(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
(転写ベルト及びその製造方法)
図1は、実施形態に係る転写ベルトの一例を示す概略斜視図である。
【0015】
本実施形態に係る転写ベルト101は、
図1に示すように、例えば、無端状に形成され、樹脂及び導電剤を含む樹脂層の単層体で構成されている。
そして、樹脂層は、裏面抵抗率R
Bと体積抵抗率R
Vとの常用対数値での差(R
B−R
V)を1.5以下とし、且つ表面抵抗率R
Fと裏面抵抗率R
Bとの常用対数値での差(R
F−R
B)を0.4以上としている。つまり、従来の単層構造の転写ベルトの樹脂層に比べ、本実施形態に係る転写ベルト101の樹脂層は、その単層構成で、体積抵抗率R
V及び表面抵抗率RFが高く、裏面抵抗率R
Bが低い状態となっている。
【0016】
なお、本実施形態に係る転写ベルト101は、樹脂層の単層体に限られず、樹脂層を基材層とする2層以上の積層体であってもよい。具体的には、転写ベルト101は、例えば、樹脂層の表面(外周面)に離型層を設けた積層体で構成されていてもよい。
【0017】
本実施形態に係る転写ベルト101では、樹脂層の裏面抵抗率R
Bを低下させることにより、記録媒体との剥離放電が生じ難くなり、うろこ模様の画像欠陥が抑制される。一方、樹脂層の体積抵抗率R
Vを高めることにより、転写電界が印加されたとき、樹脂層の表裏間(外周面と内周面との間)にリーク電流が起こり難くなり、画像抜けの発生が抑制される。
【0018】
したがって、本実施形態に係る転写ベルト101では、樹脂層の単層構造で、うろこ模様の画像欠陥及び画像抜けの発生が共に抑制される。
【0019】
ここで、転写ベルト101において、樹脂層の裏面抵抗率R
Bと体積抵抗率R
Vとの常用対数値での差(R
B−R
V)は、1.5以下であるが、うろこ模様の画像欠陥及び画像抜けの発生を抑制する点から、望ましくは−0.5以上1.3以下、である。
【0020】
樹脂層の表面抵抗率R
Fと裏面抵抗率R
Bとの常用対数値での差(R
F−R
B)は、0.4以上であるが、うろこ模様の画像欠陥及び画像抜けの発生を抑制する点から、望ましくは0.5以上1.0以下である。
【0021】
樹脂層の体積抵抗率R
Vは、画像抜けの発生を抑制する点から、例えば、常用対数値で10logΩcm以上14logΩcm以下がよく、望ましくは11logΩcm以上14logΩcm以下、である。
【0022】
樹脂層の裏面抵抗率R
B(樹脂層内周面の表面抵抗率)は、うろこ模様の画像欠陥を抑制する点から、例えば、常用対数値で9logΩ/□以上14logΩ/□以下がよく、望ましくは10logΩ/□以上13logΩ/□以下である。
【0023】
樹脂層の各表裏面の表面抵抗率(内周面及び外周面の表面抵抗率)、樹脂層(以下「試験片」)の各表裏面に沿って流れる電流と平行方向の電位傾度を、面の単位幅当たりの電流で除した数値であり、各辺1cmの正方形の相対する辺を電極とする二つの電極間の面抵抗に等しい。表面抵抗率の単位は、正式にはΩだが、単なる抵抗と区別するためΩ/□と記載される。
【0024】
表面抵抗率の測定には、デジタル超高抵抗/微小電流計(アドバンテスト社製、R8340A)と、二重リング電極のUR100プローブ:MCP−HTP16、及びレジテーブル:UFL MCP−ST03(何れも、ダイアインスツルメンツ社製)を用い、JIS K6911(1995)に準拠して、リング電極に電圧を印加して行う。
面抵抗率の測定時は、上記レジテーブル上に試験片を置き、測定面に接するように上記URプローブを当て、URプローブの上部には質量2.0±0.1kg(19.6±1.0N)の錘を取り付け、試験片に一定の荷重がかかるようにした。測定する時の電圧印加時間は10秒とする。
【0025】
R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、UR100プローブMCP−HTP16の面抵抗率補正係数をRCF(S)とすると、ダイアインスツルメンツ社「抵抗率計シリーズ」カタログによればRCF(S)=100.0であることから、表面抵抗率ρsは下記式により算出される。
式:ρs(Ω/□)=R×RCF(S)=R×100.0
【0026】
一方、体積抵抗率は、試験片の表裏を流れる電流を膜厚で除した数値である。この数値は各辺1cmの立方体の相対する2面を電極とする二つの電極間の体積抵抗に等しい。
測定装置は面抵抗率測定と同じものを使用し、同じ荷重をかけ、下部金属面を電圧印加電極とした。測定の電圧印加時間は10秒とした。
試験片の厚さt(μm)、デジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、UR100プローブ:MCP−HTP16の体積抵抗率補正係数をRCF(V)とすると、ダイアインスツルメンツ社「抵抗率計シリーズ」カタログによれば、RCF(V)=19.63であることから、体積抵抗率ρvは下記式により算出される。
式:ρv(Ω・cm)=R×RCF(V)×(10000/t)=R×19.63×(10000/t)
【0027】
なお、表面抵抗率RF(樹脂層外周面の表面抵抗率)、裏面抵抗率R
B(樹脂層内周面の表面抵抗率)、体積抵抗率R
Vは、上記測定方法に従って、22℃55%RHにおいて、印加電圧500Vで測定した値である。但し、各抵抗率は、測定箇所を樹脂層(転写ベルト10)の軸方向で4点、周方向で6点の合計24箇所とし、その測定箇所の値の平均値とする。
【0028】
以下、本実施形態に係る転写ベルト101の詳細について、その製造方法と共に説明する。
【0029】
本実施形態に係る転写ベルト101の製造方法は、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、揮発分が5質量%以下のカーボンブラック、及び溶剤を含む塗布液(以下「ポリイミド前駆体溶液」とも称する)を基体の表面に塗布して、塗膜を形成する工程(以下「塗布工程」と称する。)と、塗膜を加熱する工程(以下「加熱工程」と称する。)と、を有する。
【0030】
通常、ポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラック(揮発分が5質量%を超えたカーボンブラック)を配合すると、カーボンブラックの表面官能基(カルボキシル基、フェノール性水酸基等)がポリアミド酸の末端基(カルボキシル基、アミノ基)と水素結合が生じる。このため、その結合力によりカーボンブラックが拘束され、その移動が抑制される傾向がある。
【0031】
一方、揮発分が5質量%以下のカーボンブラックは、表面官能基が少なく、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸の末端基(カルボキシル基、アミノ基)との水素結合が生じ難い。このため、カーボンブラックの移動が抑制され難い傾向がある。
【0032】
この性質を有する揮発分が5質量%以下のカーボンブラックを含むポリイミド前駆体溶液の塗膜を加熱により乾燥すると、基体の塗布面とは反対側の塗膜の表層部から乾燥し、当該表層部では下層部に比べ先にカーボンブラックが固定化される。一方、塗膜の下層部では、表層部に比べ乾燥されるのが遅く、水素結合による拘束を受け難い状態のカーボンブラックが移動し、凝集体を形成し易くなる。このため、塗膜の下層部では、表層部に比べ、カーボンブラックの分散が悪化した状態(つまり、カーボンブラックの凝集体が多い状態)で乾燥される。つまり、塗膜の表層部よりも下層部において、カーボンブラックの凝集体が多く存在した状態で、塗膜の加熱乾燥が完了する。
【0033】
そして、この分散状態で、加熱によりイミド化が行われ、樹脂層が形成される。このため、塗膜の加熱により乾燥及びイミド化を経て得られる樹脂層も、表面(外周面)側の表層部よりも裏面(内周面)側の下層部において、塗膜の表層部よりも下層部において、カーボンブラックの凝集体が多く存在した状態となる。つまり、樹脂層全体のカーボンブラックの含有量を変えなくとも、表面(外周面)よりも裏面(内周面)の表面抵抗率が低くなる。
【0034】
以上から、本実施形態に係る転写ベルト101の製造方法では、単層構成で、体積抵抗率R
V及び表面抵抗率R
Fが高く、裏面抵抗率R
Bが低い状態の上記抵抗特性を持つ樹脂層で構成された転写ベルト101が得られる。
【0035】
このように、本実施形態に係る転写ベルト101において、樹脂層に上記抵抗特性を付与する点から、当該樹脂層は、ポリイミド前駆体と揮発分が5質量%以下のカーボンブラックと溶剤とを含むポリイミド前駆体溶液の塗膜を乾燥及びイミド化して形成された樹脂層、つまり、ポリイミド樹脂と揮発分5質量%以下のカーボンブラックを含む樹脂層であることがよい。
【0036】
なお、本実施形態に係る転写ベルト101(その製造方法)において、ポリイミド樹脂(その前駆体であるポリアミック酸)に代えて、ポリアミドイミド樹脂(その前駆体であるポリアミド−ポリアミック酸)を採用してもよい。ポリアミドイミド樹脂(その前駆体であるポリアミド−ポリアミック酸)を採用した場合も、揮発分が5質量%以下のカーボンブラックの水素結合による拘束が抑制され、単層構成で、体積抵抗率R
V及び表面抵抗率R
Fが高く、裏面抵抗率R
Bが低い状態の上記抵抗特性を持つ樹脂層で構成された転写ベルト101となる。
【0037】
以下、本実施形態に係る転写ベルト101の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
−塗布液−
まず、塗布液について説明する。
塗布液は、ポリイミド前駆体、カーボンブラック、及び溶剤と、必要に応じて、他の添加剤と、を含む。また、ポリイミド前駆体に代えて、ポリアミドイミド前駆体を用いてもよい。
【0039】
ポリイミド前駆体について説明する。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とからの縮合物(ポリアミック酸)が挙げられる。このポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化反応(脱水閉環反応)させると、ポリイミド樹脂が得られる。
具体的には、ポリイミド前駆体は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを1:1のモル比で混合し、有機極性溶媒中で重合反応して得られるポリアミック酸が挙げられる。そして、得られたポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化反応させるとポリイミド樹脂が得られる。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0041】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げられる。
【0042】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が望ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最も望ましい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0043】
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,0
2.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げられる。
【0044】
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が望ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0045】
ポリアミドイミド前駆体について説明する。
ポリアミドイミド前駆体は、トリカルボン酸とジアミン化合物とからの縮合物であるポリアミド−ポリアミック酸が挙げられる。このポリアミドイミド前駆体であるポリアミド−ポリアミック酸をイミド化反応(脱水閉環反応)させると、ポリアミドイミド樹脂が得られる。
具体的には、ポリアミドイミド前駆体は、例えば、(1)トリカルボン酸無水物とジアミンとの当モル量を有機極性溶媒中、脱水触媒存在下、高温で重縮合する方法、(2)無水トリカルボン酸モノクロリドとジアミンとの当モル量を有機極性溶媒中、低温で重縮合及びイミド化反応をさせる方法、(3)トリカルボン酸無水物とジイソシアネートとを有機極性溶媒中、高温で重縮合させる方法、等によって得られるポリアミド−ポリアミック酸が挙げられる。そして、得られたポリアミドイミド前駆体であるポリアミド−ポリアミック酸をイミド化反応(脱水閉環反応)させると、ポリアミドイミド樹脂が得られる。
【0046】
トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物又は無水トリメリット酸モノクロリドが挙げられる。
【0047】
ジアミン化合物としては、ポリアミック酸の合成に用いられるジアミン化合物が挙げられるが、特に芳香族ジアミン化合物が好適である。
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、3,3’―ジアミノベンゾフエノン、P―フエニレンジアミン、4,4’―ジアミノジフエニル、4,4’―ジアミノジフエニルアミド、4,4’―ジアミノジフエニルメタン、4,4’―ジアミノジフエニルエーテル、ビス[4―{3―(4―アミノフエノキシ)ベンゾイル}フェニル]エーテル、4,4’―ビス(3―アミノフエノキシ)ビフェニル、ビス[4―(3―アミノフエノキシ)フェニル]スルホン2,2’―ビス[4―(3―アミノフエノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0048】
ジイソシアネート化合物としては、ポリアミック酸の合成に用いられるジアミン化合物中の2つのアミノ基がイソシアネート基に置換されたものが挙げられるが、特に、芳香族ジイソシアネート化合物が好適である。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、ブロック剤でイソシアナト基を安定化したものも挙げられる。ブロック剤としてはアルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0049】
以上説明した前駆体の塗布液中の含有量は、例えば、溶媒に対して10質量%以上40質量%以下の範囲がよい。
【0050】
カーボンブラックについて説明する。
カーボンブラックは、揮発分5質量%以下(好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下)のカーボンブラックが適用される。なお、カーボンブラックの揮発分の下限値は0質量%が好ましいが、製造上の観点から、例えば0.3質量%以上である。
【0051】
なお、カーボンブラックの揮発分は、950℃で7分間加熱したときの揮発分(減量分)を示している(JIS K6221)。そして、カーボンブラックの揮発分は一般的に表面官能基量が多いほど、増加する傾向がある。
【0052】
カーボンブラックとしては、上記揮発分を満たせば制限はなく、例えば、コンタクト法で製造されるカーボンブラック(例えばチャネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック等)、ファーネスト法で製造されるカーボンブラック(例えばガスファーネストブラック、オイルファーネストブラック等)、サーマル法で製造されるカーボンブラック(例えばサーマルブラック、アセチレンブラック等)が挙げられる。特に、ファーネスト法で製造されるカーボンブラックは、低揮発分のカーボンブラックとなる傾向があるため好適である。比表面積
【0053】
カーボンブラックにおいて、その他特性としては、pHが4.5以上10以下、DBP吸油量が30ml/100g以上1000ml/100g以下であることがよい。
pHは、水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定される値である。
DBP(ジブチルフタレート)吸油量は、ASTM D2414−6TTに定義された価である。このDBP吸油量は、カーボンブラック100gに吸収されるDBP量(ml)が多いか少ないかを表すものである。
比表面積は、BET方式による窒素の比表面積値であり、例えばBET方式の比表面積測定器(フローソープII2300、島津製作所社製)を用いて測定される値である。
【0054】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、10nm以上50nm以下がよく、15nm以上30nm以下がより好ましい。また、この平均一次粒子径を上記範囲とすることにより、カーボンブラックによる導電点を微細でかつムラのない状態となり、特定樹脂層(無端ベルト10)表面の放電劣化による抵抗低下が抑制され易くなる。なお、この平均一次粒子径の上記範囲内の大きい側では、凝集体が形成されにくいことが期待される。
カーボンブラックの平均一次粒子径は、次の方法により測定される。
まず、樹脂層(無端ベルト10)から、ミクロトームにより切断して、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、カーボンブラックの粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として、その平均値を平均一次粒子径とする。
【0055】
なお、カーボンブラックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0056】
以上説明したカーボンブラックの塗布液中の含有量は、樹脂に対して1質量%以上50質量%以下の範囲がよく、望ましくは2質量%以上40質量%以下の範囲、より望ましくは4質量%以上30質量%以下の範囲である。
【0057】
溶媒について説明する。
溶媒としては、例えば、有機極性溶媒が挙げられ、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系;及びヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げられる。
なお、溶媒は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらの中でも、溶媒としては、揮発性の低い溶媒、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド等のホルムアミド系溶媒がよい。
特に、溶媒として揮発性の低い溶媒を適用すると、塗膜の加熱工程において、塗膜の表層部よりも下層部の乾燥の進行が遅くなり易く、当該下層部中でカーボンブラックが移動し易くなると考えられる。その結果、塗膜の表層部よりも下層部において、カーボンブラックの凝集体が多く存在した状態で、塗膜の加熱乾燥が完了し易くなる。
【0059】
以上説明した溶媒の塗布液中の含有量は、塗布液全量に対し70質量%以上80質量%以下の範囲がよく、望ましくは76質量%以上78質量%以下である。
【0060】
他の添加剤について説明する。
その他添加剤としては、例えば、カーボンブラックの分散性を向上するための分散剤、機械強度などの各種機能を付与するための各種充填剤、イミド化反応促進のための触媒、製膜品質向上のためのレベリング材等が挙げられる。
【0061】
塗布液の特性について説明する。
塗布液の粘度(25℃での粘度)は、特に制限はないが、例えば、1Pa・s以上40Pa・s以下の範囲がよく、望ましくは3Pa・s以上30Pa・s以下の範囲である。
塗布液の粘度を上記範囲に低減すると、塗膜の加熱工程において、導電剤が移動し易くなると考えられる。その結果、塗膜の表層部よりも下層部において、導電剤の凝集体が多く存在した状態で、塗膜の加熱乾燥が完了し易くなる。
なお、塗布液の粘度は、25℃の環境下で、HAKKE社製定速粘度計PK100を用いて測定する。
【0062】
塗布液の調製について説明する
塗布液は、例えば、カーボンブラックを溶媒中に分散した溶液に、ポリイミド前駆体を溶解させて調製してもよいし、ポリイミド前駆体を溶媒中に溶解した溶液に、カーボンブラックを分散させて調製してもよい。また、塗布液は、予め、カーボンブラックの濃度が異なる塗布液を準備して、これを混合して調製してもよい。
なお、カーボンブラックの分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ジェットミル(対抗衝突型分散機)等が挙げられる。
【0063】
−塗布工程−
塗布工程では、塗布液を基体の表面に塗布して、塗膜を形成する。
基体の材質としては、例えば、金属(アルミニウム、ステンレス鋼等)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、または、これらの樹脂で表面を被覆した金属が挙げられる。芯体材質として金属を使用する場合には、基体上に形成される樹脂層(ベルト)を芯体から取り外しやすいように、例えば、予め表面にクロムやニッケルでメッキを施したり、離型剤を塗布してもよい。
基体の望ましい形状としては、例えば、円筒状や円柱状が挙げられる。
【0064】
塗布液を基体の表面に塗布する方法は、特に制限されない。例えば、特開平6−23770号公報等に記載の外面塗布法、特開平3−180309号公報等に記載の浸漬塗布法、特開平9−85756号公報等に記載のらせん塗布法(フローコート法)等のほか、スピンコート法も挙げられ、芯体の形状や大きさに応じて選択される。
【0065】
−加熱工程−
加熱工程では、塗膜を加熱し、塗膜中の溶媒を除去する。乾燥温度(乾燥炉の温度)は、例えば120℃以上220℃以下であることが望ましく、140℃以上210℃以下がより望ましい。
次に、乾燥膜に対して、焼成(イミド化反応)を行う。なお、この焼成(イミド化反応)を行うためには200℃以上の高温処理が一般的である。
【0066】
以上説明した各工程を経ることで、基体の表面に樹脂層が形成される。そして、この樹脂層を基体から剥離し、周知の後処理を施すことで、樹脂層の単層体で構成される転写ベルト101が得られる。
【0067】
なお、転写ベルト101の厚みは、例えば、総厚みで0.05mm以上0.5mm以下が望ましく、より望ましくは、0.06mm以上0.30mm以下、さらに望ましくは、0.06mm以上0.15mm以下である。
【0068】
本実施形態に係る転写ベルト101は、例えば、画像形成装置用の転写ベルト(例えば、中間転写ベルト、記録媒体搬送転写ベルト)に適用され得る。
【0069】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、を有し、転写手段が、上記本実施形態に係る転写ベルトを備えるものである。
【0070】
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が中間転写体と像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段とを備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る転写ベルトを備える構成が挙げられる。
【0071】
また、本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための搬送転写体(搬送転写ベルト)と像保持体に形成されたトナー像を用紙転写体により搬送された記録媒体に転写するための転写手段とを備え、当該記録媒体転写体として上記本実施形態に係る転写ベルトを備える構成が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0073】
以下、本実施形態に係る画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
図2は、実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3は、他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2は、中間転写体(中間転写ベルト)を備える画像形成装置であり、
図3は、記録媒体搬送転写体(記録媒体搬送転写ベルト)を備える画像形成装置である。
【0074】
図2に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに特定距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0075】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるように、画像形成装置用の転写ユニットを構成している。
なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に特定の張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0076】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0077】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を特定の電位に帯電させる帯電ロール2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ロール5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを、クリーニングブレードにて除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0078】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V以上−800V以下程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10
6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0079】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って特定の現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0080】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き特定速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が特定の1次転写位置へ搬送される。
【0081】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ロール5Yに特定の1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0082】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ロール5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0083】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ロール(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ロール26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に特定のタイミングで給紙され、特定の2次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0084】
この後、記録媒体Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録媒体P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録媒体Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録媒体Pに転写される構造であってもよい。
【0085】
一方、
図3に示す画像形成装置は、画像形成ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に特定の周速度(プロセススピード)をもって回転するように、それぞれ感光体201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体201Y、201M、201C、201BKの周囲には、帯電ロール202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体清掃部材205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0086】
画像形成ユニットY、M、C、BKは、記録媒体搬送転写ベルト206に対して4つ並列に、画像形成ユニットBK、C、M、Yの順に配置されているが、画像形成ユニットBK、Y、C、Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定する。
【0087】
記録媒体搬送転写ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって内面側から支持され、画像形成装置用の転写ユニットを形成している。該記録媒体搬送転写ベルト206は、矢印の反時計方向に感光体201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転するようになっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。記録媒体搬送転写ベルト206は、ベルト用清掃部材214が備えられている。
【0088】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、記録媒体搬送転写ベルト206の内側であって、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体201Y、201M、201C、201BKと、記録媒体搬送転写ベルト206を介してトナー画像を記録媒体216に転写する転写領域を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、感光体201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0089】
定着装置209は、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送するように配置されている。
【0090】
記録媒体搬送ロール208により、記録媒体216は記録媒体搬送転写ベルト206に搬送される。
【0091】
画像形成ユニットBKにおいては、感光体201BKを回転駆動させる。これと連動して帯電ロール202BKが駆動し、感光体201BKの表面を特定の極性及び電位に帯電させる。表面が帯電された感光体201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0092】
続いて該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときの現像剤は一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0093】
このトナー画像は、感光体201BKと記録媒体搬送転写ベルト206との転写領域を通過し、記録媒体216が静電的に記録媒体搬送転写ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスによって形成される電界により、記録媒体216の表面に順次転写される。
【0094】
この後、感光体201BK上に残存するトナーは、感光体清掃部材205BKによって清掃及び除去される。そして、感光体201BKは、次の画像転写に供される。
【0095】
以上の画像転写は、画像形成ユニットC、M及びYでも上記の方法によって行われる。
【0096】
転写ロール207BK、207C、207M及び207Yによってトナー画像を転写された記録媒体216は、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上により記録媒体上に画像が形成される。
【実施例】
【0097】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0098】
(実施例1)
ポリイミド前駆体溶液(商品名:Uワニス、ユニチカ製、固形分濃度18%、溶剤はN−メチルピロリドン)にカーボンブラック(商品名:Printex55 エボニック デグサ ジャパン社製 揮発分1.2%)を混合して、ジェットミルを用いて分散させた後、ポリイミド前駆体100部に対してカーボンブラックの濃度が14部まで濃度調整し、塗布液を調製した。
次に、得られた塗布液を、外径300mm、厚さ5mmのアルミ製の基体の外周上に、フローコート法にて塗布した。そして、アルミ製の基体の外周面に形成された塗膜を、160℃で20分間加熱乾燥した後、300℃で30分間加熱焼成(イミド化処理)した。
【0099】
以上の工程を経て、樹脂層を形成した。そして、アルミ製の基体から円筒状の樹脂層と取り外し、これを転写ベルトとした。
【0100】
(実施例2〜7、比較例1〜4)
表1に従って、カーボンブラック(表中「CB」と表記)の種類及び濃度、並びに、塗膜の乾燥温度を変更した以外は、実施例1と同様にして、転写ベルトを作製した。
但し、実施例7は、ポリイミド前駆体溶液に代えて、ポリイミドアミド前駆体溶液を使用した。
【0101】
(評価)
各例で得られた転写ベルトについて、次の評価を行った。
【0102】
−抵抗率測定−
各例で得られた転写ベルトの表面抵抗率、裏面抵抗率、及び体積抵抗率について、既述の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0103】
−うろこ模様の画像欠陥及び画像抜けの評価−
各例で得られた転写ベルトを、画像形成装置「Color1000Press(富士ゼロックス製)」の中間転写ベルトとして装着した。
そして、この画像形成装置を用いて、画像濃度50%のハーフトーン画像をA4紙に出力した画像を観察して、うろこ模様の画像欠陥及び画像抜けの発生状況について評価した。評価基準は、以下の通りである。
・うろこ模様の画像欠陥の評価基準
OK:目視による観察で、うろこ模様の画像欠陥が確認されなかった
NG:目視による観察で、うろこ模様の画像欠陥が確認された。
【0104】
・画像抜けの評価基準
OK:目視による観察で、画像抜けが確認されなかった
NG:目視による観察で、画像抜けが確認された。
【0105】
【表1】
【0106】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、うろこ模様の画質欠陥、及び画像抜けの発生が抑制されていることがわかる。
【0107】
以下、表1中のポリイミド前駆体、及びカーボンブラック(CB)の種類の詳細について示す。
【0108】
−ポリイミド前駆体溶液/ポリアミドイミド前駆体溶液−
・Uワニス: ポリイミド前駆体溶液、商品名 Uワニス、ユニチカ社製、固形分濃度18%、溶剤N−メチルピロリドン
・HPC9000: ポリアミドイミド前駆体溶液、商品名 HPC9000、日立化成社製、固形分濃度18%、溶剤N−メチルピロリドン
【0109】
−カーボンブラック(CB)−
・#4000B :商品名「#4000B(三菱化学社製)」、揮発分=0.3%、pH=10、比表面積=100m
2/g、DBP吸油量=102ml/100g
・ Printex55 :商品名「(Printex55エボニック デグサ ジャパン社製)」、揮発分=12%、pH=9.5、比表面積=100m
2/g、DBP吸油量=46ml/100g
・MA8 :商品名「MA8(三菱化学社製)」、揮発分=3%、pH=3、比表面積=120m
2/g、DBP吸油量=57ml/100g
・PrintexV :商品名「PrintexV(エボニック デグサ ジャパン社製)」、揮発分=5%、pH=4.5、比表面積=100m
2/g、DBP吸油量=460ml/100g
・#2350 :商品名「#2350(三菱化学社製)」、揮発分=7.5%、pH=2.5、比表面積=320m
2/g、DBP吸油量=65ml/100g
・SB4 :商品名「SB4(エボニック デグサ ジャパン社製)」、揮発分=1.4%、pH=3、比表面積=180m
2/g、DBP吸油量=280ml/100g