特許 6136598 封止形リレー

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6136598

(24)【登録日】2017年5月12日

(45)【発行日】2017年5月31日

(54)【発明の名称】封止形リレー

(51)【国際特許分類】

   H01H 50/54 20060101AFI20170522BHJP

   H01H 33/662 20060101ALI20170522BHJP

   H01H 33/66 20060101ALI20170522BHJP

【ＦＩ】

   H01H50/54 B

   H01H33/662 E

   H01H33/66 W

【請求項の数】3

【全頁数】7

(21)【出願番号】特願2013-119364(P2013-119364)

(22)【出願日】2013年6月6日

(65)【公開番号】特開2014-238917(P2014-238917A)

(43)【公開日】2014年12月18日

【審査請求日】2015年12月10日

(73)【特許権者】

【識別番号】000006105

【氏名又は名称】株式会社明電舎

(74)【代理人】

【識別番号】100086232

【弁理士】

【氏名又は名称】小林 博通

(74)【代理人】

【識別番号】100104938

【弁理士】

【氏名又は名称】鵜澤 英久

(74)【代理人】

【識別番号】100096459

【弁理士】

【氏名又は名称】橋本 剛

(72)【発明者】

【氏名】高橋 大造

(72)【発明者】

【氏名】深井 利眞

(72)【発明者】

【氏名】家田 正彦

【審査官】 岡崎 克彦

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００２−３１３１９７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開昭５９−２０３３２６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開昭６４−０８４５３３（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−００４６０７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００６−３３２３８８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平０１−２０４３２２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｈ０１Ｈ ３３／６６

Ｈ０１Ｈ ３３／６６２

Ｈ０１Ｈ ４５／００ − ４５／１４

Ｈ０１Ｈ ５０／００ − ５９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

絶縁筒と、該絶縁筒の一端側の開口部に取り付けられていて内面に第１コンタクトを設けた第１リレー接続部と、該第１リレー接続部に対して所定の間隔をもって配置された第２リレー接続部と、前記第１，第２リレー接続部の間に移動可能に配置されていて前記第１リレー接続部側に移動させると前記第1コンタクトに接触する第２コンタクトを備えた可動部材と、該可動部材を前記コンタクト接離方向に移動させる操作機構と、前記絶縁筒内を気密に保持するベローズと、を備え、
前記操作機構で前記可動部材を移動させて前記第１コンタクトと前記第２コンタクトを接触させることにより前記ベローズ及び前記可動部材を介して前記第１，第２リレー接続部を電気的に接続する封止形リレーであって、
前記第２リレー接続部と前記第１リレー接続部の間に、第３コンタクトを有する第３リレー接続部を配置し、
前記可動部材には、前記第１コンタクトと前記第２コンタクトを非接触状態に移動させたときに前記第３コンタクトに接触する第４コンタクトを設け、
前記ベローズは、内周側ベローズと外周側ベローズの２重構造になっていて、内周側ベローズは、気密封止性能を具備し、外周側ベローズは、通電性能を具備していることを特徴とする封止形リレー。

【請求項2】

前記第３，第４コンタクトは、略同径のリング状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封止形リレー。

【請求項3】

前記第１，第２コンタクトは、前記第３，第４コンタクトと略同径のリング状に形成されていることを特徴とする請求項２に記載の封止形リレー。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、可動部材を操作機構で駆動して可動側のコンタクト（接点）を固定側のコンタクトに接触させて外部回路との接続を行なう真空リレー、或いはＳＦ（六フッ化硫黄）ガスや乾燥空気等の絶縁ガスを封入した絶縁ガス封入リレー等の封止形リレーに関するものである。

【背景技術】

【0002】

真空開閉器として、例えば、図２に示すものが知られている。真空開閉器１０１は、絶縁筒１０２内に固定側の接点１０３及び可動側の接点１０４を備えていて、該可動側の接点１０４を操作機構１０５で駆動して、前記可動側の接点１０４を固定側の接点１０３と接触させることにより、上部導体１０６と下部導体１０７を電気的に接続する。また、前記固定側の接点１０３と可動側の接点１０４を非接触状態とすることにより上部導体１０６と下部導体１０７を非接続状態にする。なお、１０８は、前記絶縁筒１０２の一端側の開口部に取り付けられた固定側封着金具であり、該固定側封着金具１０８に前記固定側の接点１０３と上部導体１０６が取り付けられている。１０９は、前記絶縁筒１０２の他端側の開口部に取り付けられた可動側封着金具であり、該可動側封着金具１０９に前記可動側の接点１０４と下部導体１０７が取り付けられている。１１０は、絶縁筒１０１内を真空状態に保つためのベローズである。（引用文献１）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００６−１７２８４７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

前述したように、前記真空開閉器１０１は、前記操作機構１０５で可動側の接点１０４を固定側の接点１０３に接触させることにより上部導体１０６と下部導体１０７を電気的に接続し、前記操作機構１０５で可動側の接点１０４を固定側の接点１０３から離間させて上部導体１０６と下部導体１０７を非接続状態にするものであって、専ら、前記上部導体１０６と下部導体１０７を繋ぐ回路の接続と遮断を行なうものであり、回路の切り換えを行なうものではなかった。

【0005】

本発明は、前記上部導体と下部導体を繋ぐ回路の接続又は遮断のみならず、回路の切り換えを可能にしたものである。

【課題を解決するための手段】

【0006】

請求項1の発明は、絶縁筒と、該絶縁筒の一端側の開口部に取り付けられていて内面に第１コンタクトを設けた第１リレー接続部と、該第１リレー接続部に対して所定の間隔をもって配置された第２リレー接続部と、前記第１，第２リレー接続部の間に移動可能に配置されていて前記第１リレー接続部側に移動させると前記第1コンタクトに接触する第２コンタクトを備えた可動部材と、該可動部材を前記コンタクト接離方向に移動させる操作機構と、前記絶縁筒内を気密に保持するベローズと、を備え、
前記操作機構で前記可動部材を移動させて前記第１コンタクトと前記第２コンタクトを接触させることにより前記ベローズ及び前記可動部材を介して前記第１，第２リレー接続部を電気的に接続する封止形リレーであって、
前記第１リレー接続部と前記第２リレー接続部の間に、第３コンタクトを有する第３リレー接続部を配置し、
前記可動部材には、前記第１コンタクトと前記第２コンタクトを非接触状態にしたときに前記第３コンタクトに接触する第４コンタクトを設けた。前記ベローズは、内周側ベローズと外周側ベローズの２重構造とし、内周側ベローズに、真空封止性能を持たせ、外周側ベローズに、通電性能を持たせた。

【0007】

請求項２の発明は、請求項1の封止形リレーにおいて、前記第３，第４コンタクトを、略同径のリング状に形成した。

【0008】

請求項３の発明は、請求項２の封止形リレーにおいて、前記第１，第２コンタクトを、前記第３，第４コンタクトと略同径のリング状に形成した。

【発明の効果】

【0010】

（１）請求項1の発明は、前記第１コンタクトと第２コンタクトが非接触状態になるように可動部材を移動させると、該可動部材に設けた第４コンタクトが、第３リレー接続部に設けた第３コンタクトに接触して、第２リレー接続部と第３リレー接続部が接続されて、回路の切り換えが行なわれる。
また、外周側ベローズに通電性能を持たせたので可動部材と第２リレー接続を外周側の通電性を有するベローズで電気的に接続するので、ＲＦ（高周波電流）通電での大電流の通電に適したものになる。また、マルチコンタクトや平網線を使用した場合に較べて、操作機構の小型化、簡素化、操作力の低減等を図ることができる。更に、通電用ベローズで通電を行なうので、可動軸に銅合金等の導電性の高い材料を用いる必要がなくなる。
（２）請求項２の発明は、第３，第４コンタクトをリング状に形成したので、両者の接触面積を大きくすることができので、ＲＦ（高周波電流）通電に有利なものになる。また、第３，第４コンタクトをリング状に形成したので、両者の位置合わせが容易になる。更に、可動部材や第３リレー接続部に、第３，第４コンタクトに見合うリング状の凹溝を形成することにより、該凹溝にリング状のコンタクトを嵌め込んで容易にコンタクトを取り付けることができる。
（３）請求項３の発明は、第１，第２コンタクトを、前記第３，第４コンタクトと略同径のリング状に形成したので、第１，第２コンタクトを、第３，第４コンタクトと別形状に形成する場合に較べて回路設計が容易になる。（コンタクト形状の違いは、静電容量の差になり、ＲＦ（高周波電流）通電においては、回路に組み込んだときに、第１，第２コンタクト側と、第３，第４コンタクト側とで回路定数が異なってしまい、これを揃えるには回路調整が必要となる）。また、第１〜第４コンタクトを同じ形状に形成することにより、部品点数（部品の種類）の削減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の封止形リレーの断面図であり、中心線ＣＬから左半部は、第1コンタクトと第２コンタクトの接触状態を示し、右半部は、第1コンタクトと第２コンタクトの非接触状態を示す。

【図2】従来例の断面図。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、本発明の実施の形態を図１に基づいて説明する。図１において、１は封止形リレーの一例としての真空リレーであり、該真空リレー１は、絶縁筒２と、絶縁筒２の一端側の開口部に取り付けられていて、内面に第１コンタクト３を設けた第１リレー接続部４と、第１リレー接続部４に対して所定の間隔をもって絶縁筒２内に対向配置された第２リレー接続部５と、第１，第２リレー接続部４，５の間に移動可能に配置されていて第１リレー接続部４側に移動させることにより第1コンタクト３に接触する第２コンタクト６を備えた可動部材７と、可動部材７を第1，第２コンタクト３，６の接離方向に移動させる操作機構８と、を備えている。

【0013】

第１リレー接続部４と第２リレー接続部５の間には、第３コンタクト９を有する第３リレー接続部１０が配置されている。一方、可動部材７には、第４コンタクト１１が設けられている。第４コンタクト１１は、図1の左半部に示したように、第１コンタクト３と第２コンタクト６を接触状態にしたときに、第３コンタクト９と非接触状態になり、図1の右半部に示したように、第１コンタクト３と第２コンタクト６を非接触状態にしたときに、第３コンタクト９と接触状態になる。第３，４コンタクト９，１１は、リング状に形成されている。

【0014】

可動部材７と第２リレー接続部５の間には、伸縮可能なベローズ１２が介在されている。ベローズ１２は、内周側ベローズ１２ａと、外周側ベローズ１２ｂの２重構造になっていて、内周側ベローズ１２ａで専ら絶縁筒２内を真空に保ち、外周側ベローズ１２ｂで専ら可動部材７と第２リレー接続部５を電気的に接続している。（以下、内周側ベローズ１２ａを気密封止用ベローズと称し、外周側ベローズ１２ｂを通電用ベローズと称する）。

【0015】

次に、絶縁筒２、第１，第２リレー接続部４，５、第３リレー接続部１０、ベローズ１２等について詳しく説明する。

【0016】

絶縁筒２は、第１〜第３の３つの筒部２ａ〜２ｃに分割されていて、セラミックスで形成されている。これら３つの筒部２ａ〜２ｃのうち筒部２ｃは省いてもよく、その場合は後記する操作機構収納部１４や連結部材１５をセラミックス等の絶縁素材で形成する。

【0017】

第１リレー接続部４は、円板状に形成されていて、第１の筒部２ａの上端に開口部を密封して取り付けられている。第１リレー接続部４の下面の中央部には第１コンタクト３が設けられている。

【0018】

第２リレー接続部５は、次に説明する可動部材７の軸部７ｂを挿入する軸部挿入孔５ａを中心部に有していて、第２，第３の筒部２ｂ，２ｃ間に挟着されて取り付けられている。

【0019】

可動部材７は、第２コンタクト６を上面の中央部に設けた円板状のフランジ部７ａと、フランジ部７ａの下面の中央部に設けられたフランジ部７ａよりも小径の軸部７ｂと、を備えている。

【0020】

フランジ部７ａの上面の中央部には、前記第２コンタクト７が設けられている。また、フランジ部７ａの下面の周縁部で、且つ第３コンタクト９と対向する位置に前記リング状の第４コンタクト１１が設けられている。フランジ部７ａは、銅合金等の導電性に優れた材料で形成されている。

【0021】

軸部７ｂは、第２リレー接続部５に設けた軸部挿入孔５ａを通して第２リレー接続部５の下部に突出している。軸部７ｂの先端は、絶縁ロッド１３を介して操作機構８に接続されている。軸部７ｂは、ステンレススチール等の素材で形成されている。

【0022】

操作機構８にはエアシリンダが使用されている。操作機構８は、操作機構収納部１４に収納されている。操作機構収納部１４の上端は、連結部材１５を介して第３の筒部２ｃの下端に接続されている。

【0023】

第３リレー接続部１０は、リング状の本体部１０ａと、リング状の本体部１０ａに連接されたリード部分１０ｂと、を備えている。リング状の本体部１０ａは、外周側が第１，第２の筒部２ａ，２ｂの間に挟着されているとともに、内周側が、絶縁筒２内に突出している。絶縁筒２内に突出しているリング状の本体部１０ａの上面の前記第４コンタクト１１と対向する位置にはリング状の第３コンタクト９が取り付けられている。

【0024】

次に、ベローズ１２について説明する。前述したように、ベローズ１２は、内周側の気密封止用ベローズ１２ａと外周側の通電用ベローズ１２ｂの２重構造になっている。

【0025】

気密封止用ベローズ１２ａは、可動部材７の軸部７ｂを囲繞した状態で軸部７ｂの外周に配置されている。気密封止用ベローズ１２ａは、一端側が第２リレー接続部５に取り付けられ、他端側が可動部材７のフランジ部７ａに取り付けられている。気密封止用ベローズ１２ａは、外気が軸部挿入孔５ａから絶縁筒２内に侵入するのを防止する気密封止性を有している。気密封止用ベローズ１２ａは、気密性を有する素材で形成されている。

【0026】

また、外周側の通電用ベローズ１２ｂは、気密封止用ベローズ１２ａの外周に配置されている。通電用ベローズ１２ｂは、気密封止用ベローズ１２ａと同様に一端側が第２リレー接続部５に取り付けられ、他端側がフランジ部７ａに取り付けられている。通電用ベローズ１２ｂは、可動部材７と第２リレー接続部５を電気的に接続している。通電用ベローズ１２ｂは、通電性を有する素材で形成されている。

【0027】

次に、前記真空リレー１の作用、効果について説明する。図1の左半部に示すように、第1コンタクト３と第２コンタクト６を接触させると、第１リレー接続部４と第２リレー接続部５は、可動部材７及び通電用ベローズ１２ｂを介して電気的に接続され、第１リレー接続部４と第２リレー接続部５は、通電可能な状態になる。

【0028】

図1の左半部に示す状態から操作機構８により可動部材７を操作機構８側に移動させると、図1の右半部に示すように、第1コンタクト３と第２コンタクト６が非接触状態になって、第１リレー接続部４と第２リレー接続部５の電気的な接続が遮断される一方、第３コンタクト９と第４コンタクト１１が接触して、第２リレー接続部５と第３リレー接続部１０が可動部材７及び通電用ベローズ１２ｂを介して電気的に接続された状態になる。

【0029】

なお、前記実施形態においては、第３，第４コンタクト９，１１をリング状に形成する一方、第１，第２コンタクト３，６を絶縁筒２の中心線ＣＬ上に位置する円形状の小突起で形成した場合を示したが、第１，第２コンタクト３，６を第３，第４コンタクト９，１１と同様のリング状に形成してもよい。第１，第２コンタクト３，６と第３，第４コンタクト９，１１を同一形状に形成することにより、部品点数（部品の種類）を削減できるとともに、本リレー切り換えでの特性差が小さくなり、本リレーを使用する際の回路設計を容易にすることができる。

【0030】

前記実施形態においては、通電用ベローズ１２ｂで通電を行なうので、通電用ベローズ１２ｂは銅合金等の導電性に優れたものがよい。一方、気密封止用ベローズ１１ａ及び軸部７ｂはステンレススチールのような素材であってもよい。また、可動部材７のフランジ部７ａを小さく構成し、軸部７ｂに直接、ベローズを取り付ける形態とする場合には、軸部７ｂには導電性に優れた材料を使用することが望まれる。また、単一のベローズで気密封止と通電の両方を行なっても良い。

【符号の説明】

【0031】

１…真空リレー
２…絶縁筒
３…第１コンタクト
４…第１リレー接続部
５…第２リレー接続部
６…第２コンタクト
７…可動部材
７ａ…フランジ部
７ｂ…軸部
８…操作機構
９…第３コンタクト
１０…第３リレー接続部
１１…第４コンタクト
１２…ベローズ
１２ａ…内周側ベローズ（気密封止用ベローズ）
１２ｂ…外周側ベローズ（通電用ベローズ）

【図1】

【図2】