特許第6136279号(P6136279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136279
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20170522BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20170522BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20170522BHJP
   F16N 9/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F16C19/16
   F16C33/58
   F16N9/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-4501(P2013-4501)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-137076(P2014-137076A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美佐田 泰治
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/010897(WO,A1)
【文献】 特開2009−74682(JP,A)
【文献】 特開2007−333016(JP,A)
【文献】 特開2008−115922(JP,A)
【文献】 特開2007−192288(JP,A)
【文献】 米国特許第6164832(US,A)
【文献】 特開2011−169362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00− 19/56
F16C 33/30− 33/66
B23B 1/00− 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸側に配設される内輪と、ハウジング側に配設される外輪と、前記内輪と前記外輪との間の環状空間に転動可能に配設される複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器と、を有する転がり軸受と、
前記外輪と一体又は別体で前記ハウジング側に固定されると共に、グリースを供給しつつ前記保持器の内周面を案内する案内面を有する保持器案内部材と、を備え、
前記保持器案内部材は、前記環状空間内に突出すると共に、外周面の一部が前記案内面をなす案内突部と、
グリースが貯留されるグリース貯留部を有し、かつ前記グリース貯留部のグリースを前記案内面に供給する供給口が、前記案内突部の外周面のうち、前記案内面よりも前記案内突部の基部側に形成されているグリース供給部と、を備えており、
前記案内突部の外周面のうち、前記供給口よりも基部側の部分が前記グリース貯留部の壁面の一部を構成しており、
前記壁面は、前記案内面に連続し、かつ前記転がり軸受の軸方向において前記案内面の延長上に位置している転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受装置であって、
前記グリース供給部は、前記保持器案内部材の側壁と、前記外輪と、前記保持器において前記転がり軸受の軸方向の一端面と、で囲まれた空間で構成されている転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転がり軸受装置であって、
前記保持器案内部材は、前記外輪とは別体に設けられ、かつ前記外輪に対する外輪間座であることを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受装置であって、
前記保持器案内部材の側壁に凹部が形成されており、前記凹部が前記グリース貯留部を構成していることを特徴とする転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転がり軸受とその転がり軸受にグリースを供給するグリース供給部とを備えた転がり軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受と、その転がり軸受に対しグリースを供給するグリース供給部とを備えた転がり軸受装置は、例えば特許文献1に開示されている。
これにおいては、転がり軸受の外輪に隣接して設けられた間座の内周に、内部にグリース溜まりが形成された環状のグリース溜まり形成部品が設けられる。
グリース溜まり形成部品の隙間形成片の先端面に、先端が外輪の段差面に当接する凸部が設けられ、凸部が存在しない箇所と段差面との間の隙間を、グリース溜まり内のグリースの基油を外輪の軌道面へ導く油路としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の転がり軸受装置の場合、グリースの種類によってはグリースから基油への分離が起こりにくい場合があり、その場合には、基油が軌道面に供給されず、潤滑に悪影響を及ぼす恐れがあった。また、グリースは熱せられることで基油への分離が促進されるが、グリース溜まり形成部品は、軸受から離間しているため、軸受の駆動により生じた熱が伝わりにくく、グリースから基油への分離が促進されにくい場合もあった。さらには、工作機のスピンドルような高速回転する回転軸では、回転軸に組み付けられた軸受を冷却するためにハウジングに冷却機構が設けられている場合がある。これによって、回転軸の駆動による軸受の昇温は抑制されるが、このような回転軸に組み付けられて、ハウジングから冷却機構による影響を受けた場合には、グリースから基油への分離が一層起こりにくくなり、軸受の潤滑性能を確保することが困難となる恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、グリース貯留部内のグリースの基油の分離を促進させることができ、グリースの基油を良好に供給することができる転がり軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る転がり軸受装置は、回転軸側に配設される内輪と、ハウジング側に配設される外輪と、前記内輪と前記外輪との間の環状空間に転動可能に配設される複数の転動体と、前記複数の転動体を保持する保持器と、を有する転がり軸受と、
前記外輪と一体又は別体で前記ハウジング側に固定されると共に、グリースを供給しつつ前記保持器の内周面を案内する案内面を有する保持器案内部材と、を備え、
前記保持器案内部材は、前記環状空間内に突出すると共に、外周面の一部が前記案内面をなす案内突部と、
グリースが貯留されるグリース貯留部を有し、かつ前記グリース貯留部のグリースを前記案内面に供給する供給口が、前記案内突部の外周面のうち、前記案内面よりも前記案内突部の基部側に形成されているグリース供給部と、を備えており、
前記案内突部の外周面のうち、前記供給口よりも基部側の部分が前記グリース貯留部の壁面の一部を構成しており、
前記壁面は、前記案内面に連続し、かつ前記転がり軸受の軸方向において前記案内面の延長上に位置している
【0007】
請求項2に係る転がり軸受装置は、請求項1に記載の転がり軸受装置であって、
前記グリース供給部は、前記保持器案内部材の側壁と、前記外輪と、前記保持器において前記転がり軸受の軸方向の一端面と、で囲まれた空間で構成されている。
【0008】
請求項3に係る転がり軸受装置は、請求項1又は2に記載の転がり軸受装置であって、
前記保持器案内部材は、外輪とは別体に設けられ、かつ前記外輪に対する外輪間座であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る転がり軸受装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受装置であって、
前記保持器案内部材の側壁に凹部が形成されており、前記凹部がグリース貯留部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の転がり軸受装置によると、グリースを供給しつつ保持器の内周面を案内する案内面を有する保持器案内部材は、環状空間内に突出すると共に、外周面の一部が案内面をなす案内突部と、グリースが貯留されるグリース貯留部を有し、かつグリース貯留部のグリースを案内面に供給する供給口が、案内突部の外周面のうち、案内面よりも案内突部の基部側に形成されているグリース供給部と、を備える。このため、保持器案内部材と保持器との摺動摩擦により生じる熱は、そのまま案内突部を基部側に向けて伝わることになる。この結果、ハウジング側に配置された冷却機構による冷却の影響を受けにくく、供給口おいてグリースから基油の分離が促進される。
また、請求項1に記載の転がり軸受装置によると、案内突部の外周面のうち、供給口よりも基部側の外周面部分がグリース貯留部の壁面の一部を構成しているため、グリース貯留部のグリースは案内突部の供給口よりも基部側の外周面部分に直接接する。これによって、グリース貯留部のグリースは案内突部からの熱の影響を受けやすくなりため、基油への分離が一層促進される。
請求項3に記載の転がり軸受装置によると、外輪とは別体に設けられた保持器案内部材が外輪間座であるため、軸受自体の製造工程を変える必要がない。したがって、軸受の制動を維持できると共に、製造工程を変えることによるコストの増大を抑えることができる。
請求項4に記載の転がり軸受装置によると、保持器案内部材の側壁に形成された凹部がグリース貯留部を構成しているため、凹部の大きさを調整することで、グリースの貯留量を容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施例1に係る転がり軸受装置の軸方向断面図である。
図2】同じく転がり軸受装置を拡大して示す軸方向断面図である。
図3】この発明の実施例2に係る転がり軸受装置を拡大して示す軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0013】
この発明の実施例1を図1図2にしたがって説明する。
図1に示すように、転がり軸受装置は、転がり軸受10(この実施例1ではアンギュラ玉軸受)と、この転がり軸受10にグリース(主としてグリースの基油)を供給するグリース供給部60とを備える。
転がり軸受10は、内輪20と、外輪30と、複数の転動体40(この実施例1では玉)と、保持器45とを備える。
【0014】
内輪20は円筒状に形成され、その中心孔が回転軸1(例えば、工作機のスピンドル)の外周面に嵌合(圧入)されて一体回転可能に配設される。なお、この実施例1において、外周面とは、回転軸1の回転中心を中心とする半径方向の外側の面をいうものとする。また、内周面とは、回転軸1の回転中心を中心とする半径方向の内側の面をいうものとする。
図2に示すように、内輪20の外周面には、その軸方向略中央部に内輪軌道面21が形成されると共に、内輪軌道面21の両側部に軌道肩部22、23が形成されている。この実施例1において、両軌道肩部22、23のうち、図2に向かって右側に位置する軌道肩部22の外周面の径寸法は、左側に位置する軌道肩部23の外周面の径寸法よりも設定寸法だけ大きく形成されている。
また、内輪20の外周面の左側に位置する軌道肩部23の軸方向外側には軌道肩部23よりも適宜に小径の段差部23aが形成されている。
【0015】
図1に示すように、外輪30は、内輪20の外周面との間に環状空間を隔てて同一中心線上に配設される円筒状に形成され、その外周面がハウジング2に嵌合されて固定状態で配設される。
図2に示すように、外輪30の内周面には、その軸方向略中央部に外輪軌道面31が形成されると共に、外輪軌道面31の両側部に軌道肩部32、33が形成されている。この実施例1において、両軌道肩部32、33のうち、右側の軌道肩部32の内周面の径寸法は、左側の軌道肩部33の内周面の径寸法よりも大きく形成されいる。
また、外輪30の内周面の左側の軌道肩部33の軸方向外側には、軌道肩部33よりも適宜に大径の段差部33aが形成されている。
複数の転動体40は、内輪軌道面21と外輪軌道面31との間に形成された環状空間に保持器45によって保持された状態で転動可能に配設されている。
【0016】
また、内輪20と外輪30との間の環状空間の一端側(図1では右側)開口部には、この開口部を密封するシール部材12が組み付けられている。このシール部材12の外周部には外輪30の内周面の一端部に形成された環状溝に圧入固定される固定部13が形成され、シール部材12の内周部には内輪20の内周面の一端部に形成された環状溝に僅かな隙間を隔ててラビリンスを構成する非接触のシール部14が形成されている。
なお、ハウジング2の軸受嵌込部の内周面には、冷却機構を構成するための、冷却オイル、冷却液等の冷却媒体が供給される冷却溝2aが形成されている。
【0017】
図1図2に示すように、回転軸1の外周面には、内輪20の両側部のうちの少なくとも片側に隣接して内輪間座25が圧入固定されている。この実施例1では、内輪20と外輪30との他端側に内輪間座25が配設されている。なお、この実施例1では、保持器案内部材50は、外輪30の他端側に配設されている。
また、ハウジング2には、外輪30の両側部のうちの少なくとも片側に隣接して保持器案内部材50が配設されている。
また、この実施例1では、保持器案内部材50は、外輪30と別体に設けられた部材であり、ハウジング2側に圧入によって固定されている。なお、保持器案内部材50は、外輪30と一体に、つまり外輪30の一部として構成されていてもよい。保持器案内部材50が外輪30と別体に設けられている場合、保持器案内部材50は外輪間座としても用いることが可能である。この保持器案内部材50が、グリースを供給しつつ保持器45の内周面に接して保持器45を案内する。なお、これについては後に詳述する。
また、保持器案内部材50の外径寸法は、ハウジング2の軸受嵌込部の内径寸法よりも僅かに大きく、保持器案内部材50の内径寸法は、内輪間座25の外径寸法及び内輪20の外周面端部の段差部23aの外径寸法よりも適宜に大きく設定されている。
【0018】
保持器案内部材50の外輪30と対向する一端面には、内輪20と外輪30との間の環状空間に向けて突出する案内突部53が形成されている。
この案内突部53の外径寸法は、保持器45の内径寸法よりも僅かに小さく設定され、案内突部53の外周面の一部には、保持器45の内周面と接して保持器45を回転案内する案内面54が形成されている。
また、案内突部53の内径寸法は保持器案内部材50の内径寸法と同じ大きさに設定され、保持器案内部材50の内周面と案内突部53の内周面とは同一面をなして連続している。
【0019】
保持器案内部材50は、上述の案内突部53と、案内突部53に設けられた案内面54にグリースを供給するグリース供給部60と、を備える。グリース供給部60は、グリースが貯留されるグリース貯留部61を有し、グリース貯留部61のグリースを案内面54、さらには転がり軸受10の転動体40、内輪軌道面21及び外輪軌道面31に供給する供給口62が、案内突部53における外周面のうち案内面54よりも基部側、すなわち根元側に形成されている。具体的には、この実施例1では、グリース供給部60は、保持器案内部材50の側面と、外輪30と、保持器45の軸方向一端面45aとで囲まれた空間部で構成されている。そして、案内突部53の外周面のうち、供給口62よりも基部側の外周面部分がグリース供給部60の内壁面の一部を構成している。そして、供給口62よりも基部側の外周面部分がグリース供給部60に貯留されたグリースに接している。なお、回転軸1の回転時には、遠心力により、保持器45の軸方向一端面45aと、保持器案内部材50の壁面との間には、グリース貯留部61の空間が確保されることになる。
また、この実施例1において、グリース貯留部61の一側壁を構成する保持器案内部材50の壁面には凹部52が形成され、この凹部52によってグリース貯留部61の容積が拡大されている。
さらに、この実施例1において、外輪30の内周面の一端部に形成された大径の段差部33aによってもグリース貯留部61の容積が拡大されている。
【0020】
この実施例1に係る転がり軸受装置は上述したように構成される。
したがって、この実施例1では、内輪20と外輪30との間に設けられた環状空間に突出している案内突部53の外周面の一部、より詳細には案内突部53の先端部分の外周面が、保持器45の案内面54をなす。また、グリース貯留部61のグリースを案内面54へと供給する供給口62が、案内突部53における外周面のうち案内面54よりも基部側に形成されている。したがって、保持器45の内周面と保持器案内部材50の案内面54とにおける摺動摩擦で生じた熱は、案内突部53の先端側から基部側へと案内突部53を介して伝わることになるため、グリース貯留部61に貯留されたグリースのうち、供給口62近傍のグリースは、案内面54で生じた熱に影響される。
【0021】
従来の保持器の外周面を外輪の内周面側で案内する外輪案内(図示しない)である場合には、案内面で生じた熱は外輪を介してグリース貯留部へと伝わっていた。このため、ハウジングに設けられた冷却機構(冷却機構は、例えば、ハウジングの軸受嵌込部の内周面に形成され、かつ冷却オイル、冷却液等の冷却媒体が供給される冷却溝を主体として構成される)による冷却の影響、及び熱が外輪全体に均等に伝達することにより、グリース貯留部に伝わる熱は、案内面で生じた熱よりも明らかに低くなっていた。
【0022】
この実施例1では、ハウジング2に設けられた冷却機構(冷却溝2a)による冷却の影響を抑え、熱がグリース貯留部61に伝わるため、及び案内突部53のみを介するために熱の拡散を抑えられる。このため、従来の外輪案内の場合と比較して案内面54で生じた熱とグリース貯留部61に伝わる熱との差を小さくすることができる。つまり、熱を効率的にグリース貯留部61に伝えられるため、グリースから基油への熱分離が生じやすく、基油が案内突部53の外周面を介して案内面54に供給されることを促進することができる。なお、周速が遅くなること及び遠心力により保持器45と案内突部53との接触が少なくなることを考慮し、案内面54で生じる熱の総量は外輪案内の場合と比較して小さくなる。よって、この実施例1のような構造を採用することで、外輪案内と比較して、転がり軸受10の昇温を抑えることと、基油を良好に供給することとの両立が可能となる。
このため、回転軸1の高速回転時には、所要とする量の基油を供給口62から保持器45の内周面と案内面54との間に向けて不足なく供給することが可能となり、保持器45の熱変形や、焼き付きを抑制することができると共に、長期間にわたって良好な軸受機能を維持することができる。
【0023】
特に、この実施例1では、案内突部53の外周面のうち、供給口62よりも基部側の外周面部分がグリース供給部60の内壁面の一部を構成している。そして、供給口62よりも基部側の外周面部分がグリース供給部60に貯留されたグリースに接しているため、グリースは面を介して熱の影響を受ける。よって、より効率的に熱を伝えられる。
さらに、この実施例1では、保持器案内部材50が外輪30とは別体に構成されており、保持器案内部材50を外輪間座として用いることも可能である。このように保持器案内部材50と外輪間座とを併用することが可能であるため、部材を有効に活用することができる。
また、この実施例1において、グリース貯留部61は、保持器案内部材50と、外輪30と、保持器45の軸方向一端面45aとで囲まれた空間部で構成されるため、保持器案内部材の内部にグリース貯留部を形成する場合と比べ、グリース貯留部61を容易に構成することができる。
さらに、保持器45の摩擦熱によってもグリース貯留部61内のグリース70の基油の分離が促進される。
【実施例2】
【0024】
次に、この発明の実施例2を図3にしたがって説明する。
この実施例2においては、図3に示すように、回転軸1の外周面の内輪20の両側部に隣接して内輪間座25がそれぞれ圧入固定されている。
また、ハウジング2の外輪30の両側部にそれぞれ隣接して外輪間座としても機能する保持器案内部材50がそれぞれ配設されている。
そして、両保持器案内部材50の外輪30と対向する端面に案内突部53がそれぞれ形成され、これら案内突部53の外周面に、保持器45を回転案内する案内面54がそれぞれ形成されている。
【0025】
また、両保持器案内部材50と、外輪30と、保持器45の軸方向両端面45aとでそれぞれ囲まれた空間部で二つのグリース貯留部61がそれぞれ構成されている。
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様に構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。
【0026】
上述したように構成されるこの実施例2の転がり軸受装置において、両保持器案内部材50の案内突部53の外周面にそれぞれ形成された案内面54によって、保持器45の傾きを抑制して保持器45をより一層安定よく回転案内することができる。
また、二つのグリース貯留部61内にグリース70をそれぞれ貯留することができる。このため、それぞれのグリース70の基油を両案内面54と保持器45の内周面との間に向けて不足なく供給することが可能となる。
【0027】
なお、この発明は前記実施例1及び2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1及び2においては、保持器案内部材50と、外輪30と、保持器45の軸方向端面45aとで囲まれた空間部でグリース貯留部61が構成される場合を例示したが、これに限らず、保持器案内部材50の内部にグリース貯留部61を形成してもこの発明を実施することができる。
また、前記実施例1においては、外輪30と保持器案内部材50とを別体に製作したが、これに限らず、外輪30の一端部に保持器案内部材50を一体に形成して、外輪30と保持器案内部材50とを一部品で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 回転軸
2 ハウジング
10 転がり軸受
20 内輪
30 外輪
40 転動体
45 保持器
60 グリース供給部
61 グリース貯留部
62 供給口
70 グリース
図1
図2
図3