【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る空調装置1の構成を示す概略図である。この空調装置1は、ガスエンジンEGにより駆動するエンジン駆動式空調装置である。
図1に示すように、この空調装置1は、圧縮ユニット10と、室内に設置される室内熱交換器20A,20Bと、室外に設置される室外熱交換器30と、冷媒を膨張させる膨張弁40と、四方切換弁50と、冷媒を気液分離させるアキュムレータ60と、サブ熱交換器70と、制御装置80と、ガスエンジンEGとを備える。
【0020】
圧縮ユニット10は、第1圧縮部11と、第2圧縮部12とを備える。第1圧縮部11と第2圧縮部12は、ガスエンジンEGの駆動力により駆動される。第1圧縮部11は第1吸入口11aと第1吐出口11bとを有し、第1吸入口11aから冷媒を吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮して第1吐出口11bから吐出する。第2圧縮部12は第2吸入口12aと第2吐出口12bとを有し、第2吸入口12aから冷媒を吸入するとともに吸入した冷媒を圧縮して第2吐出口12bから吐出する。
【0021】
第1吐出口11bに第1吐出配管131の一方端が接続され、第2吐出口12bに第2吐出配管132の一方端が接続される。第1吐出配管131の他方端および第2吐出配管132の他方端は
図1の点Aで合流するとともに第1配管91の一方端に接続される。また、第1吸入口11aに第1吸入配管141の一方端が接続され、第2吸入口12aに第2吸入配管142の一方端が接続される。第1吸入配管141と第2吸入配管142は
図1の点Bで合流するとともに第5配管95の一方端に接続される。
【0022】
第1吐出配管131と第2吸入配管142がバイパス配管151で接続される。このバイパス配管151の途中にバイパス弁152が介装される。また、バイパス配管151に中間圧力センサ153が取付けられる。中間圧力センサ153はバイパス配管151を流れるガス冷媒の圧力(中間圧力)Pmを検出する。
【0023】
第1吐出配管131の途中に第1逆止弁161が介装される。第1逆止弁161により、第1圧縮部11の第1吐出口11bから点Aに向かう冷媒の流れが許容され、その反対方向に向かう冷媒の流れが遮断される。また、第2吸入配管142の途中に第2逆止弁162が介装される。第2逆止弁162により、点Bから第2圧縮部12の第2吸入口12aに向かう冷媒の流れが許容され、その反対方向に向かう冷媒の流れが遮断される。
【0024】
第2吸入配管142の途中であって、バイパス配管151が連通する部分よりも下流側(第2吸入口12a側)の位置に、温度センサ171が取付けられる。温度センサ171は、第2吸入配管142を通って第2吸入口12aから第2圧縮部12に吸入されるガス冷媒の温度Tsを検出する。
【0025】
点Aで第1吐出配管131と第2吐出配管132に接続した第1配管91の途中に吐出圧力センサ172が取付けられる。吐出圧力センサ172は、第1配管91を流れるガス冷媒の圧力(吐出圧力)Pdを検出する。また、点Bで第1吸入配管141と第2吸入配管142に接続した第5配管95の途中に吸入圧力センサ173が取付けられる。吸入圧力センサ173は、第5配管95を流れるガス冷媒の圧力(吸入圧力)Psを検出する。
【0026】
また、第1配管91の他方端は四方切換弁50に接続される。四方切換弁50は
図1に示すように4つのポート(第1ポート51、第2ポート52、第3ポート53、第4ポート54)を有する。四方切換弁50は、第1ポート51が第2ポート52に接続され且つ第3ポート53が第4ポート54に接続される暖房接続状態と、第1ポート51が第3ポート53に接続され且つ第2ポート52が第4ポート54に接続される冷房接続状態とに、その接続状態を切り換えることができるように構成される。上述の第1配管91は四方切換弁50の第1ポート51に接続される。第2ポート52には第2配管92の一方端が接続される。第3ポート53には第3配管93の一方端が接続され、第4ポート54には第4配管94の一方端が接続される。
【0027】
第2配管92の他方端側は分岐し、一方の分岐管に室内熱交換器20Aが接続され、他方の分岐管に室内熱交換器20Bが接続される。各分岐管にはそれぞれ流量制御弁21A,21Bが設けられている。また、第3配管93の他方端に室外熱交換器30が接続される。室内熱交換器20A,20Bと室外熱交換器30とは中間配管96で接続される。室内熱交換器20A,20Bは、第2配管92または中間配管96から内部に冷媒を流入するとともに、流入した冷媒と周囲空気とを熱交換させる。室外熱交換器30は、中間配管96または第3配管93から内部に冷媒を流入するとともに、流入した冷媒と外気とを熱交換させる。
図1からわかるように、中間配管96の途中に膨張弁40が介装される。膨張弁40はそこを通る冷媒を膨張させる。
【0028】
第4配管94の他方端はアキュムレータ60に接続される。アキュムレータ60はそこに流入した冷媒を気液分離する。アキュムレータ60で気液分離された冷媒のうちのガス冷媒が第5配管95を流れる。
【0029】
また、
図1に示すように、中間配管96の途中の部分であって膨張弁40が介装されている部分よりも室内熱交換器20A,20B寄りの部分にインジェクション配管97の一方端が連通する。このインジェクション配管97の他方端は、バイパス配管151に連通する。つまり、中間配管96とバイパス配管151がインジェクション配管97で接続される。インジェクション配管97の途中にインジェクション弁98が介装される。インジェクション弁98は開度が可変の流量調節弁である。したがって、インジェクション弁98の開度を変化させることによりインジェクション配管97内を流れる冷媒の流量が変化される。また、インジェクション配管97の途中にサブ熱交換器70が介装される。サブ熱交換器70には、インジェクション配管97を流れる冷媒が流入する。サブ熱交換器70に流入した冷媒は、ガスエンジンEGを冷却した冷却水と熱交換する。このサブ熱交換器70によって、インジェクション配管97を流れる冷媒のうち液冷媒が蒸発される。
【0030】
制御装置80は、各センサ(温度センサ171、中間圧力センサ153、吐出圧力センサ172、吸入圧力センサ173等)が検出した情報を入力する。また、制御装置80はバイパス弁152およびインジェクション弁98に電気的に接続されていて、各種センサから入力した情報等に基づいて、バイパス弁152およびインジェクション弁98の開閉状態や開度を制御する。
【0031】
次に、この空調装置1の空調運転(暖房運転、冷房運転)について簡単に説明する。まず、暖房運転について説明する。なお、暖房時には四方切換弁50が暖房接続状態にされる。暖房時に圧縮ユニット10が作動すると、圧縮ユニット10で圧縮された高圧ガス冷媒が第1配管91に吐出される。第1配管91に吐出された高圧ガス冷媒は第1ポート51から四方切換弁50に入る。暖房時には四方切換弁50の第1ポート51が第2ポート52に接続されており、第2ポート52は第2配管92に接続されているので、第1ポート51から四方切換弁50に入った高圧ガス冷媒は第2ポート52から四方切換弁50を出るとともに第2配管92内を流れて室内熱交換器20A,20Bに流入する。室内熱交換器20A,20Bに流入した高圧ガス冷媒は室内熱交換器20A,20B内を流通する間に室内空気に熱を吐き出して凝縮する。このとき高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内空気が暖められて、室内暖房される。
【0032】
室内空気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化して室内熱交換器20A,20Bから流出し、中間配管96を流れる。そして、膨張弁40で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室外熱交換器30に流入する。室外熱交換器30に流入した冷媒は室外熱交換器30内を流通する間に外気の熱を奪って蒸発する。
【0033】
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化して室外熱交換器30から流出し、第3配管93を流れる。そして、第3ポート53から四方切換弁50に入る。暖房時には四方切換弁50の第3ポート53は第4ポートに接続されており、第4ポート54は第4配管に接続されているので、第3ポート53から四方切換弁50に入った冷媒は第4ポート54から四方切換弁50を出て第4配管94に流れる。そして、第4配管94からアキュムレータ60に流入する。アキュムレータ60では冷媒が液冷媒と低圧のガス冷媒とに分離される。そして、低圧ガス冷媒のみが第5配管95を流れて圧縮ユニット10に帰還する。
【0034】
次に、冷房運転について説明する。なお、冷房時には四方切換弁50が冷房接続状態にされる。冷房時に圧縮ユニット10が作動すると、圧縮された高圧ガス冷媒が圧縮ユニット10から第1配管91に吐出される。第1配管91に吐出された高圧ガス冷媒は第1ポート51から四方切換弁50に入る。冷房時には四方切換弁50の第1ポート51が第3ポートに接続されており、第3ポート53は第3配管93に接続されているので、第1ポート51から四方切換弁50に入ったガス冷媒は第3ポート53から四方切換弁50を出て第3配管93を流れ、室外熱交換器30に流入する。室外熱交換器30に流入した高圧ガス冷媒は室外熱交換器30内を流通する間に外気に熱を吐き出して凝縮する。
【0035】
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は一部液化して室外熱交換器30から流出されて中間配管96を流れる。そして、膨張弁40で膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室内熱交換器20A,20Bに流入する。室内熱交換器20A,20Bに流入した冷媒は室内熱交換器20A,20B内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内冷房される。
【0036】
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は一部気化して室内熱交換器20A,20Bから流出し、第2配管92を流れる。そして、第2ポート52から四方切換弁50に入る。冷房時には四方切換弁50の第2ポート52は第4ポート54に接続されており、第4ポート54は第4配管94に接続されているので、第3ポート53から四方切換弁50に入った冷媒は第4ポート54から四方切換弁50を出て第4配管94に流れる。そして、第4配管94からアキュムレータ60に流入する。アキュムレータ60では冷媒が液冷媒と低圧のガス冷媒とに分離される。そして、低圧ガス冷媒のみが第5配管95を流れて圧縮ユニット10に帰還する。
【0037】
このように、暖房時には、室内熱交換器20A,20Bが凝縮器となり室外熱交換器30が蒸発器となる。一方、冷房時には、室外熱交換器30が凝縮器となり、室内熱交換器20A、20Bが凝縮器となる。なお、本実施形態では、圧縮ユニット10から吐出した冷媒が圧縮ユニット10に帰還するまでに流れた部分を冷媒回路と呼ぶ。したがって、圧縮ユニット10から吐出された冷媒は冷媒回路を流れて圧縮ユニット10に帰還する。冷媒が冷媒回路を流れることによって空調(冷暖房)が行われる。
【0038】
暖房運転中、制御装置80は、バイパス弁152およびインジェクション弁98の動作(開閉状態および開度)を制御する。
図2は、制御装置80が暖房運転中にバイパス弁152およびインジェクション弁98の動作を制御するために実行する弁制御ルーチンを示すフローチャートである。このルーチンは、暖房運転中に所定の微小間隔ごとに実行される。
【0039】
弁制御ルーチンが起動すると、制御装置80は、まず
図2のステップ(以下、ステップをSと略記する)10にて運転容量比Rを計算する。運転容量比Rとは、空調装置の定格容量Vmax(kW)に対する運転容量V(kW)の比(V/Vmax)の百分率を表す(なお、容量を能力と称する場合もある)。運転容量Vは、空調負荷(暖房負荷)に応じて空調装置1に要求される運転容量(能力)である。例えば、運転容量比Rが50%という場合、空調装置1は、定格容量の50%の運転容量を発揮するように運転される。運転容量Vは、吐出圧力センサ172により検出された吐出圧力Pd、吸入圧力センサ173により検出された吸入圧力Ps、空調する空間の温度、設定温度等に基づいて算出される。
【0040】
次いで、制御装置80は、計算した運転容量比Rが50%以下であるか否かを判断する(S11)。運転容量比Rが50%を越えている場合(S11:No)、制御装置80はS13に処理を進め、バイパス弁152およびインジェクション弁98に閉作動信号を出力する。これによりバイパス弁152およびインジェクション弁98が閉作動する。なお、既にバイパス弁152およびインジェクション弁98が閉弁している場合は、バイパス弁152およびインジェクション弁98は閉状態を維持する。制御装置80はS13にてバイパス弁152およびインジェクション弁98に閉作動信号を出力した後に、この制御ルーチンを終了する。
【0041】
図3は、バイパス弁152およびインジェクション弁98が閉弁している場合における、圧縮ユニット10内の冷媒の流れを示す図である。バイパス弁152およびインジェクション弁98が閉弁している場合、バイパス配管151およびインジェクション配管97が閉鎖される。
【0042】
この場合、第5配管95を流れる冷媒は点Bで第1吸入配管141を流れる冷媒と第2吸入配管142を流れる冷媒に分岐する。第1吸入配管141を流れる冷媒は第1吸入口11aから第1圧縮部11に吸入され、第1圧縮部11の内部で圧縮され、第1圧縮部11の第1吐出口11bから第1吐出配管131に吐出される。第1圧縮部11の吐出口11bから第1吐出配管131に吐出された冷媒は、バイパス配管151に流れることなく
図1の点Aに向かう。
【0043】
一方、第2吸入配管142を流れる冷媒は第2吸入口12aから第2圧縮部12に吸入され、第2圧縮部12の内部で圧縮され、第2圧縮部12の第2吐出口12bから第2吐出配管132に吐出される。第2吐出配管132に吐出された冷媒は
図1の点Aに向かう。
【0044】
第1圧縮部11から第1吐出配管131に吐出された冷媒と第2圧縮部12から第2吐出配管132に吐出された冷媒は点Aで合流して第1配管91に流れ、さらに四方切換弁50、第2配管92を通って室内熱交換器20A,20B(凝縮器)に流入する。すなわち、運転容量比Rが50%を越えるようなとき、つまり必要な運転容量が大きい高部分負荷運転時あるいは全負荷運転時には、第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続され、それぞれの圧縮部が冷媒を吐出する。
【0045】
第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続された状態で両圧縮部が駆動している場合は、圧縮部が1台の場合と比較して冷媒ガスの圧縮容積(圧縮部内における冷媒ガスの排除容積)が2倍となる。そのため一度の圧縮過程で圧縮ユニット10から吐き出される冷媒ガス量が多い。よって、圧縮ユニット10から冷媒回路内に十分な量の冷媒を流すことができるので、冷媒流量の不足に起因した空調能力不足の発生を回避できる。
【0046】
また、制御装置80は、
図2のS11にて運転容量比Rが50%以下であると判断した場合(S11:Yes)、S12に処理を進める。運転容量比Rが50%以下であるような場合は、例えば流量制御弁21Bが閉鎖し、室内熱交換器20Bに冷媒が流れず室内熱交換器20Aのみに冷媒が流れるような部分負荷運転を実施するような場合である。このような場合、制御装置80は、S12にて、バイパス弁152およびインジェクション弁98に開作動信号を出力する。これによりバイパス弁152およびインジェクション弁98が開作動する。なお、既にバイパス弁152およびインジェクション弁98が開弁している場合は、バイパス弁152およびインジェクション弁98は開状態を維持する。制御装置はS12にてバイパス弁152およびインジェクション弁98に開作動信号を出力した後に、この制御ルーチンを終了する。
【0047】
図4は、バイパス弁152およびインジェクション弁98が開弁している場合における、圧縮ユニット10内の冷媒の流れを示す図である。バイパス弁152およびインジェクション弁98が開弁すると、バイパス配管151によって第1圧縮部11の第1吐出口11bと第2圧縮部12の第2吸入口12aが連通する。このため第1圧縮部11と第2圧縮部12が直列接続される。この場合、第1圧縮部11が低段側圧縮機となり、第2圧縮部12が高段側圧縮機となる。したがって、第5配管95を流れる冷媒は点Bから第1吸入配管141を流れ、まず第1圧縮部11に吸入される。第1圧縮部11に吸収された冷媒は中間圧まで圧縮されてから第1吐出配管131に吐出される。第1吐出配管131に吐出された冷媒はバイパス配管151を流れ、さらに第2吸入配管142に入る。そして、第2圧縮部12に吸入され、第2圧縮部12で高圧まで圧縮されてから第2吐出配管132に吐出される。その後、点Aから第1配管91に流れる。このように、運転容量比Rが50%以下の低部分負荷運転時には、第1圧縮部11と第2圧縮部12が直列接続され、冷媒は圧縮ユニット10によって2段階に圧縮される。
【0048】
また、インジェクション弁98が開弁しているため、バイパス配管151と中間配管96がインジェクション配管97で連通される。このため室内熱交換器(凝縮器)20A,20Bから流出した冷媒の一部がインジェクション配管97を流れる。そして、インジェクション配管97の途中に介装されたサブ熱交換器70を通過することによってエンジン冷却水と熱交換する。これにより、インジェクション配管97を流れる冷媒のうち液冷媒が蒸発する。
【0049】
サブ熱交換器70を通過したガス冷媒はインジェクション配管97からバイパス配管151に流れる。そして、第1圧縮部11で中間圧に昇圧されたガス冷媒と合流し、第2圧縮部12に吸入される。
【0050】
このように、本実施形態によれば、運転容量比Rが50%を越えている高部分負荷運転時あるいは全負荷容量運転時には、第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続され、運転容量比Rが50%以下である低部分負荷運転時には、第1圧縮部11と第2圧縮部12が直列接続されるとともに、第1圧縮部11と第2圧縮部12との間にガス冷媒がインジェクションされる。
【0051】
図5は、バイパス弁152とインジェクション弁98が閉弁している状態、すなわち第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続された状態で空調装置1が暖房運転を実施している場合における、p−h線図上に示された冷凍サイクルを表す図である。
図5において、圧縮ユニット10に供給される直前の低圧ガス冷媒は点Aに示す位置で表わされる。冷媒が圧縮ユニット10に供給されて圧縮されると、点Aに示す位置で表わされる低圧ガス冷媒が点Bに示す位置で表わされる高温高圧ガス冷媒に状態変化する。点Aに示す位置から点Bに示す位置まで冷媒が状態変化する際における比エンタルピの変化量Lが、圧縮ユニット10の仕事量(圧縮機動力)に相当する。
【0052】
また、点Bに示す位置で表わされる高温高圧ガス冷媒が室内熱交換器20A,20Bで凝縮されることにより、点Cに示す位置で表わされる低温高圧液冷媒に変化する。点Bに示す位置から点Cに示す位置まで冷媒が状態変化する際における比エンタルピの変化量Φが、実際に室内熱交換器20A,20Bで熱交換された熱交換量、すなわち空調装置1が発揮した暖房能力(運転容量)に相当する。LとΦとの比(Φ/L)により効率が表わされる。
【0053】
また、点Cに示す位置で表わされる低温高圧液冷媒が膨張弁40で膨張されることにより、点Dに示す位置で表わされる低温低圧気液二相冷媒に状態変化する。そして、点Dに示す位置で表わされる低温低圧気液二相冷媒が室外熱交換器30で蒸発されることにより、点Aに示す低圧ガス冷媒に状態変化する。このような冷凍サイクルが繰り返されることにより暖房運転が継続される。
【0054】
図6は、バイパス弁152とインジェクション弁98が開弁している状態、すなわち第1圧縮部11と第2圧縮部12が直列接続され、且つインジェクション配管97に冷媒が流れている状態で暖房運転している場合における、p−h線図上に示された冷凍サイクルを表す図である。
図6において、圧縮ユニット10に供給される直前の低圧ガス冷媒は点Aに示す位置で表わされる。点Aに示す位置で表わされる冷媒は、まず第1圧縮部11で圧縮されることにより、点B1に示す位置で表わされる中圧ガス冷媒に状態変化する。点Aに示す位置から点B1に示す位置まで冷媒が状態変化する際における比エンタルピの変化量L1が、第1圧縮部11の仕事量(圧縮動力)に相当する。
【0055】
また、第1圧縮部11で圧縮された冷媒は、バイパス配管151内でインジェクション配管97から流入されるガス冷媒と合流されるが、このときインジェクション配管97から流入するガス冷媒で冷却されることにより比エンタルピが低下する。したがって、点B1に示す位置で表わされる中圧ガス冷媒は、インジェクション配管97からの冷媒と合流することにより点B2に示す位置まで状態変化する。つまり、圧力が変化しないまま、温度が若干低下する。
【0056】
また、点B2に示す位置で表わされる中圧ガス冷媒は、その後に第2圧縮部12で圧縮されることにより、点B3に示す位置で表わされる高温高圧ガス冷媒に状態変化する。点B2に示す位置から点B3に示す位置まで冷媒が状態変化する際における比エンタルピの変化量L2が、第2圧縮部12の仕事量(圧縮動力)に相当する。
【0057】
また、点B3に示す位置で表わされる高温高圧ガス冷媒が室内熱交換器20A,20B内で凝縮されることにより、点Cに示す位置で表わされる低温高圧液冷媒に変化する。点B3に示す位置から点Cに示す位置まで冷媒が状態変化する際における比エンタルピの変化量Φが、実際に室内熱交換器20A,20Bで熱交換された熱交換量、すなわち空調装置1が発揮した暖房能力(運転容量)に相当する。L1,L2およびΦにより効率が表わされる。
【0058】
また、点Cに示す位置で表わされる低温高圧液冷媒の一部が、中間配管96を流れる際の圧力損失によって若干圧力を低下させた点C’の位置で、インジェクション配管97に流れる。インジェクション配管97に流れた冷媒はサブ熱交換器70で熱交換されることにより加熱されて蒸発した後に、第1圧縮部11から吐出された冷媒(点B1に示す位置で表わされる冷媒)に合流する。一方、インジェクション配管97に流れない冷媒は膨張弁40で膨張されることにより、点C’に示す位置から点Dに示す位置で表わされる低温低圧気液二相冷媒に状態変化する。そして、点Dに示す位置で表わされる低温低圧気液二相冷媒が室外熱交換器30で蒸発されることにより、点Aに示す低圧ガス冷媒に状態変化する。このような冷凍サイクルが繰り返されることにより暖房運転が継続される。
【0059】
図6に示すように、バイパス弁152を開弁させて第1圧縮部11と第2圧縮部12とを直列接続させた場合、圧縮過程で冷媒が二段階に圧縮される。二段階目の圧縮開始時(点B2)の冷媒の状態は、一段階目の圧縮終了時(点B1)の冷媒の状態と異なる。具体的には、二段階目の圧縮開始時の冷媒の温度は、インジェクション配管97から流入する冷媒に冷やされることによって、一段階目の圧縮終了時の冷媒の温度よりも低くされる。このため、二段階目の圧縮開始時の冷媒の状態を表す点(B2)を通過する等エントロピ線と一段階目の圧縮終了時の冷媒の状態を表す点(B1)を通過する等エントロピ線が異なる。この場合、
図6からわかるように、二段階目の圧縮過程における比エンタルピに対する圧力上昇勾配が、一段階目の圧縮過程における比エンタルピに対する圧力上昇勾配よりも大きくなる。圧力上昇勾配が大きければ大きいほど、圧縮動力が少ない。つまり、冷媒ガスのインジェクションによる冷却効果によって、二段階目の圧縮時における圧縮機動力L2を大幅に減らすことができる。
【0060】
また、
図6に示す場合においては、空調装置1の効率は、L1と、L2と、Φにより表わされる。また、第2圧縮部12の圧縮機動力L2は第1圧縮部11の圧縮機動力L1より、圧力差が小さいため、かなり小さい。第2圧縮部12で圧縮される冷媒をより多くすれば、少ない圧縮機動力でより多くの冷媒を圧縮できることになり、効率を高めることができる。つまり、インジェクション配管97に冷媒をより多く流すことによって、効率を高めることができる。
【0061】
また、
図6に示す場合は、運転容量比Rが50%以下の場合である。つまり、運転容量Vが少ない低部分負荷運転時に効率が高められている。1年を通して空調装置の運転状況を見た場合、運転容量比Rが50%以下である低部分負荷運転時間が全運転時間の半分以上を占める。本実施形態によれば、運転容量比Rが50%以下である場合における効率が高められるので、APFを大きく向上させることができる。
【0062】
一方で、運転容量比Rが50%を越える高部分負荷運転あるいは定格運転(全負荷運転)時には、第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続されるために、圧縮ユニット10から吐出される冷媒の流量を多くすることができる。このため、運転容量Vが大きいときに十分な量の冷媒を冷媒回路に流すことができ、冷媒流量の不足に起因した空調能力不足の発生を回避できる。
【0063】
ところで、インジェクション配管97を流れる冷媒の流量(インジェクション流量)を多くすれば、一般的には効率の向上が期待できる。また、中間圧力Pmが高過ぎるとインジェクション流量が減少するため第1圧縮部11の動力低減効果が低下する。したがって、最も効率を高めることができるインジェクション流量および中間圧力Pmが存在する。本実施形態では、運転容量比Rが50%以下であるときに制御装置80が中間圧力Pmの大きさに基づいてインジェクション弁98の開度を制御することによって、状況に応じて最適な冷媒流量をインジェクション配管97に流すことができるようにされている。
図7は、インジェクション弁98の開度を制御するために制御装置80が実行する開度制御ルーチンを示すフローチャートである。この開度制御ルーチンは、制御装置80がインジェクション弁98に開作動信号を出力したときに微小間隔ごとに実行される。
【0064】
開度制御ルーチンが起動すると、制御装置80は、まず
図7のS21にて、目標中間圧力Pm*を計算する。目標中間圧力Pm*は、最も効率が高められるように設定されるバイパス配管151を流れる冷媒の圧力である。つまり、効率から見た中間圧力Pmの最適値が目標中間圧力Pm*である。この目標中間圧力Pm*は、要求されている空調負荷、吸入圧力Psおよび吐出圧力Pdに基づいて算出される。本実施形態では、目標中間圧力Pm*と、要求負荷量と、吸入圧力Psと、吐出圧力Pdとの関係を示した目標中間圧力テーブルが制御装置80に予め記憶されている。制御装置80は、S21にて、要求負荷量、吸入圧力Psおよび吐出圧力Pdに基づいて、目標中間圧力テーブルから最適な目標中間圧力Pm*を選択する。
【0065】
次いで、制御装置80は、第2圧縮部12に吸入される冷媒の過熱度ΔTs(℃)を計算する(S22)。過熱度ΔTsは、温度センサ171により検出される温度(第2圧縮部12に吸入される冷媒の温度)Tsと中間圧力センサ153により検出される中間圧力Pmから求めることができる。この過熱度ΔTsは、
図6の点B2の位置で表わされる冷媒が飽和蒸気圧曲線とどの程度離れているかを表す。過熱度ΔTsが小さいほど冷媒が飽和蒸気に近く、より湿りやすい。過熱度ΔTsが大きいほど冷媒の状態が飽和蒸気圧曲線から離れており、湿り難い。
【0066】
続いて、制御装置80は、現在の中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*未満であるか否かを判断する(S23)。中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*以上である場合(S23:No)、制御装置80はS25に処理を進め、中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*よりも大きいか否かを判断する。中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*よりも大きくない場合(S25:No)、中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*と等しいということであり、この場合は制御装置80はこのルーチンを終了する。一方、S25にて中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*よりも大きいと判断した場合(S25:Yes)、制御装置80は、開度減少信号をインジェクション弁98に出力する(S27)。これによりインジェクション弁98の開度が減少されてインジェクション配管97内を流れる冷媒の流量が減少するとともに、中間圧力Pmが減少する。制御装置80は、その後、このルーチンを終了する。
【0067】
また、S23にて、中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*未満であると判断した場合(S23:Yes)、制御装置80はS24に処理を進め、過熱度ΔTsが5℃よりも大きいか否かを判断する。過熱度ΔTsが5℃以下である場合(S24:No)は、第2圧縮部12に吸入される冷媒が飽和蒸気に近い状態であることを表す。この場合、湿った冷媒が第2圧縮部12に吸入されることを防止するために、制御装置80はS27に処理を進めて開度減少信号をインジェクション弁98に出力する。これによりインジェクション弁98の開度が減少されてインジェクション配管97内を流れる冷媒の流量が減少するとともに中間圧力Pmが減少する。また、インジェクション流量の減少によって、第2圧縮部12に吸入される冷媒の冷却が抑えられるため過熱度ΔTsの極端な減少が抑えられ、その結果、第2圧縮部12に湿った冷媒が吸入されることが効果的に防止される。その後、制御装置80はこのルーチンを終了する。
【0068】
S24にて過熱度ΔTsが5℃よりも大きいと判断した場合(S24:Yes)、制御装置80は、開度増加信号をインジェクション弁98に出力する(S26)。これによりインジェクション弁98が開度が増加されてインジェクション配管97内を流れる冷媒の流量が増加する。制御装置80はその後、この制御ルーチンを終了する。
【0069】
このような開度制御ルーチンを制御装置80が実行することによって、運転容量比Rが50%以下の低部分負荷運転時に、中間圧力Pmおよびインジェクション配管97を流れる冷媒の流量が最適化される。
【0070】
また、本実施形態では、第1圧縮部11および第2圧縮部12に、効率の良いスクロール圧縮機を用いている。
図8は、本実施形態で用いたスクロール圧縮機の部分概略断面図である。
図8に示すスクロール圧縮機100は、冷媒ガスを圧縮する圧縮室110と、圧縮室110に冷媒ガスを供給する第1通路101および第2通路102と、圧縮室110で圧縮された冷媒ガスを外部に吐出するための第3通路103とを有する。第1通路101および第2通路102はこの圧縮機の吸入口(11a、12b)に連通する。第3通路103はこの圧縮機の吐出口(11b、12b)に連通する。
【0071】
なお、一般にスクロール圧縮機は、固定ラップ(固定スクロール)に対する旋回ラップ(旋回スクロール)の偏芯回転に伴って、両ラップ(両スクロール)間に形成される独立した2つの圧縮室が外周側から内周側に移動される。内周側への移動の過程で圧縮室の容積が徐々に狭められる。そして、圧縮室がほぼ中央に移動してきたときにその圧縮室(
図8における圧縮室110c)が第3通路103を介して吐出口(11b、12b)に連通することにより、その圧縮室内の冷媒が外部に吐出される。また、外周に形成された2つの圧縮室(
図8における圧縮室110aおよび110b)は、あるタイミングで第1通路101および第2通路102に連通する。このときにこれらの圧縮室と吸入口(11a,12a)が連通されるので、これらの圧縮室に冷媒が供給される。つまり、第1通路101および第2通路102を介して外側の圧縮室110a、110bに冷媒が供給されるとともに、これらの圧縮室の容積が徐々に狭められながら外周側から内周側に移動していくことによりこれらの圧縮室の内部の冷媒が徐々に圧縮される。そして、中央に近づいた圧縮室が第3通路103を介して吐出口に連通したときに、その圧縮室内の冷媒ガスが吐出口から吐出される。
【0072】
また、
図8からわかるように、第1通路101および第2通路102の途中にリード弁104,104が取付けられている。このリード弁104,104によって、吸入口((11aまたは12a)から圧縮室110に向かう方向に流れる冷媒ガスの流れが許容され、その反対方向に向かう方向に流れる冷媒ガスの流れが遮断される。このため、第1通路101および第2通路102内での冷媒ガスの逆流が防止される。
【0073】
スクロール圧縮機は、その内部の圧縮室が吐出口および吸入口に間歇的に接続されるように構成されているため、圧縮室が吐出口および吸入口に接続されるタイミングで圧力脈動が生じる。この圧力脈動がインジェクション配管97に伝わった場合、インジェクション配管97を流れる冷媒流量が変動する。よって、インジェクション流量を最適化するためには、圧力脈動および逆流を抑えなければならない。この点に関し、本実施形態で用いるスクロール圧縮機100は、吸入口と圧縮室とを結ぶ通路(第1通路101、第2通路102)の途中にリード弁が取付けられている。したがって、このスクロール圧縮機100が第2圧縮部12に用いられた場合、第2圧縮部12の吸入口12aに連通するインジェクション配管97内を流れる冷媒に圧力脈動が伝達することおよび逆流が抑えられる。その結果、インジェクション流量を最適化することができる。
【0074】
以上のように、本実施形態の空調装置1は、第1吸入口11aおよび第1吐出口11bを有し、第1吸入口11aからガス冷媒を吸入するとともに吸入したガス冷媒を圧縮して第1吐出口11bから吐出する第1圧縮部11と、第2吸入口12aおよび第2吐出口12bを有し、第2吸入口12aからガス冷媒を吸入するとともに吸入したガス冷媒を圧縮して第2吐出口12bから吐出する第2圧縮部12と、第1吐出口11bに接続され、第1吐出口11bから吐出されたガス冷媒が流れる第1吐出配管131と、第2吐出口12bに接続され、第2吐出口12bから吐出されたガス冷媒が流れる第2吐出配管132と、第1吐出配管131および第2吐出配管132を流れる冷媒が流入されるとともに流入された冷媒を凝縮するよう構成される凝縮器(暖房運転時は室内熱交換器20A,20B)と、凝縮器から流出した冷媒を蒸発するよう構成される蒸発器(暖房運転時は室外熱交換器30)と、凝縮器と蒸発器とを接続する中間配管96と、蒸発器から流出した冷媒を第1吸入口11aに導くよう構成された第1吸入配管141と、蒸発器から流出した冷媒を第2吸入口12aに導くよう構成された第2吸入配管142と、第1吐出配管131と第2吸入配管142とを接続するバイパス配管151と、バイパス配管151の途中に介装されたバイパス弁152と、中間配管96とバイパス配管151とを接続するインジェクション配管97と、インジェクション配管97の途中に介装されたインジェクション弁98と、バイパス弁152およびインジェクション弁98の動作を制御する弁制御部としての制御装置80とを備える。また、制御装置80は、暖房運転時に定格容量に対する運転容量の比率を表す運転容量比Rが50%よりも大きいときにバイパス弁152およびインジェクション弁98が閉弁し、運転容量比Rが50%以下であるときにバイパス弁152およびインジェクション弁98が開弁するように、バイパス弁152の動作およびインジェクション弁98の動作を制御する。
【0075】
本実施形態の空調装置1によれば、暖房運転中であって運転容量が大きい場合、具体的には運転容量比Rが50%を越える高部分負荷運転あるいは全負荷容量運転を実施する場合に、第1圧縮部11と第2圧縮部12が並列接続され、それぞれの圧縮部が冷媒を吐出する。これにより、1台の圧縮部が冷媒を吐出する場合と比較して、冷媒の吐出量が2倍にされる。このため冷媒の吐出量が増加する。その結果、必要な運転容量が大きいときに十分な量の冷媒を冷媒回路に流すことができる。
【0076】
一方、暖房運転中であって運転容量が小さい場合、具体的には運転容量比Rが50%以下の低部分負荷運転を実施する場合、第1圧縮部11と第2圧縮部12が直列接続される。また、インジェクション弁98が開弁することにより、室内熱交換器20A,20Bから流出した冷媒がインジェクション配管97を流れる。インジェクション配管97を流れた冷媒はインジェクション配管97からバイパス配管151に流れ、さらに第2圧縮部12に吸入される。このように冷媒をインジェクションすることで、効率を向上させることができる。つまり、運転容量が小さいときに効率を向上させることができる。また、運転容量が小さいときは、冷媒回路に流す冷媒流量がさほど多くない。このため圧縮部を直列接続しても、十分に必要な量の冷媒を冷媒回路に流すことができる。
【0077】
また、一般に、運転容量比Rが50%以下である部分負荷運転時間は、1年を通じた空調装置の運転時間の半分以上を占める場合が多い。したがって、運転容量比Rが50%以下であるときに2つの圧縮部を直列接続するとともにインジェクション配管97に冷媒を流すことによって効率を高めることで、APFを大きく向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る制御装置80は、暖房運転時の運転容量比Rが50%以下であるときに開度制御ルーチンを実行し、中間圧力Pmに基づいてインジェクション弁98の開度を制御している。より具体的には、制御装置80は、暖房運転時の運転容量比Rが50%以下であるときに、最も効率が高まるような目標中間圧力Pm*を計算し、実際の中間圧力Pmが目標中間圧力Pm*に近づくように、インジェクション弁98の開度を制御する。このような開度制御を実行することにより、最も効率的に部分負荷運転を行うことができる。
【0079】
また、制御装置80は、暖房運転時の運転容量比Rが50%以下であるときに、第2圧縮部12に吸入される冷媒の過熱度ΔTsを計算し、過熱度ΔTsが5℃以下であるときにはインジェクション流量が低下するように、インジェクション弁98の開度を制御している。このようにインジェクション弁98を制御することにより、第2圧縮部12に湿った冷媒が吸入されることを防止できる。
【0080】
また、本実施形態の空調装置1は、インジェクション配管97を流れる冷媒を加熱して蒸発させるためのサブ熱交換器70を備え、このサブ熱交換器70でガスエンジンEGを冷却した冷却水(エンジン冷却水)とインジェクション配管97を流れる冷媒とを熱交換させている。このようにエンジンの排熱をうまく利用してインジェクションさせる冷媒を蒸発させることができる。
【0081】
また、本実施形態で用いるスクロール圧縮機100は、冷媒ガスが吸入される吸入口(11a,12a)と、冷媒ガスが吐出される吐出口(11b,12b)と、内部に形成される圧縮室110(110a,110b,110c)と、圧縮室110(110a,110b)と吸入口とを接続する吸入側通路(第1通路101、第2通路102)と、圧縮室110(110c)と吐出口とを接続する吐出側通路(第3通路103)と、吸入側通路に設けられ、吸入口から圧縮室110(110a,110b)に向かう冷媒の流れを許容しその反対の流れを遮断するリード弁104とを備える。リード弁104の存在によって、スクロール圧縮機100で発生する圧力脈動がインジェクション配管97を流れる冷媒に伝達されることが防止される。よって、インジェクション流量を最適化することができ、これにより効率をより向上させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、暖房運転中であって運転容量比Rが50%以下の部分負荷運転時に、第1圧縮部11と第2圧縮部12を直列接続するとともにインジェクション配管97内に冷媒が流れるように構成したが、冷房運転中であって運転容量比Rが所定の閾値(例えば50%)以下の部分負荷運転時に、第1圧縮部11と第2圧縮部12を直列接続するとともにインジェクション配管97内に冷媒が流れるように構成してもよい。なお、この場合、サブ熱交換器70で冷媒を蒸発させるのではなく、気液分離器によって凝縮器(室外熱交換器)を流出した冷媒を液冷媒とガス冷媒に分離し、分離したガス冷媒のみをインジェクション配管97内に流すように構成すればよい。また、上記実施形態では、運転容量比Rが50%以下であるか否かによって第1圧縮部11と第2圧縮部12とを並列接続するか直列接続するかを切り換えているが、切り換えの閾値はこれに限定されない。例えば運転容量比Rが60%以下であるか否かによって第1圧縮部11と第2圧縮部12とを並列接続するか直列接続するかを切り換えても良い。また、本発明が適用される圧縮部としては、スクロール圧縮機でもよいし、それ以外の圧縮機でもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。