(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定手段は、前記位置ずれ量が大きくなるのに伴って、前記監視領域の面積を大きくすること、当該監視領域に含まれる画素の色値の分散を小さくすること、および当該監視領域と当該監視領域の周辺にある色境界部との距離が長くなるように当該監視領域の縮小率を大きくすること、の条件のうちの少なくともいずれか一つの条件が満たされるように、当該監視領域を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の色変動監視装置。
前記取得手段は、複数の点が格子状に配列された専用チャートを用いて、出力前および出力後の当該専用チャートにおける各点の位置に基づいて、前記位置ずれの量を取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色変動監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
<画像形成装置の内部構成の説明>
まず、本実施の形態に係る画像形成装置1の内部構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置1の内部構成の一例を示す図である。
本実施の形態に係る画像形成装置1は、電子写真方式にて画像の印刷を行う印刷装置であり、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部10と、画像形成装置1へ送信された画像データの処理を行う画像処理部20と、用紙に画像を形成する画像形成部30と、用紙に形成された画像を読み取る画像読取部40と、画像の色変動を監視する色変動監視部50と、ユーザからの命令の受け付けや、アラート表示等を行うUI部(User Interface)60とを備えている。
また、画像形成部30は、画像形成ユニット31Y、31M、31C、31K(以下、画像形成ユニット31とも称する)、一次転写ロール32、中間転写ベルト33、二次転写装置34、用紙保持部材35、用紙保持部材36および定着器37をまとめたものである。
【0010】
制御部10は、画像形成装置1全体の動作を制御するとともに、ユーザの操作により送信された印刷ジョブを受信する。印刷ジョブとは、ユーザからの印刷指示とともに送信される1つのデータ群であり、印刷する画像の内容や、何ページのものを何部印刷するかといった印刷枚数の内容、1枚の用紙に何ページ分印刷するか、片面印刷か両面印刷どちらで印刷するか、といった印刷形態の内容等が含まれる。この印刷ジョブについて、制御部10は、UI部60が受け付けた印刷ジョブをUI部60から受信しても良いし、制御部10が直接ユーザから受信するような構成にしても良い。
【0011】
画像処理部20は、制御部10で受信された印刷ジョブに含まれる画像データ(以下、原稿画像データと称する)に対して、色変換やラスタライズ処理等の画像処理を行う。一般的に、印刷ジョブに含まれる画像データは、PS(Post Script)やPDF(Portable Document Format)のようなページ記述言語(PDL(Page Description Language))で記載されているため、画像として出力するためにはラスタライズ処理と呼ばれる処理が必要となる。ラスタライズ処理とは、画像を色の付いた点の羅列として表現した画像データへ変換する処理であり、例えば、CPSI(Configurable PostScript Interpreter)やAPPE(Adobe PDF Print Engine)のような変換エンジンを利用して実行される。
【0012】
画像形成手段の一例としての画像形成部30は、画像処理部20によりラスタライズ処理が施された原稿画像データに基づいて、画像(以下、原稿画像データに基づく画像を原稿画像と称する)を記録材の一例としての用紙に順次形成して出力する。
【0013】
画像読み取り手段の一例としての画像読取部40は、画像形成部30により用紙に形成された原稿画像を読み取り、色に関するデータである色データを生成する。色データはデバイスに依存しないデータであり、例えばL
*a
*b
*値が用いられる。L
*a
*b
*値は、CIELAB色空間とも呼ばれるL
*a
*b
*色空間で定義される値であり、L
*a
*b
*色空間は、明度L
*と、色味を表す量の色度a
*、b
*とを軸とする直交座標色空間で表される。
色変動監視部50は、詳細については後述するが、画像の位置ずれの量に合わせて色変動の監視を行い、色変動が発生した旨の警告情報を出力する。
UI部60は、ユーザからの命令の受け付けや、制御部10による制御により色変動が発生した旨の警告の表示等を行う。
【0014】
また、画像形成装置1は、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット31を備え、各画像形成ユニット31にてY色(イエロー)、M色(マゼンタ)、C色(シアン)、K色(黒)のトナー像を形成する。また、各画像形成ユニット31にて形成された各色成分トナー像は、一次転写ロール32により中間転写ベルト33上に順次静電転写されて、各色トナーが重畳された合成トナー像が形成される。中間転写ベルト33上の合成トナー像は、中間転写ベルト33の移動に伴って二次転写装置34が配置された領域に搬送され、用紙保持部材35、36から供給される用紙上に一括して静電転写される。その後、用紙上に静電転写された合成トナー像は、定着器37によって熱および圧力による定着を受けて用紙上に定着される。
【0015】
また、定着器37よりも用紙の搬送方向下流側に、二次転写および定着を経て用紙に形成された画像をイメージセンサにより読み取る画像読取部40が設けられている。さらに、用紙に順次形成される画像の色を比較して、画像の色変動を監視する色変動監視部50が設けられている。
なお、本実施の形態では、画像形成部30は上記の電子写真方式により画像の形成を行うものとするが、このような構成に限られるものではなく、電子写真方式の他に、インクジェット方式等といった用紙に画像を形成する各種画像形成方式の何れを採用してもよい。
【0016】
<色変動監視部の説明>
次に、色変動監視部50について説明する。
図2は、本実施の形態に係る色変動監視部50の機能構成例を示したブロック図である。色変動監視部50は、原稿画像に対する位置ずれの量を測定して、位置ずれに関する情報(以下、位置ずれ情報と称する)を取得する位置ずれ量算出部51と、位置ずれ情報、および色変動の監視を実行する対象の領域(以下、監視領域と称する)を決定するために用いられるパラメータ(以下、監視領域パラメータと称する)の情報を格納する監視情報格納部52とを備える。
また、色変動監視部50は、原稿画像データ内の監視領域を決定する監視領域決定部53と、決定された監視領域に基づいて色変動の監視に用いられる情報(以下、色変動監視情報と称する)を生成する監視情報生成部54と、色変動の監視を実行する監視実行部55と、色変動が発生した旨の警告情報を出力する警告部56とを備える。
【0017】
取得手段の一例としての位置ずれ量算出部51は、色変動の監視を行うための事前情報として、原稿画像に対して画像読取部40による読み取り後の画像(以下、読取画像と称する)の位置がどれくらいずれているかを示す位置ずれ情報を取得する。ここで、位置ずれ量算出部51は、画像処理部20によりラスタライズ処理が施された原稿画像データと画像読取部40により生成された色データとに基づいて、画像形成部30により出力される前の用紙内での原稿画像の位置と、出力されて画像読取部40により読み取られた後の用紙内での読取画像の位置とを比較して、位置ずれの量(以下、位置ずれ量と称する)を測定する。位置ずれは、画像形成部30による画像形成時や、画像読取部40による画像読み取り時等に生じるものであり、画像形成装置1が複数ある場合、位置ずれ量は画像形成装置1ごとに異なる。即ち、位置ずれ情報は複数の画像形成装置1のそれぞれで取得されるものである。
【0018】
監視情報格納部52は、位置ずれ量算出部51により取得された位置ずれ情報、および監視領域を決定するために用いられる監視領域パラメータの情報を格納する。監視領域パラメータは位置ずれ量に応じて変化するパラメータであり、位置ずれ量と監視領域パラメータとの対応関係は予め定められているものとする。
【0019】
監視領域パラメータとしては、以下の3つのパラメータが設けられている。
1つ目の監視領域パラメータは、監視領域の面積を表すパラメータである。
2つ目の監視領域パラメータは、原稿画像データの各画素が有するデバイス依存の色値(以下、デバイス色値と称する)の分散に対する閾値(以下、分散閾値と称する)を表すパラメータである。領域内のデバイス色値の分散が分散閾値よりも小さいことが、監視領域として決定されるための条件とされる。また、本実施の形態において、デバイス色値は、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、黒を表す値であるCMYK値であり、デバイス色値をもとに画像形成部30にて画像が形成される。
【0020】
3つ目の監視領域パラメータは、監視領域に対する収縮量を表すパラメータである。収縮とは、ある領域の周囲の画素を取り除いて領域を縮小することをいい、収縮量は取り除く画素の量(取り除く領域の幅)を指す。これら3つの監視領域パラメータと位置ずれ量との関係については後述する。
【0021】
決定手段の一例としての監視領域決定部53は、監視情報格納部52に格納されている位置ずれ情報および監視領域パラメータの情報を用いて、原稿画像データにおける監視領域を決定する。ここで、監視領域決定部53は、位置ずれ量に合わせて、監視領域の大きさに関する条件、即ち、監視領域の面積および収縮量を設定し、監視領域の色情報に関する条件、即ち、分散閾値を設定することにより、監視領域を決定する。
【0022】
具体的には、監視領域決定部53は、画像処理部20からラスタライズ処理が施された原稿画像データを取得し、取得した原稿画像データから画素を1つ選択する。次に、監視領域決定部53は、位置ずれ情報および監視領域パラメータの情報から、選択した画素に対応する監視領域パラメータの値(監視領域の面積、分散閾値、収縮量)を取得する。そして、監視領域決定部53は、選択した画素を頂点とする矩形の領域であって、取得した面積を持つ領域を監視領域候補として設定し、設定した監視領域候補のデバイス色値の分散が取得した分散閾値より小さいか否かを判定する。デバイス色値の分散が分散閾値より小さい場合、監視領域決定部53は、取得した収縮量に基づいて監視領域候補を収縮し、収縮後の領域を監視領域として決定する。監視領域決定部53は、このような処理を原稿画像データの全ての画素に対して実行する。
【0023】
監視情報生成部54は、監視領域決定部53により決定された監視領域に基づいて、色変動監視情報を生成する。色変動監視情報は、監視領域の位置情報を示すものであり、詳細については後述する。
【0024】
監視手段の一例としての監視実行部55は、画像読取部40により生成された色データと監視情報生成部54により生成された色変動監視情報とに基づいて、原稿画像の色変動を監視する。詳細については後述するが、監視実行部55は、色変動監視情報をもとに、出力されるページごとにページ内の監視領域における色データの平均値を算出し、デバイス色値の近い監視領域同士で色データの平均値を比較することで、色変動の発生有無の判定を行う。
【0025】
警告部56は、監視実行部55により色変動が発生したと判定された場合に、ユーザに対して色変動が発生したことを通知するための警告情報を出力する。
【0026】
<位置ずれ情報の説明>
次に、位置ずれ量算出部51が取得する位置ずれ情報について説明する。
図3(a)(b)は、用紙内での画像の位置と位置ずれ量との関係の一例を説明するための図である。まず、
図3(a)に図示するように、用紙内での原稿画像の位置を、用紙の搬送方向に対して先頭になる用紙の端からの距離で表すものとする。
図3(a)に示す用紙では、用紙の端からamm離れた場所に領域Aがあり、領域Aの用紙内の位置はammとなる。
【0027】
また、
図3(b)は、横軸が用紙内の位置、縦軸が位置ずれ量であり、用紙内の位置とその位置で発生する位置ずれ量との関係を示した図である。
図3(b)に示す関係が、位置ずれ量算出部51が取得する位置ずれ情報である。位置ずれ量算出部51は、原稿画像と読取画像とを比較して、用紙内の位置に応じて位置ずれの量を測定することにより、
図3(b)に示すような関係を取得する。
図3(b)に示す関係は、用紙内の位置と位置ずれ量とが比例関係になる場合の例であり、例えば、用紙内の位置がammである領域Aの位置ずれ量はbmmと測定される。
【0028】
また、位置ずれ量算出部51が位置ずれ情報を取得する手法としては、例えば、縦横に複数の点が格子状に配列された専用チャートを印刷し、印刷前の専用チャートと印刷後の専用チャートを比較して、各点の位置における位置ずれ量を測定する手法がある。また、例えば、原稿画像と読取画像とにおいてパターンマッチングをしたり、印刷時に予め定められたマークを付加してそのマークの位置を比較したりすることにより、位置ずれ量を測定する手法もある。
【0029】
ただし、
図3(b)に示す関係は、用紙内の位置に対する位置ずれ量の傾向を表したものであり、例えば、複数枚の用紙を印刷して用紙ごとに測定された位置ずれ量を平均して求められる。そのため、例えば、ある印刷ジョブで複数枚の用紙を印刷した場合、領域Aの位置ずれ量がbmmになる用紙もあれば、領域Aの位置ずれ量がbmmより小さくなる用紙もある。また、位置ずれの方向も全ての用紙で同一というわけではない。
色変動の監視において、監視実行部55は、デバイス色値の近い監視領域同士で色データを比較して色変動の発生有無を判定するが、上記のような位置ずれが発生し、監視領域からずれた領域同士で色データを比較すると、正確な判定ができない場合がある。そのため、監視領域決定部53は、位置ずれ量に応じて設定される監視領域パラメータを用いて、監視領域を決定する。
【0030】
<監視領域パラメータの説明>
次に、監視領域パラメータについて説明する。
図4(a)〜(c)は、位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係の一例を示した図である。
図4(a)は、位置ずれ量と監視領域の面積との関係を示した図である。
図4(a)に図示するように、位置ずれ量が大きくなる程、監視領域の面積も大きくなるように設定される。これは、監視領域を大きくすれば、監視領域に対する位置ずれ量の割合が小さくなるためであり、位置ずれ量が大きくなる程、監視領域の面積も大きくすることで、位置ずれによる影響が抑制される。
【0031】
図4(b)は、位置ずれ量と分散閾値との関係を示した図である。
図4(b)に図示するように、位置ずれ量が大きくなる程、分散閾値は小さくなるように設定される。即ち、位置ずれ量が大きくなる程、分散が小さく、色が均一な領域が監視領域として決定される。これは、色が均一な領域は、例えば、背景のような比較的広い領域の一部である場合が多く、位置ずれが生じても色味が大きく変わる可能性が低いためであり、位置ずれ量が大きくなる程、分散閾値を小さくすることで、位置ずれによる影響が抑制される。
【0032】
図4(c)は、位置ずれ量と収縮量との関係を示した図である。
図4(c)に図示するように、位置ずれ量が大きくなる程、収縮量(収縮率)は大きくなるように設定される。監視領域の付近に監視領域とは異なる色味をした箇所が存在する場合には、位置ずれが生じることによりその箇所との色境界部を越えて、監視領域内に異なる色味を持つ画素が入り込む場合がある。そこで、監視領域を収縮させれば、色境界部からの距離が長くなり、位置ずれが生じたとしても異なる色味を持つ画素が監視領域内に入り込みづらくなる。そのため、位置ずれ量が大きくなる程、収縮量も大きくすることで、位置ずれによる影響が抑制される。
以上の
図4(a)〜(c)のように、位置ずれによる色変動への影響を抑制するために、位置ずれ量が大きくなる程、面積を大きくし、分散閾値を小さくし、収縮量を大きくするように監視領域が決定される。
【0033】
図5(a)〜(c)は、用紙内での画像の位置と監視領域パラメータとの関係の一例を示した図である。
図5(a)は、用紙内での位置と監視領域の面積との関係を示した図であり、
図5(b)は、用紙内での位置と分散閾値との関係を示した図であり、
図5(c)は、用紙内での位置と監視領域に対する収縮量との関係を示した図である。これらの
図5(a)〜(c)に示す関係は、
図3(b)に示す関係、
図4(a)〜(c)に示す関係から求められる。
【0034】
即ち、
図3(b)に示す関係は位置ずれ量と用紙内の位置との関係であり、
図4(a)〜(c)に示す関係は位置ずれ量と各監視領域パラメータとの関係である。そのため、
図3(b)、
図4(a)〜(c)の関係をもとに、用紙内の位置と各監視領域パラメータとの関係が
図5(a)〜(c)のように求められる。よって、位置ずれによる色変動への影響を抑制するために、用紙の端からの距離が長くなる程、面積を大きくし、分散閾値を小さくし、収縮量を大きくするように監視領域が決定される。
【0035】
図6(a)(b)は、監視領域パラメータをもとに決定された監視領域の一例を示した図である。
図6(a)に示す監視領域は収縮前のものであり、
図6(b)に示す監視領域は収縮後のものである。
図6(a)において、
図5(a)で説明したように、用紙の端からの距離が長くなる程、監視領域の面積は大きくなる。また、
図5(b)で説明したように、用紙の端からの距離が長くなる程、分散閾値は小さくなり、色値の分散が小さく色の均一な監視領域の割合が多くなる。また、
図5(c)で説明したように、用紙の端からの距離が長くなる程、収縮量が大きくなる。そのため、
図6(a)に示す監視領域は面積が大きいほど収縮量も大きくなり、監視領域決定部53が
図6(a)に示す監視領域を収縮させると、結果として、この例では
図6(b)に示すように収縮後の各監視領域の大きさはほぼ同じになる。
【0036】
<画像形成装置の全体の動作の説明>
次に、画像形成装置1の全体の動作について説明する。
図7は、画像形成装置1が色変動を監視するまでの手順の一例を示したフローチャートである。初期状態として、位置ずれ量算出部51は
図3(b)に示す位置ずれ情報を取得し、取得された位置ずれ情報が監視情報格納部52に格納されているものとする。また、
図4(a)〜(c)に示す位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係も、監視情報格納部52に格納されているものとする。
【0037】
まず、画像処理部20は、制御部10から送信された印刷ジョブに含まれる原稿画像データに対してラスタライズ処理を実行する(ステップ101)。そして、画像処理部20は、ラスタライズ処理を施した原稿画像データを、画像形成部30および監視領域決定部53に送信する。次に、画像形成部30は、原稿画像データに基づいて、画像を順次用紙に形成して出力する(ステップ102)。そして、画像読取部40はイメージセンサを用いて、画像形成部30により用紙に形成された画像を読み取り、色データを生成する(ステップ103)。画像読取部40は、生成した色データを監視実行部55へ送信する。
【0038】
次に、監視領域決定部53は、監視情報格納部52に格納されている位置ずれ情報および監視領域パラメータの情報を用いて、画像処理部20から送信された原稿画像データ内の監視領域を決定する(ステップ104)。監視領域を決定する手順については、
図8で詳細に説明する。次に、監視情報生成部54は、監視領域決定部53により決定された監視領域に基づいて、色変動監視情報を生成する(ステップ105)。ここで生成される色変動監視情報については、
図10、
図11で詳細に説明する。
【0039】
次に、監視実行部55は、画像読取部40により生成された色データと監視情報生成部54により生成された色変動監視情報とに基づいて、原稿画像の色変動を監視する(ステップ106)。ここで、監視実行部55は、色変動が予め定められた範囲を超えるか否かを判定し、色変動が予め定められた範囲を超える場合、その旨を警告部56に通知する。色変動監視の手順については、
図12で詳細に説明する。
【0040】
警告部56は、監視実行部55から通知を受けると警告情報を出力し(ステップ107)、本処理フローは終了する。ここで、警告部56は、制御部10に警告情報を出力し、制御部10がUI部60上にアラート表示させるように制御することで、ユーザに対して警告が行われる。また、制御部10は、UI部60上に色変動が発生した旨の警告に加えて、色変動を監視したことにより生成される時系列の色データのグラフ等を表示させることとしても良い。また、ユーザに対する警告は、例えば、音や警告灯により行われても良い。
【0041】
なお、上記の動作において、画像形成装置1は、ステップ104および105の一連の処理をステップ102および103の一連の処理より先に実行しても良い。また、画像形成装置1は、ステップ102および103の一連の処理とステップ104〜107の一連の処理とを並行に実行しても良い。並行に実行されれば、印刷処理が行われるのと並行して、色変動監視情報の生成や色変動の監視、警告等が行われることとなる。
【0042】
<監視領域を決定する手順の説明>
次に、監視領域決定部53が監視領域を決定する手順について説明する。
図8は、本実施の形態における監視領域を決定する手順の一例を示したフローチャートである。初期状態として、位置ずれ量算出部51は
図3(b)に示す位置ずれ情報を取得し、取得された位置ずれ情報が監視情報格納部52に格納されているものとする。また、
図4(a)〜(c)に示す位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係も、監視情報格納部52に格納されているものとする。
【0043】
まず、監視領域決定部53は、画像処理部20から送信された原稿画像データに対して縮小処理を実行する(ステップ201)。ここでの縮小処理においては、監視領域決定部53は、一般に良く知られている最近傍法や平均値法などにより、原稿画像データの解像度を、例えば、300dpi(dots per inch)から50dpiに縮小する。この縮小処理は、画像データに対する以降の処理の処理速度を上げるために行なわれるものであり、監視領域の決定や色変動の監視のために必須となるものではない。
【0044】
次に、監視領域決定部53は、原稿画像データの探索位置を取得する(ステップ202)。ここで、用紙の搬送方向にx軸、搬送方向に垂直な方向にy軸を定めるとすると、監視領域決定部53は、原稿画像データの画素を1つ選択して、選択した画素の座標(x、y)を探索位置として取得する。ここで、x座標の値は用紙の搬送方向に対して先頭になる用紙の端からの距離となるように定められ、例えば、
図3(a)に示す領域Aのx座標の値はaとなる。
【0045】
次に、監視領域決定部53は、位置ずれ情報、位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係に基づいて、探索位置に対応する各監視領域パラメータ(監視領域の面積、分散閾値、収縮量)の値を取得する(ステップ203)。具体的には、監視領域決定部53は、
図3(b)に示す関係、
図4(a)〜(c)に示す関係から求めた
図5(a)〜(c)に示す関係をもとに、選択した画素のx座標に対応する各監視領域パラメータの値を取得する。
【0046】
次に、監視領域決定部53は、ステップ203で取得した面積を持つ監視領域候補を設定する(ステップ204)。ここで、監視領域決定部53は、
図3(a)に示す領域Aのようにx軸に平行な辺およびy軸に平行な辺を持つ矩形の領域(例えば正方の領域)であって、選択した画素が予め定められた頂点に配置される領域を監視領域候補として設定する。次に、監視領域決定部53は、設定した監視領域候補におけるデバイス色値の分散を算出する(ステップ205)。そして、監視領域決定部53は、算出した監視領域の分散がステップ203で取得した分散閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップ206)。
【0047】
監視領域の分散が分散閾値以上であると判定された場合(ステップ206でNo)、ステップ209に移行する。
一方、監視領域の分散が分散閾値よりも小さいと判定された場合(ステップ206でYes)、監視領域決定部53は、ステップ203で取得した収縮量を用いて監視領域候補を収縮する(ステップ207)。そして、監視領域決定部53は、収縮した監視領域候補を監視領域として登録する(ステップ208)。
【0048】
次に、監視領域決定部53は、原稿画像データの全ての画素の座標を探索位置として取得したか否かを判定する(ステップ209)。監視領域決定部53がまだ探索位置として取得していない画素の座標がある場合(ステップ209でNo)、ステップ202に移行する。一方、監視領域決定部53が全ての画素の座標を探索位置として取得した場合(ステップ209でYes)、本処理フローは終了する。
【0049】
また、ステップ202において、監視領域決定部53は、エッジ以外の画素を選択して、探索位置を取得することとしても良い。エッジとは、画像データ中の濃淡が不連続に変化している境界である。監視領域決定部53は、エッジ以外の画素を選択する場合、例えば、原稿画像データに対して
図9に示すような縦3×横3のエッジ抽出フィルタを適用する。ただし、監視領域決定部53は、エッジ領域と非エッジ領域を数値化できるフィルタであれば、どのようなフィルタを使用しても良く、フィルタのサイズも3×3の大きさに限られるものではない。
【0050】
監視領域決定部53は、C、M、Y、Kごとにエッジ抽出フィルタを適用する。そして、監視領域決定部53は、原稿画像データの各画素に対して、C、M、Y、Kごとのエッジの度合いに応じた値(それぞれ、S
C、S
M、S
Y、S
Kとする)を求め、各画像のエッジ度SをS=(S
C2+S
M2+S
Y2+S
K2)
1/2として算出する。さらに、監視領域決定部53は、算出したエッジ度Sが、予め定められた閾値以下である画素を1(黒)、予め定められた閾値より大きい画素を0(白)とした2値画像を生成する。ここで、周りの画素と比べて濃淡が変化していない画素やなだらかな変化しかしていない画素は1を示し、濃淡が急峻に変化している画素は0を示すこととなる。
【0051】
そして、監視領域決定部53は、例えば、探索位置を取得する際に1を示す画素を選択することにより、エッジ以外の画素から探索位置を取得することとなる。さらに、ステップ204で設定する監視領域候補に0を示す画素が含まれていれば、監視領域として登録しないような構成にしても良い。このようにエッジを抽出することで、より色の均一な領域が監視領域として決定される。
【0052】
また、
図8に示す手順では、監視領域決定部53は、監視領域の面積、分散閾値、収縮量に関する条件の全てが満たされるように監視領域を決定したが、このような構成に限られるものではない。監視領域決定部53は、3つの条件のうち少なくともいずれか一つの条件が満たされるように監視領域を決めれば良い。
【0053】
<色変動監視情報の説明>
次に、監視情報生成部54が生成する色変動監視情報について説明する。
図10、
図11(a)(b)は、色変動監視情報の一例を示した図である。まず、
図10は、監視領域が登録されたリストの一例を示した図である。監視情報生成部54は、個々の監視領域にID番号を付与し、監視領域が含まれるページ番号、監視領域のページ内での位置情報、監視領域内の各画素が有するデバイス色値の平均(C
ave、M
ave、Y
ave、K
ave)および分散(σ
C、σ
M、σ
Y、σ
K)を登録する。
【0054】
位置情報としては、監視領域決定部53が選択した画素の座標(X、Y)、各監視領域の幅(W)、各監視領域の高さ(H)が登録される。なお、監視情報生成部54は、この位置情報を、縮小処理が施された画像データの解像度から画像読取部40が読み取った後の画像データの解像度に変換して登録することが望ましい。本実施の形態では、縮小処理後の画像データの解像度は上述の通り50dpiであるため、センサーが読み取った後の画像データの解像度を200dpiとすると、監視情報生成部54は、縮小された画像データの位置情報を全て4倍にして登録すれば良い。
【0055】
また、監視情報生成部54は、
図10に示すリストから、
図11(a)(b)に示す色変動監視情報を生成する。具体的には、監視情報生成部54は、デバイス色値の平均が予め定められた範囲内に入る複数の監視領域を同一のグループとしてグルーピングする処理を行う。
図11(a)は、監視領域のデータ群を各ページ上に模式的に示した図である。
図11(a)において、ID番号が振られている領域が個々の監視領域であり、同じテクスチャで示された監視領域は同一グループに属している。また、
図11(b)に示すリストは、監視領域をグループごとに分けて、同一グループに属する監視領域のID番号を順に並べたリストである。監視情報生成部54は、
図11(a)に示した監視領域のデータ群から同一グループに属する監視領域のID番号を抽出し、抽出した監視領域のID番号をグループごとに並べて
図11(b)に示したリストを作成する。
【0056】
<色変動監視の手順の説明>
次に、監視実行部55が色変動の監視を実行する手順について説明する。
図12は、監視実行部55が色変動監視を実行する手順の一例を示したフローチャートである。
まず、監視実行部55は、印刷ジョブの各ページにおいて、
図11(b)に示したグループごとに、画像読取部40が生成した色データの平均値を算出する(ステップ301)。例えば、監視実行部55は、ページ1のID01、ID04、ID13の領域において、色データの平均値を1つ算出する。また、例えば、監視実行部55は、ID01、ID04、ID13と同一グループであるページ2のID15、ID26の領域において、色データの平均値を1つ算出する。同様に、例えば、監視実行部55は、ID01、ID04、ID13とは異なるグループであるページ1のID02、ID05の領域においても、色データの平均値を1つ算出する。
【0057】
次に、監視実行部55は、印刷されるページのうち監視を行うページを1つ選択する(ステップ302)。そして、監視実行部55は、選択したページ内から、監視領域のグループを1つ選択する(ステップ303)。次に、監視実行部55は、選択した監視領域のグループについて、そのグループの基準とする色データ(以下、基準色と称する)がすでに登録されているか否かを判断する(ステップ304)。ステップ304で否定の判断(No)がされた場合、監視実行部55は、選択した監視領域においてステップ301で算出した色データの平均値を基準色として登録する(ステップ305)。この登録された基準色は、同じ印刷ジョブに基づく印刷が完了するまで有効とされる。次に、ステップ308に移行する。
【0058】
また、ステップ304で肯定の判断(Yes)がされた場合、監視実行部55は、登録されている基準色と、選択した監視領域においてステップ301で算出した色データの平均値との色差が、予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップ306)。基準色と色データの平均値との色差が予め定められた閾値よりも大きい場合(ステップ306でYes)、監視実行部55は、色変動が発生したことを警告部56に通知する(ステップ307)。一方、基準色と色データの平均値との色差が予め定められた閾値よりも小さい場合(ステップ306でNo)、ステップ308に移行する。
【0059】
次に、監視実行部55は、選択したページ内の監視領域の全てのグループに対して、ステップ304乃至307の処理が終了したか否かを判断する(ステップ308)。ステップ308で否定の判断(No)がされた場合、監視実行部55は、まだステップ304乃至307の処理が終了していないグループに対する処理を行うため、ステップ303に移行する。一方、ステップ308で肯定の判断(Yes)がされた場合、ステップ309に移行する。
【0060】
ステップ309では、監視実行部55は、監視を行う全てのページに対して、ステップ303乃至308の処理が終了したか否かを判断する。ステップ309で否定の判断(No)がされた場合、監視実行部55は、まだステップ303乃至308の処理が終了していないページに対する処理を行うため、ステップ302に移行する。一方、ステップ309で肯定の判断(Yes)がされた場合、本処理フローは終了する。
【0061】
また、
図12に示す手順において、画像形成装置1は、各ページのグループごとに色データの平均値を算出して比較を行うが、例えば、異なるページ間で色データの平均値を比較すれば、異なるページ間の色変動監視を行うこととなり、部数をまたぐ同一ページ間で色データの平均値を比較すれば、同一ページ間で色変動の監視を行うこととなる。
【0062】
以上のように、画像形成装置1は、位置ずれ量に合わせて、位置ずれの色変動への影響が抑制されるように監視領域を決定し、決定した監視領域において色変動を監視する。そのため、画像形成装置1は、位置ずれの影響を受けにくくして色変動の監視を行うとともに、例えば、画像のページごとに位置ずれを補正し補正した画像において色変動を監視するような構成と比較して、色変動を監視するのに要する処理が軽減される。
【0063】
また、用紙内で局所的に位置ずれが生じるような場合、例えば、位置ずれを補正して色変動を監視する構成では、補正処理が複雑になったり、補正の精度が低下したりすることがある。一方、画像形成装置1は、用紙の位置ごとに監視領域を決定して色変動の監視を行うため、局所的に位置ずれが生じるような場合であっても、位置ずれの影響を受けにくくして色変動の監視を行うとともに、色変動を監視するのに要する処理が軽減される。
【0064】
ただし、本実施の形態において、画像形成装置1は、従来の手法により位置ずれを補正した後に色変動の監視を実行しても構わない。この場合、位置ずれの補正処理後の画像データに対して何らかの位置ずれが発生したとしても、画像形成装置1は、位置ずれの影響を受けにくくして色変動の監視を行う。
【0065】
また、本実施の形態において、監視領域決定部53は監視領域を矩形の領域として決定したが、このような構成に限られるものではなく、矩形以外の多角形や円の形状をした領域を監視領域として決定しても良い。
【0066】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態に2に係る画像形成装置1について説明する。実施の形態1に係る画像形成装置1は、矩形等の特定の形状に定めて監視領域を決定したが、実施の形態2に係る画像形成装置1は、特定の形状に定めずに、デバイス色値の近い画素が連続している領域を抽出して監視領域を決定する。
【0067】
図13は、本実施の形態における監視領域を決定する手順の一例を示したフローチャートである。初期状態として、位置ずれ量算出部51は
図3(b)に示す位置ずれ情報を取得し、取得された位置ずれ情報が監視情報格納部52に格納されているものとする。また、
図4(a)〜(c)に示す位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係も、監視情報格納部52に格納されているものとする。
【0068】
まず、監視領域決定部53は、画像処理部20から送信された原稿画像データに対して縮小処理を実行する(ステップ401)。この縮小処理では、
図8のステップ201と同様の処理が行われる。そして、監視領域決定部53は、原稿画像データに対して、各画素が有するデバイス色値の統計をとり、ヒストグラムを生成する(ステップ402)。本実施の形態ではデバイス色値はCMYK値であり、各画素のCMYK値の分布を表した4次元のヒストグラムが生成される。
【0069】
次に、監視領域決定部53は、生成した4次元ヒストグラムから、階調の頻度のピークとなる色信号(以下、ピーク色信号と称する)を抽出する(ステップ403)。ここで、監視領域決定部53はピーク色信号を抽出できる手法であればどのような手法を用いても良く、例えば、2次微分フィルタをヒストグラムに適用する手法等の従来の手法が用いられる。次に、監視領域決定部53は、原稿画像データの各画素におけるCMYK値について、ピーク色信号のCMYK値から予め定められた範囲内にある画素を1(黒)、予め定められた範囲内にはない画素を0(白)とした2値画像を生成する。そして、監視領域決定部53は、生成した2値画像において、1を示す画素が連続している領域に対して画素ごとに同じ番号を振るラベリング処理を実行する(ステップ404)。ここで、同じ番号を振られた領域は画素が連結している領域(以下、連結領域と称する)であり、このラベリング処理により1または複数の連結領域が生成される。
【0070】
次に、監視領域決定部53は、生成された連結領域のうちの1つを取得する(ステップ405)。次に、監視領域決定部53は、位置ずれ情報、位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係に基づいて、取得した連結領域に対応する各監視領域パラメータ(監視領域の面積、分散閾値、収縮量)の値を取得する(ステップ406)。そして、監視領域決定部53は、取得した収縮量を用いて連結領域を収縮する(ステップ407)。次に、監視領域決定部53は、収縮した連結領域の大きさがステップ406で取得した面積よりも大きく、連結領域内のデバイス色値の分散が分散閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップ408)。ここで、連結領域はピーク色信号に近いCMYK値を持つ画素が連続した領域であり、様々な大きさの連結領域が含まれるため、監視領域決定部53は、色変動の監視に適さない小さな連結領域を除くためにまず連結領域を収縮し、その後に監視領域パラメータの面積との比較を行う。
【0071】
次に、取得した面積よりも大きく、分散閾値よりも小さいと判定された場合(ステップ408でYes)、監視領域決定部53は、連結領域を監視領域として登録する(ステップ409)。一方、ステップ408で否定の判断(No)がされた場合、監視領域決定部53は、連結領域を監視領域として登録しない。そして、監視領域決定部53は、全ての連結領域を取得したか否かを判定する(ステップ410)。監視領域決定部53がまだ取得していない連結領域がある場合(ステップ410でNo)、ステップ405に移行する。一方、監視領域決定部53が全ての連結領域を取得した場合(ステップ410でYes)、本処理フローは終了する。
【0072】
また、ステップ403において、監視領域決定部53は、予め定められた頻度以上の色信号をピーク色信号とし、複数のピーク色信号を抽出しても良い。この場合、監視領域決定部53は、ピーク色信号ごとに1または複数の連結領域を生成することとなる
【0073】
以上のように、画像形成装置1は、ピーク色信号を抽出して、抽出したピーク色信号のデバイス色値に近い画素が連続している連結領域をもとに、監視領域を決定する。このようにして、画像形成装置1は、特定の形状ではない不定形の領域を監視領域として決定する。
【0074】
また、実施の形態1および実施の形態2において、位置ずれ量算出部51は、原稿画像と読取画像とを比較して位置ずれ情報を取得したが、このような構成に限られるものではない。例えば、位置ずれ量算出部51は、画像形成部30が用紙に画像を形成する際の用紙の傾きや、画像読取部40が画像を読み取る際の用紙の浮き等の用紙に対する各部の挙動をもとに位置ずれ情報を取得しても良い。また、例えば、画像読取部40が画像形成装置1の外部に設けられ、画像形成部30と画像読取部40とが別々の装置として存在するようなシステム構成の場合、位置ずれ量算出部51は、画像形成部30(出力装置)および画像読取部40(読取装置)ごとに位置ずれ情報を取得しても良い。
【0075】
また、実施の形態1および実施の形態2において、位置ずれ量算出部51は、例えば、普通紙、コート紙等の用紙の種類や、A3、A4等の用紙のサイズごとに位置ずれ情報を取得しても良い。また、位置ずれ量算出部51は、例えば、原稿画像データの画像密度に応じて位置ずれ情報を取得しても良い。画像密度とは、単位面積当たりに含まれる画素数である。このように、画像形成装置1が、様々な要素ごとに位置ずれ情報を取得し、各要素に合わせて監視領域を生成することにより、色変動の監視の精度が向上する。
【0076】
また、実施の形態1および実施の形態2において、位置ずれ量算出部51は、印刷ジョブの開始前に位置ずれ情報を取得することとしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、印刷ジョブが送信されると最初に専用チャートが複数枚印刷され、それをもとに位置ずれ量算出部51が位置ずれ量を測定して、位置ずれ情報を取得することとしても良い。また、位置ずれ量算出部51は、専用チャートによる測定ではなく、ユーザから送信された印刷ジョブに基づく画像を用いたパターンマッチングにより、位置ずれ量を測定することとしても良い。この場合、位置ずれ量算出部51は、印刷ジョブに基づいて印刷が行われるのと並行して位置ずれ情報の取得を行うため、専用チャートを印刷する時間が削減される。
【0077】
また、実施の形態1および実施の形態2において、監視領域決定部53は、デバイス色値(CMYK値)をもとに監視領域を決定することとしたが、例えば、デバイス色値ではなくデバイス非依存の色値(例えば、L
*a
*b
*値)をもとに監視領域を決定することとしても良い。
【0078】
例えば、監視領域決定部53がL
*a
*b
*値をもとに監視領域を決定する場合、
図8のステップ201(
図13のステップ401)で縮小処理が実行された後に、原稿画像データのデバイス色値からデバイス非依存の色値への変換(CMYK値→L
*a
*b
*値)が行われる。CMYK値からL
*a
*b
*値への変換には、LUT(Look Up Table)が用いられる。このLUTは、例えば、画像形成装置1の平均的な出力特性(入力されるCMYK値と、それに基づいて出力される画像のL
*a
*b
*値の関係)をモデル化したものであり、予め作成されるものとする。また、
図8のステップ203(
図13のステップ406)では、L
*a
*b
*値の分散に対する閾値を表す分散閾値が取得され、L
*a
*b
*値をもとに監視領域が決定される。さらに、色変動監視情報としては、監視領域内の各画素が有するL
*a
*b
*値の平均および分散が登録される。そして、L
*a
*b
*値の近い監視領域が同一のグループとしてグルーピングされ、L
*a
*b
*値の近い監視領域同士で色データの比較が行われる。
【0079】
例えば、L
*a
*b
*色空間は、色空間上での距離・間隔が、知覚的な色の距離・間隔に類似するように設計されており、色を目で見た際に同じ色違いに見える色同士の距離を均等にした色空間(均等色空間)である。そのため、平均的な出力のL
*a
*b
*値を予測して監視領域を決定することで、例えば、デバイス色値をもとに監視領域を決定する場合と比較して、見た目に近い色を持つ監視領域が同一のグループとしてグルーピングされ、見た目に近い色を持つ監視領域同士で色データの比較が行われることとなる。
【0080】
<適用可能なコンピュータの説明>
ところで、本発明の実施の形態における色変動監視部50の処理は、汎用のコンピュータにおいて実現してもよい。そこで、この処理をコンピュータで実現するものとして、そのハードウェア構成について説明する。
【0081】
図14は、色変動監視部50のハードウェア構成例を示した図である。図示するように、色変動監視部50は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)71と、記憶手段であるメインメモリ72及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)73とを備える。ここで、CPU71は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行する。メインメモリ72は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、磁気ディスク装置73は、
図2に示す色変動監視部50の各機能を実現するためのプログラムを格納している。そして、このプログラムがメインメモリ72にロードされ、このプログラムに基づく処理がCPU71により実行されることで、各機能が実現される。更に、色変動監視部50は、制御部10等との通信を行うための通信I/F74を備える。
【0082】
具体的には、色変動監視部50において、CPU71が行う指示により、位置ずれ情報の取得や監視領域の決定、監視情報の生成、色変動の監視、警告情報の出力等が行われる。また、位置ずれ情報や、位置ずれ量と監視領域パラメータとの関係等は、例えば、HDD73に格納される。さらに、印刷ジョブや原稿画像データの受信は、通信I/F74を介して行われる。
【0083】
<プログラムの説明>
以上説明を行った本発明の実施の形態における色変動監視部50が行う処理は、例えば、アプリケーションソフトウェア等のプログラムとして用意される。
【0084】
よって、色変動監視部50が行う処理は、コンピュータに、記録材に出力される画像について、出力前と出力後での画像の位置ずれの量を取得する機能と、取得された位置ずれの量に合わせて、入力された画像データで色変動を監視するための領域である監視領域の大きさに関する条件、および監視領域の色情報に関する条件の少なくともいずれか一方の条件を設定して、監視領域を決定する機能と、入力された画像データに基づいて出力された画像の色に関するデータである色データを取得し、取得した色データと決定された監視領域とに基づいて、出力された画像の色変動を監視する機能とを実現させるためのプログラムとして捉えることもできる。
【0085】
なお、本発明の実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。