(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136879
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20170522BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20170522BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20170522BHJP
B05C 5/02 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01G13/00 391B
B05C9/14
!B05C5/02
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-238872(P2013-238872)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-99691(P2015-99691A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 靖郎
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−284713(JP,A)
【文献】
特開2005−276254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01G 11/00−11/86
H01G 13/00
B05C 9/14
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極製造装置に用いられる乾燥装置であって、
活物質を含有する塗料が塗布された塗布膜が形成された金属箔を乾燥させる乾燥炉と、
前記金属箔の搬送方向において、前記乾燥炉の下流側に設けられており、熱伝導率が3.0W/(m・K)以下である樹脂製の搬送ローラと、を備え、
前記樹脂製の搬送ローラは、前記乾燥炉に隣接して配置されている、乾燥装置。
【請求項2】
前記樹脂製の搬送ローラの熱伝導率が、1.0W/(m・K)以下である、請求項1に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造装置に用いられる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置で用いられる電極を製造する装置として、特許文献1に示すような電極製造装置が知られている。電極製造装置は、ローラなどにより送り出される金属箔上に活物質を含有する塗料を塗布する部分である塗工装置と、連続的に送り出される塗布膜が形成された金属箔を加熱乾燥させて、金属箔に活物質層を形成する乾燥炉とを備える。このような電極製造装置では、乾燥炉出口において、活物質層が形成された金属箔と搬送ローラとが接触することにより金属箔が急冷され、活物質層が形成された金属箔表面に皺が発生するという問題がある。
【0003】
このような問題に対し特許文献1では、金属箔の進行方向に沿って温度が上昇すると共に、終端部においては進行方向に沿って徐々に温度が低下するように乾燥炉内の温度を調整すると共に、ガイドロールの表面温度を調整することにより、活物質層が形成された金属箔表面に皺が発生することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−102696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の乾燥装置では、進行方向に沿って乾燥炉内の温度が変化するように制御する装置は、その構成が複雑であり、その制御も複雑となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で、活物質層が形成された金属箔表面に皺が発生することを低減することができる乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る乾燥装置は、電極製造装置に用いられる乾燥装置であって、活物質を含有する塗料が塗布された塗布膜が形成された金属箔を乾燥させる乾燥炉と、金属箔の搬送方向において、乾燥炉の下流側に設けられており、熱伝導率が3.0W/(m・K)以下である樹脂製の搬送ローラと、を備えている。
【0008】
このような構成の乾燥装置では、ステンレスなどの金属で形成されたローラと比べて、熱伝導率が低いので、金属箔からローラへの熱の移動が相対的に少なくなる。これにより、金属箔における熱収縮を少なくすることができるので、活物質層が形成された金属箔(帯状電極)の表面に皺が発生することを低減することができる。
【0009】
また、一実施形態において、樹脂製の搬送ローラの熱伝導率を、1.0W/(m・K)以下としてもよい。
【0010】
このような乾燥装置では、活物質層が形成された金属箔表面に皺が発生することをより一層低減することができる。
【0011】
また、一実施形態において、樹脂製の搬送ローラは、乾燥炉に隣接して配置されていてもよい。
【0012】
このような乾燥装置では、特に金属箔の急冷が予想される場所において、皺が発生することを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、活物質層が形成された金属箔表面に皺が発生することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る乾燥装置を備えた電極製造装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示す乾燥炉の出口に配置される炉外搬送ローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して一実施形態に係る乾燥装置10を備えた電極製造装置1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、一実施形態に係る乾燥装置10を備えた電極製造装置1を示す概略構成図である。電極製造装置1は、帯状の金属箔Lに電極ペースト(塗布膜)Pを塗布して、その塗布した電極ペーストPを乾燥し、金属箔Lに活物質層Aが形成された電極を製造する。電極製造装置1は、巻出ロール3と、塗工装置5と、乾燥装置7と、巻取ロール9とを備えている。電極製造装置1は、
図1に示すように、ロール状に巻き取られている帯状の金属箔Lが巻出ロール3から送り出され、巻取ロール9で金属箔Lに活物質層Aが形成された帯状電極BEがロール状に巻き取られる。なお、金属箔Lの搬送中には、帯状の金属箔L(帯状電極BE)に所定のテンション(張力)がかかっている。
【0017】
図1に示される電極製造装置1において製造される電極は、例えば、二次電池又は電気二重層キャパシタなどの蓄電装置に用いられる。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。また、製造される電極は、一次電池に用いられてもよい。下記に詳述する一実施形態は、リチウムイオン二次電池に用いられる電極を製造する場合とする。
【0018】
電極は、金属箔の少なくとも一面に電極ペーストがそれぞれ塗布されて活物質層が形成されている。電極には、電極ペーストが塗布されていないタブ部分を有していてもよい。金属箔の例には、銅箔、アルミニウム箔などが含まれる。電極ペーストは、活物質、バインダ及び溶剤などを含んでいる。活物質は、正極活物質及び負極活物質のいずれであってもよい。
【0019】
正極活物質には、複合酸化物、金属リチウム及び硫黄などが含まれる。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。負極活物質には、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボンなどのカーボン、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)などの金属酸化物及びホウ素添加炭素などが含まれる。
【0020】
溶剤の例には、NMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤及び水などが含まれる。また、電極ペーストは、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック及びケッチェンブラックなどの導電助剤を含んでいてもよい。また、電極ペーストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤を含んでいてもよい。
【0021】
巻出ロール3は、電極ペーストPが塗布される金属箔Lが巻回されている。この巻出ロール3及び後段にて説明する巻取ロール9の作動又は停止、及び回転速度(金属箔Lの送り出し速度)などは、図示しない制御装置及び各ロールを駆動する駆動装置によって制御される。
【0022】
塗工装置5は、帯状の金属箔L上に活物質層Aを形成するための電極用の電極ペーストPを塗布する装置である。塗工装置5は、容器51と、ガン53と、塗布ロール59と、を有している。
【0023】
容器51は、投入口51aからそれぞれ投入された活物質、バインダ、溶剤などが攪拌翼51bによって混練・攪拌され、電極ペーストPとして貯蔵する。ガン53は、金属箔L上に電極ペーストPを塗布する。ガン53は、容器51から供給管55を介して電極ペーストPが供給され、その供給量はポンプ57によって制御される。ガン53は、供給された電極ペーストPを内部のマニホールド53aに一旦溜め、マニホールド53aから先端のノズル53bに電極ペーストPを押し出し、ノズル53bから金属箔L上に電極ペーストPを吐出させる。ポンプ57などの制御は、図示しない制御装置によって行われる。塗布ロール59は、ガン53に対向する位置に配置されている。
【0024】
なお、ここでは、塗工装置5における塗布方式としてダイ方式を説明したが、コンマロール方式などの他の塗布方式も適用可能である。
【0025】
乾燥装置7は、塗工装置5において金属箔L上に塗布された電極ペーストPを乾燥し、電極ペーストP中の溶剤を除去する装置である。乾燥装置7は、乾燥炉71と、炉内搬送ローラ73と、炉外搬送ローラ(搬送ローラ)75と、を有している。
【0026】
乾燥炉71は、金属箔Lの搬送経路を形成する炉内搬送ローラ73と、炉内搬送ローラ73により案内される帯状の金属箔Lの経路に沿って配置された加熱手段(図示せず)と、を有している。電極ペーストPが塗布された金属箔Lは、乾燥炉71内を通過している間に加熱され、電極ペーストP中の溶剤が除去され、金属箔L上に活物質層Aが形成される。
【0027】
図2に示すように、炉外搬送ローラ(搬送ローラ)75は、乾燥炉71の下流側、言い換えれば、乾燥炉71の出口71aに隣接して設けられている。炉外搬送ローラ75は、駆動力を持たない従動ローラである。炉外搬送ローラ75は、熱伝導率が3.0W/(m・K)以下である樹脂製のローラである。このような樹脂製ローラの例には、金属又はセラミックスなどの高熱伝導率材料を混合した樹脂製のローラなどが含まれる。また、炉外搬送ローラ75の熱伝導率を1.0W/(m・K)以下とすることもできる。このような樹脂製ローラの例には、PP:ポリプロピレン(0.12W/(m・K))、PA:ナイロン(0.20W/(m・K))、PE:ポリエチレン(0.46W/(m・K))及びPS:ポリスチレン(0.20W/(m・K))製のローラなどが含まれる。
【0028】
また、炉外搬送ローラ75は、乾燥炉71の出口温度に基づいて設定される熱伝導率を有する樹脂製のローラを配置することもできる。例えば、乾燥炉71の出口温度が高いほど、熱伝導率の低い樹脂製ローラを配置することもできる。
【0029】
巻取ロール9は、活物質層Aが形成された金属箔Lが巻回されている。この巻取ロール9は、前段で説明したように、作動又は停止、及び回転速度(金属箔Lの巻き取り速度)などは、図示しない制御装置及び各ロールを駆動する駆動装置によって制御される。
【0030】
上記実施形態の電極製造装置1では、乾燥炉71の下流側に設けられていると共に、熱伝導率が3.0W/(m・K)以下である樹脂製の炉外搬送ローラ75を有する乾燥装置7を備えている。炉外搬送ローラ75は、ステンレスなどの金属製ローラと比べて熱伝導率が低いので、金属箔Lから炉外搬送ローラ75への熱の移動が相対的に少なくなる。これにより、金属箔Lにおける熱収縮を少なくすることができるので、活物質層Aが形成された金属箔表面に皺が発生することを低減することができる。
【0031】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
上記実施形態では、乾燥炉71の下流側に炉外搬送ローラ75が1つだけ配置された乾燥装置7の例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、乾燥装置7は、乾燥炉71の下流側に複数の炉外搬送ローラが配置されていてもよい。この場合には、全ての炉外搬送ローラを熱伝導率が3.0W/(m・K)以下の樹脂製ローラとしてもよいし、選択的に熱伝導率が3.0W/(m・K)以下の樹脂製ローラとしてもよい。また、乾燥炉71の出口71aに隣接する炉外搬送ローラのみを熱伝導率が3.0W/(m・K)以下の樹脂製ローラとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…電極製造装置、3…巻出ロール、5…塗工装置、7…乾燥装置、9…巻取ロール、10…乾燥装置、51…容器、53…ガン、59…塗布ロール、71…乾燥炉、71a…乾燥炉出口、73…炉内搬送ローラ、75…炉外搬送ローラ(搬送ローラ)、A…活物質層、BE…帯状電極、L…金属箔、P…電極ペースト(塗布膜)。