特許第6136298号(P6136298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136298
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20170522BHJP
   F01N 3/031 20060101ALI20170522BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F01N3/023 K
   F01N3/023 A
   F01N3/031
   F01N3/025 101
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-13390(P2013-13390)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-145278(P2014-145278A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】内山 正
(72)【発明者】
【氏名】野田 正文
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−313443(JP,A)
【文献】 特開2011−032969(JP,A)
【文献】 特開2010−285958(JP,A)
【文献】 特開2002−021537(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/01
F01N 3/02−3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタよりも排気上流側の排気通路に設けられて、排気温度を検出する排気温度検出手段と、
前記フィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、
検出される前記静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定手段と、
前記フィルタに燃料を供給して、当該フィルタを粒子状物質の燃焼温度まで昇温する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、を備える内燃機関の排気浄化装置であって
前記フィルタ再生手段は、
粒子状物質の上限堆積量よりも小さい堆積量閾値と、燃料供給量を抑制しても前記堆積量閾値まで堆積した粒子状物質を燃焼除去し得る所定の高排気温度に相当する温度閾値とに基づき、推定される前記堆積量が前記堆積量閾値に達した状態で、検出される前記排気温度が前記温度閾値に達すると強制再生を実行し、
前記排気浄化装置は、前記フィルタ再生手段による強制再生が所定時間継続して実行されない場合に、前記温度閾値を低く補正する補正手段をさらに備える
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記静電容量検出手段は、前記フィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されて、コンデンサを形成する一対の電極を含む
請求項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタよりも排気上流側及び下流側の前記排気通路を接続して、当該フィルタを迂回するバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられて、当該バイパス通路を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、をさらに備え、
前記一対の電極は、前記第2のフィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置される
請求項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記第2のフィルタの強制再生を実行する際は、前記一対の電極をヒータとして機能させる
請求項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特に、内燃機関から排出される排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタを備える排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排気ガス中の粒子状物質(Particulate Matter、以下、PM)を捕集するフィルタとして、例えば、ディーゼル・パティキュレイト・フィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPF)が知られている。
【0003】
DPFは、PM捕集量に限度があるため、堆積したPMを定期的に燃焼除去する強制再生を行う必要がある。強制再生は、排気管内噴射やポスト噴射によって、排気上流側の酸化触媒に未燃燃料(HC)を供給し、酸化により発生する熱で排気ガスの温度をPM燃焼温度まで昇温することで行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、DPFの排気上流側及び下流側の差圧、運転時間(又は運転距離)に基づいてPM堆積量を推定すると共に、PM堆積量が所定量以上になると、強制再生を実行する排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4070687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、DPFを流れる排気ガスの流量は、エンジンの運転状態に応じて変化する。そのため、DPFの排気上流側及び下流側の差圧を検出する差圧センサでは、PM堆積量を正確に推定できない場合がある。また、運転時間(又は、運転距離)に基づいた強制再生の開始制御においては、排気ガスの温度が低い状態で強制再生を実行する可能性がある。そのため、低温の排気ガスをPM燃焼温度まで上昇させるために、燃料供給量を多く確保する必要があり、燃費の悪化を招く虞もある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、PM堆積量の推定精度を向上させると共に、強制再生時における燃料供給量の最適化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられて、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタよりも排気上流側の排気通路に設けられて、排気温度を検出する排気温度検出手段と、前記フィルタの静電容量を検出する静電容量検出手段と、検出される前記静電容量に基づいて、前記フィルタに捕集された粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定手段と、前記フィルタに燃料を供給して、当該フィルタを粒子状物質の燃焼温度まで昇温する強制再生を実行可能なフィルタ再生手段と、を備え、前記フィルタ再生手段は、粒子状物質の上限堆積量よりも小さい堆積量閾値と、燃料供給量を抑制しても前記堆積量閾値まで堆積した粒子状物質を燃焼除去し得る所定の高排気温度に相当する温度閾値とに基づき、推定される前記堆積量が前記堆積量閾値に達した状態で、検出される前記排気温度が前記温度閾値に達すると強制再生を実行することを特徴とする。
【0009】
また、前記フィルタ再生手段による強制再生が所定時間継続して実行されない場合に、前記温度閾値を低く補正する補正手段をさらに備えてもよい。
【0010】
また、前記静電容量検出手段は、前記フィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されて、コンデンサを形成する一対の電極を含むものであってもよい。
【0011】
また、前記フィルタよりも排気上流側及び下流側の前記排気通路を接続して、当該フィルタを迂回するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられて、当該バイパス通路を流れる排気中の粒子状物質を捕集する第2のフィルタと、をさらに備え、前記一対の電極は、前記第2のフィルタ内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されるものであってもよい。
【0012】
また、前記第2のフィルタの強制再生を実行する際は、前記一対の電極をヒータとして機能させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、PM堆積量の推定精度を向上させると共に、強制再生時における燃料供給量の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置において、静電容量からPM堆積量を推定するマップを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置において、(a)はPM堆積量の変化を示す図、(b)は排気温度の変化を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置による制御内容を示すフローチャートである。
図5】他の実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜4に基づいて、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジン)10には、吸気マニホールド10aと排気マニホールド10bとが設けられている。吸気マニホールド10aには新気を導入する吸気通路11が接続され、排気マニホールド10bには排気ガスを大気に放出する排気通路12が接続されている。さらに、排気通路12には、排気上流側から順に排気管内噴射装置13、排気温度センサ19、排気後処理装置14が設けられている。
【0017】
排気管内噴射装置13は、ECU20から出力される指示信号に応じて、排気通路12内に未燃燃料(HC)を噴射する。なお、エンジン10の多段噴射によるポスト噴射を用いる場合は、この排気管内噴射装置13を省略してもよい。
【0018】
排気温度センサ19は、排気後処理装置14よりも上流側の排気通路12内を流れる排気ガスの温度を検出する。排気温度センサ19によって検出される排気温度EGTは、電気的に接続された電子制御ユニット(以下、ECU)20に入力される。
【0019】
排気後処理装置14は、ケース14a内に排気上流側から順に酸化触媒15、DPF16を配置して構成されている。
【0020】
酸化触媒15は、例えば、コーディエライトハニカム構造体等のセラミック製担体表面に触媒成分を担持して形成されている。酸化触媒15は、排気管内噴射装置13又はポスト噴射によって未燃燃料(HC)が供給されると、これを酸化して排気ガスの温度を上昇させる。
【0021】
DPF16は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気ガスの流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。DPF16は、排気ガス中のPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PMの堆積量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆる強制再生が実行される。強制再生は、排気管内噴射装置13又はポスト噴射により酸化触媒15に未燃燃料(HC)を供給し、DPF16をPM燃焼温度(例えば、約600℃)まで昇温することで行われる。
【0022】
また、本実施形態のDPF16には、少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置されてコンデンサを形成する一対の電極17a,17bが設けられている。これら一対の電極17a,17bは、それぞれECU20と電気的に接続されている。
【0023】
ECU20は、エンジン10や排気管内噴射装置13の燃料噴射等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、ECU20は、静電容量演算部21と、PM堆積量推定部22と、再生制御部23と、閾値補正部24とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU20に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0024】
なお、本実施形態において、静電容量演算部21及び電極17a,17bは、本発明の静電容量検出手段を構成する。また、再生制御部23及び排気管内噴射装置13(又は、エンジン10の図示しない燃料噴射装置)は、本発明のフィルタ再生手段を構成する。
【0025】
静電容量演算部21は、一対の電極17a,17bから入力される信号に基づいて、これら電極17a,17b間の静電容量Cを演算する。静電容量Cは、電極17a,17b間の媒体の誘電率ε、電極17a,17bの面積S、電極17a,17b間の距離dとする以下の数式1で演算される。
【0026】
【数1】
【0027】
PM堆積量推定部22は、静電容量演算部21で演算される静電容量Cに基づいて、DPF16に捕集されたPM堆積量PMDEPを演算する。例えば、電極17a,17b間に導体性の炭素が堆積すると、これら電極17a,17b間の距離dは実質的に短くなり、静電容量Cが増加する。また、電極17a,17b間の媒体中にPMの堆積が進むと、誘電率εの増加に伴い静電容量Cも増加する。すなわち、静電容量CとPM堆積量PMDEPとの間には比例関係があり、静電容量Cを演算すればPM堆積量PMDEPを容易に推定することができる。ECU20には、予め実験等により作成した静電容量CとPM堆積量PMDEPとの比例関係を示すマップ(図2参照)が記憶されている。PM堆積量推定部22は、このマップから、静電容量演算部21で演算される静電容量Cに対応するPM堆積量PMDEPを読み取る。
【0028】
再生制御部23は、排気温度センサ19から入力される排気温度EGTと、PM堆積量推定部22で推定されるPM堆積量PMDEPとに基づいて、DPF16の強制再生を制御する。より具体的な制御内容を図3に基づいて説明する。
【0029】
ECU20には、図3(a)中に破線Aで示す第1の再生実行閾値THV1図3(a)中に破線Bで示す第2の再生実行閾値THV2(本発明の堆積量閾値)、図3(b)中に破線Cで示す排気温度閾値THV3(本発明の温度閾値)が予め記憶されている。第1の再生実行閾値THV1は、DPF16に捕集可能なPMの上限堆積量に相当する。第2の再生実行閾値THV2は、排気温度EGTが所定の高温(例えば、約400℃)の運転状態で強制再生を行う場合に、燃料供給量を抑制できるPM堆積量に相当し、第1の再生実行閾値THV1よりも小さく設定されている。排気温度閾値THV3は、強制再生を行う場合に燃料供給量を抑制しても、第2の再生実行閾値THV2まで堆積したPMを燃焼除去できる高温の排気温度(例えば、約400℃)に相当する。
【0030】
再生制御部23は、PM堆積量PMDEPが第1の再生実行閾値THV1に達すると(PMDEP≧THV1)、排気温度EGTに関係なく強制再生を実行する(図3(a),(b)の時刻T3参照)。また、再生制御部23は、PM堆積量PMDEPが第2の再生実行閾値THV2以上、第1の再生実行閾値THV1未満(THV2≦PMDEP<THV1)の時は、排気温度EGTが排気温度閾値THV3以上(EGT≧THV3)の場合に、強制再生を実行する(図3(b)の時刻T1,T2参照)。一方、PM堆積量PMDEPが第2の再生実行閾値THV2以上、第1の再生実行閾値THV1未満(THV2≦PMDEP<THV1)の条件を満たしても、排気温度EGTが排気温度閾値THV3未満(EGT<THV3)の場合は、強制再生を保留する(図3(b)中の破線Yの時刻T1〜2参照)。すなわち、排気温度EGTが低い場合は強制再生を見送りつつ、その後、運転状態の変化により排気温度EGTが上昇すると、強制再生を実行するように構成されている。これにより、強制再生時の燃料供給量を効果的に抑制することができる。
【0031】
閾値補正部24は、強制再生が継続して実行されない時間(以下、再生不実施期間TNREという)に基づいて、排気温度閾値THV3を補正する。本実施形態において、再生不実施時間TNREは、イグニッションキーがON操作された時(強制再生が終了した時も含む)から、タイマカウンタにより計時される時間を積算することで演算される。ECU20には、強制再生の不実施を許容できる上限時間TMAXが予め記憶されている。閾値補正部24は、再生不実施時間TNREが上限時間TMAXを超えると(TNRE>TMAX)、排気温度閾値THV3を低く補正する。なお、具体的な補正方法としては、例えば、強制再生の不実施期間における排気温度EGTの最高値(図3(b)のα参照)を記憶しておき、排気温度閾値THV3をこの最高値まで下方修正することが好ましい。
【0032】
次に、図4に基づいて、本実施形態の排気浄化装置による制御フローを説明する。なお、本制御はイグニッションキーのON操作と同時にスタートする。
【0033】
ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、静電容量Cから推定されるPM堆積量PMDEPが、第2の再生実行閾値THV2に達したか否かが判定される。PM堆積量PMDEPが第2の再生実行閾値THV2以上の場合(YES)、本制御はS110に進む。一方、PM堆積量PMDEPが第2の再生実行閾値THV2未満の場合(NO)、本制御はリターンされる。
【0034】
S110では、静電容量Cから推定されるPM堆積量PMDEPが、第1の再生実行閾値THV1に達したか否かが判定される。PM堆積量PMDEPが第1の再生実行閾値THV1以上の場合(YES)、本制御はS120に進み、排気温度EGTに関係なく強制再生を実行してリターンされる。一方、PM堆積量PMDEPが第1の再生実行閾値THV1未満の場合(NO)、本制御はS130に進む。
【0035】
S130では、排気温度EGTが排気温度閾値THV3に達したか否かが判定される。排気温度EGTが排気温度閾値THV3以上の場合(YES)、本制御はS140に進み、強制再生を実行してリターンされる。一方、排気温度EGTが排気温度閾値THV3未満の場合(NO)、本制御はS150に進む。すなわち、強制再生は保留される。
【0036】
S150では、再生不実施時間TNREが上限時間TMAXを超えたか否かが判定される。再生不実施時間TNREが上限時間TMAXを超えた場合(YES)、本制御はS160に進む。一方、再生不実施時間TNREが上限時間TMAX以下の場合(NO)、本制御はリターンされる。
【0037】
S160では、排気温度閾値THV3をS100〜150の間で記憶された排気温度EGTの最高値まで低くする補正を行い、本制御はリターンされる。その後、S100〜160の各制御ステップは、イグニッションキーのOFF操作まで繰り返し実行される。
【0038】
次に、本実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置による作用効果を説明する。
【0039】
従来の強制再生は、DPF差圧や運転時間に基づいて、強制再生の開始制御を行っている。しかしながら、排気流量は運転状態に伴い変化するため、DPF差圧からはPM堆積量を正確に推定できない可能性がある。また、運転時間(又は、運転距離)に基づいた強制再生の開始制御においては、排気温度が低い状態でも強制再生を実行する場合があり、燃料供給量の増加により燃費が悪化する可能性がある。
【0040】
これに対し、本実施形態の排気浄化装置は、DPF16に設けた一対の電極17a,17b間の静電容量CからPM堆積量PMDEPを推定する。また、推定されるPM堆積量PMDEPが第2の再生実行閾値THV2に達しても、排気温度EGTが低い状態(THV3未満)では強制再生を見送る一方、排気温度EGTが燃料供給量を抑制できる高温状態(THV3以上)になると、強制再生を実行するように構成されている。
【0041】
したがって、本実施形態の排気浄化装置によれば、運転状態の変化の影響を受けない静電容量Cに基づいて、PM堆積量PMDEPを高精度に推定できると共に、燃料供給量を抑制可能な高温の排気温度(THV3以上)になるまで強制再生を保留することで、燃費を効果的に向上することができる。
【0042】
また、本実施形態の排気浄化装置は、強制再生が一定期間継続して実行されない場合は、排気温度閾値THV3を低く補正するように構成されている。
【0043】
したがって、本実施形態の排気浄化装置によれば、高負荷運転の頻度が少なく、排気温度EGTが高温にならない使用条件に対しても、強制再生を確実に実行させることが可能になる。
【0044】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0045】
例えば、図5に示すように、排気通路12にDPF16を迂回させるバイパス通路18を接続し、このバイパス通路18に容量の小さい計測用DPF16a(第2のフィルタ)を備えて構成してもよい。この場合、一対の電極17a,17bを計測用DPF16a内に少なくとも一個以上の隔壁を挟んで対向配置すると共に、バイパス通路18には排気ガスの流量を調整するオリフィス18a(絞り)を設けることが好ましい。また、計測用DPF16aの強制再生を実行する場合は、一対の電極17a,17bに電圧を印加してヒータとして機能させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン
12 排気通路
13 排気管内噴射装置
14 排気後処理装置
15 酸化触媒
16 DPF(フィルタ)
19 排気温度センサ
20 ECU
21 静電容量演算部
22 PM堆積量推定部
23 再生制御部
24 閾値補正部
図1
図2
図3
図4
図5