特許第6136570号(P6136570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136570
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】水質検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/27 20060101AFI20170522BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20170522BHJP
   G01N 27/07 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G01N27/27 A
   G01N27/416 353Z
   G01N27/07
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-110257(P2013-110257)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-228488(P2014-228488A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】金野 裕子
(72)【発明者】
【氏名】菅原 修司
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−060377(JP,A)
【文献】 実開昭51−037992(JP,U)
【文献】 特開平08−145982(JP,A)
【文献】 特開平06−088803(JP,A)
【文献】 特開平11−248696(JP,A)
【文献】 特開昭57−125843(JP,A)
【文献】 特開2001−356110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液の水質検査を行う水質検査装置であって、
周囲を外壁で囲まれ、前記被検液を前記外壁の内側に掬い取ることが可能な測定容器と、
前記掬い取った被検液に浸漬させて前記被検液の水質検査を行う複数のセンサーと、
前記測定容器の内部を、それぞれ1つ以上の前記センサーが挿入可能な複数の領域に区画し、前記複数のセンサーが前記被検液に浸漬された状態において各領域に収容され被検液同士を隔離する隔壁を備え、
前記複数の領域は、少なくとも第1の領域と、前記第1の領域に前記隔壁を介して隣接する第2の領域を含み、
前記測定容器の外壁および前記隔壁の高さは、前記第1の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さが、前記第2の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さよりも高くなるように設計されており、
前記複数のセンサーには、内部液と前記被検液とを電気的に接続させる液絡部を有する比較電極を備えているセンサーと、前記液絡部から流出する成分によって前記被検液の組成が変化することにより測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーが含まれ、
前記液絡部から流出する成分によって前記被検液の組成が変化することにより測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーは前記第1の領域に挿入され、前記液絡部を有する比較電極を備えているセンサーは前記第2の領域に挿入されることを特徴とする水質検査装置。
【請求項2】
前記液絡部から流出する成分によって前記被検液の組成が変化することにより測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーが導電率を測定するための導電率セルを含み、前記液絡部を有する比較電極を備えているセンサーがガラス電極を備えるpHセンサーを含む請求項1に記載の水質検査装置。
【請求項3】
被検液の水質検査を行う水質検査装置であって、
周囲を外壁で囲まれ、前記被検液を前記外壁の内側に掬い取ることが可能な測定容器と、
前記掬い取った被検液に浸漬させて前記被検液の水質検査を行う複数のセンサーと、
前記測定容器の内部を、それぞれ1つ以上の前記センサーが挿入可能な複数の領域に区画し、前記複数のセンサーが前記被検液に浸漬された状態において各領域に収容された被検液同士を隔離する隔壁を備え、
前記複数の領域は、少なくとも第1の領域と、前記第1の領域に前記隔壁を介して隣接する第2の領域を含み、
前記測定容器の外壁および前記隔壁の高さは、前記第1の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さが、前記第2の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さよりも高くなるように設計されており、
前記複数のセンサーには、同一の領域に挿入して同時に測定した場合に、被検液を介した液回路が形成されることにより互いに干渉しあう第1のセンサーと第2のセンサーが含まれ、
前記第1のセンサー及び第2のセンサーの一方は前記第1の領域に挿入され、他方は前記第2の領域に挿入されることを特徴とする水質検査装置。
【請求項4】
前記測定容器の外壁に取っ手が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の水質検査装置。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記測定容器の外壁、及び前記第2の領域との間に設けられた前記隔壁によって囲まれ、
前記第2の領域は、前記測定容器の外壁、及び前記第1の領域との間に設けられた前記隔壁によって囲まれ、
前記第1の領域を囲む前記測定容器の外壁及び前記隔壁の最低高さは、前記第2の領域を囲む前記測定容器の外壁及び前記隔壁の最低高さよりも高い請求項1〜4の何れか一項に記載の水質検査装置。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられた前記隔壁は、上端部に第1の溝が形成され、前記第1の溝が形成された部分に、前記第1の領域を囲む前記測定容器の外壁及び前記隔壁の最低高さ部分が存在する請求項5に記載の水質検査装置。
【請求項7】
前記第2の領域を囲む前記測定容器の外壁は、上端部に第2の溝が形成され、前記第2の溝が形成された部分に、前記第2の領域を囲む前記測定容器の外壁及び前記隔壁の最低高さ部分が存在する請求項5または6に記載の水質検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質検査装置に関するものである。特に、ボイラや冷却塔などの循環水系を有する水処理設備や、河川、湖沼、ダムなどの環境水、工場の処理水、排水などの水質を測定するために、検査員が現場に携帯して使用するのに好適な水質検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水質検査においては、pH、イオン濃度、導電率(電気伝導率)、濁度、溶存酸素濃度、残留塩素濃度、水温などの複数の項目が測定される。これらの測定方法として、サンプリングした被検液を卓上用やハンディタイプのpH計、イオン濃度計、導電率計などを用いて、それぞれの項目について測定する方法や、被検液の存在する現場で複数種類のセンサーを備えた検出器を被検液に浸漬し、複数の項目を同時に測定する方法などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の測定チャンネルを備え、pHやその他のイオン濃度を同時に測定することができる卓上用のイオン濃度計が開示されている。また、特許文献2には、水質測定用の複数のセンサーを備えた浸漬型のセンサー本体と、当該センサー本体に防水タイプの電気ケーブルを介して電気的に接続された計器本体と、を備えた水質分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−88803号公報
【特許文献2】特開2010−60376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水質測定用のセンサーには、被検液に浸漬した電極間の電位差を測定するpHセンサー、イオンセンサー、ORP(酸化還元電位)センサーなどや、被検液に浸漬した電極間に流れる電流を測定する酸化還元電流測定センサー(溶存酸素濃度や残留塩素濃度などの測定に用いられる。)、導電率セルなど、測定項目に応じた各種の電気化学センサーが存在する。同一容器内に複数の電気化学センサーが混在すると、それらが液回路を形成して互いに干渉しあったり、基準電位が相違したりすることにより、測定に影響が生じることがある。そのため、それらの測定を同時に行うと、測定結果に誤差が生じやすい。
【0006】
また、pHセンサー、イオンセンサー、ORPセンサーなどの電位差を測定するセンサーの比較電極には、液絡部を介して内部液と被検液とを電気的に接続させるものがある。このようなセンサーが浸漬された被検液を測定する場合、液絡部から流出する内部液によって被検液の組成が時間とともに変化することに起因して、測定結果に誤差を生ずる項目がある。この問題は、導電率の測定において特に顕著であるが、酸化還元電流の測定やイオン濃度の測定においても、測定対象成分と内部液の成分との関係によっては問題となる場合がある。
【0007】
特許文献1では、複数の測定チャンネルに接続された各々の比較電極の発生電位の相違や出力インピーダンスの相違等が他のチャンネルに影響することを防止するため、スイッチ手段により各チャンネルの比較電極接続用の入力端子を相互に分離または接続するようにし、複数のチャンネルについて同時測定を可能としている。
しかしながら、特許文献1の方法では、内部液の流出による測定結果への影響を防止することはできないという問題がある。
【0008】
特許文献2では、内部液の流出による測定結果への影響を防止するため、溶存酸素計として、作用電極、対電極および基準電極の三電極からなる電極機構と、作用電極の基準電極に対する電位が一定に保たれるように対電極の電位を制御するポテンシオスタット回路とを具備し、作用電極と対電極との間に流れる電流量を測定することによって、対象液の溶存酸素量を測定する溶存酸素計を用い、ポテンシオスタット回路が、基準電極の電位を当該ポテンシオスタット回路の接地電位に保つとともに、作用電極を接地電位よりも低い電位に保持するようにしている。
【0009】
しかしながら、特許文献2の方法では、特殊な制御が必要となり、回路設計が複雑化する。特許文献2の方法を用いずに、内部液を流出する比較電極をそれ以外のセンサーから遠ざけるようにすることも考えられるが、装置が大型化するため、被検液の存在する現場を巡回する検査員が携帯して使用する装置に適用するには不向きである。また、測定時間を短縮して、内部液の影響が出る前に測定を終わらせるなどの方法も考えられるが、この場合は、センサーが十分に応答するまで待てないために測定精度が低下するおそれがある。
【0010】
また、同一容器内に複数のセンサーを混在させた場合に、それらが液回路を形成して互いに干渉しあうという問題については、それぞれのセンサーの測定を時間をあけて順番に行うという方法も考えられる。しかしながら、その場合も、センサーを1つずつ順番に動作させるなどの処理が必要となり、装置が複雑化し、測定時間も長くなる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で精度のよい水質検査を短時間で行うことが可能なコンパクトで扱いやすい水質検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1] 被検液の水質検査を行う水質検査装置であって、前記被検液が収容される測定容器と、前記測定容器に収容される前記被検液に浸漬させて前記被検液の水質検査を行う複数のセンサーと、前記測定容器の内部を、それぞれ1つ以上の前記センサーが挿入可能な複数の領域に区画し、各領域に収容される被検液同士を隔離する隔壁と、を備えている水質検査装置。
【0013】
[2] 前記複数のセンサーには、同一の領域に挿入して測定した場合に他のセンサーの測定結果に影響を与えるセンサーが含まれ、前記隔壁は、前記他のセンサーの測定結果に影響を与えるセンサーが挿入される領域と前記他のセンサーが挿入される領域とを区画する[1]に記載の水質検査装置。
【0014】
[3] 前記複数のセンサーには、内部液と前記被検液とを電気的に接続させる液絡部を有する比較電極を備えているセンサーと、前記液絡部から流出する成分によって前記被検液の組成が変化することにより測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーが含まれる[1]または[2]に記載の水質検査装置。
【0015】
[4] 前記比較電極を備えているセンサーとして、前記被検液のpHを測定するpHセンサーを備え、前記測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーとして、前記被検液の導電率を測定する導電率セルを備えている[3]に記載の水質検査装置。
【0016】
[5] 前記測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーが挿入される第1の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さが、前記比較電極を備えているセンサーが挿入される第2の領域に収容される前記被検液の液面の最大高さよりも高くなるように、前記測定容器の外壁および前記隔壁の高さが設計されている[3]または[4]に記載の水質検査装置。
【0017】
なお、「液面の最大高さ」とは、測定容器を水平な設置面に設置したときに、被検液の液面がとり得る設置面からの最大の高さを意味する。具体的には、測定容器で被検液をいっぱいに掬い取って水平な設置面に設置したときの液面の設置面からの高さを意味する。
【0018】
[6] 前記隔壁の上端部には、前記第1の領域に収容される前記被検液をオーバーフローさせるための第1の溝が設けられている[5]に記載の水質検査装置。
【0019】
[7] 前記測定容器の外壁の上端部には、前記第2の領域に収容される前記被検液をオーバーフローさせるための第2の溝が設けられている[5]または[6]に記載の水質検査装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構成で精度のよい水質検査を短時間で行うことが可能なコンパクトで扱いやすい水質検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る水質検査装置の外観斜視図である。
図2図1においてセンサーユニットを上部に開いた状態を示す図である。
図3】センサーユニットと測定容器をセンサーユニット側から透視した図である。
図4】センサーユニットと測定容器の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<水質検査装置の構成>
以下、図1ないし図4を用いて本発明の一実施形態に係る水質検査装置1を説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、水質検査装置1は、装置本体2と、センサーユニット3と、測定容器4と、を備えている。測定容器4は、被検液を収容するための容器である。センサーユニット3は、支持面3a上に複数のセンサーを支持し、複数のセンサーを測定容器4に収容される被検液に浸漬させて被検液の水質検査を行う。センサーユニット3は図示しないヒンジ部を介して装置本体2に接続されている。
【0024】
図2および図3に示すように、支持面3a上には、ガラス電極10と、第1のイオン電極11と、第2のイオン電極12と、比較電極13と、複合センサー15と、温度センサー14と、が支持されている。
【0025】
ガラス電極10と比較電極13によって、pHセンサー16が構成されている。第1のイオン電極11と比較電極13によって、第1のイオンセンサー17が構成されている。第2のイオン電極12と比較電極13によって、第2のイオンセンサー18が構成されている。
【0026】
pHセンサー16は、ガラス電極10と比較電極13との間の電位差を測定することにより、被検液のpHを測定する。第1のイオンセンサー17および第2のイオンセンサー18は、それぞれ第1のイオン電極11および第2のイオン電極12と比較電極13との間の電位差を測定することにより、被検液中に含まれる特定イオンのイオン濃度を測定する。
【0027】
比較電極13は、内部液を被検液に接触させる液絡部13aを有する。内部液は、例えば、高濃度(3.3mol/L)の塩化カリウム水溶液からなる。比較電極13は、液絡部13aを介して内部液と被検液とが電気的に接続するようになっており、内部液が被検液中にわずかずつ流出している。
【0028】
複合センサー15には、図示しない導電率セルと、残留塩素濃度センサーと、が配置されている。導電率セルは、交流電極式の導電率センサーである。残留塩素濃度センサーは、例えば、作用極に金を用い、対極に銀を用いたポーラログラフ式の残留塩素濃度センサーである。
【0029】
導電率セルは、複数の金属電極間に交流電圧を印加し、電極間に流れる電流を測定することにより、被検液の導電率を測定する。残留塩素濃度センサーは、作用極と対極との間に流れる電流を測定することにより、被検液中の残留塩素濃度を測定する。
【0030】
導電率セルおよび残留塩素濃度センサーによって測定する電流値は、溶液中に存在するイオンの種類やその濃度によって変化する。したがって、被検液の導電率および残留塩素濃度の測定は、比較電極13の液絡部13aから流出する内部液によって被検液の組成が変化することにより、その結果に誤差を生ずる。
【0031】
図2および図3に示すように、測定容器4には、隔壁21が設けられている。隔壁21は、測定容器4の内部を、それぞれ1つ以上のセンサーが挿入可能な複数の領域に区画し、各領域に収容される被検液同士を隔離する。
【0032】
隔壁21は、例えば、比較電極13の液絡部13aから流出する内部液によって被検液の組成が変化することにより、測定結果に誤差を生ずる項目のセンサーである導電率セルおよび残留塩素濃度センサーが挿入される第1の領域25と、比較電極13との間の電位差を測定する(比較電極13を備えているセンサーである)pHセンサー16、第1のイオンセンサー17および第2のイオンセンサー18が挿入される第2の領域26とを区画する。
【0033】
温度センサー14は、例えば、第1の領域25に挿入される。pHセンサー16や導電率セルは温度特性を有するが、温度変化が測定結果に与える影響は導電率セルのほうが大きい。よって、温度センサー14を第1の領域25に挿入し、導電率セルの近傍の温度を測定することにより、正確な導電率の測定が可能となる。
【0034】
図2および図4に示すように、隔壁21の上端部には、第1の領域25に流入した被検液をオーバーフローさせるための第1の溝22が設けられている。測定容器4の外壁の上端部には、第2の領域26に流入した被検液をオーバーフローさせるための第2の溝23が設けられている。溝22,23の深さは、各センサーの測定において十分な液量が確保されるように、各センサーの被検液への侵入深さなどに応じて適宜設計される。
【0035】
測定容器4においては、第1の領域25に収容される被検液の液面の最大高さが第2の領域26に収容される被検液の液面の最大高さよりも高くなるように、測定容器4の外壁および隔壁21の高さが設計されている。ここで、「液面の最大高さ」とは、測定容器を水平な設置面に設置したときに、被検液の液面がとり得る設置面からの最大の高さを意味する。具体的には、測定容器4で被検液をいっぱいに掬い取って水平な設置面に設置したときの液面の設置面からの高さを意味する。
【0036】
本実施形態の場合、第1の溝22の深さd1は第2の溝23の深さd2よりも浅くなるように設計されている。そのため、第1の領域25に収容される被検液の液面の高さは、第2の領域26に収容される被検液の液面の高さよりも高くなる。よって、センサー挿入時に第2の領域26から溢れた被検液が第1の領域25に流入することが抑制される。第2の領域26には、比較電極13から流出した内部液を含む被検液が収容されるが、この被検液が第1の領域25に流入しにくくなるため、第1の領域25における導電率の測定が精度よく行えるようになる。
【0037】
<水質検査方法>
上述した水質検査装置1は、例えば、次のようにして使用される。
【0038】
まず、測定容器4の取っ手20を持って被検液を掬い取り、測定容器4の各領域25,26に被検液を充填する。
【0039】
次に、測定容器4を装置本体2に設置する。そして、ヒンジ部を介してセンサーユニット3を回転させて測定容器4の上部に蓋をするととともに、センサーユニット3の各センサーをそれぞれ対応する測定容器4内の領域25,26の被検液に浸漬させる。
【0040】
次に、センサー16,17,18,15,14によって被検液のpH,イオン濃度、導電率、残留塩素濃度、温度をそれぞれ測定する。各項目の測定は、同時に行ってもよく、それぞれの項目を時間をあけて1つずつ順番に行ってもよい。また、複数項目を同時に測定した後、それ以外の項目を時間をあけて1つずつ順番に行ってもよい。
【0041】
本実施形態の場合、例えば、第2の領域26では、pHとイオン濃度の測定を同時に行うが、第1の領域25では、導電率の測定を先に行い、その後残留塩素濃度の測定を行う。こうすることで、残留塩素濃度の測定において生じる酸化還元反応が、導電率の測定に影響を与えることを抑制することができる。
【0042】
各センサー16,17,18,15,14の測定結果は、装置本体2に内蔵された図示略の記憶装置に記憶される。測定結果は、装置本体2に接続された図示略の表示機器に表示させて確認することも可能である。
【0043】
以上説明した本実施形態の水質検査装置1によれば、以下のような効果が得られる。
【0044】
(1)測定容器4の内部が隔壁21によって複数の領域25,26に区画されている。そのため、各領域25,26に挿入されるセンサー同士が被検液を介して液回路を形成し、互いに干渉しあうことを抑制することができる。
【0045】
(2)液絡部13aを有する比較電極13が、導電率セルや残留塩素濃度センサーとは異なる領域に区画されている。そのため、内部液による測定誤差が大きい導電率の測定や残留塩素濃度の測定を精度よく行うことができる。
【0046】
(3)第1の領域25に収容される被検液の液面の最大高さが第2の領域26に収容される被検液の液面の最大高さよりも高くなるように、測定容器4の外壁および隔壁21の高さが設計されている。そのため、センサー挿入時に第2の領域26から溢れた被検液が第1の領域25に流入することが抑制される。第2の領域26に収容される被検液には、比較電極13から内部液が流出するが、この被検液が第1の領域25に流入しにくくなるため、第1の領域25における導電率の測定が精度よく行えるようになる。
【0047】
(4)隔壁21の上端部や測定容器4の外壁の上端部には、被検液をオーバーフローさせるための溝22,23が設けられている。そのため、測定時の液面の高さを所望の高さに制御しやすい。
【0048】
(5)温度センサー14は、導電率セルや残留塩素濃度センサーと同じ第1の領域25に挿入される。そのため、温度特性の大きいこれらの測定項目において精度の高い測定が可能となる。
【0049】
<変形例1>
上記の実施形態では、隔壁21によって測定容器4の内部を2つの領域に区画した。しかしながら、隔壁21によって区画される領域の数はこれに限らない。例えば、上記の実施形態では、導電率セルと残留塩素濃度センサーを同一領域に区画したが、これらを別々の領域に区画してもよい。残留塩素濃度の測定においては、酸化還元反応によって被検液の導電率が若干変化する。そのため、上記の実施形態では、導電率の測定と残留塩素濃度の測定を順番に行ったが、導電率セルと残留塩素濃度センサーを別の領域に区画することで、導電率の測定と残留塩素濃度の測定を精度を落とさずに同時に行うことができる。
【0050】
<変形例2>
上記の実施形態では、pHセンサー16とイオンセンサー17,18は、1つの比較電極13との間でそれぞれ電位差を測定するものとして例示した。しかしながら、測定対象のイオンによっては、比較電極13との間で電位差を測定することができず、別の比較電極を用いらなければならない場合もある。この場合、基準電位やインピーダンスの相違により、同一領域に区画して測定すると誤差を生じることがある。このような場合には、異なる比較電極を備えたイオンセンサーは別々の領域に区画するとよい。
【0051】
<変形例3>
上記の実施形態では、センサーユニット3に搭載される複数のセンサーとして、pHセンサー16、イオンセンサー17,18、導電率セル、残留塩素濃度センサーを例示した。しかしながら、センサーユニット3に搭載可能なセンサーはこれに限定されない。例えば、センサーユニット3には、被検液の酸化還元電位(ORP)を測定するORPセンサーを加えてもよい。この場合、ORPセンサーは、pHセンサー16やイオンセンサー17,18と同じ第2の領域26に挿入されることが好ましい。また、センサーユニット3には、溶存酸素(DO)の量を測定するDOセンサーを加えてもよい。この場合、DOセンサーは、導電率セルや残留塩素濃度センサーと同じ第1の領域25に挿入されることが好ましい。第1の領域25には、導電率セルや酸化還元電流測定センサーなどが配置でき、酸化還元電流センサーとしては、ポーラログラフ式やガルバニ式などのセンサーが採用可能である。酸化還元電流測定センサーの具体例として、上述した残留塩素濃度センサーやDOセンサーなどが採用されうる。
【0052】
<変形例4>
上記の実施形態では、隔壁21や測定容器4の外壁に、余分な被検液をオーバーフローさせるための溝22,23を設け、第1の領域25に収容される被検液の液面が、第2の領域26に収容される被検液の液面よりも高い位置に配置されるようにした。これは、内部液を含む被検液が、導電率セルなどが設置される第1の領域25に流入することを防止するためであるが、このような考え方は、測定容器4の内部を3以上の領域に区画した場合でも同様に適用することができる。例えば、内部液の影響を受けやすいセンサーが配置される領域ほど被検液の液面の高さが高い位置に配置されるように、隔壁21や測定容器4の外壁に設けられる溝の深さを調整することができる。
【0053】
<変形例5>
上記の実施形態では、各領域25,26に収容される被検液の液面の高さを、測定容器4の外壁および隔壁21に設けられた溝22,23によって制御した。しかしながら、液面の高さを制御する方法はこれに限られない。例えば、測定容器4の外壁の高さが先端側(上記の実施形態では、例えば、取っ手20が設けられた側)から後端側にかけて低くなるように、外壁および隔壁21の上端部を設置面2aに対して傾斜するように形成することで、同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限られるものではなく、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の水質検査装置は、ボイラや冷却塔などの循環水系を有する水処理設備や、河川、湖沼、ダムなどの環境水、工場の処理水、排水などの水質を検査するための水質検査装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…水質検査装置、2…装置本体、3…センサーユニット、4…測定容器、13…比較電極、13a…液絡部、14…温度センサー、15…複合センサー、16…pHセンサー、17…第1のイオンセンサー、18…第2のイオンセンサー、21…隔壁、22…第1の溝、23…第2の溝、25…第1の領域、26…第2の領域
図1
図2
図3
図4