(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラスチョップドストランドに結合剤が散布されてなる複合物を加熱する加熱炉と、前記複合物を前記加熱炉に搬入するとともに前記加熱炉から搬出するベルトコンベアとを備え、前記ベルトコンベアが、前記複合物が載置される主面を有するベルトと、コンベアローラーとを備えるガラスチョップドストランドマットの製造装置であって、
前記複合物が載置されていない未載置の位置で進行する前記ベルトを加熱する加熱器と、同ベルトに付着した付着物を剥離させる剥離器とを備え、
前記剥離器は、前記ベルトの進行方向において前記加熱器よりも下流に位置することを特徴とするガラスチョップドストランドマットの製造装置。
前記ベルトコンベアのベルトを介して前記加熱器と向かい合う位置には、輻射部材が配置されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガラスチョップドストランドマットの製造装置。
前記剥離器は、前記ベルトコンベアにおけるベルトの主面に接するブラシ、及び前記ベルトコンベアにおけるベルトの主面にエアーを吹き付けるエアーノズルの少なくとも一方を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガラスチョップドストランドマットの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにガラスチョップドストランドマットは、ガラスチョップドストランドに結合剤が散布されてなる複合物が加熱炉で加熱される加熱工程を通じて得られる。この加熱工程では、複合物に含まれる結合剤が接着力又は粘着力を発現する。このため、加熱炉への複合物の搬入及び加熱炉からの複合物の搬出を行うベルトコンベアのベルトには、結合剤が付着し易い。また、ベルトコンベアのベルトには、ガラスチョップドストランドから脱落した毛羽等が付着することがある。すなわち、ベルトコンベアのベルトには、結合剤、ガラスチョップドストランドから脱落した毛羽等が混ざり合った付着物が付着することになる。ベルトコンベアで複合物を搬送中にベルトコンベアのベルトから付着物が剥離すると、その剥離した付着物がガラスチョップドストランドマットに異物として混入するおそれがある。なお、上記の特許文献1及び2は、ベルトコンベアのベルトにおける付着物の付着抑制又は付着物の除去対策について何ら教示していない。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスチョップドストランドマットへの異物の混入を抑制することの容易なガラスチョップドストランドマットの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するガラスチョップドストランドマットの製造装置は、ガラスチョップドストランドに結合剤が散布されてなる複合物を加熱する加熱炉と、前記複合物を前記加熱炉に搬入するとともに前記加熱炉から搬出するベルトコンベアとを備え、前記ベルトコンベアが、前記複合物が載置される主面を有するベルトと、コンベアローラーとを備えるガラスチョップドストランドマットの製造装置であって、前記複合物が載置されていない未載置の位置で進行する前記ベルトを加熱する加熱器と、同ベルトに付着した付着物を剥離させる剥離器とを備え、前記剥離器は、前記ベルトの進行方向において前記加熱器よりも下流に位置する。
【0008】
この構成によれば、結合剤、ガラスチョップドストランドから剥離した毛羽等が混ざり合った付着物は、ベルトコンベアのベルトを加熱する加熱器により加熱される。これにより、付着物に含まれる結合剤を炭化又は熱分解させることが可能となる。付着物に含まれる結合剤が炭化又は熱分解されることで、ベルトコンベアのベルトに対する付着物の粘着力又は接着力が低下したり、接着力が失われたりする。このように付着物は、ベルトコンベアのベルトから剥離し易い状態へ変化する。また、ベルトコンベアのベルトの進行方向において加熱器よりも下流には、ベルトコンベアのベルトに付着した付着物を剥離させる剥離器が設けられている。ここで、ベルトコンベアのベルトに付着した付着物は、加熱器によってベルトコンベアのベルトから剥離し易い状態へ変化しているため、剥離器によって容易に削減される。
【0009】
上記ガラスチョップドストランドマットの製造装置について、前記加熱器は、バーナーを含むことが好ましい。
この構成によれば、ベルトコンベアにおけるベルトの付着物に含まれる結合剤は、バーナーの炎によって容易に炭化又は熱分解される。このため、付着物をベルトコンベアのベルトから剥離し易い状態へ変化させることが容易となる。
【0010】
上記ガラスチョップドストランドマットの製造装置について、前記バーナーは、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されていることが好ましい。
ここで、バーナーが鉛直上方に炎を噴出するように配置される場合、炎の噴出する方向と炎の熱が上昇する方向とが略一致するため、加熱される領域は炎の噴出する方向のみとなる。この点、上記のようにバーナーが、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されることで、炎の噴出する方向と、炎の熱が上昇する方向とが異なるため、加熱される領域が拡大される。これにより、ベルトコンベアのベルトを効率的に加熱することができる。したがって、ベルトコンベアのベルトの付着物をベルトコンベアのベルトから剥離し易い状態へ効率的に変化させることができる。
【0011】
上記ガラスチョップドストランドマットの製造装置について、前記バーナーは、前記ベルトコンベアのベルトの進行方向に沿って複数設けられ、前記バーナーと同バーナーに隣り合うバーナーとの間には、遮蔽部材が配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、バーナーと、このバーナーに隣り合うバーナーとの間における熱の伝達が抑制されるため、バーナーの耐久性を高めることができる。また、バーナーと、これに隣り合うバーナーとをより近づけて配置することが可能となるため、加熱器を配置するスペースを確保することが容易となる。
【0013】
上記ガラスチョップドストランドマットの製造装置について、前記ベルトコンベアのベルトを介して前記加熱器と向かい合う位置には、輻射部材が配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、加熱器を効率的に利用することができる。
上記ガラスチョップドストランドマットの製造装置について、前記剥離器は、前記ベルトコンベアにおけるベルトの主面に接するブラシ、及び前記ベルトコンベアにおけるベルトの主面にエアーを吹き付けるエアーノズルの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0015】
例えば、上記のような剥離器を用いて、ベルトコンベアにおけるベルトの主面側の付着物を効率的に削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラスチョップドストランドマットへの異物の混入を抑制することが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ガラスチョップドストランドマットの製造装置の実施形態について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、ガラスチョップドストランドマットの製造装置は、堆積工程を行う堆積部11、散布工程を行う散布部12、加熱工程を行う加熱部13、及び冷却工程を行う冷却部14を備えている。
【0019】
堆積工程は、多数のガラスチョップドストランドをランダムに堆積したシート状の堆積物を形成する工程である。堆積工程を行う堆積部11は、ガラスケーキから引き出されたガラス繊維束を切断することでガラスチョップドストランドを得る切断装置と、ガラスチョップドストランドが堆積されるとともに、堆積物を散布部12へ搬送するベルトコンベアとを備えている。
【0020】
散布工程は、堆積工程で得られた堆積物に結合剤を散布する工程である。散布工程では、ガラスチョップドストランドに結合剤が散布されてなる複合物15が得られる。散布工程を行う散布部12は、堆積物に結合剤を散布する散布機と、複合物15を加熱部13へ搬送するベルトコンベアとを備えている。結合剤としては、粉体の結合剤又は液体の結合剤を用いることができる。本実施形態では、結合剤としてポリエステル系樹脂粉体を用いている。なお、散布工程では、結合剤を散布する前段階又は後段階で、水を散布されてもよい。水を散布する散布機は、散布部12に設けることができるが、これに限定されず、散布部12、堆積部11及び加熱部13の少なくとも一つに設けることができる。散布された水は、粉体の結合剤を用いる場合に、ガラスチョップドストランドへの結合剤の付着を促進する。これにより、結合剤が複合物15から脱落し難くなるため、例えば、結合剤のガラスチョップドストランドへの付着の歩留まりを高めることができる。
【0021】
加熱工程は、ガラスチョップドストランドに結合剤が散布されてなる複合物15を加熱する。加熱工程における加熱は、ガラスチョップドストランドを結合し得る状態まで結合剤を変化させる。本実施形態では粉体の結合剤を用いているため、加熱工程における加熱は、結合剤を溶融させる。
【0022】
冷却工程は、加熱された複合物15を冷却及び加圧する工程である。冷却工程を行う冷却部14は、複合物15を冷却及び加圧する一対のローラー16,16を備えている。複合物15が一対のローラー16,16間を通過することで、ガラスチョップドストランドマット17が得られる。得られたガラスチョップドストランドマット17は、例えば、図示しない巻取機によって巻き取られる。
【0023】
ガラスチョップドストランドマット17は、例えば、補強基材として用いられる。
次に、加熱部13の詳細について説明する。
加熱工程を行う加熱部13は、上記の複合物15を加熱する加熱炉21と、複合物15を加熱炉21に搬入するとともに加熱炉21から搬出するベルトコンベア31とを備えている。加熱された複合物15は、ベルトコンベア31によって加熱部13から冷却部14へ向けて送り出される。
【0024】
加熱炉21は、例えば、電気、燃焼ガス等を熱源として構成される。加熱炉21は、複合物15が搬入される搬入口と、複合物15が搬出される搬出口を有している。
ベルトコンベア31は、複数のコンベアローラー32と、無端状に形成されるベルト33とを備えている。ベルトコンベア31の各コンベアローラー32は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料から形成されている。なお、複数のコンベアローラー32の少なくとも一つは、駆動源に連結された駆動ローラーとしての役割を果たす。
【0025】
ベルトコンベア31のベルト33は、複合物15が載置される主面34を有し、その主面34を上方に向けて加熱炉21内を進行する。ベルト33は、その主面34から複合物15が分離された後、
図1の矢印で示すように進行し、散布部12へ向けて戻される。散布部12へ向けて戻されたベルト33には、再び複合物15が載置される。
【0026】
本実施形態のベルトコンベア31のベルト33には、金属製のネットが用いられている。ネットを構成する金属としては、耐食性に優れることからステンレス鋼が好ましい。
加熱部13は、複合物15が載置されていない未載置の位置で進行するベルト33を加熱する加熱器41を備えている。加熱器41は、複数のラインバーナー42により構成されている。各ラインバーナー42に流入された燃焼ガスは、ベルト33の幅方向に沿って配列された複数の噴出口からベルトコンベア31のベルト33に向けて噴出される。本実施形態の各ラインバーナー42は、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されている。
【0027】
各ラインバーナー42は、ベルトコンベア31のベルト33の付着物に含まれる結合剤を燃焼又は熱分解させる。各ラインバーナー42に供給される燃焼ガスとしては、例えば、液化石油ガスと空気との混合ガスを用いることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、加熱器41として、ベルトコンベア31のベルト33の幅方向に延在するラインバーナー42を用いているが、ラインバーナー42以外のバーナーを用いることもできる。例えば、加熱器41として、複数のバーナーをベルトコンベア31のベルト33の幅方向に沿って配置してもよい。
【0029】
ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間には、遮蔽部材43が配置されている。遮蔽部材43は、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間における熱の伝達を抑制する。詳述すると、遮蔽部材43は、ラインバーナー42の延在方向(ベルト33の幅方向)に沿って配置されている。遮蔽部材43は、耐火材料から形成される。本実施形態では、下方に配置されるラインバーナー42の熱から上方に配置されるラインバーナー42が保護される。
【0030】
遮蔽部材43は、流路を有し、この流路を通じる冷媒により強制的に冷却されることが好ましい。本実施形態の遮蔽部材43は、ステンレス鋼から形成され、内部に流路を有している。流路に供給される冷媒としては、水が好適に用いられる。冷媒は、遮蔽部材43を冷却した後に、加熱部13の外に排出されてもよいし、遮蔽部材43と冷媒を冷却する冷却機構との間で循環させてもよい。
【0031】
ベルトコンベア31のベルト33を介して加熱器41と向かい合う位置には、輻射部材44が配置されている。輻射部材44は、各ラインバーナー42から放射されるエネルギーを反射、又はエネルギーを吸収し、熱を放出することで、各ラインバーナー42から放射されるエネルギーを有効利用する。輻射部材44は、各ラインバーナー42において、燃焼ガスを噴出する噴出口と向かい合う位置に配置されることが好ましい。本実施形態の輻射部材44は、加熱器41である各ラインバーナー42の延在方向に沿って配置されている。輻射部材44は、周知の無機材料から構成される。無機材料としては、セラミックスが好適である。
【0032】
加熱部13は、複合物15が載置されていない未載置の位置で進行するベルト33に付着した付着物を剥離させる剥離器を備えている。本実施形態の剥離器は、第1ブラシローラー51の有する第1ブラシ51aと、第2ブラシローラー52の有する第2ブラシ52aとエアーノズル53とから構成されている。第2ブラシローラー52の有する第2ブラシ52aは、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向において第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aよりも下流に配置されている。エアーノズル53は、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aよりも下流に配置されている。
【0033】
第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aとエアーノズル53とは、加熱器41よりも下流に位置する剥離器を構成している。
第1ブラシローラー51は、軸部材の外周面に第1ブラシ51aが設けられたものであり、この第1ブラシ51aが、複合物15が載置されていない未載置の位置で進行するベルト33の主面34に接している。すなわち、第1ブラシ51aは、複合物15が載置されていない未載置のベルト33の主面34をブラッシングする。第2ブラシローラー52についても、第1ブラシローラー51と同様に第2ブラシ52aを有し、この第2ブラシ52aがベルトコンベア31におけるベルト33の主面34に接している。第2ブラシ52aについても、第1ブラシ51aと同様に、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34をブラッシングする。
【0034】
第1ブラシローラー51は、複数のコンベアローラー32の一つである第1コンベアローラー32aに向かい合う位置に配置されている。すなわち、ベルトコンベア31のベルト33は、第1ブラシローラー51と第1コンベアローラー32aとにより挟み込まれている。第2ブラシローラー52は、複数のコンベアローラー32の一つである第2コンベアローラー32bに向かい合う位置に配置されている。すなわち、ベルトコンベア31のベルト33は、第2ブラシローラー52と第2コンベアローラー32bとにより挟み込まれている。ここで、第1コンベアローラー32aで支持されたベルトコンベア31のベルト33は、その主面34が凸となるように湾曲している。第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aは、凸状に湾曲した主面34に接している。第2コンベアローラー32bで支持されたベルトコンベア31のベルト33についても同様に湾曲し、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aについても凸状に変形した主面34に接している。
【0035】
第1ブラシローラー51及び第2ブラシローラー52は、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向とは逆方向となるように回転駆動する。すなわち、第1ブラシローラー51は、第1コンベアローラー32aとは逆方向に回転駆動する。第2ブラシローラー52は、第2コンベアローラー32bとは逆方向に回転駆動する。なお、回転駆動する第1ブラシローラー51及び第2ブラシローラー52の周速は、ベルト33の進行速度の2倍以上であることが好ましい。
【0036】
第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aとしては、例えば、繊維が第1ブラシローラー51の軸方向に沿って直線状に配列された直線型ブラシ、繊維が第1ブラシローラー51の周方向に沿って円環状に配列された環状型ブラシ、及び、繊維が第1ブラシローラー51の軸方向に対してスパイラル状に配列されたスパイラル型ブラシが挙げられる。第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aについても、第1ブラシ51aと同様のブラシを例示することができる。本実施形態の第1ブラシ51a及び第2ブラシ52aは、スパイラル型ブラシである。
【0037】
第1ブラシ51a及び第2ブラシ52aを構成する繊維としては、例えば、樹脂繊維、及び金属繊維が挙げられる。第1ブラシ51a及び第2ブラシ52aを構成する繊維は、樹脂繊維であることが好ましく、結合剤と相溶し得る熱可塑性樹脂繊維であることがより好ましい。本実施形態の第1ブラシ51a及び第2ブラシ52aを構成する繊維は、結合剤としてのポリエステル系樹脂粉体と相溶し得るポリエステル系樹脂繊維である。
【0038】
エアーノズル53は、第2ブラシローラー52よりも下流に配置され、複合物15が載置されていない未載置の位置で進行するベルト33の主面34にエアーを吹き付ける。すなわち、エアーノズル53は、加熱部13において、ベルトコンベア31のベルト33が第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aでブラッシングされた後に、複合物15が載置されるまでの間のベルト33にエアーを吹き付ける。エアーノズル53には、加熱されたエアーを供給してもよい。
【0039】
次に、ガラスチョップドストランドマット17の製造装置の主要な動作を作用とともに説明する。
加熱部13において、ベルトコンベア31のベルト33により搬送される複合物15は、加熱炉21内を通過することで加熱される。このとき、複合物15に含まれる結合剤は、ガラスチョップドストランドを結合し得る溶融状態となる。この溶融状態の結合剤は、ベルトコンベア31のベルト33に付着し易い。このような溶融状態の結合剤は、ベルトコンベア31のベルト33に付着物を生じさせる。付着物は、結合剤とガラスチョップドストランドから剥離した毛羽等との混合物である。
【0040】
続いて、ベルトコンベア31のベルト33は、複合物15から分離され、第1コンベアローラー32a及び第1ブラシローラー51へ向けて進行する。
このとき、第1ブラシローラー51は、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34に接する第1ブラシ51aを備えているため、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34がブラッシングされる。これにより、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34の付着物が削減される。
【0041】
第1ブラシローラー51を通過したベルト33は、加熱器41である各ラインバーナー42により加熱される。このとき、ベルトコンベア31のベルト33に付着した付着物に含まれる結合剤が燃焼又は熱分解されることで、ベルトコンベア31のベルト33に対する付着物の粘着力又は接着力が低下したり、失われたりする。このように付着物は、ベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ変化する。
【0042】
ここで、各ラインバーナー42が鉛直上方に炎を噴出するように配置される場合、炎の噴出する方向と炎の熱が上昇する方向とが略一致するため、加熱される領域は炎の噴出する方向のみとなる。この点、各ラインバーナー42が、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されることで、炎の噴出する方向と、炎の熱が上昇する方向とが異なるため、加熱される領域が拡大される。これにより、ベルトコンベア31のベルト33を効率的に加熱することができる。したがって、ベルトコンベア31のベルト33の付着物をベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ効率的に変化させることができる。
【0043】
また、ラインバーナー42は、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向に沿って複数設けられ、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間には、遮蔽部材43が配置されている。このため、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間における熱の伝達が抑制されるため、ラインバーナー42の耐久性を高めることができる。また、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42とをより近づけて配置することが可能となるため、加熱器41を配置するスペースを確保することが容易となる。
【0044】
加熱部13において、ベルトコンベア31のベルト33を介して加熱器41と向かい合う位置には、輻射部材44が配置されているため、加熱器41を効率的に利用することができる。
【0045】
加熱器41である各ラインバーナー42を通過したベルト33は、第2コンベアローラー32b及び第2ブラシローラー52に向けて進行する。第2ブラシローラー52は、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34に接する第2ブラシ52aを有している。このため、ベルトコンベア31のベルト33が第2ブラシローラー52を通過することで、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34側に付着した付着物が削減される。
【0046】
特に、加熱器41である各ラインバーナー42を通過したベルト33に付着している付着物は、ベルト33から剥離し易い状態へ変化している。この点、第2ブラシローラー52は、加熱器41である各ラインバーナー42よりも下流に配置されている。このため、ベルトコンベア31のベルト33の付着物は第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aによって容易に削減される。
【0047】
第2コンベアローラー32b及び第2ブラシローラー52を通過したベルト33は、エアーノズル53へ向けて進行する。そして、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34には、エアーノズル53からエアーが吹き付けられる。ここで、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34に付着している付着物は、エアーノズル53よりも上流に配置される第1ブラシローラー51、加熱器41である各ラインバーナー42、及び第2ブラシローラー52により剥離し易くなっている。このような付着物は、エアーノズル53からエアーが吹き付けられることで容易に削減される。
【0048】
エアーノズル53を通過したベルト33の主面34には、散布部12から送られた複合物15が再び載置される。このとき、ベルトコンベア31におけるベルト33の主面34側の付着物が削減されているため、複合物15への異物の混入が抑制され易い。
【0049】
以上のようなベルトコンベア31によって、加熱部13に搬入されるとともに、加熱部13から搬出された複合物15は、冷却部14で冷却及び加圧されることで、ガラスチョップドストランドが結合剤で結合されたガラスチョップドストランドマット17が得られる。
【0050】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)加熱部13は、加熱器41であるラインバーナー42を備えている。加熱器41のラインバーナー42は、複合物15が載置されていない未載置のベルトコンベア31のベルト33を加熱する。この構成によれば、結合剤、ガラスチョップドストランドから剥離した毛羽等が混ざり合った付着物は、ベルトコンベア31のベルト33を加熱する加熱器41により加熱される。これにより、付着物に含まれる結合剤を炭化又は熱分解させることが可能となる。付着物に含まれる結合剤が炭化又は熱分解されることで、ベルトコンベア31のベルト33に対する付着物の粘着力又は接着力が低下したり、接着力が失われたりする。このように付着物は、ベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ変化する。
【0051】
更に、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向において加熱器41よりも下流には、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52a及びエアーノズル53が設けられている。第2ブラシローラー52の第2ブラシ52a及びエアーノズル53は、上述した未載置のベルトコンベア31のベルト33に付着した付着物を剥離させる剥離器としての役割を果たす。ここで、ベルトコンベア31のベルト33に付着した付着物は、加熱器41によってベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ変化しているため、第2ブラシローラー52及びエアーノズル53によって容易に削減される。このため、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制することが容易となる。
【0052】
(2)加熱部13は、加熱器41として各ラインバーナー42を備えている。この構成によれば、ベルトコンベア31におけるベルト33の付着物に含まれる結合剤は、各ラインバーナー42の炎によって容易に炭化又は熱分解される。このため、付着物をベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ変化させることが容易となる。これにより、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果を高めることができる。
【0053】
(3)加熱器41である各ラインバーナー42は、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されている。このように各ラインバーナー42が、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されることで、炎の噴出する方向と、炎の熱が上昇する方向とが異なるため、加熱される領域が拡大される。これにより、ベルトコンベア31のベルト33を効率的に加熱することができる。したがって、ベルトコンベア31のベルト33の付着物をベルトコンベア31のベルト33から剥離し易い状態へ効率的に変化させることができる。このため、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果をより高めることができる点で有利である。
【0054】
(4)加熱器41であるラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間には、遮蔽部材43が配置されている。この構成によれば、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42との間における熱の伝達が抑制されるため、ラインバーナー42の耐久性を高めることができる。また、ラインバーナー42と、これに隣り合うラインバーナー42とをより近づけて配置することが可能となるため、加熱器41を配置するスペースを確保することが容易となる。特に、上記(3)欄に記載した各ラインバーナー42の配置では、ラインバーナー42がこれに隣り合うラインバーナー42の熱の影響を受け易くなるため、ラインバーナー42の耐久性を高める観点で、遮蔽部材43を設けることが有利である。
【0055】
(5)加熱部13において、ベルトコンベア31のベルト33を介して加熱器41である各ラインバーナー42と向かい合う位置には、輻射部材44が配置されている。この構成によれば、加熱器41である各ラインバーナー42を効率的に利用することができる。
【0056】
(6)加熱部13において、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aを構成する繊維は、樹脂繊維である。この構成によれば、第1ブラシ51aを構成する繊維が脱落したとしても、第1ブラシ51aの脱落繊維が樹脂繊維であれば、第1ブラシ51aを要因として異物が複合物15に混入しても、ガラスチョップドストランドマット17の品質への影響が小さい。このため、例えば、ガラスチョップドストランドマット17の歩留まりを向上することが容易となる。加熱部13において、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aを構成する繊維についても、樹脂繊維であるため、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aと同様の効果を奏する。
【0057】
(7)加熱部13において、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aを構成する繊維は、結合剤と相溶し得る熱可塑性樹脂繊維である。このため、複合物15に第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aの脱落繊維が混入したとしても、その脱落繊維は、結合剤と相溶し得るため、ガラスチョップドストランドマット17における異物になり難い。加熱部13において、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aを構成する繊維についても、結合剤と相溶し得る熱可塑性樹脂繊維であるため、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aと同様の効果を奏する。
【0058】
(8)加熱部13において、第1ブラシローラー51は、ベルトコンベア31におけるベルト33の進行方向とは逆方向となるように回転駆動するため、ベルトコンベア31におけるベルト33は、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aによって効率的にブラッシングされる。これにより、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果を高めることができる。
【0059】
加熱部13において、第2ブラシローラー52についても、ベルトコンベア31におけるベルト33の進行方向とは逆方向となるように回転駆動するため、第1ブラシローラー51と同様の効果を奏する。
【0060】
(9)加熱部13において、上記(8)欄に記載のように回転駆動する第1ブラシローラー51の周速は、ベルトコンベア31におけるベルト33の進行速度の2倍以上であることが好ましい。この場合、ベルトコンベア31におけるベルト33は、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aによってより効率的にブラッシングされるため、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果をより高めることができる。
【0061】
加熱部13において、第2ブラシローラー52の周速についても、第1ブラシローラー51と同様の効果を得るという観点から、ベルトコンベア31におけるベルト33の進行速度の2倍以上であることが好ましい。
【0062】
(10)加熱部13は、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aと、ベルトコンベア31のベルト33を支持する第1コンベアローラー32aとがベルトコンベア31のベルト33を挟み込む構成を有している。この構成によれば、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aが接するベルトコンベア31のベルト33は、第1コンベアローラー32aで支持された状態であるため、そのベルト33の主面34に対する第1ブラシ51aの圧力が安定し易くなる。したがって、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果が高まり易い。
【0063】
加熱部13は、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aと、ベルトコンベア31のベルト33を支持する第2コンベアローラー32bとがベルト33を挟み込む構成を有している。この構成によっても、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51a及び第1コンベアローラー32aと同様の効果を奏する。
【0064】
(11)ベルトコンベア31のベルト33は、ネットにより構成されている。この構成によれば、厚み方向に貫通する孔を有しないシート状のベルトと比較して、加熱炉21で加熱された複合物15とベルト33との接触箇所が少ないため、複合物15がベルトから分離し易くなり、ベルトコンベア31による複合物15の次工程への搬出が円滑に行われる。これにより、複合物15に不要な力が加わり難くなり、ガラスチョップドストランドマット17の安定した連続生産が可能となる。
【0065】
(12)ベルトコンベア31のベルト33は、ネットにより構成され、加熱部13は、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51aと、ベルト33を支持する第1コンベアローラー32aとがベルトコンベア31のベルト33を挟み込む構成を有している。この構成によれば、第1コンベアローラー32aで支持されたベルトコンベア31のベルト33は、その第1コンベアローラー32aによってベルトコンベア31におけるベルト33の主面34が凸となるように湾曲する。すなわち、ネットから構成されるベルト33は、第1ブラシローラー51によってベルトコンベア31におけるベルト33の主面34が凸となるように湾曲することで、ベルト33の主面34側の網目構造が拡開される。このように網目構造が拡開されたベルト33の主面34に、第1ブラシローラー51における第1ブラシ51aが接することで、網目構造の交差部分に付着した付着物にも第1ブラシ51aが好適に接し易くなる。したがって、ネットから構成されるベルト33を用いた場合に、ガラスチョップドストランドマット17への異物の混入を抑制する効果をより高めることができる点で有利である。
【0066】
加熱部13は、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52aと、ネットにより構成されたベルト33を支持する第2コンベアローラー32bとがベルトコンベア31のベルト33を挟み込む構成を有している。この構成においても、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51a、及び第1コンベアローラー32aと同様の効果を奏する。
【0067】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記加熱部13の第1ブラシローラー51は、省略されてもよい。
【0068】
・前記実施形態では、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向において加熱器41よりも下流に位置する剥離器として、第2ブラシローラー52及びエアーノズル53を採用しているが、第2ブラシローラー52及びエアーノズル53のいずれか一方は、省略されてもよい。
【0069】
・前記実施形態では、剥離器として、第1ブラシローラー51の第1ブラシ51a、第2ブラシローラー52の第2ブラシ52a、及びエアーノズル53を採用している。しかし、これに限定されず、例えば、ベルトコンベア31のベルト33に振動を加えることで、ベルトコンベア31のベルト33に付着した付着物を剥離させる加振器を剥離器として採用されてもよい。
【0070】
・前記加熱部13において、遮蔽部材43、及び輻射部材44の少なくとも一方は、省略されてもよい。
・前記加熱部13の加熱器41は、複数のラインバーナー42を採用しているが、ラインバーナー42の数は特に限定されず、単数であってもよい。
【0071】
・前記加熱部13の各ラインバーナー42は、鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されているが、少なくとも一つのラインバーナー42が鉛直上方に対して傾斜する方向へ炎を噴出するように配置されていてもよい。この場合であっても、上記(3)欄で述べた作用効果が得られる。
【0072】
・前記加熱部13の各ラインバーナー42は、いずれも鉛直上方に炎を噴出するように配置されてもよい。
・前記加熱部13の加熱器41は、ラインバーナー42等のバーナーに限定されず、例えば、電熱ヒーターを用いることもできる。なお、加熱部13の加熱器41として、例えば、電熱ヒーターとラインバーナー42とを併用することもできる。
【0073】
・前記ベルトコンベア31のベルト33は、ネットから構成されているが、厚み方向に貫通する孔を有しないシート状のベルト33に変更されてもよい。
・ベルトコンベア31のベルト33は、金属製であるが、無機繊維、ガラスフィルム等の耐熱性を有する材料から構成されていてもよい。すなわち、加熱部13が加熱器41を備える場合、ベルトコンベア31のベルト33は、加熱器41の熱に耐え得る耐熱性材料から構成される。なお、ベルトコンベア31のベルト33は金属製であることにより、加熱器41の熱に対する耐熱性が得られ易いため、ベルトコンベア31の変形及び熱分解を防止することができる。
【0074】
・前記加熱部13の第1ブラシローラー51と第1コンベアローラー32aとは、ベルトコンベア31のベルト33を挟み込まない位置に配置されてもよい。加熱部13の第2ブラシローラー52の位置についても、同様に変更されてもよい。
【0075】
・前記加熱部13の第1ブラシローラー51は、ベルトコンベア31のベルト33の進行方向と同じ方向に回転駆動してもよい。この場合、第1ブラシローラー51の周速は、ベルトコンベア31のベルト33の進行速度よりも速いことが好ましい。加熱部の第2ブラシローラー52についても、同様に変更されてもよい。
【0076】
・前記加熱部13の第1ブラシローラー51は、長尺状のブラシ基台の長手方向に沿って第1ブラシ51aが配列されるとともに回動不能なブラシ部材に変更されてもよい。加熱部13の第2ブラシローラー52についても、第1ブラシローラー51と同様に変更されてもよい。なお、加熱部13において、第1ブラシ51a又は第2ブラシ52aは、ベルトコンベア31のベルト33における幅方向に沿って往復動させる機構を備えていてもよい。
【0077】
・前記加熱部13のベルトコンベア31におけるベルト33は、散布部12とは独立して設けられているが、散布部12及び加熱部13に無端状のベルトを架け渡すことで、散布部12のベルトコンベア31と加熱部13のベルトコンベアとは併合されてもよい。更に、堆積部11のベルトコンベアと、散布部12のベルトコンベアと、加熱部13のベルトコンベア31とは併合されてもよい。このようにベルトコンベアを併合させる場合、加熱器41、遮蔽部材43、輻射部材44、又は剥離器は、必要に応じて加熱部13以外に設置されてもよい。