(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136726
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】インクジェット用水性マゼンタインキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20170522BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20170522BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-161598(P2013-161598)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-30801(P2015-30801A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 智史
(72)【発明者】
【氏名】押田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】宇都木 正貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 真輔
(72)【発明者】
【氏名】市村 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征寿
【審査官】
牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−226477(JP,A)
【文献】
特開2004−101663(JP,A)
【文献】
特開2012−188502(JP,A)
【文献】
特開2015−013971(JP,A)
【文献】
特開2001−002962(JP,A)
【文献】
特開2006−057044(JP,A)
【文献】
特表2011−526322(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/156569(WO,A1)
【文献】
特開2010−083833(JP,A)
【文献】
特開2011−150336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B41J 2/01〜 2/21
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、有機溶剤、水を含むインクジェット用マゼンタインキであって、前記顔料として異なる色相を有する少なくとも2種類の顔料を含み、
第一の顔料が、ピグメントレッド150であって、
第二の顔料が、ピグメントレッド31であるか、
ピグメントブルー15:3、およびピグメントブルー15:4の何れかから選ばれる顔料であるかのいずれかであり、
有機溶剤が、1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールであって、1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールをインキ全量に対して5〜50重量%含み、
かつ、第二の顔料が、ピグメントレッド31を含むときは、
第一の顔料:第二の顔料の重量比は、1:2〜1:6であり、
第二の顔料が、ピグメントブルー15:3、またはピグメントブルー15:4を含むときは、
第一の顔料:第二の顔料の重量比は、4:1〜40:1であるインクジェット用マゼンタインキ(ただし、第一の顔料と、第二の顔料と、顔料分散剤とが同時に分散されてなる場合を除く)。
【請求項2】
第二の顔料が、ピグメントレッド31である請求項1記載のインクジェット用マゼンタインキ。
【請求項3】
第二の顔料が、ピグメントブルー15:3、またはピグメントブルー15:4の何れかから選ばれる顔料である請求項1記載のインクジェット用マゼンタインキ。
【請求項4】
前記第一、第二の顔料何れもが顔料分散剤によりインキ中に分散されてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のインクジェット用マゼンタインキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色再現性、吐出安定性に優れたインクジェット用水性マゼンタインキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷においては、着色剤として水溶性染料を使用した水性インキが主に用いられてきた。しかし、染料インキは耐候性、耐水性に劣る欠点があった。そこで、水溶性染料に変えて顔料を使用する顔料インキの検討が行われるようになり、近年、サインディスプレイ市場での大判プリンタとして、顔料インキを使用するインクジェットプリンタの実用化が進んできた。しかしながら、顔料インキに使用されるカラー顔料、特にマゼンタに使用される顔料であるピグメントレッド122やピグメントバイオレッド19は、染料のマゼンタと比較して、着色力が弱く、色再現範囲が十分に満足できるものではなかった。
【0003】
近年、これらの問題を解決しうるマゼンタの顔料として、アゾ系顔料が着目されている。しかし、このアゾ系顔料は、分散性、経時安定性が悪いことや、ノズル詰まりを引き起こすという問題があり、様々な検討が行われている。特許文献1ではこうした問題を解決したアゾ系顔料であるピグメントレッド150を使用したインキの開示がある。しかし、ピグメントレッド150は赤味のマゼンタ顔料であり、印刷色の基準となるジャパンカラーを単色で表すことができない。印刷時に他色との混色などによりジャパンカラーのマゼンタ色を表すことは可能であるが、印刷条件等のブレにより色ズレが生じることがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-195909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、色再現性、吐出安定性に優れたインクジェット用マゼンタインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、少なくとも顔料、有機溶剤、水を含むインクジェット用マゼンタインキであって、前記顔料として異なる色相を有する少なくとも2種類の顔料を含
み、
第一の顔料が、ピグメントレッド150であって、
第二の顔料が、ピグメントレッド31
であるか、
ピグメントブルー15:3、およびピグメントブルー15:4の何れかから選ばれる顔料であるかのいずれかであり、
有機溶剤が、1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールであって、1,2−プロパンジオールまたは1,3−プロパンジオールをインキ全量に対して5〜50重量%含み、
かつ、第二の顔料が、ピグメントレッド31
を含むときは、
第一の顔料:第二の顔料の重量比は、1:
2〜1:6であり、
第二の顔料が、ピグメントブルー15:3、またはピグメントブルー15:4を含むときは、
第一の顔料:第二の顔料の重量比は、4:1〜40:1であるインクジェット用マゼンタインキ
(ただし、第一の顔料と、第二の顔料と、顔料分散剤とが同時に分散されてなる場合を除く)に関する。
また本発明は、第二の顔料が、ピグメントレッド31
である上記インクジェット用マゼンタインキに関する。
また本発明は、第二の顔料が、ピグメントブルー15:3、またはピグメントブルー15:4の何れかから選ばれる顔料である上記インクジェット用マゼンタインキに関する。
また本発明は、前記第一、第二の顔料何れもが顔料分散剤によりインキ中に分散されてなることを特徴とする上記インクジェット用マゼンタインキに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、色再現性、吐出安定性に優れたインクジェット用マゼンタインキを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。尚、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【0009】
なお、本発明で用いられる色彩値は、白色基材上へウェット膜厚が6〜10μmとなるように塗工した印刷物を、D50光源、2°視野の条件で測定された値を用いている。白色基材としては特に限定されないが、コート紙を使用することが好ましい。
【0010】
本発明では色相の異なる二種の顔料を使用することにより、ジャパンカラーのマゼンタ色を再現することを特徴とする。
【0011】
第一の顔料としては記録媒体上でCIE1976表色系での色相角hが0〜25、彩度C*が75以上を示す顔料を使用する。高彩度の顔料を使用することで色再現性を高めることが可能となる。使用する顔料としては前記の色相を有する顔料であれば何れも使用することができるが、ピグメントレッド146, 150, 185, 245, 266から選ばれる顔料を使用することが好ましい。最も好ましくはピグメントレッド150である。
【0012】
第二の顔料としては記録媒体上でCIE1976表色系での色相角hが220〜350、彩度C*が50以上を示す顔料を使用する。好ましくは色相角hが320〜350、彩度C*が50以上を示す顔料または色相角hが220〜250、彩度C*が50以上を示す顔料を使用する。使用する顔料としては前記の色相を有する顔料であれば何れも使用することができるが、色相角hが320〜350、彩度C*が50以上を示す顔料としてはピグメントレッド31, 122, 色相角hが220〜250、彩度C*が50以上を示す顔料としては銅フタロシアニン系顔料を使用することが好ましい。銅フタロシアニン系顔料としてはピグメントブルー15:3, 15:4から選ばれる顔料を使用することが好ましい。
【0013】
インキ中の含有される第一の顔料と第二の顔料の合計量としてはインキ全重量に対して1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。この範囲内であれば様々な印刷基材に対して高い色再現性を発揮することが可能である。より好ましくは2重量%以上8重量%以下、更に好ましくは3重量%以上6重量%以下である。
【0014】
第一の顔料と第二の顔料の配合比率は、第二の顔料として色相角hが320〜350、彩度C*が50以上を示す顔料を使用する場合には、第一の顔料が第二の顔料よりも少なくすることが好ましい(重量比)。より好ましくは第一の顔料:第二の顔料=1:1.5〜5の割合、更に好ましくは第一の顔料:第二の顔料=1:2〜4の割合である。第二の顔料の顔料として色相角hが220〜250、彩度C*が50以上を示す顔料を使用する場合には第二の顔料が第一の顔料よりも少なく、第二の顔料の含有量をインキ中0.5重量%以下にすることが好ましい。より好ましくは0.3重量%以下であり、更に好ましくは0.3重量%以下である。これらの範囲にすることでマゼンタ色の色再現性をより高めることができる。
【0015】
本発明のマゼンタインキの安定性を長期間維持するためにも、インキ媒体中に顔料を分散して使用することが好ましい。顔料の分散方法としては、顔料を酸化処理等により表面改質し、分散剤なしで顔料を分散させる方法や、界面活性剤や樹脂を分散剤として顔料を分散させる方法がある。本発明では二種の顔料をより安定に分散させるためにも分散剤を使用して顔料を分散させることが好ましい。二種の顔料それぞれで異なる分散方法を用いると、相互に干渉し分散安定性が低下し、吐出安定性が低下する場合がある。
【0016】
顔料分散剤としてはアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、αオレフィンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することが好ましい。二種の顔料で同一の樹脂種を使用することでより安定な分散状態を保つことが可能となる。
【0017】
顔料分散剤の酸価は50〜400mgKOH/gであることが好ましい。酸価が50mgKOH/gよりも小さいと樹脂が水に対し溶解しづらくなるため、インキの粘度が高くなり吐出に影響が出る場合がある。また、400mgKOH/gよりも大きい場合であっても樹脂間での相互作用が強まり、粘度が高くなる場合がある。顔料分散剤の酸価は、より好ましくは100〜350mgKOH/gであり、更に好ましくは150〜300mgKOH/gである。
【0018】
顔料分散樹脂の重量平均分子量は5000〜100000であることが好ましい。分子量5000未満では分散安定性が低下する場合があり、分子量100000を超えると吐出に影響が出る場合がある。より好ましくは分子量10000〜50000であり、更に好ましくは分子量15000〜30000である。
【0019】
顔料と顔料分散剤の比率は2/1〜100/1であることが好ましい。顔料分散剤の比率が2/1よりも大きいとインキの粘度が高くなる傾向が見られる。また、100/1よりも小さいと分散性が低下し、安定性が低下する場合がある。顔料と顔料分散剤の比率としてより好ましくは4/1〜50/1、更に好ましくは5/1〜25/1であり、最も好ましくは10/1〜20/1である。
【0020】
本発明のインクジェット用インキには有機溶剤を使用する。有機溶剤を使用しない場合にはインクジェットノズル周辺でのインキ乾燥が非常に速く、不吐出が生じる原因となる。有機溶剤は1種類のみを選択し使用してもよく、基材への浸透性や粘度等の調整のために複数の溶剤を併用してもよい。
【0021】
有機溶剤としては炭素数3〜8のアルカンジオールを使用することが好ましい。アルカンジオールはインクジェットノズル周辺での乾燥を防ぐ効果があり、印刷時のノズル抜けを防止し、連続印刷の安定性を向上させることができる。また、基材に対しての濡れ性も良好であることから、画質の向上にも効果がある。
【0022】
炭素数3〜8のアルカンジオールとしては、1, 2-プロパンジオール、1, 3-プロパンジオール、1, 2-ブタンジオール、1, 3-ブタンジオール、1, 4-ブタンジオール、2-メチル-1, 3-プロパンジオール、1, 2-ペンタンジオール、1, 5-ペンタンジオール、2, 4-ペンタンジオール、2, 2-ジメチル-1, 3-プロパンジオール、1, 2-ヘキサンジオール、1, 6-ヘキサンジオール、2, 5-ヘキサンジオール、3, 5-ヘキサンジオール、3-メチル-1, 5-ペンタンジオール、2-メチル-2, 4-ペンタンジオール、1, 2-ヘプタンジオール、1, 7-ヘプタンジオール、2, 6-ヘプタンジオール、1, 2-オクタンジオール、1, 8-オクタンジオール、2-メチル-1, 3-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、インキの保存安定性、吐出安定性を高めるために1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールを使用することが好ましい。
【0023】
その他使用可能な溶剤としてはグリセリンや、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジブロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤や、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノン、N, N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N, N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド等の含窒素系溶剤、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等の環状エステル系溶剤等が挙げられる。
【0024】
これらの溶剤の中でもアルカンジオールとグリコールエーテル系溶剤とを併用することで、インキの濡れ性、乾燥性を所望の特性に調整することができるため好ましい。グリコールエーテル系溶剤としてはジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0025】
インキ中の溶剤の含有量としてはインキの全重量に対して5重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。5重量%未満ではインクジェットノズル周辺での乾燥により不吐出が生じる場合がある。50重量%を超えるとインキの乾燥性が悪化し、印刷物の生産性が低下する可能性がある。より好ましくは10重量%以上45重量%以下であり、更に好ましくは15重量%以上40重量%以下であり、最も好ましくは20重量%以上35重量%以下である。
【0026】
水の含有量については、インキ中30〜90重量%が好ましく、40〜80重量%が更に好ましい。
【0027】
印刷物の耐性を高めるために、本発明ではバインダー樹脂を更に添加することもできる。水性インキのバインダー樹脂としては大別して水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られているが、一般に樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であり、高い耐性を実現することができる。また、樹脂微粒子はインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をインキ中に配合することができることから、インクジェットインキの耐性を高めるのに適している。樹脂の種類としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0028】
バインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)を高くすることで耐擦性、耐薬品性等の耐性を向上させることが可能であり、好ましくは50〜120℃、より好ましくは80〜100℃の範囲とするのが良い。50℃よりも低い場合には十分な耐性が得られず、実用にて印刷物からインキ塗膜が剥がれる場合がある。また、120℃よりも高い場合には塗膜が非常に硬くなり、印刷物を折り曲げた際に印刷面にワレ、ヒビが生じる場合がある。
【0029】
上記のバインダー樹脂のインキ中における含有量は、固形分でインキの全重量に対して2重量%以上30重量%以下の範囲であり、好ましくは3重量%以上20重量%以下の範囲であり、より好ましくは4重量%以上15重量%以下の範囲である。
【0030】
また、本発明のインキは上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキの全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
【0031】
本発明のインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の色を組み合わせたインキセットとして使用することもできる。組み合わせは特に限定されないが、シアン、マゼンタ、イエローの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字等の視認性を上げることができる。更にオレンジ、グリーン等の色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。白色以外の印刷媒体へ印刷を行う際にはホワイトインキを併用することで鮮明な画像を得ることができる。
【0032】
本発明のインクジェット用インキで印刷する印刷媒体は公知のものが使用可能である。例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、合成紙、インクジェット専用紙などの紙媒体や、ポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、PPフィルムなどのプラスチック媒体である。これらは印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの印刷媒体の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層等を設けても良く、又印字後、印字面に粘着層等を設けても良い。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
なお、実施例1〜5、7、8は参考例である。
【0034】
(実施例1)
顔料としてピグメントレッド146を20部、顔料分散剤(スチレンアクリル樹脂、酸価200mgKOH/g)を6部、水74部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液(PR146)を得た。同様にして顔料としてピグメントレッド122を使用して分散液を製造し、顔料分散液(PR122)を得た。
【0035】
顔料分散液(PR146)を10部、顔料分散液(PR122)を30部、プロピレングリコールを30部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを5部、サーフィノール465を1部、水19部を混合容器へディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明のインクジェット用インキを作成した。作成したインクジェット用インキをラインパス型のインクジェットプリンタに充填し、コート紙(王子製紙社製OKトップコートN、坪量104.7g/m
2)に、600×600dpiの解像度でカラーチャートパターンを印刷し、評価用印刷物を作成した。
【0036】
(色再現性の評価)
評価用印刷物を分光光度計(X-rite社製)を用いて測色し、L*a*b*色空間における色再現領域をプロットし評価した。得られた色再現領域と枚葉印刷用ジャパンカラー2007によって定められているマゼンタの色相を比較し、ジャパンカラー2007のマゼンタが再現可能かで評価を行った。評価基準は下記の通りである。
◎:ジャパンカラーと同等以上の色域を示す
○:ジャパンカラーと同等程度の色域を示す
×:ジャパンカラーよりも狭い色域を示す
【0037】
(吐出安定性評価)
前記ラインパス型のインクジェットプリンタで連続印刷を行い、ノズル抜けが発生するまでの時間を測定した。評価基準は下記の通りである。
◎:10分以内にノズル抜けが発生しない
○:1分以内にノズル抜けが発生しない
×:1分以内にノズル抜け発生
【0038】
(実施例2〜12、比較例1、2)
実施例1に準じて表1のような組成でインクジェットインキを作成し、同様に評価を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
表1記載の通り、第一の顔料と第二の顔料を併用したインキに関しては色再現性が良好であることが示された。特に第一の顔料としてピグメントレッド150を使用したものは色再現性が良好であった。また、実施例1〜10にあるように第一の顔料と第二の顔料何れもが顔料分散剤により分散されているインキは吐出安定性が高いことが示された。実施例11, 12では樹脂分散顔料と自己分散顔料を併用したことで、分散安定性が低下し、吐出安定性が低下している。