(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気自動車に装備され、走行用モータのみで車両を発進させることが可能であり、所定の起動操作によって起動終了状態から起動する電気駆動システムの制御装置であって、
前記車両の運転席に運転者が存在するか否かを検出する運転者検出手段と、
前記車両の変速機の変速レンジを選択操作するレンジ選択手段と、
前記レンジ選択手段による選択レンジ及び前記運転者検出手段の検出結果に応じて、前記電気駆動システムの起動状態を終了すると共に前記車両に搭載された機器の作動可能状態を終了するシャットダウン制御を行なう制御手段と、をそなえ、
前記制御手段は、前記運転者検出手段により運転者が不在であることが検出され、且つ、前記レンジ選択手段による選択レンジがパーキングレンジ以外であると、前記機器が作動中であるか又は作動の予定があるか否かにかかわらず前記シャットダウン制御を行ない、
前記運転者検出手段により運転者が不在であることが検出され、且つ、前記選択レンジがパーキングレンジである場合、所定条件が成立していなければ前記シャットダウン制御を実施し、前記所定条件が成立していれば前記シャットダウン制御を禁止し、
前記所定条件には、前記機器の作動中又は作動の予定があることが含まれている
ことを特徴とする、電気駆動システムの制御装置。
【背景技術】
【0002】
近年、駆動用パワープラントとしてエンジン(内燃機関)のみを搭載した一般的な自動車(以下、エンジン車とも言う)に対して、駆動用パワープラントとしてモータ(電動機)を搭載した電気自動車[ハイブリッド電気自動車(エンジンを備えたハイブリッド車又はHEVとも言う)を含む、以下、エンジンを備えない電気自動車はEVとも言い、ハイブリッド車はHEVとも言う]が増加している。電気自動車の場合、車両を発進させる際や車両停止後に車両から離れる際に、エンジン車とは異なる状況が発生する。
【0003】
つまり、エンジン車の場合、エンジンが作動していることが車両の発進条件であり、運転者が車両停止後に車両から離れる際には、通常、エンジンを停止させ車両が発進しないようにする。このエンジン車の場合、車両が発進する可能性があるか否か、即ち、エンジンが作動しているか停止しているかを、エンジンの作動音の有無から認識することができる。したがって、エンジンの停止操作を忘れても、運転者はこれに気付き易く、また、車両に接近した人もエンジンの作動音から車両の発進の可能性を認識することができる。
【0004】
一方、電気自動車の場合、モータ及びバッテリからなるEVシステムやモータ,バッテリ及びエンジンからなるHEVシステムといった電気駆動システムが起動状態になっていることが車両の発進条件である。電気駆動システムを起動するにはパワースイッチを操作する。運転者が車両停止後に車両から離れる際には、通常、パワースイッチを操作して電気駆動システムを停止させ車両が発進しないようにするべきである。なお、電気駆動システムが起動状態であることは、通常、ランプによって表示されるので、運転者は表示ランプを視認することにより車両が起動状態になっているか否かを認識することができる。
【0005】
しかし、運転者が電気駆動システムの停止操作を忘れ、更に、表示ランプを確認し忘れるおそれもある。また、電気自動車の場合、車両の停止時にはモータも同時に停止し、モータの起動と同時に車両が発進するので、車両の停止時に、車両が起動状態であるか否かをモータの作動音で認識することはできない。したがって、電気駆動システムの停止操作を忘れた場合に、運転者が聴覚によってこれに気付くことはなく、また、車両に接近した人も外部から車両の発進の可能性を聴覚によって認識することもできない。
【0006】
また、電気自動車には、基本的にエンジン車のようなアイドル状態がないので、平坦路に停車させた場合には、アクセル操作をしない限り、変速機が走行レンジにセットされても車両の停止状態を保持することができる。また、勾配路に停車させた場合でも、サイドブレーキをかければ、変速機が走行レンジにセットされても車両の停止状態を保持することができる。
【0007】
さらに、電気自動車には、エンジン車のトルクコンバータによるクリープ現象を模擬して、アクセルペダルがオフになってもモータにクリープトルクを付与するようにしたクリープ機能付きのものがある。このクリープ機能付き電気自動車の場合、フットブレーキの踏み込みを解除すると、車両が微速発進してしまうが、サイドブレーキをかければ、変速機が走行レンジにセットされても車両の停止状態を保持することができる。
【0008】
このような電気自動車の特性から、変速機を停車レンジ(パーキングレンジ)に操作せずに、且つ、電気駆動システムの停止操作(即ち、パワースイッチオフによるシャットダウン操作)をせずに、運転者が車両停止後に車両から離れてしまうことも想定しうる。このような状況下では、アクセル操作をするだけで車両が発進してしまう場合や、サイドブレーキを解除するだけでクリープトルク等によって車両が発進してしまう場合がある。
【0009】
この場合には、例えば、車室内に子供が残っていて、この子供が誤ってサイドブレーキを解除してしまったりアクセルペダルを踏んでしまったりすると、車両が予期せず発進してしまうことになる。
このため、電気自動車において、運転者が車両の停止後に本来必要とされる車両の停止保持操作をせずに車両から離れた場合に想定される、車両が予期せず発進してしまうおそれを低減することができる対策が求められている。
【0010】
なお、鉄道車両や作業車両などには、運転中の運転者に意識喪失などの異常事態が発生した場合に、自動的に車両を停止させるデッドマン装置が開発されている。
特許文献1には、バッテリフォークリフト等の電動車両における走行制御装置が開示されている。この装置では、運転シートにオペレータが着座していないことがデッドマンスイッチにより検出されると、そのときのデッドマン信号(検出信号)によって、制御信号の出力処理が前進・後進信号及びペダル踏込みによる加速信号の有無に係わらず禁止され、車両は停止状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示されているデッドマン装置の場合、運転席に運転者が着座していないと車両が停止状態とされるので、このような技術を電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)に適用することが考えられる。つまり、運転者が車両の停止後にパワースイッチを切るなどの本来必要とされる車両の停止保持操作をせずに車両から離れた場合には、制御信号の出力処理を禁止して車両を停止状態とするのである。
【0013】
しかし、デッドマン装置は、運転中の運転者に異常事態が発生した場合に車両を停止させるためのものであるため、例えば車両の停止後に、運転席に運転者以外の者が着座すれば車両の発進は可能である。特許文献1の技術のように、運転者が運転席から離れたら制御信号の出力処理を禁止するという制御では、運転者以外が運転席に着座すれば出力処理の禁止が解除されうるので、車両の発進が可能になる。
【0014】
デッドマン装置は、特許文献1に開示されているフォークリフトのような作業車両にも適用されるが、主として鉄道車両に適用される。鉄道車両の場合、通常、運転席は隔離されているため、車両の停止後に運転席に誰でも着座できるわけではなく、作業車両も、工場内等の特定の場所で使用される場合が多いため、通常、車両の停止後に運転席に誰でも着座できるわけではない。
【0015】
一方、自動車の場合、ドアがロックされていなければ例えば子供が車室内に入って運転席に座ることができ、また、車室内に子供が残っていればこの子供も運転席に座ることができる。このような場合に車両の発進が可能であると、誤って発進操作をしてしまうことも考えられる。したがって、デッドマン装置の技術を電気自動車に適用しても、車両が予期せず発進してしまうおそれを低減するという課題を十分に解決し得ない。
【0016】
電気自動車の場合、EVシステムやHEVシステムといった電気駆動システムの起動状態を停止させるシャットダウンという処理がある。シャットダウンしたEVシステムやHEVシステムを起動させるには、所定の起動操作が必要である。この所定の起動操作とは、例えば、セレクターレバーやパーキングスイッチといったレンジ選択手段によって変速レンジをP(パーキング)レンジに操作して、ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチをEVシステム起動モードに操作するという、幾つかの操作が組み合わされた処理である。
【0017】
このため、誤って起動操作を行なう可能性は極めて低く、起動操作後に更にアクセル操作を行なうという処理を誤って行なう可能性はより一層低くなる。
したがって、運転者が車両停止後に必要とされる車両の停止保持操作をせずに車両から離れた場合には、電気駆動システムのシャットダウンを実施することにより、車両が予期せず発進してしまうおそれを十分に低減することができる。
【0018】
ただし、電気自動車の場合、例えば、以下のような状況が考えられる。
電気自動車のEVシステムを起動させる場合には、通常、セレクターレバーやパーキングスイッチによって変速レンジをP(パーキング)レンジに操作して、ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチをEVシステム起動モードとなるまで操作するという、起動操作を行なう。また、EVシステムを停止させる場合には、通常、変速レンジをPレンジに操作して、パワースイッチをオフに操作する。
【0019】
自動車の場合、乗員の乗車や下車の際、或いは、荷物の出し入れの際に、運転者が運転席から短時間だけ離れることがしばしばある。この際、運転者は変速レンジをPレンジに操作するだけでパワースイッチをオフにする操作までは行わない場合が多い。運転席から運転者が離れたら常にシャットダウンを実施して電気駆動システムが停止するように設定すると、運転席に戻った運転者は、その都度、電気駆動システムの起動操作、つまり、ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチをオン操作することが必要になって煩わしく、車両の操作性が低下してしまう。
【0020】
また、一般的に、シャットダウンは、起動状態の電気駆動システムを停止するだけでなく、同時に、起動可能状態であった車両に搭載された電気駆動システムとは別の機器類についても起動可能状態を停止する(起動不可の状態にする)処理である。このために、車載の機器類を使用しているときにシャットダウン制御が実施されると、車両の利便性が大きく低下してしまう場合がある。
【0021】
例えば、車室内に入り込む前にエアコンシステムを作動させておいたり、一時的に車両を離れる際にも、エアコンシステムを作動させておいたりして、車室内の温度を調整したい場合がある。また、車両を停止させながら車両のランプ類を使用したい場合もある。さらに、ハイブリッド電気自動車において、HEVシステムに装備されるエンジン冷態時には、運転者不在の状態でエンジンを暖機運転したい場合がある。
【0022】
これらの場合に、運転者が運転席から不在になっただけでシャットダウン制御が実施され、エアコンシステムやランプ類やエンジンが停止してしまうと、車両の利便性が大きく低下してしまう。
しかも、変速レンジがPレンジにセットされパーキングギアがロックしていれば、車両を発進させる発進操作に、変速レンジを走行レンジに切り替える操作が加わるので、車両が突然発進するおそれは低くなる。
【0023】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、電気自動車において、運転者が本来必要とされる車両の停止保持操作をせずに停止した車両から離れた場合等にも車両が予期せず発進するおそれを回避又は低減することができるようにした、電気駆動システムの制御装置を提供することを目的とする。
また、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。例えば、車両が予期せず発進するおそれを回避又は低減するにあたって、可能な限り車両の操作性や利便性を低下させないようにすることを本発明の目的に加えることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の電気駆動システムの制御装置は、電気自動車に装備され、走行用モータのみで車両を発進させることが可能であり、所定の起動操作によって起動終了状態から起動する電気駆動システムの制御装置であって、前記車両の運転席に運転者が存在するか否かを検出する運転者検出手段と、前記車両の変速機の変速レンジを選択操作するレンジ選択手段と、前記レンジ選択手段による選択レンジ及び前記運転者検出手段の検出結果に応じて、前記
電気駆動システムの起動状態を終了する
と共に前記車両に搭載された機器の作動可能状態を終了するシャットダウン制御を行なう制御手段と、をそなえ、前記制御手段は、前記運転者検出手段により運転者が不在であることが検出され、且つ、前記レンジ選択手段による選択レンジがパーキングレンジ以外であると、
前記機器が作動中であるか又は作動の予定があるか否かにかかわらず前記シャットダウン制御を行な
い、前記運転者検出手段により運転者が不在であることが検出され、且つ、前記選択レンジがパーキングレンジである場合、所定条件が成立していなければ前記シャットダウン制御を実施し、前記所定条件が成立していれば前記シャットダウン制御を禁止し、前記所定条件には、前記機器の作動中又は作動の予定があることが含まれていることを特徴としている。
【0025】
なお、電気自動車には、走行用モータのみで車両を発進させることが可能なハイブリッド電気自動車も含まれる。
前記所定の起動操作とは、例えば、セレクターレバーやパーキングスイッチといったレンジ選択手段によって変速レンジをP(パーキング)レンジに操作して、ブレーキペダルを踏みながらパワースイッチをEVシステム起動モードに操作する処理である。
【0027】
シャットダウン制御は、車両の予期しない発進のおそれを回避するのに有効であるが、一方で、車両の操作性や利便性を低下させる場合がある。そこで、車両の予期しない発進のおそれが低い状況下において車両の操作性や利便性を低下させる場合にはシャットダウン制御を実施しないようにする、所定条件を設定し、所定条件が成立しているとシャットダウン制御を実施しないようにするのである。
【0028】
「車両の予期しない発進のおそれが低い状況下」とは、例えば、パーキングレンジが選択された状態で運転者が不在となった場合が挙げられる。パーキングレンジが選択されていれば、車両を発進させるには、アクセル操作をする前に、変速レンジの走行レンジへの切り替えが必要であり、車両が予期せず発進するおそれは低い。
また、「シャットダウン制御によって車両の操作性や利便性を低下させる場合」とは、シャットダウン制御が、駆動システムの起動状態を終了すると共に車両に搭載された機器の作動可能状態を終了するように構成された場合において、機器が作動しているか作動予定を設定されている状況が挙げられる。
【0029】
つまり、運転者は、車載の機器を意図的に作動させたままで車両から降りる場合があり、また、タイマ予約などによって車載の機器の作動予定を設定し、運転者が不在の状態で機器を作動させたい場合もあり、これらの場合に、シャットダウン制御によって機器の作動を不可にすると車両の利便性を低下させる。
また、機器を意図的に作動させたままで車両から降りる場合、運転者はすぐに車両に戻って車両を発進させる場合があり、シャットダウン制御がされると、発進操作に、所定の起動操作によって電気駆動システムを起動する操作が加わるので、車両の操作性を低下させる。
【0030】
前記機器には、例えば作動音等によって車外から作動を認識できる機器が適しており、この場合、機器が作動中であれば、車外から作動を認識できるため、車両周辺の歩行者等は、車両が一時的な停車であり、運転者が直ぐに運転席に戻って車両を発進させる可能性が高いことを感知することができる。
(
2)前記機器には、エアコンシステム,オーディオシステム,ランプの何れかを含む電動機器が含まれていることが好ましい。
【0031】
(
3)前記車両は、エンジンを搭載したハイブリッド電気自動車であって、前記機器には、前記エンジンが含まれていることも好ましい。
(
4)前記所定条件には、前記運転者検出手段により運転者が不在であることの検出が開始されてからの経過時間が所定時間以内であることが含まれていることも好ましい。
(
5)前記車両には、前記機器の作動又は作動予定を遠隔操作によって設定可能な遠隔操作システムが適用されていることも好ましい。
【0032】
(
6)前記車両には、前記レンジ選択手段により選択されたレンジを電気信号によって達成する電子式レンジ達成機構が装備され、前記制御手段は、前記シャットダウン制御を実施する前に、前記電子式レンジ達成機構によりレンジをパーキングレンジに切り替えることも好ましい。
(
7)前記シャットダウン制御を実施しているときに、その旨を報知する報知手段が装備されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0033】
(1)本発明の電気駆動システムの制御装置によれば、変速機の選択レンジがパーキングレンジ以外であり、且つ、運転者が不在であることが検出されると、
車両に搭載された機器が作動中であるか又は作動の予定があるか否かにかかわらず電気駆動システムの起動状態を終了するシャットダウン制御を行なうので、その後、車両を発進させるには、アクセル操作をする前に、まず、所定の起動操作によって電気駆動システムを起動終了状態から起動する必要がある。したがって、車両が予期せず発進してしまうおそれが回避又は低減される。
【0034】
(
1)シャットダウン制御が、
電気駆動システムの起動状態を終了すると共に車両に搭載された機器の作動可能状態を終了するように構成さ
れ、機器が作動しているか又は作動の予定があることを含む所定条件を設定し、選択レンジがパーキングレンジであり且つ運転者が不在である場合、所定条件が成立していなければシャットダウン制御を実施し、所定条件が成立していればシャットダウン制御を実施しないことにより、可能な限り車両の操作性や利便性を低下させずに、車両が予期せず発進するおそれを回避又は低減することができる。
【0035】
なお、機器が、例えば作動音等によって車外から作動を認識できるものであれば、この機器の作動中には、車外から作動を認識できるため、車両周辺の歩行者等が、運転者がすぐに車両に戻って車両を発進させる可能性が高いことを感知できる利点がある。
(
2)車両に搭載された機器に、エアコンシステム,オーディオシステム,ランプの何れを含む電動機器が含まれていれば、選択レンジがパーキングレンジであって、エアコンシステム,オーディオシステム,ランプ等の電動機器が作動しているか又は作動の予定があると、シャットダウン制御は実施しない。これにより、例えば、運転者が運転席にいない状況でエアコンシステムを作動させて車室内温度等を調整しておくことができる。
【0036】
(
3)車両に搭載された機器が、ハイブリッド電気自動車に搭載されたエンジンであれば、選択レンジがパーキングレンジであって、エンジンが作動しているか又は作動の予定があると、シャットダウン制御は実施しない。これにより、例えば、運転者が運転席にいない状況でエンジンを作動させて暖機しておくことができる。
(
4)所定条件に、運転者が不在であることの検出が開始されてからの経過時間が所定時間以内であることが含まれていれば、運転者が、短時間だけ運転席から離れて、その後すぐに車両に戻って車両を発進させる場合などには、シャットダウン制御は実施されないため、発進操作に所定の起動操作を行なう必要がなく、車両の操作性が良好になる。
【0037】
(
5)車両に遠隔操作システムが適用されていれば、車両使用にかかる利便性が向上するが、この場合も、選択レンジがパーキングレンジであって、所定条件が成立すると、シャットダウン制御は実施されないので、遠隔操作システムによる利便性が確保される。
(
6)選択されたレンジを電気信号によって達成する電子式レンジ達成機構が車両に装備されている場合、シャットダウン制御を実施する前に電子式レンジ達成機構によりレンジをパーキングレンジに切り替えれば、安全性が向上する。また、電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)の場合、外部充電の際の条件として、通常、パーキングレンジに設定されていることが設定されているので、パーキングレンジに切り替えておけば、その後、円滑に外部充電を行なうこともできる。
【0038】
(
7)シャットダウン制御を実施したときにその旨を報知すれば、運転者等がシャットダウンされていることを認識することができ、これにより外部充電の条件を満たせず、外部充電に支障がある場合にも適切に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
ここでは、第1,3実施形態として、電気駆動システムの制御装置を電気自動車(EV)に適用したもの(EVシステム)を説明し、第2実施形態として、電気駆動システムの制御装置をハイブリッド電気自動車(HEV)に適用したもの(HEVシステム)を説明する。
【0041】
〔第1実施形態〕
(車両の要部構成)
図1は本実施形態にかかる電気自動車(EV)の要部構成図であり、
図1に示すように、電気自動車(以下、単に車両とも言う)1Aには、駆動用パワープラントとして、電動機としての機能と発電機としての機能を有する電動発電機(モータジェネレータ、以下、単に、モータとも言う)11が搭載されている。モータ11はここでは交流の三相誘導機が用いられている。また、モータ11に電力を供給する走行用バッテリ12が搭載されている。
【0042】
この走行用バッテリ12は、300〜400ボルト程度の高電圧バッテリであり、走行用バッテリ12の電力はインバータ13を介してモータ11に供給される。また、インバータ13を制御するためにEVECU(制御手段)20Aが装備される。これらのモータ11,走行用バッテリ12,インバータ13,EVECU20A等からEVシステム(電気駆動システム)10が構成される。
【0043】
モータ11の回転軸は変速機(ここでは、減速機)2を介してディファレンシャル(後輪ディファレンシャル)3の入力部に接続されている。ディファレンシャル3の左右の出力部には、駆動輪(ここでは、後輪)5L,5Rのドライブシャフト4L,4Rが接続されている。EVシステム10が作動すると、モータ11の回転トルクはモータ回転軸から減速機2及びディファレンシャル3を介して左右のドライブシャフト4L,4Rから駆動輪5L,5Rに伝達される。
【0044】
本実施形態では、操舵輪である前輪6L,6Rは従動輪となっているが、EVシステム10は前輪駆動に適用しても良く、前輪と後輪とのそれぞれにモータジェネレータを装備した全輪駆動としても良い。
なお、減速機2には、パーキングギア(図示略)が付設されている。このパーキングギアは電気信号によってロック及びアンロックを切り替えることができる。
【0045】
また、車両1Aには、運転席7に、運転者が運転席7に着座した際に運転者の重量に反応する重量センサ31が備えられており、本制御装置では、この重量センサ31を運転者が運転席7に着座しているか否かを検出する運転者検出手段として利用する。
さらに、車両1Aには、例えば、エアコンシステム(空調装置)32,オーディオシステム33,ヘッドライトやウィンカやハザードランプ等のランプ類34など、種々の電動機器類が装備されている。また、これらの電動機器類の電源は、高電圧の走行用バッテリ12であるが、走行用バッテリ12の電圧をDC/DCコンバータ8a,8bにより変圧して使用される。エアコンシステム32にはDC/DCコンバータ8aにより100ボルト程度に変圧された電力が供給され、オーディオシステム33やランプ類34にはDC/DCコンバータ8bにより24ボルト程度に変圧された電力が供給される。
【0046】
また、車両1Aには、機械的な鍵(以下、キーとも言う)を使用せずに車両のドアの施錠や開錠、及びEVシステム(駆動用パワープラント)10の起動や停止が可能なキーレスオペレーションシステム(キーレスシステム)が採用されている。車両のドアの施錠,開錠や、EVシステム10の起動や停止は、鍵を用いずに、パワースイッチ14のスイッチ操作によって行なうようになっている。
【0047】
本実施形態のパワースイッチ14は、
図2(a)に示すように、捻って操作するロータリ式スイッチであり、ROCK(オフ),ACC(アクセサリ),ON(オン)及びSTART(EVシステム起動)の各モードが設けられる。ROCK位置から回転させると、ACC,ON,STARTと、各モードに順に切り替えられる。このパワースイッチ14により、車両1Aの各電気系統をオン,オフすることができる。
【0048】
こうした電気系統には、走行用モータ11のほか、エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34等の電動機器類がある。このうち、高電圧の走行用バッテリ12をそのまま使用する走行用モータ11は高電圧系統であり、高電圧の走行用バッテリ12を中電圧に変換して使用するエアコンシステム32は中電圧系統であり、高電圧の走行用バッテリ12を低電圧に変換して使用するオーディオシステム33,ランプ類34は低電圧系統である。
【0049】
パワースイッチ14がROCK(オフ)にセットされると、高電圧系統,中電圧系統,低電圧系統のすべてが電力供給遮断状態(シャットダウン状態)となる。具体的には、高電圧系統の場合はインバータ13を、中電圧系統の場合はDC/DCコンバータ8aを、低電圧系統の場合はDC/DCコンバータ8bを、それぞれシャットダウンする。パワースイッチ14がACCにセットされると、低電圧系統のみ電力供給可能状態となり、高電圧系統及び中電圧系統は電力供給遮断状態となる。パワースイッチ14がオンにセットされると、EVシステム10の起動前であれば、低電圧系統及び中電圧系統は可能状態とされ高電圧系統は電力供給遮断状態となる。EVシステム10の起動後にパワースイッチ14がオンにセットされると、高電圧系統,中電圧系統,低電圧系統のすべてが電力供給可能状態となる。
【0050】
なお、パワースイッチ14としては、これに限るものではなく、例えば、押すことでモード切替をする押しボタン式スイッチ等を適用しても良い。また、スイッチのモード切替の態様も本実施形態のものに限らない。
また、車両1Aには、シフトレンジを選択操作するためにシフト操作装置15が装備されているが、このシフト操作装置15は、
図2(b)に示すように、セレクターレバー15aとパーキングスイッチ16とから構成されている。つまり、セレクターレバー15aによって、D(ドライブ)レンジ,N(ニュートラル)レンジ,R(リバース)レンジ,B(回生ブレーキ)レンジの何れかを選択操作することができ、P(パーキング)レンジだけは、セレクターレバー15aとは別に、押しボタン式のパーキングスイッチ16を操作することで選択するようになっている。
【0051】
セレクターレバー15aやパーキングスイッチ16は各選択操作に応じた信号をEVECU20Aに出力し、EVECU20Aを通じて選択レンジに応じた制御が実施される。セレクターレバー15aやパーキングスイッチ16は選択操作した後は物理的には中立位置に戻り、コンビネーションメータのレンジ表示のみが選択レンジの表示に切り替えられる。
【0052】
また、このEVシステム10を起動させる起動操作としては、パーキングスイッチ16を操作して変速レンジをP(パーキング)レンジにセットして、ブレーキペダル(図示略)を踏みながらパワースイッチ14をEVシステム起動モードとなるまで操作する。なお、シフト操作装置15の構成によっては、パーキングスイッチ16を備えずにセレクターレバー15aのポジション操作によってP(パーキング)レンジにセットするものもあり、この場合、セレクターレバー15aを操作して変速レンジをP(パーキング)レンジにセットして、ブレーキペダル(図示略)を踏みながらパワースイッチ14をEVシステム起動モードとなるまで操作する。
また、この車両1Aには、種々の情報を表示するディスプレイ装置9が装備され、本制御装置に関する情報の表示にもディスプレイ装置9が利用される。
【0053】
(EVシステムの制御装置の構成)
本制御装置は、変速機の選択レンジを選択操作するレンジ選択手段としての電子式シフト操作装置15と、運転席に運転者が存在するか否かを検出する運転者検出手段としての重量センサ31と、所定の条件下でEVシステム10のシャットダウン制御を行なう制御手段としてのEVECU20Aとを備えて構成される。
【0054】
電子式シフト操作装置15によりレンジが選択されると、各選択レンジに応じた信号がEVECU20Aに出力され、EVECU20Aはこれに基づいて電気信号を通じて選択レンジに応じた各部の制御を実施する。したがって、減速機2等には電気信号によって選択されたレンジを達成する電子式レンジ達成機構が装備される。特に、減速機2に付設されているパーキングギアには、電気信号によってロック及びアンロックを切り替えることができる電子式ロック及びアンロック機構(電子式レンジ達成機構)が装備される。
【0055】
EVECU20Aは、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポート等を備えた公知の形式のコントロールユニットである。このEVECU20Aは、シャットダウン制御を実施するシャットダウン制御部21と、シャットダウン制御の実施時にこの旨を報知する報知部22と、所要の条件下で上記の電子式ロック及びアンロック機構を利用してパーキングギアをロックに切り替えてパーキングレンジを達成するパーキングギア制御部23との各機能要素を備えている。
【0056】
シャットダウン制御部21は、車両1Aが停止状態であって且つパワースイッチ14がオンの状態であることを前提に、運転席に運転者が不在であること、並びに、選択レンジの状態及び車載の電動機器類の作動状態が条件を満たしている場合、シャットダウン制御を実施する。
具体的には、シャットダウン制御部21は、以下の(1)及び(2)の両条件を満たすのに加えて、以下の(3)及び(4)の何れかの条件が成立した場合に、シャットダウン制御を実施する。
【0057】
(1)パワースイッチ14がオン状態であること。
(2)運転席に運転者が不在であること。
(3)レンジがパーキングレンジでないこと。
(4)レンジがパーキングレンジであり、所定条件(制御を実施しない条件)が何れも成立していないこと。
【0058】
ここで、所定条件とは、シャットダウン制御を実施しない(つまり、禁止する)条件であり、以下の条件が設定されている。
(a)エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34等の電動機器類が作動中であること。なお、ここでいうランプ類34には、ヘッドランプ等の車外灯の他に車室内のランプ類を含む。
【0059】
したがって、レンジがパーキングレンジである場合、エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34等の電動機器類の何れかが作動中であれば、シャットダウン制御は禁止され、シャットダウン制御部21はシャットダウン制御を実施しない。
変速レンジがパーキングレンジであると、パーキングギアがロックされているため、車両を発進させるには、変速レンジを走行レンジに切り替える操作が必要になり、車両が突然発進するおそれは低い。
【0060】
しかも、エアコンシステム32の使用態様として、車室内に入り込む前にエアコンシステム32を作動させておいたり、一時的に車両を離れる際にも、エアコンシステム32を作動させておいたりして、車室内の温度を調整したい場合がある。また、僅かな時間だけ車外に出る場合などは、オーディオシステム33やランプ類34をわざわざオフにすることはない。さらに、車両1Aを停止させながら車両1Aのランプ類34を使用したい場合もある。このような場合、変速レンジをパーキングレンジにすれば、シャットダウン制御を実施しないので、そこで、各機器を便利に使用することができる。
【0061】
また、こうした機器類を使用している状態で運転席から運転者が離れるのは、運転者が直ぐに運転席に戻って車両を発進させる場合が多いので、シャットダウン制御を実施しないことにより、発進時に、EVシステム10を起動操作する手間が不要になり、操作性がよい。
さらに、エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34などの場合、これらの機器類が作動中であれば、作動音や光の照射等によって車外から機器類の作動を認識できる。これは、エンジン車において、変速レンジをパーキングレンジにしてエンジンをかけたままで車両1Aを停車させた場合に似ており、車両周辺の歩行者等が、車両が一時的な停車であり、運転者が直ぐに運転席に戻って車両を発進させる可能性が高いことを感知することができる。
【0062】
また、本実施形態では、シャットダウン制御部21が、上記の条件(1),(2),(3)の成立によってシャットダウン制御を実施する場合には、パーキングギア制御部23が、この直前に、電子式ロック及びアンロック機構を操作して変速機のレンジをパーキングレンジに切り替える。
さらに、シャットダウン制御の実施中は、報知部22及びディスプレイ装置9からなる報知手段によってその旨が報知される。つまり、報知部22はディスプレイ装置9を通じて、例えば
図2(c)に示すように、「システム停止処理を行なわなかったためシャットダウン実施中」などのメッセージ表示により、運転者にその旨を報知する。
【0063】
この報知手段としては、メッセージ表示に合わせて或いはこれに替えてアラームランプを点灯操作したり、運転者が再び車両に乗り込んだタイミングでその旨を音声メッセージで報知したり、アラーム音を鳴らしたりするものでもよい。
なお、上述のように、パワースイッチ14は少なくともACCのモードを経てオンにセットされるので、シャットダウン制御部21は、車両停止時にパワースイッチ14がACCにセットされた時点から制御を開始する。
【0064】
(作用及び効果)
本発明の第1実施形態にかかるEVシステム(電気駆動システム)の制御装置は、上述のように構成されるので、例えば
図3のフローチャートに示すように制御を実施することができる。
図3のフローは、車両停止時にパワースイッチ14がACCにセットされた時点から開始される。
【0065】
図3に示すように、まず、パワースイッチ14がオンにセットされているか否かを判定する(ステップS10)。パワースイッチ14がオンでなければ、車両1Aが予期せず発進するおそれはないので、リターンし、所定周期後に再びステップS10の判定を実施する。
パワースイッチ14がオンにセットされている場合、運転席が不在であるか否かを判定する(ステップS20)。運転席が不在でなければ、車両1Aが予期せず発進するおそれはないので、リターンする。運転席が不在であれば、次に、パーキングスイッチ16がオン(即ち、パーキングレンジが選択されている)であるか否かを判定する(ステップS30)。
【0066】
パーキングスイッチ16がオンでない場合、即ち、パーキングレンジが選択されていない場合は、車両1Aが予期せず発進するおそれがあるので、まず、電子式ロック及びアンロック機構を利用してパーキングスイッチ16をオンに切り替える(即ち、レンジをパーキングレンジに切り替える)処理をして(ステップS40)、高電圧系統,中電圧系統,低電圧系統のすべてを電力供給遮断状態とするシャットダウンを実施する(ステップS60)。
【0067】
この場合、シャットダウンの直前でパーキングスイッチ16をオンにするので、この時点で車両1Aが予期せず発進するおそれが回避される。ただし、本装置では、電子式ロック及びアンロック機構が万一作動不良を起こした場合を考慮すると共に、待機電流の消費抑制や、車両から離れる際に運転者に適正な処理(パワースイッチ14をオフにするか又はパーキングスイッチ16がオンにする処理)を促す意味も込めて、シャットダウンを実施する。
【0068】
さらに、シャットダウン制御の実施中は、報知部22及びディスプレイ装置9からなる報知手段によってその旨を報知する(ステップS70)。例えば
図2(c)に示すように、「システム停止処理を行なわなかったためシャットダウン実施中」などのメッセージ表示により、運転者にその旨を報知する。
一方、パーキングスイッチ16がオンである場合、電動機器類が何れもオフであるか否かを判定する(ステップS50)。そして、電動機器類が何れもオフ(作動しておらず、作動予定もない)であれば、シャットダウンを実施し(ステップS60)、その旨を報知する(ステップS70)。電動機器類の何れかがオン(作動中又は作動予定がある)であれば、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステムの起動状態)を維持する。
【0069】
パーキングレンジが選択されている場合は、パーキングギアが作動しているので、車両の発進はパーキングギアに抗して行なわれることになる。したがって、車両が起動状態であっても、車両の発進する可能性は低い。電動機器類が作動中である又は作動予定であれば、運転者が意図的にパワースイッチ14をオンにしたままで車両1Aを離れたものと考え、この場合、シャットダウンを実施すると車両の操作性や利便性を低下させる。ただし、電動機器類が作動中でなく且つ作動予定もないのであれば、シャットダウンを実施しても車両の操作性や利便性を低下させることはない。
【0070】
そこで、パーキングスイッチ16がオンである場合において、電動機器類が何れもオフであれば、シャットダウンを実施して運転者が不在の車両が予期せず発進してしまうおそれをより一層低減し、電動機器類の何れかがオンであれば、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステム10等の起動状態)を維持して、車両の操作性や利便性を確保するのである。
【0071】
本制御装置によれば、このようにして、パワースイッチ14がオンで且つパーキングスイッチ16がオフ(パーキングギアが非作動)の場合、運転者が不在の車両が予期せず発進してしまうおそれがあるが、EVシステム10の起動状態を終了するシャットダウン制御を行なうので、運転者が不在の車両が予期せず発進してしまうおそれが回避される。同時に不要な待機電力を抑えることにもなる。
【0072】
パーキングスイッチ16がオン(パーキングレンジが選択)で、パーキングギアが作動している場合には、運転者が不在の車両が予期せず発進してしまうおそれは低いが、電動機器類の何れかが作動中であるという所定条件が成立しない限り、シャットダウン制御を行なうので、運転者が不在の車両が予期せず発進してしまう万が一のおそれも回避される。同時に不要な待機電力を一層抑えることにもなる。
【0073】
エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34といった電動機器類の何れかが作動中であれば、シャットダウン制御は実施されないが、電動機器類が作動中であれば車外からこの作動を作動音等で認識できるため、車両周辺の歩行者等は、車両が一時停車的な停車であり、運転者が直ぐに運転席に戻って車両を発進させる可能性が高いことを感知することができる。
【0074】
また、エアコンシステム32などは車両1Aから離れていても運転を続行させたい場合があり、運転者が意識的に電動機器類を作動させている場合がある。この場合に、電動機器類の作動可能状態を終了される(作動不能とされる)ことは運転者の意に反することになるが、これを回避することができる。また、同乗者やペット等が車両1A内に残った状態で運転者が運転席7から離れる場合に、ハザードランプや室内灯を点灯操作するなどして、意識的にEVシステム10を起動状態に維持させることもできる。
【0075】
また、パーキングスイッチ16がオンでない場合、電子式ロック及びアンロック機構を利用してパーキングスイッチ16をオンに切り替えてからシャットダウン制御を実施するので、安全性が向上するうえに、電気自動車(ハイブリッド電気自動車を含む)の場合、通常、パーキングギアが作動状態であることが、外部充電の際の条件として設定されているので、このようにパーキングスイッチ16をオンに切り替えておくことにより、その後、外部充電を円滑に行なうこともできる。
【0076】
また、シャットダウン制御を実施した旨を運転者等に報知するので、運転者等がシャットダウンされていることを認識することができ、これにより外部充電の条件を満たせず、外部充電に支障がある場合にも適切に対応することができる。
運転席に装備された重量センサ31を運転者検出手段に適用しているので、運転者が不在であることを容易に検出できる。
【0077】
〔第2実施形態〕
(車両の要部構成)
図4は本実施形態にかかるハイブリッド電気自動車(HEV)の要部構成図であり、
図4において、
図1と同符号は同様のものを示し、これらについては説明を一部省略する。
図4に示すように、このハイブリッド電気自動車(以下、単に車両とも言う)1Bには、駆動用パワープラントとして、
図1に示す第1実施形態の電気自動車(EV)と同様の電動発電機(モータジェネレータ、モータ)11,走行用バッテリ12,インバータ13を有する後輪5L,5Rの駆動システムに加えて、エンジン(内燃機関)50,自動変速機51,発電機(ジェネレータ)52,電動発電機(モータジェネレータ、モータ)53,インバータ54,クラッチ55及びエンジンECU56を備えた前輪6L,6Rの駆動システムが追加されている。そして、後輪5L,5Rの駆動システムと前輪6L,6Rの駆動システムとを統合制御するHEVECU20Bが装備され、HEVシステム(電気駆動システム)100が構成される。なお、エンジンECU56及びHEVECU20Bは、CPU(中央演算装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、入出力ポート等を備えた公知の形式のコントロールユニットである。
【0078】
前輪6L,6Rの駆動システムについて説明すると、エンジン50は自動変速機51を介して発電機52と接続され、また、自動変速機51及びクラッチ55を介して前輪側ディファレンシャル3Fの入力部に接続されている。クラッチ55を接続すると、エンジン50の出力トルクが前輪側ディファレンシャル3Fを介して左右のドライブシャフト4L,4Rから駆動輪5L,5Rに伝達される。
【0079】
発電機52はインバータ54により制御され、エンジン50の出力トルクを受けて発電を行なう。クラッチ55が切り離されていればエンジン50の出力トルクを発電専用に用い、クラッチ55が接続されていれば、発電を停止しエンジン50の出力トルクを走行駆動専用に用いるかエンジン50の出力トルクを走行駆動と発電とに配分して用いることができる。エンジン50はHEVECU20Bの統合制御のもとでエンジンECU56により出力トルクを制御される。
【0080】
モータ53は前輪側ディファレンシャル3Fの入力部に直接接続されており、インバータ54により制御される。インバータ54は発電機52を作動させる場合には、発電電力をモータ53に供給したり走行用バッテリ12の充電に供給したりする。また、発電機52を作動させてない場合や発電機52の発電電力が不足する場合には、走行用バッテリ12からモータ53に電力を供給する。
【0081】
インバータ54の作動や、自動変速機51及びクラッチ55の作動は、HEVECU20Bの統合制御のもとで制御される。
例えば、走行用バッテリ12の残存容量が十分あり、車両1Bの出力要求がモータ11,53で賄える範囲であれば、クラッチ55を切り離してエンジン50を停止して、走行用バッテリ12からモータ11,53に電力を供給して走行トルクを得て走行する。
【0082】
また、走行用バッテリ12の残存容量が少なくなれば、クラッチ55を切り離してエンジン50を作動させて、エンジン50で発電機52を作動させて発電しながら、この発電電力を走行用バッテリ12の充電やモータ11,53に供給しながら、或いは、この発電電力を走行用バッテリ12の電力に加えてモータ11,53に供給しながら、シリーズ走行を行なう。
【0083】
高速走行など車両1Bの出力要求が大きくなると、クラッチ55を接続してエンジン50を作動させて、エンジン50の出力トルクを発電機52の発電や走行駆動に適宜配分しながらモータ11,53を作動させてパラレル走行を行なう。
また、本車両1Bには、遠隔操作システムが採用され、リモコン機或いはスマートフォン110を通じた無線通信によって、車両1Bから離れた個所から、エアコンシステムの作動や、エンジン50の暖機や、プラグインシステムを利用した走行用バッテリ12への外部充電を遠隔操作することができるようになっている。ただし、遠隔操作システムの作動条件に、種々の安全対策が用意されている。
【0084】
このため、本制御装置では、シャットダウン制御を禁止する条件である所定条件に、第1実施形態の条件(a)に、以下の条件(b),(c)が追加され、(a),(b),(c)の3つの所定条件が設けられている。
(a)エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34等の電動機器類が作動中であること。
【0085】
(b)エンジン50が作動中であること。
(c)遠隔操作システムによってHEVシステム100又は電動機器類が作動中であること。
条件(b)は、エンジン50が作動中であれば、車両1Bに接近した人はエンジン50の作動音から車両1Bの発進の可能性を認識することができ、シャットダウンの必要がないからである。
【0086】
条件(c)は、遠隔操作システムの作動条件に、例えば、HEVシステム(電気駆動システム)の作動が禁止されていることやクラッチ55の接続状態が非接続であることなどの、種々の安全対策が用意されているので、遠隔操作システムによるHEVシステム100又は電動機器類の作動は、車両1Bが発進してしまうおそれがないためである。
なお、上記以外の構成については、第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0087】
(作用及び効果)
本発明の第2実施形態にかかるHEVシステム(電気駆動システム)の制御装置は、上述のように構成されるので、例えば
図5のフローチャートに示すように制御を実施することができる。
図5のフローは、車両停止時にパワースイッチ14がACCにセットされた時点から開始される。
【0088】
図5に示すように、まず、パワースイッチ14がオンにセットされているか否かを判定する(ステップS10)。パワースイッチ14がオンでなければ、車両1が予期せず発進するおそれはないので、リターンし、所定周期後に再びステップS10の判定を実施する。
パワースイッチ14がオンにセットされている場合、運転席が不在であるか否かを判定する(ステップS20)。運転席が不在でなければ、車両1が予期せず発進するおそれはないので、リターンする。運転席が不在であれば、次に、パーキングスイッチ16がオン(即ち、パーキングレンジが選択されている)であるか否かを判定する(ステップS30)。
【0089】
パーキングスイッチ16がオンでない場合、即ち、パーキングレンジが選択されていない場合は、車両1が予期せず発進するおそれがあるので、まず、電子式ロック及びアンロック機構を利用してパーキングスイッチ16をオンに切り替える(即ち、レンジをパーキングレンジに切り替える)処理をして(ステップS40)、高電圧系統,中電圧系統,低電圧系統のすべてを電力供給遮断状態とするシャットダウンを実施する(ステップS60)。
【0090】
さらに、シャットダウン制御の実施中は、報知部22及びディスプレイ装置9からなる報知手段によってその旨を報知する(ステップS70)。例えば
図2(c)に示すように、「システム停止処理を行なわなかったためシャットダウン実施中」などのメッセージ表示により、運転者にその旨を報知する。
一方、パーキングスイッチ16がオンである場合、電動機器類が何れもオフ(作動しておらず、作動予定もない)であるか否かを判定する(ステップS50)。電動機器類の何れかがオン(作動中又は作動予定がある)であれば、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステム等の起動状態)を維持する。
【0091】
そして、電動機器類が何れもオフであれば、リモコン作動中か否か、つまり、遠隔操作システムによってHEVシステム100又は電動機器類(この電動機器類は作動音を発しないものも含む)が作動中であるか否かを判定する(ステップS52)。リモコン作動中であれば、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステムの起動状態)を維持する。
【0092】
リモコン作動中でなければ、エンジン作動中(作動予定がある場合も含む)か否かを判定する(ステップS54)。エンジン作動中であれば、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステムの起動状態)を維持する。一方、エンジン作動中である場合、シャットダウンを実施し(ステップS60)、その旨を報知する(ステップS70)。
本実施形態では、第1実施形態のものに、リモコン作動中であるか否かの判定(ステップS52)と、エンジン作動中であるか否かの判定(ステップS54)とが付け加えられているので、第1実施形態のものに、以下の効果が加えられる。
【0093】
遠隔操作システムの作動条件に種々の安全対策が用意されているので、遠隔操作システムによるHEVシステム100又は電動機器類の作動は、車両1Bが発進してしまうおそれがないためシャットダウンの必要がなく、過剰なシャットダウン制御を回避できる。
エンジン50が作動中であれば、車両1Bに接近した人はエンジン50の作動音から、車両1Bが一時的な停車であり、運転者が直ぐに運転席に戻って車両を発進させる可能性が高いことを感知することができる。
【0094】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、シャットダウン制御を禁止する所定条件に、第1実施形態の機器類に関する条件に加えて、運転者が不在であることの検出が開始されてからの経過時間が所定時間以内であることが設定されている。
つまり、本実施形態ではシャットダウン制御を禁止する条件である所定条件に、第1実施形態の条件(a)に、以下の条件(d)が追加され、(a),(d)の2つの所定条件が設けられており、(a),(d)の何れかの所定条件が成立したシャットダウン制御を禁止する。
【0095】
(a)エアコンシステム32,オーディオシステム33,ランプ類34等の電動機器類が作動中であること。
(d)運転者が不在であることの検出が開始されてからの経過時間が所定時間以内であること。
なお、条件(d)の所定時間とは、運転者が車両1Aから降りても車両1Aから離れずに例えば乗員の乗り降りの補助やトランクルームの開け閉めなどの作業を行なう場合を想定したもので、例えば数十秒程度の時間に設定することができる。
【0096】
上記以外の構成については、第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
(作用及び効果)
本発明の第3実施形態にかかるEVシステム(電気駆動システム)の制御装置は、上述のように構成されるので、例えば
図6のフローチャートに示すように制御を実施することができる。
図6のフローは、車両停止時にパワースイッチ14がACCにセットされた時点から開始される。
【0097】
図6に示すように、本実施形態にかかる制御では、第1実施形態(
図3)の処理に、ステップS22,S24,S26,S32,S34,S52が追加されている。また、
図3と同様のステップについては説明を一部省略する。
つまり、まず、パワースイッチ14がオンにセットされているか否かを判定し(ステップS10)、パワースイッチ14がオンでなければ、車両1Aが予期せず発進するおそれはないので、リターンし、所定周期後に再びステップS10の判定を実施する。
【0098】
パワースイッチ14がオンにセットされている場合、運転席が不在であるか否かを判定する(ステップS20)。運転席が不在でなければ、車両1Aが予期せず発進するおそれはなく、タイマを停止させ0にリセットし(ステップS32)、フラグFを0にセットし(ステップS34)、リターンする。なお、タイマは、運転席の不在が検知された時点(つまり、運転席に着座していた運転者が運転席を離れた時点)で起動してカウントを開始し、運転者が運転席に着座した時点で、タイマを停止させ0にリセットする。また、フラグFは、運転者が運転席に着座していれば0、着座していなければ1とされる。
【0099】
一方、運転席が不在であれば、フラグFが0であるか否かを判定し(ステップS22)、フラグFが0の場合には、即ち、それまで着座していた運転者が運転席を離れた場合には、タイマのカウントをスタートし(ステップS24)、フラグFを1にセットし(ステップS26)、パーキングスイッチ16がオン(即ち、パーキングレンジが選択されている)であるか否かを判定する(ステップS30)。また、フラグFが1の場合、ステップS22からステップS30に進む。
【0100】
ステップS30において、パーキングスイッチ16がオンでない場合、即ち、パーキングレンジが選択されていない場合は、車両1Aが予期せず発進するおそれがあるので、まず、電子式ロック及びアンロック機構を利用してパーキングスイッチ16をオンに切り替える(即ち、レンジをパーキングレンジに切り替える)処理をして(ステップS40)、ステップS52に進む。
【0101】
一方、パーキングスイッチ16がオンである場合、電動機器類が何れもオフ(作動しておらず、作動予定もない)であるか否かを判定する(ステップS50)。ここで、電動機器類が何れもオフであれば、ステップS52に進む。電動機器類の何れかがオン(作動中又は作動予定がある)であれば、リターンし、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステム等の起動状態)を維持する。
【0102】
ステップS52では、タイマ値(タイマのカウント値)Tが設定時間T1以上に達したかを判定し、タイマ値Tが設定時間T1以上に達しなければ、リターンし、シャットダウンを実施せずに、車両起動状態(EVシステムの起動状態)を維持する。
タイマ値Tが設定時間T1以上に達したら、高電圧系統,中電圧系統,低電圧系統のすべてを電力供給遮断状態とするシャットダウンを実施する(ステップS60)。
【0103】
さらに、シャットダウン制御の実施中は、報知部22及びディスプレイ装置9からなる報知手段によってその旨を報知する(ステップS70)。
本実施形態では、第1実施形態の効果の加えて、運転者が短時間だけ運転席から離れた場合には、シャットダウンを実施しないので、運転者が、例えば乗員の乗り降りの補助やトランクルームの開け閉めなどの作業を行なうために、短時間だけ運転席から離れた場合には、EVシステムの作動が継続され、発進操作に所定の起動操作を行なう必要がなく、車両の操作性が良好にし、電動機器類の停止もないため、利便性が確保される。
【0104】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、上記の実施形態を適宜変形したり、一部を採用したりして実施することができる。
特に、所定条件は、シャットダウン制御を実施すると、自動車の操作性や利便性が損なわれる点に着目し、車両が予期しない発進をするおそれが低いことを条件に、上記不具合を回避するために、適宜の条件を設定しうる。
【0105】
本発明の目的は、車両が何の前触れもなくしかもほとんど音もなく発進してしまうことの不具合を解消することであるが、この対策として実施するシャットダウンが過剰な制御とならないようにすることが必要である。
なお、電気自動車やハイブリッド電気自動車の構成も、上記の実施形態に限定されるものでなく、種々の構成のものに適用できる。
【0106】
パワースイッチや、レンジ選択手段や、運転者検出手段も上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の構成のものに適用できる。例えば、運転者検出手段には、カメラやシートベルトセンサなども適用できる。
また、シャットダウン制御を実施しない所定条件について、第1,3実施形態では、車両に搭載された電動機器類が作動しているか又は作動の予定があることを条件としているが、電動機器類に限らず、第2実施形態におけるハイブリッド電気自動車のエンジンなど、車両に搭載された他の機器類が作動しているか又は作動の予定があることを所定条件に適用することができる。
【0107】
また、第3実施形態の運転者が短時間だけ運転席から離れた場合にはシャットダウンを実施しない構成を、第2実施形態に適用しても良い。この場合の処理フローは、例えば、
図6のステップS22,S24,S26,S32,S34,S52を
図5の対応箇所に追加したものとなる。
また、電子制御によってパーキングブレーキを操作しうる電子制御式パーキングブレーキが装備されている場合、シャットダウン制御を実施する前に、電子制御式パーキングブレーキをブレーキ作動状態に切り替えることも考えられる。この場合、寒冷地でのパーキングブレーキの固着を考慮して外気温が所定温度以上なら作動状態に切り替えるようにしても良い。