特許第6136437号(P6136437)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136437
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】太陽熱温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   F24H1/00 621D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-63711(P2013-63711)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-190555(P2014-190555A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077925(JP,A)
【文献】 特開2002−130839(JP,A)
【文献】 特開2013−007506(JP,A)
【文献】 特開2012−098012(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086033(WO,A1)
【文献】 特開2012−093061(JP,A)
【文献】 特開2010−145042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18
F24H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集熱パネルと、貯湯タンクと、前記集熱パネルと貯湯タンクとに亙って熱媒を循環させる集熱循環回路とを備えた太陽熱温水装置であって、前記集熱循環回路に、熱媒を循環させるための循環ポンプと、熱媒の圧力を調整するためのアキュームタンクと、熱媒と貯湯タンクの湯水との間で熱交換するための放熱熱交換器とを備えた太陽熱温水装置において、
前記放熱熱交換器において熱交換ができない場合に前記循環ポンプの駆動を禁止する制御手段を設け
前記制御手段による前記循環ポンプの駆動禁止は、試運転時で且つ集熱パネル面積が設定面積以上で且つ外気温度が設定温度以上である場合に有効とされる
ことを特徴とする太陽熱温水装置。
【請求項2】
前記放熱熱交換器において熱交換ができない場合とは、貯湯タンク内の保有水量が所定量以下、貯湯タンク内の湯温が所定温度以上、タンク側循環ポンプが駆動不能、の内の少なくとも1つの条件が成立した場合であることを特徴とする請求項1に記載の太陽熱温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を利用する太陽熱温水装置に関し、特にアキュームタンクに熱媒を手動にて充填するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽熱温水装置は、太陽熱を集める集熱パネルと、この集熱パネルが集めた熱を用いて暖めた湯水を貯留する貯湯タンクと、集熱パネルと貯湯タンク側放熱熱交換器とに亙って熱媒(不凍液)を循環させる集熱循環回路とを備えている。
前記の集熱循環回路は、通常、熱媒を循環させる循環ポンプと、膨張した熱媒の圧力を調整するためのアキュームタンクと、熱媒と貯湯タンクの湯水との間で熱交換する放熱熱交換器を備えている。前記放熱熱交換器として、貯湯タンク内に配設した熱交換器を採用する場合と、貯湯タンクの外部に外部熱交換器を配置し、この外部熱交換器にタンク側循環ポンプにより貯湯タンクの湯水を循環させる場合がある。
【0003】
特許文献1の太陽熱給湯装置は、太陽電池パネルを組み込んだ集熱パネルと、温水を貯留する貯湯タンクと、集熱パネルで集熱した熱媒を循環させる熱媒循環管路と、ガスにより湯水を加熱する補助熱源機とを備えている。熱媒循環管路には、熱媒の充填及び熱媒の圧力調整用のシスターンと、熱媒を循環させる循環ポンプと、貯湯タンク内に配設した放熱熱交換器とが接続されている。試運転時に集熱パネルの集熱能力が低い場合や、貯湯タンクの湯水を加熱する必要のある場合に、補助熱源機で加熱した湯水で熱媒を加熱するため、熱媒循環管路に集熱パネルをバイパスするバイパス路と、このバイパス路に併設した液液熱交換器と、この液液熱交換器に補助熱源機で加熱した湯水を循環させる加熱用循環管路などが設けられている。
【0004】
前記シスターンには、その内部の熱媒のレベルを検出する低水位スイッチと高水位スイッチとが設けられている。シスターンから集熱循環管路と集熱パネルと熱交換器に熱媒を充填する際、低水位スイッチと高水位スイッチの検出信号と前者の検出信号の検出から後者の検出信号の検出までの経過時間に基づいて、熱媒の適正な充填状態を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−149660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の太陽熱温水装置の設置後に集熱パネルや集熱循環回路に熱媒を充填する場合、通常は貯湯タンクに水張りした状態で、手動にてアキュームタンクやシスターンへ熱媒を注入することで充填する。この熱媒の充填の際、夏季など外気温が高く、集熱パネルが高温の状態になっているときに熱媒を充填すると、集熱パネル内で沸騰した熱媒がアキュームタンクから噴出することがあるため安全上好ましくない。特に、何らかの手違いにより貯湯タンクが空の状態又は湯水のレベルが低い場合、又は、貯湯タンクの湯水の温度が高く冷却能力が低い場合、集熱パネルの面積が大きい場合などには、上記の問題が発生する。
【0007】
本発明の目的は、放熱熱交換器において貯湯タンクの湯水と熱媒との間で実質的に熱交換できない場合には循環ポンプの駆動を禁止することで集熱循環回路への熱媒の充填を禁止するようにした太陽熱温水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の太陽熱温水装置は、集熱パネルと、貯湯タンクと、前記集熱パネルと貯湯タンクとに亙って熱媒を循環させる集熱循環回路とを備えた太陽熱温水装置であって、前記集熱循環回路に、熱媒を循環させるための循環ポンプと、熱媒の圧力を調整するためのアキュームタンクと、熱媒と貯湯タンクの湯水との間で熱交換するための放熱熱交換器とを備えた太陽熱温水装置において、前記放熱熱交換器において熱交換ができない場合に前記循環ポンプの駆動を禁止する制御手段を設け、前記制御手段による前記循環ポンプの駆動禁止は、試運転時で且つ集熱パネル面積が設定面積以上で且つ外気温度が設定温度以上である場合に有効とされることを特徴としている。
【0009】
請求項2の太陽熱温水装置は、請求項1の発明において、前記放熱熱交換器において熱交換ができない場合とは、貯湯タンク内の保有水量が所定量以下、貯湯タンク内の湯温が所定温度以上、タンク側循環ポンプが駆動不能、の内の少なくとも1つの条件が成立した場合であることを特徴としている。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、太陽熱温水装置の集熱循環回路に、熱媒を循環させるための循環ポンプと、熱媒の圧力を調整するためのアキュームタンクと、熱媒と貯湯タンクの湯水との間で熱交換するための放熱熱交換器とを設け、前記放熱熱交換器において熱交換ができない場合に前記循環ポンプの駆動を禁止する制御手段を設けたため、次の効果が得られる。
【0012】
集熱パネルが高温の状態のときに熱媒を集熱循環回路に充填すべくアキュームタンクに熱媒を注入する際に、放熱熱交換器において熱交換ができない場合には、前記制御手段が循環ポンプの駆動を禁止するため、熱媒が集熱パネルに充填されないので、沸騰した熱媒がアキュームタンクから噴出するのを確実に防止することができ、熱媒充填作業の安全性を高めることができる。
そして、前記制御手段による前記循環ポンプの駆動禁止は、試運転時で且つ集熱パネル面積が設定面積以上で且つ外気温度が設定温度以上である場合に有効とされるため、通常運転時における前記循環ポンプの駆動禁止を避けることができるうえ、集熱パネル面積が設定面積未満の場合や、外気温度が設定温度未満の場合であって、沸騰した熱媒がアキュームタンクから噴出する虞がない場合における前記循環ポンプの駆動禁止を避けることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、貯湯タンク内の保有水量が所定量以下、貯湯タンク内の湯温が所定温度以上、タンク側循環ポンプが駆動不能、の内の少なくとも1つの条件が成立した場合に、前記制御手段により循環ポンプの駆動を禁止して、集熱パネルへの熱媒の循環を禁止し、沸騰した熱媒がアキュームタンクから噴出するのを確実に防止することができ、熱媒充填作業の安全性を高めることができる。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る太陽熱温水装置の全体構成を示す構成図である。
図2】アキュームタンクに熱媒を注入する状態を示す説明図である。
図3】実施例2に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施する為の形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図1及び図2に基づいて説明する。
図1に示すように、実施例1の太陽熱温水装置1は、集熱パネル2と、貯湯タンク3と、集熱循環回路4と、アキュームタンク5と、リザーブタンク13などを備えている。この太陽熱温水装置1は、熱媒(例えば、プロピレングリコールを添加した不凍液)を循環ポンプ7により集熱循環回路4内を矢印方向に循環させ、集熱パネル2で加熱された熱媒により貯湯タンク3内に貯留された湯水を暖め、貯湯タンク3から湯水を供給可能に構成されている。尚、前記プロピレングリコールを添加した不凍液の代りに、エチレングリコールを添加した不凍液等も採用することができる。
【0018】
集熱パネル2は、建物の屋根上等の高所に設置されると共に太陽熱吸熱性の良好な材料で構成され、集熱循環回路4内を循環する熱媒を太陽熱により加熱可能に形成されている。
貯湯タンク3は、ロックウール等の断熱材で被覆された円筒形の密閉タンクであり、その内部に家庭の台所や風呂用の湯水を貯留可能に構成されている。
【0019】
貯湯タンク3には、給水管8aと、給湯管8bと、貯留水の温度を測定可能な複数の水温センサ3a〜3dが設けられ、その内部に後述する放熱熱交換器10が収容されている。貯湯タンク3には、異なる高さ位置に4つの水温センサ3a〜3dが付設されており、これら水温センサ3a〜3dの検出信号から貯湯タンク3内の異なる高さの4位置の湯水の温度と、異なる高さの4レベルの水位を検出することができる。水温センサ3a〜3dの検出信号は制御ユニット11に出力される。給水管8aは貯湯タンク3内へ給水するため底部近傍位置に接続され、給湯管8bは加熱された湯を外部へ給湯するため頂部位置に接続されている。
【0020】
集熱循環回路4は、集熱パネル2と貯湯タンク3内に配設された放熱熱交換器10とに亙って熱媒を循環させる為のものである。集熱循環回路4は、アキュームタンク5と、このアキュームタンク5から集熱パネル2までの流路を形成する往回路部4aと、集熱パネル2内部に配設された集熱回路部4bと、集熱パネル2から放熱熱交換器10までの流路を形成する第1復回路部4cと、貯湯タンク3の内部に螺旋状に形成された放熱熱交換器10と、放熱熱交換器10からアキュームタンク5までの流路を形成する第2復回路部4dとを備えている。往回路部4a、第1,第2復回路部4c,4dは、銅製、ステンレス製又は合成樹脂製の管材により構成されている。集熱回路部4bは銅製の管材により形成されている。
【0021】
往回路部4aの途中部には、熱媒を集熱回路部4b側へ圧送可能な循環ポンプ7が設けられ、集熱回路部4bの下流側位置には、集熱した熱媒の温度を測定可能な液温センサ9bが設けられている。循環ポンプ7は制御ユニット11によって駆動制御され、液温センサ9bは制御ユニット11へ検出信号を出力している。
【0022】
アキュームタンク5は、金属製タンクからなり、内部に貯留された熱媒から空気を分離する気液分離機能と膨張・収縮する熱媒の圧力を調整する圧力調整機能を有している。 このアキュームタンク5は、第2復回路部4dから還流した熱媒を往回路部4aへ還流させ且つ一部の熱媒を貯留可能に形成されている。
アキュームタンク5の下方近傍位置には、大気に解放され且つ熱媒を貯留可能な合成樹脂製のリザーブタンク13が設置されている。アキュームタンク5とリザーブタンク13とは、連通管14を介して連通されている。連通管14は、一端がアキュームタンク5に接続され、他端がリザーブタンク13内の底部近傍位置に配置されている。
【0023】
アキュームタンク5の上部開口部5aには、着脱可能な調圧弁12が密閉状に装着されている。熱媒の膨張によりアキュームタンク5の内部圧力が高く、集熱循環回路4内の熱媒が設定圧以上になると、調圧弁12の第1弁部が開弁して熱媒がアキュームタンク5から連通管14を介してリザーブタンク13へ移動する。また、集熱循環回路4内の熱媒が所定の負圧になると、調圧弁12の第2弁部が開弁して熱媒はリザーブタンク13から連通管14を介してアキュームタンク5へ移動する。こうして、集熱循環回路4内の熱媒の圧力を所定範囲となるように調整している。また、循環ポンプ7のサクション側に加圧状態の熱媒を供給でき、循環ポンプ7の循環効率を高くすることができる。
【0024】
リザーブタンク13には、貯留された熱媒の水位を検出する第1、第2液位センサ15,16が設置され、第1、第2液位センサ15,16の検出信号は制御ユニット11へ出力されている。第1液位センサ15の先端高さ位置は、上限液位に相当する位置に設定され、第2液位センサ16の先端高さ位置は、下限液位に相当する位置に設定されている。第2液位センサ16の先端が連通管14の他端よりも高い位置に設置されている。
【0025】
制御ユニット11の操作盤11pは、少なくとも、通常運転釦11aと、試運転釦11bを備え、制御ユニット11は、後述するディップスイッチ11cを備え、循環ポンプ7、水温センサ3a〜3d、外気温センサ9a、液温センサ9b、第1、第2水位センサ15,16と電気的に接続されている。この制御ユニット11は、マイクロコンピュータと、センサやスイッチ類からの信号入力の為の入力インターフェイスと、循環ポンプ7の駆動回路を含む出力インターフェイスなどを備えている。前記マイクロコンピュータには、循環ポンプ7を駆動制御する制御プログラムやその他の制御プログラムが予め格納されている。
【0026】
制御ユニット11は、試運転時に、集熱循環回路4に熱媒を充填する際に、循環ポンプ7を駆動又は駆動禁止したり、リザーブタンク13に貯留された熱媒の液位(低水位、高水位)を検出し、通常運転時に、水温センサ3a〜3dと液温センサ9bとにより検出された温度差に基づき循環ポンプ7を駆動するように構成されている。
【0027】
次に、図1図2に基づき、試運転時に、太陽熱温水装置1の集熱循環回路4へ熱媒を充填する方法とこの充填時に制御ユニット11が行う制御について説明する。
太陽熱温水装置1の新規設置や点検修理後には、集熱循環回路4内には熱媒が存在していないため、太陽熱温水装置1の運転に必要な熱媒を適正量充填する必要がある。
この場合、図2に示すように、アキュームタンク5から調圧弁12を取り外し、熱媒が収容された熱媒容器19をアキュームタンク5の上方に配置し、熱媒容器19とアキュームタンク5とを可撓性のホース19aにより連通した後、アキュームタンク5内へ熱媒を注入する。
【0028】
この時点で、試運転釦11bをオン操作すると、貯湯タンク3内の放熱熱交換器10において熱交換できることを条件として、循環ポンプ7の回転駆動が許可され、アキュームタンク5に供給された熱媒は、循環ポンプ7により圧送されて往回路部4a、集熱回路部4b、第1復回路部4c、放熱熱交換器10、第2復回路部4d内の空気と順次置換され、これら回路部内へ充填される。
【0029】
アキュームタンク5内の熱媒の液位は、熱媒容器19から供給された熱媒と還流した熱媒により上昇し、上部開口部5aに達したとき、熱媒はアキュームタンク5から連通管14を介してリザーブタンク13内へ移動する。
熱媒容器19から熱媒の注入を継続することにより、リザーブタンク13内の熱媒の液位が第2液位センサ16の先端高さ位置に達したとき、制御ユニット11がリザーブタンク13内の熱媒充填完了をランプ等で報知する。その報知があったとき、熱媒容器19からの熱媒の注入を停止する。
【0030】
一方、試運転釦11bをオン操作したとき、貯湯タンク3内の放熱熱交換器10において実質的に熱交換できない場合には制御ユニット11(制御手段に相当する)は循環ポンプ7の駆動を禁止する。
即ち、集熱パネル2が高温の状態になっている場合には、熱媒が集熱パネル2に充填された際に熱媒が沸騰して、その沸騰した熱媒がアキュームタンク5の上部開口部5a又は熱媒容器19から外部へ噴出する虞があるため、その熱媒の噴出を防止するためである。
【0031】
前記放熱熱交換器10において実質的に熱交換できない場合とは、次の(1)、(2)のうちの少なくとも1つの条件が成立した場合である。
(1)貯湯タンク3内の保有水量が所定量以下であること。
この所定量は例えば水温センサ3bを取り付けた位置までの貯留水量であって、この水位は水温センサ3a〜3dの検出信号に基づいて判定することができる。即ち、貯湯タンク3内の保有水量が所定量以下である場合には、放熱熱交換器10において実質的に熱交換できないため、沸騰した熱媒が噴出する可能性があるからである。
【0032】
(2)貯湯タンク3内の湯温が所定温度以上であること。
この貯湯タンク3内の湯温としては例えば最下位置の水温センサ3aで検出される水温が採用される。但し、水温センサ3a〜3dで検出される水温の平均値を採用してもよい。前記所定温度は例えば40℃である。即ち、貯湯タンク3内の湯温が所定温度以上である場合には、熱媒が放熱熱交換器10を通過する短時間の間に放熱熱交換器10において実質的に熱交換できないため、沸騰した熱媒が噴出する可能性があるからである。
【0033】
上記の制御ユニット11は、試運転時で且つ集熱パネル2の面積が設定面積以上で且つ外気温が設定温度以上であることを条件として、前記の循環ポンプ7の駆動を禁止するポンプ駆動禁止制御を有効とするように制御を行う。
試運転時とは、試運転釦11bがオンされて試運転モードになっている場合である。
通常運転時には、アキュームタンク5の調圧弁12が装着状態になっているため、沸騰した熱媒が噴出する虞がないからである。
【0034】
集熱パネル2の面積が設定面積(例えば4m)以上である場合にのみ、前記ディップスイッチ11cが予めオン状態に設定されるため、制御ユニット11はディップスイッチ11cの信号から集熱パネル面積が設定面積以上であることを判断することができる。
即ち、集熱パネル2の面積が設定面積未満である場合及び外気温が低い場合には、集熱パネル2の集熱能力があまり高くないため、熱媒の沸騰の虞が低いからである。前記外気温は外気温センサ9aで検出されて制御ユニット11に入力されており、前記設定温度は例えば28℃である。
【0035】
次に、以上説明した太陽熱温水装置1の本願特有の作用効果について説明する。
太陽熱温水装置1は、集熱パネル2と、貯湯タンク3と、集熱パネル2と貯湯タンク3とに亙って熱媒を循環させる集熱循環回路4とを備え、その集熱循環回路4に、熱媒を循環させるための循環ポンプ7と、熱媒の圧力を調整するためのアキュームタンク5と、熱媒と貯湯タンク3の湯水との間で熱交換するための放熱熱交換器10とを設け、制御ユニット11により、放熱熱交換器10において実質的に熱交換ができない場合に循環ポンプ7の駆動を禁止するように構成したので、次の作用効果が得られる。
【0036】
集熱パネル2が高温の過熱状態のときに熱媒を集熱循環回路4に充填すべくアキュームタンク5に熱媒を注入する際に、放熱熱交換器10において実質的に熱交換ができず、熱媒の温度を低下させられない場合には、制御ユニット11が循環ポンプ7の駆動を禁止するため、熱媒が集熱パネル2に充填されないので、沸騰した熱媒がアキュームタンク5から噴出するのを確実に防止することができ、熱媒充填作業の安全性を高めることができる。
【0037】
しかも、貯湯タンク3内の保有水量が所定量以下、貯湯タンク3内の湯温が所定温度以上、のうちの少なくとも1つの条件が成立した場合に、制御ユニット11により循環ポンプ7の駆動を禁止して、集熱パネル2への熱媒の循環を禁止し、沸騰した熱媒がアキュームタンク5から噴出するのを確実に防止することができ、熱媒充填作業の安全性を高めることができる。
【0038】
前記制御ユニット11による循環ポンプ7の駆動禁止は、試運転時で且つ集熱パネル2のパネル面積が設定面積以上で且つ外気温度が設定温度以上である場合に有効とされるため、通常運転時における循環ポンプ7の駆動禁止を避けることができるうえ、集熱パネル2のパネル面積が設定面積未満の場合や、外気温度が設定温度未満の場合であって、沸騰した熱媒がアキュームタンク5から噴出する虞がない場合における循環ポンプ7の駆動禁止を避けることができる。
【0039】
しかも、集熱パネル2のパネル面積が設定面積以上である場合には、それを制御ユニット11のディップスイッチ11cに設定するように構成したため、種々のパネル面積の集熱パネル2を装備した太陽熱温水装置1に、共通の制御ユニット11を採用することができるから、制御ユニット11の汎用性を維持することができる。
【実施例2】
【0040】
次に、前記太陽熱温水装置1を部分的に変更した太陽熱温水装置1Aについて説明する。但し、前記太陽熱温水装置1の構成要素と同じものに同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0041】
図3に示すように、この太陽熱温水装置1Aにおいては、前記放熱熱交換器10の代わりに、貯湯タンク3の外部に配設した放熱熱交換器10Aが設けられ、貯湯タンク3の底部に一端が接続された往側回路17aの他端が放熱熱交換器10Aのケース底部に接続され、放熱熱交換器10Aのケース頂部に一端が接続された復側回路17bの他端が貯湯タンク3の頂部に接続されている。
【0042】
前記往側回路17aにはタンク側循環ポンプ18が付設され、貯湯タンク3の底部の湯水をタンク側循環ポンプ18により放熱熱交換器10Aへ圧送し、放熱熱交換器10Aで加熱してから貯湯タンク3の頂部に戻すように構成されている。
第1復回路部4cは放熱熱交換器10A内の放熱回路部4eの下端部に接続され、この放熱回路部4eの上端部は第2復回路部4fを介してアキュームタンク5に接続されている。尚、タンク側循環ポンプ18は制御ユニット11Aによって駆動制御される。
【0043】
この太陽熱温水装置1Aにおいて、試運転時に、集熱循環回路4に熱媒を充填する際に、試運転釦11bをオン操作したとき、貯湯タンク3側の放熱熱交換器10Aにおいて実質的に熱交換できない場合には、前記実施例1の太陽熱温水装置1と同様に、制御ユニット11A(制御手段に相当する)は循環ポンプ7の駆動を禁止する。
【0044】
前記放熱熱交換器10Aにおいて実質的に熱交換できない場合とは、次の(1)〜(3)のうちの少なくとも1つの条件が成立した場合である。
(1)貯湯タンク3内の保有水量が所定量以下であること。
(2)貯湯タンク3内の湯温が所定温度以上であること。
(3)何らかの故障等により前記タンク側循環ポンプ18が駆動不能であること。
尚、前記のポンプ駆動禁止制御を有効化する条件については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
この太陽熱温水装置1Aも前記太陽熱温水装置1と同様の作用効果を奏する。
【0045】
前記実施例1,2を部分的に変更する例について説明する。
・ 前記段落[0031]に記載した貯湯タンクの保有水量に関して、水温センサ3bは一例であり、水温センサ3a,3c,3dの何れかのレベルまでの貯留水量を前記所定量としてもよい。尚、貯湯タンク3への水張り完了をトリガーとして貯湯タンク3に前記所定量の湯水が貯留されているものとしてもよい。貯湯タンク3に水位センサを設け、その水位センサで検出する水位でもって前記所定量を検出するように構成してもよい。
【0046】
・ 段落[0032]に記載した所定温度40℃は一例であり、40〜60℃の範囲から適当な温度を採用してもよい。段落[0034]に記載した「例えば4m 」も一例でありこの値に限るものではなく、同様に、「例えば28℃」も一例でありこの値に限るものではない。
【0047】
(3)集熱パネル2は、太陽電池パネルと一体化した構成の集熱パネルとして構成される場合もある。
(4)太陽熱温水装置1,1Aに、集熱パネル2の集熱能力が低く、貯湯タンク3内の湯水の温度が低い場合に、給湯する湯水を加熱するガス燃焼式の補助熱源機を装備する場合もある。
【符号の説明】
【0048】
1 太陽熱温水装置
2 集熱パネル
3 貯湯タンク
4 集熱循環回路
5 アキュームタンク
7 循環ポンプ
10,10A 放熱熱交換器
11,11A 制御ユニット(制御手段)
18 タンク側循環ポンプ
図1
図2
図3