(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板部と前記基板部の両端から前記基板部と直交する方向に平行に延びる2つの側板部とで断面コ字状に形成された本体と、前記基板部及び前記2つの側板部と直交する状態で前記本体と一体に形成されたリブとを備える三次元繊維構造体であって、
前記本体は、経糸が前記基板部と前記側板部との交線の延びる方向に延びる多層織りで構成され、
前記リブは、前記2つの側板部間で真っ直ぐに延びる経糸及び緯糸のいずれか一方と、前記経糸及び緯糸のいずれか一方と直交する状態で真っ直ぐに延びる緯糸又は経糸とで構成されていることを特徴とする三次元繊維構造体。
基板部と、前記基板部の両端から前記基板部と直交する方向に平行に延びる2つの側板部とで断面コ字状に形成された本体と、前記基板部及び前記2つの側板部と直交する状態で前記本体と一体に形成されたリブとを備える三次元繊維構造体の製造方法であって、
前記基板部及び前記2つの側板部を形成するための経糸を、経糸ビームと経糸支持部材との間に前記本体の断面形状に対応した状態で張設し、
前記リブを形成するための経糸を、補助経糸用ビームと前記経糸支持部材との間に張設し、
前記リブを形成するための経糸を、前記リブを形成しない箇所と対応する状態では前記基板部及び前記2つの側板部を形成するための経糸と同じ開口量となる状態で開口し、前記リブを形成する箇所と対応する状態では前記リブを形成する経糸が形成すべきリブを構成する緯糸層全層と直交する距離だけ往復移動するように開口して、隣り合う経糸層間に複数の緯糸を挿入することを特徴とする三次元繊維構造体の製造方法。
前記リブが接近した状態で2つ形成された箇所が複数箇所、形成すべき箱に対応する間隔をおいて設けられるように前記リブを形成するための経糸を開口して、中間体としての三次元繊維構造体を請求項4に記載の三次元繊維構造体の製造方法により製造した後、前記中間体を前記リブが接近した状態で2つ形成された箇所において切断して、有底箱状の三次元繊維構造体を製造する三次元繊維構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、ビーム構造体は、断面形状がコ字状のビーム形主構造体61と補助部材62とを別々に製造した後、両者を接合して製造される。そのため、製造工程が複雑になる。特に、補助部材62は、箱型形状の炭素繊維織物材を複数枚積層し、炭素繊維糸を用いて板厚方向にステッチング処理することで互いにずれないように結合して形成された箱型のドライプリフォームを中央部で切断して形成されるため、その製造に手間が掛かる。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造工程が単純で、三次元繊維構造体が大型であっても連続生産を容易にすることができる三次元繊維構造体及び三次元繊維構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する三次元繊維構造体は、基板部と前記基板部の両端から前記基板部と直交する方向に平行に延びる2つの側板部とで断面コ字状に形成された本体と、前記基板部及び前記2つの側板部と直交する状態で前記本体と一体に形成されたリブとを備える三次元繊維構造体である。そして、前記本体は、経糸が前記基板部と前記側板部との交線の延びる方向に延びる多層織りで構成され、前記リブは、前記2つの側板部間で真っ直ぐに延びる経糸及び緯糸のいずれか一方と、前記経糸及び緯糸のいずれか一方と直交する状態で真っ直ぐに延びる緯糸又は経糸とで構成されている。
【0008】
この構成によれば、断面コ字状の本体と直交する状態で一体に形成されたリブを有する三次元繊維構造体が、経糸と緯糸とで構成されているため、断面コ字状の三次元繊維構造体を製造する際に、リブと対応する部分における経糸と緯糸の配列状態を変更することにより製造することが可能となる。したがって、三次元繊維構造体の製造工程が単純で、三次元繊維構造体が大型であっても連続生産を容易にすることができる。
【0009】
また、リブを構成する経糸及び緯糸のいずれが本体の2つの側板部間で真っ直ぐに延びる状態で配列されるのかは、三次元繊維構造体を製造する際、チャネル状(断面コ字状)の本体を構成するための経糸をどのような状態で経糸ビームと経糸支持部材との間に張設するかによって決まる。
【0010】
前記リブは、前記本体の両端部に設けられ、前記本体及び前記リブは、前記基板部を底壁とする箱を形成していることが好ましい。この構成の三次元繊維構造体を強化基材として製造された繊維強化樹脂は、例えば、自動車部品の軽量化、衝突安全性能確保を目的に、自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する部材(クラッシュボックス)として用いられる。
【0011】
前記リブは、前記本体の長手方向の中間部に複数設けられていることが好ましい。この構成の三次元繊維構造体を強化基材として製造された繊維強化樹脂は、例えば、軽量で高強度の構造用部材として用いることができる。
【0012】
上記課題を解決する三次元繊維構造体の製造方法は、基板部と前記基板部の両端から前記基板部と直交する方向に平行に延びる2つの側板部とで断面コ字状に形成された本体と、前記基板部及び前記2つの側板部と直交する状態で前記本体と一体に形成されたリブとを備える三次元繊維構造体の製造方法である。そして、前記基板部及び前記2つの側板部を形成するための経糸を、経糸ビームと経糸支持部材との間に前記本体の断面形状に対応した状態で張設し、前記リブを形成するための経糸を、補助経糸用ビームと前記経糸支持部材との間に張設し、前記リブを形成するための経糸を、前記リブを形成しない箇所と対応する状態では前記基板部及び前記2つの側板部を形成するための経糸と同じ開口量となる状態で開口し、前記リブを形成する箇所と対応する状態では前記リブを形成する経糸が形成すべきリブを構成する緯糸層全層と直交する距離だけ往復移動するように開口して、隣り合う経糸層間に複数の緯糸を挿入する。ここで、「リブを構成する緯糸層全層と直交する距離」とは、両側板部が水平な状態となるように経糸が張設された状態では、両側板部間の距離となり、両側板部が上下方向に延びる状態となるように経糸が張設された状態では、両側板部の高さに対応する距離となる。
【0013】
この構成によれば、製造開始時に、基板部及び2つの側板部を形成するための経糸が、経糸ビームと経糸支持部材との間に本体の断面形状に対応した状態で張設される。また、リブを形成するための経糸が、補助経糸用ビームと経糸支持部材との間に張設される。そして、リブを形成するための経糸は、リブを形成しない箇所と対応する状態では、基板部及び前記2つの側板部を形成するための経糸と同じ開口量となる状態で開口される。また、リブを形成する箇所と対応する状態では、リブを形成する経糸が形成すべきリブを構成する緯糸層全層と直交する距離ずつ往動あるいは復動するように開口される。その結果、断面コ字状の三次元繊維構造体を製造する場合とほぼ同様にして、断面コ字状の本体と、本体の三つの面と直交する状態で本体と一体に形成されたリブとを備える三次元繊維構造体を製造することができる。したがって、三次元繊維構造体の製造工程が単純で、三次元繊維構造体が大型であっても連続生産を容易にすることができる。
【0014】
前記リブを所定間隔で複数設けるように前記リブを形成するための経糸を開口することが好ましい。この構成によれば、断面コ字状でリブを所定間隔で備えた構造材(ビーム)として好適な繊維強化複合材の強化基材となる三次元繊維構造体を効率良く生産することができる。
【0015】
前記リブが接近した状態で2つ形成された箇所が複数箇所、形成すべき箱に対応する間隔をおいて設けられるように前記リブを形成するための経糸を開口して、中間体としての三次元繊維構造体を前記の三次元繊維構造体の製造方法により製造した後、前記中間体を前記リブが接近した状態で2つ形成された箇所において切断して、有底箱状の三次元繊維構造体を製造することが好ましい。この構成によれば、有底箱状の三次元繊維構造体を効率良く生産することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造工程が単純で、三次元繊維構造体が大型であっても連続生産を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を
図1〜
図8にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、三次元繊維構造体10は、断面コ字状に形成された本体11と、本体11と一体に形成されたリブ12とを備える。本体11は、基板部11aと、基板部11aの両端から基板部11aと直交する方向に平行に延びる2つの側板部11bとで断面コ字状に形成されている。この実施形態では、側板部11bは基板部11aの上下方向における両端から水平に突出するように形成されている。リブ12は、基板部11a及び2つの側板部11bと直交する状態で本体11と一体に形成されている。リブ12は、所定間隔をおいて複数設けられている。
図1(a)では、リブ12が2個存在する三次元繊維構造体10を図示しているが、目的に合わせて、本体11の長さやリブ12の数やリブ12の間隔が設定される。
【0019】
図1(b),(c)、
図2、
図3(a),(b)に示すように、本体11は、経糸x1が基板部11aと側板部11bとの交線の延びる方向、即ち三次元繊維構造体10の長手方向に延び、緯糸yが基板部11aと直交し、側板部11bと平行に延びるように配列された多層織りで構成されている。
【0020】
詳述すると、
図1(c)、
図3(b)に示すように、基板部11a及び側板部11bを構成する緯糸yは、側板部11bと平行かつ基板部11aと直交する状態で、複数層に配列されている。また、
図1(b)、
図2、
図3(a)に示すように、基板部11a及び側板部11bを構成する経糸x1は、基板部11a及び側板部11bを構成する上下方向において隣り合う各層の緯糸yと交互に係合する状態で波状に配列されている。
【0021】
図1(c)に示すように、リブ12には、三次元繊維構造体10の長手方向に延びる経糸x1は存在せず、
図1(b)及び
図3(a)に示すように、リブ12は、2つの側板部11b間で真っ直ぐに延びる経糸x2と、経糸x2と直交する状態で真っ直ぐ延びる緯糸yとで構成されている。なお、各経糸x2は、側板部11bを構成する経糸x1と連続している。また、緯糸yは、
図1、
図2、
図3で図示するように、各層毎に独立した状態で挿入された構成であっても、三次元繊維構造体10の幅方向の端部において折り返して隣の層の緯糸yに連続する状態で挿入された構成であってもよい。
【0022】
経糸x1,x2及び緯糸yには、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維、あるいは、アラミド繊維、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の高強度、高弾性率の有機繊維等が使用され、要求性能に応じて適宜選択される。例えば、剛性・強度の要求性能が高い場合は、炭素繊維が好ましい。
【0023】
次に前記のように構成された三次元繊維構造体10の製造方法を説明する。三次元繊維構造体10の製造に使用する製織装置は、
図4に示すように、経糸x1を供給する経糸ビーム20と、経糸ビーム20から供給される経糸x1の一端を固定する経糸支持部材21とを備えており、経糸ビーム20と経糸支持部材21との間には織前枠22が配置されている。
【0024】
図4及び
図5に示すように、経糸ビーム20と織前枠22との間には、基板部11aを形成するための経糸x1の開口を行う本体用ヘルド枠としての基板部用ヘルド枠23と、側板部11bを形成するための経糸x1の開口を行う本体用ヘルド枠としての側板部用ヘルド枠24とを備えている。なお、
図4は側板部用ヘルド枠24の図示が省略されており、側板部用ヘルド枠24は
図5にのみ図示されている。基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24は、それぞれ独立して駆動可能に構成されている。
図5に示すように、各基板部用ヘルド枠23及び各側板部用ヘルド枠24は、それぞれ駆動すべき経糸x1の配列幅に対応した幅に形成されている。
【0025】
基板部用ヘルド枠23は、基板部11aを構成する経糸x1の層数をnとしたとき2(n−1)個設けられており、一層を構成する経糸x1のうち一本おきの一組の経糸x1と、他の一組の経糸x1とがそれぞれ隣り合う基板部用ヘルド枠23で駆動されるようになっている。
【0026】
上側の側板部11bを形成する経糸x1の開口を行う側板部用ヘルド枠24の数は、側板部11bを形成する経糸x1の層数をnとしたとき2(n−1)個設けられており、一層を構成する経糸x1のうち一本おきの一組の経糸x1と、他の一組の経糸x1とがそれぞれ隣り合う側板部用ヘルド枠24で駆動されるようになっている。下側の側板部11bを形成する経糸x1のうち最上層を構成する経糸x1は、補助経糸用ビーム25から供給される経糸x2の一部で構成され、その開口はリブ用ヘルド枠27により行われる。下側の側板部11bを構成する経糸x1のうち最上層より下側の層を構成する経糸x1が経糸ビーム20から供給される。そのため、下側の側板部11bを構成する経糸x1の開口を行う側板部用ヘルド枠24の数は、側板部11bを形成する経糸x1の層数をnとしたとき2(n−2)個設けられている。
【0027】
なお、
図4及び
図5においては、図示の都合上、経糸x1の層数は、前述した三次元繊維構造体10の場合の経糸x1の層数より少なく図示しており、基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24の数も必要数より少なく図示している。また、
図1〜
図3に図示した基板部11a及び側板部11bを構成する経糸x1の本数に対応すれば、側板部用ヘルド枠24の数は基板部用ヘルド枠23の数に比べて半分以下になるが、
図5では便宜上同じ数で図示している。
【0028】
製織装置は、リブ12を形成するための経糸x2を供給する補助経糸用ビーム25を備えている。補助経糸用ビーム25は、基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24より上方位置に配設され、補助経糸用ビーム25から供給される経糸x2は、ガイドバー26を経て一端が経糸支持部材21に固定される。側板部用ヘルド枠24と経糸支持部材21との間には、経糸x2の開口を行うリブ用ヘルド枠27が設けられている。リブ用ヘルド枠27は一対設けられ、それぞれ駆動すべき経糸x2の配列幅に対応した幅に形成されている。経糸x2は、リブ12を構成するだけではなく、下側の側板部11bを構成する経糸層の最上層を構成するのに使用される。そのため、リブ用ヘルド枠27は、リブ12以外の箇所が製織される状態では、下側の側板部11bの4層目の緯糸yの緯入れを可能にするように側板部用ヘルド枠24と同期して駆動されるようになっている。
【0029】
なお、
図4及び
図5に示すように、織前枠22とリブ用ヘルド枠27との間には筬28が配置されている。また、基板部用ヘルド枠23、側板部用ヘルド枠24、リブ用ヘルド枠27は、例えば、ドビー装置等の開口装置で駆動されるが、ジャガード装置で経糸x1,x2を開口してもよい。
【0030】
次に前記の製織装置による三次元繊維構造体10の製造方法を説明する。
先ず、基板部11a及び2つの側板部11bを形成するための経糸x1が、
図6に示すように、断面コ字状となるように張設される。経糸x1は、経糸支持部材21と経糸ビーム20との間に設けられた基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24を介して張設される。また、リブ12及び側板部11bの一部を構成する経糸x2が経糸支持部材21と補助経糸用ビーム25との間に張設される。経糸x2は、リブ12を構成する他に、下側の側板部11bを形成する経糸層の最上層の経糸x1を構成するため、経糸x2は、下側の側板部11bを形成する経糸x1層の上に配置される状態で経糸支持部材21と補助経糸用ビーム25との間に張設される。経糸x1及び経糸x2は、それぞれ対応する基板部用ヘルド枠23、側板部用ヘルド枠24、リブ用ヘルド枠27に支持されたヘルド(図示せず)の目を貫通する状態で張設される。
【0031】
経糸x1及び経糸x2が製織開始の位置に張設された状態から製織が開始される。
経糸開口への緯糸yの挿入は、図示しない、1つのシャトルを用いて行われる。また、シャトルが同じ高さ位置で往復移動することによりシャトルによる緯入れが行われるように、基板部11a及び側板部11bの各層を構成する経糸x1の開口動作を行う基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24は、各層の経糸開口位置が同じとなるように順次駆動される。また、リブ12を構成する経糸x2は、リブ12と対応する以外の箇所では下側の側板部11bの経糸x1として機能するように製織されるため、リブ用ヘルド枠27は、リブ12以外の箇所が製織される状態では、下側の側板部11bの下から4層目の緯糸yの緯入れを可能にするように側板部用ヘルド枠24と同期して駆動される。
【0032】
三次元繊維構造体10の製織は、本体11の上側から下側に向かって緯糸yが順次挿入されるように行われる。
先ず、基板部用ヘルド枠23、側板部用ヘルド枠24が駆動されて、シャトルによる緯入れが可能な位置に経糸x1による経糸開口が形成され、かつ各層を構成する経糸x1が、挿入される緯糸yに対して1本置きに同じ側を通る位置に配置されるように、基板部用ヘルド枠23、側板部用ヘルド枠24が順次移動されて形成された経糸開口内に緯糸yが挿入される。シャトルが経糸開口内を往動すると、基板部用ヘルド枠23、側板部用ヘルド枠24は、次の層の経糸開口がシャトルの復動箇所に形成されるように駆動され、その経糸開口内をシャトルが復動する。以下、順次同様にしてシャトルによる緯糸yの緯入れが行われる。
【0033】
リブ用ヘルド枠27は、上側の側板部11bの最下層より一層上の層及び対応する基板部11aの層まで緯入れが完了するまでは、開口動作を行わずに待機する。そして、次の緯入れが行われるのに先立って、一方のリブ用ヘルド枠27が開口位置に移動される。この開口位置は、基板部11a及び側板部11bを形成するための一層分の緯糸yを挿入可能な位置ではなく、2つの側板部11bの間に挿入される全層分の緯糸yを挿入可能な位置になる。
【0034】
その状態で基板部用ヘルド枠23が駆動されて、リブ12及びリブ12と対応する箇所の基板部11aを生成する緯糸yの配列が行われる。リブ用ヘルド枠27は、次の緯入れから下側の側板部11bの最上層を形成するための緯入れが行われるまでは、開位置に停止され、基板部用ヘルド枠23のみ順次上層寄りの経糸開口から順に、経糸開口をシャトルの緯入れ可能な状態にするように駆動されて、経糸x1の開口内にシャトルにより緯入れが行われる。
【0035】
基板部11aを形成する経糸開口内に挿入される緯糸yは、リブ12をも形成するため、リブ用ヘルド枠27は、下側のリブ12の最上層を形成するための緯入れが開始されるまでは、側板部用ヘルド枠24と共にその駆動が停止される。そして、リブ12の箇所では、
図7及び
図8に示すように、リブ12を構成する経糸x2は、側板部11bを構成するx1のように上下方向において隣り合う層を構成する緯糸y間に跨るように波状に配列されるのではなく、上下2つの側板部11b間に配列される緯糸yと直交する状態で真っ直ぐに延びるように配列される。そのため、リブ用ヘルド枠27は、リブ12を形成すべき箇所においては、経糸x2が両側板部11b間に対応する基板部11aを構成する全層分の緯糸yが基板部11aからリブ12に連続して延びる状態で挿入可能となるように、開口状態が非常に大きくなる位置と開口を閉じる位置とに、対応する側板部11bの全層の緯糸yと直交する距離ずつ往動あるいは復動するように移動される。
【0036】
リブ12及びリブ12と対応する位置における基板部11aを形成する位置への緯糸yの挿入が終了すると、開位置に配置されていたリブ用ヘルド枠27は閉位置に配置される。そして、下側の側板部11bを形成する際は、リブ用ヘルド枠27は、基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24が経糸x1の開口動作を行うのと同様に、経糸x2が上下方向において隣り合う層を構成する緯糸y間に跨るように波状に配列される範囲で駆動される。そして、下側の側板部11b及び対応する基板部11aの緯入れが完了して、三次元繊維構造体10の長手方向における1層分の緯入れが完了すると、経糸支持部材21が1ピッチ分移動され、前記と同様の動作が繰り返される。
【0037】
本体11の製織と、本体11及びリブ12の製織とが所定回数繰り返されて、予め設定された長さの三次元繊維構造体10が製織されると、三次元繊維構造体10に繋がる緯糸y、経糸x1及び経糸x2が切断されて、三次元繊維構造体10が取り出される。そして、三次元繊維構造体10が必要な長さに切断されて、製品としての三次元繊維構造体10が得られる。三次元繊維構造体10は、例えば、繊維強化樹脂の強化基材として使用され、製造された繊維強化樹脂は軽量で高強度の構造用部材として用いられる。
【0038】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)三次元繊維構造体10は、基板部11aと、基板部11aの両端から基板部11aと直交する方向に平行に延びる2つの側板部11bとで断面コ字状に形成された本体11と、基板部11a及び2つの側板部11bと直交する状態で本体11と一体に形成されたリブ12とを備える。そして、本体11は、経糸x1が基板部11aと側板部11bとの交線の延びる方向に延び、緯糸yが経糸x1と直交する多層織りで構成され、リブ12は、2つの側板部11b間で真っ直ぐに延びる経糸x2と、経糸x2と直交する状態で真っ直ぐに延びる緯糸yとで構成されている。この構成によれば、断面コ字状の本体11と直交する状態で一体に形成されたリブ12を有する三次元繊維構造体10が、経糸x1,x2と緯糸yとで構成されているため、断面コ字状の三次元繊維構造体10を製造する際に、リブ12と対応する部分における経糸と緯糸の配列状態を変更することにより製造することが可能となる。したがって、三次元繊維構造体10の製造工程が単純で、三次元繊維構造体10が大型であっても連続生産を容易にすることができる。
【0039】
(2)リブ12は、本体11の長手方向の中間部に複数設けられている。したがって、この構成の三次元繊維構造体10を強化基材として製造された繊維強化樹脂は、例えば、軽量で高強度の構造用部材として用いることができる。
【0040】
(3)三次元繊維構造体10の製造方法は、基板部11a及び2つの側板部11bを形成するための経糸x1を、それぞれ独立して駆動可能に構成された本体用ヘルド枠としての基板部用ヘルド枠23及び側板部用ヘルド枠24に挿通した状態で、経糸ビーム20と経糸支持部材21との間に本体11の断面形状に対応した状態で張設する。また、本体11と、基板部11a及び2つの側板部11bと直交する状態で本体11と一体に形成されるリブ12を形成するための経糸x2を、補助経糸用ビーム25と経糸支持部材21との間にリブ用ヘルド枠27に挿通した状態で張設する。そして、リブ用ヘルド枠27を、リブ12を形成しない箇所と対応する状態では本体用ヘルド枠と同じ開口量となる状態で駆動し、リブ12を形成する箇所と対応する状態では、リブ12を形成する経糸x2が形成すべきリブ12を構成する緯糸層全層と直交する距離ずつ往動あるいは復動するように駆動する。その結果、従来技術と異なり、断面コ字状の三次元繊維構造体を製造する場合とほぼ同様にして、断面コ字状の本体11と、本体11の三つの面と直交する状態で本体11と一体に形成されたリブ12とを備える三次元繊維構造体10を製造することができる。したがって、三次元繊維構造体10の製造工程が単純で、三次元繊維構造体10が大型であっても連続生産が容易になる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を
図9及び
図10にしたがって説明する。この実施形態は、三次元繊維構造体30が有底箱状に形成されている点が前記実施形態と大きく異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0042】
図9に示すように、三次元繊維構造体30は有底箱状に形成され、断面コ字状の本体11には、両端部にリブ12が形成されている。詳述すると、本体11は基板部11aと2つの側板部11bとで構成され、基板部11a及び側板部11bの端部と直交する状態でリブ12が形成され、基板部11aが底壁、側板部11b及びリブ12がそれぞれ対向する側壁を形成している。なお、
図9においては、三次元繊維構造体30を、一方の側板部11bが下側になり、底壁となる基板部11aが上下方向に延びる状態に配置した状態で図示している。
【0043】
この有底箱状の三次元繊維構造体30は、
図10に示すように、リブ12が接近した状態で2つ形成された箇所が複数箇所、形成すべき箱に対応する間隔をおいて設けられるように形成された中間体としての長尺状の三次元繊維構造体10を所定位置で切断して形成される。
図10においては、分かり易くするため、接近して形成される2つのリブ12の間隔を広く図示しているが、実際は、三次元繊維構造体10を切断する切断刃がリブ12を傷つけずに本体11を切断可能な間隔があればよい。
【0044】
図10に示す三次元繊維構造体10の製造は、第1の実施形態と基本的に同様に行われるが、リブ12を一定の所定間隔で形成するのではなく、リブ12が接近した状態で2つ形成された箇所が複数箇所、形成すべき箱に対応する間隔をおいて設けられるように形成する点が異なる。
【0045】
この実施形態によれば、第1の実施形態の(1)に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(4)三次元繊維構造体30は、基板部11aと基板部11aの両端部から基板部11aと直交する方向に平行に延びる2つの側板部11bとで断面コ字状に形成された本体11と、本体11の両端部に設けられたリブ12とを備える。本体11及びリブ12は、基板部11aを底壁とする箱を形成している。この構成の三次元繊維構造体30を強化基材として製造された繊維強化樹脂は、例えば、自動車部品の軽量化、衝突安全性能確保を目的に、自動車衝突時の衝突エネルギーを吸収する部材(クラッシュボックス)として用いることができる。
【0046】
(5)三次元繊維構造体30は、箱状部が短い間隔をおいて連続的に形成された長尺状の三次元繊維構造体10を切断して製造することができる。したがって、有底箱状の三次元繊維構造体30を効率良く生産することができる。
【0047】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を
図11及び
図12にしたがって説明する。この実施形態の三次元繊維構造体10の製造は、本体11を形成するための経糸x1を、経糸ビーム20と経糸支持部材21との間に張設する場合、
図11に示すように、経糸群29がチャネル状即ち断面コ字状で、基板部11aとなる箇所が下側に位置し、側板部11bとなる箇所が基板部11aとなる箇所に対して上側に突出する状態に張設する。
【0048】
図12(b)に示すように、リブ12を構成する経糸x2は、前記両実施形態と異なり、リブ12の他に側板部11bの一部を構成するのではなく、基板部11aの一部を構成する。具体的には、基板部11aの両側板部11bに挟まれた部分の最上層の経糸x1となる。そして、リブ12を形成する経糸x2は、両側板部11b間において両側板部11bと直交する方向に真っ直ぐに延びる状態で配列されるのではなく、両側板部11bと平行、かつ基板部11aと垂直方向に真っ直ぐに延び、かつリブ12の上端で折り返すように配列される。
【0049】
また、緯糸yが、側板部11bと直交する状態で経糸開口内に挿入される点も、両実施形態と異なる。緯糸yがシャトルを用いて緯入れされる場合、シャトルは、各側板部11b毎に往復動して両側板部11bの緯入れを行うのではなく、一方の側板部11bの外側面からその側板部11bを貫通した後、他方の側板部11bをその内側面から貫通した後、折り返して他方の側板部11bを外側から貫通した後、一方の側板部11bをその内側面から貫通する。そして、再び一方の側板部11bの外側面から同様の動作を繰り返す。そのため、製造された三次元繊維構造体10は、リブ12が形成されていない部分の両側板部11b間に不要な緯糸yが多数配列された状態となる。不要な緯糸yは、製織終了後に除去される。
【0050】
図12(a)に示すように、この実施形態の三次元繊維構造体10は、外観は第1の実施形態の三次元繊維構造体10と基本的に同じであるが、リブ12を構成する経糸x2は、折り返し部を除き、基板部11aに対して垂直方向に延び、側板部11bに対しては平行に延びるように配列される。また、リブ12を構成する緯糸yは、基板部11aに対して平行に延び、側板部11bに対しては垂直方向に延びるように配列される。
【0051】
この実施形態においても、三次元繊維構造体10は、基板部11aと、基板部11aの両端部から基板部11aと直交する方向に平行に延びる2つの側板部11bとで断面コ字状に形成された本体11と、基板部11a及び2つの側板部11bと直交する状態で本体11と一体に形成されたリブ12とを備える。そして、本体11は、経糸x1が基板部11aと側板部11bとの交線の延びる方向に延び、緯糸yが経糸x1と直交する多層織りで構成され、リブ12は、2つの側板部11b間で真っ直ぐに延びる緯糸yと、緯糸yと直交する状態で真っ直ぐ延びる経糸x2とで構成されている。この構成においても、断面コ字状の本体11と直交する状態で一体に形成されたリブ12を有する三次元繊維構造体10が、経糸x1,x2と緯糸yとで構成されているため、断面コ字状の三次元繊維構造体10を製造する際に、リブ12と対応する部分における経糸と緯糸の配列状態を変更することにより製造することが可能となる。したがって、三次元繊維構造体10の製造工程が単純で、三次元繊維構造体10が大型であっても連続生産が容易になる。
【0052】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 緯糸yの挿入はシャトルを用いて行う方法に限らず、レピア織機のようにレピアを用いて挿入したり、エアジェット織機やウォータジェット織機のように流体噴射を利用して挿入したりしてもよい。しかし、シャトルを用いて折り返し状に挿入される方が好ましい。
【0053】
○ 経糸開口へ挿入される緯糸yの挿入位置を変更せずに、経糸x1が構成する各経糸層の開口量を変更して行う構成に代えて、緯糸yの挿入位置を経糸開口の位置に合わせて変更するようにしてもよい。
【0054】
○ 緯糸yの挿入を異なる経糸開口へ順に1本ずつ行うのではなく、複数の経糸開口に並行して緯糸yの挿入を行うようにしてもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
【0055】
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の三次元繊維構造体を強化繊維基材として含む繊維強化複合材料。