特許第6136560号(P6136560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6136560サーマルヘッド用クリーニングシート及びサーマルヘッドのクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136560
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】サーマルヘッド用クリーニングシート及びサーマルヘッドのクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20170522BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20170522BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20170522BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B41M5/382 310
   B41M5/382 400
   B41M5/40 340
   B41M5/40 440
   B41J2/32 Z
   B32B9/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-102949(P2013-102949)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-223730(P2014-223730A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 淳之
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−306016(JP,A)
【文献】 特開平07−009774(JP,A)
【文献】 特開2003−025741(JP,A)
【文献】 特開平05−116428(JP,A)
【文献】 特開平10−100454(JP,A)
【文献】 特開平05−139003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
B41J 2/32 − 2/375
B41J 29/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドにより画像信号に応じた加熱を行ない、熱転写受像材料に画像を記録するための熱転写プリンターの、サーマルヘッドに付着する付着物を除去するためのサーマルヘッド用クリーニングシートであって、
シート基材に研磨層を設け、研磨層はポリエステル樹脂界面活性剤とフィラーとを含有し、フィラーにモース硬度7以上の高硬度フィラーとモース硬度が1以上3以下の低硬度フィラーの混合を用い、総フィラーに対する低硬度フィラー配合比が20〜80質量%とし、前記高硬度フィラーが平均粒径2μmのシリカで、前記低硬度フィラーが平均粒径2μmの炭酸カルシウムであることを特徴とするサーマルヘッド用クリーニングシート。
【請求項2】
請求項1記載のサーマルヘッド用クリーニングシートを用いたサーマルヘッドのクリーニングを、画像印字とは別に行うことを特徴とするサーマルヘッドのクリーニング方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写記録に用いられる熱転写プリンターのサーマルヘッド用クリーニングテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等で得られたデジタル情報からプリントを得る方法として、熱転写システムが多く用いられている。プリントを得るためには、3原色に分解された色毎の画素情報に合わせ、マゼンタ着色材、シアン着色材、イエロー着色材、黒色着色材がパートコートされた熱転写媒体から、サーマルヘッドを用いて、色成分毎に被転写受像媒体に熱転写する方式がある。
【0003】
この時、サーマルプリンターはサーマルヘッドが常にフィルムバックコート面と接触しており、サーマルヘッドとフィルムバックコートが擦れ、バックコート成分がサーマルヘッドに付着・固着してしまうことで、印画品質の低下の原因となっている。
【0004】
サーマルヘッドへの付着物は、熱により固着しており、研磨除去する必要が有り、研磨除去を目的とし、高硬度のフィラーを添加して、研磨性能を高めたサーマルヘッド用クリーニングテープが提案されているが、サーマルヘッド自体を磨耗させてしまう(特許文献1)。
【0005】
固着した異物を除去するためのフィラーとしてシリカを用いることが多いが、シリカはモース硬度が7と硬いためにサーマルヘッドをも磨耗させてしまうため、印画品質の低下原因となってしまう。
【0006】
サーマルヘッドの磨耗を減少させるために、低硬度のフィラーを添加すると、付着物を除去することができず、付着物除去とサーマルヘッドの磨耗低減とを両立させることは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5‐116428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱により固着したサーマルヘッドへの付着物を着実に除去することができ、さらに問題となるクリーニングシートによるサーマルヘッドの磨耗を低減させ、印画品質の低下を起きないサーマルヘッド用クリーニングシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、サーマルヘッドにより画像信号に応じた加熱を行ない、熱転写受像材料に画像を記録するための熱転写プリンターの、サーマルヘッドに付着する付着物を除去するためのサーマルヘッド用クリーニングシートであって、
シート基材に研磨層を設け、研磨層はポリエステル樹脂界面活性剤とフィラーとを含有し、フィラーにモース硬度7以上の高硬度フィラーとモース硬度が1以上3以下の低硬
度フィラーの混合を用い、総フィラーに対する低硬度フィラー配合比が20〜80質量%とし、前記高硬度フィラーが平均粒径2μmのシリカで、前記低硬度フィラーが平均粒径2μmの炭酸カルシウムであることを特徴とするサーマルヘッド用クリーニングシートである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載のサーマルヘッド用クリーニングシートを用いたサーマルヘッドのクリーニングを、画像印字とは別に行うことを特徴とするサーマルヘッドのクリーニング方法である。
【発明の効果】
【0011】
本願発明のサーマルヘッド用クリーニングシートを用いることにより、クリーニング能力の低下が無く、サーマルヘッドに付着する異物を着実に除去することができ、従来問題となっていたサーマルヘッドの磨耗を抑え、印画品質の低下を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願発明のサーマルヘッド用クリーニングシートの断面を示した概念図である。
図2】サーマルヘッドの加熱により、熱転写媒体から熱転写受像材料に画像を記録する機構を示した概念図である。
図3】熱転写媒体を示した概念図である。
図4】サーマルヘッドの加熱により、熱転写媒体から熱転写受像材料に画像を記録する機構及びサーマルヘッドのクリーニング機構を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本願発明のサーマルヘッド用クリーニングシートを示した断面図であり、シート基材2に研磨層1が設けられており、この研磨層1に含有される研磨材として、モース硬度が7以上の高硬度フィラーとモース硬度が1以上3以下の低硬度フィラーを混合して用いている。
【0014】
図2は、熱転写媒体から熱転写受像媒体に画像を記録させた状態を示しており、サーマルヘッド13が熱転写媒体の基材裏面のバックコート層5と常に接触し、サーマルヘッド13とバックコート層が擦れ、バックコート層5の成分がサーマルヘッド13に付着・固着することで印画品質の低下の原因となる。
図3は、熱転写媒体11を示しており、一般的には、カラー画像を記録する場合には、マゼンタ着色材6、シアン着色材7、イエロー着色材8、黒着色材9がパートコートされており、マゼンタ画像、シアン画像、イエロー画像、黒画像の順に印字され、文字情報の場合には、黒着色材9のみがコートされた熱転写媒体が用いられる。
【0015】
図4は、サーマルヘッド13の加熱により、熱転写媒体11から熱転写受像媒体12に画像を記録する機構及びサーマルヘッド13のクリーニング機構を示しており、画像印字の場合は、熱転写媒体11が用いられ、サーマルヘッド13をクリーニングする場合には、サーマルヘッド用クリーニングシート10が用いられ、一般的にはカセットの交換により、印字とクリーニングを切り替えることができる。
【0016】
研磨層1は、樹脂溶液に、フィラーと界面活性剤や必要に応じて、硬化剤、静電気防止剤等を添加し、混練して調製した塗液を、基材に塗布、乾燥固化させて形成される。
【0017】
フィラーとしては、シリカを用いることが多いが、シリカはモース硬度が7と硬いため、クリーニングの操作時に、サーマルヘッド13を研磨してしまい、サーマルへッド先端の形状を変化させてしまい、印字品質の低下をもたらしてしまう。
【0018】
種々検討を行った結果、モース硬度が1以上3以下のフィラーを添加することで、サーマルヘッド13に付着・固着してしまった異物の除去機能を落とさずに、しかも、サーマルヘッド13の磨耗を低減させることができることを見出した。
【0019】
以下、実施例、比較例を基に、本願発明の効果について説明する。
【実施例1】
【0020】
フィラーとしてモー硬度が7の高硬化フィラーであるシリカと、モース硬度が2の低硬度フィラーである炭酸カルシウムを用いた研磨層塗液を以下の比率にて調製した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン30) 60質量部リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA208 2質量部シリカ(平均粒系2μm) 8質量部炭酸カルシウム(平均粒系2μm) 2質量部メチルエチルケトン 14質量部トルエン 14質量部を、混連塗液化し、12μmの厚みのPETフィルム基材に塗布し、加熱乾燥により1μmの厚みの研磨層1を持つ第1のサーマルヘッド用クリーニングシート10を得た。
【実施例2】
【0021】
同様に、フィラーとしてモー硬度が7の高硬化フィラーであるシリカと、モース硬度が2の低硬度フィラーである炭酸カルシウムを用いた研磨層塗液を以下の比率にて調製した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン30) 60質量部
リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA208 2質量部シリカ(平均粒系2μm) 5質量部炭酸カルシウム(平均粒系2μm) 5質量部メチルエチルケトン 14質量部トルエン 14質量部を、混連塗液化し、12μmの厚みのPETフィルム基材に塗布し、加熱乾燥により1μmの厚みの研磨層1を持つ第2のサーマルヘッド用クリーニングシート10を得た。
【実施例3】
【0022】
同様に、フィラーとしてモー硬度が7の高硬化フィラーであるシリカと、モース硬度が2の低硬度フィラーである炭酸カルシウムを用いた研磨層塗液を以下の比率にて調製した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン30) 60質量部リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA208 2質量部シリカ(平均粒系2μm) 2質量部炭酸カルシウム(平均粒系2μm) 8質量部メチルエチルケトン 14質量部トルエン 14質量部を、混連塗液化し、12μmの厚みのPETフィルム基材に塗布し、加熱乾燥により1μmの厚みの研磨層1を持つ第3のサーマルヘッド用クリーニングシート10を得た。
【0023】
<比較例1>
比較例として、従来より用いられている高硬度フィラーであるシリカのみを用いた研磨層塗布液を以下の比率にて調整した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン30) 60質量部リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA208 2質量部シリカ(平均粒系2μm) 10質量部メチルエチルケトン 14質量部トルエン 14質量部を、混連塗液化し、12μmの厚みのPETフィルム基材に塗布し、加熱乾燥により1μmの厚みの研磨層1を持つ第4のサーマルヘッド用クリーニングシート10を得た。
【0024】
<比較例2>
比較例として、高硬度フィラーを用いずに、低硬度フィラーである炭酸カルシウムのみを用いた研磨層塗液を以下の比率で調製した。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン30) 60質量部リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA208 2質量部炭酸カルシウム(平均粒系2μm) 10質量部メチルエチルケトン 14質量部トルエン 14質量部を、混連塗液化し、12μmの厚みのPETフィルム基材に塗布し、加熱乾燥により1μmの厚みの研磨層1を持つ第5のサーマルヘッド用クリーニングシート10を得た。
【0025】
<評価>
上記組成にて得られた5種類のサーマルヘッド用クリーニングシートを用い、サーマルヘッドへの付着物の除去具合と、サーマルヘッド磨耗量の測定を行った。
【0026】
確認方法としては連続多数枚印画を行い、サーマルヘッドへ付着物を付着させ、カスの除去度合いは、目視確認にて行い、磨耗量はレーザー顕微鏡にて、前後の形状のを確認し変化量を測定をおこない、その結果を表1に示した。
【0027】
【表1】
高硬度フィラーであるシリカと低硬度フィラーである炭酸カルシウムを混合した実施例ではサーマルヘッドの磨耗は見られず、付着物除去との両立が可能であった。一方、高硬度フィラーであるシリカ単体を用いた比較例1は磨耗量が多く、低硬度フィラーである炭酸カルシウム単体では付着物の除去が不足していた。
【符号の説明】
【0028】
1・・・研磨層
2・・・シート基材
3・・・着色材
4・・・受像層
5・・・バックコート層
6・・・赤着色材
7・・・緑着色材
8・・・青着色材
9・・・黒着色材
10・・・サーマルヘッド用クリーニングシート
11・・・熱転写媒体
12・・・熱転写受像媒体
13・・・サーマルヘッド
図1
図2
図3
図4