特許第6136361号(P6136361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136361
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】超電導バルク磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   H01F6/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-36068(P2013-36068)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-165382(P2014-165382A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 英一
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−358007(JP,A)
【文献】 特開2011−142303(JP,A)
【文献】 特開2012−099564(JP,A)
【文献】 特開2001−307916(JP,A)
【文献】 特開平11−284238(JP,A)
【文献】 特開2004−349276(JP,A)
【文献】 特開平02−106004(JP,A)
【文献】 特開平09−255333(JP,A)
【文献】 特開2011−142304(JP,A)
【文献】 特開平02−192104(JP,A)
【文献】 特開2008−235263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の超電導バルク体から構成される第一の超電導バルク体、及び前記第一の超電導バルク体の外周を取り囲む中空状の第二の超電導バルク体からなる超電導バルク磁石であって、前記第一の超電導バルク体は中空状でない複数の三角形状、四角形状、又は、六角形状の超電導バルク体を所定の方向に並べて配置して面状に組み合わせた超電導バルク集合体構造であり、前記第二の超電導バルク体は一体構造であることを特徴とする超電導バルク磁石。
【請求項2】
前記第一の超電導バルク体、または前記第一の超電導バルク体及び前記第二の超電導バルク体を構成する超電導バルク体が、RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した超電導体であることを特徴とする請求項1記載の超電導バルク磁石。
【請求項3】
前記第一の超電導バルク体を構成する超電導バルク体が、RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した超電導体であり、前記第二の超電導バルク体がMgとBとからなる超電導バルク体であることを特徴とする請求項1記載の超電導バルク磁石。
【請求項4】
前記第二の超電導バルク体の充填率が80%以上であることを特徴とする請求項3記載の超電導バルク磁石。
【請求項5】
前記第一の超電導バルク体を構成する複数の超電導バルク体の間、及び前記第一の超電導バルク体と前記第二の超電導バルク体との間に、低融点金属層、樹脂層、又はグリース層からなる緩衝層が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の超電導バルク磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導バルク体を利用した超電導バルク磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した超電導バルク体は、強いピン止め力を有しているので、従来の永久磁石に比べて非常に強力な磁場発生源になりうる。このような超電導バルク体を利用した磁場発生源は超電導バルク磁石と呼ばれている。超電導バルク磁石には、コンパクトで強磁場、高い磁場勾配という優れた特長があり、磁気分離を始め、船舶用モータや風力発電用発電機などの磁石を利用する応用において、これらの機器を大幅に小型軽量化するものとして期待されている。
【0003】
磁性体に作用する磁気力は、単純には磁場強度と磁場勾配との積に比例する。個々の超電導バルク体の磁場分布は中央部の磁場強度が高くなっているため、高い磁場勾配を有している。従って、超電導バルク体を利用すれば、コンパクトで磁気力の強い磁石を構成することができる。特に、複数個の超電導バルク体を並べて配置することにより超電導バルク磁石を構成すると、高い磁場勾配を有して空間的に周期性がある磁場を発生させることができるため、超電導バルク体の強い磁気力を有効に利用できる。ここで複数個の超電導バルク体を並べて配置したものを超電導バルク集合体と呼ぶことにする。複数個の超電導バルク体を並べて配置した超電導バルク集合体を用いて超電導バルク磁石を構成することは、例えば、特許文献1に提案されている。特許文献1には、立方体や直方体等の多角柱体形状の複数個の超電導バルク体をエポキシ樹脂等の接着剤で接着させて一体化させた超電導バルク集合体を用いて超電導バルク磁石を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−307916号公報
【特許文献2】特開2011−142303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、複数個の超電導バルク体を並べて配置した超電導バルク集合体を用いて超電導バルク磁石を構成すれば、高い磁場勾配を有して空間的に周期性がある磁場を発生させることができる。ところが、超電導体は低温に冷却してクライオスタット等の冷却容器内に収納されて用いられるため、冷却容器の隔壁を介しても強い磁気力が得られるように、より磁気力の強い超電導バルク磁石が求められている。しかしながら、特許文献1に記載されているような、立方体や直方体等の多角柱体形状の複数個の超電導バルク体を単に縦や横に配置した超電導バルク集合体を用いただけでは、エポキシ樹脂等で一体化しても個々の超電導バルク体間に超電導電流が流れるわけではなく、隣り合う超電導バルク体の間では磁場強度がゼロになっているため、磁気力の更なる向上は難しいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、上記の問題を解決し、複数個の超電導バルク体からなる超電導バルク集合体を利用した超電導バルク磁石において、磁気力の大きい超電導バルク磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超電導バルク体を利用した超電導バルク磁石は、以下のとおりである。
(1)複数個の超電導バルク体から構成される第一の超電導バルク体、及び前記第一の超電導バルク体の外周を取り囲む中空状の第二の超電導バルク体からなる超電導バルク磁石であって、前記第一の超電導バルク体は中空状でない複数の三角形状、四角形状、又は、六角形状の超電導バルク体を所定の方向に並べて配置して面状に組み合わせた超電導バルク集合体構造であり、前記第二の超電導バルク体は一体構造であることを特徴とする超電導バルク磁石。
(2)前記第一の超電導バルク体、または前記第一の超電導バルク体及び前記第二の超電導バルク体を構成する超電導バルク体が、RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した超電導体であることを特徴とする(1)記載の超電導バルク磁石。
(3)前記第一の超電導バルク体を構成する超電導バルク体が、RE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した超電導体であり、前記第二の超電導バルク体がMgとBとからなる超電導バルク体であることを特徴とする(1)記載の超電導バルク磁石。
(4)前記第二の超電導バルク体の充填率が80%以上であることを特徴とする(3)記載の超電導バルク磁石。
)前記第一の超電導バルク体を構成する複数の超電導バルク体の間、及び前記第一の超電導バルク体と前記第二の超電導バルク体との間に、低融点金属層、樹脂層、又はグリース層からなる緩衝層が設けられていることを特徴とする(1)〜()のいずれか1つに記載の超電導バルク磁石。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、複数個の超電導バルク体からなる超電導バルク集合体を利用した超電導バルク磁石において、磁気力の大きい超電導バルク磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る超電導バルク磁石の一例を示す概念図である。
図2】従来の超電導バルク磁石の一例を示す概念図である。
図3】超電導バルク磁石の磁場分布を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る超電導バルク磁石の別の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図に沿って説明する。
図1は、本実施形態における超電導バルク磁石の一例を示す概念図である。図1は、中空状でない四角形状の超電導バルク体1が複数個並べられて構成された第一の超電導バルク体2の外周を第二の超電導バルク体3が取り囲む構成となっている。比較のため、図2に従来技術の一例を示す。図2に示す例も、四角形状の超電導バルク体10が複数個並べられて超電導バルク集合体を構成しているが、その外周を取り囲む第二の超電導バルク体がない。なお、図1及び図2に示す例では、超電導バルク体を収納する容器や冷却システム等は省略されている。
【0011】
図3は、図1及び図2に示した超電導バルク磁石の表面での磁場分布の概念図である。個々の超電導バルク体の磁場分布は中央部の磁場強度が大きく、高い磁場勾配を有しているため、超電導バルク体を複数個並べて配置して超電導バルク集合体とすることにより、高い磁場勾配を有して空間的に周期性がある磁場を発生させることができる。しかし、図2に示す従来技術の場合、その磁場分布は図3(a)に示すように、高い磁場勾配は有しているものの、隣り合う超電導バルク体との間では磁場強度がゼロになる。それは、図2に示すように個々の超電導バルク体10をエポキシ樹脂等で一体化して配置して超電導バルク集合体としただけでは、隣り合う超電導バルク体間には超電導電流が流れないためである。
【0012】
一方、本実施形態の場合、複数個の超電導バルク体1からなる第一の超電導バルク体2を構成する隣り合う超電導バルク体間には超電導電流が流れないものの、第一の超電導バルク体2の外周を取り囲むように第二の超電導バルク体3が存在するため、その磁場分布は図3(b)に示すように、ほぼ同じような磁場勾配を有しつつ磁場分布全体が上方にシフトした磁場分布になっている。すなわち、第二の超電導バルク体3は、複数個の超電導バルク体1からなる第一の超電導バルク体2から発生する磁場分布を嵩上げする機能を有する。そのため、磁場強度と磁場勾配との積で表わされる磁気力において、磁場勾配は図1及び図2に示す例ではほぼ同じであるが、全体的な磁場強度が高いため、本実施形態である図1に示す構成の超電導バルク磁石においては、その磁気力が格段に大きくなる。なお、第二の超電導バルク体3の大きさは、嵩上げしたい磁場の大きさや冷却温度に応じて決められる。
【0013】
図3(b)に示すような磁場分布は、図2に示す従来技術の超電導バルク磁石に、電磁石や超電導コイルを用いた超電導磁石による外部磁場を組み合わせることでも可能であるが、電磁石や超電導コイルを用いた超電導磁石と組み合わせるとコンパクトで強磁場という超電導バルク磁石の優れた特長を損なうので好ましくない。本実施形態の場合、第二の超電導バルク体3が、電磁石や超電導コイルを用いた超電導磁石による外部磁場を印加することと同じ機能を有しているため、コンパクトで強磁場という超電導バルク磁石の優れた特長を損なうことなく超電導バルク磁石の磁気力を高めることができる。
【0014】
本発明に用いられる第一の超電導バルク体を構成する超電導バルク体としては、単結晶状のRE1Ba2Cu3Oy(REはY又は希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素。yは酸素量で、6.8≦y≦7.1)中にRE2BaCuO5が微細分散した酸化物超電導バルク体が、強いピン止め力を有しており、捕捉磁場特性が優れているため好ましい。本発明に用いられる第二の超電導バルク体としても、RE1Ba2Cu3Oy中にRE2BaCuO5が微細分散した酸化物超電導バルク体が好ましい。しかし、第二の超電導バルク体には、第一の超電導バルク体により発生する磁場分布を嵩上げする機能が求められるので、第二の超電導バルク体は、複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体のように複数個の超電導バルク体をエポキシ等で一体化したものではなく、第二の超電導バルク体全体に超電導電流が流れるようにする必要があり、一体構造の超電導バルク体とする。
【0015】
一方、RE1Ba2Cu3Oy中にRE2BaCuO5が微細分散した酸化物超電導バルク体は、高い捕捉磁場特性を発揮させるには全体を単結晶状にする必要があるが、単結晶状の大きな超電導バルク体を一体構造で製造するのは困難であるため、大型の超電導バルク磁石である第二の超電導バルク体に適用することは難しい。このことから大型の超電導バルク磁石である第二の超電導バルク体にはMgとBとからなる多結晶状MgB2の超電導バルク体を用いてもよい。RE1Ba2Cu3Oy中にRE2BaCuO5が微細分散した酸化物超電導バルク体の超電導転移温度(Tc)が90K程度であるのに比べて、MgとBとからなる超電導バルク体(MgB2)の超電導転移温度(Tc)は40K程度と低いものの、単結晶状ではなく多結晶状の超電導バルク体でも全体に超電導電流が流れる。多結晶状の超電導バルク体の製造は単結晶状の超電導バルク体の製造に比較して容易である。
【0016】
第二の超電導バルク体がMgとBとからなる超電導バルク体である場合、その充填率は80%以上であることが好ましい。ここで充填率とは、理論密度に対する実際の密度の比である。MgとBとからなる超電導バルク体は、一般的にはMg粉末とB粉末とを混合して成形したものを焼結して作製されるが、Mgの融点が650℃でBの融点が2076℃と大きく異なるため、MgがBに吸収される形で反応が進み、充填率が50%程度と低くなる。充填率が低いMgとBとからなる超電導バルク体の機械的強度は極端に小さくなる。本発明の超電導バルク磁石では、第二の超電導バルク体は複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体の外周を取り囲むように配置されるので、複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体を構成する超電導バルク体同士の磁気的な反発力を第二の超電導バルク体が受けることになる。したがって、第二の超電導バルク体の機械的強度が極端に小さいと、第二の超電導バルク体の外周に補強リングを設けたとしても、第二の超電導バルク体が破損するおそれがある。このことから充填率が80%以上であれば、MgとBとからなる超電導バルク体においても十分な機械的強度を得ることができる。充填率80%以上のMgとBとからなる超電導バルク体を得るには、焼結中に圧力を加えることが有効な手段である。焼結中に圧力を加える手段としては、例えば、熱間等方圧加圧(HIP)などがある。
【0017】
本発明の超電導バルク磁石では、複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体と第二の超電導バルク体とを組み合わせて超電導バルク磁石を構成するものであるが、個々の超電導バルク体間にはお互いの磁場による反発力が作用する。すなわち、隣り合う超電導バルク体は互いに反発力を及ぼしあっている。個々の超電導バルク体の加工精度が低いと、隣り合う超電導バルク体間の反発力が均一に伝わらず、超電導バルク体の一部に局所的な反発力が作用して破損する恐れがあるため、個々の超電導バルク体を精度よく加工する必要がある。そこで、図4に示すように、複数個の超電導バルク体1の間や、その外周を覆う第二の超電導バルク体3との間に、緩衝層4を設けてもよい。これにより、隣り合う超電導バルク体間の反発力をより均一に伝えることができ、超電導バルク体の破損を低減することができる。本発明に用いられる緩衝層としては、超電導バルク体よりも柔らかければよく、樹脂、低融点金属やグリース等のいずれかが好ましい。また、図4に示すように、複数個の超電導バルク体1を縦方向及び横方向に配置して第一の超電導バルク体を構成するようにしてもよい。さらに本実施形態では、四角形状の超電導バルク体を複数並べる例について説明したが、その他の多角形(三角形や六角形など)の超電導バルク体を複数並べてもよい。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
Ptを0.5質量%およびAgを10質量%含み、かつGd1Ba2Cu3Oy中に25モル%のGd2BaCuO5が微細分散した一辺30mm、高さ15mmの四角形状の超電導バルク体を3個並べて第一の超電導バルク体とし、その外周に外形130mm×70mm、高さ15mmに90mm×30mmの内穴を開けた、第一の超電導バルク体と同じ組成からなる第二の超電導バルク体1個を組み合わせて超電導バルク磁石を作製した。第一の超電導バルク体を構成する個々の超電導バルク体及び第二の超電導バルク体は、どちらも溶融結晶成長法で単結晶状に結晶成長させたバルク体から所定の形状に加工した。
【0019】
この超電導バルク磁石の外周を肉厚5mmのステンレス鋼のリングで補強した後、外部磁場3Tで磁場中冷却して着磁し、液体窒素中(77K)で磁場分布を測定した。この超電導バルク磁石は、個々の第一の超電導バルク体の中央部の磁場強度が強くなる磁場分布を有し、隣り合う超電導バルク体の間の磁場強度は1.3Tであった。比較のため、本実施例と同じ材料の複数の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体のみで同様の測定を行ったところ、隣り合う超電導バルク体の間の磁場強度は0.1T以下であった。本結果から、本発明の構造を有する超電導バルク磁石において、磁気力が大きな超電導バルク磁石を提供することができる。
【0020】
(実施例2)
CeO2を1.0質量%含み、かつY1Ba2Cu3Oy中に20モル%のY2BaCuO5が微細分散した一辺50mm、高さ20mmの四角形状の超電導バルク体を3個並べて第一の超電導バルク体とし、その外周に外形180mm×80mm、高さ20mmに150mm×50mmの内穴を開けた、MgB2の組成からなる第二の超電導バルク体1個を組み合わせて超電導バルク磁石を作製した。第一の超電導バルク体を構成する個々の超電導バルク体は、溶融結晶成長法で単結晶状に結晶成長させたバルク体から所定の形状に加工した。一方、第二の超電導バルク体は、HIP法により98MPaの圧力で作製した多結晶状のバルク体から所定の形状に加工したものであり、その充填率は80%であった。また、複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体と第二の超電導バルク体とを組み合わせて超電導バルク磁石を作製する際、個々の超電導バルク体の間及び第一の超電導バルク体と第二の超電導バルク体との間にグリースを塗布して緩衝層とした。
【0021】
この超電導バルク磁石の外周を肉厚2mmのステンレス鋼のリングで補強した後、外部磁場5Tで磁場中冷却して着磁し、20Kで磁場分布を測定した。この超電導バルク磁石は、個々の第一の超電導バルク体の中央部の磁場強度が強くなる磁場分布を有し、隣り合う第一の超電導バルク体の間の磁場強度は1Tであった。比較のため、加圧をしない焼結法で作製した充填率50%の第二の超電導バルク体であるMgB2を用いた超電導バルク磁石で同様の測定を行ったところ、第二の超電導バルク体にクラックが発生し、そこから磁場が漏れたため、隣り合う超電導バルク体の間の磁場強度は0.1T以下であった。本結果から、本発明の構造を有する超電導バルク磁石において、磁気力が大きな超電導バルク磁石を提供することができる。
【0022】
(実施例3)
Ptを0.5質量%およびAgを15質量%含み、かつGd1Ba2Cu3Oy中に30モル%のY2BaCuO5が微細分散した外径40mm×30mm、高さ15mmの四角形状の第一の超電導バルク体6個を3個×2列に並べて超電導バルク集合体とし、その外周に外形130mm×120mm、高さ15mmに90mm×80mmの内穴を開けた、MgB2の組成からなる第二の超電導バルク体1個を組み合わせて超電導バルク磁石を作製した。第一の超電導バルク体を構成する個々の超電導バルク体は、溶融結晶成長法で単結晶状に結晶成長させたバルク体から所定の形状に加工した。一方、第二の超電導バルク体は、HIP法により196MPaの圧力で作製した多結晶状のバルク体から所定の形状に加工したもので、その充填率は90%であった。また、複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体と第二の超電導バルク体とを組み合わせて超電導バルク磁石を作製する際、個々の超電導バルク体の間及び第一の超電導バルク体と第二の超電導バルク体との間に融点60℃の低融点金属を充填して緩衝層とした。
【0023】
この超電導バルク磁石の外周を肉厚3mmのステンレス鋼のリングで補強した後、外部磁場5Tで磁場中冷却して着磁し、30Kで磁場分布を測定した。この超電導バルク磁石は、個々の超電導バルク体の中央部の磁場強度が強くなる磁場分布を有し、隣り合う超電導バルク体の間の磁場強度は1Tであった。比較のため、緩衝層を設けない超電導バルク磁石で同様の測定を行ったところ、6個の超電導バルク体のうち1個に小さな破損が発生し、その箇所で複数個の超電導バルク体からなる第一の超電導バルク体から発生する周期的な磁場分布に乱れが生じた。本結果から、本発明の構造を有する超電導バルク磁石において、磁気力が大きな超電導バルク磁石を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 超電導バルク体
2 第一の超電導バルク体
3 第二の超電導バルク体
4 緩衝層
図1
図2
図3
図4