特許第6136862号(P6136862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6136862帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136862
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-230711(P2013-230711)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90454(P2015-90454A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六反 実
(72)【発明者】
【氏名】額田 秀美
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】野中 聡洋
(72)【発明者】
【氏名】萩原 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】大島 穣
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−101864(JP,A)
【文献】 特開2012−088397(JP,A)
【文献】 特開2013−200501(JP,A)
【文献】 特開2003−316124(JP,A)
【文献】 特開2010−113177(JP,A)
【文献】 特開2012−014048(JP,A)
【文献】 特開2006−154442(JP,A)
【文献】 特開2006−091495(JP,A)
【文献】 特開2006−163145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性弾性層と、
前記導電性弾性層上に設けられ、像保持体と接する導電性表面層であって、樹脂と、含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含む導電性表面層と、
を有する帯電部材。
【請求項2】
前記シリコーンオイルの含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイル、及びポリエステル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記導電性表面層の厚みが、3μm以上15μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記導電性表面層の表面自由エネルギーが、50mN/m以上90mN/m以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電部材。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項に記載の帯電装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項8】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項に記載の帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、帯電装置、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、先ず、無機または有機材料を含む光導電性感光体からなる像保持体表面に帯電装置を用いて電荷を形成し、画像信号を変調したレーザ光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像が形成される。そして、該トナー像を、中間転写体を介するか又は直接、記録紙等の転写材に静電的に転写し、記録材に定着することにより再生画像が得られる。
【0003】
ここで、特許文献1には、「塗膜層を、反応性の官能基を片末端に1個または2個有するシリコーンオイルを、フッ素樹脂100重量部に対して0.05〜30重量部添加した、末端に活性水素をもつフッ素樹脂から形成した帯電部材」が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、「帯電部材の表面層が該表面層の全重量の50〜10,000ppmのシリコーンオイルを含有する帯電部材」が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、「芯金上に弾性層が設けられ、更に複数の被覆層が設けられた帯電ローラにおいて、該被覆層の最外層が親水性シリコーンオイルを0.02〜8.0質量%含有する帯電ローラ」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−214879号公報
【特許文献2】特公平08−020794号公報
【特許文献3】特開2003−316124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、粒状性に優れた画像が得られる帯電部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
導電性弾性層と、
前記導電性弾性層上に設けられ、像保持体と接する導電性表面層であって、樹脂と、含有量が前記樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含む導電性表面層と、
を有する帯電部材。
請求項2に係る発明は、
前記シリコーンオイルの含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下である請求項1に記載の帯電部材。
【0009】
請求項に係る発明は、
前記シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイル、及びポリエステル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の帯電部材。
【0010】
請求項に係る発明は、
前記導電性表面層の厚みが、3μm以上15μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材。
【0011】
請求項に係る発明は、
前記導電性表面層の表面自由エネルギーが、50mN/m以上90mN/m以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電部材。
【0012】
請求項に係る発明は、
請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電部材を備える帯電装置。
【0013】
請求項に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項に記載の帯電装置と、
を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【0014】
請求項に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体を帯電する請求項に記載の帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、又は2に記載の発明によれば、像保持体と接する導電性表面層が多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部未満若しくは25質量部超えで含む、又はシリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部未満で含む場合に比べ、粒状性に優れた画像が得られる帯電部材が提供される。
請求項に記載の発明によれば、像保持体と接する導電性表面層がポリエーテル変性シリコーンオイル及びポリエステル変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルを含む場合に比べ、粒状性に優れた画像が得られる帯電部材が提供される。
請求項に係る発明によれば、像保持体と接する導電性表面層が多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部未満若しくは25質量部超えで含む、又はシリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部未満で含む場合に比べ、導電性表面層の厚さが上記範囲内であっても、粒状性に優れた画像が得られる帯電部材が提供される。
請求項に係る発明によれば、導電性表面層の表面自由エネルギーが上記範囲外の場合に比べ、繰り返し画像を形成しても、粒状性に優れた画像が得られる帯電部材が提供される。
【0016】
請求項に係る発明によれば、像保持体と接する導電性表面層が多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部未満若しくは25質量部超えで含む、又はシリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部未満で含む帯電部材を備える場合に比べ、粒状性に優れた画像が得られる帯電装置が提供される。
【0017】
請求項、又はに係る発明によれば、像保持体と接する導電性表面層が多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部未満若しくは25質量部超えで含む、又はシリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部未満で含む帯電部材を備える場合に比べ、粒状性に優れた画像が得られるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。
図3】本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。
図4】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図5】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
[帯電部材]
図1は、本実施形態に係る帯電部材を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る帯電部材の概略断面図である。なお、図2は、図1のA−A断面図である。
【0021】
本実施形態に係る帯電部材121は、図1及び図2に示すように、例えば、導電性支持体30(以下「支持体30」と称する)と、導電性支持体30の外周面上に設けられた導電性弾性層31(以下「弾性層31」と称する)と、導電性弾性層31の外周面上に設けられ、像保持体と接する導電性表面層32(以下「表面層32」と称する)と、を有するロール部材である。なお、支持体30と弾性層31との間は、例えば、接着層(不図示)が設けられている。
そして、表面層33は、樹脂と、導電剤と、含有量が樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の多孔質樹脂粒子と、含有量が前記樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下のシリコーンオイルと、を含んでいる。
【0022】
但し、本実施形態に係る帯電部材121は、ロール部材に限られず、弾性層31及び表面層32を有していれば、ブレード部材、ブラシ部材、フィルム部材のいずれでもあってもよい。また、本実施形態に係る帯電部材121は、上記層構成に限られず、例えば、支持体30と弾性層31との間に中間層を設けた構成、又は、弾性層31と表面層32との間に抵抗調整層若しくは移行防止層を設けた構成であってもよい。
【0023】
なお、本明細書において導電性とは、20℃における体積抵抗率が1×1013Ωcm未満であることを意味する。
【0024】
ここで、像保持体(感光体)と接する表面層32を有する帯電部材(接触方式の帯電部材)において、目的とする表面粗さを付与し、表面層32へのトナーの外添剤の被覆(フィルミング)を抑制する目的で、表面層32に多孔質樹脂粒子を配合することが知られている。多孔質樹脂粒子を表面層32に配合すると、多孔質樹脂粒子と樹脂との密着性が高まることから、粒子の表面層32からの離脱と共に、表面層32の割れの発生が抑制され易くなる。
【0025】
しかしながら、各成分を含む塗布液の塗膜の加熱を経て、表面層32を形成するとき、加熱により、塗膜内部で渦流が生じ、その結果、セル構造が現れるベナードセルと呼ばれる現象が生じることがある。このベナードセル現象が生じると、セル構造の境界部に多孔質樹脂粒子が偏在し、目的とする表面粗さが付与されないばかりでなく、表面層の抵抗均一性が低下する。その結果、像保持体に対する均一帯電性も低下し、画像の粒状性が悪化する。特に、高いプロセス速度で画像を形成する場合、又は解像度が高い高画質の画像を形成するときに、画像の粒状性の悪化が顕著に現れる。
【0026】
そこで、本実施形態に係る帯電部材121では、表面層32に、多孔質樹脂粒子を樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下で配合すると共に、シリコーンオイルを樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下で配合する。この量で、多孔質樹脂粒子及びシリコーンオイルを表面層32に配合することにより、表面層32を形成するときに生じるベナードセル現象の発生が抑制される。
【0027】
このため、本実施形態に係る帯電部材121では、表面層32において、多孔質樹脂粒子の分散性が高まり、抵抗均一性の悪化が抑制される。その結果、粒状性に優れた画像が得られる。
【0028】
以下、本実施形態に係る帯電部材121の詳細について説明する。なお、以下、符号は省略して説明する。
【0029】
(支持体)
支持体は、帯電部材の電極および支持部材として機能するものであり、例えば、その材質としては鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;等が挙げられる。導電性支持体としては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂、セラミック部材)等も挙げられる。支持体は、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0030】
(接着層)
接着層の材質としては、支持体と弾性層とを接着し、導電性を有する組成物である公知の接着剤が挙げられる。この接着剤としては、例えば、電子導電剤を含有する樹脂組成物、導電性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0031】
(弾性層)
弾性層は、弾性材料と、導電剤と、を含む。弾性層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。なお、弾性層は、抵抗調整層を兼ねていることがよい。
【0032】
弾性材料としては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコ−ンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエ−テル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、これらを混合したゴム等が挙げられる。
これらの弾性材料の中でも、シリコ−ンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、これらを混合したゴムが好ましい。
ゴム材料は、発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0033】
導電剤としては、電子導電性物質、イオン導電性物質が挙げられる。
電子導電性物質としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、熱分解カーボン、グラファイト、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、Sb、In、ZnO、MgO等の公知の金属酸化物が挙げられる。
イオン導電性物質としては、例えば、四級アンモニウム塩、アルカリ金属の過塩素酸塩、アルカリ土類金属の過塩素酸塩等の公知の塩が挙げられる。
【0034】
これらの導電剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0035】
導電剤の含有量は、弾性層の目的とする特性が得られる範囲内であれば、特に制限はない。
具体的には、電子導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、1質量部以上90質量部以下であることが好ましい。
一方、イオン導電性物質の場合、導電剤の含有量は、弾性材料100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0036】
弾性層におけるその他の添加剤としては、軟化剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0037】
弾性層の体積抵抗率は、例えば、弾性層が抵抗調整層を兼ねる場合、例えば、10Ωcm以上1014Ωcm以下がよく、好ましくは10Ωcm以上1012Ωcm以下、より好ましくは10Ωcm以上1012Ωcm以下である。
【0038】
弾性層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。弾性層からシート状の測定試料を採取し、その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料厚(cm))
【0039】
弾性層の表面粗さRzは、トナー又はゴミが表面層の凹部に溜まることを抑制する点から、例えば、20μm以下がよい。
【0040】
弾性層の表面粗さRzは、次に示す方法により測定された値である。JIS B 0601(1994)に従って、弾性層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を測定し、その平均値とした。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
【0041】
弾性層の厚みは、帯電部材を適用する装置によって異なるが、例えば、1mm以上10mm以下がよく、好ましくは2mm以上5mm以下である。
【0042】
弾性層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。弾性層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を5から50倍の厚みに応じて適切な倍率で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。」
【0043】
(表面層)
表面層は、樹脂と、多孔質樹脂粒子と、シリコーンオイル(以下「ポリシロキサン」と称する場合もある)と、を含む。表面層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。
【0044】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、共重合ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等)が挙げられる。また、樹脂は、硬化性樹脂を硬化剤若しくは触媒により硬化又は架橋したものが好ましい。
ここで、共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種又は複数種を重合単位として含む共重合体である。なお、共重合ナイロンには、6ナイロン、66ナイロン等の他の重合単位を含んでいてもよい。
【0045】
これらの中でも、汚れ防止の観点から、樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂、4フッ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0046】
特に、ポリアミド樹脂としては、表面層の耐摩耗性、多孔質樹脂粒子の離脱抑制の点から、アルコキシメチル化ポリアミド(アルコキシメチル化ナイロン)が好ましく、より好ましくはメトキシメチル化ポリアミド(N−メトキシメチル化ナイロン)である。
【0047】
なお、樹脂は、表面層の機械的強度を向上させ、表面層の割れの発生を抑制する点から、架橋構造を有することがよい。樹脂が架橋構造を有する場合、表面層のゲル分率は50%以上100%以下が好ましく、より好ましくは60%以上100%以下である。
【0048】
ゲル分率の測定は、JIS K6796に準じて行われる。具体的には、表面層から測定試料を採取する。採取した測定試料の質量を測定し、これを溶剤抽出前の質量とする。次に、測定試料を、表面層形成用の塗布液を調製するのに用いる溶剤中に24時間浸漬した後、溶剤をろ過し、残留した残留物をろ過し、重量を測定する。この重量を抽出後の質量とする。そして、下記式に従って、ゲル分率を算出する。
・式:ゲル分率=100×(溶剤抽出後の質量)/(溶剤抽出前の質量)
【0049】
多孔質樹脂粒子としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の多孔質粒子が挙げられる。
【0050】
多孔質樹脂粒子の個数平均粒径は、例えば、0.1μm以上30μm以下がよく、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上15μm以下である。
多孔質樹脂粒子の個数平均粒径は、次の方法により測定された値である。まず、多孔質樹脂粒子をSEM試料台に貼りつけた導電性両面テープ上に保持し、これをサンプルとする。このサンプルをSEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。例えば、多孔質樹脂粒子サンプルをFE−SEM(日本電子製 JSM−6700F),加速電圧5kV、の条件下二次電子像を観察する。そして、多孔質樹脂粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として、その平均値を個数平均粒径とする。
【0051】
多孔質樹脂粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して3質量部以上25質量部以下であり、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
多孔質樹脂粒子の含有量を3質量%以上とすると、目的とする表面層の表面粗さが実現され易くなり、粒状性の向上と共に、トナーの外添剤の被覆(フィルミング)が抑制され難くなる。一方、多孔質樹脂粒子の含有量を25質量部以下とすると、表面層の抵抗均一性の低下が抑えられ、粒状性が向上する。
【0052】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコーン;アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、フルオロアルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル基変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル;が挙げられる。
【0053】
これらのシリコーンオイルの中でも、画像の粒状性を向上させる点から、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0054】
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリシロキサン鎖の側鎖、両末端、及び方末端の少なくとも一つを、ポリアルキレンオキサイドで変性したシリコーンオイルが挙げられる。
【0055】
脂肪酸エステル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリシロキサン鎖の側鎖、両末端、及び方末端の少なくとも一つを、ポリエステルで変性したシリコーンオイルが挙げられる。
【0056】
シリコーンオイルの含有量は、樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
シリコーンオイルの含有量を0.1質量部以上とすると、表面層32を形成するときに生じるベナードセル現象の発生が抑制され、粒状性に優れた画像が得られる。一方、シリコーンオイルの含有量を10質量部以下とすることで、表面層からシリコーンオイルが染み出す現象(ブリード)の発生が抑制され易くなり、帯電部材の保管特性が向上する。
【0057】
表面層におけるその他の添加剤としては、例えば、導電剤、多孔質粒子以外の充填剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等の通常表面層に添加され得る周知の添加剤が挙げられる。
【0058】
表面層の体積抵抗率は、例えば、10Ωcm以上1014Ωcm以下がよく、好ましくは10Ωcm以上1012Ωcm以下、より好ましくは10Ωcm以上1012Ωcm以下がよい。
【0059】
表面層の体積抵抗率は、次に示す方法により測定された値である。表面層をアルミやステンレス等の金属の平板又は体積抵抗が10Ωcm以下のシート状のゴム材等に塗布し、測定試料を得る。その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料膜厚(cm))
【0060】
ここで、フルデバイス(部材全体)の抵抗としては、シート状に形成した弾性層上に表面層を片面のみ形成して、測定試料を得る。その測定試料に対し、JIS−K−6911(1995)に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/測定試料の厚み)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加した後、その流れる電流値より、下記式を用いて算出する。
式: 体積抵抗率(Ωcm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定試料の厚み(cm))
【0061】
表面層の表面粗さRzは、画像の粒状性を向上させると共に、トナーの外添剤の被覆(フィルミング)を抑制する点から、2μm以上10μm以下がよく、好ましくは3μm以上8μm以下、より好ましくは3μm以上6μm以下である。
【0062】
表面層の表面粗さRzは、次に示す方法により測定された値である。JIS B 0601(1994)に従って、表面層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を測定し、その平均値とした。測定装置としては、東京精密株式会社製、サーフコム1400を用いる。測定条件は、カットオフ:0.8mm、測定長:2.4mm、トラバーススピード:0.3mm/secとする。
【0063】
表面層の表面自由エネルギーは、繰り返し画像を形成しても、粒状性に優れた画像を得られる点から、例えば、50mN/m以上90mN/m以下がよく、好ましくは55mN/m以上90mN/m以下である。
【0064】
表面層の表面自由エネルギーは、次に示す方法により測定された値である。常温常湿(22℃、55%RH)環境下で、表面自由エネルギーの双極子成分、分散成分および水素結合成分が既知である試薬として純水、ヨウ化メチレン、α−ブロモナフタレン、エチレングリコールを使用し、接触角計CA−X(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、表面層の表面に対する接触角を測定し、測定結果に基づき表面自由エネルギー解析ソフトEG−11(商品名;協和界面株式会社製)を用いて、Fowkesの式に基づく表面自由エネルギーを算出する。但し、試薬の滴下量は2.5μLとし、接触角測定までの時間は試薬を滴下してから60秒後の接触角を測定する。
【0065】
ここで、帯電部材の表面のダイナミック超微小硬度は、汚染や割れの点から、例えば、0.04以上0.5以下がよく、好ましくは0.08以上0.3以下である。
【0066】
帯電部材の表面のダイナミック超微小硬度(以下、「DH」とも称する)は、圧子を試料に一定の押込み速度(mN/s)で進入させたときの試験荷重をP(mN)、押込み深さをD(μm)としたとき、下記式より算出された硬度である。但し、下記式において、αは圧子形状による定数を表す。
式:DH=α×P/D
なお、ダイナミック超微小硬度の測定は、ダイナミック超微小硬度計DUH−W201S((株)島津製作所社製)により行った。ダイナミック超微小硬度は、軟質材料測定により、三角錐圧子(頂角:115°、α:3.8584)を、帯電部材の表面層に押込み速度0.14mN/s、試験荷重1.0mNで進入させた時の押込み深さDを測定することにより求められる。
【0067】
表面層の厚みは、弾性層からのブリード物(滲み出す液状物)及びブルーム物(析出する固形物)の帯電部材の表面への移動を抑制すると共に、表面層の抵抗安定性の点から、例えば、2μm以上25μm以下がよく、好ましくは3μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下であり、更に好ましくは5μm以上15μm以下である。
【0068】
表面層の厚みは、次に示す方法により測定された値である。表面層(帯電部材)の軸方向両端20mm位置及び中央部の3か所を片刃ナイフで切り取り、切り取った試料の断面を倍率1000倍で観察して、膜厚を測定してその平均値とした。測定装置は、キーエンス社製、デジタルマイクロスコープVHX−200を用いる。
【0069】
表面層は、各成分を溶剤に分散させて塗布液を調製し、先立って形成した弾性層上に、この塗布液を塗布した後、加熱することで形成する。
塗布液の塗布方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、フロー塗布法、リング塗布法、ダイ塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。
塗布液に用いる溶剤としては、特に限定されず一般的なものが使用され、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの溶媒を使用してもよい。また、これらの他、種々の溶媒を使用してもよいが、電子写真感光体の生産に一般的に使用される浸漬塗布法を適用するためには、アルコール溶剤若しくはケトン溶剤、又はそれらの混合溶剤が挙げられる。
【0070】
[帯電装置]
以下、本実施形態に係る帯電装置について説明する。
図3は、本実施形態に係る帯電装置の概略斜視図である。
【0071】
本実施形態に係る帯電装置は、帯電部材として、上記本実施形態に係る帯電部材を適用した形態である。
具体的には、本実施形態に係る帯電装置12は、図3に示すように、例えば、帯電部材121と、クリーニング部材122と、が特定の食い込み量で接触して配置されている。そして、帯電部材121の基材30およびクリーニング部材122の基材122Aの軸方向両端は、各部材が回転自在となるように導電性軸受け123(導電性ベアリング)で保持されている。導電性軸受け123の一方には電源124が接続されている。
なお、本実施形態に係る帯電装置は、上記構成に限られず、例えば、クリーニング部材122を備えない形態であってもよい。
【0072】
クリーニング部材122は、帯電部材121の表面を清掃するための清掃部材であり、例えば、ロール状で構成されている。クリーニング部材122は、例えば、円筒状または円柱状の基材122Aと、基材122Aの外周面に弾性層122Bと、で構成される。
【0073】
基材122Aは、導電性の棒状部材であり、その材質は例えば、鉄(快削鋼等),銅,真鍮,ステンレス,アルミニウム,ニッケル等の金属が挙げられる。また、基材122Aとしては、外周面にメッキ処理を施した部材(例えば樹脂や、セラミック部材)、導電剤が分散された部材(例えば樹脂や、セラミック部材)等も挙げられる。基材122Aは、中空状の部材(筒状部材)であってもよし、非中空状の部材であってもよい。
【0074】
弾性層122Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなり、内部や表面に空洞や凹凸部(以下、セルという。)が存在し、弾性を有していることがよい。弾性層122Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミンまたはポリプロピレン、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレン、シリコーン、ニトリル、等の発泡性の樹脂材料またはゴム材料を含んで構成される。
【0075】
これらの発泡性の樹脂材料またはゴム材料のなかでも、帯電部材121との従動摺擦によりトナーや外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電部材121の表面にクリーニング部材122の擦れによるキズをつけ難くするために、また、長期にわたり千切れや破損が生じ難くするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタンが特に好適に適用される。
【0076】
ポリウレタンとしては、特に限定するものではなく、例えば、ポリオール(例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなど)と、イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)の反応物が挙げられ、これらの鎖延長剤(例えば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど)による反応物であってもよい。なお、ポリウレタンは、発泡剤(水やアゾ化合物(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)を用いて発泡させるのが一般的である。
【0077】
弾性層122Bのセル数としては、20/25mm以上80/25mm以下であることが好ましく、30/25mm以上80/25mm以下であることがさらに好ましく、30/25mm以上50/25mm以下であることが特に好ましい。
【0078】
弾性層122Bの硬さとしては、100N以上500N以下が好ましく100N以上400N以下がさらに好ましく、150N以上400N以下が特に好ましい。
【0079】
導電性軸受け123は、帯電部材121とクリーニング部材122とを一体で回転自在に保持すると共に、当該部材同士の軸間距離を保持する部材である。導電性軸受け123は、導電性を有する材料で製造されていればいかなる材料および形態でもよく、例えば、導電性のベアリングや導電性の滑り軸受けなどが適用される。
【0080】
電源124は、導電性軸受け123へ電圧を印加することにより帯電部材121とクリーニング部材122とを同極性に帯電させる装置であり、公知の高圧電源装置が用いられる。
【0081】
本実施形態に係る帯電装置12では、例えば、電源124から導電性軸受け123に電圧が印加されることで、帯電部材121とクリーニング部材122とが同極性に帯電する。
【0082】
[画像形成装置、プロセスカートリッジ]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成装置と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。
【0083】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、例えば上記構成の画像形成装置に脱着され、像保持体と、像保持体を帯電する帯電装置と、を備える。そして、帯電装置として、上記本実施形態に係る帯電装置を適用する。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、必要に応じて、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置および転写後の像保持体表面の残留トナーを除去するクリーニング装置からなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0084】
次に、本実施形態に係る画像形成装置、およびプロセスカートリッジについて図面を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図5は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【0085】
本実施形態に係る画像形成装置101は、図4に示すように、像保持体10を備え、その周囲に、像保持体を帯電する帯電装置12と、帯電装置12により帯電された像保持体10を露光して潜像を形成する露光装置14と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、現像装置16により形成したトナー像を記録媒体Pに転写する転写装置18と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を備える。また、転写装置18により記録媒体Pに転写されたトナー像を定着する定着装置22を備える。
【0086】
そして、本実施形態に係る画像形成装置101は、帯電装置12として、例えば、帯電部材121と、帯電部材121に接触配置されたクリーニング部材122と、帯電部材121およびクリーニング部材122の軸方向両端を各部材が回転自在となるように保持する導電性軸受け123(導電性ベアリング)と、導電性軸受け123の一方に接続された電源124と、が配設された、上記本実施形態に係る帯電装置が適用されている。
【0087】
一方、本実施形態の画像形成装置101は、帯電装置12(帯電部材121)以外の構成については、従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成が適用される。以下、各構成の一例につき説明する。
【0088】
像保持体10は、特に制限なく、公知の感光体が適用されるが、感光層を電荷発生層と電荷輸送層とに分離した、いわゆる機能分離型と呼ばれる構造の有機感光体が好適に適用される。また、像保持体10は、その表面層が電荷輸送性を有し架橋構造を有する保護層で被覆されているものも好適に適用される。この保護層の架橋成分としてシロキサン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アクリル樹脂で構成された感光体も好適に適用される。
【0089】
露光装置14としては、例えば、レーザー光学系やLED(Light Emitting Diode)アレイ等が適用される。
【0090】
現像装置16は、例えば、現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を像保持体10に接触若しくは近接させて、像保持体10の表面の潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像装置である。現像装置16の現像方式は、既知の方式として二成分現像剤による現像方式が好適に適用される。この二成分現像剤による現像方式には、例えば、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。
【0091】
転写装置18としては、例えば、コロトロン等の非接触転写方式、記録媒体Pを介して導電性の転写ロールを像保持体10に接触させ記録媒体Pにトナー像を転写する接触転写方式のいずれを適応してもよい。
【0092】
クリーニング装置20は、例えば、クリーニングブレードを像保持体10の表面に直接接触させて表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する部材である。クリーニング装置20としては、クリーニングブレード以外にクリーニングブラシ、クリーニングロール等を適用してもよい。
【0093】
定着装置22としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好適に適用される。加熱定着装置は、例えば、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層又は耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し特定の接触圧で接触して配置され、円筒状芯金の外周面又はベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラまたは加圧ベルトと、で構成される。未定着のトナー像の定着プロセスは、例えば、定着ローラと加圧ローラまたは加圧ベルトとの間に未定着のトナー像が転写された記録媒体Pを挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。
【0094】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、中間転写体を利用した中間転写方式の画像形成装置、各色のトナー像を形成する画像形成ユニットを並列配置させた所謂タンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0095】
一方、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、図5に示すように、上記図4に示す画像形成装置において、露光のための開口部24A、除電露光のための開口部24Bおよび取り付けレール24Cが備えられた筐体24により、像保持体10と、像保持体を帯電する帯電装置12と、露光装置14により形成した潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置16と、転写後の像保持体10表面の残留トナーを除去するクリーニング装置20と、を一体的に組み合わせて保持して構成したプロセスカートリッジ102である。そして、プロセスカートリッジ102は、上記図4に示す画像形成装置101に脱着自在に装着されている。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0097】
[実施例1]
(帯電ローラAの作製)
−弾性層の形成−
表1に示した組成の混合物(表1の配合比は質量部)をオープンロールで混練りし、SUS303を材質とする直径8mmの導電性支持体表面に接着層を介してプレス成形機を用いて直径12.5mmのロールを形成した。その後、研磨により直径12mmの導電性弾性ロールを得た。
【0098】
【表1】
【0099】
−表面層の形成−
表2に示した組成の混合物(表2の配合比は質量部)15質量部をメタノール85質量部で希釈し、ビーズミルにて分散し得られた分散液を、得られた導電性弾性ロールの弾性層の外周面に浸漬塗布した後、140℃で30分間加熱して架橋させ、乾燥し、厚さ15μmの表面層を形成し、帯電ロールAを得た。
【0100】
【表2】
【0101】
[実施例2]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を10質量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を0.5質量部にして、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールBを得た。
【0102】
[実施例3]
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を1.0質量部にして、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例2と同様にして帯電ロールCを得た。
【0103】
[実施例4]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を5質量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を1.0質量部にして、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールDを得た。
【0104】
[実施例5]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を3質量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を10質量部にして、膜厚3μmの表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールEを得た。
【0105】
[実施例6]
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンをポリエステル変性ポリジメチルシロキサン(商品名:BYK310/BYK社製)にして、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例3と同様にして帯電ロールFを得た。
【0106】
[比較例1]
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを配合せず、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例2と同様にして帯電ロールGを得た。
【0107】
[比較例2]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を26質量部にした以外は、実施例1と同様にして帯電ロールHを得た。
【0108】
[比較例3]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を2質量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を15質量部にして、膜厚3μmの表面層を形成した以外は、実施例1と同様にして帯電ロールIを得た。
【0109】
[実施例7]
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンをフッ素変性ポリシロキサン(商品名:FL−100 信越化学工業社製)に変更して、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例3と同様にして帯電ロールJを得た。
【0110】
[実施例8]
多孔質ポリアミドフィラーの配合比を25質量部にして、膜厚10μmの表面層を形成した以外は、実施例3と同様にして帯電ロールKを得た。
【0111】
[実施例9]
下記組成の混合物をビーズミルにて分散し得られた分散液を、MEK(メチルエチルケトン)で希釈し、前記導電性弾性ロールの表面に浸漬塗布した後、180℃で30分間加熱乾燥した以外は実施例3と同様にして帯電ロールLを得た。
・高分子材料: 100質量部
(飽和共重合ポリエステル樹脂溶液 バイロン30SS:東洋紡績社製)
・硬化剤: 26.3質量部
(アミノ樹脂溶液 スーパーベッカミンG−821−60:DIC社製)
・導電剤: 13質量部
(カーボンブラック MONARCH1000:キャボット社製)
・多孔質樹脂粒子: 10質量部
(多孔質ポリアミドフィラー Orgasol 2001UDNAT1/アルケマ社製)
・酸触媒(NACURE4167/キングインダストリー社製):1.0質量部
・シリコーンオイル: 1.0質量部
(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン BYK307/BYK社製))
【0112】
[比較例4]
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの配合比を0.08質量部にした以外は、実施例8と同様にして帯電ロールMを得た。
【0113】
[評価1]
各例で作製した帯電ロールについて、既述の方法に従って、表面層の表面粗さRz、厚み、表面自由エネルギー、弾性層シートに表面層をコートした測定物の体積抵抗率を測定した。また、各例で作製した帯電ロールの表面層を観察し、ベナードセルの発生状況について確認した。その結果を表3に示す。
【0114】
−ベナードセルの観察−
測定装置として、デジタルマイクロスコープVHX−200(キーエンス社製)を用い、帯電ロールの軸方向中央部を500倍で観察して、ベナードセルの有無を確認した。
【0115】
[評価2]
各例で作製した帯電ロールを、富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressの改造機に搭載し、以下の評価を行った。結果を表3にまとめて示す。
【0116】
(画像の粒状性の評価)
カラーノイズの評価は、各20mm×20mmの大きさのパッチを、画像密度10〜100%まで、10%毎に採取し、最もざらつき感の大きいパッチを選択し、目視により評価した。
G1:ざらつき感がない
G2:わずかにざらつき感がある
G3:ざらつき感がある
G4:大きなざらつき感がある
【0117】
(表面層の割れの評価)
画像密度5%のランダムチャートを10℃、15%RH環境下でA4用紙200,000枚印印刷後、デジタルマイクロスコープVHX−200(キーエンス社製)を用い700倍以上1000倍以下で全面観察して、評価した。
G1:全面割れの発生がない
G2:端部に極軽微な割れが散見される。(1以上5以下)
G3:端部に軽微な割れが散見される。(6以上10以下)
G4:端部に割れが発生(11以上)
【0118】
(保管評価)
帯電ロールを富士ゼロックス社製700 Digital Color Press用のドラムカートリッジに装着し、45℃、95%環境下に1ヶ月放置した後、ドラムカートリッジを富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressの改造機に装着して、常温常湿(22℃55%RH)環境で画像密度30%の全面ハーフトーン画像を出力し、下記の基準でハーフトン画像中での帯電ロールピッチおよび感光体ピッチのスジの発生有無を目視により評価した。
G1:スジの発生無し。
G2:極軽微なスジ発生。
G3:軽微なスジ発生。
G4:スジ発生。
【0119】
(帯電ロール汚染評価)
常温常湿(22℃55%RH)環境で画像密度30%の全面ハーフトーン画像をA3用紙(富士ゼロックス社製)に10万枚出力した。その後、装置から帯電ロールを取り出し、下記の基準で目視にて汚染状態を評価した。
G1:極軽微な汚染が確認された。
G2:軽微な汚染が確認された。
G3:汚染が確認された。
G4:甚大な汚染が確認された。
【0120】
【表3】
【0121】
上記結果から、本実施例では、比較例1〜2に比べ、画像の粒状性も良好であることがわかる。また、本実施例では、表面層の割れ評価、保管評価、帯電ロール汚れ評価についても良好であることがわかる。
特に、ポリエーテル又はポリエステル変性のシリコーンオイルを使用した本実施例3及び6は、フッ素変性のシリコーンオイルを使用した実施例7に比べ、画像の粒状性について良好であることがわかる。
なお、比較例3では、過剰にシリコーンオイルを配合したため、実施例に比べ、保管評価(感光体ピッチのスジの発生)が劣っていた。
【符号の説明】
【0122】
10 像保持体、12 帯電装置、14 露光装置、16 現像装置、18 転写装置、20 クリーニング装置、22 定着装置、24 筐体、24A 開口部、24B 開口部、24C 取り付けレール、30基材、31 導電性弾性層、32 導電性表面層、101 画像形成装置、102 プロセスカートリッジ、121 帯電部材、122 クリーニング部材、123 導電性軸受け、122A 基材、122B 弾性層、124 電源
図1
図2
図3
図4
図5