特許第6136971号(P6136971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6136971
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】貯留槽内低温液体の混合方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20170522BHJP
   B65D 90/22 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F17C13/00 302B
   B65D90/22 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-28351(P2014-28351)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-152136(P2015-152136A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁則
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
(72)【発明者】
【氏名】林 謙年
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−063396(JP,A)
【文献】 特開2011−117562(JP,A)
【文献】 実開平04−095398(JP,U)
【文献】 特開平09−203500(JP,A)
【文献】 特開2000−193196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B65D 90/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽内に貯留された低温液体を混合する貯留槽内低温液体の混合方法であって、
前記貯留槽から抜き出した低温液体に前記貯留槽で発生した蒸発ガスを混合することで前記蒸発ガスを凝縮させる蒸発ガス凝縮混合工程と、該蒸発ガス凝縮混合工程によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を液ポンプで圧送して前記貯留槽内の低温液体中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出工程とを有し、
前記蒸発ガス凝縮混合工程は、混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて気液二相流噴出工程で減圧沸騰するように混合する蒸発ガス流量を調整することを特徴とする貯留槽内低温液体の混合方法。
【請求項2】
前記蒸発ガス凝縮混合工程は、前記混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて前記混合済み低温液体が飽和温度以下になるように前記蒸発ガスの流量を調節することを特徴とする請求項1記載の貯留槽内低温液体の混合方法。
【請求項3】
前記蒸発ガス凝縮混合工程を、ベンチュリ型混合ノズルを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯留槽内低温液体の混合方法。
【請求項4】
蒸発ガス凝縮混合工程は、蒸発ガスをガス圧縮機によって圧力を高めて低温液体に混合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の貯留槽内低温液体の混合方法。
【請求項5】
前記貯留槽で発生した蒸発ガスのすべて、または一部を抜き出す蒸発ガス抜出し管と、前記貯留槽の低温液体を抜き出す低温液体抜出し管と、該低温液体抜出し管に設けられて貯留槽内の低温液体を圧送する液ポンプと、前記蒸発ガス抜出し管から抜き出された蒸発ガスを前記低温液体抜出し管から抜き出された低温液体に接触させて前記蒸発ガスを凝縮させて前記低温液体に混合する凝縮混合部と、該凝縮混合部に供給する蒸発ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記凝縮混合部によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を前記貯留槽内の低温液体中に導入する低温液体導入管と、該低温液体導入管に設けられて該低温液体導入管によって導入された低温液体を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出ノズルと、前記低温液体導入管に設けられて混合済み低温液体の圧力を検知する圧力計と、該低温液体導入管に設けられて混合済み低温液体の温度を検知する温度計と、該温度計及び前記圧力計の検知情報を入力して前記気液二相流噴出ノズルの噴出の際に減圧沸騰するように前記流量調整弁を調整する制御部とを備えたことを特徴とする貯留槽内低温液体混合装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて前記混合済み低温液体が飽和温度以下になるように前記流量調整弁を調節することを特徴とする請求項5記載の貯留槽内低温液体の混合装置。
【請求項7】
前記凝縮混合部は、ベンチュリ型混合ノズルによって構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の貯留槽内低温液体混合装置。
【請求項8】
前記蒸発ガス抜出し管に蒸発ガスの圧力を高めるガス圧縮機を設けたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の貯留槽内低温液体混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(以下、「LNG」と言う場合あり)をはじめとする低温液化ガス(以下、低温液体)が貯留された貯留槽内で発生する低温液体の層状化を防止・解消する技術に関し、特に、貯留槽内低温液体を攪拌混合することで前記層状化を防止・解消する貯留槽内低温液体の混合方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、低温液体は複数の成分が混合したものである。例えばLNGは、主成分であるメタンの他にエタン、プロパン、ブタン等のメタンより重質成分が含まれており、その比率はLNGの産地や精製プロセスに依存し一定ではない。そのため、同種の低温液体であっても、その組成の違いによって密度が異なるものとなる。
貯留槽中の低温液体に、成分の違いから密度が異なる低温液体を混入すると、密度の高い方の低温液体はタンクの下層に沈降し、一方、密度の低い方の低温液体は上層に遊離することになり、貯留槽内の低温液体が比重の軽い液(上層)と、比重の重い液(下層)とに層状化される。
【0003】
貯留槽内に貯留されている低温液体は、貯留槽周囲からの入熱により常に加熱される状態にあるが、低温液体の温度は、その自由液面からの蒸発作用によって、上昇することなくバランスしている。なお、この時の蒸発成分は、主として沸点の低い軽質成分である。
しかし、貯留槽内で低温液体に層状化が生じた場合、上層の液は自由液面から蒸発できるため温度上昇しないが、下層の液は蒸発できる自由液面を持たないため入熱分が層内に蓄積され温度が上昇していく。すなわち、上層は軽質成分が蒸発して密度が大きくなっていき、逆に下層は温度上昇により密度が小さくなっていく。この上層と下層の密度差がある限界値より小さくなった時、層状化が保てなくなり上層と下層の液が混合しつつ、下層の液が自由液面に達するようになる。下層の液が自由液面に達すると、それまで蓄積されていた入熱分のエネルギーが解放され、蒸発量が急増する。
【0004】
低温液体の貯留槽は、低温液体から蒸発する蒸発ガスを処理する設備を備えているが、蒸発ガス量がその処理能力を上回ると安全弁から放散することになる。低温液体がLNGの場合、その蒸発ガスは可燃性ガスであり、大量の放散は安全上避けるべきである。また、蒸発量が安全弁の処理能力をも上回るほど多くなると、貯留槽内圧が上昇し続け、最悪の場合、貯留槽の破壊にもつながりかねない。
このように、貯留槽内での低温液体の層状化は、蒸発量の急増という危険な現象を伴うため、層状化を確実に防止できる手段が求められている。その手段の一つとして、貯留槽内の低温液体を攪拌して均一に混合することが行われている。
【0005】
このような、撹拌混合を行う技術としては、特許文献1には、以下に示すような低温液化ガスタンク内の層状化防止装置が提案されている。
「低温液化ガスタンクの内底面上方位置に、下端を液吸込口とし上端を液流出口とする液上昇管を直立状態に且つタンク内底面と液吸込口との間に空間部が形成されるようにして設置し、該液上昇管の下端部に、低温液化ガスタンクに備えられているBOG圧縮機の下流側より分岐させた圧縮BOG配管を連通させ、圧縮BOGを液上昇管内に下端部より噴出させて該液上昇管内に液を導搬させるようにした構成を有することを特徴とする低温液化ガスタンク内の層状化防止装置。」(特許文献1の請求項1参照)
【0006】
また、特許文献2には、「受入れ液の物理的性状が変わることにより貯槽内に液の層状化を生じる貯槽に備えられる貯槽内液の層状化解消装置であって、側壁の貯槽底部に近い位置に貯槽内部上方に向けて液を噴出する下部ミキシングノズルを配設すると共に、側壁の上下方向中間位置に貯槽内部上方に向けて液を噴出する中間部ミキシングノズルを配設し、前記貯槽内の液を貯槽外部に取り出して前記下部ミキシングノズルと中間部ミキシングノズルに循環供給する循環ポンプを備えたことを特徴とする貯槽内液の層状化解消装置。」(特許文献2の請求項1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-193196号公報
【特許文献2】特開平9-203500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の層状化防止装置は、圧縮した気相を低温液化ガスタンク内に鉛直に設置した液上昇管の底部に吹き込み、気泡ポンプとして作用させて低温液化ガスタンク内の低温液化ガスを混合するものである。
しかし、低温液化ガスタンク内の液位は一定ではない。満液時の液位に対して大きく変化するものであり、大きいタンクではその変化量は数十メートルにも達する。液上昇管の上端を満液時の高さ近傍にないように設置すると、低液位の状態では液上昇管の下端部にBOGを吹き込んだとしても、液上昇管の上端から液を流出させることができず、吹き込んだBOGのみが液上昇管内を上昇していくこととなる。すなわち、循環混合効果が発揮できなくなる。
【0009】
特許文献2の層状化解消装置においては、貯槽内の液を循環ポンプによって下部ミキシングノズルと中間部ミキシングノズルに供給して貯槽内に噴射しているが、噴流は周囲の液体を巻き込んで拡散していくので、到達高さには限界がある。この到達高さは、噴流液密度(重)と周囲液密度(軽)との密度差にも影響を受け、密度差が大きくなるに従って低くなる。
貯槽内の液位が高い場合、噴流が到達しない領域の混合が不十分となるため、中間高さに他のノズルを設置している。
しかし、貯槽の高さが高い場合や密度差が大きい場合には、噴流の到達高さを確保するために循環ポンプの所要動力が大きくなると同時に、ノズルを2本設けても十分でない場合もあり得、また、液位や成層界面位置に応じてノズルを切り替える複雑な制御が必要となるという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、簡易な設備で、貯留槽内の低温液体を効果的に撹拌混合できる貯留槽内低温液体の混合方法及び装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る貯留槽内低温液体の混合方法は、貯留槽内に貯留された低温液体を混合する貯留槽内低温液体の混合方法であって、
前記貯留槽から抜き出した低温液体に前記貯留槽で発生した蒸発ガスを混合することで前記蒸発ガスを凝縮させる蒸発ガス凝縮混合工程と、該蒸発ガス凝縮混合工程によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を液ポンプで圧送して前記貯留槽内の低温液体中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出工程とを有し、
前記蒸発ガス凝縮混合工程は、混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて気液二相流噴出工程で減圧沸騰するように混合する蒸発ガス流量を調整することを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記蒸発ガス凝縮混合工程は、前記混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて前記混合済み低温液体が飽和温度以下になるように前記蒸発ガスの流量を調節することを特徴とするものである。
【0012】
)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記蒸発ガス凝縮混合工程を、ベンチュリ型混合ノズルを用いて行うことを特徴とするものである。
【0013】
)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、蒸発ガス凝縮混合工程は、蒸発ガスをガス圧縮機によって圧力を高めて低温液体に混合することを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明に係る貯留槽内低温液体混合装置は、前記貯留槽で発生した蒸発ガスのすべて、または一部を抜き出す蒸発ガス抜出し管と、前記貯留槽の低温液体を抜き出す低温液体抜出し管と、該低温液体抜出し管に設けられて貯留槽内の低温液体を圧送する液ポンプと、前記蒸発ガス抜出し管から抜き出された蒸発ガスを前記低温液体抜出し管から抜き出された低温液体に接触させて前記蒸発ガスを凝縮させて前記低温液体に混合する凝縮混合部と、該凝縮混合部に供給する蒸発ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記凝縮混合部によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を前記貯留槽内の低温液体中に導入する低温液体導入管と、該低温液体導入管に設けられて該低温液体導入管によって導入された低温液体を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出ノズルと、前記低温液体導入管に設けられて混合済み低温液体の圧力を検知する圧力計と、該低温液体導入管に設けられて混合済み低温液体の温度を検知する温度計と、該温度計及び前記圧力計の検知情報を入力して前記気液二相流噴出ノズルの噴出の際に減圧沸騰するように前記流量調整弁を調整する制御部とを備えたことを特徴とするものである。
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記制御部は、前記混合済み低温液体の圧力及び温度を検知し、これに基づいて前記混合済み低温液体が飽和温度以下になるように前記流量調整弁を調節することを特徴とするものである。
【0015】
)また、上記(5)又は(6)に記載のものにおいて、前記凝縮混合部は、ベンチュリ型混合ノズルによって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
)また、上記(5)乃至(7)のいずれかに記載のものにおいて、前記蒸発ガス抜出し管に蒸発ガスの圧力を高めるガス圧縮機を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る貯留槽内低温液体の混合方法は、貯留槽から抜き出した低温液体に前記貯留槽で発生した蒸発ガスを混合することで前記蒸発ガスを凝縮させる蒸発ガス凝縮混合工程と、該蒸発ガス凝縮混合工程によって前記貯留槽内よりも温度上昇した低温液体を前記貯留槽内の低温液体中に噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出工程とを有することにより、貯留槽内の低温液体中に気液二相状態の気泡含有液体が貯留槽内の液中に噴流として吐出されるので、貯留槽内の低温液体の撹拌効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態における貯留槽内低温液体混合装置の説明図である。
図2図1の一部である凝縮混合部の一態様の説明図である。
図3図1の一部である凝縮混合部の他の態様の一部断面を含む説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態の貯留槽内低温液体の混合方法を説明するのに先立って、該方法に用いられる貯留槽内低温液体混合装置について図1に基づいて説明する。
本実施の形態に係る貯留槽内低温液体混合装置1(以下、単に「混合装置1」という)は、貯留槽3で発生した蒸発ガス(BOG)を抜き出す蒸発ガス抜出し管5と、貯留槽3の低温液体7を抜き出す低温液体抜出し管9と、低温液体抜出し管9に設けられて貯留槽3内の低温液体7を圧送する液ポンプ11と、蒸発ガス抜出し管5から抜き出された蒸発ガスを低温液体抜出し管9から抜き出された低温液体7に接触させて蒸発ガスを凝縮させて低温液体7に混合する凝縮混合部13と、凝縮混合部13によって貯留槽3内よりも温度上昇した低温液体(混合済み低温液体)を貯留槽3内の低温液体7中に導入する低温液体導入管15と、低温液体導入管15に設けられて低温液体導入管15によって導入された混合済み低温液体を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させる気液二相流噴出ノズル17とを備えたものである。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0020】
<貯留槽>
貯留槽3は、例えば液化天然ガス(LNG)等の低温液体7を貯留するものである。
【0021】
<蒸発ガス抜出し管>
蒸発ガス抜出し管5は、貯留槽3で発生した蒸発ガスのすべて、または一部を抜き出して凝縮混合部13に供給する管であって、一端側が貯留槽3で発生した蒸発ガスを外部に送出する蒸発ガス送出管21から分岐し、他端が凝縮混合部13に連通している。
蒸発ガス送出管21には、図1に示されるように、蒸発ガスを圧縮して圧力を高めるガス圧縮機19が設けられており、蒸発ガス送出管21から抜き出される蒸発ガスはガス圧縮機19によって高圧化された後、そのすべて、または一部が蒸発ガス抜き出し管5を介して凝縮混合部13に供給される。
また、蒸発ガス抜出し管5には、流量調整弁20が設けられ、凝縮混合部13に供給する蒸発ガスの流量を調整できるようになっている。流量調整弁20による流量調整は、後述するように制御部22によって行われる。

ガス圧縮機19による高圧化は必須ではなく、貯留槽3から発生する蒸発ガスをそのまま凝縮混合部13に供給するようにしてもよい。その場合、蒸発ガス抜き出し管5は蒸発ガス送出管21のガス圧縮機19の手前から分岐して設けても良いし、一端側が貯留槽3の低温液体7の液面上方に開口するように、蒸発ガス送出管21とは別に別途設けても良い。
【0022】
<低温液体抜出し管>
低温液体抜出し管9は、貯留槽3の低温液体7を抜き出す管である。低温液体抜出し管9には、凝縮混合部13に低温液体7を圧送するための液ポンプ11が設けられている。
低温液体抜出し管9は、図1に示すように、低温液体7を外部へ供給するための低温液体送出管27から分岐させるようにしてもよいし、低温液体送出管27とは別に設けてもよい。
低温液体抜出し管9を低温液体送出管27から分岐させる場合には、図1に示すように、分岐部の近傍に第1開閉弁29を設けるようにする。
【0023】
<凝縮混合部>
凝縮混合部13は、蒸発ガス抜出し管5から抜き出された蒸発ガスを低温液体抜出し管9から抜き出された低温液体7に接触させて蒸発ガスを凝縮させて低温液体7に混合するものである。
凝縮混合部13の態様としては、例えば図2に示すように、低温液体7及び/又は混合済み低温液体を一時的に貯留できるヘッダ31によって構成し、該ヘッダ31の下部側に蒸発ガスの導入口を設けるようにしてもよい。
ヘッダ31に導入された蒸発ガスは、低温液体7に接触して熱交換によって凝縮して低温液体7に混合され、他方、低温液体7は蒸発ガスから熱を受けて温度が上昇する。
【0024】
凝縮混合部13の別の態様としては、例えば図3に示すようなベンチュリ型混合ノズル33を用いてもよい。
ベンチュリ型混合ノズル33は、低温液体7が流入する低温液体流入路35と、低温液体流入路35における下流側にあって流路が縮径する縮径部37と、該縮径部37の近傍にあって蒸発ガスが吸入される蒸発ガス吸入部39と、蒸発ガス吸入部39の下流側にあって凝縮した蒸発ガスが混合された混合済み低温液体が吐出する吐出口41とを備えてなるものである。
【0025】
ベンチュリ型混合ノズル33においては、流入した低温液体7が縮径部37で流速が増し、いわゆるベンチュリ効果によって蒸発ガス吸入部39から蒸発ガスを吸入して低温液体7に巻き込む。ベンチュリ型混合ノズル33を用いることにより、ガス圧縮機19の昇圧幅を低減したり、場合によってはガス圧縮機19そのものを省略することも可能となる。
一方、ガス圧縮機19により蒸発ガスを昇圧することにより、ベンチュリ型混合ノズル33においては、ベンチュリ効果により気相を巻き込むために必要な流速は、気液二相流噴出ノズル17における噴出速度に比べて十分に小さくて済む。すなわち、ベンチュリ効果を発揮するために必要な流路断面積の縮小拡大は比較的小さくて済むことになり、ベンチュリ型混合ノズル33における圧力損失が低減される。
【0026】
<低温液体導入管>
低温液体導入管15は、凝縮混合部13によって貯留槽3内よりも温度上昇した混合済み低温液体を貯留槽3内の低温液体7中に導入するものである。
低温液体導入管15における凝縮混合部13の近傍には、内部を通流する混合済み低温液体の圧力を検知する圧力計43と、内部を通流する混合済み低温液体の温度を検知する温度計45が設けられている。
また、低温液体導入管15には第2開閉弁47が設けられている。さらに、凝縮混合部13の上流側と第2開閉弁47の下流側とを短絡するバイパス管49が設置され、バイパス管49には第3開閉弁51が設けられている。
【0027】
<気液二相流噴出ノズル>
気液二相流噴出ノズル17は、低温液体導入管15に設けられて低温液体導入管15によって導入された混合済み低温液体を噴出することで減圧沸騰させて気液二相流として噴出させるものである。
気液二相流噴出ノズル17は低温液体導入管15から供給される混合済み低温液体を高速で噴出するために、吐出口17aの口径が縮径されている。
【0028】
<制御部>
制御部22は、圧力計43及び温度計45の検知情報を入力して、これに基づいて流量調整弁20を制御することで凝縮混合部13に供給される蒸発ガス流量を調整する。
凝縮混合部13における気相の巻き込み量が多いほど、気液二相流噴出ノズル17から吐出される際の気相の量が多くなり、貯留槽3内の混合撹拌力は向上する。そこで、貯留槽3の混合の様子を監視しながら、気相の巻き込み量を調整するのが好ましい。貯留槽3の混合の様子を監視する方法としては、貯留槽3内の高さ方向に複数点設置された温度計もしくは密度計(図示せず)により貯留槽3内の高さ方向の温度分布や密度分布を計測するのが一例である。
【0029】
もっとも、本発明では気液二相流噴出ノズル17のコンパクト化、凝縮混合部13を出た流体の気液二相流噴出ノズル17への安定供給、液ポンプ動力の低減等の理由から、凝縮混合部13において蒸発ガスを巻き込んだ後は液相になるようにしている。凝縮混合部13から気液二相流噴出ノズル17へ向かう低温液体導入管15は下降流となる場合が多く、気液二相流の状態での下降流は、流動が不安定となったり、圧力損失が大きくなったりするためである。そのため、蒸発ガスの巻き込み量は凝縮混合部13で飽和液の状態になるまでが上限となる。
このような蒸発ガスの流量は、凝縮混合部13の出口側に設けた圧力計43によって混合済み低温液体の圧力を検出し、該検出した圧力に基づいて飽和温度を求め、凝縮混合部13の出口側の低温流体の温度がこの飽和温度以下になっているかを確認し、飽和温度超の場合には蒸発ガスの流量が少なくなるように流量調整弁20を調整して飽和温度以下になるようにすればよい。
【0030】
また、制御部22は、貯留槽3内の低温液体7の混合を行うか、低温液体7の通常の送出を行うかを、流量調整弁20、第1開閉弁29、第2開閉弁47及び第3開閉弁51の開閉制御によって切り替える。
【0031】
以上のように構成された貯留槽内低温液体混合装置1を用いた貯留槽内低温液体の混合方法を説明する。
貯留槽内低温液体の混合を行わない場合には、流量調整弁20を閉、第1開閉弁29を開、第2開閉弁47と第3開閉弁51を閉にする。これによって、貯留槽3内の低温液体7は液ポンプ11によって低温液体送出管27を介して使用側に必要量が供給され、また蒸発ガスはガス圧縮機19で圧縮されて蒸発ガス送出管21を介して、使用側に供給される。
【0032】
貯留槽3内の混合を行う際には、第2開閉弁47を開、第3開閉弁51を閉にして、流量調整弁20を所定の開度にする。第1開閉弁29は使用側の需要に応じて適宜開度を調整する。
これによって、貯留槽3内の低温液体7は液ポンプ11によって低温液体抜出し管9を介して凝縮混合部13に供給される。他方、蒸発ガスはガス圧縮機19によって圧縮されて蒸発ガス抜出し管5を介して凝縮混合部13に供給される。
凝縮混合部13では、低温の低温液体7に高温の蒸発ガスが接触することで蒸発ガスは凝縮して液体となって低温液体7に混合され、他方、凝縮ガスが混合された低温液体(混合済み低温液体)は貯留槽3内の温度よりも高い温度になる(蒸発ガス凝縮混合工程)。
混合済み低温液体は、液相状態で低温液体導入管15を介して気液二相噴出ノズルに供給される。
気液二相噴出ノズルに供給された混合済み低温液体は気液二相噴出ノズルから高速で噴出することで減圧沸騰して気液二相流として低温液体7中に噴出される(気液二相流噴出工程)。
【0033】
図1に示すように、貯留槽3内に吐出された気液二相流は、噴流に含まれる気泡の上昇効果によって、液相単相の噴流よりも到達高さが高くなり、撹拌混合効果が向上する。
また、噴流が拡散した後でも、気泡の上昇流に随伴される液相の上昇流が形成され、攪拌混合効果が増大する。
また、攪拌混合能力があまり要求されないような条件においては、第2開閉弁47を閉、第3開閉弁51を開、流量調整弁20を閉にすることによって、液単相噴流により貯留槽3内を攪拌混合することも可能である。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、気液二相噴出ノズルから気液二相流が貯留槽3内の液中に噴流として吐出されるので、貯留槽3内の低温液体7の撹拌効果が高い。
また、本実施の形態では、本実施の形態の蒸発ガス抜出し管5、低温液体抜出し管9を既設の蒸発ガス送出管21、低温液体送出管27から分岐して設けたので、既設の配管に容易に取り付けることができ、改造費用等を低減することができる。
また、本実施の形態では、凝縮混合部13において低温液体7に接触した蒸発ガスが液相になるようにしているので、凝縮混合部13から気液二相流噴出ノズル17への供給を安定して行うことができ、また気液二相流噴出ノズル17へ供給するための液ポンプ11の動力を小さくすることができる。
さらに、蒸発ガスの一部を凝縮して貯留槽3に戻すことになるため、蒸発ガス送出管21から送出される、他のプロセスによって処理されるべき蒸発ガス量を低減する効果も得られる。
【0035】
なお、上記の説明では制御部22を用いて第1開閉弁29、第2開閉弁47、第3開閉弁51及び流量調整弁20を自動開閉するようにしたが、本発明においては、制御部22を有することなく、これらの弁関係を個別に手動等によって開閉する場合も含む。
【符号の説明】
【0036】
1 貯留槽内低温液体混合装置
3 貯留槽
5 蒸発ガス抜出し管
7 低温液体
9 低温液体抜出し管
11 液ポンプ
13 凝縮混合部
15 低温液体導入管
17 気液二相流噴出ノズル
17a 吐出口
19 ガス圧縮機
20 流量調整弁
21 蒸発ガス送出管
22 制御部
27 低温液体送出管
29 第1開閉弁
31 ヘッダ
33 ベンチュリ型混合ノズル
35 低温液体流入路
37 縮径部
39 蒸発ガス吸入部
41 吐出口
43 圧力計
45 温度計
47 第2開閉弁
49 バイパス管
51 第3開閉弁
図1
図2
図3