【文献】
Organic and Biomolecular Chemistry, 2011, Vol.9, p.596-599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩基性水溶液が、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの水溶液である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物が、N−Fmoc−C−保護ペプチド、N−Fmoc−C−保護アミノ酸またはN−Fmoc−C−保護アミノ酸アミドであり、
得られたアミノ基含有化合物が、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
(1)縮合剤の存在下、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとを縮合させて、N−Fmoc−C−保護ペプチドを得る工程、および/または
(2)C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルとを縮合させて、N−Fmoc−C−保護ペプチドを得る工程
を含む、請求項9に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.記号
本発明(即ち、明細書および請求の範囲)において使用する記号の意味を、以下に記載する。
Ac:アセチル
Alloc:アリルオキシカルボニル
At:7−アザベンゾトリアゾール−1−イル
Boc:tert−ブトキシカルボニル
BOP:1−ベンゾトリアゾリルオキシ−トリス−ジメチルアミノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
Bpr:1,1−ジメチル−2−フェニル−エチル
Bsmoc:1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−2−イルメトキシカルボニル
Bt:ベンゾトリアゾール−1−イル
Bzl:ベンジル
Bzl(2,4−OPhy):2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル
Bzl(3,4,5−OPhy):3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジル
Bzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe):2−[3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジロキシベンジルオキシ]−4−メトキシベンジル
CDI:カルボニルジイミダゾール
6−Cl−HOBt(HOCt):6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
Ct:6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル
DABCO:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBF:ジベンゾフルベン
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
Dhbt:3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン−3−イル
DIPC:ジイソプロピルカルボジイミド
DMAP:N,N−ジメチル−4−アミノピリジン
Dmb:2,4−ジメトキシベンジル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMT−MM:4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホニウム クロリド
Dpm:ジフェニルメチル
Dpm(4,4’−OPhy):4,4’−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ジフェニルメチル
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド
EDC.HCl:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩
Et:エチル
Fm:9−フルオレニルメチル
Fmoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HCTU:O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HOAt:1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HONb:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
HOOBt(HODhbt):3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
HOPht:N−ヒドロキシフタルイミド
HOSu:N−ヒドロキシスクシンイミド
iPr:イソプロピル
Me:メチル
MsOH:メタンスルホン酸
Nb:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドイル
NMP:N−メチルピロリドン
Pbf:2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
Pht:フタルイミドイル
PyBOP:1−ベンゾトリアゾリルオキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
PyBroP:ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
Su:スクシンイミドイル
TBTU:O−ベンゾトリアゾール−1−イル−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート
tBu:tert−ブチル
Trt:トリチル
THF:テトラヒドロフラン
TsOH:p−トルエンスルホン酸
Z:ベンジルオキシカルボニル
【0017】
AA
n:アミノ酸残基(添え字のnは1以上の整数であり、ペプチドC末端からのAA
nの順番を示す。)
PG
0:ペプチドのC末端のカルボキシ基またはアミド基の保護基
PG
n:アミノ基の保護基(添え字のnは1以上の整数であり、PG
nはAA
nのアミノ基の保護基であることを示す。)
HOE:活性化剤
E:活性基
Gly:グリシン
Ala:アラニン
Val:バリン
Leu:ロイシン
Ile:イソロイシン
Met:メチオニン
Phe:フェニルアラニン
Tyr:チロシン
Trp:トリプトファン
His:ヒスチジン
Lys:リジン
Arg:アルギニン
Ser:セリン
Thr:トレオニン
Asp:アスパラギン酸
Glu:グルタミン酸
Asn:アスパラギン
Gln:グルタミン
Cys:システイン
Pro:プロリン
Orn:オルニチン
Sar:サルコシン
β−Ala:β−アラニン
GABA:γ−アミノ酪酸
Dap:2,3−ジアミノプロパン酸
【0018】
PG
0で表されるC末端のカルボキシ基の保護基としては、例えば、Me、Et、iPr、tBuなどのアルキル基、Z、Fm、Trt、Dpm、Bpr、1,1−ジメチルベンジル、ジメチルフェニル等が挙げられる。
PG
0で表されるC末端のアミド基の保護基としては、例えば、Dmb、ビス(4−メトキシフェニル)メチル、トリチル等が挙げられる。アミド基は、アルキル基等の置換基を有していてもよい。なお、アミド基はカルバモイル基ともいう。
【0019】
また、PG
0で表されるC末端のカルボキシ基またはアミド基の保護基としては、
(1)WO2010/113939A1に記載のジフェニルメタン化合物を保護化試薬として用いる保護基、
(2)WO2010/104169A1に記載のフルオレン化合物を保護化試薬として用いる保護基、
(3)WO2011/078295A1に記載のベンジル化合物を保護化試薬として用いる保護基、
(4)WO2012/029794A1に記載の分岐鎖含有芳香族化合物を保護化試薬として用いる保護基
等を用いることができる。
これらの保護化試薬を用いてC末端のカルボキシ基またはアミド基を保護すれば、後述のN−Fmoc−C−保護ペプチド等およびC−保護ペプチド等の脂溶性を向上させることができ、後述する液相合成法によるペプチドの製造方法において、例えば、カップリング工程のワークアップの水洗において、水層側に不純物を効率的に除去することができる。
【0020】
WO2010/113939A1に記載のジフェニルメタン化合物としては、例えば、
2,3,4−トリオクタデカノキシベンゾヒドロール;
[フェニル(2,3,4−トリオクタデカノキシフェニル)メチル]アミン;
4,4’−ジドコソキシベンゾヒドロール;
ジ(4−ドコソキシフェニル)メチルアミン;
4,4−ジ(12−ドコソキシドデシルオキシ)ベンゾヒドロール;
アミノ−ビス[4−(12−ドコソキシドデシルオキシ)フェニル]メタン;
N−ベンジル−[ビス(4−ドコシルオキシフェニル)]メチルアミン;
(4−メトキシ−フェニル)−[4−(3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−シクロヘキシルメトキシ)−フェニル]−メタノール;
{(4−メトキシ−フェニル)−[4−(3,4,5−トリス−オクタデシロキシ−シクロヘキシルメトキシ)−フェニル]−メチル}−アミン;
[ビス−(4−ドコソキシ−フェニル)−メチル]−アミン
等が挙げられる。
【0021】
WO2010/104169A1に記載のフルオレン化合物としては、例えば、
2−ドコシロキシ−9−(4−クロロフェニル)−9−フルオレノール;
2−ドコシロキシ−9−(4−クロロフェニル)−9−ブロモフルオレン;
2,7−ジドコシロキシ−9−(4−クロロフェニル)−9−ブロモフルオレン;
2−(12−ドコシロキシ−ドデカノキシ)−9−(3−フルオロフェニル)−9−ブロモフルオレン;
1,12−ビス−[12−(2’−O−9−(4−クロロフェニル)−9−フルオレノール)−ドデシロキシ]−ドデカン;
1,12−ビス−[12−(2’−O−9−(4−クロロフェニル)−9−ブロモフルオレン)−ドデシロキシ]−ドデカン;
2−(3−オクタデシロキシ−2,2−ビス−オクタデシロキシメチル−プロポキシ)−9−(4−クロロフェニル)−9−フルオレノール;
2−(3−オクタデシロキシ−2,2−ビス−オクタデシロキシメチル−プロポキシ)−9−(4−クロロフェニル)−9−ブロモフルオレン;
9−(4−クロロフェニル)−2−(3,4,5−トリス(オクタデシロキシ)シクロヘキシルメトキシ)−9−フルオレノール;
9−(4−クロロフェニル)−2−(3,4,5−トリス(オクタデシロキシ)シクロヘキシルメトキシ)−9−ブロモフルオレン
等が挙げられる。
【0022】
WO2011/078295A1に記載のベンジル化合物としては、例えば、
4−(12’−ドコシルオキシ−1’−ドデシルオキシ)ベンジルアルコール;
4−(12’−ドコシルオキシ−1’−ドデシルオキシ)−2−メトキシベンジルアルコール;
4−(12’−ドコシルオキシ−1’−ドデシルオキシ)−2−メトキシベンジルアミン;
2−(12’−ドコシルオキシ−1’−ドデシルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコール;
2−(12’−ドコシルオキシ−1’−ドデシルオキシ)−4−メトキシベンジルアミン;
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリス(オクタデシルオキシ)ベンジルオキシ]ベンジルアルコール;
2−[3’,5’−ジ(ドコシルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアルコール;
2−メトキシ−4−[2’,2’,2’−トリス(オクタデシルオキシメチル)エトキシ]ベンジルアルコール;
2−メトキシ−4−[2’,2’,2’−トリス(オクタデシルオキシメチル)エトキシ]ベンジルアミン;
4−メトキシ−2−[3’,4’,5’−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール;
4−[3’,4’,5’−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール;
1,22−ビス[12−(4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェノキシ)ドデシルオキシ]ドコサン;
1,22−ビス[12−(2−ヒドロキシメチル−5−メトキシフェノキシ)ドデシルオキシ]ドコサン;
2−ドコシルオキシ−4−メトキシベンジルアルコール;
2−メトキシ−4−[3’,4’,5’−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール;
3,5−ジメトキシ−4−[3’,4’,5’−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルメチルオキシ]ベンジルアルコール;
N−(4−ヒドロキシメチル−3−メトキシフェニル)−3,4,5−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルカルボキサミド;
N−(5−ヒドロキシメチル−2−メトキシフェニル)−3,4,5−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルカルボキサミド;
N−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3,4,5−トリス(オクタデシルオキシ)シクロヘキシルカルボキサミド
等が挙げられる。
【0023】
WO2012/029794A1に記載の分岐鎖含有芳香族化合物としては、例えば、
2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,5−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
1−[(2−クロロ−5−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)フェニル)]−1−フェニルメタンアミン;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール;
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアミン;
2−[3’,4’,5’−トリ(2’’,3’’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ]−4−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メトキシベンジルアミン;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアルコール;
4−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)−2−メチルベンジルアミン;
2,2,4,8,10,10−ヘキサメチル−5−ドデカン酸(4−ヒドロキシメチル)フェニルアミド;
4−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)ベンジルアルコール;
2−(3,7,11−トリメチルドデシルオキシ)−9−フェニルフルオレン−9−オール
等が挙げられる。
【0024】
PG
nで表されるアミノ基の保護基としては、例えば、Boc、Z、Fmoc、Bsmoc、Alloc、Ac等が挙げられる。
Eで表される活性基とは、アミノ基による求核攻撃を受けて「EO
−」として容易に脱離し、アミド結合を生成させ得る基を意味し、例えば、Bt、Ct、At、OBt、Su、Pht、Nb、ペンタフルオロフェニル等が挙げられる。
【0025】
2.用語
本発明において使用する用語を、以下、順に説明する。
本発明において「アミノ基含有化合物」とは、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を有する化合物を意味する。
「Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物」とは、アミノ基含有化合物が有する第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の少なくとも一つが、Fmoc基で保護された化合物を意味する。
【0026】
本発明においてアミノ酸を「H−AA−OH」と表示した場合は、左側がアミノ基、右側がカルボキシ基であることを意味し、アミノ基およびカルボキシ基がそれぞれ保護されていないことを意味する。
カルボキシ基が保護されているアミノ酸は「H−AA−OPG
0」と表示され、アミノ基が保護されているアミノ酸は「PG
n−AA−OH」と表示される。
アミノ基が保護され、且つカルボキシ基が活性エステル化されているアミノ酸は「PG
n−AA−OE」と表示される。
PG
n−AA−OHの対称酸無水物は「(PG
n−AA)
2−O」と表示される。
【0027】
本発明においてアミノ酸アミドを「H−AA−NH
2」と表示した場合は、左側がアミノ基、右側がアミド基であることを意味し、アミノ基およびアミド基がそれぞれ保護されていないことを意味する。
アミド基が保護されているアミノ酸アミドは「H−AA−NHPG
0」と表示され、アミノ基が保護されているアミノ酸アミドは「PG
n−AA−NH
2」と表示される。
【0028】
保護された側鎖官能基を有するアミノ酸またはアミノ酸アミドは「H−AA(PG)−(OH or NH
2)」(PGは側鎖官能基の保護基を示す)と表示される。
【0029】
本発明においてペプチドを「H−AA
n’−AA
n’−1−・・・−AA
1−(OH or NH
2)」(添え字のn’は2以上の整数を示す。)と表示した場合は、左側がN末端、右側がC末端であり、N末端およびC末端がそれぞれ保護されていないアミノ酸残基をn’個有するペプチドであること意味する。ここで、N末端とはアミノ酸残基のα位アミノ基に限定されず、ペプチド伸長が側鎖アミノ基(例えば、Lysのεアミノ基)を介して行われる場合は、この側鎖アミノ基もN末端に含まれる。以下、同様である。
C末端が保護されているペプチドを「H−AA
n’−AA
n’−1−・・・−AA
1−(OPG
0 or NHPG
0)」と表示し、さらにN末端が保護されているペプチドを「PG
n’−AA
n’−AA
n’−1−・・・−AA
1−(OPG
0 or NHPG
0)」と表示する。
【0030】
「C−保護アミノ酸」とは、カルボキシ基が保護されており、アミノ基が保護されていないアミノ酸を意味し、これは「H−AA−OPG
0」と表示される。
「C−保護アミノ酸アミド」とは、アミド基が保護されており、アミノ基が保護されていないアミノ酸アミドを意味し、これは「H−AA−NHPG
0」と表示される。
【0031】
「N−保護アミノ酸」とは、アミノ基が保護されており、カルボキシ基が保護されていないアミノ酸を意味し、これは「PG
n−AA−OH」と表示される。
「N−保護アミノ酸アミド」とは、アミノ基が保護されており、アミド基が保護されていないアミノ酸アミドを意味し、これは「PG
n−AA−NH
2」と表示される。
「N−保護アミノ酸活性エステル」とは、アミノ基が保護されており、カルボキシ基がEにより活性化されたアミノ酸を意味し、これは「PG
n−AA−OE」と表示される。
「N−保護ペプチド活性エステル」とは、N末端のアミノ基が保護されており、C末端のカルボキシ基がEにより活性化されたペプチドを意味する。
なお、N−保護アミノ酸活性エステルまたはN−保護ペプチド活性エステルとして単離可能なものは、Eがペンタフルオロフェニル、SuまたはNbであるものである。その他のN−保護アミノ酸活性エステルまたはN−保護ペプチド活性エステルは、N−保護アミノ酸を縮合剤(例えば、EDC)および活性化剤(例えば、HOBt)と反応させることにより、反応系中で生成される。
【0032】
「N−Fmocアミノ酸」とは、アミノ基がFmocで保護されており、カルボキシ基が保護されていないアミノ酸を意味する。
「N−Fmocアミノ酸アミド」とは、アミノ基がFmocで保護されており、アミド基が保護されていないアミノ酸アミドを意味する。
「N−Fmocアミノ酸活性エステル」とは、アミノ基がFmocで保護されており、カルボキシ基がEにより活性エステル化されたアミノ酸を意味する。
「N−Fmocペプチド活性エステル」とは、N末端のアミノ基がFmocで保護されており、C末端のカルボキシ基がEにより活性エステル化されたペプチドを意味する。
なお、N−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルとして単離可能なものは、Eがペンタフルオロフェニル、SuまたはNbであるものである。その他のN−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルは、N−Fmocアミノ酸を縮合剤(例えば、EDC)および活性化剤(例えば、HOBt)と反応させることにより、反応系中で生成される。
【0033】
「C−保護ペプチド」とは、C末端のカルボキシ基またはアミド基が保護されており、N末端のアミノ基が保護されていないペプチドを意味し、これは「H−AA
n’−AA
n’−1−・・・−AA
1−(OPG
0 or NHPG
0)」(n’は2以上の整数を示す)と表示される。
「N−保護−C−保護ペプチド」とは、N末端のアミノ基およびC末端のカルボキシ基またはアミド基のいずれもが保護されているペプチド意味し、これは「PG
n’−AA
n’−AA
n’−1−・・・−AA
1−(OPG
0 or NHPG
0)」(n’は2以上の整数を示す)と表示される。
「N−Fmoc−C−保護ペプチド」とは、N末端のアミノ基がFmocで保護され、C末端のカルボキシ基またはアミド基が保護されているペプチドを意味する。
【0034】
3.Fmoc基の除去方法
本発明のFmoc基の除去方法は、
化合物(I)(即ち、HS−L−COOH)、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物および塩基を混合して、化合物(II)(即ち、Fm−S−L−COOH)およびアミノ基含有化合物を含む反応混合物を得る工程、および
得られた反応混合物を塩基性水溶液で洗浄することによって、化合物(II)を除去する工程
を含むことを特徴とする(前記式中、Lは置換基を有していてもよいC
1−8アルキレン基を示し、Fmは、9−フルオレニルメチル基を示す)。
【0035】
アミノ基含有化合物は、上述したように第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を有する化合物である限り、特に限定は無い。アミノ基含有化合物としては、例えば、ペプチド、アミノ酸、アミノ酸アミドなどが挙げられる。本発明のFmoc基の除去方法では、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
アミノ基含有化合物が、遊離カルボキシ基を有する低分子量化合物である場合、前記の塩基性水溶液による洗浄工程で、副生成物である化合物(II)と共にアミノ基含有化合物が塩基性水溶液中に溶解し、得られるアミノ基含有化合物の収率が低下するおそれがある。そのため、アミノ基含有化合物は、遊離カルボキシ基を有さないことが好ましい。Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物は、好ましくは、遊離カルボキシ基を有さないN−Fmoc−C−保護ペプチド、N−Fmoc−C−保護アミノ酸またはN−Fmoc−C−保護アミノ酸アミド(本明細書中、「N−Fmoc−C−保護ペプチド等」と略称することがある。)であり、N−Fmoc−C−保護ペプチド等に対応して得られるアミノ基含有化合物は、好ましくは、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミド(本明細書中、「C−保護ペプチド等」と略称することがある。)である。
【0037】
N−Fmoc−C−保護ペプチド等およびC−保護ペプチド等、並びに後述するN−Fmocアミノ酸、N−Fmocアミノ酸活性エステル、N−FmocペプチドおよびN−Fmocペプチド活性エステルの基本となるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸のいずれでもよい。また、このアミノ酸は、L体またはD体のいずれでもよい。また、ラセミ体のアミノ酸混合物を使用してもよい。天然アミノ酸としては、例えば、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、Cys、Met、Phe、Tyr、Trp、His、Pro、Orn、Sar、β−Ala、GABA等が挙げられる。非天然アミノ酸としては、例えば、Dap等が挙げられる。
【0038】
N−Fmoc−C−保護ペプチド等およびC−保護ペプチド等は、側鎖官能基(アミノ基、カルボキシ基、スルファニル基、ヒドロキシ基、グアニジル基等)を有していてもよい。側鎖のアミノ基は、保護されていなくてもよいが、Fmoc基以外の保護基(例えば、Boc、Z、Bsmoc、Alloc、Ac等)で保護されていることが好ましい。また、側鎖のカルボキシ基は、C末端と同様に保護基で保護されていることが好ましい。
【0039】
カルボキシ基の保護基としては、例えば、Me、Et、tBu等の炭素数1〜6のアルキル、Bzl、p−ニトロベンジル、p−メトキシベンジル、Dpm、アリル、Bpr等が挙げられる。アミド基の保護基としては、例えば、Dmb、ビス(4−メトキシフェニル)メチル等が挙げられる。また、カルボキシ基およびアミド基の保護基としては、分枝鎖を有するものが好ましい。分枝鎖を有する保護基を使用すれば、N−Fmoc−C−保護ペプチド等およびC−保護ペプチド等の脂溶性を向上させることができ、後述する液相合成法によるペプチドの製造方法において、アミノ酸残基数の多いペプチドを合成しやすくなる。分枝鎖を有する保護基としては、例えば、Bzl(2,4−OPhy)、Bzl(3,4,5−OPhy)、Bzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)、Dpm(4,4’−OPhy)等が挙げられる。
【0040】
スルファニル基の保護基としては、例えば、フェニルカルバモイル、Trt等が挙げられる。ヒドロキシ基の保護基としては、例えば、Bzl、tBu等が挙げられる。側鎖のグアニジル基の保護基としては、例えばPbf等が挙げられる。
【0041】
式(I)中のLは、置換基を有していてもよいC
1−8アルキレン基を示す。ここで「C
1−8」は、アルキレン基中に含まれる炭素数を表し、Lが有する置換基の炭素数は含まれない。このアルキレン基の炭素数が大きすぎると、副生成物である化合物(II)の塩基性水溶液への溶解度が低下し、前記の洗浄工程で充分に除去することができない。そこで、このアルキレン基の炭素数は、8以下、好ましくは6以下、より好ましくは2以下である。また、Lが有し得る置換基としては、例えばアルキル基(例えば、Me、Et等)、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。化合物(I)は、好ましくは3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸(2−メルカプトコハク酸ともいう)およびシステインからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは3−メルカプトプロピオン酸である。
【0042】
化合物(I)の使用量は、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物に含まれるFmoc基1molあたり、好ましくは1.0〜30mol、より好ましくは3〜10molである。化合物(I)の使用量が少なすぎると、Fmoc基を充分に除去することができず、一方、この量が多すぎると、化合物(I)自体の除去が困難になり、本発明のFmoc基の除去方法をペプチドの製造方法に利用する場合、ペプチドの縮合反応で不純物が生成しやすくなる場合がある。
【0043】
化合物(I)、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物および塩基の反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、CPME、DMF、NMP、酢酸エチル、アセトニトリル、THFまたはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物に対して、通常3〜100倍重量であり、好ましくは5〜30倍重量である。反応温度は、Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物にもよるが、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、通常0.1〜24時間、好ましくは1〜5時間である。
【0044】
Fmoc基の除去反応に用いる塩基としては、例えば、DBU、DABCO、Et
3N、Na
2CO
3、NaOtBu、KOtBu、iPr
2EtN等が挙げられる。この塩基は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。塩基は、好ましくは有機塩基であり、より好ましくはDBUである。塩基の使用量は、使用する化合物(I)のカルボキシ基1molあたり、好ましくは0.5〜5mol、より好ましくは1〜3molである。塩基の使用量が少なすぎると、Fmoc基の除去反応の反応速度が充分に向上せず、一方、この量が多すぎると、塩基の除去が困難となり、また、本発明のFmoc基の除去方法をペプチドの製造方法に使用する場合、ペプチドのラセミ化等の副反応が生じ得る。
【0045】
本発明のFmoc基の除去方法は、上述の反応によって得られた反応混合物を塩基性水溶液で洗浄することによって、副生成物である化合物(II)を除去することを特徴の一つとする。一般的に洗浄とは、汚染物質を、液体で溶かして除去することを意味する。本発明における洗浄とは、化合物(II)を、塩基性水溶液で溶かして除去することを意味する。塩基性水溶液での洗浄は、例えば、反応混合物を含む溶液と塩基性水溶液とを混合および攪拌した後、有機層および水層を分液して、水層を除去することにより行われる。また、この塩基性水溶液での洗浄によって、副生成物である化合物(II)だけでなく、残留した化合物(I)を容易に除去することができる。
【0046】
従来のアミン等を用いるFmoc基の除去方法では、アミンを除去するために、反応溶液を酸性水溶液で洗浄する必要がある。この点、ペプチド合成で、Fmoc基の除去後に反応溶液を酸性水溶液で洗浄すると、ペプチドはアミノ基を有するため、得られたペプチドが酸性水溶液に移行し、ペプチドの収率が低下するという問題がある。また、ペプチドを含む反応溶液(即ち、有機層)は、酸性水溶液(即ち、水層)との分離性が悪く、水層の除去が困難であるという問題がある。このようなアミンを使用した後、酸性水溶液で洗浄を行う従来のFmoc基の除去方法に対して、塩基性水溶液で洗浄を行う本発明のFmoc基の除去方法では、ペプチドの収率低下を回避することができ、且つ有機層と水層との分離性が良好である。
【0047】
塩基性水溶液は、好ましくは炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの水溶液であり、より好ましくは炭酸ナトリウム水溶液である。塩基性水溶液中の塩基の濃度は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。塩基の濃度が低すぎると、化合物(II)を充分に除去することができず、一方、この濃度が高すぎると、塩基が水に溶け残ったり、副反応が起こることがある。
【0048】
反応混合物と混合した後の塩基性水溶液のpHが、好ましくは7〜14、より好ましくは8〜12となるまで、反応混合物に塩基性水溶液が添加される。また、塩基性水溶液での洗浄温度は、好ましくは0〜50℃、より好ましくは10〜30℃である。この塩基性水溶液での洗浄は、繰り返し行ってもよい。
【0049】
塩基性水溶液は、極性溶媒を含有していてもよい。この極性溶媒は、好ましくは、DMF、アセトニトリル、メタノール、エタノール、THF、NMPからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはDMFである。極性溶媒を使用する場合、塩基性水溶液中におけるその含有量は、好ましくは1〜50体積%であり、より好ましくは5〜30体積%である。
【0050】
本発明のFmoc基の除去方法によって得られた溶液を濃縮することにより、Fmoc基が脱保護されたアミノ基含有化合物を単離することができる。また、必要に応じて、該溶液に酸(例えば、塩酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸等)を添加することにより、アミノ基含有化合物を酸付加塩(塩酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)として単離してもよい。さらに、得られたアミノ基含有化合物の溶液をそのまま、後述の液相合成法によるペプチドの製造方法の原料として用いることもできる。
【0051】
4.液相合成法によるペプチドの製造方法
Fmoc基で保護されたアミノ基含有化合物が、N−Fmoc−C−保護ペプチド等であり、対応して得られるアミノ基含有化合物が、C−保護ペプチド等である場合、本発明のFmoc基の除去方法を、液相合成法によるペプチドの製造方法(以下「ペプチド液相合成法」と略称することがある。)で好適に使用することができる。本発明において「液相合成法」とは、固相合成法ではない合成法を意味し、全ての試薬が溶媒に溶解している均一反応に加えて、試薬の全部または一部が溶媒に溶解せず、分散または懸濁している不均一反応も包含する。
以下、上述したFmoc基の除去方法を含む、本発明のペプチド液相合成法について説明する。
【0052】
本発明のペプチド液相合成法の最終目的物であるペプチドに特に限定はないが、このペプチドのアミノ酸残基数が、一般的な合成ペプチドにみられる2〜40残基程度であることが好ましい。本発明のペプチド液相合成法によって得られるペプチドは、例えば、合成医薬ペプチド、化粧品、電子材料(有機ELなど)、食品などに利用することができる。
【0053】
本発明のペプチド液相合成法の一態様は、
(1)縮合剤(好ましくは縮合剤および活性化剤)の存在下、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとを縮合させて、N−Fmoc−C−保護ペプチドを得る工程(以下「カップリング工程(1)」と略称する。)、および/または
(2)C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルとを縮合させて、N−Fmoc−C−保護ペプチドを得る工程(以下「カップリング工程(2)」と略称する。)
を含む。なお、本発明のペプチド液相合成法は、ペプチド合成化学で常用される一般的な方法を特に制限なく採用することができる。
【0054】
上述のカップリング工程(1)および/または(2)、次いで得られたN−Fmoc−C−保護ペプチドからFmoc基を除去する工程(以下「N末端脱保護工程」と略称することがある。)を繰り返すことによって、所望のアミノ酸残基数を有するC−保護ペプチドが得られる。最終的に、このC−保護ペプチドのC末端の保護基、必要に応じてその側鎖官能基の保護基を除去する工程(以下「最終脱保護工程」と略称することがある。)を経て、最終目的物であるペプチドが得られる。
【0055】
N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocアミノ酸活性エステルを使用する上述のペプチド液相合成法の一態様は、下記スキームで表すことができる。下記スキームでは、n番目のペプチド伸長反応を「ペプチド伸長反応(n)」と表示し、このペプチド伸長反応(n)を構成するカップリング工程(1)および/または(2)、その後のN末端脱保護工程を、それぞれ「カップリング工程(1−n)」、「カップリング工程(2−n)」および「N末端脱保護工程(n)」と表示する。なお、下記スキームのN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocアミノ酸活性エステルを、それぞれ、N−FmocペプチドまたはN−Fmocペプチド活性エステルに替えたペプチド液相合成法も、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
上記スキーム中、
A
1は、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドを示す;
PA
2およびPA
n’+1は、それぞれ、N−Fmocアミノ酸を示す;
PAE
2およびPAE
n’+1は、それぞれ、N−Fmocアミノ酸活性エステルを示す;
PP
2およびPP
n’+1は、それぞれ、N−Fmoc−C−保護ペプチドを示す;
P
2、P
n’、P
n’+1およびP
mは、それぞれ、C−保護ペプチドを示し、添え字の2、n’、n’+1およびmは、各C−保護ペプチドのアミノ酸残基の数を示し、n’は2以上の整数を示し、mは3以上の整数であって、最終目的物であるペプチドのアミノ酸残基数を示す;
Pは、最終目的物であるペプチド(アミノ酸残基数m)を示す。
【0058】
本発明のペプチド液相合成法では、上述のFmoc基の除去方法を、伸長反応の開始前(即ち、上述のカップリング工程(1−1)および/または(2−2)の前)に行って、これらの工程で使用するC−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドを調製してもよい。また、本発明のペプチド液相合成法では、上述のFmoc基の除去方法を、N末端脱保護工程の少なくとも一つ(好ましくは全部)として行って、C−保護ペプチドを調製してもよい。
以下、各工程について順に説明する。
【0059】
4−1.カップリング工程(1)
カップリング工程(1)では、例えば、溶媒中において、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸と、縮合剤(好ましくは縮合剤および活性化剤)とを混合することによって、アミノ酸残基が一つ伸長したN−Fmoc−C−保護ペプチドが得られる。また、N−Fmocアミノ酸に替えてN−Fmocペプチドを使用すれば、N−Fmocペプチドのアミノ酸残基の数だけアミノ酸残基が伸長したN−Fmoc−C−保護ペプチドが得られる。ここで、使用するN−Fmocペプチドのアミノ酸残基数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜10である。
【0060】
成分の添加順序に特に限定はないが、C−保護ペプチドが一つ前のペプチド伸長反応(n−1)によって得られたものである場合は、反応容器中のC−保護ペプチドの溶液に、N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド、および縮合剤(並びに好ましくは活性化剤)を添加すればよい。
【0061】
N−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドの使用量は、C−保護ペプチド等に対して、通常0.9〜4.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。この範囲より少ないと、未反応のC−保護ペプチド等が残りやすく、多いと過剰のN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドを除去しにくくなる。
【0062】
C−保護ペプチド等を酸付加塩として使用した場合には、中和のため、塩基が添加される。この塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。この塩基の使用量は、C−保護ペプチド等に対して、通常0.5〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。塩基の使用量がこの範囲より少ないと、中和が不充分となって、反応が進行しにくくなることがある。
【0063】
縮合剤としては、例えば、EDC(塩酸塩およびフリー体を含む。)、DIPC、DCC、BOP、PyBOP、PyBroP、HBTU、HCTU、TBTU、HATU、CDI、DMT−MM等が挙げられる。これらの中で、残留した縮合剤や縮合剤の分解物の観点から、EDCが好ましい。縮合剤の使用量は、N−Fmocアミノ酸に対して、通常0.8〜4.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量である。
【0064】
カップリング工程(1)において、反応を促進し、ラセミ化などの副反応を抑制するために、好ましくは、活性化剤が添加される。ここで活性化剤とは、縮合剤との共存化で、アミノ酸を、対応する活性エステル、対称酸無水物などに導いて、ペプチド結合(アミド結合)を形成させやすくする試薬である。活性化剤としては、例えば、HOBt、HOCt、HOAt、HOOBt、HOSu、HOPht、HONb、ペンタフルオロフェノール等が挙げられ、これらの中でHOBt、HOOBt、HOCt、HOAt、HONb、HOSuが好ましい。活性化剤の使用量は、N−Fmocアミノ酸に対して、通常0〜4.0当量、好ましくは0.1〜1.5当量である。
【0065】
カップリング工程(1)で使用する溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定は無い。この溶媒としては、例えばDMF、NMP、酢酸エチル、THF、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレンまたはこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの中で、酢酸エチル、DMFが好ましい。溶媒の使用量は、C−保護ペプチド等に対して、通常3〜100倍重量であり、好ましくは5〜20倍重量である。
【0066】
反応温度は、通常−20〜40℃、好ましくは0〜30℃の範囲内である。反応時間は、通常0.5〜30時間である。
【0067】
カップリング工程(1)の反応終了後にワークアップを行ってもよい。このワークアップは、カップリング工程(2)の反応終了後のものと同様であるので、「4−2.カップリング工程(2)」の後の「4−3.カップリング工程(1)および(2)のワークアップ」でまとめて説明する。
【0068】
4−2.カップリング工程(2)
カップリング工程(2)では、例えば、溶媒中において、C−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドと、N−Fmocアミノ酸活性エステルとを混合することによって、アミノ酸残基が一つ伸長したN−Fmoc−C−保護ペプチドが得られる。また、N−Fmocアミノ酸活性エステルに替えてN−Fmocペプチド活性エステルを使用すれば、N−Fmocペプチド活性エステルのアミノ酸残基の数だけアミノ酸残基が伸長したN−Fmoc−C−保護ペプチドが得られる。ここで、使用するN−Fmocペプチド活性エステルのアミノ酸残基数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5である
【0069】
成分の添加順序に特に限定はないが、C−保護ペプチドが一つ前のペプチド伸長反応(n−1)によって得られたものである場合は、反応容器中のC−保護ペプチドの溶液にN−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルを添加すればよい。
【0070】
N−Fmocアミノ酸活性エステルまたはN−Fmocペプチド活性エステルの使用量は、カップリング工程(1)におけるN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドの使用量と同様である。また、カップリング工程(2)における塩基、溶媒およびその使用量、反応温度、反応時間等のその他の反応条件も、カップリング工程(1)と同様である。また、カップリング工程(2)の反応終了後にワークアップを行ってもよい。
【0071】
4−3.カップリング工程(1)および(2)のワークアップ
カップリング工程(1)および(2)の反応終了後、N−Fmocアミノ酸活性エステル、N−Fmocペプチド活性エステル、N−Fmocアミノ酸のイソウレアエステル、N−Fmocアミノ酸の対称酸無水物などのアミン成分と縮合し得る反応混合物中の残留物および副生成物を除去するため、スルファニル基担持シリカゲル等の固相求核剤除去試薬(例えば、SHシリカ(富士シリシア社製)など)を加え、攪拌後、濾去してもよい。また、洗浄工程にて、炭酸ナトリウムなど弱塩基性水溶液で洗浄して、活性エステルを失活させてもよい。
【0072】
カップリング工程(1)および(2)のワークアップでは、好ましくは、酸性水溶液での洗浄および/または塩基性水溶液での洗浄が行われる。酸性水溶液での洗浄により、C−保護ペプチド、残留した縮合剤またはその分解物、塩基などを水層に除去することができる。塩基性水溶液での洗浄により、添加剤、残留したN−Fmocアミノ酸などを水層に除去することができる。
【0073】
酸性水溶液での洗浄は、例えば、反応混合物と希塩酸水溶液(例えば、1N塩酸水溶液)、硫酸、ギ酸、クエン酸、リン酸などの水溶液とを混合および攪拌した後、有機層および水層を分液して、水層を除去することにより行われる。
【0074】
塩基性水溶液での洗浄は、例えば、反応混合物と、炭酸水素ナトリウム水溶液(例えば、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液)、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などとを混合および攪拌した後、有機層および水層を分液して、水層を除去することにより行われる。
【0075】
必要に応じてさらに水洗してもよい。
特に、C末端のカルボキシ基またはアミド基の保護基として、上述の(1)WO2010/113939A1に記載のジフェニルメタン化合物を保護化試薬として用いる保護基、(2)WO2010/104169A1に記載のフルオレン化合物を保護化試薬として用いる保護基、(3)WO2011/078295A1に記載のベンジル化合物を保護化試薬として用いる保護基、又は(4)WO2012/029794A1に記載の分岐鎖含有芳香族化合物を保護化試薬として用いる保護基を用いた場合、酸性水溶液での洗浄、塩基性水溶液での洗浄および/または必要に応じて行う水洗により、目的物以外の不純物を水層側に効率的に除去することができる。
【0076】
有機層を濃縮することにより、N−Fmoc−C−保護ペプチドを得ることができる。また、濃縮しないN−Fmoc−C−保護ペプチドの溶液またはその濃縮液を、その後のN末端脱保護工程に用いてもよい。
【0077】
4−4.N末端脱保護工程
本発明のペプチド液相合成法では、上述のFmoc基の除去方法を、伸長反応開始時に使用するC−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドを調製するために行ってもよく、N末端脱保護工程の少なくとも一つ(好ましくは全部)として行ってもよい。なお、以下では、伸長反応開始時に使用するC−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドの調製のためのFmoc基の除去工程も、N末端脱保護工程に含めて説明する。
【0078】
N末端脱保護工程として本発明のFmoc基の除去方法を行えば、副生成物である化合物(II)を充分に除くことができる。そのため、N末端脱保護工程の後に得られたC−保護ペプチド、C−保護アミノ酸またはC−保護アミノ酸アミドを固体として単離せずに、溶液のまま次の工程(即ち、カップリング工程(1)および/または(2)、或いは最終脱保護工程)で使用することができる。C−保護ペプチド等の溶液は、必要に応じて濃縮してから、次の工程に用いてもよい。
【0079】
以上のように、N末端脱保護工程として本発明のFmoc基の除去方法を用いれば、得られるC−保護ペプチド等を固体として単離する必要が無いので、最終目的物であるペプチドをワンポット合成で製造することができる。ここで、ワンポット合成とは、ペプチド液相合成法において、各工程で得られる中間体ペプチド(即ち、合成中間体)を反応容器から取り出さずに、最終目的物であるペプチドまで製造する合成法を意味する。
【0080】
また、N末端脱保護工程として本発明のFmoc基の除去方法を用いれば、カップリング工程(1)および/または(2)で生じた副生成物であるN−Fmocアミノ酸活性エステル等を、化合物(I)で捕捉して、その後の塩基性水溶液の洗浄で除去することができる。そのため、カップリング工程(1)および/または(2)後のスルファニル基担持シリカゲル等を用いるワークアップを省略することができる。
【0081】
4−5.最終脱保護工程
最終脱保護工程で、所望のアミノ酸残基数を有するC−保護ペプチドのC末端の保護基、必要に応じてその側鎖官能基の保護基を除去することによって、最終目的物であるペプチドを得ることができる。
【0082】
C末端の保護基および側鎖官能基の除去の方法には特に限定は無く、自体公知の脱保護法を使用すればよい。
例えば、保護基がMe、Et等の低級アルキル基である場合は、水または水性有機溶媒などの溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基とC−保護ペプチドとを、−20〜40℃で0.5〜10時間反応させることによって、脱保護することができる。
保護基がtBu、Pbf、Dmb、ビス(4−メトキシフェニル)メチル等である場合は、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、ジオキサンなどの溶媒中、トリフルオロ酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、トシル酸、ギ酸などの酸とC−保護ペプチドとを、−20〜40℃で0.5〜10時間反応させることによって、脱保護することができる。
保護基がZ基である場合は、メタノール、DMF、酢酸などの溶媒中、パラジウム炭素などの触媒を用いて、0〜40℃で0.5〜100時間、C−保護ペプチドを水素化反応させるか、或いはフッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸などの強酸とC−保護ペプチドとを、−20〜40℃で0.5〜10時間反応させることによって、脱保護することができる。
保護基がAlloc基である場合は、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等の0価パラジウム均一系触媒を用いたC−保護ペプチドの分解反応によって、脱保護することができる。0価パラジウム均一系触媒の使用量は、除去する保護基に対して、通常0.01〜1.0当量、好ましくは0.05〜0.5当量である。
【0083】
得られた最終目的物であるペプチドは、ペプチド化学で常用される方法に従って、単離精製することができる。例えば、最終脱保護工程後のワークアップにおいて、反応混合物を抽出洗浄、晶析、クロマトグラフィーなどによって、最終目的物であるペプチドを単離精製することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。なお、以下で濃度を示す「%」は、特段の記載が無い限り、「重量%」を意味する。
【0085】
実施例1
(i)3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(2.0g,2.00mmol)をクロロホルム(20mL)に溶かし、Fmoc−Leu−OH(779mg,2.20mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(465mg,2.43mmol)、DMAP(24mg,0.20mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣をCPME(20mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にて3−メルカプトプロピオン酸(0.87mL,10.02mmol)、DBU(1.70mL,11.39mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、氷冷下にて1N塩酸/CPME(1.40mL,1.40mmol)、CPME(10mL)、20%食塩水(20mL)を加えて、有機層および水層を得た。室温でこれらを撹拌しながら、水層のpHが9.0になるまで、10%炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、有機層および水層を分液した(以下、この操作を「pH=9.0洗浄」と略称することがある)。pH=9.0洗浄をもう一度繰り返した。得られた有機層を、室温にて、10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で2回、20%食塩水(20mL)で1回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)を含むCPME溶液(30mL)を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
【0086】
得られたCPME溶液から少量をサンプリングし、TOF−MSを測定した。測定結果およびその測定条件を以下に記載する。なお、後述する実施例1(ii)以降でも同様にして、TOF−MSを測定した。
TOF−MS:1110.9[MH
+]
測定機器:Waters LCT Premier XE
キャピラリー電圧:3000V
サンプルコーン電圧:86V
ディソルレーション温度:350℃
ソース部温度:120℃
注入量:2μL
【0087】
(ii)C−保護アミノ酸とN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例1(i)で得られたH−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)のCPME溶液(30mL)に、HOBt(81mg,0.60mmol)、Fmoc−Tyr(tBu)−OH(1.01g,2.20mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(465mg,2.43mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を20mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、3−メルカプトプロピオン酸(0.85mL,9.81mmol)、DBU(1.66mL,11.18mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(1.30mL,1.30mmol)、CPME(15mL)、20%食塩水(25mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、室温にて、10%炭酸ナトリウム水溶液で2回、20%食塩水で1回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)のCPME溶液を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:1329.9[MH
+]
【0088】
(iii)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチドとの縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例1(ii)と同様にして、前工程で得られたC−保護ペプチドと下記のN−Fmocアミノ酸またはN−Fmocペプチド(下記表1にて「N−Fmocアミノ酸等」と記載する)とを縮合し、次いでFmoc基を除去することによって、順次ペプチド鎖を伸張させた。
【0089】
【表1】
【0090】
(iv)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例1(iii)で得られたH−Gly−Gly−Asn(Trt)−Gly−Asp(OtBu)−Phe−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Ile−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)のCPME溶液(65mL)に、HOBt(81mg,0.60mmol)、Fmoc−Gly−Gly−OH(765mg,2.16mmol)、EDC.HCl(465mg,2.43mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応溶液に氷冷下にて、3−メルカプトプロピオン酸(0.85mL,9.81mmol)、DBU(2.34mL,15.68mmol)を添加し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を1N塩酸/CPME(5mL,5.00mmol)で中和し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に80体積%アセトニトリル水溶液(60mL)を加え、その沈殿物をろ過で回収した。回収した沈殿物をアセト
ニトリル(50mL)でスラリー洗浄し、次いで乾燥させることによって、H−Gly−Gly−Gly−Gly−Asn(Trt)−Gly−Asp(OtBu)−Phe−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Ile−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(4.60g,1.42mmol)を得た。最終的に得られたC−保護ペプチドの収率は、実施例1(i)の出発原料である3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(2.00mmol)から計算して、71%であった。
TOF−MS:3239.2[MH
+]
【0091】
実施例2
(i)4,4’−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ジフェニルメチルアミンとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
4,4’−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ジフェニルメチルアミン(2.0g,2.38mmol)をクロロホルム(20mL)に溶かし、HOBt(32mg,0.24mmol)、Fmoc−Leu−OH(1.02g,2.89mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(607mg,3.17mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣をCPME(20mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にて3−メルカプトプロピオン酸(1.03mL,11.89mmol)、DBU(2.02mL,13.55mmol)を加え、室温で3時
間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(1.50mL,1.50mmol)、CPME(10mL)、20%食塩水(20mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)およびDMF(4mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で1回、20%食塩水(20mL)で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液(30mL)を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:889.6[MH
+]
【0092】
(ii)C−保護アミノ酸アミドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
H−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液(30mL)に、HOBt(192mg,1.43mmol)、Fmoc−Tyr(tBu)−OH(1.26g,2.74mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(607mg,3.17mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を25mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、3−メルカプトプロピオン酸(1.03mL,11.89mmol)、DBU(2.02mL,13.55mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(1.50mL,1.50mmol)、CPME(5mL)、20%食塩水(25mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、10%炭酸ナトリウム水溶液で2回、20%食塩水で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Tyr(tBu)−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:1108.7[MH
+]
【0093】
(iii)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
H−Tyr(tBu)−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液(30mL)に、HOBt(96mg,0.71mmol)、Fmoc−Glu(OtBu)−OH(1.11g,2.61mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(552mg,2.88mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を25mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、3−メルカプトプロピオン酸(0.62mL,7.13mmol)、DBU(1.60mL,10.70mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(3.21mL,3.21mmol)、CPME(10mL)、20%食塩水(25mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)およびDMF(5mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)で2回、20%食塩水(25mL)で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:1293.8[MH
+]
【0094】
(iv)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例2(iii)と同様にして、前工程で得られたC−保護ペプチドと下記のN−Fmocアミノ酸とを縮合し、次いでFmoc基を除去することによって、順次ペプチド鎖を伸張させた。
【0095】
【表2】
【0096】
(v)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例2(iv)で得られたH−Gly−Pro−Lys(Boc)−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Leu−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)のCPME溶液(45mL)に、HOBt(192mg,1.43mmol)、Fmoc−Gly−Gly−OH(765mg,2.62mmol)、EDC.HCl(552mg,2.88mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応終了後、氷冷下で3−メルカプトプロピオン酸(0.62mL,7.13mmol)、DBU(1.78mL,11.89mmol)を添加し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を1N塩酸/CPME(4.28mL,4.28mmol)で中和し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に80体積%アセトニトリル水溶液(70mL)を加え、その沈殿物をろ過で回収した。回収した沈殿物をアセト
ニトリル(50mL)でスラリー洗浄し、次いで乾燥させることによって、H−Gly−Pro−Lys(Boc)−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Leu−Pro−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−NHDpm(4,4’−OPhy)(4.40g,1.72mmol)を得た。最終的に得られたC−保護ペプチドの収率は、実施例2(i)の出発原料である4,4’−(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ジフェニルメチルアミン(2.38mmol)から計算して、72%であった。
TOF−MS:2555.1[MH
+]
【0097】
実施例3
(i)2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコールとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(2.0g,2.85mmol)をクロロホルム(20mL)に溶かし、Fmoc−Gly−OH(1.12g,3.77mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(794mg,4.14mmol)、DMAP(42mg,0.34mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣をCPME(20mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にて3−メルカプトプロピオン酸(0.74mL,8.56mmol)、DBU(1.91mL,12.83mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(3.85mL,3.85mmol)、CPME(15mL)、20%食塩水(25mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)およびDMF(2.5mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)で2回、20%食塩水(25mL)で3回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液(35mL)を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:758.6[MH
+]
【0098】
(ii)C−保護アミノ酸とN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
H−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液(35mL)に、HOBt(116mg,0.86mmol)、Fmoc−Glu(OtBu)−OH(1.60g,3.76mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(794mg,4.14mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を20mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、DBU(1.02mL,6.84mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(5.48mL,5.48mmol)、CPME(20mL)、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)およびDMF(3mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)で1回、20%食塩水(30mL)で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Glu(OtBu)−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液(40mL)をそのまま次工程に移行させた。
TOF−MS:943.5[MH
+]
【0099】
(iii)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
H−Glu(OtBu)−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液(40mL)に、HOBt(116mg,0.86mmol)、Fmoc−Leu−OH(1.11g,3.14mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(662mg,3.45mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を25mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、3−メルカプトプロピオン酸(0.74mL,8.56mmol)、DBU(1.91mL,12.83mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(3.85mL,3.85mmol)、CPME(15mL)、20%食塩水(25mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)およびDMF(2.5mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(25mL)で2回、20%食塩水(25mL)で3回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Leu−Glu(OtBu)−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:1056.7[MH
+]
【0100】
(iv)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例3(iii)と同様にして、前工程で得られたC−保護ペプチドと下記のN−Fmocアミノ酸とを縮合し、次いでFmoc基を除去することによって、順次ペプチド鎖を伸張させた。
【0101】
【表3】
【0102】
(v)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
上記の実施例3(iv)で得られたH−Val−Ser(tBu)−Ser(tBu)−Tyr(tBu)−Leu−Glu(OtBu)−Gly−OBzl(2,4−OPhy)のCPME溶液(80mL)に、HOBt(193mg,1.43mmol)、Fmoc−Asp(OtBu)−OH(1.29g,3.14mmol)とEDC.HCl(662mg,3.45mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。反応終了後、氷冷下で3−メルカプトプロピオン酸(0.74mL,8.56mmol)、DBU(1.91mL,12.83mmol)を添加し室温で3時間攪拌した。反応終了後、MsOH(0.25mL,3.85mmol)およびクロロホルム(2.5mL)の混合液で中和し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣に80体積%アセトニトリル水溶液(60mL)を加え、その沈殿物をろ過で回収した。回収した沈殿物をアセト
ニトリル(50mL)でスラリー洗浄し、次いで乾燥させることによって、H−Asp(OtBu)−Val−Ser(tBu)−Ser(tBu)−Tyr(tBu)−Leu−Glu(OtBu)−Gly−OBzl(2,4−OPhy)(3.62g,1.97mmol)を得た。最終的に得られたC−保護ペプチドの収率は、実施例3(i)の出発原料である2,4−ジ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルアルコール(2.85mmol)から計算して、69%であった。
TOF−MS:1832.0[MH
+]
【0103】
実施例4
(i)2−(3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコールとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続く3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去
2−(3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコール(2.0g,1.76mmol)をクロロホルム(25mL)に溶かし、氷冷下にてFmoc−Ser(tBu)−OH(176mg,0.46mmol)、EDC.HCl(97mg,0.51mmol)、DMAP(2.2mg,0.018mmol)を30分おきに各6回加えた後、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣をCPME(20mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にて3−メルカプトプロピオン酸(0.46mL,5.27mmol)、DBU(1.34mL,9.00mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、MsOH(0.22mL,3.33mmol)およびCPME(2.2mL)の混合液を滴下し、CPME(15mL)、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)およびDMF(3mL)の混合溶媒で1回、10%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)で2回、20%食塩水(30mL)で3回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)のCPME溶液(35mL)を得た。このCPME溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:1276.8[MH
+]
【0104】
(ii)C−保護アミノ酸とN−Fmocアミノ酸との縮合
H−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)のCPME溶液(35mL)に、HOBt(71mg,0.43mmol)を加えた後、氷冷下にてFmoc−Thr(tBu)−OH(1.00g,2.51mmol)、EDC.HCl(529mg,2.76mmol)、DMF(10mL)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、反応溶液に20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。得られた有機層および水層を撹拌しながら、水層のpHが6.0になるまで、10%炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、有機層および水層を分液した(以下、この操作を「pH=6.0洗浄」と略称することがある)。pH=6.0洗浄を、さらに2回繰り返した。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、シクロヘキサン(40mL)に溶解させ、80体積%アセトニトリル水溶液(30mL)で4回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、得られたろ液の溶媒を減圧留去し、Fmoc−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)を得た。
TOF−MS:1655.9[MH
+]
【0105】
(iii)Fmoc基の除去、およびそれに続くC−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合
Fmoc−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)をCPME(25mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にてDBU(0.26mL,1.76mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。なお、このFmoc基の除去の際に、化合物(I)を使用しなかった。
反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(1.67mL,1.67mmol)、HOBt(237mg,1.76mmol)、Fmoc−Phe−OH(1.16g,2.98mmol)、EDC.HCl(629mg,3.28mmol)、DMF(6mL)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=6.0洗浄を3回行った。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、シクロヘキサン(40mL)に溶解させ、80体積%アセトニトリル水溶液(30mL)で4回、20%食塩水(30mL)で1回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、得られたろ液の溶媒を減圧留去し、Fmoc−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)を得た。
TOF−MS:1802.9[MH
+]
【0106】
(iv)Fmoc基の除去、およびそれに続くC−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合
実施例4(iii)で得られたFmoc−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)の全量をCPME(25mL)に溶解させた。この溶液に、氷冷下にてDBU(0.26mL,1.76mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。なお、このFmoc基の除去の際に、化合物(I)を使用しなかった。
反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(1.67mL,1.67mmol)、HOBt(237mg,1.76mmol)、Fmoc−Thr(tBu)−OH(0.91g,2.29mmol)、EDC.HCl(629mg,3.28mmol)、DMF(6mL)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=6.0洗浄を3回行った。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、シクロヘキサン(40mL)に溶解させ、20%食塩水(30mL)で1回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、得られたろ液の溶媒を減圧留去し、Fmoc−Thr(tBu)−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)を得た。
TOF−MS:1959.9[MH
+]
【0107】
(v)3−メルカプトプロピオン酸を用いたFmoc基の除去、およびそれに続くC−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合
実施例4(iv)で得られたFmoc−Thr(tBu)−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)をCPMEに溶かし、そのCPME溶液(30mL)を得た。このCPME溶液に、氷冷下にて3−メルカプトプロピオン酸(0.46mL,5.27mmol)、DBU(1.18mL,7.90mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、MsOH(0.15mL,2.37mmol)およびCPME(1.5mL)の混合液、CPME(20mL)、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を2回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、20%食塩水で3回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Thr(tBu)−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)のCPME溶液を得た。このCPME溶液に、氷冷下にてHOBt(71mg,0.53mmol)、Fmoc−Lys(Boc)−OH(994mg,2.12mmol)、EDC.HCl(402mg,2.01mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、反応溶液の溶媒を減圧留去し、80体積%アセトニトリル水溶液(40mL)を加え、その沈殿物をろ過で回収した。回収した沈殿物を乾燥させることによって、Fmoc−Lys(Boc)−Thr(tBu)−Phe−Thr(tBu)−Ser(tBu)−OBzl(2−OBzl(3,4,5−OPhy)−4−OMe)(3.56g,1.63mmol)を得た。最終的に得られたN−Fmoc−C−保護ペプチドの収率は、実施例4(i)の出発原料である2−(3,4,5−トリ(2’,3’−ジヒドロフィチルオキシ)ベンジルオキシ)−4−メトキシベンジルアルコール(1.76mmol)から計算して、93%であった。
TOF−MS:2188.1[MH
+]
【0108】
実施例5
(i)C−保護アミノ酸塩とN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続くチオリンゴ酸を用いたFmoc基の除去
H−Leu−OBzl・TsOH塩(394mg,1.00mmol)をクロロホルム(10mL)に溶かし、トリエチルアミン(0.14mL,1.00mmol)、HOBt(14mg,0.10mmol)、Fmoc−Tyr(tBu)−OH(506mg,1.10mmol)を加えた後、氷冷下にてEDC.HCl(232mg,1.21mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、チオリンゴ酸(450mg,3.00mmol)、DBU(1.49mL,10.00mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、MsOH(0.23mL,3.60mmol)およびクロロホルム(2.3mL)の混合液を滴下し、クロロホルム(10mL)、20%食塩水(20mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で3回、20%食塩水(20mL)で3回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Tyr(tBu)−Leu−OBzlのクロロホルム溶液(20mL)を得た。このクロロホルム溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:441.2[MH
+]
【0109】
(ii)C−保護アミノ酸とN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続くチオリンゴ酸を用いたFmoc基の除去
H−Tyr(tBu)−Leu−OBzlのクロロホルム溶液(20mL)に、HOBt(41mg,0.30mmol)を加えた後、氷冷下にてFmoc−Glu(OtBu)−OH(468mg,1.10mmol)、EDC.HCl(232mg,1.21mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、チオリンゴ酸(450mg,3.00mmol)、DBU(1.49mL,10.00mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、MsOH(0.23mL,3.60mmol)およびクロロホルム(2.3mL)の混合液を滴下し、クロロホルム(10mL)、20%食塩水(20mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で3回、20%食塩水(20mL)で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzlのクロロホルム溶液(30mL)を得た。このクロロホルム溶液を、そのまま次工程で用いた。
TOF−MS:626.2[MH
+]
【0110】
(iii)C−保護ペプチドとN−Fmocアミノ酸との縮合、およびそれに続くチオリンゴ酸を用いたFmoc基の除去
H−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzlのクロロホルム溶液(30mL)に、HOBt(68mg,0.50mmol)を加えた後、氷冷下にてFmoc−Glu(OtBu)−OH(468mg,1.10mmol)、EDC.HCl(232mg,1.21mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。反応終了後、溶媒を15mLまで減圧留去し、濃縮した反応溶液に氷冷下にて、チオリンゴ酸(450mg,3.00mmol)、DBU(1.34mL,9.00mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、MsOH(0.17mL,2.70mmol)およびクロロホルム(1.7mL)の混合液を滴下し、クロロホルム(15mL)、20%食塩水(30mL)を加えて、有機層および水層を得た。次いで、上述のpH=9.0洗浄を3回行った。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)で3回、20%食塩水(30mL)で2回攪拌洗浄し、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ろ過して、そのろ液を回収し、回収したろ液の溶媒を減圧留去した。得られた残渣にヘキサン(10mL)を加え、その沈殿物をろ過で回収した。回収した沈殿物を乾燥させることによって、H−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−Tyr(tBu)−Leu−OBzl(787mg,0.97mmol)を得た。最終的に得られたC−保護ペプチドの収率は、実施例
5(i)の出発原料であるH−Leu−OBzl・TsOH塩(1.00mmol)から計算して、97%であった。
TOF−MS:811.2[MH
+]
【0111】
実施例6:チオリンゴ酸を用いたFmoc基の除去
Fmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(0.075mmol)をクロロホルム(1mL)に溶かし、氷冷下にてチオリンゴ酸(33.8mg,0.23mmol)、DBU(0.09mL,0.60mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了時における化合物(II)(即ち、DBF−チオリンゴ酸付加体)の生成率は91%であった。なお、化合物(II)の生成率は、まず、合成したDBFを標準品として使用するHPLCでDBFを定量分析して、DBFの生成率を算出し、次いで化合物2の生成率を(100−DBFの生成率)として算出した。以下の生成率の算出法も同様である。
HPLCの条件は、以下の通りである。
測定機器:Waters AQUITY UPLC BEH C18 50mm x 2.1mm I.D., 1.7μm
測定温度:40℃
フローレート:0.4mL/min
注入量:2μL
測定波長:220nm
移動層A:0.05体積%トリフルオロ酢酸水溶液
移動層B:0.05体積%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液
グラジェントタイムプログラム:移動層Bの濃度を、10分間で20体積%から90体積%まで直線的に増加させた。
【0112】
反応終了後、反応溶液に氷冷下にて、1N塩酸/CPME(0.05mL,0.05mmol)、クロロホルム(5mL)、20%食塩水(5mL)を加え、室温で攪拌しつつpH=9.0になるまで10%炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、有機層および水層を分液した。得られた有機層を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(20mL)で3回洗浄し、有機層および水層を分液した。HPLCにて、化合物(II)が有機層中に存在しないこと(即ち、化合物(II)が全て水層へ除かれたこと)を確認した。
【0113】
実施例7:システインを用いたFmoc基の除去
Fmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(0.075mmol)をクロロホルム(1mL)に溶かし、氷冷下にてシステイン(27mg,0.23mmol)、DBU(0.022mL,0.15mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応終了時における化合物(II)(即ち、DBF−システイン付加体)の生成率は95%であった。反応終了後、反応溶液を濃縮し、濃縮した反応溶液にCPMEを(5mL)を加え、この反応溶液を、室温にて10%炭酸ナトリウム水溶液(5mL)で3回洗浄し、化合物(II)を除去した。
【0114】
比較例1:チオサリチル酸を用いたFmoc基の除去
Fmoc−Leu−OBzl(3,4,5−OPhy)(0.075mmol)をCPME(1mL)に溶かし、氷冷下にてチオサリチル酸(35mg,0.23mmol)、DBU(0.041mL,0.28mmol)を加え、室温で3.5時間攪拌した。反応終了時におけるDBF−チオサリチル酸付加体の生成率は21%であった。