特許第6136895号(P6136895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000002
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000003
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000004
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000005
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000006
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000007
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000008
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000009
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000010
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000011
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000012
  • 特許6136895-車両ルーフ構造 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136895
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】車両ルーフ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20170522BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20170522BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20170522BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
   B60R16/04 U
   H01L31/04 500
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-246419(P2013-246419)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-104940(P2015-104940A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋 優祐
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和雅
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−192853(JP,U)
【文献】 特開2004−006625(JP,A)
【文献】 特開2005−200006(JP,A)
【文献】 特開2013−187522(JP,A)
【文献】 特開昭61−069181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60R 16/04
H01L 31/042
H02S 20/20
H02S 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて面状に並べられた複数の太陽電池セルおよび複数の前記太陽電池セルを封止する封止樹脂を有する太陽電池ユニットと、
透明性を有し、前記太陽電池ユニットを上方側から覆うように配置されたルーフパネルと、
棒状に延びる形状を有し、前記太陽電池ユニットの下方に配置された補強部材と、を備え、
複数の前記太陽電池セルは、行列状に並べられており、
複数の前記太陽電池セルにおける2行2列に並べられた4つの前記太陽電池セルのうちの平面視で斜め方向において隣り合う2つの前記太陽電池セルの間に形成されている前記間隔を隙間領域と定義すると、
棒状に延びる前記補強部材は、複数の前記隙間領域に対応する位置を通るように配置され、
前記補強部材は、複数の前記隙間領域に対応する位置にそれぞれ設けられた複数の支持部により前記太陽電池ユニットを支持する、
車両ルーフ構造。
【請求項2】
複数の前記支持部は、前記太陽電池ユニットとは別体として設けられたクッションゴムを含み、
前記補強部材は、前記クッションゴムを介して前記太陽電池ユニットを支持する、
請求項1に記載の車両ルーフ構造。
【請求項3】
複数の前記支持部は、前記太陽電池ユニットに一体的に形成され且つ前記封止樹脂の一部が前記補強部材の側に向かって隆起するように形成された隆起部を含み、
前記補強部材は、前記隆起部を介して前記太陽電池ユニットを支持する、
請求項1または2に記載の車両ルーフ構造。
【請求項4】
前記ルーフパネルは、複数の前記太陽電池セル同士の間に形成された前記間隔に対応する位置において前記ルーフパネルに一体的に形成された凸部を含み、
前記隆起部は、前記ルーフパネルに前記凸部が設けられていることによって形成されている、
請求項3に記載の車両ルーフ構造。
【請求項5】
前記太陽電池ユニットは、複数の前記太陽電池セル同士の間に形成された前記間隔に対応する位置に設けられた位置決め部を備え、
前記補強部材は前記位置決め部により前記太陽電池ユニットに位置決めされる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両ルーフ構造。
【請求項6】
前記補強部材は開口部を有し、
前記位置決め部は、前記ルーフパネルに固定されるとともに前記封止樹脂から前記補強部材の側に向かって棒状に延びる突起部を有している、
請求項5に記載の車両ルーフ構造。
【請求項7】
前記補強部材は、金属製の部材から形成され、車両の前後方向およびまたは車幅方向に延在するように配置された複数のリインフォースを含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両ルーフ構造。
【請求項8】
前記ルーフパネルは、樹脂製である、
請求項1からのいずれか1項に記載の車両ルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を有する車両ルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11−157342号公報(特許文献1)に開示されているように、太陽電池を備えた車両ルーフ構造が知られている。同公報に開示された太陽電池は、面状に並べられた複数の太陽電池セルを含む。複数の太陽電池セルは、ガラスパネル上において樹脂封止されている。ガラスパネル上にて樹脂封止された複数の太陽電池セルを備えるルーフ構造体は、その太陽電池セル側において、スペーサーを介して補強部材により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−157342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のルーフには、積雪や洗車などによる荷重が作用する。特許文献1のように、太陽電池セルの直下にスペーサーやクッション材などを配置してルーフ構造体を支持する構成では、ルーフが荷重を受けた際に、その荷重がスペーサー部材などを介して太陽電池セルに入力され、太陽電池セルが故障してしまうという虞がある。この場合、太陽電池セルは適切な発電ができなくなる。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みて為されたものであって、太陽電池が応力を受けて故障すること抑制可能な車両ルーフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく車両ルーフ構造は、間隔を空けて面状に並べられた複数の太陽電池セルおよび複数の上記太陽電池セルを封止する封止樹脂を有する太陽電池ユニットと、透明性を有し、上記太陽電池ユニットを上方側から覆うように配置されたルーフパネルと、棒状に延びる形状を有し、上記太陽電池ユニットの下方に配置された補強部材と、を備え、複数の上記太陽電池セルは、行列状に並べられており、複数の上記太陽電池セルにおける2行2列に並べられた4つの上記太陽電池セルのうちの平面視で斜め方向において隣り合う2つの上記太陽電池セルの間に形成されている上記間隔を隙間領域と定義すると、棒状に延びる上記補強部材は、複数の上記隙間領域に対応する位置を通るように配置され、上記補強部材は、複数の上記隙間領域に対応する位置にそれぞれ設けられた複数の支持部により上記太陽電池ユニットを支持する。
【0007】
上記構成によれば、車両のルーフが荷重を受けた場合であっても、その荷重に起因する応力は、隣り合う太陽電池セル同士の間に位置する封止樹脂に主として作用する。その荷重に起因する応力が太陽電池セルに作用することは効果的に抑制されており、太陽電池セルが故障しにくい構成を実現できる。
【0008】
好ましくは、複数の上記支持部は、上記太陽電池ユニットとは別体として設けられたクッションゴムを含み、上記補強部材は、上記クッションゴムを介して上記太陽電池ユニットを支持する。
【0009】
好ましくは、複数の上記支持部は、上記太陽電池ユニットに一体的に形成され且つ上記封止樹脂の一部が上記補強部材の側に向かって隆起するように形成された隆起部を含み、上記補強部材は、上記隆起部を介して上記太陽電池ユニットを支持する。
【0010】
好ましくは、上記ルーフパネルは、複数の上記太陽電池セル同士の間に形成された上記間隔に対応する位置において上記ルーフパネルに一体的に形成された凸部を含み、上記隆起部は、上記ルーフパネルに上記凸部が設けられていることによって形成されている。
【0011】
好ましくは、上記太陽電池ユニットは、複数の上記太陽電池セル同士の間に形成された上記間隔に対応する位置に設けられた位置決め部を備え、上記補強部材は上記位置決め部により上記太陽電池ユニットに位置決めされる。
【0012】
好ましくは、上記補強部材は開口部を有し、上記位置決め部は、上記ルーフパネルに固定されるとともに上記封止樹脂から上記補強部材の側に向かって棒状に延びる突起部を有している。
【0015】
好ましくは、上記補強部材は、金属製の部材から形成され、車両の前後方向およびまたは車幅方向に延在するように配置された複数のリインフォースを含む。好ましくは、上記ルーフパネルは、樹脂製である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池が応力を受けて故障すること抑制可能な車両ルーフ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態における車両を示す斜視図である。
図2】実施の形態における車両のルーフを模式的に示す部分平面図である。
図3】実施の形態における車両に備えられる車両ルーフ構造を模式的に示す斜視図である。
図4図2中のIV−IV線に沿った矢視断面図である。
図5図2中のV線で囲まれた領域を拡大して示す図である。
図6図5中のVI−VI線に沿った矢視断面図である。
図7図2中のVII線で囲まれた領域を拡大して示す図である。
図8図7中のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
図9】実施の形態における車両に備えられる車両ルーフ構造が荷重を受けている際の様子を示す断面図である。
図10】実施の形態における車両に備えられる車両ルーフ構造が荷重を受けている際の様子を示す他の断面図である。
図11】実施の形態の第1変形例における車両ルーフ構造を示す断面図である。
図12】実施の形態の第2変形例における車両ルーフ構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数およびその量などに限定されない。同一の部品および相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0019】
図1は、実施の形態における車両10を示す斜視図である。図中の矢印Lは車両左方向を示し、矢印Rは車両右方向を示す。矢印LRで示される方向は車幅方向である。矢印Fは車両前進方向を示し、矢印Bは車両後退方向を示す。矢印FBで示される方向は車両の前後方向である。これらについては、後述する図2図5図7および図12においても共通している。
【0020】
図1に示すように、車両10は、ルーフ1に設けられた車両ルーフ構造2を備えている。図2は、車両10のルーフ1を模式的に示す部分平面図である。図2に示すように、車両のルーフ1は、左右に配置されたルーフサイドレール6間に取り付けられた車両ルーフ構造2を備えている。
【0021】
図3は、車両ルーフ構造2を模式的に示す斜視図である。図4は、図2中のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図2図4に示すように、車両ルーフ構造2は、太陽電池ユニット3、ルーフパネル4P、複数のリインフォース6R(補強部材)、および複数の支持部5を備えている。太陽電池ユニット3は、複数の太陽電池セル3Cと、封止樹脂としての透明樹脂3R(図3図4)と、透明樹脂3Rの下面側に設けられたフィルム3F(図3図4)とを含んでいる。
【0022】
複数の太陽電池セル3Cは、間隔を空けて面状に並べられ、互いに直並列接続されて電池を構成している。本実施の形態では、太陽電池セル3Cの各々は、平面視で四角形状パネルの四隅が少し切り欠かれた略八角形状を有している。そして、複数の太陽電池セル3Cは隣り合うセル間において互いの切り欠き部が隣り合うように行列状に並べられている。太陽電池セル3Cの各々は、シリコン系の結晶を含んでおり、過度な曲げ荷重を受けた場合に故障しやすいという特徴を有している。太陽電池ユニット3に含まれる太陽電池セル3Cの大きさ、形状、数、ならびに隣り合う太陽電池セル3C間の間隔は、車両ルーフ構造2のルーフパネル4P内において、太陽電池セル3Cの搭載密度ができるだけ高くなるように構成されている。即ち、正方形や長方形など四角形状の太陽電池セル3Cを用いてもよく、円盤形状の太陽電池セル3Cを用いてもよい。なお、隣り合う太陽電池セル3Cの間の間隔は、太陽電池セル3Cの配線スペースや封止樹脂の熱伸縮吸収しろなど、諸条件によりその必要最小距離が設定される。
【0023】
封止樹脂としての透明樹脂3Rは、発電素子である太陽電池セル3Cや配線などのモジュール内部部材を被覆して、水分浸入や衝撃から内部部材を保護するものである。透明樹脂3Rとしては、EVA(エチレン酢酸共重合体)やPVB(ポリビニルブチラノール)やシリコーン樹脂などの公知の封止樹脂材料が使用される。透明樹脂3Rは、複数の太陽電池セル3Cを封止し、複数の太陽電池セル3Cをルーフパネル4Pの下面に接着している(図4参照)。また、透明樹脂3Rのルーフパネル4Pと反対側にはフィルム3Fが設けられており、ルーフパネル4Pと太陽電池セル3Cを内包する透明樹脂3Rとフィルム3Fとは、一体化されたユニットを構成している。
【0024】
ルーフパネル4Pは車両10のルーフ1において上面の一部を構成する部材であり、板状の形状を有している。図3においては、便宜上のためルーフパネル4Pは一点鎖線を用いて模式的に図示している。ルーフパネル4Pの上面は、車両の外表面を構成しており外部に露出している。また、ルーフパネル4Pは、その下面にて太陽電池ユニット3を上方側から覆っている。本実施の形態では、ルーフパネル4Pとして、透明性を有する樹脂パネルが使用されている。ルーフパネル4Pを構成する樹脂材料としては、たとえばポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂やPET樹脂や塩化ビニル樹脂などがあり、使用環境に合わせて適宜選択される。太陽光は、ルーフパネル4Pを通過して太陽電池ユニット3の各太陽電池セル3Cに到達する。また、樹脂製のルーフパネル4Pの外表面にはハードコートなどがコーティングされており、耐傷つき性が高められている。ルーフパネル4Pとして、ガラス製のパネルを用いてもよいが、樹脂パネルを用いた場合は、ガラス製のパネルを用いた場合に比較してルーフ全体の重量を軽くすることができるという利点を有している。
【0025】
複数の太陽電池セル3Cをルーフパネル4Pの下面(車両の外表面と反対側の面)に接着するためには、たとえば次の方法を採用できる。まず、ルーフパネル4Pの下面を上に向け、そのルーフパネル4P上にシート材を配置する。このシート材は、透明性を有する熱可塑性樹脂(たとえばEVA)から形成された部材であり、封止樹脂を構成する。次に、シート材の上に複数の太陽電池セル3Cを面状に並べる。複数の太陽電池セル3Cを覆うように他のシート材を配置する。このシート材も、透明性を有する熱可塑性樹脂(たとえばEVA)から形成された部材であり、封止樹脂を構成する。その後、シート材を覆うようにフィルム3Fを配置する。
【0026】
次に、上記の2枚のシート材を、フィルム3Fとルーフパネル4Pとの間において真空加熱する。2枚のシート材は溶融する。真空加熱を解除することにより、2枚のシート材は固化し、封止樹脂としての透明樹脂(図4中の透明樹脂3Rを参照)を形成する。複数の太陽電池セル3Cは、封止樹脂により封止されるとともにルーフパネル4Pに接着される。
【0027】
補強部材としてのリインフォース6Rは、棒状に延びる形状を有し、太陽電池ユニット3の下方に配置される。リインフォース6Rは、次述する複数の支持部5(クッションゴム5R)により、太陽電池ユニット3を下方側(車室側)から支持している。リインフォース6Rは、鉄等の金属製の部材から形成され、角筒状の形状を有している(図3参照)。各リインフォース6Rは、車幅方向に延在しており、車両の前後方向に間隔P(図2)を空けて平行に並んでいる。間隔Pは、たとえば300mmである。
【0028】
複数の支持部5は、複数のクッションゴム5R(図6も参照)および複数の位置決め部5S(図8も参照)を含み、これらは太陽電池ユニット3の透明樹脂3R(より具体的にはフィルム3F)とリインフォース6Rとの間に設けられている。以下、クッションゴム5Rおよび位置決め部5Sの形状および配置について説明する。
【0029】
(クッションゴム5R)
図5は、図2中のV線で囲まれた領域を拡大して示す図である。図5中には、複数のうちの2行2列に並べられた4つの太陽電池セル3C(3C1〜3C4)と、幅Wを有し車幅方向に延びるリインフォース6Rと、太陽電池ユニット3(図4参照)を覆うように設けられたルーフパネル4Pと、太陽電池ユニット3とリインフォース6Rとの間に設けられたクッションゴム5Rとが図示されている。図6は、図5中のVI−VI線に沿った矢視断面図である。
【0030】
図5および図6を参照して、上述のとおり、複数の太陽電池セル3Cの各々は、平面視で略八角形状を有しており、間隔を空けて面状に並べられている。複数の太陽電池セル3Cの各々は、車両の前後方向に延びる外縁3E1、車幅方向に延びる外縁3E2、および、外縁3E1と外縁3E2との間に形成され且つ斜め方向に延びる外縁3E3を有している。
【0031】
2つの太陽電池セル3C1,3C2は、車幅方向において隣り合っている。太陽電池セル3C1,3C2の外縁3E1の間には、間隔L1が設けられている。2つの太陽電池セル3C3,3C4も、車幅方向において隣り合っている。太陽電池セル3C3,3C4の外縁3E1の間にも、間隔L1が設けられている。
【0032】
2つの太陽電池セル3C1,3C3は、車両の前後方向において隣り合っている。太陽電池セル3C1,3C3の外縁3E2の間には、間隔L2が設けられている。2つの太陽電池セル3C2,3C4も、車両の前後方向において隣り合っている。太陽電池セル3C2,3C4の外縁3E2の間にも、間隔L2が設けられている。
【0033】
2つの太陽電池セル3C1,3C4は、斜め方向において隣り合っている。太陽電池セル3C1,3C4の外縁3E3の間には、間隔L3が設けられている。2つの太陽電池セル3C2,3C3も、斜め方向において隣り合っている。太陽電池セル3C2,3C3の外縁3E3の間には、間隔L4が設けられている。即ち、行列状に配置された複数の太陽電池セル3Cは、隣り合うセル間において切り欠き部が隣り合うように配列されているので、上記4つの太陽電池セル3C1,3C2,3C3,3C4の間には、切り欠き部によって比較的大きな隙間が形成されている。
【0034】
間隔L1,L2の寸法は、たとえば3mm〜5mmである。この値は、太陽電池セル同士を接続する配線作業や、フィルム3Fを用いてEVAなどの透明熱可塑性樹脂を固化させる際の透明樹脂3Rの熱収縮の程度、および、複数の太陽電池セルの全体のレイアウトなどに鑑みて最適化される。間隔L3,L4の寸法は、たとえば、太陽電池セルのサイズや、太陽電池セルの製造工程などに応じて決定される。
【0035】
クッションゴム5Rは、本実施の形態では平面視で略八角形状を有しており、太陽電池ユニット3の透明樹脂3R(フィルム3F)とリインフォース6Rとの間に設けられている。クッションゴム5Rは、太陽電池ユニット3(透明樹脂3R)とは別体として設けられる。図6に示すように、クッションゴム5Rとリインフォース6Rとの間には、接着剤5Gが設けられていることが好ましい。クッションゴム5Rは、太陽電池セル3C1〜3C4の間に形成された間隔L3,L4に対応する位置に設けられている。
【0036】
換言すると、間隔L3,L4により形成された領域(太陽電池セルが設けられていない領域)を隙間領域という場合、クッションゴム5Rは、この隙間領域に対応する位置に設けられている。平面視において、クッションゴム5Rはこの隙間領域よりも小さい面積を有している。クッションゴム5R(クッションゴム5Rの上面)を隙間領域およびリインフォース6Rに対して投影した場合、クッションゴム5R(クッションゴム5Rの上面)の投影像の全部は、隙間領域およびリインフォース6Rの投影像内に含まれる。
【0037】
平面視において、クッションゴム5Rの外縁と太陽電池セル3Cの外縁3E3との間の距離L5(図5)は、たとえば3mm〜5mmである。クッションゴム5Rは、以上のように構成および配置される。クッションゴム5Rを介して、リインフォース6Rは太陽電池ユニット3を支持する。
【0038】
(位置決め部5S)
図7は、図2中のVII線で囲まれた領域を拡大して示す図である。図7中には、複数のうちの2行2列に並べられた4つの太陽電池セル3C(3C5〜3C8)と、リインフォース6Rと、ルーフパネル4Pと、位置決め部5Sとが図示されている。位置決め部5Sは、太陽電池ユニット3からリインフォース6Rに向けて突出する部分(ボス5S2)を有している。図8は、図7中のVIII−VIII線に沿った矢視断面図である。
【0039】
車幅方向において隣り合う太陽電池セル3C5,3C6の外縁3E1の間には、間隔L1が設けられている。太陽電池セル3C7,3C8の外縁3E1の間にも、間隔L1が設けられている。車両の前後方向において隣り合う太陽電池セル3C5,3C7の外縁3E2の間には、間隔L2が設けられている。太陽電池セル3C6,3C8の外縁3E2の間にも、間隔L2が設けられている。斜め方向において隣り合う太陽電池セル3C5,3C8の外縁3E3の間には、間隔L3が設けられている。斜め方向において隣り合う太陽電池セル3C6,3C7の外縁3E3の間には、間隔L4が設けられている。
【0040】
位置決め部5Sは、ボス座5S1およびボス5S2(突起部)を含んでいる。ボス座5S1およびボス5S2は、たとえばポリカーボネートから形成される。ボス座5S1は、平面視で略八角形状を有している。位置決め部5Sは、ルーフパネル4Pに固定されている。位置決め部5Sは、二色成型法などにより、ルーフパネル4Pと一体化されていることが好ましい。ボス5S2は、太陽電池ユニット3からリインフォース6Rの側に向かって棒状に延びる形状を有している。リインフォース6Rには、円形状の開口部4Hが設けられており、開口部4Hは、ボス5S2を開口部4Hに差し込み可能な大きさおよび形状に設定されている。
【0041】
位置決め部5Sは、太陽電池セル3C5〜3C8の間に形成された間隔L3,L4に対応する位置に設けられている。間隔L3,L4により形成された領域(太陽電池セルが設けられていない領域)を隙間領域とした場合、平面視において位置決め部5Sはこの隙間領域よりも小さい面積を有している。位置決め部5Sを隙間領域およびリインフォース6Rに対して投影した場合、位置決め部5Sの投影像の全部は、隙間領域の投影像内に含まれる。
【0042】
平面視において、位置決め部5S(ボス座5S1)の外縁と太陽電池セル3Cの外縁3E3との間の距離L5(図7)は、たとえば3mm〜5mmである。リインフォース6Rは、開口部3Hに位置決め部5Sが差し込まれることにより位置決めされる。
【0043】
図2および図3を再び参照して、1本のリインフォース6Rについてみた場合、以上のように構成される複数の位置決め部5Sは、車幅方向の左右両端部と中央部とにそれぞれ1つずつ配置され、複数のクッションゴム5Rはそれらの間に配置されている。説明上の便宜のため、図2中に示される位置決め部5Sおよびクッションゴム5Rには、これらを区別するように異なる2種類(右肩下がりおよび右肩上がり)のハッチングをそれぞれ付している。車幅方向の左右両端部と中央部とにそれぞれ1つずつ配置された位置決め部5Sにより、高い位置決め機能が発揮できており、複数のクッションゴム5Rにより高い制振性および緩衝性が得られている。
【0044】
(固定構造)
図2および図4を再び参照して、太陽電池ユニット3、ルーフパネル4Pおよびリインフォース6Rを車両10(図1)のルーフサイドレール6に固定するためには、ブラケット7および締結具8が用いられる。ルーフサイドレール6は、サイメンアウタ6Tおよびレールインナ6Sを含み、車幅方向両側縁部において車両の前後方向に延びている。
【0045】
ブラケット7のうちのルーフサイドレール6の側の端部は、レールインナ6Sに締結具8を用いて固定され、ブラケット7のうちのリインフォース6Rの側の端部は、リインフォース6Rに他の締結具8を用いて固定される。リインフォース6Rは、車両左側のブラケット7と車両右側のブラケット7(図示せず)を介して左右両側のルーフサイドレール6に橋渡し状に両端支持される。なお、ブラケット7は必ずしも必要ではなく、リインフォース6Rをルーフサイドレール6に直接取り付ける構成であってもよい。
【0046】
リインフォース6Rとブラケット7とは、締結具8により固定され、ユニット化される。また、ルーフパネル4Pとルーフサイドレール6は、ルーフパネル4Pの車内側端部周囲とルーフサイドレール6との隙間をウレタン系の接着剤9(図4)により埋められる。その後、リインフォース6Rとブラケット7とのユニットは、上記の位置決め部5S(図8)を活用しつつ位置決めされ、太陽電池ユニット3およびルーフパネル4Pに取り付けられる。その後、リインフォース6Rとブラケット7のユニットとは、ルーフサイドレール6に対して締結具8を用いて固定される。
【0047】
(作用および効果)
冒頭で述べたとおり、車両のルーフには積雪や洗車などによる荷重が作用する。仮に、クッションゴム5Rや位置決め部5Sなどの支持部5が、平面視において太陽電池セル3Cに重なる位置に設けられているとする。この場合、車両のルーフが荷重を受けた際、その荷重に起因する応力が太陽電池セル3Cに作用する。太陽電池セルは故障し、適切に発電しなくなることがある。
【0048】
図9を参照して、これに対して本実施の形態では、クッションゴム5Rは、隣り合う太陽電池セル3C同士の間に形成された間隔に対応する位置に設けられている。車両のルーフが荷重を受けた場合であっても、その荷重に起因する応力は、隣り合う太陽電池セル3C同士の間に位置する透明樹脂3R(太陽電池セル3Cが設けられていない部分)に主として作用する。応力が太陽電池セル3Cに作用することは効果的に抑制されており、太陽電池セルが故障しにくい構成を実現できている。太陽電池セル3C間に形成された隙間を上記のように活用することにより、太陽電池セル3Cの搭載密度ができるだけ高くなるように構成するとよい。
【0049】
本実施の形態では、樹脂製のルーフパネル4Pが用いられる。ガラス製のパネルの代わりに樹脂製のルーフパネル4Pを用いた場合は、ルーフ1の重量が軽くなるという利点が得られるが、樹脂製のルーフパネル4Pはガラス製のパネルに比べて剛性が弱いため、所定の幅を有するリインフォース6Rが補強部材として用いられる。一方で、太陽電池セルは一般的にはその搭載密度を上げるために、隣り合うセル間の間隔が小さくなるように面状に配置される。したがって、リインフォース6Rに要求される強度や、隣り合うセル間の間隔によっては、リインフォース6Rの幅が、隣接する太陽電池セル3C間の間隔よりも大きくなる場合がある。
【0050】
リインフォース6Rの幅が隣接する太陽電池セル3C間の間隔よりも大きい場合、仮に、クッションゴム5Rを用いないでリインフォース6Rで太陽電池ユニット3を直接的に支持したとすると、断面上下方向においてセルの端部がリインフォース6Rと干渉することとなり、セルに余計な応力が入力されて壊れる可能性がある。ここで、円柱状の一般的なインゴッドからセル(単結晶セル)を切り出して太陽電池セル3Cを作成した場合、太陽電池セル3Cの形状は、四角形の角部がとれた八角形とすることができる。四隅の角部が太陽電池セル3Cに形成されていることによって、複数枚の太陽電池セル3Cを行列状に配置した場合、これらの間には比較的大きな隙間が形成される。本実施の形態では、この隙間を積極的に活用してクッションゴム5Rや位置決め部5Sを配置している。したがって本実施の形態では、応力が太陽電池セル3Cに作用することを効果的に抑制できることに加えて、隙間の有効な活用が図られており、ひいては太陽電池セル3Cの搭載密度の向上を効率良く図れる構成を実現できている。
【0051】
本実施の形態では、位置決め部5S(図8)も、隣り合う太陽電池セル3C同士の間に形成された間隔に対応する位置に設けられている。位置決め部5Sがリインフォース6Rに固定されている場合には、図9を参照して説明した場合と同様の事象がおこり得る。すなわち、車両のルーフが荷重を受けた場合であっても、その荷重に起因する応力は、隣り合う太陽電池セル3C同士の間に位置する透明樹脂3R(太陽電池セル3Cが設けられていない部分)に主として作用する。応力が位置決め部5Sから太陽電池セル3Cに作用することは効果的に抑制されており、太陽電池セルが故障しにくい構成を実現できている。
【0052】
図10を参照して、上記の場合に限られず、リインフォース4Rを太陽電池ユニット3に組み付ける際、ボス5S2が開口部4Hに上手く入らずに、ボス5S2の下端がリインフォース6Rの表面に接触する場合も想定される。このような場合であっても、その荷重に起因する応力が太陽電池セル3Cに作用することは効果的に抑制されており、太陽電池セルが故障しにくい構成を実現できている。
【0053】
本実施の形態では、透明樹脂から形成されたルーフパネル4Pと複数のリインフォース6Rとにより、所定の剛性を実現できるとともに、軽量化を図ることが可能となっている。ルーフパネル4Pの板厚を厚くすることによって剛性を上げることに比べて、ルーフパネル4Pの板厚をあまり厚くせずリインフォース6Rを採用して剛性を上げることの方が全体の重量を軽くすることが可能である。リインフォース6Rによる重量の増加分を考慮したとしても、ガラス製のパネルを用いる場合に比べて全体の重量を軽くすることが可能である。
【0054】
上述のとおり、本実施の形態の太陽電池セル3Cは、EVA(Ethylene Vinyl Acetate)などの透明熱可塑性樹脂により封止されている。EVAで封止する方法は、FRP内に太陽電池を封入する方法に比べて処理工程にかかる時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0055】
[第1変形例]
図11に示す車両ルーフ構造2Aのように、支持部は、隆起部5Qを含んでいてもよい。隆起部5Qは、クッションゴムに代わって用いられることができる。隆起部5Qは、ルーフパネル4Pの下面に凸部4Qを予め設けた状態で透明樹脂3Rを固化することにより形成される。隆起部5Qは、太陽電池ユニット3と一体的に形成された部位であり、太陽電池セル3Cを封止する透明樹脂3Rの一部がリインフォース6Rの側に向かって隆起する形状を有している。隆起部5Qを介して、リインフォース6Rは透明樹脂3Rにより封止された太陽電池ユニット3を支持する。当該構成によっても、上記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
[第2変形例]
図12に示す車両ルーフ構造2Bのように、支持部は、複数のうちの隣り合う2つの太陽電池セル3Cの間に形成された間隔に対応する位置に設けられていてもよい。図12の中では、車両の前後方向において隣り合う太陽電池セル3CA,3CBの間にクッションゴム5Rが設けられている。クッションゴム5Rは、車幅方向に延びる形状を有している。クッションゴム5Rや位置決め部5Sなどの支持部5は、車幅方向において隣り合う太陽電池セル3CA,3CCの間に設けられていてもよい。これらの構成によっても、上記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0057】
[その他の変形例]
上述の実施の形態では、支持部としてのクッションゴム5R(図6)と、位置決め部5S(図8)とが採用されている。この構成に限られず、位置決め部5Sに位置決め機能と支持部としての支持機能との両方を持たせるように構成してもよいし、クッションゴム5R(支持部)に位置決め部としての機能を持たせてもよい。このような場合であっても、複数の太陽電池セル同士の間に形成された間隔に対応する位置を利用して位置決め部や支持部を設けているので、太陽電池が応力を受けて故障すること抑制できるという効果を得ることができる。クッションゴム、位置決め部、および隆起部は、適宜組み合わせて実施されることもでき、単独で実施されることも可能である。
【0058】
支持部としては、クッション機能を有していない部材であってもよい。この場合であっても、複数の太陽電池セル同士の間に形成された間隔に対応する位置に支持部が設けられることによって、太陽電池が応力を受けて故障すること抑制できるという効果を得ることができる。
【0059】
上述の実施の形態では、リインフォース6Rが開口部4Hを有している。開口部4Hは、貫通孔の形状に限られず、凹部形状を有していてもよい。この構成に限られず、開口部(凹部)が太陽電池ユニット3(透明樹脂3R)の側に設けられ、位置決め部がリインフォース6Rの側に設けられてもよい。換言すると、位置決め機能を発揮できれば、リインフォース6Rおよび透明樹脂3Rのうちの一方に開口部が設けられ、リインフォース6Rおよび透明樹脂3Rのうちの他方に位置決め部5Sが固定されていればよい。これらの場合であっても、複数の太陽電池セル同士の間に形成された間隔に対応する位置に位置決め部が設けられることによって、太陽電池が応力を受けて故障すること抑制できるという効果を得ることができる。
【0060】
上述の実施の形態では、補強部材として、棒状に延びる形状を有するリインフォース6Rが用いられる。補強部材としては、棒状の部材に限られず、平板または湾曲板などの板状の部材が用いられてもよい。板状の部材は、ルーフパネル4Pと同様の大きさを有していてもよいし、複数枚に分割された構成を有していてもよい。
【0061】
上述の実施の形態では、リインフォース6Rは角筒状(略ロ字形状)の断面形状を有している。リインフォース6Rは、円筒状や円柱状の断面形状を有していてもよいし、C字形状やコ字形状の断面形状を有していてもよいし、ハット型の断面形状を有していてもよい。リインフォース(補強部材)の断面形状は、必要な剛性に応じて、最適な断面二次モーメントを有する形状に決定されることが好ましい。
【0062】
上述のリインフォース6Rは、車幅方向に延在するように配置されている。リインフォース6Rは、車両の前後方向に延在するように配置されていてもよいし、車幅方向に延在するものと車両の前後方向に延在するものとの双方が組み合わされていてもよい。
【0063】
以上、本発明に基づいた実施の形態および変形例について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 ルーフ、2,2A,2B 車両ルーフ構造、3 太陽電池ユニット、3C1,3C2,3C3,3C4,3C5,3C6,3C7,3C8,3CA,3CB,3CC 太陽電池セル、3E1,3E2,3E3 外縁、3F フィルム、3H,4H 開口部、3R 透明樹脂、4P ルーフパネル、4Q 凸部、5 支持部、5G,9 接着剤、5Q 隆起部(支持部)、5R クッションゴム(支持部)、5S 位置決め部(支持部)、5S1 ボス座、5S2 ボス(突起部)、6 ルーフサイドレール、6R リインフォース(補強部材)、6S レールインナ、6T サイメンアウタ、7 ブラケット、8 締結具、10 車両、L1,L2,L3,L4 間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12