(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸入室、吐出室、斜板室及びシリンダボアが形成されたハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能な斜板と、前記駆動軸と前記斜板との間に設けられ、前記駆動軸の回転軸心に直交する方向に対する前記斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構と、前記シリンダボアに往復動可能に収納されたピストンと、前記斜板の回転により、前記傾斜角度に応じたストロークで前記ピストンを前記シリンダボア内で往復動させる変換機構と、前記傾斜角度を変更可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御機構とを備え、
前記斜板室は前記吸入室と連通し、
前記アクチュエータは、前記斜板室内で前記駆動軸に固定された固定体と、前記斜板室内で前記回転軸心方向に移動可能な可動体と、前記固定体と前記可動体とにより区画された制御圧室とを有し、
前記制御機構は、前記吐出室と前記制御圧室とに連通し、前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に導入して前記制御圧室の圧力を高めることにより、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差を大きくする給気通路と、前記斜板室と前記制御圧室とに連通し、前記制御圧室内の前記冷媒を前記斜板室に排出して前記制御圧室の圧力を低めることにより、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差を小さくする抽気通路とを有し、
前記抽気通路は、前記可動体と前記駆動軸との間及び前記可動体と前記固定体との間の少なくとも一方に設けられ、
前記抽気通路には、前記制御圧室と前記斜板室とを常時連通する絞りを有する環状部材が設けられ、
前記環状部材は前記制御圧室と前記斜板室との圧力差が小さくなれば、前記抽気通路を流通する前記冷媒の流量が増大するように前記抽気通路を移動し、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差が大きくなれば、前記抽気通路を流通する前記冷媒の流量が減少するように前記抽気通路を移動することを特徴とする容量可変型斜板式圧縮機。
前記環状部材は、前記回転軸心と平行な軸方向に延びる第1切欠きと、前記第1切欠きに対して前記軸方向と直交する周方向でずれつつ、前記第1切欠きの延長方向で前記軸方向に延びる第2切欠きと、前記周方向に延び、前記第1切欠きと前記第2切欠きとを接続する第3切欠きとを有し、
前記第3切欠きが前記絞りである請求項1又は2記載の容量可変型斜板式圧縮機。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の容量可変型斜板式圧縮機(以下、圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機では、フロントハウジングとシリンダブロックとリヤハウジングとによってハウジングが形成されている。フロントハウジングとリヤハウジングとには、吸入室と吐出室とがそれぞれ形成されている。また、リヤハウジングには制御圧室が形成されている。
【0003】
シリンダブロックには、斜板室と複数のシリンダボアとセンターボアとが形成されている。センターボアはシリンダブロックの後方側に形成されている。
【0004】
駆動軸は、ハウジングに挿通されており、ハウジング内で回転可能に支持されている。斜板室内には駆動軸の回転によって回転可能な斜板が設けられている。駆動軸と斜板との間には、斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構が設けられている。ここで、傾斜角度とは、駆動軸の回転軸心に直交する方向に対して斜板がなす角度である。
【0005】
また、各シリンダボアには、それぞれピストンが往復動可能に収納されており、各シリンダボア内に圧縮室がそれぞれ形成されている。変換機構は、斜板の回転により、傾斜角度に応じたストロークで各ピストンをシリンダボア内で往復動させるようになっている。また、アクチュエータが傾斜角度を変更可能であり、制御機構がアクチュエータを制御するようになっている。
【0006】
アクチュエータは、第1可動体と第2可動体とスラスト軸受と上記の制御圧室とを有している。第1可動体は、センターボア内に配置されており、センターボア内を回転軸心方向に移動可能となっている。この第1可動体には、駆動軸の後端部を挿通する軸孔が形成されている。これにより、駆動軸の後端部は、第1可動体の軸孔内で回転可能となっている。第2可動体は駆動軸に挿通されている。この第2可動体は、第1可動体の前方に配置されており、回転軸心方向に移動可能となっている。スラスト軸受は、第1可動体と第2可動体との間に設けられている。
【0007】
制御機構は、制御圧室と吸入室との連通制御を行う他、制御圧室と吐出室との連通制御を行うことにより、制御圧室内の冷媒の圧力を調整する。また、制御機構は、Oリングと一対の密封用リングとを有している。これらOリング及び各密封用リングは、第1可動体の外周面とセンターボアの内周面との間に位置している。各密封用リングは、Oリングを挟んで第1可動体の前端側と後端側とに配置されている。これらOリング及び各密封用リングにより、制御圧室と斜板室との間が封止されている。
【0008】
この圧縮機では、制御機構が制御圧室内の冷媒の圧力を調整することにより、第1、2可動体及びスラスト軸受を回転軸心方向に移動させることが可能である。これにより、この圧縮機では、リンク機構が斜板の傾斜角度の変更を許容し、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を変更可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の圧縮機では、吐出容量の変更の際、制御機構は、制御圧室と斜板室との間を封止しつつ、吸入室や吐出室と制御圧室との各連通制御によって制御圧室内の冷媒の圧力を調整している。このため、この圧縮機では、制御圧室から冷媒の漏れを防止する加工や手段が必要となり、製造コストが高騰化する。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、アクチュエータを用いて吐出容量を変更する圧縮機において、製造コストの低廉化を実現可能な容量可変型斜板式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、吸入室、吐出室、斜板室及びシリンダボアが形成されたハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能な斜板と、前記駆動軸と前記斜板との間に設けられ、前記駆動軸の回転軸心に直交する方向に対する前記斜板の傾斜角度の変更を許容するリンク機構と、前記シリンダボアに往復動可能に収納されたピストンと、前記斜板の回転により、前記傾斜角度に応じたストロークで前記ピストンを前記シリンダボア内で往復動させる変換機構と、前記傾斜角度を変更可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御機構とを備え、
前記斜板室は前記吸入室と連通し、
前記アクチュエータは、前記斜板室内で前記駆動軸に固定された固定体と、前記斜板室内で前記回転軸心方向に移動可能な可動体と、前記固定体と前記可動体とにより区画された制御圧室とを有し、
前記制御機構は、前記吐出室と前記制御圧室とに連通し、前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に導入
して前記制御圧室の圧力を高めることにより、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差を大きくする給気通路と、前記斜板室と前記制御圧室とに連通し、前記制御圧室内の前記冷媒を前記斜板室に排出
して前記制御圧室の圧力を低めることにより、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差を小さくする抽気通路とを有し、
前記抽気通路は、前記可動体と前記駆動軸との間及び前記可動体と前記固定体との間の少なくとも一方に設けられ、
前記抽気通路には、前記制御圧室と前記斜板室とを常時連通する絞りを有する環状部材が設けられ、
前記環状部材は
前記制御圧室と前記斜板室との圧力差が小さくなれば、前記抽気通路を流通する前記冷媒の流量が増大するように前記抽気通路を移動し、前記制御圧室と前記斜板室との圧力差が大きくなれば、前記抽気通路を流通する前記冷媒の流量が減少するように前記抽気通路を移動することを特徴とする。
【0013】
本発明の圧縮機では、給気通路が吐出室内の高圧の冷媒を制御圧室に導入することにより、制御圧室内の圧力が高められる。また、抽気通路が制御圧室内の冷媒を斜板室に排出することにより、制御圧室内の圧力が低められる。この抽気通路は、可動体と駆動軸との間及び可動体と固定体との間の少なくとも一方に設けられる。さらに、この圧縮機では、絞りを有する環状部材が抽気通路に設けられている。そして、この圧縮機では、環状部材が制御圧室と斜板室との圧力差に基づいて抽気通路を移動することにより、抽気通路を流通する冷媒の流量の調整を行う。
【0014】
具体的には、制御圧室と斜板室との圧力差が小さくなると、環状部材は、抽気通路を流通する冷媒の流量が増大するように抽気通路を移動する。このため、この圧縮機では、制御圧室内の圧力を好適に低下させることが可能である。一方、制御圧室と斜板室との圧力差が大きくなると、環状部材は、抽気通路を流通する冷媒の流量が減少するように抽気通路を移動する。このため、この圧縮機では、制御圧室内の圧力を好適に高めることが可能である。
【0015】
このように、この圧縮機では、環状部材が抽気通路を流通する冷媒の流量を調整して制御圧室内の圧力を調整することが可能となっている。こうして、この圧縮機では、変更された制御圧室内の圧力によってアクチュエータの可動体が移動し、リンク機構が斜板の傾斜角度の変更を許容し、駆動軸の1回転当たりの吐出容量を変更可能である。この際、この圧縮機では、制御圧室を封止するための加工や手段が簡易又は不要となる。
【0016】
したがって、本発明の圧縮機によれば、アクチュエータを用いて吐出容量を変更する圧縮機において、製造コストの低廉化を実現可能である。
【0017】
特に、この圧縮機では、環状部材が制御圧室内の圧力を調整する圧力調整弁として機能する。一般的に、このような圧力調整弁は構成が複雑で体格も大きくなることから、可動体や駆動軸等によって構成される回転体の周りに圧力調整弁を設けることは困難である。これに対し、この圧縮機では、環状部材が絞りを有するという簡単な構成であることから、環状部材を回転体の周りに配置しつつ、圧力調整弁として機能させることが可能となっている。
【0018】
上記のように、この圧縮機において、抽気通路は、可動体と駆動軸との間及び可動体と固定体との間の少なくとも一方に設けられる。このため、抽気通路に設けられる環状部材は、可動体と駆動軸との間における摺動性や可動体と固定体との間における摺動性を確保できることが好ましい。このため、環状部材は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂製とすることが好ましい。
【0019】
また、環状部材は抽気通路に一つ設けられても良く、複数設けられても良い。
【0020】
抽気通路は、可動体と固定体との間又は可動体と駆動軸との間に形成された凹条部を有し得る。そして、環状部材は、凹条部内に配置されていることが好ましい。この場合には、抽気通路に環状部材を容易に設けることが可能となる。また、環状部材は、制御圧室と斜板室との圧力差に基づいて凹状部内を移動することとなる。
【0021】
環状部材は、回転軸心と平行な軸方向に延びる第1切欠きと、第1切欠きに対して軸方向と直交する周方向でずれつつ、第1切欠きの延長方向で軸方向に延びる第2切欠きと、周方向に延び、第1切欠きと第2切欠きとを接続する第3切欠きとを有し得る。そして、第3切欠きが絞りであることが好ましい。
【0022】
環状部材が可動体や駆動軸等に組み付けられる際、軸方向に延びる第1、2切欠きは、駆動軸等の径の公差や組み付け時の公差等により幅が変わり易い。これに対し、周方向に延びる第3切欠きは、環状部材が駆動軸等に組み付けられた際も幅が変わり難い。このため、第3切欠きを絞りとすることにより、抽気通路を流通する冷媒の流量を好適に調整することが可能となる。
【0023】
本発明の圧縮機において、可動体は、駆動軸に摺動可能に設けられ得る。また、可動体は、駆動軸周りにおいて、斜板側に配置される第1円筒部と、第1円筒部よりも拡径された第2円筒部と、第1円筒部と第2円筒部とを連結する連結部とを有し得る。さらに、固定体は、制御圧室を構成しつつ第2円筒部を収納するシリンダ室を有し得る。そして、環状部材は、第2円筒部の外周面とシリンダ室の内周面との間に設けられていることが好ましい。
【0024】
この場合には、制御圧室により近い位置に環状部材を設けることが可能となる。これにより、この圧縮機では、環状部材が制御圧室に近い位置において、抽気通路を流通する冷媒の流量を調整することが可能となる。このため、この圧縮機では、制御圧室内の圧力を好適に調整することが可能となる。
【0025】
また、この場合、ハウジングには、制御圧室と連通する圧力調整室と、斜板室と圧力調整室とを連通し、駆動軸を回転可能に挿通する軸孔とが形成され得る。そして、駆動軸と軸孔との間、及び第1円筒部と駆動軸との間には、封止部材が設けられていることが好ましい。この場合には、封止部材によって制御圧室の封止を行いつつ、環状部材によって、制御圧室内の圧力をより好適に調整することが可能となる。
【0026】
本発明の圧縮機によれば、アクチュエータを用いて吐出容量を変更する圧縮機において、製造コストの低廉化を実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。実施例1、2の圧縮機は容量可変型片頭斜板式圧縮機である。これらの圧縮機は、いずれも車両に搭載されており、車両用空調装置の冷凍回路を構成している。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸3と、斜板5と、リンク機構7と、複数のピストン9と、複数対のシュー11a、11bと、アクチュエータ13と、
図2に示す制御機構15とを備えている。
【0030】
図1に示すように、ハウジング1は、圧縮機の前方に位置するフロントハウジング17と、圧縮機の後方に位置するリヤハウジング19と、フロントハウジング17とリヤハウジング19との間に位置するシリンダブロック21と、弁形成プレート23とを有している。
【0031】
フロントハウジング17は、前方で圧縮機の上下方向に延びる前壁17aと、前壁17aと一体化され、圧縮機の前方から後方に向かって延びる周壁17bとを有している。これらの前壁17aと周壁17bとにより、フロントハウジング17は有底の略円筒形状をなしている。また、これらの前壁17aと周壁17bとにより、フロントハウジング17内には斜板室25が形成されている。
【0032】
前壁17aには、前方に向かって突出するボス17cが形成されている。このボス17c内には、軸封装置27が設けられている。また、ボス17c内には、圧縮機の前後方向に延びる第1軸孔17dが形成されている。この第1軸孔17d内には第1滑り軸受29aが設けられている。
【0033】
周壁17bには、斜板室25と連通する吸入ポート250が形成されている。この吸入ポート250を通じて、斜板室25は図示しない蒸発器と接続されている。これにより、斜板室25には、吸入ポート250を通じて蒸発器を経た低圧の吸入冷媒が流入するため、斜板室25内の圧力は、後述する吐出室35内よりも低圧となる。
【0034】
リヤハウジング19には、制御機構15の一部が設けられている。また、リヤハウジング19には、第1圧力調整室31aと、吸入室33と、吐出室35とが形成されている。第1圧力調整室31aは、リヤハウジング19の中心部分に位置している。吐出室35はリヤハウジング19の外周側に環状に位置している。また、吸入室33は、リヤハウジング19において、第1圧力調整室31aと吐出室35との間で環状に形成されている。吐出室35は図示しない吐出ポートと接続している。
【0035】
シリンダブロック21には、ピストン9と同数個のシリンダボア21aが周方向に等角度間隔で形成されている。各シリンダボア21aの前端側は斜板室25と連通している。また、シリンダブロック21には、後述する吸入リード弁41aの最大開度を規制するリテーナ溝21bが形成されている。
【0036】
さらに、シリンダブロック21には、斜板室25と連通しつつ、圧縮機の前後方向に延びる第2軸孔21cが貫設されている。第2軸孔21c内には第2滑り軸受29bが設けられている。この第2軸孔
21cが本発明における軸孔に相当する。また、シリンダブロック21には、ばね室21dが形成されている。このばね室21dは、斜板室25と第2軸孔21cとの間に位置している。ばね室21d内には、復帰ばね37が配置されている。この復帰ばね37は、傾斜角度が最小になった斜板5を斜板室25の前方に向けて付勢する。また、シリンダブロック21には、斜板室25と連通する吸入通路39が形成されている。
【0037】
弁形成プレート23は、リヤハウジング19とシリンダブロック21との間に設けられている。この弁形成プレート23は、バルブプレート40と、吸入弁プレート41と、吐出弁プレート43と、リテーナプレート45とからなる。
【0038】
バルブプレート40、吐出弁プレート43及びリテーナプレート45には、シリンダボア21aと同数の吸入ポート40aが形成されている。また、バルブプレート40及び吸入弁プレート41には、シリンダボア21aと同数の吐出ポート40bが形成されている。各シリンダボア21aは、各吸入ポート40aを通じて吸入室33と連通するとともに、各吐出ポート40bを通じて吐出室35と連通する。さらに、バルブプレート40、吸入弁プレート41、吐出弁プレート43及びリテーナプレート45には、第1連通孔40cと第2連通孔40dとが形成されている。第1連通孔40cにより、吸入室33と吸入通路39とが連通している。これにより、斜板室25と吸入室33とが連通している。
【0039】
吸入弁プレート41は、バルブプレート40の前面に設けられている。この吸入弁プレート41には、弾性変形により各吸入ポート40aを開閉可能な吸入リード弁41aが複数形成されている。また、吐出弁プレート43は、バルブプレート40の後面に設けられている。この吐出弁プレート43には、弾性変形により各吐出ポート40bを開閉可能な吐出リード弁43aが複数形成されている。リテーナプレート45は、吐出弁プレート43の後面に設けられている。このリテーナプレート45は、吐出リード弁43aの最大開度を規制する。
【0040】
駆動軸3は、ボス17c側からハウジング1の後方側に向かって挿通されている。駆動軸3は、前端側がボス17c内において軸封装置27に挿通されているとともに、第1軸孔17d内において第1滑り軸受29aによって軸支されている。また、駆動軸3の後端側が第2軸孔21c内において第2滑り軸受29bによって軸支されている。こうして、駆動軸3は、ハウジング1に対して回転軸心O周りで回転可能に支持されている。そして、第2軸孔21c内には、駆動軸3の後端との間に第2圧力調整室31bが区画されている。この第2圧力調整室31bは、第2連通孔40dを通じて第1圧力調整室31aと連通している。これらの第1、2圧力調整室31a、31bにより、圧力調整室31が形成されている。
【0041】
図3に示すように、駆動軸3の後端には、リング溝3c、3dが形成されている。各リング溝3c、3dには、それぞれゴム製のOリング49a、49bが設けられている。これにより、各Oリング49a、49bは、駆動軸3と第2軸孔21cとの間に位置して斜板室25と圧力調整室31との間を封止している。これらの各Oリング49a、49bが本発明における封止部材に相当する。
【0042】
図1に示すように、駆動軸3には、リンク機構7と、斜板5と、アクチュエータ13とが取り付けられている。リンク機構7は、ラグプレート51と、ラグプレート51に形成された一対のラグアーム53と、斜板5に形成された一対の斜板アーム5eとからなる。なお、同図では、ラグアーム53及び斜板アーム5eについて、それぞれ一方のみを図示している。
図6についても同様である。
【0043】
図1に示すように、ラグプレート51は、略円環状に形成されている。このラグプレート51は、駆動軸3に圧入されており、駆動軸3と一体で回転可能となっている。このラグプレート51は、斜板室25内の前端側に位置しており、斜板5よりも前方に配置されている。また、ラグプレート51と前壁17aとの間には、スラスト軸受55が設けられている。
【0044】
図4に示すように、ラグプレート51には、ラグプレート51の前後方向に延びる円筒状のシリンダ室51aが凹設されている。
図1に示すように、このシリンダ室51aは、ラグプレート51の後端面で斜板室25に開いており、ラグプレート51の後端面から、ラグプレート51内においてスラスト軸受55の内側となる箇所まで延びている。
【0045】
各ラグアーム53は、ラグプレート51から後方に向かって延びている。また、ラグプレート51には、各ラグアーム53の間となる位置に摺動面51bが形成されている。
【0046】
斜板5は、環状の平板形状をなしており、前面5aと後面5bとを有している。前面5aには、斜板5の前方に向かって突出するウェイト部5cが形成されている。このウェイト部5cは、斜板5の傾斜角度が最大となった際にラグプレート51と当接する。また、斜板5の中心には、挿通孔5dが形成されている。この挿通孔5dに駆動軸3が挿通されている。
【0047】
各斜板アーム5eは、前面5aに形成されている。各斜板アーム5eは、前面5aから前方に向かって延びている。また、この斜板5には、略半球状の凸部5gが前面5aに突設されており、前面5aと一体となっている。この凸部5gは、各斜板アーム5e同士の間に位置している。
【0048】
この圧縮機では、各斜板アーム5eを各ラグアーム53の間に挿入することにより、ラグプレート51と斜板5とが連結している。これにより、斜板5は、ラグプレート51と共に斜板室25内で回転可能となっている。このように、ラグプレート51と斜板5とが連結することにより、各斜板アーム5eでは、それぞれの先端側が摺動面51bに当接する。そして、各斜板アーム5eが摺動面51bを摺動することにより、斜板5は、回転軸心Oに直交する方向に対する自身の傾斜角度について、上死点位置Tをほぼ維持しつつ、同図に示す最大傾斜角度から、
図6に最小傾斜角度まで変更することが可能となっている。
【0049】
アクチュエータ13は、ラグプレート51と、可動体13aと、制御圧室13bとからなる。この圧縮機において、ラグプレート51は、上記のようにリンク機構7を構成するとともに、本発明における固定体としても機能する。
【0050】
図4に示すように、可動体13aは駆動軸3に挿通されており、駆動軸3に摺接しつつ回転軸心O方向に移動可能となっている。この可動体13aは駆動軸3と同軸の円筒状をなしている。より詳細には、この可動体13aは、
図4に示すように、第1円筒部131と、第2円筒部132と、連結部133とを有している。第1円筒部131は可動体13aにおいて斜板5側に位置しており、駆動軸3と摺接している。第2円筒部132は、可動体13aの前方に位置している。この第2円筒部132は、第1可動体131よりも大径に形成されている。連結部133は、可動体13aの後方から前方に向かって次第に径を拡大させつつ延びている。この連結部133は、後端が第1円筒部131と連続しており、前端が第2円筒部132と連続している。
【0051】
また、第1円筒部131の後端には、作用部134が一体で形成されている。作用部134は、回転軸心O側から斜板5の上死点位置T側に向かって垂直に延びており、凸部5gと点接触している。これにより、可動体13aは、ラグプレート51及び斜板5と一体回転可能となっている。
【0052】
また、シリンダ室51aは、第2円筒部132及び連結部133を内部に進入させることにより、第2円筒部132及び連結部133を収納することが可能となっている(
図1参照)。
【0053】
制御圧室13bは、第2円筒部132と、連結部133と、シリンダ室51aと、駆動軸3との間に形成されている。また、第1円筒部131の内周面にはリング溝131aが凹設されている。このリング溝131a内には、ゴム製のOリング49cが設けられている。これにより、Oリング49cは、第1円筒部131と駆動軸3との間に位置している。このOリング49cも本発明における封止部材に相当する。
【0054】
さらに、第2円筒部132の外周面にも、リング溝132aが凹設されている。ここで、上記のように、第2円筒部132は、シリンダ室51a内に侵入することから、リング溝132aは、第2円筒部132の外周面とシリンダ室51aの内周面との間、ひいては、可動体13とラグプレート51との間に位置している。このリング溝132aが本発明における凹条部に相当する。そして、リング溝132aによって、斜板室25と制御圧室13bとが連通している。また、このリング溝132a内には、環状部材61が設けられている。
【0055】
環状部材61はPTFE製である。
図5の(A)に示すように、この環状部材61は、合口63を有している。同図の(A)、(B)に示すように、この合口63は、第1切欠き630aと、第2切欠き630bと、第3切欠き630cとで形成されている。第1切欠き630aは環状部材61の軸方向に延びている。第2切欠き630bは、第1切欠き630aに対して環状部材61の周方向でずれつつ、軸方向に延びている。第3切欠き630cは、環状部材61の厚さ方向の中央で周方向に延びており、第1切欠き630aと第2切欠き630bとに連続している。これらの第1〜3切欠き630a〜630cにより、合口61はクランク形状をなしている。そして、
図7の(A)に示すように、リング溝132a内に環状部材61が設けられることにより、第3切欠き630cは、制御圧室13bと斜板室25とを常時連通する。このため、同図の実線矢印で示すように、この第3切欠き630cを冷媒が流通可能となっている。
【0056】
ここで、
図5の(C)に示すように、この合口63において、第3切欠き630cは、第1、2切欠き630a、630bと比較して冷媒の流路面積が小さくなるように形成されている。これにより、第3切欠き630cは、環状部材61における絞りとなっている。そして、第2円筒部132の外周面とシリンダ室51aの内周面との間、リング溝132a及び第3切欠き630cは、本発明における抽気通路として機能する。なお、金属等によって環状部材61を形成しても良い。
【0057】
図1に示すように、駆動軸3内には、駆動軸3の後端から前端に向かって回転軸心O方向に延びる軸路3aと、軸路3aの前端から径方向に延びて駆動軸3の外周面に開く径路3bとが形成されている。軸路3aの後端は圧力調整室31に開いている。一方、径路3bは、制御圧室13bに開いている。これらの軸路3a及び径路3bにより、圧力調整室31と制御圧室13bとが連通している。
【0058】
駆動軸3は、先端に形成されたねじ部3eによって、図示しないプーリ又は電磁クラッチと接続される。
【0059】
各ピストン9は、各シリンダボア21a内にそれぞれ収納されており、各シリンダボア21a内を往復動可能となっている。これらの各ピストン9と弁形成プレート23とによって各シリンダボア21a内には圧縮室57が区画されている。
【0060】
また、各ピストン9には、係合部9aがそれぞれ凹設されている。この係合部9a内には、半球状のシュー11a、11bがそれぞれ設けられている。各シュー11a、11bは、斜板5の回転を各ピストン9の往復動に変換している。これらの各シュー11a、11bが本発明における変換機構に相当する。こうして、斜板5の傾斜角度に応じたストロークで、各ピストン9がそれぞれシリンダボア21a内を往復動することが可能となっている。
【0061】
図2に示すように、制御機構15は、低圧通路15aと、高圧通路15bと、低圧制御弁15cと、高圧制御弁15dと、軸路3aと、径路3bと、上記のリング溝132aとで構成されている。
【0062】
低圧通路15aは、圧力調整室31と吸入室33とに接続されている。これにより、この低圧通路15aと軸路3aと径路3bとによって、制御圧室13bと圧力調整室31と吸入室33とは、互いに連通した状態となっている。高圧通路15bは、圧力調整室31と吐出室35とに接続されている。この高圧通路15bと軸路3aと径路3bとによって、制御圧室13bと圧力調整室31と吐出室35とが連通している。このように、これらの高圧通路15bと軸路3aと径路3bとが本発明における給気通路を構成している。
【0063】
低圧制御弁15cは低圧通路15aに設けられている。この低圧制御弁15cは、吸入室33内の圧力に基づき、低圧通路15aの開度を調整することが可能となっている。また、高圧制御弁15dは高圧通路15bに設けられている。この高圧制御弁15dは、吸入室33内の圧力に基づき、高圧通路15bの開度を調整することが可能となっている。
【0064】
この圧縮機では、
図1に示す吸入ポート250に対して蒸発器に繋がる配管が接続されるとともに、吐出ポートに対して凝縮器に繋がる配管が接続される。凝縮器は配管及び膨張弁を介して蒸発器と接続される。これらの圧縮機、蒸発器、膨張弁、凝縮器等によって車両用空調装置の冷凍回路が構成されている。なお、蒸発器、膨張弁、凝縮器及び各配管の図示は省略する。
【0065】
以上のように構成された圧縮機では、駆動軸3が回転することにより、斜板5が回転し、各ピストン9が各シリンダボア21a内を往復動する。このため、圧縮室57がピストンストロークに応じて容積を変化させる。このため、蒸発器から吸入ポート250によって斜板室25に吸入された冷媒は、吸入通路39から吸入室33を経て圧縮室57内で圧縮される。そして、圧縮室57内で圧縮された冷媒は、吐出室35に吐出され、吐出ポートから凝縮器に吐出される。
【0066】
そして、この圧縮機では、アクチュエータ13によって斜板5の傾斜角度を変更し、ピストン9のストロークを増減させることにより、吐出容量の変更を行うことが可能である。
【0067】
具体的には、この圧縮機では、制御機構15において、
図2に示す高圧制御弁15dが高圧通路15bの開度調整を行うことにより、圧力調整室31内、ひいては制御圧室13b内の圧力が吐出室35の冷媒によって高められる。また、低圧制御弁15cによる低圧通路15aの開度調整が行われることにより、制御圧室13b内の圧力が低められる。さらに、この圧縮機では、第2円筒部132の外周面とシリンダ室51aの内周面との間、リング溝132a及び環状部材61の第3切欠き630cを通じて、制御圧室13b内の冷媒が斜板室25に排出される。こうして、この圧縮機では、制御圧室13b内の圧力が調整される。
【0068】
ここで、高圧制御弁15dが高圧通路15bの開度を小さくしたり、低圧制御弁15cが低圧通路15aの開度を大きくしたりすれば、制御圧室13b内の圧力が低下する。このため、制御圧室13bと斜板室25との圧力差が小さくなる。そして、このように制御圧室13bと斜板室25との圧力差が小さい状態では、
図7の(A)の実線矢印で示すように、制御圧室13
b内の冷媒がリング溝132aと環状部材61との隙間と、第3切欠き630cとの両方を流通して、斜板室25へ流通する。
【0069】
これらにより、この圧縮機では、制御圧室13b内の圧力が素早く低下する。このため、斜板5に作用するピストン圧縮力によって、
図1に示すように、アクチュエータ13では、可動体13aが回転軸心O方向で斜板5側からラグプレート51側に向かってシリンダ室51a内を摺動し、制御圧室13bの容積が減少する。そして、可動体13aの第2円筒部132及び連結部133がシリンダ室51a内に進入する。
【0070】
また同時に、この圧縮機では、各斜板アーム5eが回転軸心Oから遠隔するように、摺動面51bを摺動する。このため、斜板5では、上死点位置Tをほぼ維持しつつ、下死点側が時計回り方向に揺動する。こうして、この圧縮機では、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が増大する。これにより、この圧縮機では、ピストン9のストロークが増大し、駆動軸3の1回転当たりの吐出容量が大きくなる。なお、
図1に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最大傾斜角度である。
【0071】
一方、
図2に示す高圧制御弁15dが高圧通路15bの開度を大きくしたり、低圧制御弁15cが低圧通路15aの開度を小さくしたりすれば、制御圧室13b内の圧力が高くなる。このため、制御圧室13bと斜板室25との圧力差が大きくなる。そして、このように制御圧室13bと斜板室25との圧力差が大きい状態では、制御圧室13
b内の圧力によって環状部材61がリング溝132a内を後方に移動する。これにより、
図7の(B)に示すように、環状部材61がリング溝132aの後壁面と当接し、この当接した箇所では、環状部材61とリング溝132aとの隙間が閉塞される。このため、同図の実線矢印で示すように、制御圧室13
b内の冷媒は、第3切欠き630cのみを流通して、斜板室25へ流通する。つまり、同図の(A)に示す、制御圧室13bと斜板室25との圧力差が小さい状態と比べて、制御圧室13
b内から斜板室25へ流通する冷媒の流量が減少する。このため、制御圧室13b内の圧力が好適に上昇する。これにより、
図6に示すように、可動体13aがラグプレート51から遠隔しつつ、斜板5側に向かって回転軸心O方向にシリンダ室51a内を摺動するため、アクチュエータ13では制御圧室13bの容積が増大する。
【0072】
これにより、この圧縮機では、作用部134が凸部5gを斜板室25の後方に向かって押圧する。このため、各斜板アーム5eが回転軸心Oに近接するように、摺動面51bを摺動する。これにより、斜板5では、上死点位置Tをほぼ維持しつつ下死点側が反時計回り方向に揺動する。こうして、この圧縮機では、駆動軸3の回転軸心Oに対する斜板5の傾斜角度が減少する。これにより、この圧縮機では、ピストン9のストロークが減少し、駆動軸3の1回転当たりの吐出容量が小さくなる。なお、
図6に示す斜板5の傾斜角度がこの圧縮機における最小傾斜角度である。
【0073】
このように、この圧縮機では、制御圧室13bと斜板室25との圧力差に基づき、環状部材がリング溝132aを流通する冷媒の流量を調整して制御圧室13b内の圧力を調整する。こうして、この圧縮機では駆動軸3の1回転当たりの吐出容量を変更可能となっている。このように、この圧縮機では、環状部材61が制御圧室13b内の圧力を調整する圧力調整弁として機能する。ここで、この環状部材61は、絞りとなる第3切欠き630cを含む合口63を有するという簡単な構成であることから、この圧縮機では、駆動軸3等共に回転体を構成する可動体13aの周りに環状部材61を配置しつつ、圧力調整弁として機能させることが可能となっている。
【0074】
そして、このように、この圧縮機では、リング溝132aを通じて、制御圧室13bから斜板室25へ冷媒を排出させつつ、制御圧室13bの圧力を調整するため、制御圧室13bを斜板室25から完全に封止する必要がない。具体的には、この圧縮機では、Oリング49a、49bによって、圧力調整室31と斜板室25との間を封止するとともに、Oリング49cによって、第1円筒部131と駆動軸3との間を封止すれば足りる。こうして、この圧縮機では、制御圧室13bを封止するための加工や手段が簡易となっている。
【0075】
したがって、実施例1の圧縮機によれば、アクチュエータ13を用いて吐出容量を変更する圧縮機において、製造コストの低廉化を実現可能である。
【0076】
特に、この環状部材61の合口63は、第1〜3切欠き630a〜630cによって構成されており、第3切欠き630cを絞りとしている。ここで、環状部材61が可動体13aの第2円筒部132に組み付けられる際、軸方向に延びる第1、2切欠き630a、630bは、第2円筒部132の径の公差や組み付け時の公差等により幅、すなわち冷媒が流通する際の流路面積が変わり易い。これに対し、周方向に延びる第3切欠き630cは、環状部材61が第2円筒部132に組み付けられた際も流路面積が変わり難い。このため、第3切欠き630cを絞りとすることにより、この圧縮機では、リング溝132aを通じて制御圧室13bから斜板室25へ流通する冷媒の流量を好適に調整することが可能となっている。
【0077】
また、環状部材61は第2円筒部132のリング溝132aにのみ設けられており、駆動軸3と第2軸孔21cとの間、及び第1円筒部131と駆動軸3との間には、それぞれOリング49a〜49cが設けられている。このため、この圧縮機では、制御圧室13bに近い位置において、単一の環状部材61により制御圧室13b内から排出される冷媒の流量を調整できることから、制御圧室13b内の圧力の調整が容易となっている。また、環状部材61がPTFE製であるため、可動体13aの摺動性も確保されている。
【0078】
さらに、この圧縮機では、制御機構15が低圧通路15aと低圧制御弁15cとを有しているため、環状部材61による冷媒の流量の調整だけでなく、低圧通路15aの開度調整によっても制御圧室13b内の圧力を低下させることが可能となっている。このため、この圧縮機では、制御圧室13b内の圧力の低下速度を調整することが可能となっており、吐出容量の変更を迅速に行うことが可能となっている。
【0079】
(実施例2)
実施例2の圧縮機では、実施例1の圧縮機における環状部材61に換えて、
図8の(A)に示す環状部材65を採用している。この環状部材65もPTFE製である。また、この環状部材65も第2円筒部132のリング溝132a内に設けられており、第2円筒部132とシリンダ室51aの内周面との間に位置している。
【0080】
環状部材65は、クランク形状をなす合口67を有している。同図の(A)、(B)に示すように、この合口67は、第1〜3切欠き670a〜670cと、一対の連通溝670d、670eとによって形成されている。第1切欠き670aは環状部材65の軸方向に延びている。第2切欠き670bは、第1切欠き670aに対して周方向でずれつつ、環状部材65の軸方向に延びている。第3切欠き670cは、環状部材65の厚さ方向の中央で周方向に延びており、第1切欠き670aと第2切欠き670bとに連続している。各連通溝670d、670eは、同図の(C)に示すように、軸方向と平行な断面が略半円形をなしている。各連通溝670d、670eは、第3切欠き670cを挟んで対向しつつ、第3切欠き670cに沿って延びており、それぞれ第1切欠き670aと第2切欠き670bとに連続している。
【0081】
この環状部材65についても、リング溝132a内に設けられることにより、第3切欠き670cは、制御圧室13bと斜板室25とを常時連通する。ここで、この合口67においても、第3切欠き670cは、第1、2切欠き670a、670bと比較して冷媒の流路面積が小さくなるように形成されている。これにより、第3切欠き670cは、環状部材65における絞りとなっている。そして、第2円筒部132の外周面とシリンダ室51aの内周面との間、リング溝132a及び第3切欠き670cは、本発明における抽気通路として機能する。ここで、この環状部材65では、連通溝670d、670eにより、第3切欠き670cの流路面積が調整されている。なお、連通溝670d、670eの形状や個数は、適宜設計することが可能である。なお、この環状部材65についても金属等によって形成されても良い。この圧縮機における他の構成は実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0082】
この圧縮機においても、実施例1の圧縮機と同様、制御圧室13bと斜板室25との圧力差に基づいて、リング溝132a内を環状部材65が移動する。これにより、この圧縮機でも、環状部材65がリング溝132aを流通する冷媒の流量を調整して制御圧室13b内の圧力を調整することが可能となっている。この際、この環状部材65では、連通溝670d、670eによっても、制御圧室13bから斜板室25へ流通する冷媒の流量を調整することが可能となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0083】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0084】
例えば、リング溝132aに換えて、リング溝131aに対して環状部材61、65を設けて圧縮機を構成しても良い。この場合、リング溝131aが本発明における凹条部となる。
【0085】
また、リング溝132aに環状部材61、65、を設けつつ、リング溝131aに対して環状部材61、65、を更に設けて圧縮機を構成しても良い。この場合、複数の環状部材61、65、によって冷媒の漏出量を調整することにより、制御圧室13b内の圧力を調整することが可能となる。
【0086】
さらに、フロントハウジング17側にもシリンダボア、圧縮室、吸入室及び吐出室等を設けることにより、容量可変型両頭斜板式圧縮機として構成しても良い。