(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の領域と前記第2の領域に形成される前記複数の凸部又は複数の凹部において、前記平坦面と前記凸部の上面又は前記平坦面と前記凹部の底面までの高低差が150nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示体。
前記第1の領域に形成される複数の凸部又は複数の凹部における前記高低差と、前記第2の領域に形成される複数の凸部又は複数の凹部における前記高低差との比率が1.1以上且つ2以下の間に設定することを特徴とする請求項3に記載の表示体。
前記第1の領域に対応する表示領域と前記第2の領域に対応する表示領域とを所要のパターン状に配列したことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の表示体。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、ブランド品、電子機器及び個人認証媒体などの物品は、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品には、偽造や複製が困難な表示体を貼付ないし支持させることで偽造防止対策が施されている。
【0003】
従来、偽造防止対策を施した種々の表示体が提案されている。
例えば、特許文献1では、蛍光発光インキを用いた蛍光画像形成物のセキュリティレベルを上げるために、異なる可視光領域の波長の蛍光を発光する2種類の蛍光体を含有する蛍光画像形成物が提案されている。
【0004】
特許文献2では、複数の基本色要素C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンダ)が配列された色表示面と、この色表示面に配列された基本色要素C、Y、Mに選択的に無色蛍光インキを印刷したカラー潜像とが設けられ、紫外線が照射されたときにカラー画像として目視できるカラー潜像表示体が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、凹版印刷物に対して特定の角度からのみ確認できる凹版潜像を施すことが開示され、また、特許文献4では、ホログラム層と光反射性層と配向膜との組み合わせによる真偽判定用媒体が開示されている。
【0006】
その他、偽造防止対策を施した表示体に関連する技術が多く提案されている(特許文献5〜8)。
【0007】
さらに、近年は、ホログラムを設けた真偽判定用媒体が多く用いられるようになってきた。ここで、ホログラムとはレリーフ型の回折格子により形成されるレリーフ形ホログラムと、レーザーの干渉露光により形成される体積型ホログラムとが含まれており、いずれも虹色に光る回折光が観察できることが特徴となっている。
【0008】
ホログラムを設けた真偽判定用媒体が用いられるようになった結果、ホログラム技術が広く認知されてしまい、偽造品の発生が増加傾向にある。そのため、回折光によって虹色に光る特徴のみでは、十分な偽造防止効果を発揮できない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたもので、より高度なレベルの偽造防止効果を発揮できる表示体及びその真偽判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、
第1
の例に対応する発明は、光透過性を有する基材の一方の面側に形成された構造形成層と、この構造形成層の少なくとも一部の領域を覆うように形成された光反射層とを備えた表示体であって、前記構造形成層は、少なくとも前記基材面と略平行な平坦面に形成された当該平坦面と略平行な上面を有する複数の凸部又は当該平坦面と略
平行な底面を有する複数の凹部とが特定の高さ又は特定の深さに形成されている第1の領域と、前記複数の凸部又は前記複数の凹部が前記特定の高さ又は深さとは異なる高さ又は深さで形成されている第2の領域とが設けられ、前記第1の領域における呈色と前記第2の領域における呈色が略同一にて目視確認可能にしたことを特徴とする表示体である。
【0012】
すなわち、
第1
の例に対応する発明は、構造高さ又は構造深さの異なる凸部構造の領域又は凹部構造の領域を組み合わせることによって、より高度なレベルの偽造防止効果を発揮できる。
【0013】
第2
の例に対応する発明は、
第1
の例に対応する発明に記載の表示体において、前記第1の領域と前記第2の領域の色差が13以下であることを特徴とする。
【0014】
第3
の例に対応する発明は、
第1又は
第2
の例に対応する発明に記載の表示体において、前記平坦面と前記凸部の上面又は前記平坦面と前記凹部の底面までの高低差が150nm以上500nm以下であることを特徴とする。
【0015】
第4
の例に対応する発明は、
第1ないし
第3
の例の何れかに対応する発明に記載の表示体において、前記第1の領域に形成される複数の凸部又は複数の凹部における前記高低差と、前記第2の領域に形成される複数の凸部又は複数の凹部における前記高低差との比率が1.1以上且つ2以下の間に設定することを特徴とする。
【0016】
第5
の例に対応する発明は、
第1ないし
第4
の例の何れかに対応する発明に記載の表示体において、前記第1の領域に対応する第1の表示領域と前記第2の領域に対応する第2の表示領域とを所要のパターン状に配列したことを特徴とする。
【0017】
また、
第6
の例に対応する発明は、
第1ないし
第5の何れかに対応する発明に記載の表示体であって、この表示体の表面に可視光を散乱させる散乱フィルム又は散乱板を重ねることで、少なくとも前記第1の領域及び前記第2の領域からグレイスケールパターンを目視観察できるようにしたことを特徴とする表示体の真偽判定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より高度なレベルの偽造防止効果を発揮できる表示体を提供することが可能となる。
【0019】
第1
の例に対応する発明によれば、構造形成層に複数の凸部又は凹部が形成され、且つ光反射層を施すことで、その表示体から特定の呈色を目視観察することが可能となる。その特定の呈色は、従来のホログラムの回折光による虹色に光る特徴とは異なっており、従来の偽造防止技術よりも高いレベルの偽造防止効果を有する表示体を提供することが可能となる。また、第1の領域と第2の領域それぞれの領域において、複数の凸部の構造高さ又は複数の凹部の構造深さが異なるように形成されているにも関らず、第1の領域と第2の領域とにおける呈色が略同一となる表示体を提供できる。
【0020】
第2
の例に対応する発明によれば、第1の領域における呈色と第2の領域における呈色との色差が13以下であることにより、第1の領域と第2の領域とにおける呈色が略同一となる表示体を提供できる。
【0021】
第3
の例に対応する発明によれば、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ形成される複数の凸部の構造高さ、又は複数の凹部の構造深さがそれぞれ150nm以上500nm以下であることにより、可視光領域の呈色が目視観察可能となる表示体を提供できる。
【0022】
第4
の例に対応する発明によれば、第1の領域と第2の領域とにそれぞれ形成される複数の凸部の構造高さ又は複数の凹部の構造深さの比率が、1.1以上且つ2以下であることにより、第1の領域と第2の領域の呈色が略同一となる表示体を提供できる。
【0023】
第5
の例に対応する発明によれば、第1の領域に対応する第1の表示領域と第2の領域に対応する第2の表示領域とを所要のパターン状に配列してなる表示体とすれば、その配列された複数の第1の表示領域と複数の第2の表示領域との呈色が略同一となり、表示体から所要のパターンを目視認識できない状態とすることができる。
【0024】
第6
の例に対応する発明によれば、請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の発明の表示体へ可視光を散乱させる散乱フィルム又は散乱板を設置することにより、グレイスケールパターンが目視確認可能となり、表示体の真偽の有無を容易に判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には全て同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図1は本発明に係る表示体の一実施の形態を示す断面図である。
図1において、100は偽造防止手段を施した表示体であって、この表示体100の主面に平行な方向で、かつ互いに直交する方向をX方向とY方向とし、当該主面に垂直な方向をZ方向とする。
【0028】
表示体100は、構造形成層10と光反射層11とを含む構成である。なお、構造形成層10は光透過性を有するフィルムなどの基材に施される。
【0029】
構造形成層10の一方の主面には、第1の領域DM1及び第2の領域DM2が形成されている。第1の領域DM1及び第2の領域DM2は、何れも後に説明する微細な凹凸構造が形成されている。
【0030】
この構造形成層10は、第1の領域DM1又は第2の領域DM2に形成されている微細な凹凸構造とは異なる構造が形成されている領域が複数含まれていてもよい。
【0031】
構造形成層10の材料は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを使用することができる。
【0032】
構造形成層10は、光透過性を有していれば単層構造でもよく、多層構造であってもよい。また、コレステリック液晶など光学異方性を有する材料から構成されていてもよい。さらに、樹脂への染料の添加などにより、着色されていてもよく、金属、半導体、セラミック、磁性材料などからなる微粒子が添加されていてもよい。
【0033】
また、構造形成層10の材料としては、例えばSiO
2(二酸化ケイ素)やTiO
2(二酸化チタン)、MgF
2(フッ化マグネシウム)などの無機材料やそれらの混合物を使用することができる。
【0034】
なお、無機材料を構造形成層10とする際には、例えば、蒸着、スパッタリングなどの薄膜形成技術により形成することができる。
【0035】
光反射層11は、構造形成層10に形成された第1の領域DM1及び第2の領域DM2の何れにおいても少なくとも一部の領域を被覆するように形成される。光反射層11を設けることは、後に説明する光学効果が生じやすくするためである。
【0036】
ちなみに、
図1に示す表示体100においては、光反射層11は第1の領域DM1及び第2の領域DM2の全領域を覆うように形成されている。
【0037】
光反射層11の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、銅、銀及び金などの金属材料が挙げられる。また、光反射層11は、単層構造でもよく、多層構造であってもよい。
【0038】
また、SiO
2やTiO
2、MgF
2などの無機材料やそれらの混合物、誘電体材料の単層構造や多層構造であってもよい。
【0039】
光反射層11は、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの薄膜形成技術により形成することができる。更には、光反射層11を空間的に分布させるために、マスク蒸着、化学的エッチング、レーザー加工などの手法が用いられる。光反射層11を空間的に分布させることにより、光反射層11の分布を用いて像を表現することもできる。
【0040】
図1に示す表示体100は、一例として光反射層11が構造形成層10の前面側に位置するように設けているが、構造形成層10の後面側に設けてもよい。
【0041】
次に、構造形成層10の第1の領域DM1及び第2の領域DM2に形成される幾つかの凹凸構造例について説明する。
【0042】
図2は第1の領域DM1及び第2の領域DM2の凹凸構造の一例を示す斜視図である。
【0043】
表示体100においては、第1の領域DM1には凹部構造20、第2の領域DM2には同じく凹部構造21が形成されている。凹部構造20は、四角柱形状を有し、かつその構造深さがH1となっている。凹部構造21は、同様に四角柱形状を有し、その構造深さがH2となっている。これら凹部構造20、21は、何れもXY平面内にて2次元格子状に配列されている。
【0044】
図3は第1の領域DM1及び第2の領域DM2の凹凸構造の他の例を示す斜視図である。
図3から明らかなように、第1の領域DM1における凹部構造20は四角柱形状を有しているが、もう一方の第2の領域DM2は円柱形状を有する凹部構造22となっている。
【0045】
図4は第1の領域DM1及び第2の領域DM2の凹凸構造の更に他の例を示す斜視図である。
図4から明らかなように、第1の領域DM1には四角柱形状を有する凹部構造20が形成されているが、もう一方の第2の領域DM2には凸部構造23が形成されている。凸部構造23は、四角柱形状を有し、かつその構造高さがH3となっている。
【0046】
更に、
図5は第1の領域DM1及び第2の領域DM2の凹凸構造の更に別の例を示す斜視図である。第1の領域DM1の凹部構造20及び第2の領域DM2の凹部構造21は、
図2と同様に四角柱形状に有しているが、これら凹部構造20、凹部構造21は、何れもXY平面内にてランダムに配列されている。
【0047】
次に、表示体100の詳細な構成および光学効果について説明する。
【0048】
図1〜
図5に示す表示体100の構造形成層10は前述したように第1の領域DM1及び第2の領域DM2を含む構成である。
【0049】
第1の領域DM1においては、構造深さH1の凹部構造20となっており、それに伴って特定の呈色を目視確認することができる。一方、第2の領域DM2においては、構造深さH2の凹部構造21となっている。そのため、第2の領域DM2でも特定の呈色を目視確認することができる。
【0050】
そこで、第1の領域DM1の凹部構造20及び第2の領域DM2の凹部構造21としては、第1の領域DM1における呈色と第2の領域DM2における呈色が目視観察にて略同一となるように形成される。
【0051】
図2及び
図3、
図4、
図5の表示体100においても、第1の領域DM1及び第2の領域DM2が凹部構造20、21、22、凸部構造23の任意の2つの組み合わせで構成される。よって、前述と同様に第1の領域DM1において特定の呈色が目視確認でき、かつ第2の領域DM2において特定の呈色が目視確認できる。更に、それら第1の領域DM1と第2の領域DM2における呈色が目視確認にて略同一となるように凹部構造20、21、22及び凸部構造23が形成される。
【0052】
次に、特定の構造深さを持つ凹部構造20、21、22や特定の構造高さを持つ凸部構造23により得られる光学効果について、
図6を参照して説明する。
【0053】
図6は屈折率n1、n2の媒質界面において、その媒質界面の一部の領域に構造深さHの凹部構造を形成し、かつ光線P1,P2が凹部構造へ平行入射されているときの状態を表している図である。
【0054】
ここでは、光線P1は媒質界面にて反射され、光線P2は構造深さHの凹部構造底面で反射されている。そのため、光線P1と光線P2の間には次のような光路長差Lが生じる。
L=H/(n1・cosθ) ……(1)
但し、θは光線P1,P2の入射角である。
【0055】
その結果、式(1)から得られる光路長差Lにより、光線P1と光線P2との位相が変化することによって干渉が生じ、その干渉条件に応じて特定の波長の光が強め合う又は弱め合う関係が成立する。
mλ=L (強め合う干渉条件) ……(2a)
(m+1/2)λ=L (弱め合う干渉条件) ……(2b)
mは次数、λは入射波長である。
【0056】
従って、式(1)〜式(2a)、式(2b)から、干渉が生じる波長λは、構造深さHに比例し、屈折率n1に反比例することがわかる。そのため、干渉させる波長λは構造深さH及び屈折率n1を調整することによって自由に変化させることが可能となる。
【0057】
そこで、可視光領域の光を干渉させるためには、下記式(3a)、式(3b)を満たす構造深さ又は構造高さが必要となる。
H=mλ・n1・cosθ (強め合う干渉条件)……(3a)
H=(m+1/2)λ・n1・cosθ (弱め合う干渉条件)……(3b)
すなわち、式(3a)から、強め合う干渉条件の時にm=1、n1=1.5、θ=45度とし、波長λを300〜600nm(可視光領域)まで変化させると、Hは318〜636nmとなる。また、式(3b)から、弱め合う干渉条件の時にm=0、n1=1.5、θ=45度とし、波長λを300〜600nmまで変化させると、Hは159〜318nmとなる。
【0058】
そのため、構造形成層10に形成される凸部構造の構造高さ又は凹部構造の構造深さを、150nm以上500nm以下とすることで、可視光領域において光の干渉が生じ、目視観察による呈色変化が確認可能となる。
【0059】
図1及び
図2においては、第1の領域DM1にて構造深さH1の凹部構造20が形成され、第2の領域DM2にて構造深さH2の凹部構造21が形成されている。これら構造深さH1及びH2の違いにより、前述した光の干渉が生じ、特定の波長が強め合う又は弱め合うことによって第1の領域DM1及び第2の領域DM2に呈色が生じる。その際、構造深さH1と構造深さH2の比率を1.1以上2以下の間とすることで、前記式(3a)、式(3b)において特定の波長λの干渉が生じることとなる。
【0060】
なお、構造深さH1と構造深さH2の比率を2以上にすると、構造深さH1、H2のいずれかが1μmを超えてしまい、それによって凹部構造の壁面によって光が散乱される成分が増大し、低彩度の呈色となってしまう。
【0061】
また、式(3)、式(3´)から構造深さだけではなく、屈折率n1を変える事によっても干渉する波長が変化するため、第1の領域DM1の光反射層11の上部と第2の領域DM2の光反射層11の上部に異なる媒質を設置することにより、同等な効果を得ることが可能となる。
【0062】
なお、光の干渉は、凹部構造20、21が四角柱形状であるために生じるものではなく、凹部構造20、21の底面が、構造形成層10又は光反射層11の界面と略平行であることにより生じる。そのため、
図3に示すように凹部構造22が円柱形状であってもよい。
【0063】
更に、第2の領域DM2の凹部構造21、23(
図2,
図3参照)を、
図4に示すように凸部構造23とした場合でも、凸部構造23の上面と、構造形成層10又は光反射層11の界面とが略平行であれば、光の干渉が生じ、第2の領域DM2にて呈色が生じていることが目視観察可能となる。
【0064】
図2、
図3及び
図4においては、凹部構造20、21、22、凸部構造23がXY平面上に正方格子状に2次元配置としているが、各構造の配列ピッチが細かくなってしまうと、回折格子の効果を有するようになり、目視観察時に虹色の呈色が見えてしまうことがある。
【0065】
このように虹色の呈色化を回避するために、
図5に示すように第1の領域DM1、第2の領域DM2のそれぞれにおいて、凹部構造20と凹部構造21をランダムに配置させる必要がある。
【0066】
ここで、凹部構造20、21、22及び凸部構造23は、フォトリソグラフィや電子ビーム描画、レーザー描画、レーザー切削などといった周知の微細加工技術を利用して原版を形成し、それを用いて構造形成層10へエンボス加工することにより形成される。
【0067】
なお、第1の領域DM1及び第2の領域DM2の呈色を定量的に評価する場合、下記式(4)で定義される色差ΔE*abについて考える必要がある。
ΔE*ab=((ΔL*)
2+(Δa*)
2+(Δb*)
2)
1/2 ……(4)
この色差ΔE*abは、L*a*b*表色系を用いた場合となっており、評価に用いる表色系により異なる場合がある。ここで、L*は明度、a*、b*はそれぞれ色相を示す値であり、ΔL*は2色間のL*の差分、Δa*、Δb*はそれぞれ2色間のa*、b*の差分を示している。
【0068】
従って、色差ΔE*abの値が小さければ、目視観察時に2つの色は略同一となり、大きくなるに従って、目視観察時に2つの色は異なる色と認識することができる。なお、色差ΔE*abの値が13以下であれば、2つの色が略同一の色調を呈しているといった印象となる。また、色差ΔE*abが6以下であれば、2つの色がより略同一な色調を呈している印象となる。
【0069】
図7は第1の領域DM1に対応する表示領域DP1と、第2の領域DM2に対応する表示領域DP2とが文字パターン状に配列された場合の表示体100´を示している。通常光源下において、目視観察時には表示領域DP1とDP2の呈色は略同一となっているため、観察者は表示体100´に文字パターンが形成されていることが認識できない。ここで、通常光源とは蛍光灯による光源、LED(発光ダイオード)による光源、太陽光による光源など、一般的に光源と呼ばれるものの全てが含まれる。
【0070】
次に、
図8は
図7の表示体100´上に散乱板200を重ねた状態を示す図である。表示体100´上に散乱板200を重ねることで、表示領域DP1と表示領域DP2のグレイスケール値が異なり、文字パターン「OK」が明確な状態で目視確認可能となる。ここで、グレイスケール値が異なる理由は、表示領域DP1及び表示領域DP2に形成される凹部構造又は凸部構造の構造深さ又は高さが異なっているためである。
【0071】
このように表示体100´に散乱板200を重ねることにより、グレイスケールパターンが目視観察可能となり、表示体100´が真正品であると判断することができる。
【0072】
図9は表示体100における表示領域DP1の反射スペクトルを示すグラフ図である。
【0073】
図9において、散乱板200が無いときの表示体100における表示領域DP1の反射スペクトル(反射率)を実線で示し、散乱板200が有るときの表示体100´における表示領域DP1の反射スペクトル(反射率)を点線で示している。
【0074】
これら2つの反射スペクトルから明らかように、表示体100´に散乱板200を重ねることにより、表示領域DP1の呈色が消え、グレイスケールとなっていることがわかる。
【0075】
図10は表示体100に形成される凹凸構造の他の例を示す斜視図である。
【0076】
この表示体100は、第3の領域DM3において、凹部構造20と凹部構造21がランダムに配置されている例を示している。凹部構造20、21がランダムに配置された場合でも、第3の領域DM3において目視観察可能な呈色は、前述する第1の領域DM1及び第2の領域DM2における呈色と略同一となる。
【0077】
図11は表示領域DP1、DP2に、第3の領域DM3による表示領域DP3を含めた表示体100´を示す平面図である。
【0078】
この表示体100´は、表示領域DP1、DP2、DP3での呈色が略同一となっているため、通常光源下での目視観察時には、表示体100´に文字パターンが形成されているかわからない。
【0079】
図12は
図11の表示体100´上に散乱板200を重ねた状態を示す図である。
【0080】
この表示体100´においては、表示領域DP1が白色に近い呈色、表示領域DP2が黒色に近い呈色、表示領域DP3が灰色に近い呈色となっている。つまり、
図10に示すように、第3の領域DM3において凹部構造20、21が互いにランダムに配置されていることで、散乱板200を重ねたときにグレイスケール値を変化させることが可能となる。
【0081】
従って、表示領域DP1、DP2、DP3をパターニングさせ、かつ表示体100´へ散乱板200を重ねることにより、グレイスケール画像を形成することが可能となる。
【0082】
なお、
図11、
図12においては、3つの表示領域DP1、DP2、DP3としたが、それ以上の数の表示領域であってもよく、少なくとも2つの領域をもって表示体100´が構成されていればよい。
【0083】
以上のように複数の表示領域を有する表示体100´において、通常光源下にて略同一な呈色を示していることから、パターン形状を目視観察できず、散乱板200を重ねることによって初めてグレイスケールパターンとしてパターン形状を目視確認可能となる。このように散乱板200を用いることで、パターン形状が目視確認できるため、偽造防止効果を高めることができる。
【0084】
このように可視光を散乱させる散乱板や散乱フィルムを用いて真偽判定を行う手段は、従来の偏光板や偏光フィルムを用いて真偽判定を行うものに比べて、コストを大幅に抑えることが可能となる。実際には、散乱板や散乱フィルムを用いる以外にも、薄い紙やトレーシングペーパーなどを用いることによっても、グレイスケールパターンのパターン形状が目視確認できるため、より簡便に表示体の真偽判定が可能となる。
【0085】
また、凹部構造又は凸部構造による干渉によって得られる呈色は、通常の印刷インキとは異なる金属光沢を有している。更に、観察角度を深くすることで凹部構造又は凸部構造による干渉が生じなくなるため、それにより呈色が無くなるという特徴を有している。その結果、通常の印刷技術による偽造は困難となり、より高度な偽造防止効果を奏することができる。
【0086】
さらに、凹部構造又は凸部構造がそれぞれ微細な凹凸構造となっていることからも、偽造が困難である。加えて、構造深さ又は構造高さの違いを測定するためには、構造上面から光学顕微鏡などによる測定だけでは判断できず、構造の断面を観察しなければならないことからも偽造が困難となる。
【0087】
以上のような実施の形態における表示体100´は、例えば、偽造防止用ラベルとして接着材などを介して印刷物やカード媒体、その他の物品に貼付して使用することができる。更に、偽造防止以外の目的で使用することができ、例えば、表示体100´は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明に係る表示体の具体的な実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0089】
実施例1としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムに、構造形成層10に対応する紫外線硬化性樹脂をグラビアロールコーターで塗工し、凹凸構造形成用フィルムとした。
【0090】
次に、構造形成層10へ凹部構造を形成するために、構造深さ250nmで300nm四方となるようにランダムに凹部構造を配列させた領域と、構造深さ430nmで300nm四方となるようにランダムに凹部構造を配列させた領域の2つの領域を格子状にパターニングさせた金属版を作製した。
【0091】
しかる後、紫外線硬化性樹脂を金属版に押し当て、メタルハライドランプによる紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂硬化後、金属版を剥離することにより凹部構造20,21を形成した。その後、凹部構造20,21上に真空蒸着法によってアルミニウムを膜厚50nm程度となるように蒸着し、光反射層11を形成した。
【0092】
以上のようにして得られた構造深さの異なる凹部構造20,21を形成した表示体において、呈色構造深さの異なる2つの領域において、グリーンの呈色となっていることを目視確認できた。
【0093】
そして、以上のようにして得られた表示体へ散乱板200を重ね合わせたところ、格子状にパターニングされたグレイスケールパターンを目視確認できた。
【実施例2】
【0094】
実施例1と同様に、PETフィルムに、構造形成層10に対応する紫外線硬化性樹脂をグラビアロールコーターで塗工し、凹凸構造形成用フィルムとした。
【0095】
次に、構造形成層10へ凹部構造を形成するために、構造深さ300nmで300nm四方となるようにランダムに凹部構造を配列させた領域と、構造深さ450nmで400nm四方となるようにランダムに凹部構造を配列させた領域の2つの領域を格子状にパターニングさせた金属版を作製した。
【0096】
しかる後、紫外線硬化性樹脂を金属版に押し当て、メタルハライドランプによる紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂硬化後、金属版を剥離することにより凹部構造20,21を形成した。その後、凹部構造20,21上に真空蒸着法によってアルミニウムを膜厚50nm程度となるように蒸着し、光反射層11を形成した。
【0097】
以上のようにして得られた構造深さの異なる凹部構造20,21を形成した表示体において、呈色構造深さの異なる2つの領域において、マゼンタの呈色となっていることを目視確認できた。
【0098】
また、得られた表示体へ散乱板200を重ね合わせたところ、格子状にパターニングされたグレイスケールパターンを目視確認できた。
【0099】
なお、前記実施の形態及び実施例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前記実施の形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態や実施例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。