特許第6136352号(P6136352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6136352-人工芝舗装体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136352
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】人工芝舗装体
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   E01C13/08
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-33432(P2013-33432)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163075(P2014-163075A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】595015177
【氏名又は名称】株式会社アストロ
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝之
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507737(JP,A)
【文献】 特開昭54−105833(JP,A)
【文献】 特開2008−013984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材上にパイルが立設されてなり、該パイルは、複数本のパイルの集合体よりなるコロニーとして設けられ、該コロニーが所定の間隔をあけて基材上に複数個形成されている人工芝本体と、
該人工芝本体の該パイル間に充填された自硬性土系舗装材とを備える人工芝舗装体であって、
該パイルは、織度1000デシテックス以上、厚み100μm以上、かつ芝丈30〜60mmであり、該コロニーは、パイル密度15本/cm以上、基底部の面積0.5〜5cmで、かつ隣接するコロニー同士の間隔が0.5cm以上であることを特徴とする人工芝舗装体。
【請求項2】
請求項1において、前記自硬性土系舗装材が、前記パイル間に充填後硬化されてなることを特徴とする人工芝舗装体。
【請求項3】
前記人工芝本体がウィービング織りによる人工芝本体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人工芝舗装体。
【請求項4】
前記自硬性土系舗装材は、粒径5mm以下の粒状舗装材であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の人工芝舗装体。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の人工芝舗装体を敷設してなることを特徴とする人工芝舗装面。
【請求項6】
シート状基材上にパイルが立設されてなり、該パイルは、複数本のパイルの集合体よりなるコロニーとして設けられ、該コロニーが所定の間隔をあけて基材上に複数個形成されている人工芝本体を施工面に敷設した後、該人工芝本体の該パイル間に自硬性土系舗装材を充填し、次いで水を散布して該舗装材を硬化させる舗装方法であって、
該パイルは、織度1000デシテックス以上、厚み100μm以上、かつ芝丈30〜60mmであり、該コロニーは、パイル密度15本/cm以上、基底部の面積0.5〜5cmで、かつ隣接するコロニー同士の間隔が0.5cm以上であることを特徴とする舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩経路等の舗装に用いられる人工芝舗装体に関する。詳しくは、歩経路として適し、視覚的にも優れた緑地効果のある人工芝と土系の材料を使用して自然な風合いを醸し出した人工芝舗装体に関する。本発明はまた、この人工芝舗装体を使用した人工芝舗装面及び舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水はけの改良や雑草の繁殖防止、景観整備などを目的として、歩経路等の舗装材として、土系舗装材が知られている(例えば、特許文献1)。土系舗装材は、水分の添加により硬化する性質(自硬性)を利用したもの(自硬性土系舗装材)が一般的である。自硬性舗装材は、被舗装面にこれを散布し、トンボやレーキ等で整地した後、散水することで硬化させ、容易に舗装面を提供することができる。
【0003】
一方で、緑豊かな優れた景観を提供するものとして、人工芝が提供されている(例えば、特許文献2)。また、運動競技場用人工芝の施工性、弾力性の改良を目的として、人工芝のパイル間に砂やゴムチップ等の粒状物を充填したものも提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−371504号公報
【特許文献2】特開平3−119212号公報
【特許文献3】特開2001−254310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自硬性土系舗装材は一般的に粒状であり、取り扱い性に優れ、施工が簡便であることから、適用用途も広い。しかし、その反面、広範な面積を施工すると、土系の材料であるが故に硬化表面が無機質で単調な印象を与え、暖かみに欠ける、適用場所によっては景観を損ねるという課題があった。
また、当然、その表面が硬化しているので、施工面への植栽は極めて困難であり、植物による景観の改善は実質的に不可能であるという課題もあった。
【0006】
一方、人工芝は、通常、アスファルト又はコンクリート等の下地面に接着剤等で固定されて施工されるが、経時により固定された人工芝の位置ずれや剥がれ等の問題があり、そのメンテナンスに多大な労力を要するという問題がある。
【0007】
また、人工芝のパイル間に砂やゴムチップ等の粒状物を充填したものでも、位置ずれや剥がれ等の防止は十分ではなく、しかも、砂やゴムの流出の問題もある。また、施工面は弾力性に富んだものとなるため、運動競技場としては好適であるが、歩経路には不向きである。更に、炎天下での表面温度上昇の抑制機能は十分ではなく、この点においても、歩径路等の舗装には適したものとは言い難い。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、施工性、景観及びその長期持続性に優れ、更には、表面温度上昇の抑制効果にも優れ、歩経路等の舗装に好適な人工芝舗装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく、人工芝と自硬性土系舗装材を用いた路面の改良について、以下のような検討を行った。
【0010】
被舗装面に、パイルが列状に密に並んだ人工芝本体、例えばタフト織りのロングパイル人工芝を敷設し、その上に自硬性土系舗装材を散布すると、粒状の舗装材によりパイルが倒れてしまい、散水、硬化後の完成舗装面の見栄えが悪い。このように倒れたパイルを含んだまま自硬性土系舗装材が硬化すると、完成舗装面の凹凸が激しく、また舗装面に亀裂が発生し易くなる上に、美観が著しく損なわれる。
【0011】
このパイル倒れを防止するために、自硬性土系舗装材の粒径を細かくしすぎると、舗装材がパイルに付着し、散水後においても流下せずに、人工芝面となるパイルが土系舗装材により茶色く着色してしまい、仕上がりの悪いものとなる。この場合には、完成舗装面の平坦性や美観、耐久性に問題が生じ、また散水前の舗装材の飛散の問題もあり、施工性、作業性も悪いものとなる。
【0012】
そこで、本発明者は、更に人工芝の構造について検討を重ねた。具体的には、所定の大きさのモノフィラメントの人工芝糸束(パイル)を比較的大きな塊(コロニー)とすると共に、当該コロニー間の距離を適切な値に制御することにより、パイル倒れを防止して、人工芝としての景観を損なうことなく、且つ自硬性土系舗装材を充填しやすく、施工性、耐久性に優れた完成舗装面を実現することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0014】
[1] シート状基材上にパイルが立設されてなり、該パイルは、複数本のパイルの集合体よりなるコロニーとして設けられ、該コロニーが所定の間隔をあけて基材上に複数個形成されている人工芝本体と、該人工芝本体の該パイル間に充填された自硬性土系舗装材とを備える人工芝舗装体であって、該パイルは、織度1000デシテックス以上、厚み100μm以上、かつ芝丈30〜60mmであり、該コロニーは、パイル密度15本/cm以上、基底部の面積0.5〜5cmで、かつ隣接するコロニー同士の間隔が0.5cm以上であることを特徴とする人工芝舗装体。
【0015】
[2] [1]において、前記自硬性土系舗装材が、前記パイル間に充填後硬化されてなることを特徴とする人工芝舗装体。
【0017】
] 前記人工芝本体がウィービング織りによる人工芝本体であることを特徴とする[1]又は2]に記載の人工芝舗装体。
【0018】
] 前記自硬性土系舗装材は、粒径5mm以下の粒状舗装材であることを特徴とする[1]ないし[]のいずれかに記載の人工芝舗装体。
【0019】
] [1]ないし[]のいずれかに記載の人工芝舗装体を敷設してなることを特徴とする人工芝舗装面。
【0020】
] シート状基材上にパイルが立設されてなり、該パイルは、複数本のパイルの集合体よりなるコロニーとして設けられ、該コロニーが所定の間隔をあけて基材上に複数個形成されている人工芝本体を施工面に敷設した後、該人工芝本体の該パイル間に自硬性土系舗装材を充填し、次いで水を散布して該舗装材を硬化させる舗装方法であって、該パイルは、織度1000デシテックス以上、厚み100μm以上、かつ芝丈30〜60mmであり、該コロニーは、パイル密度15本/cm以上、基底部の面積0.5〜5cmで、かつ隣接するコロニー同士の間隔が0.5cm以上であることを特徴とする舗装方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の人工芝舗装体によれば、特定の寸法の人工芝パイルを、特定のコロニー構造とすることによって、粒状の自硬性土系舗装材との組み合わせにおいて、舗装材充填時のパイル倒れを防止して、良好な施工性、作業性で外観に優れた完成舗装面を実現することができる。
しかも、土系舗装材の特徴である高い保水性を保持し、夏期に問題となる舗装面の温度上昇をも、散水により容易に抑制することができる上に、耐久性にも優れた舗装面とすることができる。
加えて、固化した自硬性土系舗装材によって人工芝を固定することができるため、人工芝本体のズレや剥がれ、パイル抜けも防止され、舗装面のメンテナンスを大幅に軽減することができる。
【0022】
本発明によれば、特定の人工芝本体に、充填材として自硬性土系舗装材を用いることにより、天然芝類似の緑豊かな、非常に美しい景観を提供することができ、かつ、自硬性土系舗装材による上述の表面温度上昇の抑制、人工芝の固定化効果に加えて、自硬性土系舗装材による雑草の繁殖防止、保水性をも生かすことができるので、各々人工芝単独又は自硬性土系舗装材単独の舗装面に比べて、その外観と機能性を格段に高めることができる。
【0023】
本発明の人工芝舗装体は、路面改良のみならず、個別にブロック体として製造し、各種護岸工事等の法面への敷設、更にはインターロックとして組み合わせて配置するブロック材料としての使用も可能であり、その工業的有用性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の人工芝舗装体の実施の形態を示す模式図であって、(a)図は、断面図であり、(b)図はパイルの頭頂部の投影面積と基底部の面積を示す平面図である。
図2】パイルの形状例を示す斜視図である。
図3】実施例2及び比較例3〜5におけるサンプルの表面温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の人工芝舗装体は、図1(a)に示すように、シート状基材に、パイル2が、複数本のパイルの集合体よりなるコロニー3として立設されてなる人工芝本体4の、該パイル2,2間(主としてコロニー同士の間の間隔)に自硬性土系舗装材5が充填され、この自硬性土系舗装材5が硬化されてなるものであり、本発明の人工芝舗装面は、この人工芝本体4を施工面に敷設した後、自硬性土系舗装材5をパイル2,2間(主としてコロニー同士の間の間隔)に充填し、次いで水を散布して自硬性土系舗装材5を硬化させることにより、舗装面を形成することを特徴とする。
【0027】
<シート状基材>
人工芝本体4のシート状基材1は、人工芝本体4の基体となるものであり、一般的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂繊維の織物シートや、これらの合成樹脂シート等が用いられ、通常、その厚さは0.3〜3.0mm程度である。
【0028】
該織物シートには、上記合成樹脂のマルチフィラメントヤーン、スリットヤーン、フラットヤーンなどが用いられ、これらのヤーンを平織り、綾織りなどで織加工することにより形成される。また、必要に応じて他の素材よりなるヤーンが混織されてもよい。
【0029】
<パイル>
本発明に係る人工芝本体4のパイル2は、シート状基材1の上面にカットパイルやハーフパイルなどの形態で立設される。
【0030】
パイル2は一般的に合成樹脂製であり、従来公知の任意の材料を使用することができる。具体的には例えば、各種ポリエチレン、各種ポリプロピレン、各種ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどからなる、緑色に着色されたマルチフィラメントヤーン、スリットヤーンなどが用いられる。通常は柔らかさ、しなやかさの観点から、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等よりなるものが好ましく用いられる。
また、本発明においては、自硬性土系舗装材の充填によってパイルが倒れないことが重要となるので、強度や剛性向上の観点から、パイルには、延伸処理されたものを用いることが好ましい。
【0031】
パイル2の形状についても任意であり、通常、その起立性を確保するために、長さ方向に直交する断面の形状が円形、長方形などの角形、菱形、V字形、U字形、Y字形、楕円形などの各種の形状に成形されたものが用いられる。図3は、パイル形状の一例を示す斜視図であり、(a)図は断面円形のパイル2aを、(b)図は断面長方形のパイル2bを、(c)図は断面V字形のパイル2cを、(d)図は断面U字形のパイル2dを、(e)図は断面Y字形のパイル2eをそれぞれ示す。また、断面V字、U字、Y字形状の頂点部分(V字、U字ではその底部先端部分)や断面Y字の分岐部分に、1本又は複数本の芯材を埋設したものであってもよく、断面円形、楕円形、又は角形のパイルの中空部分に1本又は複数本の芯材を挿入したものであってもよい。
【0032】
本発明において、パイル2の織度は1000デシテックス以上で、厚み100μm以上、かつ芝丈30〜60mmである。
ここで、デシテックス(dTex)は、繊維の太さを規定する単位であり、10km長の重量(g)に該当する。また、パイルの厚みとは、例えば図3(a)〜(e)に示すパイル2a〜2eにおいて、図中「d」で示す厚みをさす。また、パイルの芝丈とは、シート状基材1の上面から表出しているパイル2の長さをさす。
【0033】
パイル2は、芝丈30〜60mmであると、芝としての自然な風合を醸し出すことができる。パイル2の芝丈が上記範囲よりも短いと、自硬性土系舗装材を十分に充填し得ず、上記範囲よりも長いと起立性を確保することが難しくなる。
【0034】
また、芝丈30〜60mmのパイルが、織度1000dTex以上、好ましくは2000dTex以上で、厚み100μm以上、好ましくは300μm以上であることにより、起立性、耐久性が良くなり、シート状基材1に対して、良好な形状保持性を示す。ただし、パイル2の織度や厚みが過度に大きいと、人工芝としての風合が損なわれてしまうため、パイル2の織度は5000dTex以下であることが好ましく、また、厚みは600μm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明に係る人工芝本体は、シート状基材上に、形状、織度、厚み、芝丈、材質などが異なる2種以上のパイルが立設されたものであってもよく、後述のコロニーを形成するパネルについても、一つのコロニーに複数種のパイルが混在していてもよい。また、シート状基材に設けられたパイルの中には、織度1000dTex未満のものが含まれていてもよいが、一つのコロニーを構成するパイルのうちの半数以上は織度1000dTex以上であることが好ましく、一つのコロニーにおいて、織度の平均値が1000dTex以上、特に2000dTex以上となることが好ましい。
【0036】
<コロニー>
本発明に係る人工芝本体4は、シート状基材1に対して、上述のパイル2が、その複数本が集合してなるコロニー3として立設されている。ここで、コロニーとは、シート状基材面におけるパイル同士の間隔が2mm以上離れていないものをパイルの集合とし、これを一つのコロニーとしてとらえたものである。コロニーは、シート状基材1上に規則的に整列して設けられていてもよく、ランダム配置で設けられていてもよいが、通常、人工芝本体の作製工程で正方配置又は千島配置といった整列配置で設けられる。
【0037】
このコロニー3のパイル密度は15本/cm以上、好ましくは15〜60本/cm、より好ましくは20〜50本/cm、特に好ましくは25〜50本/cmである。コロニー3のパイル密度が15本/cmより低いと、芝面として十分な緑地感覚が得られず、外観が劣るものとなる。ただし、パイル密度が高過ぎると、自硬性土系舗装材の充填性が悪くなる。
ここで、パイル密度とは、コロニーの基底部の単位面積(シート状基材上に占める面積)に対するパイルの本数をさす。
なお、シート状基材上に形成された複数のコロニーのパイル密度はすべて同一である必要はなく、上記の範囲内において、コロニー毎にパイル密度が異なっていてもよい。例えば、比較的パイル密度の高いコロニーと比較的パイル密度の低いコロニーとが交互に並設されていてもよい。
【0038】
また、コロニー3の基底部の面積(以下「底面積」と称す。)は、0.5〜5cmであり、好ましくは1.0〜3.0cmである。コロニー3の底面積が小さ過ぎると芝面としての十分な緑地感覚が得られず、外観に劣るものとなる。ただし、この底面積が大き過ぎると、コロニーが大きくなりパイルの「まばら感」が否めず、美麗な緑地とならず、また自硬性土系舗装材の充填性も劣るものとなり、好ましくない。
なお、シート状基材上に形成された複数のコロニーの底面積はすべて同一である必要はなく、上記の範囲内においてコロニー毎に異なっていてもよい。例えば、比較的底面積の大きいコロニーと比較的底面積の小さいコロニーとが交互に並設されていてもよい。
【0039】
また、本発明において、コロニーは該コロニーの頭頂部の上方からの投影面積が底面積の1倍を超え15倍以下、特に2〜10倍となる頭頂開放形状であることが、自硬性土系舗装材の充填時に、人工芝本体の上方から散布した舗装材がコロニー上に留まらずにシート状基材面に落下するようになり、充填性、施工性に優れ、また、自硬性土系舗装材を充填して硬化させた後のパイルが、広がり過ぎることなく、倒れることなく、適度に分散し、見栄えのよい芝面を形成することができることから好ましい。
【0040】
図1(b)は、コロニー頭頂部の上方からの投影面積を示す模式的平面図であって、図1(b)において、実線で示す円の部分がコロニー頭頂部に該当し、破線で示す円の部分は、基底部に該当する。即ち、本発明において、この実線で囲まれる領域の面積が、破線で囲まれる領域の面積に対して1倍を超えて大きく15倍以下、特に2〜10倍であることが好ましい。以下において、このコロニーの底面積に対する頭頂部の上方からの投影面積の割合を単に「頭頂部面積比」と称す。
【0041】
なお、パイル密度、底面積と同様に、この頭頂部面積比についてもすべて同一である必要はなく、シート状基材上には、頭頂部面積比の異なるコロニーが混在していてもよい。
【0042】
また、本発明において、コロニー間隔、即ち、シート状基材1上に形成された複数のコロニーの隣接するコロニー同士の間の距離は0.5cm以上、好ましくは1cm以上とする。ここで、コロニー間隔とは、コロニーの基底部同士の間の距離をさし、図1(a)においてはLで示される。このコロニー間隔Lが0.5cm未満であると、自硬性土系舗装材の充填性が悪く、施工時の作業性に劣るものとなる。ただし、コロニー間隔が過度に大きいと、パイル密度の高い良好な芝面を形成し得ないため、コロニー間隔Lは3.0cm以下、特に1.5cm以下であることが好ましい。
なお、シート状基材上のコロニー間隔は、すべての箇所において同一である必要はなく、例えば、シート状基材の一方向とそれに交叉する方向とでコロニー間隔Lが異なっていてもよい。
【0043】
<人工芝本体の作製方法>
本発明に係る人工芝本体の作製方法は任意であるが、一般的には、パイルとシート状基材部分を編み込む方法(ウィービング、ウィービング織り)や、樹脂やゴム等からなるシートや織布にヤーンを縫い付ける方法(タフティング、タフト織り)等が挙げられる。中でもパイルが倒れにくく、且つパイルが比較的大きなコロニーとして、所定のコロニー間隔で形成することで、人工芝としての景観を損なうことなく、且つ自硬性土系舗装材を充填しやすく、耐久性に優れた完成舗装面とし得る等の理由から、ウィービング織りで人工芝本体を作製することが好ましい。
ウィービング織りであれば、ゲージ幅が固定されステッチの間隔でパイル密度を調整するタフト織りと異なり、様々な形状にパイル及びそのコロニーを形成することができる。
【0044】
<自硬性土系舗装材>
本発明において、上記のような人工芝本体4のパイル2,2間に充填する自硬性土系舗装材は、水等と混合することによって常温下で硬化(固化)するものであり、常温固化無機材料とも称される。
【0045】
ここで、「自硬性」とは、硬化することにより自然土壌と同等の貫入抵抗値を示すものであり、例えば、「土系舗装材料」に関する特開昭61−257503号公報では、直径6.4mmの貫入針を1インチ貫入させたときの貫入抵抗値が35ポンド以上であることが示されている。本発明で用いる自硬性土系舗装材は、この貫入抵抗値が50〜130ポンド程度のものが好ましい。
【0046】
本発明で用いる自硬性土系舗装材としては特に制限はなく、粘土、真砂土、砂、発泡ガラス、陶器粉砕物などのリサイクル骨材などに、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの固化材と、必要に応じて顔料(色粉)を混合したものが挙げられる。
【0047】
このような自硬性土系舗装材は、通常粒状物として提供されている。その粒径は、小さ過ぎると飛散し易く取り扱い性が悪いが、過度に大きいとパイル間に充填しにくいことから、最大粒径が5mm以下で、粒径0.5〜2mm程度のものを主体とする、即ち、平均粒径が0.5〜2mm程度のものであることが好ましい。
【0048】
人工芝本体4への自硬性土系舗装材5の充填量には特に制限はないが、過度に少ないと、自硬性土系舗装材を充填することによる本発明の効果を十分に得ることができず、過度に多いと、舗装材充填面からのパイルの表出長さが短くなって、芝面としての外観を損ねることから、パイルの15〜35mm程度の長さ部分が表出するように、例えば、図1(a)における自硬性土系舗装材5の充填層厚さhが20〜50mm程度となるように充填することが好ましい。
【0049】
人工芝本体4のパイル2,2間に自硬性土系舗装材5を充填するには、人工芝本体4の上方から必要量の自硬性土系舗装材5を散布した後、レーキ、トンボ等を用いて表面を均せばよい。本発明で用いる人工芝本体は、パイル寸法やコロニー密度、コロニー間隔等が自硬性土系舗装材5の充填に適した構成とされているため、上記のように、人工芝本体4の上方から自硬性土系舗装材5を散布して均すのみで、パイル倒れを防止した上で、また、パイル上に自硬性土系舗装材を堆積させることなく、パイル2,2間に効率的に充填することができる。
【0050】
パイル2,2間に自硬性土系舗装材5を充填した後は、水、或いは水系樹脂材等の水系材料を散布して、自硬性土系舗装材5を硬化させる。この散水の方法や散水量には特に制限はなく、用いる自硬性土系舗装材5の硬化に必要な量の水を付与できればよい。
【0051】
散水により硬化した自硬性土系舗装材5は、人工芝本体4の位置ずれやパイルの抜けを防止すると共に、その保水性で、散水された水を保持して、これを徐々に蒸発させることにより、蒸発時の気化熱で炎天下における表面温度上昇の抑制効果を示す。
【実施例】
【0052】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0053】
以下の実施例及び比較例において用いた人工芝本体は、ウィービング織りにより作製されたLDPE製のものであり、厚さ2.0mmの織物シートに、断面U字型のカットパイルの集合体よりなるコロニーが正方配置で形成されたものである。
【0054】
また、人工芝本体への充填材としては、以下のものを用いた。
自硬性土系舗装材: 酸化マグネシウムと真砂土を質量比9:1で混合してなる
粒状舗装材。平均粒径2.0mm、最大粒径5mm。
ゴムチップ/砂 : SBR素材の廃ゴム材よりなるゴムチップ(平均粒径3.3m
m)と砂(川砂)の質量比1.2:1の混合物。
【0055】
[実施例1〜6,比較例1〜5]
表1に示す仕様のパイル及びコイルを有する人工芝本体のパイル間に、表1に示す充填材を充填して舗装路面を構成し、その評価を行った。
【0056】
作成したサンプルは、310mm×230mm(0.0713m)角の底面を有し、高さ60mmの壁面を四方に有する樹脂製容器の底面に人工芝本体を敷き、これに充填材を充填した人工芝舗装体モデルである。各充填材の使用量は充填材の充填厚みが容器底面から30mm(基材シート上面から28mm)となる量とした。
【0057】
なお、比較例3では充填材を用いず、また、比較例5は、人工芝本体、充填材を用いないアスファルト路面にて同様の評価を行った。
【0058】
実施例1〜6及び比較例1,2では、サンプルの作成に際して、各々の人工芝本体に、自硬性土系舗装材を上面から散布してパイル根本に充填し、その後散水して舗装材を硬化させた。なお、比較例3〜5は充填材が無いか又は硬化する充填材を用いていないので、硬化のための散水は行わなかった。
【0059】
この充填作業において、作業性に関する優劣が生じた。
即ち、実施例1〜6及び比較例1、4におけるサンプルの作成においては、充填材を充填する際、レーキを用い、レーキを移動させながら芝パイルを倒してコロニー根本への充填径路を確保して、コロニー間に充填材を連続して容易に投入することができた。しかし、比較例2では、コロニー間隔が小さく、コロニーが密なために、上述の方法では充填が困難であったので、コロニー間に個別に充填した。
【0060】
得られた各サンプルについて、以下の評価を行って、結果を表1に示した。
【0061】
<外観>
各サンプル(実施例1〜6及び比較例1,2では、硬化後のサンプル)の外観を目視にて観察し、以下の評価基準で評価した。
◎:緑が鮮やかに一面を覆う感覚を奏する。
○:やや緑が少ないが、芝面として充分な緑地感覚を想起する。
×:土面部分が多く、芝面としての感覚を想起せず。
−:人工芝、又は充填材を使用していないので、評価せず。
【0062】
<表面温度差>
加熱源としてランプ(岩崎電気社製 赤外線ランプIR250WRH)を用い、これを各サンプル(実施例1〜6及び比較例1,2では硬化後のサンプル)の表面(芝面)から70cm上方に設置して、サンプル表面を加熱した。
加熱開始から60分経過した時点で、表面温度が上昇したサンプルに、降水量0.1mm/mの小雨相当の水道水(サンプルへの散水量は7.13mL相当)を霧吹きにて散水し、散水後60分経過後の表面温度を測定した。そして散水直後と散水後60分経過後の表面温度差(温度上昇差)を求め、結果を表1に示した。また、実施例2及び比較例3,4,5における表面温度の経時変化を図3に示した。この表面温度差が小さい程、表面温度上昇の抑制効果が高いことを示し、この表面温度差は10℃以下であることが好ましい。
なお、サンプル表面の温度測定には、赤外線カメラ(フリアーシステムズジャパン社製 赤外線カメラ FLIR i5)を用い、得られた測定面の平均温度を当該測定器により得、この平均温度を測定温度とした。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より明らかなように、本発明の人工芝舗装体は外観に優れ、また、その表面温度上昇の抑制効果に優れる。この表面温度上昇の抑制効果は、本発明の人工芝舗装体が保水性を有し、散水後、人工芝舗装体に保水された水分が蒸発することで表面温度の上昇が抑制されているものと考えられる。
【符号の説明】
【0065】
1 シート状基材
2,2a,2b,2c,2d,2e パイル
3 コロニー
4 人工芝本体
5 自硬性土系舗装材
図1
図2
図3