(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136295
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】筋肉増強剤
(51)【国際特許分類】
A23K 20/147 20160101AFI20170522BHJP
A23K 50/75 20160101ALI20170522BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20170522BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20170522BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20170522BHJP
C12P 19/12 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
A23K20/147
A23K50/75
A23K10/30
A61K31/7016
A61P21/00
!C12P19/12
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-12704(P2013-12704)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143924(P2014-143924A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年11月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本家禽学会、高松市生涯学習センター「まなびCAN」 平成24年9月7日 日本家禽学会誌 第49巻 秋季大会号 2012年8月 平成24年8月20日 ウエブサイト https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpsa/advpub/0/advpub_0120138/_pdf 平成25年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上曽山 博
(72)【発明者】
【氏名】本田 和久
(72)【発明者】
【氏名】福井 健介
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 昌久
(72)【発明者】
【氏名】矢野 博子
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−026230(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/001770(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0036839(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/027753(WO,A1)
【文献】
特開2001−269135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/163,50/75
A61K 31/33−33/44
A01P 21/00
C12P 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−1,4−マンノビオースを20重量%以上含有することを特徴とする筋肉増強剤。
【請求項2】
β−1,4−マンノビオースの含有量が90重量%以上である、請求項1記載の筋肉増強剤。
【請求項3】
筋肉が、胸部の筋肉である、請求項1または2記載の筋肉増強剤。
【請求項4】
マンナン含有天然物に含まれる多糖類を加水分解し、固液分離後カラム精製により得られる、請求項1乃至3記載の筋肉増強剤。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の筋肉増強剤を鶏に摂取させる際、鶏の体重1kgに対して、1日当たり0.001g以上摂取させることを特徴とする、鶏の筋肉増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では食生活の変化に伴い、動物性蛋白質の需要が増している。例えば、家禽においては肉用の専用品種の育種選抜、栄養・飼料の改良等が行われてきており、その結果、良質な動物性蛋白質である鶏肉が安定的に供給されている。しかし、これまでの生産性向上の追及により、特に肉用鶏で腹腔内脂肪の増加を原因とする脂肪肝等の問題の他、脂肪分はブロイラーの処理過程で除去され、そのほとんどが廃棄されることから、腹腔内脂肪の増加は飼料中エネルギーの損失につながるといった問題もある。
このように、良質な畜産物の肉を得るためには、筋肉が多く過剰な脂肪のない個体の育成が望まれる。さらに飼料を効率よく筋肉に換えることができれば費用対効果の観点からも望ましい。
また、最近の社会ではメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が問題となっているが、低脂肪、高蛋白の食肉の効率生産を果たすことができれば、これらの対策にもなって人々の健康維持に貢献でき、ひいてはQOLの向上にもつながる。
【0003】
筋肉増強に関して、小麦胚芽を利用した技術(特許文献1)がみられるが、二糖類などの糖質が筋肉増強への効果に関わる知見はこれまでのところ存在しない。
【0004】
一方、従来より、パーム核ミール、コプラミール等に酵素処理を行いβ−1,4−マンノビオース含量を10%以上に高めたものを飼料に添加することにより、サルモネラ菌の動物腸内での定着を抑制し体外へ排泄する排菌効果(サルモネラ菌定着抑制効果)を有することが知られており、この効果を利用した技術も種々提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、同様にパーム核ミール、コプラミール等に酵素処理を行いβ−1,4−マンノビオース含量を3%以上に高めたものを養豚用または養鶏用の飼料に添加することにより、飼料効率を改善することが知られている(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−77010号公報
【特許文献2】特許第4570959号公報
【特許文献3】WO2011/027753号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】食品と開発 Vol 35,No.2,p54−56,2000年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、この特許文献3は飼料用途において、畜産動物の全体重の増加効率を上げることにより生産性、ひいては経済性の改善を掲げるものであり、個々の骨格筋への効果について何ら言及されていない。従って、本発明は、畜産動物等の筋肉を増強させる等の効果を発揮させる筋肉増強剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、β−1,4−マンノビオースを20重量%以上含有する筋肉増強剤を摂取させることにより、畜産動物等の筋肉を優位に増強させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(1)β−1,4−マンノビオースを20重量%以上含有することを特徴とする筋肉増強剤。
(2)β−1,4−マンノビオースの含有量が90重量%以上である、(1)記載の筋肉増強剤。
(3)筋肉が、胸部の筋肉である、(1)または(2)記載の筋肉増強剤。
(4)マンナン含有天然物に含まれる多糖類を加水分解し、固液分離後カラム精製により得られる、(1)乃至(3)記載の筋肉増強剤。
である。
(5)(1)乃至(4)記載の筋肉増強剤を畜産動物に摂取させる際、畜産動物の体重1kgに対して、1日当たり0.001g以上摂取させることを特徴とする、畜産動物の筋肉増強方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高純度β−1,4−マンノビオースを含有する筋肉増強剤は、タンパク質合成の指標であるリボソーマルキャパシティを上昇させ、タンパク質合成を阻害する因子であるミオスタチンを抑制することによって、鶏,豚等の畜産動物の筋肉重量の増大、すなわち筋肉を増強することができ、特に胸部の筋肉に対する効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は鶏を用いた飼育試験において、β−1,4−マンノビオースもしくは対照飼料を摂取させた後の体重あたりの胸肉重量を示した図である。
【
図2】
図2は鶏を用いた飼育試験において、β−1,4−マンノビオースもしくは対照飼料を摂取させた後の胸肉の筋肉蛋白代謝の指標であるリボソーマルキャパシティを示した図である。
【
図3】
図3は鶏を用いた飼育試験において、β−1,4−マンノビオースもしくは対照飼料を摂取させた後の胸肉の筋肉の筋芽細胞の分化新生の抑制調節因子であるミオスタチンmRNAの発現量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(筋肉増強剤)
本発明による筋肉増強剤は、β−1,4−マンノビオース(以下、単にマンノビオースともいう)を高含有量で含むものである。β−1,4−マンノビオースの含有量は20重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
【0014】
(β−1,4−マンノビオース)
本発明において、β−1,4−マンノビオースは、マンノース2分子がβ-1,4-グリコシド結合してなるものである。本発明で用いられるβ−1,4−マンノビオースは、例えば、マンノースから合成する方法や、β-1,4-マンナン(以下、単にマンナンともいう)を分解する方法により得ることができる。
【0015】
β-1,4-マンナンを分解する方法は、原料の資源性及び反応効率の点でより好ましく、より簡便にβ−1,4−マンノビオースを得ることができる。この方法では、例えば、マンナンを豊富に含有するパーム核ミール、コプラミール、コーヒー豆粕、ゴマ粕、グアーガム、ローカストビーンガムなどのマンナン含有天然物又はこれら天然物から抽出したマンナンに、マンナン分解酵素を作用させて、β−1,4−マンノビオースを得ることができる。
【0016】
マンナン多糖類含有原料は原料の粒度が大きい場合は、破砕機や粉砕などにより、あらかじめ適当な大きさの粒状ないし粉末状にしてから使用するのが好ましい。また原料中の脂肪成分は、ヘキサン、エタノール等の有機溶剤を用いて予め脱脂してから用いるのが好ましい。
【0017】
また本原料は、アルカリ溶液で処理し、不純物であるマンナン多糖類以外の成分を選択的に可溶化し、除去してから供するのが好ましい。すなわち、例えば予めアルカリ性に調整した溶液に原料を直接懸濁させるか、又は原料を水に懸濁させたのち懸濁液をアルカリ性に調整したのち、5〜120分間静置又は撹拌することによってアルカリ溶液処理を行う。次に、必要により、懸濁液に塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、プロピオン酸等の酸を添加して、元の懸濁液のpH、例えばpH5〜7程度まで中和してから、遠心分離やろ過等により固液分離し、残渣を回収する。また、必要に応じて1〜数回の水洗を行うと良い。すなわち、得た残渣に加水して撹拌及び静置したのち、再び遠心分離やろ過等による固液分離により、残渣を回収する。水洗工程は必要に応じて繰り返すと良い。
【0018】
次に上記の処理等を行ったマンナン多糖類の原料を加水分解し、二糖類であるマンノビオースを生成させる。より純度の高いマンノビオースを生成させるには、マンナン分解酵素を用いるのが良い。この方法において使用されるマンナン分解酵素としては、マンナナーゼ、マンノシダーゼ、ヘミセルラーゼ等、マンナンを分解してマンノビオースを生成する活性を有するものであればいずれでもよいが、Aspergillus niger由来のもので、市販されているもの(例えばヘミセルラーゼGM「アマノ」(天野製薬株式会社製)、スミチームACH(新日本化学工業株式会社製)、セルロシンGM5(阪急バイオインダストリー株式会社製)等を好ましく使用できる。また、これらのほか、キシラナーゼ、セルラーゼとして市販されているものであっても、当該加水分解活性を有するものも使用でき、例えば、セルラーゼY-NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)を使用できる。特に、マンノシダーゼ(exo型)活性が低く、マンナナーゼ(endo型)活性が高いヘミセルラーゼGM「アマノ」(天野製薬株式会社製)、スミチームACH(新日本化学工業株式会社製)が、マンノースの生成を抑え、多量にマンノビオースを生成させることができる点で好ましい。
【0019】
さらに、この方法では、マンナン分解酵素は、水に溶解又は分散させた酵素液として、マンナン含有天然物又はこれから抽出したマンナンに作用させる。そして、マンナン含有天然物を用いる場合において効率的な反応を行うためには、マンナン含有天然物、マンナン分解酵素及び水からなる反応系における水分の調整が重要である。水分調整のための水の添加量としては、マンナン100重量部に対して、100〜10000重量部であることが好ましく、500〜1000重量部であることがより好ましい。水の添加量をこのような範囲とすることにより、十分な水分の存在下で、マンナン類の繊維質を十分に膨潤させ、酵素液を接触しやすくすることができる。
【0020】
酵素反応を行う際の条件としては、通常の酵素反応の条件であれば特に問題はなく、使用する酵素に最適な条件を選択すれば良い。反応温度は、酵素が失活せず尚且つ微生物が繁殖しない温度域であることが望ましく、好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは50〜70℃である。反応におけるpHは使用する酵素の至適条件下で行うのが望ましいが、反応温度同様に微生物による腐敗を防止するためにpH2〜6の酸性ないし弱酸性域が望ましい。反応時間は使用する酵素量にもよるが、作業都合上3〜48時間にするのが好ましい。加水分解後は固液分離され、上清が回収される。
【0021】
上記で得た上清には乾物重量当たり40重量%以上のマンノビオースが含まれるので、上清液をそのまま、あるいはエバポレーター等による濃縮した液や、さらに、これらの液を凍結乾燥したものを筋肉増強剤として用いることができる。 但し、上記の上清液は、最大60%程度のマンノース、マンノトリオース、マンノヘキサオース、その他のマンノオリゴ糖、さらにグルコース、ガラクトース、スクロースやその他のオリゴ糖を含む。そのため、これらの糖を分離してマンノビオースの純度を上げるため、固液分離後カラム精製することが好ましく、その方法として例えば、疎水性樹脂などを用いたカラムと、フラクションコレクター等を用いて、糖の分画を行い、マンノビオースのみを高純度で分画する方法等を採用することができる。疎水性樹脂として、例えば、HP‐20(三菱化学株式会社)、Bio-Gel P (BIO-RAD社)などが挙げられる。これにより、乾燥重量当たり90重量%以上のマンノビオースを分画分離することができる。このマンノビオース分画液をエバポレーター等による濃縮、さらに凍結乾燥を行うことによってマンノビオースを90重量%以上含有する筋肉増強剤を得ることができる。
【0022】
本発明の筋肉増強剤は鶏や豚等の畜産動物の様々な筋肉の増量、すなわち、筋肉を増強するという効果を発揮するが、中でも胸部の筋肉が増強の効果が高いため好ましい。
【0023】
本発明の筋肉増強剤は、ブロイラー専用種のほか、肉質、味、歯ごたえの違いをセールスポイントとする各種の銘柄鶏、地鶏などにも用いることができる。また、豚、牛、羊、馬などにも用いることができる。
【0024】
本発明の筋肉増強剤を鶏や豚等の畜産動物に使用する場合、飼料中の配合量がマンノビオースとして0.005重量%〜0.15重量%となるように添加することが好ましく、さらに好ましくは0.006重量%〜0.1重量%、最も好ましくは0.007重量%〜0.05重量%が適当である。このような飼料は、家畜に、固体状または液体状で給餌することにより、筋肉を増強することができる。
【0025】
また、本発明の筋肉増強剤を鶏や豚等の畜産動物に摂取させる量は、畜産動物の体重1kgに対して、1日当たり0.001g以上が好ましく、より好ましくは0.005g〜0.15g、さらに好ましくは0.006g〜0.1g、最も好ましくは0.007g〜0.05gが適当である。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明のより具体的な実施形態を説明する。なお、本実施例中の「部」、「%」は、特に断りがない限り「重量部」、「重量%」を表す。
【0027】
(実施例1)
フィリピンより入手した市販のココナツ粉に、重量比で2倍量のヘキサンを加えて混合したのち、ろ過を行い残渣を回収した。この操作をさらに2回繰り返して、残存油分が0.1%の脱脂ココナツ粉を得た。この脱脂ココナツ粉500gに対して、蒸留水7500gと市販のマンナナーゼ「スミチームACH-L」(新日本化学株式会社製)を10g添加して、pH5、反応温度50℃、反応時間20時間の条件で加水分解反応を実施した。反応後は遠心分離(10,000rpm、20分間)を行い、上清を回収した。エバポレーターにより濃縮を行ったのち、凍結乾燥を行った。凍結乾燥品の回収量は75gであった。さらに水で溶解し、あらかじめ疎水性樹脂Bio-Gel P (BIO-RAD社)を充填したガラスカラム(直径約10cm×長さ約100cm)にフラクションコレクターを装着しておき、凍結乾燥品5gを50mlの水に溶解してカラムにアプライした後、6Lの水を5mL/分の通液速度で通液して分画した。
各カラムのサンプルの全糖分析を行ったのち、ダイオネクス社のイオンクロマトグラフICS−3000システムにより糖分析を行い、マンノビオースを含む画分を採集し、凍結乾燥を行い、マンノビオースを99%以上含有する筋肉増強剤3gを得た。このカラム操作を12回繰り返して行い、マンノビオースを99%以上含有する筋肉増強剤を約40g得た。
【0028】
(実施例2)
コプラミール(不二製油株式会社製)に、重量比で2倍量のヘキサンを加えて混合したのち、ろ過を行い残渣を回収した。この操作をさらに2回繰り返して、残存油分が0.1%の脱脂コプラミールを得た。この脱脂コプラミール500gに対して、蒸留水7500gと市販のマンナナーゼ「スミチームACH-L」(新日本化学株式会社製)を10g添加して、pH5、反応温度50℃、反応時間20時間の条件で加水分解反応を実施した。反応後は遠心分離(10,000rpm、20分間)を行い、上清を回収した。エバポレーターにより濃縮を行ったのち、凍結乾燥を行った。凍結乾燥品の回収量は100gであった。さらに水で溶解し、あらかじめ疎水性樹脂Bio-Gel P (BIO-RAD社)を充填したガラスカラム(直径約10cm×長さ約100cm)にフラクションコレクターを装着しておき、凍結乾燥品5gを50mlの水に溶解してカラムにアプライした後、6Lの水を5mL/分の通液速度で通液して分画した。
各カラムのサンプルの全糖分析を行ったのち、ダイオネクス社のイオンクロマトグラフICS−3000システムにより糖分析を行い、マンノビオースを含む画分を採集し、凍結乾燥を行い、マンノビオースを99%以上含有する筋肉増強剤3gを得た。このカラム操作を8回繰り返して行い、マンノビオースを99%以上含有する筋肉増強剤を約25g得た。
【0029】
(鶏を用いた飼育試験)
24羽のブロイラー(チャンキー、雄、(株)イシイ)に1〜7日齢の間に(株)日本配合飼料製の市販飼料を給与したのち、体重が均等になるように2群に分け、8〜21日齢の13日間に飼料中0.01%に相当するβ−1,4−マンノビオース、もしくは水を含む試験飼料(表1)を給与し、試験期間終了後、胸肉重量を測定した。胸肉の主要筋肉である胸筋は凍結したのち、総RNA、蛋白分析用に供した。総RNA量とタンパク質量を定量して筋肉タンパク質合成の指標であるリボソーマルキャパシティ(総RNA量/タンパク質量比)を算出した。また総RNAを抽出、逆転写によりcDNAを合成し、骨格筋の蛋白代謝の指標としてミオシタチンの相補的DNAをプライマーを使って増幅した。内部標準としてribosomal protein S17 (RPS17)も同様に増幅し、これらのmRNA発現量を定量装置を用いて測定した。
【0030】
(表1)試験飼料組成表
【0031】
本検討の結果、マンノビオースの投与は、鶏の体重当りの胸肉の重量を有意に増加させた(
図1)。また、胸肉の筋肉蛋白代謝因子の測定結果では、蛋白合成能の指標であるリボソーマルキャパシティ(総RNA量/タンパク質量比)を有意に増加し、筋肉の増加が蛋白合成の誘導によることが示唆された(
図2)。このことより、本剤は筋肉蛋白合成促進剤として利用することもできる。
【0032】
また筋肉の筋芽細胞の分化新生の抑制調節因子であるミオスタチンのmRNAの測定値がマンノビオース投与で有意に低下し、筋芽細胞の分化の抑制が抑えられる、すなわち筋芽細胞の分化を促進していることが示唆された(
図3)。このことより、本剤は筋芽細胞分化抑制低減剤として利用することもできる。
【0033】
本検討の結果より、β−1,4−マンノビオースの添加が胸部の筋肉を増強すること、またその機構が蛋白合成能の指標であるリボソーマルキャパシティの増加によるものであることがわかった。すなわち、β−1,4−マンノビオースは胸部の筋肉の蛋白質合成を増加させることが示唆された。
また、ミオスタチンの減少により、筋芽細胞の分化新生を促進していることも示唆された。
従って、マンノビオースは蛋白質の生合成と細胞レベルでの筋肉分化促進に基づいて筋肉重量を増加させることができる、有用な筋肉増強剤になり得ることが本発明によって示された。