(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層が、前記架橋シリコーンゴム100質量部に対し、炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末の少なくとも1種以上を0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る絶縁電線は、導体とこの導体の周囲を被覆する絶縁層とを有している。絶縁層は、架橋シリコーンゴムを含有している。
【0016】
絶縁層は、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を用いて形成される。未架橋のシリコーンゴムは、架橋剤を混練した後、加熱架橋させることで弾性体となるミラブル型(加熱架橋型)、或いは架橋前は液状である液状ゴム型のいずれを用いてもよい。液状ゴム型シリコーンゴムは、室温付近で架橋が可能な室温架橋型(RTV)と、混合後100℃付近で加熱すると架橋する低温架橋型(LTV)がある。
【0017】
未架橋のシリコーンゴムとしては、ミラブル型シリコーンゴムが好ましい。ミラブル型シリコーンゴムは、架橋温度が180℃以上と比較的高温であり安定性が良いので、混練の際の混合がし易く、作業性に優れるという利点がある。これに対し、液状ゴム型シリコーンゴムは、架橋温度が通常120℃程度と低温であるため、安定性が低く混練の際の発熱を低く抑制する必要があり、温度管理などの面から作業性にやや劣る。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状のオルガノポリシロキサンを主原料(生ゴム)として、補強剤、充填剤(増量剤)、分散促進剤、その他添加剤などを配合したゴムコンパウンドとして市販されているものを用いてもよい。
【0018】
架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量は2000以下に規定する。これにより、耐ガソリン性の向上が図れる。架橋シリコーンゴムのガソリンによる膨潤は、架橋シリコーンゴムの三次元空間(網目)をガソリン(液)が浸透することにより生じる。架橋点間分子量を小さくすることで架橋密度が高くなり、網目(開口部)の体積を小さくするので、ガソリンの浸透が抑えられ、ガソリンによる膨潤が抑えられるためと推察される。この観点から、本発明は架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量を2000以下と規定するものである。そして、耐ガソリン性により優れる観点から、架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量は、より好ましくは1900以下、さらに好ましくは1800以下である。
【0019】
架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量は、架橋剤の配合量を多くする、架橋の際の温度を高くするなどにより、小さくすることができる。
【0020】
架橋点間分子量は、架橋シリコーンゴムの密度と貯蔵弾性率から、以下の計算式により算出することができる。密度(g/cm
3)は、常温(23℃)における値であり、貯蔵弾性率(MPa)は、固体粘弾性測定器を用いて測定した23℃における値である。
(式1)
架橋点間分子量=(3×密度×気体定数×絶対温度)÷貯蔵弾性率
【0021】
本発明においては、架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量が2000以下であることにより、架橋密度が高いため、耐摩耗性の向上も図れる。このため、絶縁層は、炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末のいずれも含有していなくてもよい。
【0022】
また、本発明においては、絶縁層が、炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末の少なくとも1種以上を含有していてもよい。この場合、耐摩耗性を向上することができる。これらの粉末は、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層の強度向上に効果がある。絶縁層の強度を向上させることにより、耐摩耗性を向上させることができる。つまり、架橋シリコーンゴムよりも削れにくいこれらの粉末を配合することにより、絶縁層の強度が向上し、耐摩耗性が高められる。このとき、絶縁層の摩耗は、これらの粉末が絶縁層から脱落することによって起こると推察される。
【0023】
また、これらの粉末は、架橋シリコーンゴムを含む絶縁層の耐ガソリン性の向上に効果がある。シリコーンゴムはガソリンに接触すると膨潤しやすく、耐ガソリン性に劣るが、これらの粉末を用いることで、耐ガソリン性を向上することができる。これは、これらの粉末によりシリコーンゴム中にガソリンが浸透するのを抑え、ガソリンによるシリコーンゴムの膨潤が抑えられるためと推察される。
【0024】
これらの粉末の含有量は、耐寒性の低下を抑える、耐熱性の低下を抑えるなどの観点から、架橋シリコーンゴム100質量部に対し20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。一方、耐摩耗性および耐ガソリン性を向上することができるなどの観点から、架橋シリコーンゴム100質量部に対し0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。
【0025】
炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、あるいは水酸化マグネシウム粉末の平均粒径は、ハンドリング性の向上およびシリコーンゴムへの混合の際の時間短縮などの観点から、0.01μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.05μm以上である。また、耐寒性、耐摩耗性、耐ガソリン性を良好にしやすいなどの観点から、これらの粉末の平均粒径は、5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは4.0μm以下である。平均粒径が小さいと、絶縁層が表面平滑性に優れ、摩擦力を受けたときに脱落しにくく、これによって耐摩耗性が向上する。また、平均粒径が小さいと、分散性が高まり、これによって耐摩耗性および耐寒性が向上する。なお、平均粒径は、レーザー光回折法などによる粒度分布測定装置を用いて累積重量平均値D
50(またはメジアン径)として求めることができる。
【0026】
炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末は、凝集を抑える、シリコーンゴムとの親和性を高めるなどの観点から、表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、脂肪酸、ロジン酸、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0027】
上記表面処理剤は、変性されていてもよい。変性剤としては、不飽和カルボン酸やその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなどが挙げられる。このうちで好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸などである。なお、これらの表面処理剤の変性剤は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0028】
表面処理剤に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法などが挙げられる。また酸変性量としては、表面処理剤の0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
【0029】
表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されるものではない。例えば、上記粉末に表面処理してもよいし、上記粉末の合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などを用いることができる。また、絶縁層の組成物を調製する際に、表面処理剤を他のゴム原料などの材料と同時に混練してもよい。
【0030】
炭酸カルシウム粉末には、化学反応によって作られる合成炭酸カルシウムと、石灰石を粉砕して作られる重質炭酸カルシウムとがある。合成炭酸カルシウムは、脂肪酸やロジン酸やシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理を行うことによりサブミクロン以下(数十nm程度)の一次粒子径の微粒子として用いることができる。表面処理された微粒子の平均粒径は一次粒子径で表される。一次粒子径は、電子顕微鏡観察により測定することができる。重質炭酸カルシウムは粉砕品であり、特段、脂肪酸などで表面処理を行わなくてもよく、数百nm〜1μm程度の平均粒径の粒子として用いることができる。炭酸カルシウム粉末としては、合成炭酸カルシウムおよび重質炭酸カルシウムのいずれを用いることもできる。
【0031】
炭酸カルシウム粉末としては、具体的には、例えば、白石カルシウム社製の白艶華CC(平均粒径=0.05μm)、白艶華CCR(平均粒径=0.08μm)、白艶華DD(平均粒径=0.05μm)、Vigot10(平均粒径=0.10μm)、Vigot15(平均粒径=0.15μm)、白艶華U(平均粒径=0.04μm)などが挙げられる。
【0032】
酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUC95S(平均粒径=3.1μm)、UC95M(平均粒径=3.0μm)、UC95H(平均粒径=3.3μm)などが挙げられる。
【0033】
水酸化マグネシウムは、海水から結晶成長法で合成するもの、塩化マグネシウムと水酸化カルシウムの反応で合成するものなどの合成水酸化マグネシウム、或いは天然に産出する鉱物を粉砕した天然水酸化マグネシウムなどを用いることができる。上記フィラーとしての水酸化マグネシウムとしては、具体的には、例えば、宇部マテリアルズ社製のUD−650−1(平均粒径=3.5μm)、UD653(平均粒径=3.5μm)などが挙げられる。
【0034】
絶縁層は、JIS K6253に準拠して測定されるショアA硬度50以上であることが好ましい。上記ショアA硬度は、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上である。絶縁層の硬度は、絶縁層に含有される架橋シリコーンゴムの硬度を高くすることにより高くすることができる。架橋シリコーンゴムの硬度が比較的高いと、炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末を含有しないか、比較的少量含有している場合でも、優れた耐摩耗性を確保することができる。架橋シリコーンゴムの硬度を高くするためには、例えば未架橋シリコーンゴムとしてミラブル型のものを用いる、未架橋シリコーンゴムとして硬度の高いものを用いる、シリコーンゴムに補強剤を配合する、架橋密度を高くするなどの方法を採用することができる。補強剤としては、シリカなどが挙げられる。特に補強性シリカが好ましい。架橋密度を高くするには、架橋剤の配合量を多くすることなどが挙げられる。
【0035】
架橋剤は、未架橋のシリコーンゴムの種類や架橋条件などに応じて適宜選択することができる。架橋剤としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤、金属石けん、アミン、チオール、チオカルバミン酸塩、有機カルボン酸などの化合物を挙げることができる。架橋剤としては、有機過酸化物などが、架橋速度の向上の点から好ましい。
【0036】
有機過酸化物としては、例えば、ジへキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t―ブチルパーオキサイド)バレレートなどのパーオキシケタールなどを挙げることができる。
【0037】
架橋剤の配合量は、適宜決定することができる。架橋剤の配合量は、例えば、未架橋のシリコーンゴムと架橋剤の合計量に対し、0.01〜10質量%の範囲で配合するのが好ましい。
【0038】
架橋剤の配合量は、未架橋シリコーンゴムの硬度に応じて決定することができる。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が40未満である場合には、架橋剤の配合量は、未架橋のシリコーンゴムと架橋剤の合計量に対し、0.5〜3質量%の範囲内が好ましい。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が40以上50未満である場合には、0.5〜3質量%の範囲内が好ましい。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が50以上60未満である場合には、0.5〜5質量%の範囲内が好ましい。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が60以上70未満である場合には、0.5〜5質量%の範囲内が好ましい。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が70以上80未満である場合には、0.5〜5質量%の範囲内が好ましい。未架橋シリコーンゴムのショアA硬度が80以上である場合には、0.5〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0039】
絶縁層は、架橋シリコーンゴムの他に、絶縁層の特性を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有していても良いし、含有していなくてもよい。このような添加剤としては、絶縁電線の絶縁層に用いられる一般的な添加剤を挙げることができる。具体的には、難燃剤、架橋剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料などを挙げることができる。
【0040】
本発明に係る絶縁電線は、導体の周囲に絶縁層を押出成形することにより製造することができる。この場合、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を調製し、所定の温度にてこれを押出成形する。成形時の温度・時間により、未架橋のシリコーンゴムは架橋される。その後、シリコーンゴムの架橋を完了させるために、二次加硫(二次架橋)を行ってもよい。二次加硫は、例えばオーブンによる加熱で行われる。二次加硫は、シリコーンゴムの架橋を完了させる目的の他、シリコーンゴムに熱履歴を与えてシリコーンゴムの特性を熱安定化させる、過酸化物架橋の場合における残渣を除去するなどの目的で行われる。
【0041】
二次加硫は、所定の温度・時間で行われるが、二次加硫を実施するとその分工程が増えるため、コストアップになる。したがって、コスト面から二次加硫を省略できることが好ましい。このためには、一次加硫(押出成形)で加硫を所望のレベルまで完了させることが必要である。この場合、架橋点間分子量の変化率が二次加硫の前後で小さいことが必要である。具体的には、変化率が20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0042】
架橋点間分子量の変化率を小さくするには、架橋剤の配合量を多くして一次加硫での架橋度を上げる、ビニル基、アクリル基等の反応性の高い官能基の含有率を増やして一次加硫での架橋度を上げるとよい。
【0043】
本発明に係る絶縁電線は、また、導体の周囲に絶縁層用のゴム組成物を塗工して被覆層を形成し、加熱などの架橋手段により被覆層の未架橋ゴムを架橋することによっても製造することができる。
【0044】
絶縁層用のゴム組成物は、未架橋のシリコーンゴムと、必要に応じて配合される炭酸カルシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、架橋剤などとを混練することにより調製することができる。ゴム組成物の成分を混練する際には、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸混練押出機、ロールなどの通常の混練機を用いることができる。
【0045】
絶縁層用のゴム組成物の押出成形には、通常の絶縁電線の製造に用いられる電線押出成形機などを用いることができる。導体は、通常の絶縁電線に使用されるものを利用できる。例えば、銅系材料やアルミニウム系材料よりなる単線の導体や撚線の導体を挙げることができる。また、導体の径や絶縁層の厚みなどは特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決めることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記態様の絶縁電線は、単一層の絶縁層から構成したが、本発明の絶縁電線は、2層以上の絶縁層から構成してもよい。
【0047】
本発明に係る絶縁電線は、自動車、電子・電気機器に使用される絶縁電線に利用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
【0049】
〔実施例1〜8〕
表1に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用のゴム組成物を調製した。次いで、押出成形機を用いて、軟銅線を7本撚り合わせた軟銅撚線の導体(断面積0.5mm
2)の外周に絶縁層用のゴム組成物を0.2mm厚で押出被覆した(180℃×5分)。次いで、200℃×4時間の条件で被覆層の熱処理を行うことにより、被覆層のシリコーンゴムの架橋を完了させた。これにより、実施例1〜8の絶縁電線を得た。
【0050】
〔比較例1〜7〕
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、未架橋のシリコーンゴムを含む絶縁層用の組成物を調製した。次いで、実施例と同様にして、比較例1〜7の絶縁電線を得た。
【0051】
実施例1〜8、比較例1〜7の絶縁電線について、耐寒性試験、耐摩耗性試験、耐ガソリン性試験を行い、評価した。また、これらの絶縁電線の絶縁層のショアA硬度、架橋点間分子量を測定した。その結果を表1及び表2に合わせて示す。尚、表1及び表2の各成分組成、試験方法及び評価は、下記の通りである。
【0052】
〔表1及び表2の成分〕
・シリコーンゴム1:旭化成社製、R401−50(硬さ50、タイプAデュロメーター、以下同じ)
・シリコーンゴム2:旭化成社製、R401−60(硬さ60)
・シリコーンゴム3:旭化成社製、R401−70(硬さ70)
・シリコーンゴム4:旭化成社製、R401−80(硬さ80)
・シリコーンゴム5:旭化成社製、R401−40(硬さ40)
・シリコーンゴム6:旭化成社製、R401−30(硬さ30)
・シリコーンゴム7:旭化成社製、R401−20(硬さ20)
・シリコーンゴム8:KCC社製、SH0030U(硬さ30)
・Vigot15:白石カルシウム社製、炭酸カルシウム粉末(平均粒径=0.15μm)
・UC95H:宇部マテリアルズ社製、酸化マグネシウム粉末(平均粒径=3.3μm)
・架橋剤:日本油脂社製、パーへキシルD(ジ−t−へキシルパーオキサイド)
【0053】
〔耐寒性試験方法〕
JIS C3005に準拠して行った。すなわち作製した絶縁電線を38mmの長さに切断し試験片とした。この試験片を耐寒性試験機に装着し、所定の温度まで冷却し、打撃具で打撃して、試験片の打撃後の状態を観察した。5本の試験片を用いて、5本の試験片が全て割れた温度を耐寒温度とした。
【0054】
〔耐摩耗性試験方法〕
社団法人自動車技術規格「JASO D618」に準拠して、ブレード往復法により試験を行った。すなわち、実施例、比較例の絶縁電線を750mmの長さに切り出して試験片とした。そして、23±5℃の室温下で試験片の被覆材(絶縁層)に対し軸方向に10mm以上の長さでブレードを毎分50回の速さで往復させ、導体に接するまでの往復回数を測定した。この際、ブレードにかかる荷重は、7Nとした。回数については200回以上のものを合格「○」とし、200回未満のものを不合格「×」とした。また、回数が300回以上のものは特に優れる「◎」とした。
【0055】
〔耐ガソリン性試験方法〕
ISO6722(2011年版)のメソッド2に準拠した。すなわち、作製した絶縁電線を600mmの長さに切断して試験片とし、ISO1817の液体Cに23℃で20時間浸漬し、電線外径の最大変化率が15%以下のものを良好「○」、最大変化率が10%以下のものを特に良好「◎」、最大変化率が15%を超えるものを不良「×」とした。
【0056】
〔絶縁層の硬さ〕
長さ10cmにカットした絶縁電線を固定し、絶縁層の外側から硬度計を押し付けて絶縁層の硬さを測定した。JIS K6253に準拠し、デュロメータタイプAスプリング式硬さ試験で測定されるショアA硬度を測定した。
【0057】
〔架橋点間分子量〕
絶縁電線の導体を除去した絶縁層からなる架橋シリコーンゴムのサンプルを用い、密度と貯蔵弾性率を求め、以下の計算式により架橋点間分子量を算出した。密度(g/cm
3)は、常温(23℃)における値であり、貯蔵弾性率(MPa)は、固体粘弾性測定器を用いて測定した23℃における値である。
(式2)
架橋点間分子量=(3×密度×気体定数×絶対温度)÷貯蔵弾性率
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
実施例および比較例から、架橋シリコーンゴムの架橋点間分子量が2000以下であることにより、耐摩耗性、耐ガソリン性を満足できることがわかる。そして、実施例によれば、耐摩耗性と耐ガソリン性を両立できることがわかる。また、実施例によれば、耐寒性にも優れることがわかる。
【0061】
実施例1、6〜8から、炭酸カルシウム粉末や酸化マグネシウム粉末を添加することにより、耐摩耗性、耐ガソリン性が向上することがわかる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。