作成した。
【0079】
また、外側熱可塑性樹脂層1としては、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、5重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液体用紙容器を作成した。
【0080】
<実施例3>
バリア層4を用いず、紙層2の片面に直接、低密度ポリエチレンをTダイから押し出して、厚さ50μmの内側熱可塑性樹脂層6を設け、また、外側熱可塑性樹脂層1に用いる樹脂としては、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、35重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の液体用紙容器を作成した。
【0081】
<実施例4>
外側熱可塑性樹脂層1として、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、40重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の液体用紙容器を作成した。
【0082】
<実施例5>
外側熱可塑性樹脂層1として、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、99重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の液体用紙容器を作成した。
【0083】
<実施例6>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、270℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の液体用紙容器を作成した。
【0084】
<実施例7>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、250℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の液体用紙容器を作成した。
【0085】
<実施例8>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、230℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例8の液体用紙容器を作成した。
【0086】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0087】
<比較例1>
外側熱可塑性樹脂層1として、カリウムイオンアイオノマーをブレンドしない低密度ポリエチレンのみを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液体用紙容器を作成した。
【0088】
<比較例2>
外側熱可塑性樹脂層1として、低密度ポリエチレンにカリウムイオンアイオノマーを、3重量%になるようにブレンドしたブレンド樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の液体用紙容器を作成した。
【0089】
以下は、請求項
2の発明の比較例である。
【0090】
<比較例3>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、300℃とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の液体用紙容器を作成した。
【0091】
<比較例4>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、290℃とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の液体用紙容器を作成した。
【0092】
<比較例5>
外側熱可塑性樹脂層1の製膜温度(ダイ下温度)を、320℃とした以外は実施例1と同様にして、比較例5の液体用紙容器を作成した。
【0093】
<試験方法>
実施例と比較例の液体用紙容器について、下記の方法で試験し、比較評価した。
【0094】
<防塵性>
実施例と比較例の液体用紙容器を、人の通る通路の脇に置き1日放置し、塵や埃の付着の有無を確認した。通路の人の通りは、延べ約1000人/日であった。塵や埃の付着がなかったものを○とし、塵や埃の付着のあったものを×として評価した。その結果を表1にまとめた。
【0095】
<成形性>
実施例と比較例の液体用紙容器を、液体用紙容器の成形充填機(充填速度;3000本/
時)で水を充填して成形した。特にトップシール部の外側熱可塑性樹脂層1どうしの接着具合に注視して成形性を確認した。成形状態が良好なものを○とし、成形できるが、外側熱可塑性樹脂層1どうしの接着で浮きがある(完全に密着されていない)ものを△とし、外側熱可塑性樹脂層1どうしの接着ができていないものを×として評価した。その結果を表1にまとめた。
【0096】
<印刷適性>
実施例と比較例の液体用紙容器の外側熱可塑性樹脂層1の外面に施された印刷層にセロテープ(登録商標)を貼り付け、セロテープ(登録商標)を勢いよく剥がしたとき、セロテープ(登録商標)に印刷層のインキが付着しているか否かを評価した。セロテープ(登録商標)にインキが付着していないものを○とし、セロテープ(登録商標)にインキが付着しているものを×として評価した。その結果を表1にまとめた。
【0097】
【表1】
以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0098】
<比較結果>
実施例1から実施例8の液体用紙容器は、防塵性、成形性、印刷適性ともいずれも○となり、総合評価として、良好であった。
【0099】
一方、比較例1から比較例5の液体用紙容器は、成形性と印刷適性は○であったが、防塵性については、塵の付着があって×となり、総合評価で不良となった。尚、外側熱可塑性樹脂層1の臭いは、特に感じられずいずれも良好であった。
【0100】
以上のように、本発明の液体用紙容器は、シュリンクフィルムでオーバーラップしなくても、長期に渡って店頭などで陳列されることを想定しても、埃や塵が表面に付きにくいと考えられる。
【0101】
また、外側熱可塑性樹脂層1どうしの接着性に問題がなく成形性が良好であり、ブリードアウトして効果を発する帯電防止剤を添加した樹脂で起きるような印刷不良も生ずることなく、印刷適性も良好であった。