(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溶接対象の一対の線材が互いに接触するように配置された溶接対象箇所が複数、開放端を有する筒状のシース内に、前記各溶接対象箇所の接触点が互いに前記シースの軸方向と直交する方向に離間した状態で配置された第1中間組立体の前記接触点を溶接するための溶接装置であって、
前記シースを保持するシース保持部と、
所定の溶接位置において前記各接触点を溶接するための溶接部と、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
前記操作部により受け付けられた前記操作に応じて、前記溶接位置を、前記軸方向と直交する方向に沿って前記接触点に対して相対的に移動させる溶接位置調節部と、
前記溶接位置を、前記軸方向に沿って相対的に移動させる駆動部と、
溶接対象の中間組立体が、前記シース内に配置された前記溶接対象箇所の数が一つである第2中間組立体であるか前記第1中間組立体であるかを示す種別情報の入力を受け付ける種別受付部と、
前記種別受付部によって受け付けられた種別情報に応じて、前記駆動部及び前記溶接部の動作を制御する制御部と、
ユーザに対して前記操作部の操作を案内する案内部と、
ユーザからの溶接実行指示を受け付ける指示受付部とを備え、
前記制御部は、
前記種別受付部によって受け付けられた前記種別情報が、前記第2中間組立体を示す場合、前記案内部による案内を行わせることなく前記溶接部により溶接を実行させ、
前記種別受付部によって受け付けられた前記種別情報が、前記第1中間組立体を示す場合、前記案内部による案内を行わせた後に前記指示受付部により前記溶接実行指示が受け付けられたときに前記溶接部により溶接を実行させる溶接実行処理を、前記第1中間組立体に含まれる前記溶接対象箇所の数だけ繰り返す溶接装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接装置1の構成の一例を大略的に示す斜視図である。図中、溶接装置1の右方を+X、左方を−X、前方を+Y、後方を−Y、上方を+Z、下方を−Zで表している。なお、
図1に示す溶接装置1の配置方向は一例であり、例えば溶接装置1を90°横倒しにした配置で有ってもよく、その配置方向は限定されない。
【0020】
図1に示す溶接装置1は、シース保持部2、レーザー装置3(溶接部)、カメラ4(撮像部)、ミラーボックス5、X−Yステージ6(溶接位置調節部)、操作部61(第1操作部)、操作部62(第2操作部)、集塵ボックス7、表示部8、タッチパネルディスプレイ9(種別受付部)、スイッチボックス10、支持プレート11、昇降装置12(駆動部)、フレーム13、及び連結部材14を備えている。スイッチボックス10には、スタートボタン10a(案内部、指示受付部)と、ストップボタン10bとが取り付けられている。
【0021】
シース保持部2は、溶接対象となる線材が収納されたシース101を、シース101の開放端を上方すなわちミラーボックス5の方向に向けて保持する。シース保持部2は、前方側面に上下方向(Z軸方向)に沿って延びるV溝23が形成された直方体形状の金属ブロック21と、板状の押さえ部材22とを含む。シース保持部2は、V溝23と押さえ部材22とでシース101を挟み込むことによって、シース101を保持する。
【0022】
図2は、シース101内に一対の熱電対素線102a,102bと、一対の熱電対素線103a,103bとが収容された状態を説明するための断面図である。
図2は、シース熱電対を製造する際の、熱電対素線の溶接の前工程を示している(特開2007−187654号公報)。
【0023】
まず、
図2(a)に示すように、円筒状の金属シース101内に、二対の熱電対素線102a,102b、熱電対素線103a,103bが収容されている。なお、
図2(a),(b),(c)においては、熱電対素線103a,103bは、熱電対素線102a,102bから、図中、奥行き方向に離間して配設されており、熱電対素線102a,102bに隠れているためその記載を省略している。
図2(d)は、
図2(c)を開放端104側から見た上面図である。
【0024】
熱電対素線102a,102b,103a,103bとシース101との隙間には、熱電対素線102a,102b,103a,103bを先端から所定長さ露出させた状態で、無機絶縁物105が充填されている(
図2(a))。
【0025】
この状態で、その先端面に形成された縦断面略V字状の切欠部202と、金属シース101に内嵌する外周面203とを有する治具201をシース101の開放端104からシース101内に挿入する(
図2(b))。そうすると、熱電対素線102a,102b,103a,103bは、切欠部202のV字面に案内される結果、熱電対素線102a,102b、及び熱電対素線103a,103bがそれぞれ互いにもたれ合うように折曲成型されて、熱電対素線102a,102bの接触点102cと、熱電対素線103a,103bの接触点103cとが形成される(
図2(b),(d))。
【0026】
次に、治具201をシース101の開放端104から抜き取ると、接触点102cで互いに接する一対の熱電対素線102a,102bと、接触点103cで互いに接する一対の熱電対素線103a,103bとが、シース101内に、接触点102c,103cが互いにシース101の軸方向と直交する方向に離間した状態で配置された中間組立体100が形成される(
図2(c),(d))。溶接装置1は、
図2(c),(d)に示すような、中間組立体100における接触点102c,103cを溶接するための溶接装置である。
【0027】
なお、中間組立体は、必ずしも
図2に示すような、熱電対をシース内に収納したシース熱電対の中間組立体に限らない。例えば、
図3に示すように、シース内に、測温抵抗体が収容されたシース温度計の中間組立体100aであってもよい。中間組立体100aは、シース101内に、導体線111,112と、リード線113,114を有する測温抵抗体115とが収容されて構成されている。
【0028】
導体線111,112及び測温抵抗体115と、シース101との隙間には、導体線111,112及びリード線113,114を先端から所定長さ露出させた状態で、無機絶縁物105が充填されている。測温抵抗体115は、温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体であり、例えばサーミスタや白金等である。
【0029】
導体線111とリード線113とは、接触点116で互いに接触するように配置された溶接対象の一対の線材である。導体線112とリード線114とは、接触点117で互いに接触するように配置された溶接対象の一対の線材である。接触点116と接触点117とは、互いにシース101の軸方向と直交する方向(図中、左右方向)に離間した状態で配置されている。
【0030】
なお、導体線111,112のいずれか一方が、途中で2線に分岐した構成であってもよい。この場合、中間組立体100aから3線式のシース温度計が構成される。また、導体線111,112の両方が、途中で2線に分岐した構成であってもよい。この場合、中間組立体100aから4線式のシース温度計が構成される。
【0031】
以下の説明では、中間組立体100の溶接を行う場合の例をについて、主に説明する。
【0032】
図4は、レーザー装置3、カメラ4、ミラーボックス5、集塵ボックス7、及びシース保持部2の構成を説明するための説明図である。ミラーボックス5の上部には、レーザー装置3、カメラ4が取り付けられている。ミラーボックス5内には、カメラ4の下方にハーフミラー51が配設され、レーザー装置3の下方にミラー52が配設されている。ミラーボックス5の下部からは、下方に向かって対物レンズ53を保持する鏡筒54が突出している。
【0033】
集塵ボックス7の天板には上部開口71が形成され、集塵ボックス7の底板には下部開口72が形成されている。上部開口71は、鏡筒54を受け入れ可能にされている。下部開口72は、シース保持部2に保持されたシース101の開放端104と対向配置されている。
【0034】
また、集塵ボックス7の側壁には、吸気口73が形成されている。吸気口73には、後述する吸引装置74が接続されている。吸引装置74は、集塵ボックス7内の空気を吸引し、溶接により生じた塵埃を収集する。
【0035】
ユーザがシース101をV溝23と押さえ部材22との隙間に挿入する際、シース保持部2の上面には、図略の位置決め板が配置される。ユーザがシース101をV溝23と押さえ部材22との隙間に挿入し、シース101の先端をこの位置決め板に当接させることによって、シース101の取り付け位置すなわち接触点102c,103c,116,117の位置が、Z軸方向で位置決めされる。
【0036】
レーザー装置3、カメラ4、ミラーボックス5、及び集塵ボックス7は、昇降装置12によって、Z軸に沿って昇降可能にされている。
【0037】
レーザー装置3は、溶接用レーザー光を出力するレーザー発振装置である。レーザー装置3から出力されたレーザー光は、ミラー52でハーフミラー51へ向けて反射され、さらにハーフミラー51で対物レンズ53へ向けて反射される。対物レンズ53は、レーザー光を集束する。レーザー光が一点に集束される焦点位置が、溶接位置P1となる。
【0038】
カメラ4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子を備えた撮像装置である。カメラ4は、シース保持部2によって保持されたシース101内の接触点102c,103cの画像を、対物レンズ53を介し、ハーフミラー51を透過して撮像する。ミラーボックス5によって、カメラ4で接触点102c,103cや接触点116,117を撮像しつつ、レーザー装置3で接触点102c,103cや接触点116,117を溶接することが可能にされている。
【0039】
図1を参照して、ミラーボックス5は、X−Yステージ6に取り付けられている。これにより、ミラーボックス5とミラーボックス5に取り付けられたレーザー装置3及びカメラ4とが一体に、X−Yステージ6によりX軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)とに移動可能にされている。
【0040】
X−Yステージ6は、操作部61,62、Yステージ63、及びXステージ64を備えている。Yステージ63は、プレート631とプレート632とを含む。プレート631とプレート632とは、Y軸方向に沿って互いにスライド可能にされている。Xステージ64は、プレート641とプレート642とを含む。プレート641とプレート642とは、X軸方向に沿って互いにスライド可能にされている。
【0041】
Yステージ63のプレート631にミラーボックス5が取り付けられ、プレート632にXステージ64のプレート641の−X側端部が固着されている。Xステージ64のプレート642は、連結部材14によって、支持プレート11と連結されている。支持プレート11は、昇降装置12によって、昇降可能に支持されている。
【0042】
昇降装置12は、支持プレート11、連結部材14、及びX−Yステージ6を介してミラーボックス5、及びミラーボックス5に取り付けられたレーザー装置3、カメラ4をZ軸に沿って昇降可能に支持している。
【0043】
昇降装置12がミラーボックス5をZ軸に沿って昇降させると、ミラーボックス5、レーザー装置3、及びカメラ4が一体にZ軸に沿って上下方向に移動する。その結果、溶接位置P1がZ軸に沿って上下方向に移動する。これにより、溶接位置P1を接触点102c,103cに移動させて、接触点102c,103cを溶接することが可能にされている。
【0044】
なお、昇降装置12が溶接位置P1を移動させる例を示したが、昇降装置12は、シース保持部2を移動させることによって、溶接位置P1を、接触点102c,103cに対してZ軸に沿って相対的に移動させる構成としてもよい。
【0045】
操作部61,62は、例えばスリーブに外嵌されたシンブルを回転操作することにより、スピンドルが伸縮するいわゆるマイクロメータヘッドである。
【0046】
ユーザが操作部61のシンブルを回転操作すると、回転操作に応じてスピンドルが伸縮し、その伸縮量に応じて、Xステージ64のプレート641とプレート642とがX軸方向に沿って相対的にスライドする。その結果、Yステージ63を介してミラーボックス5が、操作部61の回転操作に応じてX軸方向に沿って移動する。
【0047】
ユーザが操作部62のシンブルを回転操作すると、回転操作に応じてスピンドルが伸縮し、その伸縮量に応じて、Yステージ63のプレート631とプレート632とがY軸方向に沿って相対的にスライドする。その結果、プレート631に取り付けられたミラーボックス5が、操作部62の回転操作に応じてY軸方向に沿って移動する。
【0048】
ミラーボックス5のX−Y方向の移動に伴って、溶接位置P1もまたX−Y方向に移動する。シース101はシース保持部2によって固定されているので、ユーザが操作部61,62を操作すると、X−Yステージ6によって、溶接位置P1が、シース101の接触点102c,103cに対して相対的に移動される。
【0049】
従って、溶接装置1によれば、シース内に収容された複数対の線材を溶接する場合であっても、ユーザが操作部61,62を操作して、複数の接触点102c,103cに順次溶接位置P1を移動させて、接触点102c,103cを溶接することができる。その結果、シース内に収容された複数対の線材を溶接することが容易となる。また、X−Yステージ6と操作部61,62とによって、溶接位置P1を移動させることができるので、例えば画像認識装置を用いて接触点102c,103cの位置を自動的に認識し、自動的に溶接位置P1を移動させて接触点102c,103cを溶接する場合と比べて、画像認識装置やX−Y方向の駆動装置が不要となる結果、溶接装置1を安価に構成することが可能となる。
【0050】
なお、X−Yステージ6によって、溶接位置P1を移動させる例を示したが、シース保持部2にX−Yステージ6を取り付け、シース保持部2を移動させることによって、溶接位置P1を、接触点102c,103cに対して相対的に移動させる構成としてもよい。
【0051】
図5は、
図1に示す溶接装置1の電気的構成の一例を示すブロック図である。溶接装置1は、制御部15を備える。制御部15は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。
【0052】
制御部15には、タッチパネルディスプレイ9、スタートボタン10a(案内部、指示受付部)、ストップボタン10b、カメラ4、レーザー装置3、昇降装置12、及び吸引装置74が接続されている。制御部15は、例えばROMに記憶されたプログラムを実行することにより、溶接装置1の各部の動作を制御する。
【0053】
スタートボタン10a及びストップボタン10bは、LED(Light Emitting Diode)等の発光手段を内蔵したいわゆる照光式の押しボタンスイッチである。スタートボタン10a及びストップボタン10bは、例えば押されている間だけオンし、それぞれそのオン、オフを示す信号を制御部15へ出力する。また、スタートボタン10a及びストップボタン10bは、それぞれ制御部15からの制御信号に応じて点灯する。
【0054】
スタートボタン10aは、指示受付部の一例に相当し、オン信号をユーザからの溶接実行指示として制御部15へ出力する。また、スタートボタン10aは、制御部15からの制御信号に応じて点滅することによって、ユーザによる操作部61,62の操作を促す案内部の一例として機能する。
【0055】
カメラ4は、制御部15からの制御信号に応じてシース101内の接触点102c,103cの画像を撮像する。カメラ4は、撮像した画像のデータを表示部8へ出力する。
【0056】
表示部8は、例えば液晶表示パネル等のディスプレイ装置である。表示部8は、カメラ4により撮像された画像と、溶接位置P1を示す印とを重ね合わせて表示する。印としては、例えば十文字のマークが用いられる。
【0057】
なお、カメラ4が、撮像した画像に印の画像を重ね合わせた画像データを合成して表示部8へ出力することで、表示部8が、カメラ4により撮像された画像と、溶接位置P1を示す印とを重ね合わせて表示する構成としてもよい。あるいは、表示部8の表示画面の表面に、固定的に溶接位置P1を示す印を描画しておくことにより、表示部8が、カメラ4により撮像された画像と、溶接位置P1を示す印とを重ね合わせて表示する構成としてもよい。あるいは、カメラ4と表示部8との間に画像処理装置を介在させ、画像処理装置の画像処理でカメラ4により撮像された画像と、溶接位置P1を示す印とを重ね合わせた画像データを生成して表示部8で表示させるようにしてもよい。
【0058】
レーザー装置3は、制御部15からの制御信号に応じて溶接用のレーザー光を出力する。昇降装置12は、制御部15からの制御信号に応じてミラーボックス5、及び集塵ボックス7を昇降する。吸引装置74は、制御部15からの制御信号に応じて集塵ボックス7から空気を吸引する。
【0059】
図6〜
図10は、
図1に示す溶接装置1の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図9、
図10において、
図6〜
図8と同様の処理には同じステップ番号を付してその説明を省略する。
【0060】
まず、制御部15は、タッチパネルディスプレイ9に、シース温度計の型式を選択可能に一覧表示させる(ステップS1)。シース温度計には、例えば熱電対が一つのもの、熱電対が複数のもの、あるいは測温抵抗体115を備えたものなど、種々の型式が存在する。ユーザは、溶接しようとするシース温度計の型式を、タッチパネルディスプレイ9をタッチすることで選択する。
【0061】
次に、制御部15は、ユーザによるタッチパネルディスプレイ9の操作に基づき、溶接しようとするシース温度計の型式情報を取得する(ステップS2)。制御部15のROM(記憶部)には、予め、各型式のシース温度計が、熱電対を複数備えたものや測温抵抗体115を備えたもののように、溶接対象箇所が複数有る第1中間組立体から構成されるものであるか、熱電対が一つのもののように溶接対象箇所が一つである第2中間組立体から構成されるものであるかを示す情報が記憶されている。従って、制御部15は、ROMを参照することによって、型式情報から、溶接対象の中間組立体が第1中間組立体であるか、第2中間組立体であるかを判定できる。
【0062】
従って、型式情報は、溶接対象の中間組立体が、第2中間組立体であるか第1中間組立体であるかを示す種別情報の一例に相当している。また、タッチパネルディスプレイ9は、種別情報の入力を受け付ける種別受付部の一例として機能する。なお、種別情報は必ずしも型式情報に限られず、種別受付部は例えばキーボードやディップスイッチ等のタッチパネルディスプレイ9以外の受付手段であってもよい。
【0063】
次に、制御部15は、例えばROMを参照することによって、型式情報から、溶接対象の中間組立体が第1中間組立体であるか、第2中間組立体であるかを判定する(ステップS3)。そして、制御部15は、第1中間組立体であると判定した場合(ステップS3でYES)、複数箇所溶接モードを実行するべくステップS11(
図7)へ移行する。
【0064】
次に、ステップS11において、制御部15は、スタートボタン10aがオンしたか否かを確認する。スタートボタン10aがオンされると(ステップS11でYES)、吸引装置74により集塵ボックス7からの吸引を開始させる(ステップS12)。これにより、溶接により生じる塵が排除される。また、制御部15は、図略のノズルから、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガスをシース101の開放端104付近に吹き付ける。これにより、溶接部の酸化が防止される。
【0065】
次に、制御部15は、昇降装置12によって、ミラーボックス5をカメラ4の焦点位置へ移動させて停止させる(ステップS13)。例えば、ROMには、型式情報に対応するカメラ4の焦点位置、すなわち型式情報に対応する中間組立体の溶接対象箇所にカメラ4のピントが合う位置が、焦点位置として予め記憶されている。制御部15は、ROMを参照することにより、ステップS2で取得された型式情報に基づき、中間組立体の溶接対象箇所にカメラ4のピントが合うように、ミラーボックス5を移動させる。
【0066】
その結果、カメラ4によって、中間組立体の溶接対象箇所が明瞭に撮影され、その画像が、表示部8によって、溶接位置P1を示す印と重ね合わせて表示される。これにより、ユーザは、表示部8に表示された画像から、溶接対象箇所と溶接位置P1の位置関係を把握することが可能となる。
【0067】
次に、制御部15は、スタートボタン10aを点滅させることにより、ユーザに対して、操作部61,62の操作を促す(ステップS14)。これにより、スタートボタン10aは、ユーザに対して操作部61,62の操作を案内する案内部の一例として機能する。
【0068】
この状態で、ユーザは、表示部8に表示された画像を見ながら操作部61,62を操作し、ミラーボックス5の位置、すなわち溶接位置P1を調節することによって、溶接対象箇所と溶接位置P1を示す印とを一致させる(ステップS15)。溶接対象箇所は、例えば
図2における接触点102cや
図3における接触点116である。
【0069】
これにより、ユーザは、溶接対象箇所と溶接位置P1のX−Y平面上の位置とを一致させて、適切に溶接を行うことが可能となる。
【0070】
次に、制御部15は、ストップボタン10bがオンしたか否かを確認する(ステップS16)。ストップボタン10bがオンされると(ステップS16でYES)、制御部15は、吸引装置74による吸引、及び不活性ガスの吹きつけを停止させ(ステップS17)、処理を終了する。
【0071】
制御部15は、ストップボタン10bがオンしていなければ(ステップS16でNO)、スタートボタン10aがオンしたか否かを確認する(ステップS18)。そして、スタートボタン10aがオンしていなければ(ステップS18でNO)、制御部15は、再びステップS15へ移行し、以降の処理を繰り返す。
【0072】
一方、スタートボタン10aがオンしていれば(ステップS18でYES)、制御部15は、昇降装置12によって、ミラーボックス5をレーザー装置3の焦点位置へ移動させて停止させる(ステップS19)。例えば、ROMには、型式情報に対応するレーザー装置3の焦点位置、すなわち型式情報に対応する中間組立体の溶接対象箇所に溶接用レーザー光の焦点が合う位置が、焦点位置として予め記憶されている。制御部15は、ステップS2で取得された型式情報に基づきROMを参照することにより、中間組立体の溶接対象箇所にレーザー光の焦点が合うように、ミラーボックス5を移動させる。
【0073】
その結果、ユーザの操作により溶接対象箇所と溶接位置P1のX−Y平面上の位置とが一致された状態で、Z軸方向の位置が昇降装置12によって溶接対象箇所と溶接位置P1のZ軸上の位置が一致される。その結果、溶接位置P1すなわちレーザー光の焦点が溶接対象箇所と一致するので、接触点102cや接触点116に適切にレーザー光を照射することが可能となる。
【0074】
次に、制御部15は、レーザー装置3によって、第1設定条件でレーザー光を出力させ(ステップS20)、さらに第2設定条件でレーザー光を出力させる(ステップS21)。第1及び第2設定条件は、レーザー光の強度や、レーザー光の出力時間である。例えば、ROMには、型式情報に対応する第1及び第2設定条件が予め記憶されている。制御部15は、ROMを参照することにより、ステップS2で取得された型式情報に基づき、第1及び第2設定条件を取得し、ステップS20,S21を実行する。
【0075】
溶接対象物は、例えば熱電対素線102a,102bであったり、リード線113,114や導体線111,112であったり、その太さや材質が、対象となるシース温度計の型式によって、様々である。溶接しようとする線材が太ければ熱容量が増大し、溶接に要するエネルギーが増大する。また、材質が異なれば溶融温度も異なる。また、第1段階のレーザー照射(ステップS20)で溶接対象箇所を予熱した後に、第2段階のレーザー照射(ステップS21)で溶接した方が、良好な溶接結果が得られる場合もある。
【0076】
そのため、溶接対象物の構成に応じた適切なレーザー光の強度や照射時間が、例えば実験的に予め第1及び第2設定条件として求められて、型式情報に対応付けて、例えばROMに記憶されている。制御部15は、ステップS2で取得された型式情報に基づきROMを参照することにより、溶接対象物に適した第1及び第2設定条件を取得することができる。
【0077】
これにより、溶接対象箇所の接触点102cや接触点116を、適切に溶接することが可能となる。
【0078】
なお、必ずしもステップS21を実行する必要はなく、例えばユーザがタッチパネルディスプレイ9により所定の操作指示を行うことにより、ステップS21を実行しない構成としてもよい。
【0079】
以上、ステップS14〜S21は、溶接実行処理の一例に相当する。すなわち、ステップS14〜S21において、ステップS14でスタートボタン10aによる案内が行われた後、ステップS18でスタートボタン10aが押下されて溶接実行指示が受け付けられると、ステップS20,21の溶接を実行する。
【0080】
次に、制御部15は、ステップS13と同様にして昇降装置12によって、ミラーボックス5をカメラ4の焦点位置へ移動させて停止させる(ステップS31)。その結果、カメラ4によって、中間組立体の溶接対象箇所が明瞭に撮影され、その画像が、表示部8によって、溶接位置P1を示す印と重ね合わせて表示される。これにより、ユーザは、表示部8に表示された画像から、溶接対象箇所の加工状態を確認することができる。
【0081】
次に、制御部15は、他の溶接対象箇所(例えば、接触点103cや接触点117)の溶接を行うべく、ステップS14と同様にスタートボタン10aを点滅させることにより、ユーザに対して、操作部61,62の操作を促す(ステップS32)。この状態で、ユーザは、表示部8に表示された画像から、次の溶接対象箇所となる接触点103cや接触点117と溶接位置P1との位置関係を把握しつつ操作部61,62を操作し、ミラーボックス5の位置、すなわち溶接位置P1を調節することによって、次の溶接対象箇所と溶接位置P1を示す印とを一致させる(ステップS33)。
【0082】
これにより、ユーザは、次の溶接対象箇所と溶接箇所を一致させて、適切に溶接を行うことが可能となる。
【0083】
以下、ステップS34〜S37において、ステップS18〜S21と同様の処理が実行される結果、溶接対象箇所の接触点103cや接触点117を、適切に溶接することが可能となる。このように、ステップS32〜S37によって、ステップS14〜S21と同様、溶接実行処理が実行される。なお、中間組立体100,100aに含まれる溶接対象箇所が2カ所、溶接実行処理の繰り返し回数が2回の例を示したが、溶接実行処理は、中間組立体に含まれる溶接対象箇所の数だけ繰り返し実行される。
【0084】
次に、制御部15は、不活性ガスの供給を停止する(ステップS38)。そして、制御部15は、ステップS13と同様にして昇降装置12によって、ミラーボックス5をカメラ4の焦点位置へ移動させて停止させる(ステップS39)。その結果、カメラ4によって、溶接箇所が明瞭に撮影され、その画像が、表示部8によって表示される。これにより、ユーザは、表示部8に表示された画像から、溶接結果が良好か否かを確認することが可能となる。
【0085】
次に、制御部15は、スタートボタン10aを点滅させることにより、ユーザに対して、溶接結果の確認を促す(ステップS40)。この状態でユーザは、表示部8の画像を見て溶接対象箇所の加工状態を確認し(ステップS41)、加工状態が良好であればスタートボタン10aを押下する。
【0086】
次に、制御部15は、スタートボタン10aがオンしたか否かを確認する(ステップS42)。そして、スタートボタン10aがオンしていれば(ステップS42でYES)、制御部15は、吸引装置74による吸引を停止し(ステップS43)、処理を終了する。
【0087】
以上、ステップS11〜S43の処理により、シース内に収容された複数対の線材を溶接することが容易となる。
【0088】
一方、ステップS3において、制御部15は、溶接対象が第1中間組立体ではなく、第2中間組立体であると判定した場合(ステップS3でNO)、一箇所溶接モードを実行するべくステップS4へ移行する。
【0089】
ステップS4において、制御部15は、タッチパネルディスプレイ9に、調節要求受付ボタンを表示する(ステップS4)。次に、制御部15は、調節要求受付ボタンがオン(タッチ)されたか否かを判定する(ステップS5)。調節要求受付ボタンがオンされた場合(ステップS5でYES)、制御部15は、調節要求を受け付けて(ステップS6)ステップS7へ移行する。一方、調節要求受付ボタンがオンされない場合(ステップS5でNO)、制御部15は、調節要求を受け付けることなくステップS7へ移行する。
【0090】
溶接対象箇所が一つである第2中間組立体の場合、溶接対象箇所は、シース101の軸心位置に位置する。そのため、予めこの軸心位置に溶接位置が一致するようにX−Yステージ6を設定しておくことにより、ユーザが都度溶接位置P1を調節する必要がない。しかしながら、ユーザが溶接位置P1の微調整を望む場合、ユーザが調節要求受付ボタンをタッチするなどして調節要求をすることにより、ユーザが操作部61,62を操作して、溶接位置P1を調整することが可能とされている。
【0091】
ステップS7において、制御部15は、スタートボタン10aがオンしたか否かを確認する。スタートボタン10aがオンされなければ(ステップS7でNO)制御部15は、ステップS5〜S7を繰り返し、スタートボタン10aがオンされると(ステップS7でYES)、制御部15は、
図9のステップS12を実行する。
【0092】
次に、制御部15は、調節要求が受け付けられているか否かを確認する(ステップS51)。そして、調節要求が受け付けられていなければ(ステップS51でNO)、以下、ステップS19,S20,S38〜S43の処理が実行され、第2中間組立体に対する溶接処理が実行される。これにより、第2中間組立体が溶接対象の場合には、ユーザが操作部61,62を操作しなくても、自動的に溶接処理が実行される。
【0093】
なお、ステップS42において、スタートボタン10aがオンするのを待つことなく、予め設定された一定時間経過後にステップS43へ移行するようにしてもよい。
【0094】
一方、ステップS51において、調節要求が受け付けられていれば(ステップS51でYES)、
図10のステップS13〜S43が実行される。これにより、溶接対象箇所が一つである第2中間組立体の場合であっても、ユーザの調節要求に応じて、ユーザが操作部61,62を操作して溶接位置P1を調節することが可能となる。
【0095】
なお、溶接部は、所定の溶接位置P1で線材を溶接できるものであればよく、レーザー装置3に限らない。また、溶接位置調節部は、溶接部による溶接位置P1を調節可能な手段であればよく、X−Yステージ6に限らない。また、カメラ4及び表示部8を備えず、例えばレンズ、ミラー、プリズム等の光学的手段により、シース内の接触点をユーザが目視可能にされていてもよい。