特許第6136927号(P6136927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136927
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷原版
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20170522BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20170522BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G03F7/033
   G03F7/00 502
   G03F7/11 501
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-510138(P2013-510138)
(86)(22)【出願日】2012年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2012071195
(87)【国際公開番号】WO2013035535
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-196736(P2011-196736)
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-238205(P2011-238205)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】芳本 和也
(72)【発明者】
【氏名】河上 哲真
(72)【発明者】
【氏名】米倉 弘倫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/075451(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/013601(WO,A1)
【文献】 特開2008−216842(JP,A)
【文献】 特開2005−077503(JP,A)
【文献】 特開2005−257727(JP,A)
【文献】 特開2004−295120(JP,A)
【文献】 特開平09−138499(JP,A)
【文献】 特開平05−072740(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081084(WO,A1)
【文献】 特開2009−244909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、ゲル化度55%以上のラテックスを25質量%以上の割合で含有する感光性樹脂層、および粘着防止層が順次積層されてなる感光性印刷原版であって、感光性樹脂層が、合成ゴムラテックス以外のラテックスゴムを含まないこと、および粘着防止層がセルロース誘導体を含むことを特徴とする水現像可能なフレキソ印刷原版。
【請求項2】
感光性樹脂層における全ラテックスの重量平均ゲル化度が55%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷原版。
【請求項3】
セルロース誘導体がメチルセルロースであることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキソ印刷原版。
【請求項4】
粘着防止層がセルロース誘導体の他に可塑剤を含み、可塑剤が1分子中に3〜8個の水酸基を持ちかつ120〜1000の数平均分子量を持つ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキソ印刷原版。
【請求項5】
150線1%の網点直径が下記式[I]を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフレキソ印刷原版。
レリーフ網点直径 ≦ ネガティブフィルム網点直径 ・・・・[I]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化度の高いラテックスを感光性樹脂層に使用した水現像可能なフレキソ印刷原版に関し、特に耐溶剤インキ性を持ちながら、印刷版でのドット太りを抑制することができるフレキソ印刷原版に関する。また、本発明は、印刷用レリーフ版を製造するために使用される水現像性感光性樹脂凸版印刷原版に用いる感光性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、印刷版が柔軟であるという特徴を活かし、ダンボール・紙器、封筒といった紙を代表とする比較的表面の粗い印刷媒体の印刷に好適に使用されてきた。一方、包装材料で使用されるプラスチックフィルムといった表面が平滑である印刷媒体の印刷には、オフセット印刷やグラビア印刷がその印刷品位の高さ故に、主な印刷方式として使用されてきた。このように印刷媒体に応じて印刷方式が使い分けられていた。
【0003】
ところが近年では、フレキソ印刷において、印刷機や周辺機器の性能向上によりフレキソ印刷の印刷品位が格段に向上した。これに伴い、印刷媒体がプラスチックフィルムの場合でも、フレキソ印刷が頻繁に使用されるようになってきた。
【0004】
一般に、印刷媒体がプラスチックフィルムと紙では、使用されるインキが異なる。フィルムは紙に比べてインキの濡れ性や浸透性が劣ることから、フィルム用途のインキは紙用途のインキに比べて、酢酸プロピルなどの有機溶剤や架橋性モノマーが多量に配合されている。これら有機溶剤や架橋性モノマーは、印刷中に版材へ浸透し、版の膨潤や強度低下といった深刻な問題を引き起こす。従って、フィルムへの印刷には、耐溶剤インキ性の高い印刷版が必要である。
【0005】
これまでに、フィルム印刷向けとして版の耐溶剤性を向上させた水現像版が幾つか報告されている(特許文献1、2参照)。これらは、いずれも主成分に架橋したラテックスを用いることを特徴としている。既にゲル化しているラテックスを主成分として用いることで、溶剤のラテックスへの侵入を防止でき、結果として版の耐溶剤性が向上している。
【0006】
ところが、ゲル化ラテックスを主成分として用いた場合、印刷版のドットサイズがネガティブフィルムのサイズよりも大きくなる問題があった。これは、既に架橋しているラテックスを用いることで、主露光時に発生する僅かな散乱光によってもラテックス粒子が架橋マトリックスに取り込まれ不溶化し、現像工程で洗いだせなくなるためである。印刷版のドットサイズが大きくなった場合、必然的に印刷物のドットサイズも大きくなり、高品位の印刷物を得ることができない。
【0007】
このように、水現像可能なフレキソ版で耐溶剤インキ性と高品位印刷を両立できる印刷版は存在せず、開発が望まれている。
【0008】
凸版印刷原版用感光性樹脂積層体は一般に、支持体、接着層および感光性樹脂層を積層し、さらに感光性樹脂層表面の粘着を防ぐ目的で粘着防止層を積層し、さらにその上にカバーフィルムを積層している。
【0009】
感光性樹脂積層体から印刷版を得る製版工程は、一般的には次のように行われる。まず生版上層のカバーフィルムを剥離した後、原図フィルムを載せて真空密着させ、その後、活性光線を照射し感光性樹脂層の一部分を露光して硬化させる。その後、原図フィルムを剥し、未硬化部分を現像液にて除去する。
【0010】
近年、より微細なパターンを正確に再現することが可能な印刷用レリーフが求められ、さらには印刷物において原図フィルムと同等なサイズを再現する性能が要求されている。ポリビニルアルコールを粘着防止層に設けた従来品の感光性樹脂積層体(例えば特許文献3参照)では印圧によるサイズ太りが生じるため、印刷物のパターンが原図フィルムのパターンよりも太ってしまうという問題がある。
【0011】
上記の問題を解決する技術として、例えば特許文献4や特許文献5のような公知の技術が存在する。しかし、前記技術は、親水性ポリマーまたは液状ゴム、合成ゴム、水分散性ラテックス、光重合性不飽和化合物および光重合開始剤を含有する水現像可能な合成ゴム系感光性樹脂層を使って水性インキを使用するフレキソ印刷原版に関するものであり、油性インキを使用する感光性樹脂凸版印刷原版用感光性樹脂積層体に対して応用できる技術ではなかった。
【0012】
一方、感光性樹脂凸版印刷版では、例えば特許文献6や特許文献7のような公知の技術が存在する。しかし、前記技術は、粘着防止層において感光性樹脂層の活性光線領域に吸収を持つ光吸収剤を含有しているため、結果的に感光性樹脂版の単位面積当たりの露光量を減らしてしまい硬化時間が長くなる問題があった。また、前記技術を用いて作製された感光性樹脂版は、通常の主露光だけでは網点や細線の再現性にバラつきが見られ、裏露光を必要とする問題があった。
【0013】
また、印刷用レリーフのパターンをより細い頂面として再現できるように、感光性樹脂層と粘着防止層の間にキャップ層を設ける技術について検討がなされた。レリーフ頂面のキャップ層が製版工程で細く削れるため、キャップ層を1層あるいは2層設けることで、よりシャープな印刷用レリーフを得ることができる。しかし、該方法では、製造コストにおいて加工費が非常に高くなるという問題があった。
【0014】
さらに、感光性樹脂版の現像時、硬化した網点の先端が現像工程により削れるように、感光性樹脂層の架橋密度を下げる技術について検討がなされた。硬化したパターンがそれぞれ現像工程において細く削り出されるため、よりシャープな印刷用レリーフを得ることができる。しかし、該方法では、レリーフの再現性に問題があることに加え、レリーフ自体の強度が低下するため耐刷性に問題があった。
【0015】
加えて、印刷物のパターンを原図フィルムのパターンと同等にするため、印刷用レリーフの作製工程で予め画像部分での網点高さを変えることにより被写体に印刷されるパターンのサイズを調節する方法がある。しかし、該方法は、特にデジタル画像形成用の印刷用レリーフ製版工程では有効であるものの、アナログ仕様の印刷用レリーフ製版工程には適用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−77503号公報
【特許文献2】WO2004/090638号公報
【特許文献3】特開昭52−110010号公報
【特許文献4】特開2004−295120号公報
【特許文献5】特開平5−72740号公報
【特許文献6】特開2003−295422号公報
【特許文献7】特開2004−264509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み創案されたものである。本発明の第一目的は、ゲル化度の高いラテックスを感光性樹脂層に使用した水現像可能なフレキソ印刷原版において耐溶剤インキ性と印刷版でのドット太りの抑制を両立することにある。本発明の第二目的は、従来技術の方法の問題を解決するだけでなく、従来品で品質上問題となっていたポリビニルアルコールを粘着防止層に設けた場合に発生する版面粘着を解決することができる凸版印刷原版用感光性樹脂積層体を提供することにあり、特に前記感光性樹脂積層体を印刷原版として使用した場合、原図フィルムよりシャープなパターンを再現することができる水現像性感光性樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、フレキソ印刷版の感光性樹脂層の表面に形成される粘着防止層に従来使用されるポリビニルアルコールの代わりにセルロース誘導体を使用することにより、感光性樹脂層への酸素の透過性が著しく向上し、そのため感光性樹脂層の表面での酸素による重合阻害が有効に働くようになり、結果として今まで散乱光でも不溶化していた部分が硬化しなくなって、印刷版でのドット太りが抑制されることを見い出した。また、本発明者は、感光性樹脂積層体を構成する粘着防止層にセルロース誘導体を使用することにより上記目的を達成できることを見出した。
【0019】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体、ゲル化度55%以上のラテックスを25質量%以上の割合で含有する感光性樹脂層、および粘着防止層が順次積層されてなる感光性印刷原版であって、感光性樹脂層が、合成ゴムラテックス以外のラテックスゴムを含まないこと、および粘着防止層がセルロース誘導体を含むことを特徴とする水現像可能なフレキソ印刷原版。
(2)感光性樹脂層における全ラテックスの重量平均ゲル化度が55%以上であることを特徴とする(1)に記載のフレキソ印刷原版。
(3)セルロース誘導体がメチルセルロースであることを特徴とする(1)または(2)に記載のフレキソ印刷原版。
(4)粘着防止層がセルロース誘導体の他に可塑剤を含み、可塑剤が1分子中に3〜8個の水酸基を持ちかつ120〜1000の数平均分子量を持つ化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のフレキソ印刷原版。
(5)150線1%の網点直径が下記式[I]を満足することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のフレキソ印刷原版。
レリーフ網点直径 ≦ ネガティブフィルム網点直径 ・・・・[I]
【発明の効果】
【0020】
本発明のフレキソ印刷版は、ゲル化度の高いラテックスを感光性樹脂層に使用しているので、耐溶剤インキ性に優れる。また、感光性樹脂層の表面に使用される粘着防止層に酸素透過係数の高いセルロース誘導体を使用しているので、感光性樹脂層の表面で酸素による重合阻害が有効に作用し、ゲル化度の高いラテックスを使用した場合に今まで散乱光でも不溶化していた部分が硬化しなくなり、印刷版でのドット太りが抑制される。本発明の水現象性感光性樹脂積層体では、感光性樹脂積層体のカバーフィルムを剥離して露出される粘着防止層においてセルロース誘導体が使用される。前記粘着防止層は、印刷版を得る製版工程において原図フィルムを密着させる面に相当し、原図フィルムおよび粘着防止層を透過した光が感光性樹脂層を硬化させる。従来は粘着防止層にポリビニルアルコールを使用し、原図フィルムのパターンを忠実に再現した印刷用レリーフを得ていた。これに対し、粘着防止層にセルロース誘導体を使用すると、原図フィルムのパターンをより精細に再現する印刷用レリーフが得られる。レリーフのパターンが精細になっている様子は、顕微鏡により数値化して比較することにより確認できる。また、印刷物を比較すると、粘着防止層において従来品のポリビニルアルコールを使用する場合よりもセルロース誘導体を使用する場合の方が、原図フィルムに近いシャープな印刷画像が得られることがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(フレキソ印刷版)
本発明のフレキソ印刷原版は、少なくとも支持体、ゲル化度55%以上のラテックスを25質量%以上の割合で含有する感光性樹脂層、および粘着防止層が順次積層された構成を有する。
【0022】
本発明の原版に使用される支持体は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を挙げることができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。また、必要により、支持体と感光性樹脂層との接着性を向上させるために、それらの間に接着剤を設けても良い。
【0023】
本発明の原版に使用される感光性樹脂層は、ラテックス、光重合性不飽和化合物、及び光重合開始剤の必須成分と、可塑剤、熱重合防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、香料、又は酸化防止剤などの任意の添加剤とから構成される。本発明では、感光性樹脂層は水系現像液で現像可能でなければならない。
【0024】
ラテックスは、感光性樹脂層の主成分であり、印刷版の中心となる成分である。本発明では、特にラテックスとして高いゲル化度を有するラテックスを特定量以上使用することを特徴とする。ゲル化していない又はゲル化度の低いラテックスのみを使用すると、耐溶剤性が劣りフィルム印刷用のインクで印刷すると版の膨潤や欠けが発生する。一方、高いゲル化度のラテックスを使用すると、一般に耐溶剤インキ性は向上するが、少しの散乱光でもラテックスが架橋マトリックスに組み込まれ、現像で不溶となり、結果として、ネガフィルムのサイズよりも印刷版のドットサイズが大きくなってしまう問題がある。本発明では、かかる問題に対して後述する粘着防止層の構成成分を工夫することにより対処している。なお、ラテックスは、天然ゴム、合成ゴムあるいはプラスチックなどの高分子が乳化剤の作用によってコロイド状に水中に分散した乳濁液をいい、生産過程によって、(i)植物の代謝作用による天然の生産物である天然ゴムラテックス、(ii)乳化重合法により合成された合成ゴムラテックス、及び(iii)固形ゴムを水中に乳化分散した人工ラテックスに分類されるが、本発明で使用するラテックスは上記の(ii)合成ゴムラテックス及び(iii)人工ラテックスのみをいい、(i)天然ゴムラテックスは含まない。
【0025】
ラテックスは、単一種類のラテックスからなっても複数種類のラテックスの混合物からなってもよいが、感光性樹脂層において使用される全ラテックスの重量平均ゲル化度が好ましくは55%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは80%以上である。ラテックスのゲル化度が上記数値未満では、フィルム印刷用インキを使用した場合、容易に版が膨潤を起こす。一方、ラテックスの重量平均ゲル化度の上限に制限はなく、ゲル化度が大きいほど耐溶剤インキ性は向上するが、上限は好ましくは95%である。なお、ラテックスのゲル化度の値はトルエンへの不溶解度によって規定される。具体的には、ラテックスのゲル化度は、厚さ100μmのPETフィルム上にラテックス溶液を3g正確に計量し、100℃で1時間乾燥させた後、25℃のトルエン溶液に48時間浸漬し、110℃で2時間乾燥させ、不可溶分の重量%を計算することによって測定される。
【0026】
本発明で使用するラテックスとしては、従来公知のラテックスの中から一定レベル以上のゲル化度を有するものを適宜選択すればよく、例えばポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックスなどを使用することができる。また、これらのラテックスは所望により(メタ)アクリルやカルボキシなどで変性されていてもよい。なお、ゲル化されたラテックスは、多数の様々な合成又は天然ラテックスが市販されているので、そこから適当なものを選択すればよい。
【0027】
ラテックスとしては、ゲル化していないラテックスやゲル化度の低いラテックスも、上記の高いゲル化度のラテックスを上記の特定量以上含有する限り、使用することができる。ゲル化していないラテックスは、水性インキに対するインキ乗り性の点から使用される。ゲル化していないラテックスとしては、従来公知のラテックスの中から適宜選択すればよく、例えばポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスなどを使用することができ、特に上記の点でアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを使用することが好ましい。
【0028】
また、本発明では、ゲル化度55%以上のラテックスを25質量%以上含有することが必要である。好ましくは、35質量%以上含有することである。ラテックスの含有量が25質量%未満であれば、耐溶剤インキ性が不十分である。一方、ラテックスの含有量に上限はないが、60質量%未満が好ましい。ラテックスの含有率が60質量%を超えると、水による現像が困難となりうる。
【0029】
本発明の原版に使用される粘着防止層は、ネガティブフィルムが感光層に粘着するのを防止するために設けられる。そのため、粘着防止層は、非粘着性であることが必要である。また、水系現像液で除去できることも必要である。本発明では、粘着防止層は、セルロース誘導体を含むことを特徴とする。セルロース誘導体は、粘着防止層に従来使用されていたポリビニルアルコールに比べて500倍以上の酸素透過係数を持ち、これにより感光性樹脂層に容易に酸素を透過する機能を持つ。本発明のように粘着防止層にセルロース誘導体を使用した場合、従来のものに比べて感光性樹脂層表面での酸素による重合阻害が有効に働き、今まで散乱光でも不溶化していた箇所が硬化しなくなる。従って、本発明のように高ゲル化度のラテックスを感光性樹脂層に使用した場合でも印刷版でのドット太りを抑制する効果を有する。一般に、露光工程はネガティブフィルムと感光層の密着性を上げるために減圧下で行われる。粘着防止層にセルロース誘導体を用いると減圧下での僅かな酸素を有効に利用できる。
【0030】
セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。粘着防止層におけるセルロース誘導体の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
【0031】
粘着防止層においてセルロース誘導体以外に含有できる成分としては、可塑剤が挙げられる。可塑剤は、印刷版のハンドリングが粗雑であったとしても粘着防止層にシワやクラックを発生することを防止するために添加される。可塑剤としては、1分子中に3〜8個の水酸基を持ちかつ120〜1000の数平均分子量を持つ化合物を使用することができる。水酸基の個数が3〜8の可塑剤とすることで、セルロース誘導体との相溶性が向上し、ブリードアウトを防止できる。数平均分子量が120〜1000の可塑剤とすることで、塗工中の揮発を抑えることができ、また優れた可塑化効果を得ることができる。具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、多価アルコール化合物の水酸基をエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール等で置換した化合物を挙げることができる。その中でも、ソルビトールの水酸基をエチレングリコールで置換した化合物(ヘキサン1,2,3,4,5,6ヘキオキシエチレンオール)が、ブリードアウトが少なく、好適に使用できる。
【0032】
本発明のフレキソ印刷原版は、上述の支持体、感光性樹脂層、粘着防止層以外に、カバーフィルムを積層することができる。カバーフィルムとしては、ポリエステルフィルムが好適に用いられる。カバーフィルムは、表面をマット化処理したものを用いることが好ましい。また、カバーフィルムと粘着防止層の剥離力調整のために、カバーフィルムに接着力調整剤を設けることも可能である。
【0033】
本発明のフレキソ印刷原版を製造する方法は特に限定されないが、一般的には以下のようにして製造される。
まず、セルロース誘導体を溶剤に溶解させ、それをカバーフィルム(例えばPETフィルム)上に塗布して溶剤を蒸発させる。これとは別に支持体上に感光性樹脂層を形成し、他方の積層体を作成する。このようにして得られた二つの積層体を、圧力及び/又は加熱下に、感光性樹脂層が粘着防止層に隣接するように積層する。なお、カバーフィルムは、印刷原版の完成後はその表面の保護フィルムとして機能する。
【0034】
本発明の印刷原版から印刷版を製造する方法としては、まず支持体側より、通常波長300〜400nmの光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線ランプ、ケミカルランプにより紫外線を照射する。続いてカバーフィルムが存在する場合には、まずカバーフィルムを印刷版から除去する。そして、ネガティブフィルムを感光性樹脂層上に密着させ紫外線照射し、光重合によって光硬化を行わせる。次に、未露光部をスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機により溶出させることにより支持体上にレリーフ像を形成することができる。これを乾燥後、活性光線処理して印刷版材を得ることができる。
【0035】
本発明のフレキソ印刷原版は、印刷版でのドット太りが抑制される。具体的には、本発明のフレキソ印刷原版は、150線1%の網点直径が以下の式[I]を満足する。
レリーフ網点直径 ≦ ネガティブフィルム網点直径・・・・[I]
【0036】
(水現像性感光性樹脂積層体)
本発明の凸版印刷原版用水現象性感光性樹脂積層体は、少なくとも支持体、接着層、感光性樹脂層、および粘着防止層が順次積層されてなる感光性樹脂積層体であって、粘着防止層がセルロース誘導体を含むことを特徴とする。
【0037】
本発明の感光性樹脂積層体に使用される支持体は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を挙げることができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。
【0038】
本発明の感光性樹脂積層体に使用される接着層は、支持体と感光性樹脂層の間に存在して両者を結合するために設けられる。接着層は、一つの層から形成されていても複数の層から形成されていてもよい。また、接着層は、バインダー成分および顔料を含有し、さらにレベリング剤および硬化剤を含有することが好ましい。
【0039】
接着層に用いられるバインダー成分としては、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体樹脂等を挙げることができ、これらを単独でまたは混合して使用することができる。これらのうち特に好ましいバインダー成分は、耐溶剤性の点でポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂である。
【0040】
本発明の感光性樹脂積層体に使用される感光性樹脂層は水現像性感光性樹脂からなり、水溶性高分子化合物、エチレン性不飽和化合物、および光重合開始剤を含む。さらに、感光性樹脂層は、他の添加剤、例えば熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、染料、顔料、香料、酸化防止剤などを含むことができる。
【0041】
上記水溶性高分子化合物は、水または水とアルコールの混合物に溶解または分散可能な高分子化合物であることが好ましい。具体的には、ポリエーテルアミド(例えば特開昭55−79437号公報等)、ポリエーテルエステルアミド(例えば特開昭55−74537号公報)、アンモニウム塩型第3級窒素原子含有ポリアミド(例えば特開昭53−36555号公報等)、アンモニウム塩型第3級窒素原子含有ポリエーテルウレタンウレア(例えば特開平4−97154号公報等)などが挙げられるが、その中でも特にアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドまたはアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリエーテルウレタンウレアが好ましい。
【0042】
上記エチレン性不飽和化合物は、分子内に光重合可能な不飽和基を1個以上含有する化合物であり、従来公知のものが使用できる。このような化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−アクロイルモルホリン、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの多価グリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価アクリレートやメタアクリレート、グリシジルアクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物の付加反応物、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタンなどが挙げられる。これらの単量体は単独あるいは2種以上混合して使用することができる。これらのエチレン性不飽和化合物の感光性樹脂組成物中の含有量は5〜50重量%の範囲であることが好ましい。含有量が5重量%未満では樹脂組成物の光硬化性に支障をきたし、50重量%より多くなると露光前の樹脂組成物(原版)の形状保持性に支障をきたすおそれがある。
【0043】
上記光重合開始剤は、従来公知の光重合開始剤が全て使用できる。具体例としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。光重合開始剤は感光性樹脂層中に0.01〜10重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0044】
上記熱重合禁止剤は、感光性樹脂層の熱安定性を向上させるために使用される。具体例としては、熱重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類などが挙げられる。熱重合禁止剤は感光性樹脂層中に0.001〜5重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0045】
感光性樹脂層の厚みは0.1〜10mmであることが好ましい。感光性樹脂層の厚みを0.1mm以上とすることで、印刷版材として用いるのに必要なレリーフ深度が得られ、10mm以下とすることで、印刷版材の重量が抑えられ、取り扱いに実用上の不備が生じることがない。
【0046】
本発明の感光性樹脂積層体に使用される粘着防止層は、感光性樹脂層に対するネガの密着を防ぐために感光性樹脂層の表面に設けられ、当業者間では、スリップコート層、剥離層、または被覆層と称されることもある。感光性樹脂層と粘着防止層の間には必要により接着層を設けても良い。粘着防止層は、セルロース誘導体以外に、シリカなどの無機微粒子、ポリスチレンやアクリル系モノマーを三次元内部架橋して得られる有機微粒子、界面活性剤、多価アルコールなどを必要により配合することができる。
【0047】
セルロース誘導体としては、水溶性のものが好ましく、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどが挙げられる。これらの中ではメチルセルロースが最も好ましい。粘着防止層におけるセルロース誘導体の含有量は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。また、粘着防止層の厚みは、0.2〜20μmの範囲にあることが好ましい。厚みをこの範囲とすることで、感光性樹脂層の影響を受けることなく粘着防止効果が十分に得られる上、シャープな画像を形成することができる。
【0048】
粘着防止層は、感光性樹脂層とカバーフィルムの両者に対して充分な接着性を有することが必要である。充分な接着性とは、粘着防止層が通常の取り扱い中は感光性樹脂層とカバーフィルムの両者に対して接着性を有し、かつカバーフィルムが画像を露光する前に容易に取り去られるような接着性を意味する。感光性樹脂層と粘着防止層の間に剥離制御層を設けると、感光性樹脂層と粘着防止層との接着性がさらに強くなる。粘着防止層にセルロース誘導体を使用することで、水現像可能な感光性樹脂印刷版材から原図フィルムを取り去るのを容易にする効果が認められる。また、原図フィルムとの密着性が良好であり、その結果画像再現性に優れ、特に凹細線の深さが深い印刷版材を与えることができる。もし凹細線の深さが不適切なときは、インキが付着されるべきでない部分にもインキが付着されるため、凹細線の深さは印刷版材にとって重要な因子である。
【0049】
粘着防止層は、感光性樹脂層の表面の粘着防止の働きを受け持っているが、感光性樹脂層と粘着防止層の間に剥離制御層を設けた場合は、粘着防止層が感光性樹脂層から脱離し難くする役割を果たしている。また、これらの層はいずれも水現像時に感光性樹脂層から溶出脱落するので、現像後の版面には残留しない。したがって、印刷時には悪影響を及ぼさないものである。
【0050】
粘着防止層を感光性樹脂層上に設ける方法としては、次の方法が挙げられる。例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スプレーなどを使用して感光性樹脂層上に粘着防止層構成成分からなる溶液を塗布して乾燥する。感光性樹脂層の上に剥離制御層を設ける場合は、まず感光性樹脂層上に剥離制御層を形成するための溶液を塗布し乾燥した後に、粘着防止層を形成する。被膜の塗布/ぬれ性を改良するために、必要ならば粘着防止層または剥離制御層の1層以上に対して界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、水現像で粘着防止層および剥離制御層が除去できる限りいかなるものも使用でき、アニオン系、ノニオン系、両性系より選ばれた1種以上の界面活性剤を使用できる。粘着防止層を感光性樹脂層上に設ける最も簡便な方法は、感光性樹脂層保護用カバーフィルムとして使用するフィルム上に、粘着防止層構成成分からなる溶液を塗布乾燥して薄い被膜を作り、この被膜が感光性樹脂層に接するようにしてカバーフィルムを圧着する方法である。剥離制御層がある場合は、セルロース誘導体を含む溶液を塗布乾燥して薄い被膜を作った上に剥離制御層を形成するための溶液を塗布乾燥してフィルム上に2層構造を有する被膜を作る。このようにしてカバーフィルムを装着した印刷版材は、活性光線の露光に先だってカバーフィルムを剥がす際に、被膜全体が感光性樹脂層側に転写するので、粘着防止層が版表面となり、原図フィルムとの密着性が良好となる。カバーフィルムとしてマット化されたものを使用すれば、感光性樹脂層側に転写された粘着防止層の表面もマット化されることになり、原図フィルムの密着性は極めて良好となる。
【0051】
このようなカバーフィルムとしては、ポリエステルフィルムが酸素透過率、寸法安定性などの面から最適であるが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、アセテートフィルム、塩化ビニルフィルム、セロファンなども使用可能である。これらのフィルムをマット化する方法としては、例えば、サンド吹き付け、ケミカルエッチング、マット化剤を含む樹脂のコーティングなどが挙げられる。また、サンド吹き付け、ケミカルエッチングを行ったマットフィルムに樹脂を薄く塗布してマットの程度を調整したものも使用可能である。
【0052】
本発明の感光性樹脂積層体は、従来公知の方法で得ることができるが、例えば、接着剤を塗布した支持体に、ラミネートもしくはキャスト、押し出し成型によって感光性樹脂層を積層し、粘着防止層を塗布したカバーフィルムを感光性樹脂層上に密着させることによって得ることができる。また、製版しやすくするため、公知の粘着防止層や保護カバーフィルムを積層させても良い。さらに、支持体とカバーフィルムの間に感光性樹脂組成物を挟み込み、加熱プレスなどで必要な厚さまで押さえ込むことによっても感光性樹脂積層体を得ることができる。
【0053】
本発明の感光性樹脂積層体に印刷用のレリーフ像を形成するためには、まず支持体側より、通常波長300〜400nmの光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯により紫外線を照射し、その後、カバーフィルムを剥離した感光性樹脂層上にネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ紫外線照射し、光重合によって光硬化を行わせる。
【0054】
次に、未露光部をスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機により溶出させることにより支持体上にレリーフ像を形成することができる。これを乾燥後、活性光線処理して印刷版材を得ることができる。
【0055】
本発明の感光性樹脂積層体を使用した場合には、従来品に比べて次のような点が改善される。
(1)感光性樹脂層自体の粘着性が強い場合にも、原図フィルムと接触する面にはセルロース誘導体を使用した粘着防止層が面全体に形成されているので、原図フィルムの密着が容易である。
(2)粘着防止層にセルロース誘導体を用いることによって、得られるレリーフの画像再現性、特に凹細線の深さが深くできる。
(3)粘着防止層にセルロース誘導体を用いることによって、従来品のPVA製粘着防止層と比べて原図フィルムの密着面において版面粘着が起こりにくい。加えて、高温高湿度条件下でのカバー剥離不良が起こりにくく、経時安定性が優れている。
【0056】
本発明の感光性樹脂積層体を使用した印刷版材は、画像再現性に優れ、特に原図フィルムに対する再現性が優れた印刷用感光性樹脂版となる。具体的には、本発明の感光性樹脂積層体は、印刷原版として使用し、原図フィルムを用いて製版したレリーフ網点直径が、原図フィルムに対する再現性において以下の式[II]を満足する。
レリーフ網点直径 ≦ 原図フィルム網点直径・・・・[II]
原図フィルムに対する再現性において、同一の原図フィルムを用いて製版した場合のレリーフ網点直径を測定して比較した場合、レリーフ網点1%網点直径が原図フィルム網点直径以下であることが好ましく、さらに好ましくは原図フィルム網点直径と同一から原図フィルム網点直径の80%の範囲である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例1〜8及び比較例1〜7で評価された項目の評価方法を以下に示す。
【0058】
(1)1%網点直径
キーエンス社製レーザー顕微鏡VF9500を用いて、150線の網点1%の直径を測定した。なお、評価に使用したネガティブフィルムの網点直径は19μmであった。
【0059】
(2)耐溶剤インキ性
版をIPA/酢酸プロピル=80/20の溶液に24時間浸漬させ、浸漬後の膨潤率で評価した。
10%未満→○
10%〜20%→○△
20%〜30%→△
30%〜40%→△×
40%超→×
【0060】
(感光性樹脂組成物Aの調製)
ラテックスとしてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF 固形分濃度 55%)91質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Aを得た。
【0061】
(感光性樹脂組成物Bの調製)
ラテックスとしてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF 固形分濃度 55%)73質量部、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(日本ゼオン製、SX1503A 固形分濃度42%)24質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Bを得た。
【0062】
(感光性樹脂組成物Cの調製)
ラテックスとしてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF 固形分濃度 55%)55質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)35質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Cを得た。
【0063】
(感光性樹脂組成物Dの調製)
ラテックスとしてカルボキシ変性メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(日本エイアンドエル製、MR174 固形分濃度 50%)100質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Dを得た。
【0064】
(感光性樹脂組成物Eの調製)
ラテックスとしてスチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン製、Nipol C4850 固形分濃度 70%)71質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Eを得た。
【0065】
(感光性樹脂組成物Fの調製)
ラテックスとしてアクリロニトリル−ブタジエンラテックス(日本エイアンドエル製、NA105 固形分濃度 50%)100質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Fを得た。
【0066】
(感光性樹脂組成物Gの調製)
ラテックスとしてアクリロニトリル−ブタジエンラテックス(日本ゼオン製、SX1503A 固形分濃度 42%)119質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Gを得た。
【0067】
(感光性樹脂組成物Hの調製)
固形ブタジエンゴム(日本合成ゴム社製、BR022 固形分濃度 100%)50質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Hを得た。
【0068】
(感光性樹脂組成物Iの調製)
ラテックスとしてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF 固形分濃度 55%)36質量部、固形ブタジエンゴム(日本合成ゴム社製、BR022、固形分濃度100%)30質量部、光重合性化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:数平均分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する数平均分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して感光性樹脂組成物Iを得た。
【0069】
実施例1
(フレキソ印刷原版の製造)
メチルセルロース(信越化学工業製、SM15)を水とイソプロピルアルコールの混合溶剤に溶解した後、マット処理化PETフィルム(厚さ100μm)上に、塗工・乾燥して粘着防止層付きカバーフィルムを得た。粘着防止層の厚みは1.2μmであった。続いて、共重合ポリエステル系接着剤を塗工したPETフィルム支持体上に表1記載の感光性樹脂組成物を配置し、その上から粘着防止層付きカバーフィルム重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートした。PET支持体、接着層、感光層、粘着防止層、カバーフィルムからなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.7mmであった。
【0070】
(フレキソ印刷原版から印刷版の製造)
まず、フロアー層を形成するために原版のPET指示体側から化学線(光源 Phillips 10R 365nmにおける照度8mW/cm)を1分間照射した。続いてカバーフィルムを剥離した。その後ネガティブフィルムを粘着防止層上に減圧下で密着させ化学線(光源 Phillips 10R 365nmにおける照度8mW/cm)を6分間照射した。その後、A&V社製現像機(Stuck System)で、40℃で8分間現像を行った。現像液には、食器洗剤Cascade(P&G製)を1%添加した水道水を使用した。現像後、60℃で10分乾燥し、化学線を10分間照射し、最後に表面粘着性を除去するために殺菌灯を5分照射した。印刷版の評価結果を表1に示す。
【0071】
実施例2
粘着防止用組成物としてメチルセルロース(信越化学工業製、SM4、低粘度タイプ)を用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0072】
実施例3
粘着防止用組成物として、メチルセルロースの他に可塑剤(脂肪族多価アルコール系ポリエーテルポリオール、SE270、三洋化成製)を配合した以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0073】
実施例4
粘着防止用組成物としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業製、60SH−15)を用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0074】
実施例5
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0075】
実施例6
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0076】
実施例7
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0077】
実施例8
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Eを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0078】
比較例1
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Fを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0079】
比較例2
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Gを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0080】
比較例3
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Hを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0081】
比較例4
感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Iを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0082】
比較例5
粘着防止用組成物として高ケン化度のポリビニルアルコール(クラレ製、PVA117)を用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0083】
比較例6
粘着防止用組成物として低ケン化度のポリビニルアルコール(クラレ製、PVA505)を用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0084】
比較例7
粘着防止用組成物として高ケン化度のポリビニルアルコール(クラレ製、PVA117)を用い、感光性樹脂層に感光性樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様の製造・評価を行った。
【0085】
上述のようにして得られた実施例1〜8、比較例1〜7の印刷原版の詳細と評価結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1から明らかなように、実施例1〜8に示すように、感光性樹脂層にゲル化度の高いラテックスを使用し且つ粘着防止層にセルロース誘導体を使用すると、印刷版でのドット太りが無く且つ耐溶剤インキ性に優れる版が得られる。実施例3では、粘着防止層に可塑剤を配合しており、粗雑なハンドリングをした場合でも版面に皺は発生しなかった。一方、比較例1〜3に示すように、低ゲル化度もしくは非ゲル化ラテックスを使用した場合では、印刷版でのドット太りは無いものの耐溶剤インキ性が不足している。比較例4に示すように、高ゲル化度のラテックスを配合した場合でも、その配合量が少ない場合、耐溶剤性が劣る。比較例5〜7に示すように、粘着防止層にポリビニルアルコールを使用した場合、印刷版でのドット太りが顕著に発生する。
【0088】
(感光性樹脂組成物A′の調製)
ε−カプロラクタム55.0質量部、N,N−ビス(γ−アミノプロピル)ピペラジンアジペート40.0質量部、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート7.5質量部および水100質量部を反応器に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/cmに達した時点から、反応器内の水を徐々に留出させて、1時間で常圧に戻し、その後1.0時間常圧で反応させ、透明淡黄色の三級窒素原子含有ポリアミドを得た。
【0089】
続いて、得られたポリアミドを50.0質量部、メタノールを50.0質量部、および水10.0質量部を、攪拌付き加熱溶解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解し、次いでトリメチロールプロパントリグリシジルエステルのアクリル酸付加物44.0質量部、メタクリル酸3質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン0.02質量部およびベンジルメチルケタール2質量部を添加して30分間攪拌し、溶解した。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させ、釜内の温度が110℃となるまで濃縮し、流動性のある粘稠なアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドを含有する感光性樹脂組成物A′を得た。
【0090】
(感光性樹脂組成物B′の調製)
N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン77質量部と2−メチルペンタメチレンジアミン22質量部をメタノール550質量部に溶解した後、該ジアミン溶液にポリエチレングリコール(平均分子量600)600質量部とヘキサメチレンジイソシアネート369質量部を反応させて得られた実質的に両末端にイソシアネート基を有するウレタンオリゴマー451質量部を、撹拌下徐々に添加した。両者の反応はポリマー固形分濃度50%の条件下に約15分で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去後、減圧乾燥して、ジアミン成分中に2−メチルペンタメチレンジアミンを20質量%、ポリエーテルセグメントを47質量%含有し、比粘度が1.71のポリエーテルウレアウレタンを得た。
【0091】
次に得られたポリエーテルウレアウレタン55.0質量部と4級化剤として安息香酸2.1質量部をメタノール200.0質量部および水10部質量に攪拌付き加熱反応釜中65℃で4時間溶解・4級化反応を行った。その後にグリセリンジメタクリレート33.7質量部、エチレングリコールジエポキシアクリレート5質量部、可塑剤としてN−エチルトルエンスルホン酸アミド3.1質量部、ハイドロキノンモノエチルエーテル0.1質量部、ベンジルジメチルケタール1.0質量部を加え、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリエーテルウレタンウレアを含む感光性樹脂組成物溶液を得た。この溶液を次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させ、釜内の温度が110℃となるまで濃縮し、流動性のある粘稠なアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリエーテルウレタンウレアを含む感光性樹脂組成物B′を得た。
【0092】
(実施例1′)
(粘着防止層を設けたカバーフィルムの作成)
メチルセルロース(信越化学工業製、SM15)を水とイソプロピルアルコールの混合溶剤に溶解した後、PETフィルム(厚さ125μm)上に、塗工・乾燥して粘着防止層付きカバーフィルムを得た。粘着防止層の厚みは1.2μmであった。
【0093】
(感光性樹脂積層体の調製)
共重合ポリエステル系接着剤(20μm)を塗工したPETフィルム支持体上に感光性樹脂組成物A′を配置し、その上から粘着防止層を合わせるように上記粘着防止層付きカバーフィルムを重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて110℃でラミネートした。本積層体は、レタープレス印刷機で使用できる全厚みが1075μmのシート状感光性樹脂原版として使用することができる。
【0094】
(印刷用レリーフ版の作成)
上述のようにして得られた感光性樹脂積層体のカバーフィルムを剥がし、原図フィルムを載せ、露出した感光性樹脂層に対して露光を行い、自動ブラシ現像機JOW−A2−PD(日本電子精機株式会社製)を用いて25℃の水で現像を行って製版した。現像により感光性樹脂の洗い残りが無い状態となった時点で自動ブラシ現像機から取り出し、水を切って60℃で10分間乾燥させ、印刷用レリーフ版を得た。
【0095】
得られた印刷用レリーフ版について、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、超深度カラー3D形状測定顕微鏡、VK−9500)を用いて1%網点径を観察した。原図フィルムの1%網点直径20μmに対し、製版後の1%網点直径は何μmで再現されているかを評価した。
【0096】
また、得られた印刷用レリーフ版について、製版工程で感光性樹脂層を硬化させる際、1%網点および30μm細線の再現に要する最短露光時間(分)を測定・記録した。
【0097】
また、得られた印刷用レリーフ版について、製版工程で感光性樹脂積層体からカバーフィルムを取り除き原図フィルムを版表面に載せる際、粘着防止層の表面で粘着性の有無を調べた。評価に使用する版は、予め温度30℃湿度90%の条件下で長期保管したものを使用した。
【0098】
また、得られた印刷用レリーフ版について、製版工程でカバーフィルムを取り除く際に、カバー剥離をスムーズに行うことができるかを調べた。評価に使用する版は、予め温度30℃湿度90%の条件下で長期保管したものを使用した。
【0099】
(実施例2′)
感光性樹脂層に使用する感光性樹脂組成物を表2に記載のように感光性樹脂組成物Bに変更する以外は実施例1′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0100】
(実施例3′)
粘着防止層に用いるメチルセルロースを表2に記載のようにヒドロキシプロピルセルロースに変更する以外は実施例1′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0101】
(実施例4′)
粘着防止層に用いるメチルセルロース溶解液の組成中に、可塑剤として総重量比0.5%のSE270(三洋化成工業製)を添加する以外は実施例1′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0102】
(実施例5′)
粘着防止層に用いるヒドロキシプロピルセルロース溶解液の組成中に、可塑剤として総重量比0.5%のSE270(三洋化成工業製)を添加する以外は実施例3′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0103】
(比較例1′)
粘着防止層に用いるメチルセルロースを表2に記載のように高ケン化度ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、AH−26、ケン化度97モル%以上)に変更する以外は実施例1′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0104】
(比較例2′)
粘着防止層に用いるメチルセルロースを表2に記載のように低ケン化度ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、KP−08R、ケン化度71〜72.5モル%)に変更する以外は実施例1′と同じ方法により感光性樹脂積層体を作製、評価した。
【0105】
実施例1′〜5′及び比較例1′,2′の感光性樹脂積層体の詳細と評価結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
表2からわかるように、実施例1′〜5′の感光性樹脂積層体から作成された印刷用レリーフは、製版時に用いる原図フィルムの1%網点直径よりも小さい1%網点直径を再現し、かつ高湿度下のカバー剥離性を満足することができる。一方、ポリビニルアルコールを用いた比較例1′及び2′では、レリーフ網点直径、原図フィルム版面粘着性、及び高湿度下のカバー剥離性のいずれの特性も満足できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のフレキソ印刷原版は、耐溶剤インキ性とドット太りの抑制を両立しているので、フィルム印刷向け高品位印刷用版材として特に有用である。本発明の感光性樹脂積層体によれば、原図フィルムよりも精細なパターンを再現した印刷レリーフを得ることが可能であり、より原図フィルムに近い印刷物を得ることが可能となる。従来品は印刷レリーフが原図フィルムを忠実に再現する性能であったため、得られる印刷物はさらに太ってしまう欠点があったが、本発明により印刷物を原図フィルムに近い精細なものに仕上げることが可能となった。本発明は、近年の高品位な印刷要求に応える技術であり、産業界に寄与する可能性大である。