特許第6136597号(P6136597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6136597-封止形リレー 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136597
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】封止形リレー
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   H01H50/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-119363(P2013-119363)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-238916(P2014-238916A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大造
(72)【発明者】
【氏名】深井 利眞
(72)【発明者】
【氏名】家田 正彦
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−313197(JP,A)
【文献】 特開昭59−203326(JP,A)
【文献】 特開昭64−084533(JP,A)
【文献】 特開2009−004607(JP,A)
【文献】 特開2006−332388(JP,A)
【文献】 特開平10−340655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00−45/14
H01H 50/00−50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁筒と、該絶縁筒の一端側の開口部に取り付けられていて内面に第1コンタクトを設けた第1リレー接続部と、該第1リレー接続部に対して所定の間隔をもって配置された第2リレー接続部と、前記第1,第2リレー接続部の間に移動可能に配置されていて前記第1リレー接続部側に移動させると前記第1コンタクトに接触する第2コンタクトを備えた可動部材と、該可動部材を前記コンタクト接離方向に移動させる操作機構と、を備え、
前記操作機構で前記可動部材を駆動して前記第1コンタクトと前記第2コンタクトを接触させることにより前記可動部材を介して前記第1,第2リレー接続部を電気的に接続する封止形リレーであって、
前記可動部材と前記第2リレー接続部の間に、これら可動部材と第2リレー接続部を電気的に接続するベローズを設け
前記ベローズは、内周側ベローズと外周側ベローズの2重構造になっていて、内周側ベローズは、気密封止性を有し、外周側ベローズは、通電性を有していることを特徴とする封止形リレー。
【請求項2】
前記操作機構に、エアシリンダを使用したことを特徴とする請求項に記載の封止形リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ベローズを介した電流経路で外部回路との接続を行なう真空リレー、或いはSF6(六フッ化硫黄)ガスや乾燥空気等の絶縁ガスを封入した絶縁ガス封入リレー等の封止形リレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市場に出回っている封止形リレー、例えば真空リレーは、コイルによる磁界で接点をオン・オフするものが殆どであり、この構造だと大電流を流すことはできない。
【0003】
そこで、電力系統の遮断器などに使用されるVI(真空インタラプタ=真空バルブ)の構造を採用することが考えられる。
【0004】
VIは、数百Aの大電流(例えば、定格電流600A、定格遮断電流20kA)を通電させるために、可動軸と該可動軸に取り付けたマルチコンタクトを使用し、或いは、可撓性を有する平網線等を介して外部回路に接続する構成になっている。(例えば引用文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76218号公報
【特許文献2】特開2006−172847号公報
【特許文献3】特開2005−259543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
真空リレーにおいて、VIと同様の経路で外部に電流を引き出そうとする場合には、次に述べるような問題点があった。
(1)可動側部分の通電構造にマルチコンタクトや平網線等を使用した場合には、操作機構の大型化、複雑化、操作力の増大等のデメリットがある。
(2)マルチコンタクト等を用いて可動部材により通電を行なう場合、表皮効果により電流が制限されてしまうRF(高周波)通電において、大電流を通電させようとすると、可動部材の径を極端に大型化する必要がある。
(3)可動軸に銅合金等の導電性の高い材料を用いる必要がある。
【0007】
本発明は、真空リレーにおいて、ベローズを使用して通電させることにより、上記従来例の課題を解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、絶縁筒と、該絶縁筒の一端側の開口部に取り付けられていて内面に第1コンタクトを設けた第1リレー接続部と、該第1リレー接続部に対して所定の間隔をもって配置された第2リレー接続部と、前記第1,第2リレー接続部の間に移動可能に配置されていて前記第1リレー接続部側に移動させると前記第1コンタクトに接触する第2コンタクトを備えた可動部材と、を備え、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトを接触させることにより前記可動部材を介して前記第1,第2リレー接続部を電気的に接続する封止形リレーであって、
前記可動部材と前記第2リレー接続部の間に、これら可動部材と第2リレー接続部を電気的に接続するベローズを設けた。
【0009】
記ベローズ、内周側ベローズと外周側ベローズの2重構造とし、内周側ベローズに、絶縁筒内を気密に保つ気密封止性を持たせ、外周側ベローズに、前記可動部材と第2リレー接続部を電気的に接続する通電性を持たせた。
【0010】
請求項の発明は、請求項に記載の封止形リレーにおいて、前記操作機構に、エアシリンダを使用した。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1の真空リレーは、可動部材を第1リレー接続部に向けて移動させて、第1コンタクトと第2コンタクトを接触させると、第1,第2リレー接続部は、ベローズを介して電気的に接続される。
【0012】
ベローズは、マルチコンタクト等の接触面積に比べてベローズの表面積の方が大きいので、RF(高周波)通電での大電流の通電に有利なものとなる。
【0013】
マルチコンタクトや平網線を使用した場合に較べて、操作機構の小型化、簡素化、操作力の低減等を図ることができる。
【0014】
また、ベローズで通電を行なうので、可動軸に、銅合金等の導電性の高い材料を用いなくても済む。
また、内周側の気密封止用ベローズで絶縁筒内を真空に保ち、外周側の通電用ベローズで、可動部材と第2リレー接続部を電気的に接続する。内周側に気密封止用ベローズを設けたことで操作力を低減できる。
)請求項の封止形リレーは、操作機構に、エアシリンダを使用したので、コンタクトのエロージョン(消耗)が発生した場合でもエアシリンダのストローク範囲内であれば、常に圧接力を一定にできる。従来の遮断操作機構においては、コンタクトが消耗したときに圧接力が低下することの対策として、圧接力を付与するためのバネ機構等を用いていた。そのために遮断操作機構は大型になっていたが、本発明においては、エアシリンダの空気圧により圧接状態を維持できる。そのため小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の封止形リレーの断面図であり、中心線CLから左半部は、第1コンタクトと第2コンタクトの接触状態を示し、右半部は、第1コンタクトと第2コンタクトの非接触状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1において、1は封止形リレーの一例としての真空リレーを示し、該真空リレー1は、絶縁筒2と、該絶縁筒2の一端側の開口部に取り付けられていて内面に第1コンタクト(電極)3を設けた第1リレー接続部4と、該第1リレー接続部4に対して所定の間隔をもって前記絶縁筒2内に対向配置された第2リレー接続部5と、前記第1,第2リレー接続部4,5の間に移動可能に配置されていて前記第1リレー接続部4側に移動させると前記第1コンタクト3に接触する第2コンタクト6を備えた可動部材7と、該可動部材7を前記第1,第2コンタクト3,6の接離方向に移動させる操作機構8と、を備えている。
【0017】
前記可動部材7と前記第2リレー接続部5の間には、伸縮可能なベローズ11が介在されている。
前記ベローズ11は、内周側ベローズ11aと、外周側ベローズ11bの2重構造になっていて、内周側ベローズ11aで絶縁筒2内を真空に保持し、外周側ベローズ11bで可動部材7と第2リレー接続部5を電気的に接続する。(以下、内周側ベローズ11aを気密封止用ベローズと称し、外周側ベローズ11bを通電用ベローズと称する)。なお、ベローズ11を2重構造とせずに単一のベローズで気密封止と通電の両方を行なってもよい。
【0018】
次に、絶縁筒2、第1リレー接続部4、第2リレー接続部5、操作機構8、ベローズ11について詳しく説明する。
絶縁筒2は、第1,第2の2つの筒部2a,2bに分割されていて、絶縁性を有するセラミックスで円筒状に形成されている。
【0019】
第1リレー接続部4は、円板状に形成されていて、前記第1の筒部2aの上端の開口部を密封して取り付けられている。第1リレー接続部4の下面の中央部には前記第1コンタクト3が設けられている。
【0020】
前記第2リレー接続部5は、前記第1,第2の筒部2a,2bの間に挟着されている。前記第2リレー接続部5の中央部(前記絶縁筒2の中心部に相当する部分)には、次に説明する可動部材7の軸部7bを挿入する軸部挿入孔5aが形成されている。
【0021】
前記可動部材7は、前記第2コンタクト6を上面の中央部に設けた円板状のフランジ部7aと、該フランジ部7aの下面の中央部に設けられたフランジ部7aよりも小径の軸部7bと、を備えている。フランジ部7aは、銅合金等の導電性に優れた材料で形成されている。
【0022】
前記軸部7bは、前記第2リレー接続部5に設けた軸部挿入孔5aを通して第2リレー接続部5の下部に突出している。前記軸部7bの下端は、絶縁ロッド12を介して前記操作機構8に接続されている。前記軸部7bは、ステンレススチール等の材料で形成されている。
【0023】
前記操作機構8には、エアシリンダが使用されている。操作機構8は、操作機構収納部13に収納されている。該操作機構収納部13の上端は連結部材14を介して前記第2の筒部2bの下端に接続されている。
【0024】
次に、前記ベローズ11について説明する。前述したように、ベローズ11は、内周側の気密封止用ベローズ11aと外周側の通電用ベローズ11bの2重構造になっている。
【0025】
気密封止用ベローズ11aは、可動部材7の軸部7bを囲繞した状態で軸部7bの外周に配置されている。気密封止用ベローズ11aは、一端側が第2リレー接続部5に取り付けられ、他端側が可動部材7のフランジ部7aに取り付けられている。
【0026】
気密封止用ベローズ11aは、外気が軸部挿入孔5aから第1の筒部2a内に侵入するのを防止する気密封止性を有している。気密封止用ベローズ11aは、気密性を有する素材で形成されている。
【0027】
また、通電用ベローズ11bは、気密封止用ベローズ11aの外周に配置されている。通電用ベローズ11bは、気密封止用ベローズ11aと同様に一端側が第2リレー接続部5に取り付けられ、他端側がフランジ部7aに取り付けられている。
【0028】
通電用ベローズ11bは、可動部材7と第2リレー接続部5を電気的に接続している。通電用ベローズ11bは、導電性を有する素材で形成されている。
【0029】
なお、図1に示す実施形態においては、絶縁筒2を第1,第2の2つの筒部2a,2bに分割し、これら2つの筒部2a,2bの間に第2リレー接続部5を挟着する構成としたが、前記第2の筒部2bを省き、絶縁筒2を第1の筒部2aのみで構成し、該第1の筒部2aの一方の開口部側に第1リレー接続部4を配置し、他方の開口部に第2リレー接続部5を配置してもよい。この場合、操作機構収納部13または連結部材14を絶縁材料で構成する。
【0030】
次に、上記真空リレー1の作用、効果について説明する。図1の左半部に示すように、第1コンタクト3と第2コンタクト6を接触させると、第1リレー接続部4と第2リレー接続部5は、可動部材7及び通電用ベローズ11bを介して電気的に接続された状態になる。
【0031】
図1の左半部に示す状態から可動部材7を操作機構8側に牽引すると、図1の右半部に示すように、第1コンタクト3と第2コンタクトは、非接触状態になり、第1リレー接続部4と第2リレー接続部5の電気的な接続が遮断される。
【0032】
また、操作機構8で可動部材7を第1コンタクト3側に移動させると、図1の左半部に示すように、第1コンタクト3と第2コンタクト6が接触し、第1リレー接続部4と第2リレー接続部5が電気的な接続された状態になる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、外周側の通電用ベローズ11bで通電を行なうので、外周側の通電用ベローズ11bは、銅合金等の導電性に優れたものがよい。一方、気密封止用ベローズ11a及び可動部材7の軸部7bは、ステンレススチールのような導電率の低い素材であってもよい。また、可動部材7のフランジ部7aを小さく構成し、軸部7bに直接、ベローズを取り付ける形態とする場合には、軸部7bに導電性に優れた材料を使用することが望ましい。また、前述したように、絶縁筒2の他方の開口部に第2リレー接続部5を配置し、例えば操作機構収納部13や連結部材14に絶縁素材を用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…封止形リレー(真空リレー)
2…絶縁筒
3…第1コンタクト
4…第1リレー接続部
5…第2リレー接続部
6…第2コンタクト
7…可動部材
7a…フランジ部
7b…軸部
8…操作機構
11…ベローズ
11a…内周側ベローズ(気密封止用ベローズ)
11b…外周側ベローズ(通電用ベローズ)
図1