特許第6136852号(P6136852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6136852オレフィン重合用触媒成分、触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒およびそれを用いたオレフィン(共)重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136852
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒成分、触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒およびそれを用いたオレフィン(共)重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20170522BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-221835(P2013-221835)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83626(P2015-83626A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 美幸
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 竹弘
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−209480(JP,A)
【文献】 特開平11−001509(JP,A)
【文献】 特開昭49−014504(JP,A)
【文献】 特開2002−088204(JP,A)
【文献】 特開2003−252923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08F 4/6592
C08F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の特性1を有するイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分。
特性1:同形置換率が22%以上であること。
【請求項2】
前記イオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性2を有することを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒成分。
特性2:比表面積が150m/g以上であること。
【請求項3】
前記イオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性3を有するイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒成分。
特性3:イオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートの同形置換率が22%以上であること。
【請求項4】
前記イオン交換性層状珪酸塩は、モンモリロナイトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項5】
前記イオン交換性層状珪酸塩は、含有しているアルミニウム原子とマグネシウム原子のモル比(Mg/Al)が0.28〜3.5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項6】
前記イオン交換性層状珪酸塩は、無機酸または有機酸により酸処理されたものであり、該酸処理によってイオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートのアルミニウムが10〜65モル%脱離していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分の製造方法であって、
比表面積が0.1〜140m/gで、かつアルミニウムとマグネシウムのモル比(Mg/Al)が0.285〜3.5であるイオン交換性層状珪酸塩の八面体シートのアルミニウムを10〜65モル%脱離させる処理工程を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分の製造方法。
【請求項8】
下記成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
成分(a):周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):請求項1〜のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分
成分(c):有機アルミニウム化合物
【請求項9】
請求項に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、1種類または2種類以上のオレフィンを重合または共重合することを特徴とするオレフィン(共)重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分、該触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒および該触媒を用いたオレフィン(共)重合体の製造方法に関し、詳しくは、特定の構造を有しているイオン交換性層状珪酸塩からなるオレフィン重合用触媒成分、該触媒成分の製造方法、オレフィン重合用触媒および該触媒を用いたオレフィン(共)重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物を触媒成分として利用したオレフィン重合用触媒は、公知である(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物を触媒成分とするオレフィン重合用触媒の技術分野において、触媒活性の向上を課題とし、その解決手段が種々提案されている(例えば、特許文献4〜6参照。)。例えば、酸処理、塩類処理または酸と塩類との共存下に化学処理を行った粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物を触媒成分として含むオレフィン重合用触媒も、知られている。
【0003】
また、イオン交換性層状珪酸塩の化学組成については、八面体層に主に存在している金属の脱離量と細孔構造に関する技術も、報告されている(例えば、特許文献7、8参照。)。この技術は、大きな細孔を有することにより、物質の拡散をよくすることや酸量を増やすことに着目した技術である。しかし、活性は、満足できるものではなかった。
【0004】
一方、イオン交換性層状珪酸塩の化学組成に関する別の技術としては、得られるオレフィン重合体の物性を向上させることを課題とし、その解決手段として、アルミニウム原子とマグネシウム原子とのモル比が低結晶性成分の生成に関係するという考えから、含有されているアルミニウム原子の量をマグネシウム原子の量に対して規定する技術が知られている(特許文献9参照。)。しかし、この技術には、活性点を増加させるという思想は、存在しない。
上記のように、これまでの技術では、オレフィン重合用触媒成分の活性は、未だ十分でなく、さらなる技術向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−301917号公報
【特許文献2】特開2000−103807号公報
【特許文献3】特開2000−103808号公報
【特許文献4】特開平7−228621号公報
【特許文献5】特開平8−127613号公報
【特許文献6】特開2001−31720号公報
【特許文献7】特開2001−163909号公報
【特許文献8】特開2002−53609号公報
【特許文献9】特開2001−354715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の状況や問題点に鑑み、高活性なオレフィン重合用触媒成分、オレフィン重合触媒およびそれを用いたオレフィン(共)重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
イオン交換性層状珪酸塩の化学組成や構造とオレフィン重合用触媒成分としての性能に関しては、未だ不明瞭な点が多く、より高活性な重合用触媒成分を得るためには、イオン交換性層状珪酸塩の化学組成や構造に関して、検討の余地があった。
そのため、本発明者らは、上記目的を達成するために、メタロセン遷移金属化合物を活性点として安定的に存在させ、活性点の数を増加させるためには、イオン交換性層状珪酸塩に、どのような物理的・化学的な構造が必要であるかを、鋭意研究した結果、特定の化学組成と構造を持ったイオン交換性層状珪酸塩を、オレフィン重合用触媒成分として用いることにより、触媒活性が顕著に向上するとの知見を得た。より詳しくは、本発明者らは、特定の同形置換率を有するイオン交換性層状珪酸塩を、オレフィン重合用触媒成分として使用することによって、触媒活性が顕著に向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、次の特性1を有するイオン交換性層状珪酸塩からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性2を有することを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
特性1:同形置換率が22%以上であること。
特性2:比表面積が150m/g以上であること。
【0009】
本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性3を有することを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
特性3:イオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートの同形置換率が22%以上であること。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩がモンモリロナイトであることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩は、含有しているアルミニウム原子とマグネシウム原子のモル比(Mg/Al)が0.28〜3.5であることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される。
【0010】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記イオン交換性層状珪酸塩は、無機酸または有機酸により酸処理されたものであり、該酸処理によってイオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートのアルミニウムが10〜65モル%脱離していることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分が提供される
【0011】
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明に係るオレフィン重合用触媒成分の製造方法であって、
比表面積が0.1〜140m/gで、かつアルミニウムとマグネシウムのモル比(Mg/Al)が0.285〜3.5であるイオン交換性層状珪酸塩の八面体シートのアルミニウムを10〜65モル%脱離させる処理工程を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒成分の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第の発明によれば、下記成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)からなることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(a):周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):第1〜のいずれかの発明に係るオレフィン重合用触媒成分
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0013】
また、本発明の第の発明によれば、第の発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて、1種類または2種類以上のオレフィンを重合または共重合することを特徴とするオレフィン(共)重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオレフィン重合用触媒成分を用いることにより、活性点の数が増加し、高活性にオレフィン(共)重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.オレフィン重合用触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒成分には、次の特性1を有するイオン交換性層状珪酸塩を使用する。
特性1:同形置換率が22%以上であること。
【0016】
イオン交換性層状珪酸塩の同形置換とは、粘土ハンドブック(日本粘土学会、技法堂出版、2009年発行、第3版)P124に記載されているように、次のことを言う。
イオン交換性層状珪酸塩も含んだ広義の層状珪酸塩鉱物は、陽イオン(金属イオン)にO2−またはOHが配位してできる八面体シート、およびケイ素イオン(Si4+)にO2−が配位してできる四面体シートから、構成されている。イオン交換性層状珪酸塩の中で2:1型鉱物では、2枚の四面体シートが1枚の八面体シートの両側を挟んだ構造により、単位珪酸塩層を構成している。また、1:1型鉱物では、四面体シートの片面と八面体シートの片面が結合した構造により、単位珪酸塩層を構成している。
2:1型鉱物において、四面体シートの陽イオンがSi4+のみ、八面体シートの陽イオンがAl3+またはMg2+のみのときは、電気的に中性であり電荷を持たない。しかし、配位するO2−またはOHの個数は不変のまま四面体シートや八面体シートの陽イオンは、価数の異なる他の陽イオンに置換されていることが一般的であり、これを同形置換という。
【0017】
同形置換によって、珪酸塩層は、正または負、主に負の電荷を生じており、これを層電荷という。代表的なイオン交換性層状珪酸塩として、四面体シートでは、Si4+がAl3+に、八面体シートでは、Al3+がMg2+やFe2+に、またはMg2+がLiに同形置換されていることが例示されている(既述の粘土ハンドブック)。この場合、負の層電荷を有していることになる。
本発明は、この負の層電荷がメタロセン触媒の性能(活性)に対して、次のような作用および効果があると、考えている。
メタロセン触媒の活性点前駆体は、メタロセン遷移金属化合物(錯体)のカチオン種であり、これを活性点として安定して存在させるためには、カウンターアニオンといわれる適度なマイナス電荷を帯びた対イオンが必要である。イオン交換性層状珪酸塩をオレフィン重合用触媒成分として用いた場合、上述の層電荷がこの対イオンとしての役割を果たしていると、推測している。
つまり、同形置換率の高いイオン交換性層状珪酸塩では、層電荷が多くなり、対イオンが増加していることになる。すると、カチオン種が活性点として存在できる量が多くなり、活性点の数が増加することから、高同形置換率のイオン交換性層状珪酸塩では、従来なしえなかった高活性な重合が進行するようになる。
【0018】
以上の観点から、本発明のイオン交換性層状珪酸塩では、同形置換率について、下限は、好ましくは22%以上、より好ましくは22.2%以上、さらに好ましくは22.5%以上、特に好ましくは22.6%以上、最も好ましくは23%以上である。一方、上限は、78%以下が好ましく、より好ましくは72%以下、さらに好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下、さらにより好ましくは45%以下であり、最も好ましくは34%以下である。同形置換率の下限および上限の範囲としては、前記の好ましい下限値と好ましい上限値とを任意に組み合わせた範囲を例示することができる。例えば、22〜78%、22.2〜72%、22.2〜60%、22.5〜50%、22.6〜45%、23〜33%である。
同形置換率は、この同形置換の割合を示すものであり、同形置換した陽イオンのモル数を、そのシートを構成する全陽イオンのモル数(同形置換された陽イオンのモル数+同形置換した陽イオンのモル数)で割ったもののパーセントで示した。陽イオンの量は、具体的にはJIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量する組成分析から求めることができる。
【0019】
イオン交換性層状珪酸塩の四面体シートおよび八面体シートを構成する原子については、化学構造式から求めることができる。化学構造式は、含まれている原子を蛍光X線分析法(XRF)やICP、吸光光度法などの一般的な化学分析法にて定量し、それを基に求める。計算方法は、一般的に、前記粘土ハンドブック(日本粘土学会、技法堂出版、2009年発行、第3版)のP272〜P274に記載される方法にて行われる。このような方法にて、化学構造式を求めることで、それぞれのシートの陽イオンおよびその陽イオンを同形置換する陽イオンの種類が明らかとなる。
【0020】
計算方法の1つとして、多く用いられる陰イオンの電荷数を基準とする計算方法を次に説明する。
化学分析により求めた各原子の分子比にその原子の酸化物中に含まれている陽イオンの電荷数(例えば、Siであれば電荷は4)を掛けて陽イオン数を求め、陽イオン数の総和を求める。
次に、陽イオン電荷と陰イオン電荷を釣り合わせるための係数を求めるために、構造中の負電荷数(粘土鉱物に含まれているO)22をこの陽イオン数の総和で割る。このようにして得られた係数に、先に求めた各原子の陽イオン数を掛けることで、構造中に含まれる原子の割合を算出することができ、構造式を完成することができる。このようにして、各シートを構成する陽イオンを求めることができる。
【0021】
多くのイオン交換性層状珪酸塩は,四面体シートでは、陽イオンであるケイ素がアルミニウムに置換されて(アルミニウムによる同形置換)おり,八面体シートでは、陽イオンがアルミニウムの場合、マグネシウムおよび鉄(II)に置換されており、陽イオンがマグネシウムの場合は、リチウムに置換されることで、負の層電荷を生じる。これらは、鉱物の種類によって異なり、モンモリロナイトでは、主に八面体シートで同形置換が生じている。
さらに、モンモリロナイトについて、詳細に見てみると、八面体シートを構成する主な陽イオンは、アルミニウムであり,これが主にマグネシウムおよび少量の鉄に同形置換されている。マグネシウムとアルミニウムの量比により,同形置換の量を評価することも、できる。
【0022】
本発明のオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、上記の特性1に加えて、さらに、次の特性3を有することが好ましい。
特性3:イオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートの同形置換率が22%以上であること。
【0023】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、イオン交換性層状珪酸塩を構成する八面体シートの同形置換率は、22%以上であることが好ましい。同形置換率は、22〜77%が好ましく、22.5〜66%がより好ましく、22.7〜50%がさらに好ましく、22.8〜44%が特に好ましい。さらに、23〜37%がより好ましく、さらには23〜31%が特に好ましい。
【0024】
本発明のオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、上記の特性1に加えて、さらに、次の特性2を有することが好ましい。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、特性2として、比表面積が150m/g以上であることが好ましい。
【0025】
比表面積は、活性点前駆体がイオン交換性層状珪酸塩に担持されて、活性点として重合反応が進行していくために、必要な空間的な広さを表しており、大きい方が好ましい。比表面積が大きくなると、活性点前駆体が十分担持され、また、重合反応が進行するための反応面が十分確保できるようになるために、さらに活性が向上する。一方、比表面積が大きすぎると、粒子が脆くなって、形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまうおそれがあり、さらに、重合中に触媒が破砕や崩壊すると、微粉や塊の発生を引き起こし、プラントの運転安定性の低下につながるおそれがある。
比表面積の下限は、好ましくは150m/g、より好ましくは200m/g、さらに好ましくは280m/g、よりさらに好ましくは325m/g、特に好ましくは330m/g、もっとも好ましくは350m/gである。比表面積の上限は、特に定めは無いが、好ましくは600m/g、より好ましくは580m/g、さらに好ましくは550m/g、特に好ましくは500m/gである。比表面積は、上限及び下限としては、前記の好ましい下限値と好ましい上限値とを任意に組み合わせた範囲を例示することができる。例えば、325〜550m/g、330〜500m/g、350〜500m/g、200〜600m/g、350〜580m/g、280〜550m/g、325〜550m/gである。
【0026】
イオン交換性層状珪酸塩の天然物は、比表面積が0.1〜140m/g、好ましくは0.1〜90m/g程度であり、比較的小さいが、後述する化学処理により、増大させることが可能である。
ここで比表面積は、窒素吸着法によって求めた。測定方法について、以下に示す。
固体への気体の吸着量は、温度一定の場合、固体と気体が決まれば、吸着相互作用のポテンシャルは、ほぼ一定であると考えることができるので、吸着量は、圧力のみの関数となり、これを一般的に吸着等温線と呼ぶ。
本発明においては、最も一般的に使用されている窒素を吸着ガスとして使用し、液体窒素温度下(温度77K)で、相対圧P/P0(P0は、大気圧を示す)が0.025〜0.995の範囲で吸着等温線を測定した。得られた吸着等温線を用いて、BET多点法解析を実施しすることにより求めた。一般的に、相対圧P/P0(P0は大気圧)=0.05〜0.35付近で、良い直線が得られる範囲で解析され、BETプロットを確認しながら、解析範囲を決めた。
【0027】
本発明のオレフィン重合用触媒成分に用いるイオン交換性層状珪酸塩は、さらに、次の特性4を有することが好ましい。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、特性4として、イオン交換性層状珪酸塩の八面体シートに含まれるMgの量とAlの量とのモル比(Mg/Al)は、0.28以上が好ましい。0.28〜3.5がより好ましく、0.285〜2.5がさらに好ましく、0.287〜1.5がよりさらに好ましく、0.29〜1が特に好ましく、0.292〜0.8がより特に好ましく、0.292〜0.5がもっとも好ましい。
上記のように、3価のアルミニウムが2価のマグネシウムに置換されている場合、負の層電荷を有していることになる。さらに、この負の層電荷が、メタロセン触媒の性能(活性)に対して、メタロセン触媒の活性点前駆体であるメタロセン遷移金属化合物(錯体)のカチオン種を活性点として安定して存在させるためのカウンターアニオンとして作用し、高活性化の効果があると、本発明者らは、考えている。
【0028】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、特性5として、窒素吸着法により測定したメソ孔細孔容積の総和(全体)が0.30cc/g以上であることが好ましく、0.35cc/g以上であることがより好ましく、0.40cc/g以上であることがさらに好ましく、0.45cc/g以上であることが特に好ましい。また、最大量としては、1cc/g以下にあることが好ましく、0.8cc/g以下にあることがより好ましく、0.6cc/g以下であることがさらに好ましい。
また、直径が2〜10nmの範囲にある細孔の細孔容積の総和は、0.15cc/g以上であることが好ましく、0.20cc/g以上であることがより好ましく、0.25cc/g以上であることがさらに好ましい。これ以下の細孔量となった場合、活性は低下する恐れがあると、考えられる。一方、最大量としては、1cc/g以下であることが好ましく、0.8cc/g以下にあることがより好ましく、0.6cc/g以下にあることがさらに好ましく、0.5cc/g以下であることが特に好ましい。これ以上の細孔量となった場合、微粉の発生やパウダー性状の悪化を引き起こす可能性が考えられる。
本発明で規定する範囲の細孔容積の算出は、相対圧を増加させた場合に得られる吸着等温線を用いる。細孔分布の計算方法としては、BJH解析法がもっとも一般的であり、本発明では、この方法を採用している。本発明においては、メソ孔細孔とは、IUPACの定義にしたがい、細孔の直径が2〜50nmの細孔をいう。細孔分布曲線を使って、直径が2〜10nmの細孔および直径が2〜50nmの細孔について、細孔容積の総和を求めた。
【0029】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、特性6として、酸点を有することが好ましい。好ましい酸点の量の下限は、イオン交換性層状珪酸塩1gにつき、pKa<−8.2以下の強酸点が30μmol、より好ましくは50μmol、さらに好ましくは100μmol、特に好ましくは150μmolである。酸点の量は、特開2000−158707号公報の記載の方法に従い、測定する。
【0030】
上記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩は、以下の方法によって、製造することができる。
本発明に使用されるイオン交換性層状珪酸塩の原料は、天然のものに限らず、人工合成物であっても良い。当該、珪酸塩の具体例としては、例えば、「粘土鉱物学」(白水春雄著、朝倉書店、1995年)に記載されている次のようなものが挙げられる。
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、ナクライト等のカオリン族、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、アメサイト、Alリザーダイト等の蛇紋石類縁鉱物等。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、緑泥石群等。
【0031】
これらは、混合層を形成していても良い。また、多くのイオン交換性層状珪酸塩は、天然には、粘土鉱物の主成分として産出されるため、夾雑物(石英やクリストバライト等が挙げられる。)が含まれることが多いが、それらを含んでいても良い。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、2:1型構造を有する層状珪酸塩が好ましい。より好ましくは、スメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、モンモリロナイトである。
【0032】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、高い同形置換量により層電荷を多く有している層状珪酸であることが好ましい。イオン交換性層状珪酸塩の同形置換とは、前記粘土ハンドブック(日本粘土学会、技法堂出版、2009年発行、第3版)P124に記載されているように、次のことを言う。
イオン交換性層状珪酸塩も含んだ広義の層状珪酸塩鉱物は、金属イオン(陽イオン)に、O2−またはOHが配位してできる八面体シート、および、ケイ素イオン(Si4+)に、O2−が配位してできる四面体シートから構成されている。八面体シートを構成する金属の種類としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタンなどであり、その含有量は、イオン交換性層状珪酸塩鉱物全量に対して、例えば5〜30重量%である。
イオン交換性層状珪酸塩の中で2:1型鉱物では、2枚の四面体シートが1枚の八面体シートの両側を挟んだ構造により、単位珪酸塩層を構成している。また、1:1鉱物では、四面体シートの片面と八面体シートの片面が結合した構造により単位珪酸塩層を構成している。
2:1型鉱物において、四面体シートの陽イオンがSi4+のみ、八面体シートの陽イオンがAl3+または、Mg2+のみのときは、それぞれのシートは、電気的に中性であり、電荷を持たない。しかし、配位するO2−またはOHの個数は不変のまま、四面体シートや八面体シートの陽イオンは、価数の異なる他の陽イオンに置換されていることが一般的であり、これを同形置換という。
【0033】
この同形置換によって、珪酸塩層は、正または、主に負の電荷を生じており、これを層電荷という。通常、この層電荷を中和するために、イオン交換性層状珪酸塩は、交換可能な層間イオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有されるイオン)を有しており、種類としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム等の周期表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期表第2族のアルカリ土類金属等がある。
【0034】
既述の粘土ハンドブック(P125)に記載の通り、イオン交換性層状珪酸塩の同形置換の量は、いったん鉱物の骨格ができ上がった後は、特殊な場合を除いて、変化することはない。そのため、本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、原料として使用するイオン交換性層状珪酸塩も、高い同形置換率であることが好ましい。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩の原料であるイオン交換性層状珪酸塩の同形置換率は22%以上であることが好ましい。また、22〜77%が好ましく、23〜66%がより好ましく、23〜60%がさらに好ましく、24〜50%が特に好ましく、24〜44%がさらにより好ましく、24〜40%がさらに特に好ましく、25〜35%がもっとも好ましい。
原料として、このようなイオン交換性層状珪酸塩を使用することで、上述の特性1を満足するイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。オレフィン重合用触媒成分の原料として、従来開示されていた層状珪酸塩の同形置換率は、16〜21%であった。
【0035】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩として、八面体シートのAl3+がMg2+やFe2+に同形置換したもの、Mg2+がLiに同形置換したものなどを、例示することができる。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、八面体シートで、Al3+がMg2+に置換されている割合、アルミニウムとマグネシウムのモル比であるMg/Alが0.285〜3.5の原料を使用することが好ましい。Mg/Alモル比は、0.29〜3であることがより好ましく、0.295〜2であることがさらに好ましく、0.3〜1.5であることが特に好ましく、0.31〜1であることが非常に好ましい。さらに、Mg/Alモル比は、0.315〜0.8、0.32〜0.65、0.325〜0.55がより好ましい。
【0036】
原料として、このようなイオン交換性層状珪酸塩を使用することで、上述の特性1、3、4を満足するイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。
オレフィン重合用触媒成分の原料として、従来開示されていた層状珪酸塩のMg/Al比は、0.25〜0.27程度であった。
【0037】
本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩は、イオン交換性層状珪酸塩に化学処理を行うことによっても、製造できる。
化学処理には、イオン交換性層状珪酸塩を酸類で処理する酸処理、アルカリ類で処理するアルカリ処理、無機塩類で処理する塩類処理など様々な処理がある。
化学処理は、単独でも行って良いし、組み合わせても、また、同時に行っても良い。好ましくは、酸類による酸処理を行った後に、その他の化学処理を行うことが良い。本発明のイオン交換性層状珪酸塩においては、酸類による化学処理をされていることが好ましく、酸類の中でも、無機酸類によって処理されていることがより好ましい。
【0038】
イオン交換性層状珪酸塩の化学処理において、酸類で処理する酸処理について、詳しく説明すると、次のようなことが起こる。
イオン交換性層状珪酸塩を酸で処理すると、表面の不純物が酸洗浄されることのほかに、層間イオンが溶出し、水素陽イオンと交換が起こり、次いで、八面体シートを構成する陽イオンが溶出していくようになる。この溶出の過程において、酸点、細孔構造、比表面積等の特性が変化する。
そのため、本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、酸類による処理を行うことにより、達成できる。溶出の程度は、酸の濃度、処理時間、酸の種類によって異なるが、マグネシウムを多く含むものが一般に大きく、次いで鉄の多いもの、アルミニウムの多いものの順になる。また、結晶度が高く粒子の大きいものほど、溶出性が低いが、これは、酸が結晶層間や結晶構造内に侵入することと関係している。
【0039】
また、溶出については、結晶格子の全ての八面体シートにミクロな空隙を有する均一な構造が生成すると考えられる均一溶出と、ある特定の部位の金属陽イオンが溶出して生成した珪酸と層状珪酸塩の複合体が生成する不均一溶出の機構が、考えられる。
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、高い同形置換率を有する原料を用いることで、層電荷のマイナス性が高いこと以外に、それぞれのシートにおいて、公知のイオン交換性層状珪酸塩よりも、シート同士で均一溶出が発生していると、考えている。
【0040】
酸処理の条件として、温度は、40〜102℃がよく、好ましくは50〜100℃である。さらに好ましくは、60〜95℃である。あまり温度を低下させると、極端に陽イオンの溶出速度が低下し、製造効率が低下する。一方、温度を上げ過ぎると、操作上の安全性が低下する。
また、酸処理時の酸濃度(反応系全体重量に対する酸の重量百分率)は、3〜30重量%がよく、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは7〜20重量%である。濃度が低くなると、陽イオンの溶出速度が低下し、製造効率が低下する。
また、イオン交換性層状珪酸塩の濃度は、3〜50重量%の範囲で調製できる。好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。濃度が低くなると、工業的に生産する場合は大きな設備が必要となってしまう。一方、濃度が高い場合には、スラリーの粘度が上昇してしまい、均一な攪拌混合が困難になり、やはり製造効率が低下する。
【0041】
酸処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
使用する酸化合物は、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
化学処理、特に酸処理によって八面体シートを構成する金属陽イオンを、化学処理前の含有量に対して、10〜65%溶出させることが好ましく、より好ましくは15〜60%、さらに好ましくは17〜55%、特に好ましくは20〜50%溶出させる。溶出割合が小さいと、十分な細孔量が確保できず、表面積も小さくなり、本発明のイオン交換性層状珪酸塩は得られない。
ここで、溶出する金属陽イオンの割合(モル%)は、例えば、金属陽イオンがアルミニウムの場合では、以下の式で、表される。
[化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)−化学処理後のアルミニウム/珪素(モル比)]÷化学処理前のアルミニウム/珪素(モル比)×100
【0042】
上記化学処理を実施した後に、反応溶液中の反応物もしくは未反応物が残存することで、活性低下を招く可能性があるため、洗浄することが好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。
洗浄率としては、1/5〜1/1000、1/10〜1/100が好ましい。洗浄および脱水後は、乾燥を行う。乾燥は、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊を起こさないように行うことが好ましく、一般的には、乾燥温度は100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能であり、特に好ましくは150〜300℃であり、乾燥温度が800℃以下で、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊が起こらないように、実施することが好ましい。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては、特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0043】
さらに、一般に、イオン交換性層状珪酸塩には、吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して使用するのが好ましい。水の除去には、通常、加熱処理が用いられる。その方法は、特に制限されないが、付着水、層間水が残存しない、また、構造破壊を生じないような条件を選ぶことが好ましい。
加熱時間は、0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上である。その際、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが好ましい。
以上、本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩の製造方法を述べてきたが、本発明の特性が得られる製造方法は、上記に限らず、製造することが可能である。
本発明のオレフィン重合用触媒成分であるイオン交換性層状珪酸塩の好ましい製造方法の一態様を示すと、比表面積が0.1〜140m/gで、かつアルミニウムとマグネシウムのモル比(Mg/Al)が0.285〜3.5であるイオン交換性層状珪酸塩の八面体シートの主な金属陽イオンを10〜65モル%脱離させる処理工程を含む方法である。
【0044】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、造粒することが可能であり、造粒して造粒体にて用いることが好ましい。造粒方法としては、特に制限されないが、好ましい造粒体の製造方法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒、流動層造粒、噴流層造粒、液中造粒、乳化造粒等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒が挙げられる。
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。
噴霧造粒の際、原料スラリー液中におけるイオン交換性層状珪酸塩の濃度を、0.1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは4〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%にすることで、球状の造粒体が得られる。上記濃度の上限を超えると、球状粒子が得られず、また、上記濃度の下限を下回ると、造粒体の平均粒径が小さくなりすぎる。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0045】
また、造粒の際に、有機物、無機塩等の各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば、砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
【0046】
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したものを用いてもよい。
また、造粒したイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、5μm以上、300μm以下であり、球状であることが好ましい。より好ましくは5μm以上、250μn以下であり、さらに好ましくは、5μm以上、200μm以下である。5μm未満の微粒子が多く存在すると、反応器への付着等が起こりやすく、ポリマー同士の凝集、重合プロセスによってはショートパスあるいは長期滞留の要因となってしまい好ましくない。300μm以上の粗粒子については、閉塞が起こりやすい等の問題が生じるために好ましくない。これらを満たす平均粒径とするために、あるいは平均粒径に対して極度に小さい、または大きい粒径を示す粒子が存在する場合には、分級、分別等により粒径を制御してもよい。
【0047】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、オレフィン重合用触媒成分として、好適に用いられる。オレフィン重合用触媒とは、一般的に、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
本発明では、好適には成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて、オレフィン重合用触媒を調製することがきる。
成分(a):周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):上述のイオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0048】
(1)成分(a)
本発明で使用する成分(a)の周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物は、共役五員環配位子を少なくとも一個有するメタロセン化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物である。
【0049】
【化1】
【0050】
上記一般式(1)〜(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子酸素原子、珪素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子を示し、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びX’は、同一でも異なっていてもよい。)を示す。
【0051】
AおよびA’としては、例えば、シクロペンタジエニル基を挙げることができる。シクロペンタジエニル基は、水素原子を五個有するもの[C−]であってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。
この置換基の例としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときに、その内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。後者の例としては、2個の置換基がそれぞれω−端で結合して、該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、即ちインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、および縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基が挙げられる。
AおよびA’で示される共役五員環配位子の好ましい具体的例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基等が挙げられる。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基、またはアズレニル基である。
【0052】
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば、−Si(R)(R)(R)で示される珪素含有炭化水素基、−P(R)(R)で示されるリン含有炭化水素基、または−B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を示す。
【0053】
さらに、シクロペンタジエニル基上の置換基として、少なくとも1つの第15〜16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有しても良い。この場合、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想から、第15〜16族元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であるメタロセン錯体がさらに好ましい。
第15〜16族元素の配位子上の位置は、特に制限は無いが、2位の置換基上に有することが好ましい。さらに好ましくは2位の置換基が、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式であることが好ましい。また、好ましくはケイ素もしくはハロゲンを含んでもよい炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基は、5員環構造が好ましく、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子、硫黄原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0054】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基類
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基類
【0055】
さらに、具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al、(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類およびシリレン基類である。
【0056】
また、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。好ましい具体例としては、酸素原子、イオウ原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0057】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、および炭素数1〜12のアミノ基が特に好ましい。
【0058】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1−メチル−3−トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1−メチル−3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2−メチル−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0059】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1−[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1−[2−メチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−7−フルオロ−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0060】
(21)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン−1,2−ビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3−(2−フリル)−2,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2−(2−(5−メチル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2−(2−(5−トリメチルシリル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2−(2−チエニル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2−(2−(5−メチル)フリル)−4−フェニルインデニル][2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0061】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2−メチルインデニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3,6−ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、
(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0062】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2−メチルインデニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウムはハフニウムまたはチタニウムに、チタニウムは、ハフニウムまたはジルコニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0063】
本発明で使用する遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましく、さらに、置換基に縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基を有する化合物が特に好ましい。
なお、メタロセン化合物は、一種類を用いることも、二種類以上を併用して用いることもできる。
二種類以上を併用して用いる場合は、上記一般式(1)〜(4)のうちいずれか一つの一般式に含まれる化合物群の中から二種類以上を選ぶことができ、一つの一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる一種または二種以上と他の一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる一種または二種以上とを選ぶこともできる。
例えば、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物であり、オレフィンマクロマーを生成する重合用触媒を形成するメタロセン化合物とは、70℃でプロピレン単独重合を行った場合に、末端ビニル率が0.5以上を満たすプロピレン単独重合体を形成するメタロセン化合物(a−1)と、一般式(4)で表されるメタロセン化合物(a−2)との併用をあげることができる。成分(a−1)に対する成分(a−2)のモル比(a−1)/(a−2)は、1.0〜99.0とすることができる。
【0064】
(2)成分(c)
成分(c)は、有機アルミニウム化合物である。
本発明で成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR3−n で表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の整数を表し、mは1または2を表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0065】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0066】
(3)オレフィン重合用触媒の調製
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて、触媒とする。
その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。この接触は、モノマーの不存在化で行っても、モノマーの存在下で行ってもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に、成分(c)を接触する。
(iii)成分(b)と成分(c)を接触させた後に、成分(a)を接触する。
(iv)成分(a)と成分(c)を接触させた後に、成分(b)を接触する。
(v)三成分を同時に接触させる。
【0067】
好ましい接触方法は、成分(b)と成分(c)を接触させた後、未反応の成分(c)を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分(c)を成分(b)に接触させ、その後、成分(a)を接触させる方法である。この場合のAl/遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは2〜100、さらに好ましくは4〜50の範囲である。
【0068】
成分(b)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(a)が存在していても良い)温度は、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この範囲より低い場合は、反応が遅く、また、高い場合は、副反応が進行するという欠点がある。
また、成分(a)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(b)が存在していても良い)場合には、有機溶媒を溶媒として存在させることが好ましい。この場合の成分(a)の有機溶媒中での濃度は、高い方が好ましい。好ましい成分(a)の有機溶媒中での濃度の下限は、好ましくは3mmol/L、より好ましくは4mmol/L、さらに好ましくは6mmol/Lである。下限未満では、反応が遅く、十分に反応が進行しないおそれがある。
成分(b)1gにつき、成分(a)が0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。
【0069】
また、本発明の触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0070】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が、成分(b)1gに対し、好ましくは0.01〜100g、さらに好ましくは0.1〜50gである。
また、予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、特に好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃である。この範囲を下回ると、反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、一方、上回ると、予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
【0071】
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で実施することもでき、かつこれが好ましい。予備重合時の触媒の濃度には、特に制限は無いが、好ましくは30g/L以上、より好ましくは40g/L以上、特に好ましくは45g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0072】
予備重合後の触媒は、そのまま使用してもよいし、乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いてもよいし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし、静置させてもよい。
【0073】
3.オレフィン(共)重合体の製造方法
前記成分(a)、成分(b)、及び必要に応じて用いられる成分(c)からなるオレフィン重合用触媒を用いて行う重合は、1種類のオレフィンを重合、あるいは2種類以上のオレフィンを共重合させることにより、行われる。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0074】
重合し得るオレフィンとしては、炭素数2〜20程度のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7−メチル−1,7−オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンであり、さらに好ましくはエチレン、プロピレンである。共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを1種、或いは2種以上選択して用いることができる。好ましくは主成分がプロピレンである。
【0075】
重合様式は、触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いずモノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜2000kg/cmG、好ましくは0〜60kg/cmGが適当である。
本発明の製造方法によって得られるオレフィン(共)重合体としては、特に限定されないが、以下に例を挙げるとすれば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン/エチレン−α−オレフィン系共重合体などが挙げられる。
【実施例】
【0076】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、物性測定に使用した分析機器および測定方法は、以下の通りである。
【0077】
(各種物性測定法)
(1)イオン交換性層状珪酸塩の組成分析:
JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量した。
(2)細孔測定および比表面積測定:
窒素吸着法による細孔分布および比表面積を測定した。液体窒素温度下で吸着等温線を測定した。得られた吸着等温線を用いてBET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。
また、吸着等温線を用いて、BJH法解析により、直径が2〜10nmの細孔の細孔容積の総和とメソ細孔分布を求めた。
装置:カンタークローム社製オートソーブ3B
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3MPa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0078】
(3)粒径の測定:
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.3、形状係数1.0の条件で測定した。
(4)MFR(メルトマスフローレート):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して、測定した。
【0079】
[実施例1]
1.造粒モンモリロナイト
イオン交換性層状珪酸塩として、モンモリロナイトの造粒品である水澤化学工業社製「ベンクレイKK」(主成分は2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を使用した。
この造粒モンモリロナイトは、平均粒径11.4μm、化学組成(重量%):Al=9.72、Si=31.72、Fe=1.65、Mg=3.11、Na=3.48であった。モル比では、Al/Si=0.319、Mg/Si=0.113、Fe/Si=0.026、Mg/Al=0.355であった。比表面積は、65m/gであった。また、八面体シートを構成する主な金属陽イオンは、アルミニウムであった。
【0080】
2.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた0.5Lフラスコに、蒸留水397.7gを投入し、96%硫酸117.2gを滴下した。内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、さらに、上記1の造粒モンモリロナイトを70g添加後撹拌した。
その後90℃を保ちながら210分反応させた。この反応溶液を0.2Lの純水に注ぐことで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後0.7Lの純水で3回洗浄した。
この化学処理において、モンモリロナイトの構造は、変化せずに2:1型層構造を維持していた。処理後のモンモリロナイトの同形置換率は、23%、組成(重量%)は、Al=6.67、Si=37.9、Mg=1.83、Naは、検出下限以下の数値であり、モル比では、Al/Si=0.183、Mg/Al=0.304であった。硫酸処理前のAlに対して、硫酸処理後のAlは、42.6%溶出した。比表面積は376m/gであった。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、55g秤取り、次工程に用いた。このモンモリロナイトは、1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物25gを純水347mlに溶解した水溶液に加えて、61℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、0.5Lの純水で3回洗浄し、回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。
その結果、44.9gの化学処理モンモリロナイトを得た。この化学処理モンモリロナイトは、Li含量が0.42重量%であり、層間にLiを含むものであったことから、酸類および塩類処理を行っても、イオン交換性を維持していることを確認できた。その他の組成および比表面積は、この化学処理の前後で変化しなかった。
このようにして得られた化学処理モンモリロナイトは、目開き53μmの篩にて篩い分けし粗大粒子を取り除いたところ、篩通過分として平均粒径が13.9μmの粒子を42.7g得た。
【0081】
3.触媒調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを容積200mlのフラスコに入れ、200℃でおよそ3時間(突沸がおさまってから2時間以上)減圧乾燥した。次に、内容積1Lのフラスコに上記乾燥モンモリロナイト10gを秤量し、ヘプタン65ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液35ml(25.3mmol、濃度143.4g/l)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後に、スラリー量を100mlに調製した。これに、ヘプタン85mlとトリノルマルオクチルアルミニウム(TnOA)のヘプタン溶液1.53ml(濃度143.6mg/ml、599μmol)を加え、室温で15分撹拌した。
ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で調製した、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライド(合成は、特開平10−110136号公報の実施例に従って実施した。)125mg(153.8μmol)のヘプタン(30mL)溶液を加えて、60℃で60分間撹拌した。反応終了後、ヘプタンを追加して333mlに調製した。
窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに、上記で調製したモンモリロナイト/メタロセン錯体を導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度40℃を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持して予備重合を行った。
予備重合終了後、残存プロピレンをパージして、予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を150ml抜き出した。続いて、TiBAのヘプタン溶液4.14ml(2.96mmol)を室温にて加え、その後、40℃にて1時間減圧乾燥した。これにより、触媒1g当たりポリプロピレン2.11g含む予備重合触媒が31.48g得られた。
【0082】
4.プロピレン/エチレン共重合
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、TiBAのヘプタン溶液2.8ml(2.02mmol)を加え、エチレンを16.5g、水素45ml、液体プロピレン750mlを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。予備重合触媒をヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)15mgを圧入し重合を開始した。内温を70℃に維持したまま、1時間重合を継続した。その後、エタノール5mlを加え重合反応を停止させた。残ガスをパージしてポリマーを得た。得られたポリマーを90℃で1時間乾燥した。
その結果、349.6gのポリマーが得られた。触媒活性は、23,300g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.35g/10分であった。結果を表1に示す。
【0083】
[実施例2]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
実施例1で使用した造粒モンモリロナイトを使用し、硫酸と150分反応させた以外は、実施例1と同様の硫酸処理を行った。
ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は24%、組成(重量%)は、Al=7.79、Si=36.51、Mg=2.20、Li=0.50であり、モル比では、Al/Si=0.222、Mg/Al=0.313であった。硫酸処理前後でAlは30.4%溶出した。比表面積は348m/gであった。
実施例1と同様に、硫酸リチウム水和物処理を行った。硫酸リチウム水和物処理前後で表面積および細孔分布は、変化していなかった。以降の触媒調製には、実施例1同様に、目開き53μmの篩で篩分けして、粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0084】
2.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを126mg(155μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.15g含む予備重合触媒が31.90g得られた。
【0085】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、20,600g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.40g/10分であった。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例3]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
実施例1で使用した造粒モンモリロナイトを使用し、硫酸と300分反応させた以外は、実施例1と同様の硫酸処理を行った。
ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は23%、組成(重量%)は、Al=4.94、Si=40.45、Mg=1.30、Li=0.28であり、モル比では、Al/Si=0.127、Mg/Al=0.292であり、硫酸処理前後でAlは60.2%溶出した。比表面積は406m/gであった。
実施例1と同様に、硫酸リチウム水和物処理を行った。硫酸リチウム水和物処理前後で表面積および細孔分布は変化していなかった。以降の触媒調製には、実施例1同様に、目開き53μmの篩で篩分けして粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0087】
2.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを120mg(147.6μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.16g含む予備重合触媒が31.98g得られた。
【0088】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、20,900g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.45g/10分であった。結果を表1に示す。
【0089】
[比較例1]
1.造粒モンモリロナイト
イオン交換性層状珪酸塩として、モンモリロナイトの造粒品である水澤化学工業社製「ベンクレイSL」(主成分は2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を使用した。
この造粒モンモリロナイトは、平均粒径:17.5μm、組成(重量%):Al=8.87、Si=33.66、Fe=11.99、Mg=2.04、Na=2.55であり、モル比では、Al/Si=0.274、Mg/Si=0.070、Mg/Al=0.255であった。比表面積は93m/gであった。また、八面体シートを構成する主な金属陽イオンは、アルミニウムであった。
【0090】
2.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
蒸留水を226.4g、硫酸を66.7g、上記の造粒モンモリロナイトを40.1g使用し、硫酸と60分反応させた以外は、実施例1と同様の硫酸処理を行った。ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は、15%、組成(重量%)は、Al=8.18、Si=36.78、Mg=1.30であり、モル比では、Al/Si=0.232、Mg/Al=0.176であり、硫酸処理前後でAlは15.3%溶出した。比表面積は214m/gであった。
実施例1と同様に、硫酸リチウム水和物処理を行った。硫酸リチウム水和物処理前後で表面積および細孔分布は、変化していなかった。以降の触媒調製には、実施例1同様に、目開き53μmの篩で篩分けして粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0091】
3.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを122mg(150μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン1.87g含む予備重合触媒が29.05g得られた。
【0092】
4.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、8,000g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.92g/10分であった。結果を表1に示す。
【0093】
[比較例2]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
硫酸と240分反応させた以外は、比較例1と同様の造粒モンモリロナイトを使用して、同様の硫酸処理を行った。ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は、14%、組成(重量%)は、Al=6.60、Si=38.89、Mg=0.98であり、モル比では、Al/Si=0.177、Mg/Al=0.165であった。硫酸処理前後でAlは35.4%溶出した。比表面積は259m/gであった。
実施例1と同様に、硫酸リチウム水和物処理を行った。硫酸リチウム水和物処理前後で表面積および細孔分布は、変化していなかった。以降の触媒調製には、実施例1同様に、目開き53μmの篩で篩分けして粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0094】
2.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを123mg(151.3μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.18g含む予備重合触媒が32.19g得られた。
【0095】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、15,000g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.42g/10分であった。結果を表1に示す。
【0096】
[比較例3]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
蒸留水を660g、硫酸を109g、さらに硫酸マグネシウム7水和物を133g添加し、比較例1で用いた造粒モンモリロナイトを100g、反応温度を90℃、23.5時間反応させた以外は、比較例1と同様の硫酸処理を行った。
ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は、18%、組成(重量%)は、Al=3.50、Si=39.60、Mg=0.70であり、モル比ではAl/Si=0.092、Mg/Al=0.222であった。硫酸処理前後でAlは、66.4%溶出した。比表面積は353m/gであった。以降、硫酸リチウム水和物での処理は行わず、目開き53μmの篩で篩分けして、粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0097】
2.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10.2g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを122mg(150.2μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン1.17g含む予備重合触媒が22.40g得られた。
【0098】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、10,000g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.45g/10分であった。結果を表1に示す。
【0099】
[比較例4]
1.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
処理濃度を変えるために硫酸マグネシウム7水和物を67g、硫酸を55g使用した以外は、比較例3と同様の硫酸処理を行った。ここから得られた化学処理モンモリロナイトの同形置換率は、21%、組成(重量%)は、Al=6.50、Si=34.50、Mg=1.60、モル比では、Al/Si=0.196、Mg/Al=0.273であった。硫酸処理前後でAlは、28.5%溶出した。比表面積は301m/gであった。以降、硫酸リチウム水和物での処理は行わず、目開き53μmの篩で篩分けして、粗大粒子を取り除き、篩通過分を使用した。
【0100】
2.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを10g、(r)−[1、1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライドを123mg(151.3μmol)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン0.50g含む予備重合触媒が15.15g得られた。
【0101】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、18,000g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.50g/10分であった。結果を表1に示す。
【0102】
[比較例5]
1.造粒モンモリロナイト
イオン交換性層状珪酸塩として、モンモリロナイトの造粒品である水澤化学工業社製「ベンクレイSL」(主成分は2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイト)を使用した。
この造粒モンモリロナイトは、平均粒径:14.4μm、組成(重量%):Al=8.83、Si=33.07、Fe=2.11、Mg=2.12、Na=2.38であり、モル比では、Al/Si=0.278、Mg/Si=0.074、Mg/Al=0.266であった。比表面積は113m/gであった。また、八面体シートを構成する主な金属陽イオンはアルミニウムであった。
【0103】
2.イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
特開2001−354715号公報に記載の実施例1について、スケールを変えてトレースした。
蒸留水306g、硫酸マグネシウム25.8g、硫酸41.8gで調製した硫酸マグネシウムの硫酸水溶液を90℃まで昇温し、上記の市販の造粒モンモリロナイ40gを添加し、そのまま90℃で420分反応させた。これを脱塩水にて濾過・洗浄した後、得られた固体ケーキを110℃で10時間乾燥した。得られた乾燥モンモリロナイト中の塊状物を目開き75μmの篩によって取り除き、篩を通過した粒子を23g得た。
次に、純水156gに市販の硫酸チタニウムの硫酸水溶液(和光純薬(株)社製30%硫酸チタン(IV)溶液、硫酸13%含有)110gを溶解させた後、これに上記で得られたマグネシウム塩処理モンモリロナイト粒子23gを分散させ、90℃で180分反応させた。これを脱塩水にてpH3まで濾過・洗浄した後、得られた含水固体ケーキを110℃で10時間予備乾燥して、全て流れ性の良い粒子状のチタニウム塩処理モンモリロナイト22.4gを得た。この化学処理モンモリロナイトの同形置換率は、16%、組成(重量%)は、Al=6.48、Mg=1.08であり、モル比ではMg/Al=0.185であり、硫酸処理前後でAlは、26.6%溶出した。比表面積は263m/gであった。
【0104】
3.触媒調製
上記で調製した化学処理モンモリロナイトを使用する以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒1g当たりポリプロピレン2.18g含む予備重合触媒が得られた。
【0105】
3.プロピレン/エチレン共重合
上記触媒を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、触媒活性は、18,000g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは0.40g/10分であった。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例4]
1.化学処理イオン交換性層状珪酸塩の調製
実施例1と同様の操作で、化学処理モンモリロナイトを得た。
【0107】
2.触媒調製
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記で調製した化学処理モンモリロナイト10gを入れ、ヘプタン(66mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を34.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を50mLとした。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、触媒成分(a−1)としてrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(105μmol)をトルエン(21mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、触媒成分(a−2)としてrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(45μmol)をトルエン(9mL)に溶解した(溶液2)。
先ほどの化学処理モンモリロナイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.6mL)を加えた後、上記溶液1(21mL)を加えて20分間室温で撹拌した。
その後、更にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.25mL)を加えた後上記溶液2加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを5g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒31.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.10であった。
【0108】
3.プロピレン単独重合
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、TiBAのヘプタン溶液2.8ml(2.02mmol)を加え、水素95ml、液体プロピレン750mlを導入し、70℃に昇温し、その温度を維持した。予備重合触媒をヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)50mgを圧入し、重合を開始した。内温を70℃に維持したまま、1時間重合を継続した。その後、エタノール5mlを加え重合反応を停止させた。残ガスをパージしてポリマーを得た。得られたポリマーを90℃で1時間乾燥した。
その結果、260gのポリマーが得られた。触媒活性は、5,200g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは1.2g/10分であった。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例6]
比較例1と同様の操作で、調製した化学処理モンモリロナイトを用いること以外は、実施例4と同様に、触媒調製およびプロピレン単独重合を実施した。その結果、130gのポリマーが得られた。触媒活性は、2,600g−PP/g−触媒/hrであった。MFRは3.0g/10分であった。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1から、実施例1〜3の触媒では、その触媒に含まれるイオン交換性層状珪酸塩からなる触媒成分は、同形置換率が22%以上であり、同形置換率が22%未満のイオン交換性層状珪酸塩を触媒成分とした比較例1〜5の触媒と比べて、触媒活性が高いことがわかる。同様に、実施例4の触媒は、その触媒に含まれるイオン交換性層状珪酸塩からなる触媒成分は、同形置換率が22%以上であり、同形置換率が22%未満のイオン交換性層状珪酸塩を触媒成分とした比較例6の触媒と比べて、プロピレンホモ重合でも触媒活性が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の特定のイオン交換性層状珪酸塩からなるオレフィン重合用触媒成分、およびそれを用いたオレフィン重合用触媒を使用することで、重合は、高活性に進行するため、効率よくポリオレフィンを製造することが可能となり、産業上、利用可能性が高い。