【実施例】
【0052】
本発明をさらに詳細に説明するために実施例を以下に挙げるが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0053】
実施例1
[負極材料の作製]
高周波熱プラズマ法により合成され、徐酸化処理した珪素粒子の、表面の珪素酸化物を、水素40体積%の窒素雰囲気、還元温度700℃の条件で還元し、酸化被膜のない珪素粒子を得た。引き続き、メタン : 窒素 = 1 : 1を原料ガスとして、処理温度1000 ℃の条件で、珪素粒子の表面を熱分解炭素で被覆した。このようにして得られた負極材料を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、Mac−VIEW)を用いて、平均粒径を算出した。また、透過型電子顕微鏡により、珪素粒子の表面に形成された被覆層の厚みを測定した。結果として、平均粒径が15nmの珪素粒子の表面が5nmの炭素からなる被覆層で被覆された珪素粒子を得た。
【0054】
[負極材料のX線光電子分析(ESCA)]
得られた負極材料のX線光電子分析を行い、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、9%であった。また、珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積は60%であった。
【0055】
[複合負極材料の作製]
得られた負極材料を、平均粒径1μmの黒鉛と炭素ピッチとを加えて混合し、アルゴン雰囲気下、900℃で焼成し、粉砕処理後に分級し、平均粒径10μmの複合負極材料を得た。複合負極材料における珪素の質量割合は15%であった。
【0056】
[ポリイミド前駆体の合成]
窒素雰囲気下、4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを10.01g(0.05モル)、パラフェニレンジアミンを5.4g(0.05モル)、N−メチルピロリドン(NMP)を120g加え、室温にてこれらのジアミンを溶解させた。ついで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を28.69g(0.975モル)、NMPを12.3g加えて60℃で6時間攪拌した。6時間後室温まで冷却し、NMPを添加して最終的に固形分濃度20%のポリイミド前駆体溶液を得た。
【0057】
[負極の作製]
得られた複合負極材料80重量部と、固形分濃度20%のポリイミド前駆体溶液75重量部と、導電助剤としてアセチレンブラック5重量部を、適量のNMPに溶解させ攪拌した後、スラリー状のペーストを得た。得られたペーストを、電解銅箔上にドクターブレードを用いて塗布し、110℃ で30分間乾燥させ、ロールプレス機によりプレスして電極とした。さらに、この電極の塗布部を直径16mmの円形に打ち抜き、200℃、24時間の真空乾燥を行い、負極を作製した。
【0058】
[コイン型リチウム二次電池の作製]
前記負極、対極として金属リチウムを用い、電解液としては、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=7:3(体積比率)の混合溶媒に1MのLiPF
6、溶媒に対して3質量%のビニレンカーボネートを加えた電解液を用いた。また、セパレーターは、直径17mmに切り出したセルガード#2400(セルガード社製)を用い、コイン電池を作製した。
【0059】
[電極特性の評価]
対極(リチウム極)に対し、0.3Cに相当する電流で5mVまで充電した。充電に要した電流量と放電はリチウム極に対して0.3Cに相当する電流で2.0Vまで行い、初期(初回)放電容量を測定した。放電容量は、カット電圧が1.4Vの時の容量とした。このようにして、得られた初回充電容量、初回放電容量より初期効率を以下の式により求めた。
初期効率(%)={(初回放電容量(mAh/g)/初回充電容量(mAh/g)}×100
また、この充放電測定を50回行い、1回目の放電容量に対する50回目の放電容量の比率を、容量維持率(%)として算出した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0060】
実施例2、実施例3
平均粒径が40nm(実施例2)、80nm(実施例3)の珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆した負極材料を得た。得られた負極材料のX線光電子分析を行い、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、9%であった。また、珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積は60%であった。
【0061】
上記負極材料を用いて複合負極材料を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0062】
実施例4
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆した負極材料を用い、珪素の質量割合が5%である平均粒径10μmの複合負極材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0063】
実施例5
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面が2nmの炭素からなる被覆層で被覆された負極材料を得た。得られた負極材料のX線光電子分析を行い、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、6%であった。また、珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積は60%であった。上記負極材料に炭素ピッチのみを加え、珪素の質量割合が40%である平均粒径10μmの複合負極材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0064】
実施例6
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面が15nmの炭素からなる被覆層で被覆された負極材料を得た。得られた負極材料のX線光電子分析を行い、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、4%であった。また、珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積は60%であった。上記負極材料に、炭素ピッチのみを加え、珪素の質量割合が4%である平均粒径10μmの複合負極材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0065】
実施例7
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆した負極材料を用い、複合負極材料作製時に、炭素ピッチと黒鉛を用いる代わりに、炭素ピッチと薄層グラファイト(XGNP、品番M-5、XG Science社)とを9:1の重量比率で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0066】
実施例8
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆した負極材料を用い、該珪素粒子と、薄層グラファイト(XGNP、品番M-5、XG Science社)とを、ボールミルで混合し、粉砕処理後に分級し、複合負極材料に対し、珪素の質量割合が15%である平均粒径10μmの複合負極材料を得た以外は、実施例1と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0067】
実施例9
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆した負極材料を用い、複合負極材料作製時に、酸化グラファイトと負極材料を混合し、水素3体積%の窒素雰囲気で、焼成温度700℃の条件で焼成し、粉砕処理後に分級し、複合負極材料に対し、珪素の質量割合が15%である平均粒径10μmの複合負極材料を得た以外は、実施例1と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0068】
実施例10
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面を5nmの炭素被覆層で被覆し、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比が22%である負極材料を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0069】
実施例11
平均粒径が40nmの珪素粒子の表面が5nmの炭素からなる被覆層で被覆された負極材料を得る際に、熱分解炭素で被覆する条件を、原料ガスとして、アセチレン : 窒素 = 1 : 1を用い、処理温度を750 ℃とした。得られた負極材料のX線光電子分析を行い、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、9%であった。また、珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積は20%であった。このようにして得られた負極材料を用いること以外は、実施例2と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0070】
比較例1
高純度モノシランSiH
4を原料とし、ヘリウム、アルゴン、水素を希釈ガスとして、620℃の反応温度で、熱分解還元法により、多結晶珪素粒子を得た。徐酸化処理後の多結晶珪素粒子の平均粒径、結晶子径は、それぞれ、200nm、40nmであり、X線光電子分析により、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比を求めたところ、120%であった。
【0071】
得られた多結晶珪素粒子と平均粒径1μmの黒鉛と炭素ピッチとを加えて混合し、実施例1と同様にして、複合負極材料を得た。続いて、実施例1と同様に負極、リチウム二次電池を作製し、電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0072】
比較例2
比較例1で得られた徐酸化処理した多結晶珪素粒子に対して、実施例1と同様に熱分解炭素で被覆し、平均粒径200nm、結晶子径40nmの多結晶珪素粒子の表面が5nmの炭素からなる被覆層で被覆された珪素粒子を得た。この珪素粒子を負極材料として用いること以外は、実施例1と同様に、複合負極材料、負極、リチウム二次電池を作製し、電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0073】
比較例3
高周波熱プラズマ法により合成され、徐酸化処理した平均粒径40nmの珪素粒子を負極材料として用いること以外は、実施例1と同様に、すなわち、表面の珪素酸化物を還元せず、また熱分解炭素による被覆層を形成しない珪素粒子を負極材料に用いて、複合負極材料、負極、リチウム二次電池を作製し、電極特性を評価した。用いた負極材料について、X線光電子分析により得られる珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積の比は120%であった。電極特性評価により得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0074】
比較例4
高周波熱プラズマ法により合成され、徐酸化処理した平均粒径40nmの珪素粒子の表面を熱分解炭素により5nmの被覆層で被覆した負極材料として用いること以外は、実施例1と同様に、複合負極材料、負極、リチウム二次電池を作製し、電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1〜11および比較例1〜4を比較し、以下が明らかになった。
【0077】
炭素からなる被覆層内部に珪素酸化物が含まれるかどうかに着目し、実施例および比較例を比較する。負極材料として、炭素からなる被覆層内部に実質的に珪素酸化物が含まれていない複合負極材料を用いた実施例1〜11では、初期効率が78%〜93%と高いが、比較例1〜4では、初期効率が52%〜67%と劣っている。特に、珪素粒子粒径が40nmの比較例3、4においては、珪素粒子粒径が200nmの比較例1、2に比べても、特に劣っている。比較例3、4は、珪素粒子粒径が小さく、表面積が大きいため、表面酸化物が大きく影響していると考えられる。つまり、炭素からなる被覆層内部に実質的に珪素酸化物が含まれていない負極材料を用いることで初期効率の高い電極を得ることが出来た。
【0078】
珪素粒子の粒径に着目すると、珪素粒子の粒径が100nmよりも小さい実施例1〜11、ならびに比較例3、4は、容量維持率が、80%〜94%と高いが、珪素粒子の粒径が100nmよりも大きい比較例1、2においては、容量維持率が63%〜66%と極めて劣っている。比較例3、4は、容量維持率は比較的高いが、前述のとおり初期効率が極めて劣っているため、実用に供しない。つまり、珪素粒子の粒径が100nmよりも小さく、炭素からなる被覆層内部に実質的に珪素酸化物が含まれていない負極材料を用いることで、容量維持率、ならびに初期効率の高い電極を得ることが出来た。
【0079】
実施例1〜3の容量維持率を比較すると、珪素粒子の粒径が100nmよりも小さい実施例3に比べ、珪素粒子の粒径が50nmよりも小さい実施例2が、さらには珪素粒子の粒径が30nmよりも小さい実施例1が容量維持率に優れることがわかった。
【0080】
珪素粒子の粒径が40nmと同一の実施例2、4、5、6を比較すると、初期効率、容量維持率、共にいずれも良好な特性を示すが、珪素比率が小さい方がより良好であることがわかる。一方、充電容量については、珪素比率が大きい方がより容量が高いことがわかる。珪素比率が3質量%よりも小さくなると、充放電容量が小さくなり、高容量負極としてのメリットが薄くなる。つまり、珪素比率は3質量%より高いことが好ましいことがわかる。一方、珪素比率は50質量%を越えると、初期効率、容量維持率が低下することが懸念される。したがって、珪素の質量比率は3質量%〜50質量%であることが好ましいことがわかった。また、珪素比率を高くする必要がある場合には、表面酸化を抑制するための炭素からなる被覆層の膜厚が確保できなくなる恐れがある。一方で、炭素からなる被覆層の膜厚を20nmよりも厚くすると、珪素比率が小さくなり、充放電容量が小さくなる恐れがある。したがって、炭素からなる被覆層の膜厚は1nm以上、20nm以下が好ましいことがわかった。
【0081】
また、珪素粒子の粒径及び炭素被膜厚さが同一でマトリクス材料のみ異なる実施例2と、実施例7〜9を比較すると、マトリクス材料として黒鉛質材料を用いるより、薄層グラファイトを少なくとも一部に含有させた方が、特に容量維持率がより良好となることがわかった。
【0082】
加えて、珪素粒子の粒径及び炭素被膜厚さが同一で、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和に対する珪素酸化物のピーク面積比、ならびに珪素のピーク面積に対する炭化珪素のピーク面積比のみが異なっている実施例2と実施例10,11を比較すると、酸化珪素のピーク面積、ならびに炭化珪素のピーク面積がそれぞれ、珪素および珪素炭化物のピーク面積の和、珪素のピーク面積に対して、小さい実施例の方が初期効率がより良好となることがわかった。
【0083】
このように、珪素粒子の粒径が100nmよりも小さく、X線光電子分析(ESCA)における珪素酸化物、炭化珪素のピーク面積比率がより小さい負極材料、さらには、炭素からなる被覆層の膜厚は1nm以上、20nm以下の負極材料、珪素の質量比率が3質量%〜50質量%である複合負極材料を用いることで容量維持率、ならびに初期効率の高い電極を得ることが出来た。
【0084】
次に、バインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合の例を、以下に記す。
【0085】
実施例12〜20、比較例5〜8
ペースト作製時にポリイミド前駆体溶液をポリフッ化ビニリデン溶液に、負極作製時に真空乾燥を200℃、24時間から130℃、1時間に変更した以外は、実施例1〜9、比較例1〜4と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
PVDFをバインダに用いた場合、ポリイミドをバインダに用いた場合よりも初期効率や容量維持率の性能は全体的に落ちるものの、実施例12〜20は比較例5〜8に比べて相対的には高い性能を有しており、本願発明の効果を十分に奏するものであることが明らかになった。
【0088】
次に、バインダとして、ポリアミドイミド(PAI)を用いた場合の例を、以下に記す。
【0089】
[ポリアミドイミドの合成]
窒素雰囲気下、2Lの4つ口フラスコにメタフェニレンジアミンを30.24g(0.28モル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを84.1g(0.42モル)、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を610g加え、室温にてこれらのジアミンを溶解させた。ついで、重合反応液の温度が30℃を超えない様に無水トリメリット酸クロリドを147.4g(0.70モル)を徐々に添加し、添加終了後、重合液を30℃に温調し1.0時間攪拌し反応させ、重合溶液を得た。得られた重合溶液をIW水1.7リットル中に入れ、濾過分別してポリアミド酸の粉末を得た。得られたポリアミド酸の粉末を、真空度30torrの真空乾燥機中、150℃で5時間、次いで200℃で2時間、次いで240℃で4時間乾燥し、ポリアミドイミド樹脂の粉末を得た。
【0090】
乾燥後の粉体15gにNMPを85g加えて溶解させた後、溶液を1μmメンブレンフィルターにて濾過し、最終的に固形分濃度15%のポリアミドイミド溶液を得た。
【0091】
[負極の作製]
得られた複合負極材料80重量部と、固形分濃度15%のポリアミドイミド前駆体溶液100重量部と、導電助剤としてアセチレンブラック5重量部を、適量のNMPに溶解させ攪拌した後、スラリー状のペーストを得た。得られたペーストを、電解銅箔上にドクターブレードを用いて塗布し、110℃ で30分間乾燥させ、ロールプレス機によりプレスして電極とした。さらに、この電極の塗布部を直径16mmの円形に打ち抜き、200℃、2時間の真空乾燥を行い、負極を作製した。
【0092】
実施例21〜31
ペースト作製時にポリイミド前駆体溶液をポリアミドイミド溶液に、負極作製時に真空乾燥を200℃、24時間から200℃、2時間に変更した以外は、実施例1〜11と同様にして、それぞれの電極特性を評価した。得られた初回充電容量、初回放電容量、初期効率、容量維持率を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
ポリアミドイミドをバインダに用いた実施例21〜31およびポリイミド前駆体溶液を用いた実施例1〜11、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた実施例12〜20をそれぞれ比較し、ポリアミドイミドをバインダに用いた電池は、ポリアミドイミドをバインダに用いた電池と同等の特性を示すことが明らかになった。
【0095】
実施例32
[ラミネート型リチウム二次電池の作製]
[正極の作製]
平均粒径10μmのLiCoO
2で表されるコバルト酸リチウム、平均粒径30nmの炭素粉末、ならびにポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を混合し、さらに適量のNMPを加え、攪拌し、スラリー状のペーストを得た。コバルト酸リチウム、炭素粉末、ポリフッ化ビニリデンの重量比は95:2.5:2.5とした。得られたペーストを、厚み15μmのアルミ箔上にスリットダイコータを用いて塗布し、110℃ で30分間乾燥させた。このような電極ペーストの塗布、乾燥をアルミ箔の両面に行い、ロールプレス機によりプレスして電極とした。
【0096】
[負極の作製]
実施例2で作製した複合負極材料、および電極ペーストを用いて、厚み10μmの電解銅箔上にスリットダイコータを用いて塗布し、110℃ で30分間乾燥させた後、さらに200℃、24時間の真空乾燥を行った。このような電極ペーストの塗布、乾燥を電解銅箔の両面に行い、ロールプレス機によりプレスして電極とした。
【0097】
「電池作製」
上記で作製した正極、ならびに負極に、端子として、アルミニウム板(幅5mm、厚さ100μm)、ニッケル板( 幅5mm、厚さ100μm) を、それぞれ電気抵抗溶接により接続した。セルガード社製セパレータ「セルガード#2400」を介して、正極及び負極を巻回し、ポリエチレンテレフタレート製外装樹脂/ アルミニウム箔/ 変性ポリプロピレン製熱融着樹脂がラミネートされたフィルムからなる筒状のラミネート外装材中に配置した。電解液として、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=7:3(体積比率)の混合溶媒に、1MのLiPF6と、溶媒に対して3質量%のビニレンカーボネートを加えた電解液を減圧下で注液・封口し、1500mAhのラミネート型リチウム電池を作製した。
【0098】
比較例9
実施例2で作製した複合負極材料の代わりに、平均粒径10μmの球状黒鉛を用いた電極ペーストを電解銅箔の両面に塗布・乾燥・プレスした電極を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製した。
【0099】
実施例2で作製した複合負極材料を用いた実施例32のラミネート型電池の外形寸法を測定し、体積あたりのエネルギー密度を計算したところ、440Wh/Lであった。一方、比較例9の球状黒鉛を用いたラミネート型電池の外形寸法を測定し、体積あたりのエネルギー密度を計算したところ、350Wh/Lであった。このように、珪素からなる核粒子表面を炭素からなる被覆層で被覆し、被覆層内部に実質的に珪素酸化物が含まれていない複合負極材料をもちいることで、エネルギー密度の高いリチウム二次電池を得ることが出来た。